年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人 杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が、今回紹介する面白い起業家は大村晶彦さんです。

●運営しているメディア【セカイコネクト】
http://world-conect.com/

●会社HP
http://couxu.jp/

 大企業のグローバル化もまだまだ道半ばというところ。中小企業のグローバル化はもっと出遅れ感があると思います。その課題を解決するために起業したCOUXU(コーク)の大村さんについてお伝えしたいと思います。全く英語もできなかった生粋の体育会系サッカー少年が30カ国を飛び回って奮闘し、中小企業の海外進出をサポートしています。その状況をリポートしていきます。

1 低コストで海外への販路開拓を届けたい

サラリーマン時代、私は、複数の得意先社長から海外展開、海外での販路拡大について嘆きに近いお話を伺った経験があります。それは、「○○主催の海外展示会」に、中小企業にとっては大きな予算を投資して実際に行ってみたが、しかし……」というお話。確かに名刺の枚数は集まるものの、さまざまな問題があるようです。

例えば、「本当に興味ありの集客が現地でできていない、興味ありの先にどうやってコンタクトを開始していいの?」「サンプル出荷の方法は?」「継続的取引に進むには?」など本来必要な情報が乏しく、主催者側(相手国&日本側)の「開催した」という経験値だけの満足に終わっていることが多いと聞きました(主催者側がそう望んでいないとしても、多大なコストの割には結果が出ていない現実)。

これだけITの技術革新もあり、国と国の壁が低くなっている中で、わざわざ海外の展示会に出掛けなくても、ニーズがあるかどうか分からない相手と商談をするムダを省き、低コストで海外展開したい中小企業のお手伝いをしているのがCOUXUです。

その仕組みは次の通り、とてもシンプルです。

  • COUXUは30カ国2000社を超える現地バイヤー(商社)企業とつながっている
  • 上記のバイヤー企業が毎月100件以上の【日本の欲しいモノ】のリクエストをCOUXUにぶつけている
  • 【日本の欲しいモノ】リストをITを駆使して、会員化している日本の中小企業にCOUXUが開示している
  • 海外現地バイヤーとのやり取りについて、COUXUがアドバイス、いわば教育・トレーニングに近い手伝いをしている。例えば、海外の商習慣(英会話、英語でのメールのやり取り)、海外セールス、サンプル出荷の方法、貿易開始(実務の手順)などを、会員となった中小企業にトレーニングをするといった内容

セカイコネクトの画像です

海外と商談できる人材が中小企業にはほとんどいません。この現状と向き合い、中小企業が“自力自走”で海外展開できるようにと、COUXUはセカイコネクトを運営しています。

この活動を始めて5年。実際に貿易業務が始まった会社の中には、売り上げ規模で数億円となった中小企業も。また、現地バイヤーとの太いパイプから、貿易のみならず【進出】に関する現地調査などの依頼もCOUXUに寄せられており、国内の多様な業種業界の企業、2000社を突破する取引が実現しています。

日本企業の理想的な海外販路開拓の画像です

2 大村さんの起業ストーリー

5年という短期間で、国内外でこれだけの実績を作った大村さん。さぞかし語学も堪能で海外経験も豊富だった?と思いきや、小中高と一貫してサッカーにのめり込み、千葉県でべスト4の経験もあるそうで、大学も英語や海外とは遠い感じの体育大学だったそうです。

そうした中、大学時代、体育会系の“タテ社会”になじめず、『なんで生まれた年が1年違うだけで、こんなに違うの? 納得できない』と運動系の世界を離れて、アルバイトを10も20も経験。気付けば20歳でお酒も飲めないながらバーテン、そしてバーの経営へ。大学卒業時の2010年はリーマン・ショック後の就職氷河期。どうしようかと思いながら飛び込んだ世界が飲食関連。新規業態の店舗運営を1年目から任され新卒の中でも1位の成績!

しかし、スーツを着る仕事に憧れを持って1年で退職。次に入った会社がアリババマーケティング。大村さんは、ここで海外販路開拓の面白さに出合います。英語もできない状態でしたが、すぐに頭角を現し、ここでも成績で1位となったそうです。25歳のときに、『自分でやったほうがもっとお客さんを喜ばせることができる』と感じるようになり、26歳の誕生日にCOUXUを設立、今に至ります。

最近では、なじめなかった体育大学で、OB起業家として講演も行ったとのこと。お話を伺っていて、常に【今に疑問を持ち、常識を疑い、新たな道を好んで選択する】ということに突っ走る、そんな感性をお持ちだと思いました。

3 起業後の紆余(うよ)曲折、順風なんて一度もなかった

以前に一度、大村さんに質問したことがあります。それは、『海外現地バイヤーを2000社も抱えていたら、自分たち自身で貿易をすればもっともうかる会社になるのでは?』という質問です。大村さんの答えは、『自分たちだけ儲けることならいくらでもやれると思っています。しかし、それだったら大手商社と同じこと。それでは、何のために事業をやっているのか、そもそもの理念、起業動機と食い違ってきます。当初、自分たちが食べていける部分だけ取り組みましたが、現在は全くやっていません。日本の中小企業のグローバル化を目指すこと、そこにフォーカスしています』ときっぱり。

思いは十分でスタートしたものの、起業以来順風ではありませんでした。

  • 起業当初のメンバーが出社したら早々に離脱したのが判明
  • 当初の中心メンバーだったミャンマー人のトゥヤ氏が、諸事情あり本国へ帰国
  • 日本の中小企業のためと思って事業をしていたところ、バイヤーから発注、入金完了後に、日本側の中小企業が破綻、バイヤー側に迷惑を掛けてしまう
  • COUXUの業態自体が他に類を見ないため、経験者もほぼいない。そこに入社して来てくれたメンバーの戸惑い、離脱が続いた時期もあった

収益先行をさせず、じっくり真のお客さん基点を追求してきたからこその逆風、そこをしのいできたからこそ、現在海外留学生インターンを含めると20人近くまでになり、日本を含む10カ国のメンバーが集う会社に成長しています。余談ですが、以前の大村さんのパソコンには日章旗のラベルが貼ってありました。心底、日本のためを意識しているからこそだと思いますね。

4 10カ国のメンバーとともに、全国の中小企業を世界へコネクトする

まさに生きるか死ぬかの生命線上も、綱渡りのように活動してきた中、現在はメンバーも増え、売り上げも安定して伸びてきたそうです。これからのCOUXUの戦略についてもお伺いしました。

・海外でムーブメントを起こす
 これまでの【世界の欲しい】に、日本の製品をマッチングさせるだけでなく、海外現地で、大学や学生との連携を加速し、【現地で、日本の「欲しい」のムーブメント、トレンドを起こす】ことを実践していきます。そもそも気付いていない人々に、日本の良さをもっと訴求できる仕組みを構築していくことにチャレンジします。

・プロモーション動画を海外留学生が製作
 日本の良いものを世界で発信していく際に日本人目線より大切なのは、現地の人々の目線です。日本人が動画製作しても日本人の感性でしかありませんが、海外留学生たちが、自分たちの母国へ売り込むためのプロモーション動画を製作しSNSで発信すれば、訴求力が違ってきます。まさに国境を超えるお手伝いをします。

その他にもアイデアが満載の大村さん、日本発のグローバル企業を多種多様に輩出していこうとしています。本当に楽しみですね。

最後に、COUXUの思いを言葉にしたものを、HPより抜粋します。


COUXUの目指す“セカイ”
世界中の企業にとって“なくてはならない”日本企業を創造する
『COUXU(コーク)株式会社は、日本企業が低コストで誰でも簡単に海外への販路開拓できるプラットフォームを実現しております。
日本の人口減少や、国外の商品が流通量増加が進むにつれ、小売店や問屋に下ろすのも限界が近づいています。
対して、アジアを中心に日本の商品を求めている海外企業は多く存在します。
ですが、現状日本にはゼロから海外への販路開拓を行えるだけの“具体的な情報”が存在しません。
「英語ができない」「海外との取引の経験がない」企業様でも、手軽に商品を届けられる情報を提供しております。
今後も世界に手を広げ続け、海外において日本製品を手に取りやすい環境を作り続け、日本企業が国際企業になるためのシルクロードを開拓していくことが私たちの使命と考えております。』

COUXUが掲げる上記の世界が実現することを願ってやみません。

杉浦さんと大村さんの画像です

以上(2019年1月作成)

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