先日、今年の1月末ごろから日本でも大いに盛り上がっている音声SNSを使い始めました。今日はそのツールを通じて私が改めて学んだ「進行役の秘訣」を、皆さんにお伝えします。
この音声SNSでは自由に「部屋」を作って会話ができるため、参加者はさまざまなテーマで座談会を開催しています。ただ、映像や画面の共有は一切できず、音声だけでコミュニケーションを取る仕組みなので、通常の座談会以上に「進行役」の役割が重要になります。たくさんの座談会を体験する中で、私は座談会やミーティングの進行役には、「共有力」「展開力」「行動力」の3つの力が重要だと実感しました。
まずは「共有力」です。「音声しかない」SNSなので、進行役は情報や状況を参加者に共有しなければなりません。進行がうまい人は、スピーカーの発言が難しすぎる場合、すかさずその内容を簡潔に、分かりやすく補足説明します。また、座談会が盛り上がってくると、スピーカー同士にだけ通じるローカル話も出てきがちですが、それもかみ砕いて、もしくは聞き手が分かる事例に置き換えて共有します。こうして、「置いてきぼり」が出ないようにしているのです。
共有するのは情報だけではなく、「時間の共有」も含まれます。進行役は、スパッと短く発言する、話をまとめる、1時間など決められた時間できっちり終わるなど「他の人の時間を共有している」意識を持って座談会を進行しています。
次に「展開力」です。座談会では話をテンポよく進めるために、話題を次々と展開していかなければなりません。進行のうまい人は、この「展開力」が抜群です。スピーカーに質問して同じ話を掘り下げるだけではなく、スピーカーの話を受けて、「今の話で思い出した話が一つあって」「今の話を別の観点で見ると」と続け、関連しつつも少し違う別の論点にスムーズに移っていくのです。そうすると聞き手は、スピード感とたくさんの情報量、思考量を感じることができ、充足感が得られるのです。
こうした「展開力」を身に付けるには、圧倒的な知識と経験、それに基づく自分自身の深い考察が必要です。そのために欠かせない力が、「行動力」です。書籍を読む、人の話を聞くなど、とにかくさまざまな体験をする行動力が源泉になっているからこそ、上手な進行役は、スピーカーからもさまざまな話を引き出せるのではないでしょうか。
今、皆さんにお伝えした「共有力」「展開力」「行動力」は、日ごろのビジネスでも大いに求められます。例えば、最近はオンライン会議でもカメラをオフにして音声だけで話をすることが増えています。音声だけだと、集中できる会議とそうでない会議との差が顕著になりますが、その原因の一つは進行役の力量です。最近、オンライン会議がいま一つだなと感じている人は、「共有力」「展開力」「行動力」を考えてみてください。
以上(2021年3月)
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画像:Mariko Mitsuda