今日は、皆さんに考えてほしい言葉があります。それは、「次工程はお客様」。お客様に対して行うのと同じような丁寧さで、次の工程の担当者が仕事を進めやすいようにするという趣旨の言葉です。皆さんも、一度は聞いたことがあるでしょう。
次の工程の担当者が仕事を進めやすいようにするというのはビジネスの基本ですし、私自身も、実践すべき大切なことだと思っています。それを分かった上で、私はこの言葉の「次工程」という部分について、皆さんに問いたいことがあります。
皆さんが「次工程」と認識している仕事は、本当に次の工程の担当者、つまり自分以外の人間がやるべき仕事なのでしょうか。このように感じるようになったのは、最近、当社で在宅勤務を行うことが増えてきたからです。
在宅勤務の特徴は、「会わない、見えない、話さない」です。電話やオンラインツールがあるとはいえ、会社で一緒に仕事をしているときに比べ、「会って、見て、話す」機会は確実に減ります。それを補うため、在宅勤務では、チャットツールやグループウエア、メールなどを駆使して、文書形式でうまくコミュニケーションを取らなければなりません。在宅勤務体制が始まる前、私は皆さんが「うまく情報を発信できるだろうか」と心配でした。しかし、結果は逆で、「終わりました。確認をお願いします」「確認はまだでしょうか」「次の工程に進めてください」など、大量のメッセージが飛び交うようになりました。
在宅勤務では、質問にその場ですぐに答えられるわけではありません。文書形式のメッセージを読み、文書で返すという「手数」が発生します。大量のメッセージが管理職などに集中するようになった結果、一部の人は、会社で仲間と仕事をしていたときよりも仕事量が増えています。
そこで、皆さんにもう一度問います。今まで皆さんが「次工程」と思っていたことは、本当に皆さん自身が考え実践しなくてよいことですか。あるいは、本当に上司や先輩から了承をもらわないと、決めることも次に進めることもできないことですか。必ずしもそうではないはずです。
昔は、会社が社員一人ひとりに仕事と権限を割り当てることで、自然と「自分の工程」と「次工程」が決まっていました。しかし、環境が目まぐるしく変化する今の時代、従来通りの工程をなぞるだけでは、生き残っていくことはできません。
皆さん、今日から「一つ次の工程も自分で進める」ことを意識してください。今までの「次工程」は「次工程」ではなく、「自分のやるべきこと」なのです。私も、直属の上司や先輩も、皆さんの「自分の工程」を広げられるよう、仕事と権限の移譲について柔軟に対応することを約束します。
ですので、次々にメッセージを上司に送る必要はありません。自分の工程を広げることで、仕事は進み、全員が一段レベルアップします。皆さん一人ひとりが「新しい次工程」に挑めば、組織が新しく生まれ変わるでしょう。
以上(2020年6月)
pj17011
画像:Mariko Mitsuda