書いてあること

  • 主な読者:現状の手詰まりの状態を打破したい経営者
  • 課題:現状を打破できるすごいアイデアが思いつかない
  • 解決策:発想・収束・評価までを60分で実施できるBBHメソッドでアイデアを生み出す

1 使えるアイデアは「300分の1」。だからこそスピード重視を

現代のビジネスではスピードが重視され、短時間で大量のアイデアを出すことが求められます。私は「300分の1法則」と呼んでいますが、

アイデアを300出しても、そのうちのせいぜい1つくらいしか世の中では通じない

ということです。ですから、本当にすごいアイデアを出したいのなら、衆知を集めて大量のアイデアを出さなければなりません。

そこで、この記事で紹介するのが、「BBHメソッド」です。BBHメソッドは、

アイデアの発想・収束・評価を、わずか60分で実施する方法

です。具体的には、次の3つの技法を活用します。

  • 発想:アイデアを出す「ブレインライティング(BW)」
  • 収束:発想をまとめる「ブロック法(BL)」
  • 評価:優秀なアイデアを選ぶ「持ち点法(Holding Point Method、HP)」

BBHメソッドは、3つの技法の頭文字をとって私がネーミングした方法です。わずか60分で実施できる優れものですので、ぜひあなたの会社でもご活用ください。

2 ブレインライティング(BW)は沈黙のスピード発想法

ここでは、私がブレインライティングを改良した「カードブレインライティング法(以下「BW」)」を紹介します。従来のブレインライティングでは、アイデアを整理し分類する際に、アイデアをカードに再度転記しなければなりませんでした。そこで、図表1のようなBWシートを考えました。アイデアをカードに記入すれば自由に動かせるので、再度転記する必要がありません。

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1)事前の準備

1.テーマを決める

まずテーマを決めます。テーマは、できるだけ具体的なものにします。

2.メンバーを選ぶ

テーマに関連のない人でも、解決力のある人は積極的にメンバーに加えましょう。メンバー数は6人が原則ですが、BWは何百人でも実施できます。

3.リーダーを決める

リーダーを1人選びます。リーダーの役割は、進行と時間チェックです。

4.机を四角型にする

机を2卓付けて四角型にし、全員がお互いの顔が見えるように座ります。

5.各メンバーにBWシートの材料を渡す

A4用紙1枚と、黄色の付箋紙(2.5㎝×7.5㎝、以下「カード」)を20枚渡します。各メンバーは、図表1のように配られたA4用紙を横長にし、最上部にテーマを書き、下にカードを貼ります。これがBWシートです。

2)リーダーの説明

ここで紹介している内容ですので、省略します。

3)会議の本番(各ラウンドを3分で実施する例)

1.リーダーがタイマーを3分にセットする

各メンバーはBWシート(図表1)を用意します。

2.第1ラウンド

各メンバーはBWシートの1列目に3つアイデアを記入します。基本的には文章にして記入し、主語・述語を入れるようにします。

3.BWシートを渡す

3分たったら各メンバーはBWシートを左隣の人に渡します。3つ書けなくても、時間になったら渡さなければなりません。

4.第2ラウンド

第2ラウンドも3分です。渡されたBWシートの2列目に自分のアイデアを記入します。1列目のアイデアと無関係なものでも、1列目をヒントに考えても構いません。ただし、1列目のアイデアと全く同じものはいけません。

5.BWシートを渡す

第2ラウンドが終了したら、速やかにシートを左隣の人に渡します。

6.第3ラウンドから第6ラウンドまで

第3ラウンド以降は、同様の作業を繰り返します。もし、時間内に3つアイデアを記入し、手元シートで上のほうに空欄があれば、そこにもアイデアを記入します。

BWはこのように進めていきます。1ラウンドが3分で6ラウンドですから、計18分。こんな短時間でも全員が全欄を記入すれば、6人×3アイデア×6ラウンド=108アイデア。たった18分で108ものアイデアが出る技法です。

3 BWのカードを一挙にまとめるブロック法(BL)

次は、BWをスピーディーにまとめる技法である「ブロック法(以下「BL」)」を活用します。これは、「KJ法」からヒントを得て私が考案した方法です。

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1)事前の準備

1.メンバーとリーダーを決める

メンバーとリーダーは、BWを実施したときと同じにします。

2.項目名を記入するカードを用意する

机はBWのときと同様に四角型にし、中央にA3用紙5枚を重ならないように敷きます。続いて項目名を記入するためのピンク色のカードを30枚用意します。

3.BWシートを配布する

各メンバーに、本人がアイデアを記載していないBWシートと、B4用紙1枚を渡します。

2)リーダーの説明

ここで紹介している内容ですので、省略します。

3)会議の本番

1.内容が似たアイデアを集めてカード群をつくる

各メンバーは、手元のBWシートに貼られたカードの中から、内容が似たもの同士を集めてカード群を幾つかつくり、手持ちのB4用紙に貼ります。ただし、1つのカード群のカードは5枚以内とします。

2.カード群の1つを中央のA3用紙に貼る

リーダーの右隣の人が、自分がまとめたカード群の中から1つを選んで読み上げ、机上の中央に敷いたA3用紙に貼ります。

3.他のメンバーが似た内容のカードを加える

出されたカード群に内容が似たカードを持っているメンバーは、そのカードを机上の中央のA3用紙に貼ったカード群に加えます。

4.カード群の項目名を付ける

メンバー全員でカード群の項目名(グループ名)を考え、ピンク色のカードに書いて貼ります。

5.次のメンバーがカード群の1つを中央のA3用紙に貼る

2番目の人が手持ちカード群の中から1つ選んで読み上げ、机上の中央に敷いたA3用紙に貼ります。以降、1回目と同様に他のメンバーが内容の似たカードを加え、項目名を考えます。

その後も同じ手順を繰り返し、全てカードを出しきるまで続けます。その際の注意点は、次の3点です。

  • まとめきれないカードは、「その他」としてまとめます。
  • 新たに思いついたアイデアがあれば、黄色のカードに記入して出します。
  • カード群のカードが多すぎるとまとまりがなくなるので、基本的に1群のカード数は10枚以内とします。

4 優秀なアイデアを一挙に評価する持ち点法(HP)

最後は、アイデアを評価する技法である「持ち点法(以下「HP」)」を活用します。通常、評価は話し合いで行うことが多いのですが、評価対象が何百もあると、とても時間がかかってしまいます。そこで私は、評価者全員が同じ持ち点を持ち、平等に評価するHPを考えました。HPなら、全員が同じ持ち点を一斉に配分するので、全員が平等に評価でき、ムダな討議時間が減ります。

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1)事前の準備

特にありません。BLから引き続いて行います。

2)リーダーの説明

ここで紹介している内容ですので、省略します。

3)会議の本番

1.評価するカードに点数を記入する

各メンバーがそれぞれ3つのアイデアに投票する場合、各メンバーは全カードの中からカードを選び、カードに1位なら3(3点)、2位なら2(2点)と数字を記入します。

2.カードに合計得点を記入する

全員の記入が終了したら、各カードに赤字でそのカードの合計得点を記入します。

3.得点が入ったカードだけ貼り出す

得点が入ったカードだけ、他の用紙に貼り出します。

4.話し合いで優秀なアイデアを選ぶ

合計得点の高いアイデアを中心に、全メンバーで話し合って優秀なアイデアを選びます。

5 BBHメソッドは簡単でスピーディー。ぜひご活用ください

アイデア会議をこのBBHメソッドで実施すれば、60分(BWに20分、BLに20分、HPに10分、アイデア選択に10分)で完了することが可能です。

私が代表を務める株式会社創造開発研究所では、ネーミングや商品企画の会議でこのBBHメソッドをよく使います。ネーミングの発想では500ものアイデアを出すことも珍しくありません。200くらいの発想数なら、BBHメソッドを活用し、3時間程度で実施することも可能です。

BW自体は、ドイツのホリゲル(Holiger)氏が開発したアイデア会議の技法です。ホリゲル氏はドイツの形態分析法の研究者で、経営コンサルタントでもあります。アイデア会議の代表技法である「ブレインストーミング」の欠点である、発言する人と発言しない人とが極端に分かれ、沈黙して考えることができないことを改良して、BWを考案しました。日本人には、「人前で積極的に意見を言うのが得意ではない」という人が多いので、このBWはとても日本人に向いた会議法だと思います。

まとめにはKJ法がよく使われますが、KJ法はメンバー全員の話し合いによって全カードをまとめる作業を行うので、大変時間がかかります。しかし、BLならまとめる作業を分担して行うので、大幅に時間が短縮されます。そしてHPも時間短縮が可能な評価法です。

ぜひ、皆さまの会社でも、さまざまな場面でこのBBHメソッドを活用してみてください。

以上(2021年12月)
(執筆 株式会社創造開発研究所代表 高橋誠)

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画像:Monet-Adobe Stock

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