一心不乱に一つのことに取り組んでいたら、いつのまにか難しい課題もクリアできていたという経験をしたことはありませんか?今日は、がむしゃらに取り組むことの大切さを改めて皆さんに考えてほしいと思います。
例えば、スポーツが上達する上で、継続した練習が欠かせないのはご存じの通りです。かつての練習は根性論が主流でしたが、最近では科学を取り入れた理論的な裏づけに基づく練習が盛んです。運動生理学に基づく練習プログラムを計画通りにこなし、かつ、実践を数多く経験することで、スポーツの技量は向上します。
皆さんの場合であれば、ビジネス理論を学び、ノウハウやスキルを身に付けて、さまざまな実務経験を積むことで、順調に成果を上げるというものです。スポーツ選手もビジネスパーソンもこうなれば、まさに理想的な成長プロセスを歩んでいると言えるでしょう。
しかし、現実はそうではありません。何をやってもうまくいかない、つまり、結果がともなわないときがやってきます。結果がともなわないと、これまでの取り組み方法が間違っていたのではないかと、不安になります。こうした状態が続くと、自信をなくし、やる気さえ失いかけます。これが、壁とかスランプとか言われるものかもしれません。この壁やスランプは誰にでも起こるものです。私にもそうした時期は何度もありました。
人は壁やスランプの状態に陥ると、「私にはできない。この取り組みで結果を出すのは私の能力を超えている。そもそも無理なことだった。だからできなくても仕方ない」というように、言い訳やあきらめが口に 出るようになります。これこそ、脳が自らの限界を設定した瞬間です。しかし、これを乗り越えなければ、ビジネスパーソンとしても、人としての成長もありません。
では、どうすればよいかが問題です。「初心に戻り、改めて計画的に取り組む」ことができればよいのですが、そんな気持ちになれないのが人間です。
そこで、私がお勧めするのは「1週間だけ“がむしゃら”に行動する」ことです。例えば、「目に付いた本を片端から乱読する」「アイデアをすべて企画書にする」「映画を見続ける」「毎日ハードなトレーニングをする」など、言葉通りに我を忘れてやってみることです。考えるのではなく行動することがポイントです。こうすることで、皆さんが自ら設定している身体的な限界や心理的限界は突破できるのです。
幸いにも、これまで大きな壁やスランプを知らないという人は、自ら限界を作らないタイプの人でしょう。今後も限界を作らないようにしてください。
最後に、私が「もう限界かな」と思うようなときは、東京六大学野球で成績が振るわない東大野球部の元主将の言葉を思い出し、自分を鼓舞します。
彼の言葉は「勉強は簡単だ。勉強では戦う相手は自分だけだから限界を設けなくてよい。しかし、野球の場合は相手がいる。自分たちがいくら頑張っても相手が強いと試合は負けてしまう。ここで大切なのは、勝つことを目標に、自分たちが頑張り続けることだ。さあ、練習しよう」です。勉強で限界を設けない姿勢と、負け続ける野球においても勝つことを目標に練習する姿は素晴らしいでしょう。
以上(2022年11月)
op16462
画像:Mariko Mitsuda