かつてナポレオン・ヒルは、偉大な多くの成功者たちにインタビューすることで、成功哲学を築き、世の中に広められました。私Johnも、経営者やイノベーター支援者などとの対談を通じて、ビジョンや戦略、成功だけではなく、失敗から再チャレンジに挑んだマインドを聞き出し、「イノベーション哲学」を体系化し、皆さまのお役に立ちたいと思います。
第9回に登場していただきましたのは、新しいイノベーション人材の教育機関として注目される、2020年4月開学予定のiU情報経営イノベーション専門職大学(以下「iU」)の準備責任者、宮島徹雄氏(以下インタビューでは「宮島」)です。
1 「限界超えるまでやりきったら、必ず道は開けるという、そういう努力の仕方をしています」(宮島)
John
本日は、お忙しいところお時間いただきまして、本当に愛りがとう(愛+ありがとう)ございます!
本日は、宮島さんが営業担当者のころのお話や、会社経営、iUに関するお話など、過去を振り返ったり未来のことを教えていただいたりしながら、宮島さんの個人としてのお考えをいろいろとお聞きできればと思います! そして、最後には、宮島さんのイノベーション哲学をお教えください。よろしくお願いします。
宮島
こちらこそ、ありがとうございます。よろしくお願いします!
John
まず、宮島さんのキャリアについてお聞きしたいと思います。最初に宮島さんのキャリアを拝見したときに、非常にユニークだなと思いました。
宮島
そうですかね、あまり一般的ではないかもしれませんね(笑)。
John
宮島さんは関西の出身ですね。関西学院大学では何を学ばれていたのでしょうか?
宮島
はい。関西出身です。大学時代は、ラグビーをやっていました(笑)。
John
そうですか! ラグビーでは、どういったことを一番学ばれましたか?
宮島
僕は少し変わっていまして、高校時代には写真部に所属していました。高校時代はとても痩せていたのですが、一念発起して、大学では体育会系のラグビー部に入りました。当時、僕のポジションは、フッカーで、(スクラムの)一番前でした。そのポジションはケガ人が多かったのです。素人が大学でラグビーをやり始めてもなかなかレギュラーになれないのですが、そのポジションはケガ人がかなり出るため、僕にも順番が回ってきました。大学3回生で僕はなんとレギュラーになってしまいました。そのとき、母親が一言こう言いました。「徹雄、無事これ名馬なりやで(笑)」。徹底して努力すればチャンスが来るということをラグビーで学ばせていただきました。
John
ケガをせず、ポジションが回ってきたときに、そのチャンスを掴むという考えはビジネスにも通じるものがありそうですね。リクルートに入社した一番の決め手は何だったのでしょうか?
宮島
ラグビー部の先輩がリクルートにいらっしゃったということと、お会いしたリクルーターの方が非常に魅力的な方だったことです。
John
大学では何学部だったのでしょうか?
宮島
経済学部です。
John
経済学部で学んだことで、宮島さんが今の仕事に使われていることや考え方などはありますか?
宮島
(大学のときは)ほとんど勉強をしていなかったので、何とも言えないのが正直なところです(汗)。iUの学生に言えませんが(汗)。ただし、経済学の授業を受けていたことが、今になって参考になっているのではないかなと思うことはあります。
John
もしかしたら、ラグビーの方が勉強になったのでしょうか?
宮島
確かに、ラグビーの方が社会人として生きていく上では勉強になりました。
John
それは、人脈であったり、考え方であったり。そういうことでしょうか?
宮島
そうですね。先ほど申し上げました通り、努力すれば、必ず報われるということを学んだと思います。
John
宮島さんの努力の仕方について聞きたいと思います。どのようなお考えで努力されてきたのでしょうか?
宮島
限界超えるまでやりきったら、必ず道は開けるという、そういう努力の仕方をしています。
John
それは素晴らしいですね。実際に限界を超えるまでやることをやっている人は、あまりいないと思います。
どういった限界を設定しているのでしょうか? どこまでいくと限界なのですか?
宮島
自分の大学生活を全てラグビーに捧げる、というようなイメージです。
John
なるほど! 朝から晩まで練習する!ということですね。
宮島
そうですね。大学時代は、誘惑も多いですよね。僕はとにかくラグビーをやっていました。関西学院は、おしゃれなイメージの大学です。ミッション系の大学でサークル活動も華やかです。最初は、「大学に入ったら遊ぶ」予定だったのですが、ラグビー部に入部してしまったので(笑)。朝、大学に行って練習し、帰って家で筋力トレーニングをする。僕は試合の経験がないので、「いい試合」と言われている試合のビデオを何百回も見続けました。言ってみれば、それだけです。
John
ストイックな大学生活ですね! 宮島さんが副キャプテンとして何かこだわっていたことはありますか?
宮島
率先してしんどいことに取り組むこと、ケガをしないことです。僕の学年はレギュラーがとても少なかったということもありましたし。キャプテンもケガが多かったので、監督からも「お前は絶対にケガするな」と言われていました。
John
どのようにケガを防止されていましたか?
宮島
練習に集中し、徹底してやりきること、筋力トレーニングを徹底してやることですね。
John
それは、ビジネスで失敗しないことと似たような感覚なのでしょうか?
宮島
そうかもしれません。ビジネスでは、成功するまでやり続けることが大事で、努力さえすれば、結果が出ると思います。その努力をする人が圧倒的に少ないのですが。一方、スポーツは、努力してもなかなか結果が出にくいこともあります。もちろん、本人のセンスの問題もあるかとは思いますが。ビジネスの場合は、努力した量によって必ず結果が返ってきます。ビジネスでは努力は絶対に裏切らないと思っています。それはリクルート時代の上司に言われたことも大きく影響しています。その上司に言われたのはスポーツマン、例えばイチロー選手は3割を打つ。でも我々は打てない、10回に3回もヒットを打てません。でもこう言われました。じゃあビジネスマンはイチロー選手が10回打席に立つところを100回、1000回立てばいい。
イチロー選手は10回打席に立って結果を残せる。ビジネスマンは本人がその気になれば100回、1000回打席に立てる。そこで3本ヒットを打てばイチロー選手と一緒だと。これが私の原点かもしれません。やりきるということの。
2 「『誠実にやる』ということです。しっかり効果を出して、しっかりクライアントのことを考える。しかも、クライアントのことだけを考えるので無く、自分たちも適切に儲かるようにするということです」(宮島)
John
宮島さんは、リクルートに新卒で入社されて、教育関連の事業部で11年、不動産関連事業部で4年の計15年間勤められていますね。リクルートで起業している仲間を見ると、3~5年で独立するなど、早い段階で別の道に行く方が多いですが、なぜ15年も続けることができたのですか?
宮島
あまり深く考えていませんでした(汗)。起業したいという思いもありませんでしたし、仕事も楽しかったですし、期待もしてもらっていて営業成績も非常に良かったので、気持ちよく仕事をさせていただいていました。
John
そうでしたか。宮島さんは、新卒で入社したリクルートのときに、何か特にこだわった点はありますか?
宮島
お客さまにちゃんと価値を伝えることです。
John
どのような価値をお伝えになっていましたか?
宮島
広告の効果ですね。私が担当している限りは、そのお客さまから大切なお金をいただいているわけですので、その広告効果をきっちり返すことを常に念頭に置いていました。そうでなければリピート受注することはできません。私は教育関係のルートセールスでしたので、焼畑農業(とにかく受注すればいい、効果や価値は関係ない)のような営業は好きではありませんでした。しっかりと効果を返し続けるからこそ、継続して関係が保て、広告を受注ができると考えていたのです。
John
リクルートの教育関係の仕事とは、どのような仕事だったのでしょうか?
宮島
学生募集メディアの広告営業ですね。“リクルート進学ブック”という大学、専門学校選びの進学雑誌があって、その広告営業をしていました。
John
最初から教育関係の仕事を希望されていたのですか?
宮島
実はリクルートという会社の主軸となる就職関係の部門を希望していましたが、内定者アルバイトで配属されたのが、教育関係の部門だったので、正直に就職関係の部門を希望していると言えなかったのです(汗)。結局11年間教育関係の部門でした。結果的には今の仕事に繋がっているのでとても感謝しています。
John
ルートセールスは、先輩方が作ったルートを、宮島さんが引き継いで営業に行くという方法ですよね。先輩が「素晴らしい価値」をお客さまにご提供していたら、そのルートを引き継ぐときにプレッシャーを感じることもあったかもしれません。引き継ぎのときに注意した点はありますか?
宮島
「誠実にやる」ということです。できないことはできないと正直に言うことです。しっかり効果を出して、しっかりクライアントのことを考える。しかも、クライアントのことだけを考えるのでなく、自分たちも適切に儲かるようにするということです。当然、会社から給与をいただいているわけですから。ここを勘違いしている営業担当者はたくさんいらっしゃると思います。お客さまからお金をいただくのが苦手な営業担当者もたくさん見てきました。
John
そうですね、(お客さまと自分たちの)両方ということが大切ですね。
宮島
はい。(お客さまと自分たちの)両方にメリットがないと、営業担当者としては失格だと思います。そういう営業担当者は、お客さまのほうだけを見て、とにかく値引いて会社の利益を全く考えなかったりします。逆に、自分と会社の利益だけ考えていて、お客さまのほうを全く見ていない営業担当者もいます。バランスが悪いという感じでしょうか。
そういう意味でいうと、私は多分、バランスがとても良かったのだと思います。会社の利益もしっかり出す。自分自身の成績も良い。そして、お客さまの業績も良い。そのためには、相当、仕事にコミットして考えないといけません。そうでなければ、お客さまに提案することもできないと思います。また高校生という読者にも配慮しなければならないので、三方が大切だと常に思っていました。
3 「企画書にマーカーを引いた、それだけでも、お客さまはこんなにも感動するのだなと気付きました」(宮島)
John
リクルート時代の営業経験は、今、宮島さんが大学の設立準備室室長として働かれている中で、活かされていると思いますが、いかがでしょうか?
宮島
はい。とても活かされています。基本は全てこのときに学びました。でも実は、営業をしていたときよりも、自分がクライアントになったときのほうが勉強になりました。リクルートから、クライアントだった辻調理師専門学校グループに転職しましたので、広告営業する側から広告を買う側になりました。これが大きな転機でしたね。営業を見る目が変わりました。いい営業担当者は確かにいるんだなとも実感しました。辻調理師専門学校は日本を代表する学校ですので、営業に来られる方も100人を超えます。その中でやはり良い営業をする方がいらっしゃって、信頼ってこう創るんだということも学ばせていただきました。
John
そうなのですね。宮島さんは、辻調理師専門学校に移られる前に、不動産関連で4年、お仕事をされているかと思います。教育関連から不動産関連に変わるときに、違和感などはなかったのでしょうか?
宮島
違和感はたくさんありました(笑)。そもそも業界のルールが全く違うので。
John
なるほど(笑)。不動産関連では、宮島さんは何をされていたのですか?
宮島
SUUMOの雑誌やWEBの営業、営業マネジャーをやっていました。
John
その間に、宮島さんは、年間最優秀マネジャー賞を受賞されていらっしゃるのですね。どのようにしてこうした賞を獲ることができたのでしょうか? 何人中、どのくらいの人数の方が受賞されるものなのですか?
宮島
マネジャーなど含め営業担当者が何百人もいますので、その中で事業部の年間のナンバーワンということで、何百人の中の1人です。
John
本当に素晴らしいですね! 宮島さんは、どのようにして、そこに到達されたのでしょうか?
宮島
それはもう、当たり前のことを当たり前にやるだけです。学校関連のときと同じで、お客さまのことをちゃんと考えて、かけていただいた費用に対してちゃんと(価値を)お返しできるかということに尽きます。適切なときに、適切な提案をするということですね。例えば、「お礼をちゃんと言う」ということも大切です。
一つ、例を挙げたいと思います。私が入社2年目の時に先輩に教わったことです。先輩に企画書作成の指導をいただいたときのことでした、先輩が企画書にマーカーを引かれていたのです。そのお客さまとの商談で大事なところに。商談で大事なところというのは、お客さまも分かっているものなので意味があまりないと思いますよと先輩にお話しました。しかし先輩から、「このポイントにマーカーを引く、こういう細かいことがとても大事なんや」と言われまして、僕も言われるまま自分で作っていた企画書にマーカーを引いて、あるお客さまに出しました。そうしたら、提案の満額で決まったのです。(売り上げが)4000万円だったお客さまが8000万円になりました。僕は、マーカーを引いただけですが、そのお客さまには、「お前、うちのことよう考えとる」と言っていただきました。企画書にマーカーを引いた、それだけでも、お客さまはこんなにも感動するのだなと気付きました。そういう細かいところが大切なのだと気付かせてくれました。
John
なるほど、勉強になるお話ですね! 多くの方にとって良いヒントになると思います。
宮島
ありがとうございます。そこで大きな商談がまとまりましたので、以降無理して営業しなくてよくなりました。予算の貯金ができたからです。1つ貯金ができると、次のお客さまにも余裕を持って提案ができるようになります。そうして全てのお客さまに良い提案ができるようになりますので、10年ほど、ずっと(予算を)達成し続けられました。無理な営業をする必要がないので、常にお客さまに最適な提案ができるようになりますよね。一番良くない営業は、「月末で数字が足りないときに、要らん商品売って……」という営業です。それを僕は一切しなくてよかったのです。
John
良いお話ですね、ありがとうございます。ちなみに、きっかけとなったマーカーは何色でしたか?
宮島
黄色です。いわば、「幸せの黄色いハンカチ」(笑)。本当にそうなんですよ。マーカーを引いてお客さまに企画書を出して、お客さまから「お前、うちのことよう考えとる」と言っていただける。「こんなの当たり前だ」と思っていたのですが、当たり前ではなかったのだと思います。
John
よく分かります。当たり前なことを当たり前に行う人は、そう多くはないかもしれませんね。宮島さんの商談スタイルについて教えてください。
宮島
教育関連の部門のときは、商談は年に1回でしたので、普段はお客さまの募集状況を把握することや、こまめに訪問して関係を構築していました。例えば学校の場合は、オープンキャンパスの来場者数はどうか、今のメディアの反応はどうかというような、お客さまの課題をずっとヒアリングしている感じでした。
1年間かけて課題や解決しなければならないことを全部ヒアリングし、そして年1回のプレゼンでクライアントにしっかり提案する。教育関連のときは、そうした営業スタイルでした。
John
宮島さんはユーモアがある印象が強いのですが、営業のときも面白いことを話したりされましたか?
宮島
いえいえ、ユーモアなんてないですよ。普通の営業をしていただけです。
John
営業で「自分自身を出す」ということは?
宮島
意識はしていませんでした。無理に自分を出そうとすると、提案がゆがんでしまいますから。より普通に、とにかく良い提案を当たり前にすることを心掛けているつもりでした。
John
意外です。宮島さんは一見、「濃い関西味」のように見えて、あっさりされていますね。
宮島
はい、本当にそうだと思います(笑)。関西味のようでいて、さっぱり派なのかもしれません。
4 「伸びやすい人は、素直な人です。これに尽きると思います。自分のやり方に固執しない人が一番伸びると思います」(宮島)
John
宮島さんは、辻調理師専門学校には2006年に入社されたのですね。なぜ入ろうと思ったのでしょうか?
宮島
それまでずっと学生募集や集客のお手伝いをしてきて、一定の達成感もありました。さらに、ずっと広告を売る仕事だったので、実際にリアルな事業はどうなのかなと興味があり、リクルートで評価された実力を試したいなと思ったのです。辻調理師専門学校が素晴らしい学校でしたので、なんとか営業時代のお返しをしたいという気持ちもありました。それで、思い切ってリクルートを辞めました。
John
リクルートは、社風的に起業家を生み出したりしますよね。宮島さんは、起業しようとは思わなかったのですか?
宮島
今もそうなのですが、私は、起業したいとは思いません。
John
それはなぜでしょうか?
宮島
そんな能力もないですし、明確に「自分でやりたいこと」がないのだと思います。私は、「こういうものをやってほしい」など、要望されたものに対してフィットするタイプだと思います。頑張ってほしいとか、助けてほしいといったものに対して、フィットするタイプ。あまり自分で一から実現したいというタイプではないです。しかし、今回のiU設立は、自分のキャリアの総決算だと思っています。今までなかった自分のやりたいことが、どうしてもやりたいことができて、まさにドンピシャだと思っています。
John
ああ、なるほど。そうすると、(今回の大学は)起業と一緒ですよね。
宮島
起業までは行きませんが、とても楽しいですよ。自分のやりたいことと、今までのキャリア、世の中のニーズが一致していますので、これほど楽しいことはないと思います。
John
それは素晴らしいことですね! 辻調理師専門学校で10年間働かれて、募集とPRの責任者をされて、3校の副校長をやっていらっしゃいましたね。
宮島
はい。そうです。校長が1人ですので。東京、フランス、大阪に7校あったうちの3校が私の担当でした。
John
3校をどのように担当されていたのですか?
宮島
学生に教えるわけではなく、組織をマネジメントする仕事でした。
John
教育、不動産、そして今度は料理・製菓だったわけですよね。マネジメントで一番必要なことは何だと思いますか?
宮島
僕自身があまりできていないかもしれませんが、個人の能力を伸ばすことと、全員で同じ目標に向かうことだと思います。それをリードするのがマネジメントする人間の仕事だと思います。
John
どうすれば人は伸びるとお考えですか。伸ばしやすい人と、そうでない人がいますよね。
宮島
伸びやすい人は、素直な人です。これに尽きると思います。自分のやり方に固執しない人が一番伸びると思います。
John
素直な人には、どのように声をかけて、さらに伸ばすのですか?
宮島
基本的に、僕は放牧型です(笑)。あまり細かいことは言わず、大きな方針だけを示して、あとは個人の工夫で動いてほしいタイプです。なぜそうするかというと、僕自身がそういう風にされるのが一番心地よいからです。お客さまに向き合い、自分自身のやり方を見つけていく。たまに目標からずれることがあれば、声をかけ再び目標へと導く。メンバーはさまざまなことを周りから学び吸収することで、本人ですら思ってもいなかったような成長をしていくと考えています。
5 「これから必要なのは、ITの知識が分かっていて、英語を喋ることができ、そしてビジネスをドライブできることだと思うのです」(宮島)
John
それから、宮島さんは、2016年には東証1部上場のエボラブルアジアの執行役員となり、東京に行くことになりましたね。現在は役員を退任されてアドバイザーということですが、具体的にはどのようなお仕事でしょうか?
宮島
人をご紹介したり、会社と会社をお繋ぎしたりといったことです。例えば開発に困っているという会社があれば、エボラブルアジアに紹介するという感じです。
John
なるほど、宮島さんは、人と人を繋いだりされるということですね。
そしていよいよ、ここからは、「iU」についてお伺いしたいと思います。2019年に、室長として本格的に全国を回られて、今、どのような準備をしているのでしょうか。なぜ墨田区に開学することになったのですか?
宮島
墨田区で開学することになったのは、墨田区が23区で唯一大学がない区であり、大学のある街づくりを進めていて10年くらい大学の誘致をされていたためです。
母体の電子学園日本電子専門学校の経営が非常に順調で、新宿の校舎は学生でいっぱいです。大学を作るときに、専門学校をやめて大学を作るのではなく、専門学校は従来どおり運営し、さらに新しく大学を作るのが我々の大学の作り方です。大学用地を探していたときに墨田区に出会い、墨田区も人づくり、街づくりを進めていることを知りました。我々も、ずっと人づくりをやっていましたので、職業教育を行う画期的な専門職大学を作りたいということを墨田区の方にお話してみたら、墨田区側も「いいですね」と言っていただき、トントン拍子に話が決まりました。
John
大学を作ることになった流れについて教えてください。
宮島
55年ぶりに学校教育法の一部改正により新しい高等教育機関として、職業教育を行う専門職大学の設置が決まりました。私共は長らく職業教育を実直にやってきましたので、この新しい専門職大学設置にチャレンジしようということになりました。
John
今、一番日本に必要な大学になりそうですね!
宮島
ありがとうございます。私もそう思っています。私自身が強く感じていたことですが、やはり日本にはビジネスリーダーが必要だと考えています。結果的に起業するのもいいのですが、今の日本で一番足りなくて必要なのは事業をドライブしていく人です。そういう人を、iUでは育てていきます。
John
一番役に立つ人材のスキルを学ぶ大学なのですね。具体的には、どういうことができるようになるのでしょうか。
宮島
これから必要なのは、ITの知識が備わっていて、多国籍な環境でビジネスを進めるために必要な英語を話すことができ、さらに新しいアイデアを生み出し、事業として実現できることだと思うのです。そのために必要な知識・スキルを学んでいくカリキュラムを用意しています。
6 「『学校を辞めたらあかん』と僕は思っています」(宮島)
John
iUでは、何歳から何歳までが対象ですか?
宮島
年齢的には、下は18歳、高校新卒から。上は何歳でもかまいません。65歳の方も入学を予定されており、また親子で入学を希望されている方も複数いらっしゃいます。
John
受験はどういった形式でしょうか?
宮島
受験は、既存の大学と同じ、AO入試、一般入試、推薦入試で行います。
John
受験の問題は難しいのですか?
宮島
基礎学力は問いますが、それほど難しいわけではありません。センター入試レベルです。僕らは、高校時代に高校の授業を面白くないと思っている子、学生活動をしている子、生徒会をやっている子など、自分で考え行動している子に入学してほしいと思っています。
単純に良い成績を取りたいというよりも、僕らはどちらかというと、高校時代に起業をしている子、大学に入って起業したいと考えている子、あるいは面白くないから暴れてみたいなど、そうした思いを持っている子にも来てほしいなと思います。
iUに興味を持ってくれている子から直接連絡をもらうこともありますが、進学校に通う高校生が多いですね。僕の取材記事などを読み、Facebookで友達申請してきて、直接話をしたいと言ってくれる子も多くいます。慶応義塾大学のSFCの希望の高校生や、東京大学からiUに進路変更を考える子などもいます。
John
いろいろな子が注目してくれているのですね! そうした子たちにiUが「面白い」と思い続けてもらえるようにすることも大切ですね。また、起業したら、学校に通う時間がなくなってしまうかもしれないですが、そのあたりは何か工夫があるのでしょうか?
宮島
大学校舎の中にコワーキングスペースを作っていますので、そこで起業してもらうのが良いのではないかと思います。大学で登記できるようにしてありますので。資金も支援していきます。
John
なるほど。そうすると、大学を辞めなくても、起業ができますね。
宮島
「大学を辞めたらあかん」と僕は思っています。例えば、海外で働くことを考えるとビザの問題があります。大卒のほうが絶対にいいです。私が会っている起業家の学生で、大学を中退しようと思うと言っている学生には、「絶対辞めたらあかん。どんなことがあっても、卒業はするべきだ」と伝えています。
John
宮島さんは、留学生についてはどのようにお考えですか?
宮島
学生に多様な人がいることを感じてほしいので沢山の留学生に入学してほしいと思っています。
John
部活動はどうでしょう?
宮島
部活動は学生が、自分たちで考えて作ったらいいのではないかと思っています。eスポーツ部を作りたいと言っている子もいます。あとはドローン部などもできるかもしれませんね。新しい大学ですので、学生自身が考えて作ってくれたらいいなと思います。
John
理想の男女比はありますか。
宮島
できれば半々がいいですね。
John
ライバルとなるような大学はありますか?
宮島
今のところありません。
7 「それが僕の『墨田バレー構想』です」(宮島)
John
iUが協業できそうな、例えば秋田の国際教養大学、国際基督教大学、立命館アジア太平洋大学など、9つくらいの日本の大学が英語で単位が取れると思うのですが、そうした大学とコラボレーションすることも考えられているのですか?
宮島
ぜひコラボレーションさせていただきたいですね。
John
エッジネクスト(次世代アントレプレナー育成事業)や東大、慶応、早稲田、九州大学、旧帝国大学を核としたアントレプレナーシップ教育などとのコラボレーションなどもいかがでしょうか?
宮島
いいですね、そうしたこともやっていきたいとは思っていますが、まだもう少し先かもしれません。まずは自分たちのこの大学をちゃんと形にして、良い人材を育てていかないといけません。足元を固めるのが優先です。そして、iUは墨田区に作りますので、まずは、地元に愛される大学にならなければと考えています。
John
素晴らしいお考えですね! 地元の方に配慮した特別な取り組みなどは、何かありますか?
宮島
はい、考えています。例えば、学食や図書館を開放することや、プログラミング教育を墨田区の小中学校で行う、といったことを考えています。「墨田区ではプログラミング教育が受けられるので、墨田区に住みたい」という声が、親世代で上がっているようです。プログラミング教育が進んでいますので、墨田区の小中学校で学び、高校も地元。そして大学はiUで学び、そして墨田区で起業してもらう。こういうことが実現できたらいいなと思っています。
墨田区では、かつて1万社あった中小企業が今2000社くらいしかなくなっていると言われています。iUが開学したことによって、学生が墨田区で起業する。iUの優秀な学生を求めてベンチャー企業が墨田区に集まってくるようなことを実現したいと思っています。それが僕の「墨田バレー構想」です。
John
墨田バレー構想、いいですね!
iUは、若い人にスタートアップを起業してもらうのが目的なのか、後々のリーダー、40歳くらいからチャレンジングな新規事業を立ち上げられるようにするのが目的なのか、お考えがありますか?
宮島
それは、どちらでもいいと思っています。学生本人が選ぶことであって、僕らは火をつけるだけであり、大学からすぐ飛び出して経営者になるか、10年後、20年後に独立するかは本人が選んだら良いと思います。
John
なるほど。理想としては、全員が起業することを望まれていますか?
宮島
学生全員に起業にチャレンジしてもらって、それがうまくいけば一番いいかなと思っています。しかし、うまくいかないことが多いとも思います。
John
私もiUで客員教授をさせていただいていますが、約200人もの方が客員教員をされていますね。
宮島
そうですね、開学すればもっと多くなるのではないかと思います(笑)。
John
客員教員には、どのような人材を選ばれたのですか?
宮島
まず、うちのコンセプトに共感していただいている方々です。
8 「とことんやりきる」(宮島)
John
最後に、これまでを振り返ってお聞きしたいと思います。さまざまなキャリアを積まれた後に、iUを開学されますが、宮島さんにとって、一番のビジネスのやりがいとはなんでしょうか?
宮島
今は、日本の大学教育に一石を投じられるような大学を作る機会を与えていただきました。教育でしか国は良くならない。しかし、既存の大学教育ではなかなか国をより良く変えることは難しいと言われている中で、国が新しい教育を行う大学を作ると決め、電子学園がその大学を作る。そしてその大学設立の準備室室長というポジションをもらえたことは、この上ない自分のやりがいとなっています。
大学は全国で800校くらいしかないですし、新規で大学を立ち上げるのはなかなかチャンスが巡ってこない。本当に、今とても、やりがいはもちろん責任も感じています。
John
まさに、キャリアの総決算ですね!
宮島
はい。力の限りやり続けたいと思っています。
John
私も大学で教えさせてもらったり、自分で全国の大学の講演を巡ってツアーなどをさせてもらったりする中で、ハーバードやスタンフォードなどさまざまなところで学んできて、博士課程を取るような賢い方々とたくさんたくさんお会いしてきました。
しかし、世界には寂しい思いをしている人も多く、より良い社会を作ろうと考える人たちの数も足りていないと感じています。ただ活躍する人を生み出すのではなく、世界の課題を自分事として捉える優しさを持ち合わせたリーダーが、今後求められるのではないでしょうか。例えばシリコンバレーを見ても、確かに便利にはなりましたが、所得格差などの課題が根強く残っています。そうしたことを考えると、iUでは、宮島さんが考える、本当に良い人間教育ができるといいなと思います。
宮島
本当にそうですね。ハートを持った、熱い人間。世の中の負を解消したり、世の中を良くしたりする子を育てたいなと思います。自分のことだけ考えるのではなくて、世の中を良くしたいという起業家を育てたいのです。
John
その通りですね。
最後に、宮島さんにとって、世の中を良くする学生を生み出すための志、宮島さんにとってのイノベーションの哲学とは、一言で言うと何でしょうか?
宮島
情熱を持って「とことんやりきる」ということだと思います。成功している人は皆そうではないでしょうか。情熱を持って最後までやりきる、やり続けるのがイノベーションだと、僕は思っています。
John
なるほど。素晴らしいですね! ありがとうございます! 最後に、中小企業の経営者の方々に、お伝えしたいメッセージなどはありますか?
宮島
ぜひ、iUに見に来ていただきたいです。そしてご子息を入学させてください。そうすると、この大学で、さまざまなネットワークができます。こうしたネットワークは非常に有効ではないでしょうか。起業家を志す子たちが、たくさんの経営者から、帝王学を授けられるわけですから。そうしたものは、他人に授けてもらったほうがいいと思いますので、ぜひ、いらしてください!
John
中小企業とイノベーターたちのネットワーク、素晴らしいですね! 愛りがとうございます!
本日は、iUの開学準備で大変にお忙しい中、宮島さんにたくさんお話いただきました。誠に、愛りがとうございます! 開学が本当に楽しみです。素晴らしい大学となりますように!
以上
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