1 アントレプレナーシップを持つ徳島県人よ 徳島から日本を変えてやろう!世界を驚かそう!
このキャッチコピーを掲げ、様々なコンテンツを通して“起業家支援”を行う
徳島イノベーションベース、通称「TIB」。
TIBの大きな特徴は、
徳島新聞、四国放送、阿波銀行、徳島大正銀行、メディアドゥ(敬称略)の理事各社をはじめとする、地域の主要機関(行政・金融機関・メディア・教育)と連携して“地域一体型”で起業家支援を行っている
ということ。
2020年の設立から5年を経て、総会員数は350名超。(2025年3月現在)
これまで、理事各社や主要機関による協力体制のもと様々な支援を行い、起業家の成長に繋げてきました。
TIBが、その“起業家の成長”の先に見据えているのは、徳島からイノベーションを起こし、日本を変えていくということ。
一見すると途方もないような目標にも思えますが、
この取り組みは、徳島だけに留まらず「〇〇イノベーションベース(xIB)」という形でTIBと同様の団体が全国各地に次々と発足。「IB」の数は今や全国20府県にも上り(立ち上げ準備中含)、その会員数は合計で1,300名規模
にまで広がっています。
そして、TIBはその起点として、全国各IBから模範とされる存在であり、「徳島から日本を変える」を現実のものとしてきています。
そんな唯一無二の“起業家支援団体”であるTIB。
その挑戦を支えるのは、ここに集う熱い志を持つ起業家たちです。
彼らはどのようなビジョンを描き、TIBを通じてどんな成長を遂げているのか?
本連載では、TIB会員の起業家たちにスポットを当て、彼らの事業はもちろん、TIBがもたらす影響、さらには彼らが抱く未来への想いに迫ります。
さらに、取材された会員が次のインタビュー相手を紹介する“リレー形式”を採用。これにより、TIB会員同士の繋がりや、絆の深さもお伝えしていきます。
記念すべき第1回でお話を伺ったのは、
第5期TIB運営委員長を務める 尾崎大氏(価値基準.ヒト株式会社 代表取締役)。
TIBのビジョンと同じ志を持つ彼が見つめる、組織の変遷と未来とは? そして、TIBが彼にもたらしたものとは…?
ここから始まる、徳島発・日本を変える起業家たちのストーリー。
ぜひ、ご一読ください!
2 事業について
私は、価値基準.ヒト株式会社という会社を経営しており、人事コンサルティング、HRの事業をしています。
人事コンサルティングとは、企業の採用や人材育成、人事評価などをサポートするもので、弊社では、中でも「人材育成」に重きを置いています。
この人材育成の支援において、弊社では「強み診断」を活用しており、
「価値ヒト強み診断システム」という独自の個性分析システムを開発しました。
「強み診断」とは、さまざまな質問に答えることで、その人の強みや才能がわかる、というものなのですが、「価値ヒト強み診断システム」では、“スキル的な意味合いでの才能”というよりも、その人の思考特性にフォーカスしています。
人材育成、特に幹部育成においては、他者を育成する能力が求められますが、それには自己認識はもちろん他者認識や相互理解が必要なんですね。
例えば、
- 『新規挑戦力』という「なんでもまずはやってみよう!」という思考特性のある上司
- 『準備力』という、何かを始める時にまずはリスクを予測し、準備してから動く、という思考特性のある部下
がいたとして、上司が自分の考え方をそのまま部下に伝えても、思考特性が真逆であるためどうしても反発や衝突が起きやすいと思います。
そこで、それぞれの思考特性による衝突を避けるために、この「価値ヒト強み診断システム」を活用します。
いわば“仲間の取扱説明書”のようなもので、それを理解することで、円滑な組織運営、人材育成に繋げていく、というイメージですね。
こういった取り組みを評価していただき、2024年のニュービジネス支援賞にて、この「価値ヒト強み診断システム」が『ヒューマンリソース賞』を受賞することができました。
3 経歴や事業を始めるきっかけ
私が初めて起業したのは2004年、25歳の時でした。
当時から「徳島をもっと盛り上げたい」という想いがあり、地域に役立つ仕事として、高齢者向けの配食事業「ニコニコキッチン」を設立しました。30歳の頃に事業譲渡しましたが、別オーナーのもとで現在も営業を継続しています。
そして、次に起業したのは、2012年。
29歳の時に、祖父、父が立て続けに亡くなり、家業がゴルフ場ということもあって遺産相続でとても苦労したのですが、1年がかりでなんとか10人の相続人をまとめ、無事解決に至りました。
この経験から、「自分のように相続で苦労する人を作りたくない」と思うようになり、相続のワンストップサービス「徳島相続相談プラザ」を設立。その後、2015年に『税理士法人徳島』に編入し、年間300人以上の相続相談を受けていました。
2016年には、税理士法人ひとざいの瀬嶋税理士と共に『株式会社ひとざい』を共同設立。さらに士業を中心とした有志のグループ『チームひとざい』を組成し、金融機関とも連携しながら、中小企業経営者のお困りごとの解決と、徳島相続相談プラザの運営を行っています。
その後、2021年に税理士法人徳島内の社内ベンチャーとして、価値基準.ヒト株式会社を設立し、前述の人事コンサルティングの事業を行うようになりました。
4 なぜ「徳島をもっと盛り上げたい」?
起業からの経歴を話すと「なぜ昔から“徳島をもっと盛り上げたい”と思っていたのか」と聞かれることが多いのですが、実は「これ」という理由がないんです。
この「徳島をもっと盛り上げたい」という想いは、いわば鮭が本能で生まれた川に戻るようなもので、私にとってごく当たり前というか、あって当然のものなので…
これまでに4回起業をして、今と昔では違う事業を行っていますが、根底にあるこの想いはずっと変わっていません。
TIBに入会したのも、そういう想いがずっとあるからです。
5 “相続”から“人事”へ転身した理由
「相続でもめない世界」の実現のためには、ファイナンシャルプランナーとしての知識はもちろん必要ですが、結局そこに関わるのは“ヒト”なので、根本的な解決のために心理学や脳科学を学ぶようになりました。
その中で、ヒトに関わる仕事に強く惹かれ、人事コンサルティング業を主とするようになりました。
6 TIB入会のきっかけ
第4期TIB運営委員長である、松永好史さんの紹介がきっかけです。
TIBの取り組みやビジョンを聞いた時「これはとんでもないことになる!!」と直感的に思ったのを今でも覚えています。
その衝撃からすぐに入会、そして運営にも携わるようになりました。
私にとって、TIB創設者である藤田恭嗣さん(株式会社メディアドゥ 代表取締役社長 CEO)の存在や影響は本当に大きく「徳島を懸けるなら藤田さんしかいない」と思っています。
私自身、もともと「徳島でいろんな人を巻き込んで熱量を高めていく」ような取り組みがしたいと考えていたのですが、TIBはまさにそれを体現できる場所ですね。
7 TIBの活動で印象に残っていること
たくさんありますが、中でも特に印象に残っているのは、2023年に木頭で開催された第38回月例会です。
会場となった木頭は、藤田さんの故郷でもあるのですが、藤田さんがどれだけこの木頭に想いを馳せているか、というのを肌で感じることができましたし、木頭の方々とも触れ合うことができました。
TIBの原点とも言える場所だと思うので、ここで感じたこと、触れたことは、私個人としても、TIBの運営委員としても、非常に大きなものとして心に残っています。
あとは、徳島の経営団体「四究会」と連携して2021年に開催した「地方経済未来会議LEC (Local Entrepreneur’s Creation)」。徳島から始まり、現在は全国各IBの持ち回りで毎年秋頃に開催されています。
地方の事業者と上場企業経営者が一同に介するイベントで、地方経済と上場の可能性を議論し、地方の事業者に上場を身近に感じる機会を提供、上場企業経営者には地方との繋がりを深める、という趣旨のものなのですが、
第1回LECでは、本会翌日にクローズドツアーとして「木頭ツアー」も開催されました。私も参加させていただき、BBQや川遊び、サウナなど、上場企業を経営する方々と、まさに“裸の付き合い”をすることができました。
学びや刺激も勿論大きかったのですが、それ以上に打ちのめされたといいますか…
上場企業経営者の方々と接する中で「目も鼻もついてない、何者でもない自分」であることを痛感し、自分の存在意義とは何なのだろう、と考えさせられました。
8 “ホンモノ”に触れられる環境だからこそ、成長できる
LECでの出来事は、今でも強く印象に残っているんですけど
なぜ「何者でもない自分」であることを痛感したかって、“ホンモノ”と触れることができたから
なんですね。
LECに限らず、“ホンモノ”と触れることは本当に重要だと思っていて、TIBはそれができる環境です。
例えば、
野球で甲子園に行きたくて、強豪校に入学したとして、強豪校の本気の練習ってやっぱりすごくキツイし辛いと思うんですけど、それでも成長したいから、死に物狂いでついていくわけじゃないですか。
そのイメージというか、
私がLECで自分の未熟さを痛感したように、やっぱり“ホンモノ”と触れることって、ある意味「キツイ」部分ではあるけど、だからこそ成長できるし、その環境に慣れて自分自身が成長していければキツさも少しずつ緩和されてくると思います。
ただ、こういった環境って、ほしくてもなかなかありませんよね。
上場企業やEO(年商一億円以上の経営者が所属する世界規模の起業家団体「Entrepreneurs’ Organization/起業家機構」)の経営者が、毎月徳島で講演を行ったり、一同に介して地域の事業者と交流したり、なんてTIB以外にはないと思います。
“ホンモノ”に触れ、唯一無二の異次元的な成長ができる場所、それがTIBです。
9 TIBの変化と成長
LECでの出来事は、今でも強く印象に残っているんですけど、
TIBは、私たち起業家が大きく成長できる唯一無二の場所であり、
その成長をもたらすために、TIB自体もまた常に成長し続けています。
私は、TIB会員として、そして運営委員としても約4年間携わってきたのですが、TIBはまるで生きもののように大きく成長し、変容してきました。
今でこそ“自分自身の成長”を目的として入会されているメンバーが多いのですが、以前は“徳島に貢献したい”という想いで入会する方が多く、
そのため、毎月全国の著名な経営者をお招きして講演していただいている月例会では、社会性のあるテーマが多かったですね。
それに対して現在の月例会は、どちらかというと実践的というか、より成長に直結するような設計になっています。
特に、私が委員長に就任した第5期からは「TAV (Take Away Value)」といって、月例会で学んだこと、得たことを、グループ毎に発表する、という場を設けたのですが、
これにより、“ただインプットして帰る”のではなく、その場でアウトプットし、成長に繋げていけるような設計になりました。
このように、ずっと同じ形態を続けていくのではなく、成長し、進化し、そしてさらにその成長・進化に合わせて変化を重ねていく…
だからこそ、TIBは他にはない唯一無二の起業家支援が行えるのではないでしょうか。
10 TIBに成長をもたらしたもの
TIBは、地域の主要機関だけでなくEOとも密な連携を図っています。『フォーラム(IBF)』や『メンタリング』など、TIBが提供するコンテンツはEOのプログラムやメソッドをベースとしてはいますが、
実は設立初期、運営委員にEOメンバーは藤田さん以外にはいませんでした。
徳島から日本を変える団体を、徳島の小規模事業者が集まって作り上げる…
まさにゼロイチで、何もないところから皆で作ってきたものです。
最初はルールも何もなくて手探り状態でしたが、少しずつ形ができていき、そこから変化し、成長し続けているTIB。
この背景には、様々なものがありますが
『フォーラム』というコンテンツの存在が大きいのではないかと思っています。
『フォーラム』とは、経営者8名を1チームとし、毎月、経験や悩み、葛藤をシェアする場を設け、各々の成⻑の糧とする、というもので、
仕事に関することだけではなく、家庭や個人、と多面的に自分自身と向き合う機会でもあり、またそれをアウトプット、仲間と共有することで、 それぞれが自分自身の新たな側面や伸び代に気づくことができる、というコンテンツです。
このフォーラムで重要なのは「ピア・トゥ・ピア」というルール。
年齢はもちろん事業歴、売上や規模の大小などは関係なく全員が対等な関係であり、それを守るために“アドバイス”行為は禁止されています。
この「ピア・トゥ・ピア」の考え方は、運営においても非常に重要で、この文化があるからこそ、TIBはこれまで進化し続けられてきたのだと思います。
前述の、月例会にTAVを導入したこともそのひとつで
フォーラムで「ピア・トゥ・ピア」を学んだメンバーがたくさんいるからこそ、月例会というたくさんの人が参加する場でも、全員が対等に学びをシェアできる環境が構築できたのだと思います。
11 TIBの今までと、これから
2020年にスタートしたTIB。
月例会のテーマも、メンバーの目的も、運営の在り方も、大きく変化、成長してきました。
その変化や成長は、これまで築いてきた歴史や文化があったからこそのもので、TIBや私たち個々のメンバーが成長し続けるために、これからも引き継いでいかなければならないものだと強く感じています。
歴史や文化を継承し、それを基盤に成長し続けた先に
“徳島から日本を変える”
というTIBの目指す未来が存在するのだと思います。
TIBに携わる中で「この未来は必ず実現する」という確信は、どんどん強くなっています。
運営委員長としての役目は、2025年3月で一旦幕を下ろしますが、これからもTIBメンバーとして、そして徳島に生まれ育ち、愛するものとして、今後も“徳島から日本を変える”ために邁進していきたいですね。
12 今後の展望
「徳島のために」という想いのもとで、TIBも自身の事業も“起業家”として続けてきているわけですが、今後はそれだけではなく、徳島の政策にも関わっていきたいんです。
人事や経営の専門家として、自身の事業だけではなく、様々な支援機関を通してこれからの徳島の産業を支えていけたら、と考えています。
そういった活動を通して、聖火リレーのように、TIBからもらった熱い炎をもっとたくさんの人に繋いでいきたいですね。
13 読者へのメッセージ
この記事を読んでくださった方は、なんとなくTIBがどういうものかをイメージしていただけたのではないかと思いますが、実際のTIBは、今あなたが想像している何十倍、何百倍も熱い場所です。
TIBに興味を持ってくださった方も、そうじゃない方も、まずは一度月例会に来てみてください!
百聞は一見に如かず、“ホンモノ”に触れることがどれだけ成長に繋がるか、これは体感していただくのが1番だと思います。
TIBは必ず徳島から日本を変えていきます。ですが、それにはもっともっと仲間が必要です。
今これを読んでくれているあなたも、私たちと共に成長し、徳島を、そして日本を変えていきませんか?
14 次回のインタビューは…
私からバトンタッチするのは、
ひとざい投資104株式会社・代表取締役の岡本昌幸さん。
彼もまたTIB運営委員のメンバーで、誰よりも動き、汗をかいて、私を支えてくれている方で、心から信頼しています。
岡本さん、よろしくお願いします!!
尾崎 大(価値基準.ヒト株式会社 代表取締役)
人と組織の“らしさ”を活かす 人事・育成戦略パートナー。
採用・定着・マネジメント人材育成など、「人と組織の課題」を、仕組みとコミュニケーションの両面から支援。強み診断で“らしさ”を見える化し、組織の個性に合わせた人材戦略を構築。制度設計や現場浸透まで、実行力ある伴走支援を行っている。
TIBのWEBサイト、SNSより更新のお知らせをご覧いただけます。
〈リンク〉
・WEBサイト:https://tibase.jp/
・Facebook:https://www.facebook.com/TokushimaInnovationBase
・Instagram:https://www.instagram.com/tib_tokushima/
以上(2025年6月作成)
画像:TIB