社長には「思考力」と「実行力」が必要です。「思考力」は考える力、「実行力」はその考えたことを具体化する力です。今回は、これらの鍛え方について話をします。
1 便利な社会は「思考力」が落ちる
ビジネスの世界では「QPS(Quality、Price、Service)」における差別化が重要であり、それを考える「思考力」が求められます。さらに、経営では、売上向上、資金調達、人材採用、業務効率化など多くのことを考えなければなりません。ここにも「思考力」が求められます。
にもかかわらず、現代では油断すると「思考力」が落ちやすいことに、皆さんは気付いているでしょうか。AIやロボットなどの飛躍的な進化によって、便利な世の中になっている一方、深く考えなくてもいろいろなことができるようになっています。
例えば、皆さんの多くはSuicaなどのICカードを持っていることでしょう。以前は、路線図を見て料金を確認して切符を買い、小さな切符をなくさないようにする、お釣りを確認する、精算するなど、いろいろなことを考えなければなりませんでした。しかし、今ではピッと改札を通ればそれで完了です。
そしてもう一つ、便利な社会が思考力を落としているという事実を認識しなければなりません。一つの例ですが、DeNAという会社のロゴマークの「D」の左隣に、「:」が付いています。私は「『ディー』と音が濁るので、その濁点が付いているのかな」と考えていました。しかし、ある人が、「いいえ、あれはニコちゃんマークを横にしたものです」と教えてくれました。
ありがたいと同時に、私は「これは危ないな」と感じました。なぜなら、その人はGoogleで検索することで「正解」を得ていたからです。言ってしまえば、何も考えず、正解を知っただけなのです。
2 経営では検索エンジンで答えが出ない問題が多い
経営では正解のない問題についても意思決定をしなければなりません。誰を役員に昇進させるのか、資源をどちらの事業に集中すべきか、これらのことをGoogleに聞いても答えは得られません。人生の岐路に立たされた場合の決断でも、検索エンジンに頼らず、考え抜かなければならないのです。
そして、もう一つ認識しなければならないことは、普段の生活は便利になり、単純化されている一方、社会そのものは複雑化しているということです。そうした社会においては、社長は複雑なことを複雑なままに考える「思考力」が必要なのです。
3 「思考力」を鍛えるには、普段から考えること
「思考力」は訓練や習慣で鍛えることができます。基本は、普段からものを考える習慣を持つこと。Googleで検索する前に、一度、自分で考えてみるようにします。
そして、時々は難しい本を、苦労して読んでみるのもよいでしょう。ゆっくりでいいので、理解できるまで読み込むのです。私は、1ページを理解するのに30分くらいかけて読むこともあります。いろいろなことを考えながら、あるいはそれこそ、インターネットを利用してバックグラウンドの情報を確かめながら「完全」とまではいかなくとも、著者が考えるレベルに近づくまで読みこなすのです。
4 「実行力」がなければ結果が出ない
そして、ビジネスでは、「実行力」も欠かせません。思っているだけ、口で言っているだけでは何も変わりません。道を切り開くには実行力が必要です。
「実行力」は「言ったことをやる」ことで鍛えられます。簡単なことですが、誰かと飲みに行く約束をしたら、それをやる。子供と交わした小さな約束も必ず実行する。社長の場合、売上を50%上げる、社員を海外旅行に連れて行くと言ったら、それを実行するのです。言ったことを守るということは、「実行力」を鍛えるだけでなく、人の信用を得ることでもあります。私は、交わした小さな約束ほど、手帳にメモするようにしています。忘れないで実行するためです。
これに加えて、「思ったこともやる」ようにします。例えば、「働き方改革でリモートワークをやったらどうかな」と思ったら、それをやるのです。もちろん、「思考力」を使って、リスクを考えることは不可欠ですが。
こうして「思考力」と「実行力」を高めていけば、経営にプラスになる面が増えてくると私は考えます。普段の心掛けが大事であることを忘れないでください。
以上
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