書いてあること
- 主な読者:多忙なため、睡眠時間を削るなどしていて、あまり休めていない経営者
- 課題:昼夜を問わない不規則な働き方に慣れてしまって、休息のポイントが分からない
- 解決策:質にこだわった睡眠を取る、アクティブ・レストなどの軽めの運動を取り入れる
1 経営者が取るべき「質の良い休息」とは
元気でハツラツとした経営者は周囲を明るくします。活力ある経営者の姿は社員にとって安心感がありますし、取引先などからは、経営者の活力が「会社の活気」ととらえられ、元気な経営者が経営する会社は一目置かれます。
健康の秘訣はさまざまですが、この記事で取り上げるのは「休息」です。経営者には労働時間という概念がなく、昼夜を問わず不規則に働き、休みの日も何かしら仕事のことを考えているという人が多いでしょう。そんな忙しい経営者だからこそ、
仕事でより良い結果を出すための休息、すなわち「質の良い休息」を取ることが大切
です。この記事では、質の良い休息を取るために大切な2つのポイントを紹介します。
- 質にこだわった睡眠を取る
- アクティブ・レストなどの軽めの運動を取り入れる
2 質にこだわった睡眠を取る
1)睡眠不足が招くパフォーマンスの低下
睡眠時間を削って仕事に打ち込む経営者は多いです。しかし、睡眠不足は判断力や思考力に大きな影響を及ぼします。例えば、厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針2014」では、
- 人間が十分に覚醒して作業を行うことができるのは起床後12~13時間が限界
- 起床後15時間以上では酒気帯び運転と同じ程度の作業能率まで低下する
とした研究結果を紹介しています(なお、「睡眠指針2014」は2023年12月に改訂され、「健康づくりのための睡眠ガイド2023」としてまとめられました)。仕事のパフォーマンスを上げたいなら、睡眠時間を削るのではなく、むしろしっかり眠ることが大切です。
2)時間にこだわるよりも質にこだわる
「睡眠時間は8時間がよい」「睡眠サイクルは90分なので、その倍数で起きるのがよい」といった話を聞くことがあります。ですが、睡眠時間や睡眠サイクルには個人差があるため、必ずしも時間だけにこだわる必要はないでしょう。
睡眠時間が極端に短いのは問題ですが、
- 大切なのは、自分にとっての最適な睡眠時間や睡眠サイクルを知り、習慣化すること
- そのための第一歩は、記録を残し、自分の睡眠の特徴をつかむこと
です。
例えば、毎日の就寝時間や起床時間、「スッキリ起きられた」「だるさを感じた」などの寝起きの状態、「集中できた」「午後はずっと眠気を感じていた」などの日中のパフォーマンスなどを、簡単に記録します。睡眠時間や睡眠効率(実際の睡眠時間÷ベッドにいる時間×100)を計測できるウエアラブルデバイスなどもあるので、活用してみるとよいでしょう。
1週間の記録でも、どれくらい睡眠時間を確保すれば、パフォーマンスを発揮できるのかをある程度把握できます。例えば、7時間の睡眠で十分なパフォーマンスを発揮できるのであれば、毎日24時に就寝して翌朝7時に起床するなど、
就寝時間と起床時間をできるだけ一定にすることが肝心
です。
3)「寝だめ」よりも「短い昼寝」
普段は睡眠不足になりがちな場合、時間に余裕がある日に「寝だめ」をしようとする人がいますが、実はあまりお勧めできません。一時的な疲労回復には効果があるという研究もありますが、睡眠不足の日とそうでない日とで睡眠時間の長さに開きがあると、体内のリズムが崩れ、だるさなどを感じるようになるといわれているからです。
睡眠不足を解消したい場合、寝だめよりも効果的といわれているのが、
ごく短時間(15~20分)の昼寝
です。毎日の就寝時間と起床時間を一定にした上での昼寝であれば、体内のリズムも崩れにくいですし、もともと13時~15時前後の時間帯は、昼食を取ったのと相まって、疲労や眠気を強く感じやすいので、判断力や集中力の回復にも効果的です。ただし、昼寝が20分を超えると深い睡眠に入ってしまい、かえって覚醒に時間がかかる場合があるので注意しましょう。
4)体内の温度を下げると眠りやすい
人間は、睡眠時には熱が皮膚の外に放出され、体内の温度が下がります。そのため、就寝前に体内の温度を下げると寝つきやすくなるといわれています。
例えば、就寝前にぬるめのお風呂や足湯につかると、体を温めた後に手足表面からの熱放散が増え、体内の温度が低下しやすくなります。また、睡眠中は電気毛布の加熱を切り暖房の温度を下げるのも効果的です。逆に、睡眠中に電気毛布を利用したり暖房の設定温度を高くしたりすると、体内の温度が上昇して夜中に目覚めやすくなってしまいます。
5)寝酒は控える
就寝前にお酒を飲むいわゆる「寝酒」が習慣となっている人もいるかもしれません。たしかにアルコールには、一時的に寝つきがよくなり睡眠が取りやすいと感じさせる効果があります。
ただし、こうした効果があるのは最初だけです。一定の時間がたつと、アルコールが体から抜けていく反動で眠りが浅くなり途中で目覚めてしまうなど、睡眠の質が悪化します。また、毎日アルコールを飲んでいると寝つきの効果も薄れ、飲酒量を増やす原因にもなります。
3 アクティブ・レストなどの軽めの運動を取り入れる
1)疲労回復のためにあえて体を動かす
疲労回復のためには、「体を休めたほうがよいのでは?」と考える人も多いのではないでしょうか。しかし、軽めの運動は疲労回復に効果的とされています。
例えば、アスリートの中には、ハードな試合を行った翌日に「アクティブ・レスト(積極的休養・積極的休息)」と呼ばれる軽めの運動をする人が多いです。アクティブ・レストを行うと、血流が良くなって疲労物質の排出が促され、疲労回復の効果が高まります。また、幸せホルモンとして知られる「セロトニン」の分泌が高まり、不安やイライラの解消にもつながります。
2)アクティブ・レストは頑張り過ぎないことが大切
アクティブ・レストでは、
20~30分程度のウオーキングなど頑張り過ぎない程度の運動をするのが基本
です。「1駅分を歩く」「2~3フロアの移動であれば、エレベーターではなく階段を使う」などでも構いません。ウオーキングなどで体が温まった後にストレッチで筋肉をほぐすと、さらに効果的です。逆に激しい(強度の高い)運動をすると、かえって疲労が蓄積される恐れがあるので、長時間や速いペースでのランニングなどは避けましょう。
動画やアニメーションなどで軽めのトレーニングメニューを紹介してくれたり、引き締めたい部位や運動時間を選択するだけでお勧めのトレーニングメニューを提示したりするスマホアプリなどもあるので、活用してみるとよいでしょう。
3)話題のマインドフルネスに挑戦
アクティブ・レストのように積極的に体を動かすわけではありませんが、姿勢や呼吸法などを意識して瞑想する「マインドフルネス」に挑戦してみてもよいでしょう。マインドフルネスに取り組むことは、集中力の向上やストレス軽減の効果があるとされています。
マインドフルネスで、よく知られているのが「呼吸瞑想法」です。10~15分程度を目安に、
- 背筋を伸ばして椅子に座り、足を肩幅に開いて肩の力を抜く
- 目を閉じる(または視線を斜め前に落とす)
- 体全体で自然に呼吸し、呼吸に意識を向ける
- 「スピーチ原稿を作らなければ」など、雑念が湧いて呼吸に集中できなくなったら、「スピーチ、スピーチ」など、あえて雑念の内容を心の中でつぶやき、それから呼吸に意識を集中させる
といったものです。なお、瞑想をスムーズに行えるようサポートしてくれるスマホアプリなどもあるので、併せて活用してみるとよいでしょう。
以上(2024年3月更新)
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画像:pixabay