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米国や中国に比べてユニコーンの数が圧倒的に少なく、小粒のスタートアップしか育たないと言われて久しい日本。その中で、京都大学発のEV(電気自動車)メーカーの「GLM」の取締役CFO時代に、サウジアラビアの政府系ファンドや世界十指に入る香港の大富豪からの資金調達を実現させ、同社をユニコーンに育てた実績を持っているのが、長野草太さんです。
現在はベンチャーキャピタル「Abies Ventures」のCCO取締役パートナーとして、国内外のディープテック領域の有望ベンチャーを支援しており、活躍の場を広げられています。

世界経済を動かす大物たちと対等にビジネスの話ができる、「日本の宝」ともいうべき長野さんに、前編ではユニコーンを目指すために「持っておくべき視点」や「戦略」について伺いました。今回の後編では、ユニコーンとなるために欠かせない「資金調達の視点」や「モメンタム作りの視点」について伺いました。
 長野さん、貴重な学びのシェア、愛りがとうございます!(愛+ありがとう)

米国や中国に比べてユニコーンの数が圧倒的に少なく、小粒のスタートアップしか育たないと言われて久しい日本。その中で、京都大学発のEV(電気自動車)メーカーの「GLM」の取締役CFO時代に、サウジアラビアの政府系ファンドや世界十指に入る香港の大富豪からの資金調達を実現させ、同社をユニコーンに育てた実績を持っているのが、長野草太さんです。
現在はベンチャーキャピタル「Abies Ventures」のCCO取締役パートナーとして、国内外のディープテック領域の有望ベンチャーを支援しており、活躍の場を広げられています。

世界経済を動かす大物たちと対等にビジネスの話ができる、「日本の宝」ともいうべき長野さんに、前編ではユニコーンを目指すために「持っておくべき視点」や「戦略」について伺いました。今回の後編では、ユニコーンとなるために欠かせない「資金調達の視点」や「モメンタム作りの視点」について伺いました。
長野さん、貴重な学びのシェア、愛りがとうございます!(愛+ありがとう)

1 ユニコーンへの道のりで欠かせない、資金調達に対する視点

前編で、ゲームチェンジャーになるには数千億円の資金が必要という話をしました。ですが、資金調達のことを懸念して、ゲームチェンジャーになるのを諦めてしまう必要はありません。
かつてスタートアップの世界では、起業家に対して、ベンチャーキャピタリストやエンジェル投資家といった人たちが圧倒的に強い立場にありました。
しかし、ここ5年から10年の間に、資本市場の流動性が高まり株価が上昇傾向にある中で劇的に関係が変化し、アイデアを持っている人の方が有利になったと肌感覚で感じています。
ですから、優れたアイデア、明確なビジョンさえ持っていれば、必ず誰かが理解してくれ、資金を調達できると思います。

1)海外での資金調達のメリット

海外で資金調達を行うメリットは、海外には多種多様なプロ投資家が存在するということです。例えば、日本にもようやく少しずつ現れ始めましたが、海外には連続起業家が数多く存在します。彼らは従来型のいわゆる「オールドインダストリー」で成功している人、ファミリービジネスで財を成した人、IT産業で急成長した人など、多種多様です。彼らは資金を持っているだけでなく、ビジネスの知見も豊富ですし、広大なグローバルネットワークも持っていますから、チームに参加してもらうことは、とても大きな意味があります。

連続起業家の周辺には情報が集まりますし、事業を大きくするという経験を肌感覚として持っています。ですから、「君たちがやろうとしていることは面白いけど、北欧の企業が似たようなサービスをやろうとしているという話を聞いたことがある」「バリエーションの立て方は、こうしたほうがいい」といった、大変貴重なアドバイスを受けることができます。また、グローバルトレンドを常に意識できますので、世界の潮流に合致した形で戦略を立てることができます。
 さらに、海外の財閥などから投資してもらえれば、彼らが展開する巨大なマーケットを活用することが可能になります。

2)海外で資金調達を行う場合の留意点

はっきり言えるのは、日本の投資家の方々は、海外の投資家に比べて優しいということです。日本の投資家の場合、何かトラブルが起きたときに、自然と皆で知恵を絞って解決しよういう動きになるでしょう。その根底にあるのは、恐らく日本は性善説で物事が動いているからだと思います。
ところが、海外では全く事情が異なります。最終的にルールの範囲内であれば、基本的に何をやってもいい、という考え方が根底にあります。端的な例を紹介しますと、同じ開発をやっている企業が数社あって、自社の開発が順調に進んでいない場合、競合の開発を遅らせるためにパテント(特許権)の訴訟を起こすことが珍しくありません。訴訟を起こす根拠が全くなかったとしても、競合としては、資料を提出したり、法廷に立ったりする必要があるので、足かせになるわけです。

こうした話は、日本のスタートアップの世界ではなかなか聞かないですが、海外ではプライベートエクイティファンドも機関投資家もヘッジファンドも、アグレッシブな人たちが少なくありません。そういった認識を持たないまま海外に出ていってしまうと、大変な目に遭う可能性はあります。
ですから、企業自身もマネジメントも、フワフワしていると足元をすくわれてしまうという怖さはあります。そういった意味では、海外ではとても鍛えられますので、本当の意味でバキバキな筋肉質で骨太になっていくと思います。

2 ユニコーンに成長するためのモメンタム作りの視点

1)モメンタム作りがユニコーンへの最短経路

スタートアップがユニコーンへと成長していくために、多くの人がとても重要なポイントとして指摘するのが、成長のモメンタム(推進力)を作ることです。
モメンタムを作るとは、一度スピードがつき始めると、二次曲線的に加速度が増していくような状況にすることです。スタートアップには時間が限られているので、その中でモメンタムを作ることは非常に大事なことです。一度モメンタムが作られると、自ずとバリエーションも上がっていきますので、投資家たちが競って投資するようになり、ユニコーンに成長しやすくなります
モメンタムの作り方をよく知っているのは、やはりプロ投資家であり、その点でも彼らの存在は大きいといえます。

モメンタムを作る手法は事業の分野によって異なりますが、いくつか考えられます。例えば、ゲーム会社などに見られる手法ですが、突然、広告をたくさん出すという手があります。また、「この人が参加するプロジェクトなら大丈夫だろう」と思われているような、とても著名な投資家に参加してもらうこともあります。逆に、「ステルス」というのですが、情報を全く公開しなくすることで、「何をやっているか分からないけれど、ステルスモードに入ったということは、すごいことをやっているのではないか」と思わせるという手法もあります。こうした手法は1つでなく、複数の組み合わせでモメンタムを作ることもあります。

2)モメンタム作りには落とし穴も

ただし、モメンタムを作ることができた場合、自分たちの実態と即しているかについて、常に注意しなければなりません。私感ですが、10年に1回くらいの頻度で金融危機が発生する可能性があると思っています。金融危機が発生した場合、最初にあおりを受けるのはスタートアップです。
金融危機が発生したときに、実態が伴わないまま、過剰なバリエーションがついている状態だと、自社の存続が危うくなりかねません。最初の視点に戻りますが、マクロトレンドはしっかり意識しておく必要があると思います。

3)最後は結果が全て

モメンタムを作ることと、実態に即した成長をすることは、相反するようにも見えますが、両方とも必要な視点だと思います。無責任なことは言えませんが、やはり最後は結果が全てであり、やり切れるか、やり切れないか、だと思います。
テスラも、「本当にEVを製造できるのか」と言われ続けてきましたが、やり切って、認められました。逆に、血液検査を行う医療ベンチャーのセラノスは、最初はやり切れると思って始めたのでしょうが、詐欺事件に発展し、会社を解散することになりました。
モメンタムと実態とのバランスを取ることが大事だと思います。

3 日本のディープテックの成長に期待

21世紀に入ってから、日本人のノーベル賞受賞者数は世界で第3位です。とはいえ、日本はディープテックの企業がまだまだ少ないのが実情。ということは、眠っている優れた技術がたくさんあるはずです。
ディープテックの領域には、2016年から2020年までに6兆円以上の投資があり、それまでの4倍以上に増えました。ですが、日本ではまだ2000億円に満たない程度ですから、日本の実力と比べても少ないと思います。

ディープテックの領域は、お金にならない、大学の研究室だけで研究されるものだと思われている人が多いかもしれません。しかし、SDGs関連で今後1200兆円の新たな市場機会を生み出すことが可能とも言われており、その中でディープテックは重要な意味を持つことになると思います。特に気候変動対策などの環境分野は大きなトレンドになりますので、私たちAbies Venturesも投資をしていきたいと考えています。私たちが投資を行う際、次のような分野にフォーカスしていますが、日本が強みを持っている分野もありますので、日本企業へも投資していきたいと考えています。

  • AI・ロボティクス
    産業用ロボット、AIプラットフォーム、通信技術、AR(拡張現実)/MR(複合現実)など
  • 高度情報処理技術
    分散処理、サーバー技術、AIプロセッサー、次世代メモリー、量子コンピューティングなど
  • 素材・化学・電池
    ナノマテリアル、バイオマテリアル、3Dプリンティング・分散生産技術、次世代二次電池など
  • 宇宙
    衛星データ、衛星通信、移動・輸送など

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2021年11月17日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

【電子メールでのお問い合わせ先】
inquiry01@jim.jp

(株式会社日本情報マートが、皆様からのお問い合わせを承ります。なお、株式会社日本情報マートの会社概要は、ウェブサイト https://www.jim.jp/company/をご覧ください)

ご回答は平日午前10:00~18:00とさせていただいておりますので、ご了承ください。

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