書いてあること
- 主な読者:辰年にちなんだ話題や、スピーチ例などを探しているビジネスパーソン
- 課題:辰年に関連する話題を調べたり、スピーチを考えたりする時間がない
- 解決策:過去の辰年に起きた出来事、辰年にちなんだスピーチ例を参考にする
1 辰(たつ)に関する話
1)辰年に起きた出来事
2024年の干支(えと)は「辰(たつ)」です。前回の辰年は、2012年(平成24年)の壬辰(みずのえたつ)でした。2012年は東京スカイツリーが竣工し、東京の新たな観光スポットが誕生した年です。東京スカイツリーを見るために東京へ出向いた人もいるのではないでしょうか。また、京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥氏が、ノーベル生理学・医学賞を受賞したことで注目を集めた年でもあります。
過去5回の辰年に起きた主な出来事や流行語は次の通りです。
2)辰年生まれの有名人
辰年生まれの日本の有名人には、次のような人がいます(既に亡くなられた方も含みます)。
3)たつの話
辰は「竜(龍、りゅう)」の意味に転じ、奮い立つエネルギーの象徴として吉祥を表すとされる、十二支中唯一の架空の動物です。
1972年に美しい壁画が発見されて有名になった高松塚古墳では、東に青竜、西に白虎、北に玄武が描かれていました。南に描かれていたと考えられる朱雀と合わせ、これらは中国古代からの四神であり、このうちの東の青竜が辰(竜)に当たります。古くから中国や日本などでは竜は神格視され、特に中国では、竜は皇帝のシンボルであり皇帝の衣服などに描かれました。
この他、インドでは、竜はヘビを神格化した半蛇半神として扱われています。竜は雲を呼び、雨を降らせる力があるとされ、雨によって五穀豊穣をもたらすものとして信仰されています。一方、ヨーロッパで竜はドラゴン(Dragon)と呼ばれ、神話では悪の化身のような存在です。その役回りは英雄や神々に征伐されるものがほとんどとなっています。ヨーロッパ圏とアジア圏で正反対の扱いを受けているのは興味深いところです。
竜(龍)という言葉は、私たちの日常生活上、さまざまな場所で見られます。例えば「竜巻」です。竜巻は地表と天を結ぶようにみえることから「竜の昇天」をイメージした言葉です。圧倒的な力を見せつける天災に対する畏敬の念を「竜」という言葉を使って表したのかもしれません。また、ペットボトル飲料などで親しまれている「烏龍(ウーロン)茶」は「烏竜」の中国音です。茶葉の仕上がりの色が烏のように黒く、その形が竜の爪のように曲がっているところからこの名前が付けられたという説があります。
「竜」の付く言葉では、「竜頭蛇尾」「画竜点睛」「登竜門」など、中国の故事に由来するものがよく知られています。例えば「登竜門」です。登竜門の「竜門」とは、中国の黄河にある急流で、ここを登った鯉は竜になるといわれたことから、各種試験やコンクールなど、困難ではあるが、そこを突破すれば立身出世ができる関門の例えとして使われます。日本でいうと、「独眼竜」で知られる陸奥守、伊達政宗がいます。独眼竜は政宗の異名であり、その「竜」という名は、戦国乱世を持ち前の器量でわたりきった隻眼の英雄に対する尊敬の念を表しているのです。
この他、国内には竜(龍)の名を使った地名が多くあります。例えば池や湖などの名前です。主なものとしては次のようなものがあります。天竜沼(北海道)、龍巻池(秋田県)、北竜湖(長野県)、竜晶池(富山県)、龍王池(岡山県)、蟠竜湖(島根県)、竜満池(香川県)。多くの池が「王」「神」といった神秘的な存在と竜を組み合わせていて、竜(龍)は「偉大」「神秘的」などというキーワードと結び付けられることが多いと分かります。
2 辰(たつ)にちなんだスピーチ事例
1)スピーチ事例1
今年の干支は「辰」です。辰は竜と同じ生物として考えられることもあり、その竜に関することわざに「竜は一寸にして昇天の気あり」というものがあります。竜の子はわずか一寸ほどの大きさの頃から昇天しようとする気概がある、つまり「優れた人物は、幼い頃から、何かを成し遂げたいという強い気持ちを持っている」という意味です。
このように言うと、皆さんの中には「自分には夢や目標がない。だからこのことわざは自分には無縁だ」と考える人がいるかもしれません。ですが、本当にそうでしょうか。皆さんは入社したとき、この会社で成し遂げたいことを、目を輝かせながら私に語ってくれました。そして、私はそんな皆さんの目に可能性を感じたからこそ、皆さんを会社に迎えました。
皆さんは夢や目標がないというわけではなく、仕事に慣れていく中で、入社したときに持っていた感情を忘れつつあるだけなのではないでしょうか。私の中では、皆さんは今でも何かを成し遂げる可能性を持った「竜の子」なのです。
皆さん、ぜひとも初心に立ち返り、自分がやりたいことにもう一度向き合ってください。そして、初心に立ち返ったら、後は夢や目標に向かって、行けるところまでまい進してみてください。「登り竜」という言葉があるように、竜は上に向かって登り続ける存在、落ちてくるイメージはありません。
今年は、私たちにとってきっと飛躍の年となります。大変なことも多くあると思いますが、一致団結し、竜が天に向かって登る勢いで躍進しましょう。
2)スピーチ事例2
「辰」という文字には、理想に向かって粘り強く努力し、困難と闘いながら人生を進んでいくという意味があります。辰は竜と同じ生物として考えられることもあり、竜を使った言葉に「登竜門」というものがあります。普段の生活でも、「この賞は作家の登竜門」「この番組は俳優の登竜門」といった言い回しをよく耳にしますね。
このように言うと、登竜門という言葉にどこか華やかなイメージを抱くかもしれませんが、ただ華やかなだけではありません。そもそも登竜門の「竜門」とは、中国の黄河にある急流のことです。ここを登った鯉は竜になるといわれたことから、突破すれば立身出世ができる関門の例えとして使われるわけですが、急流を突破できる鯉は一握り、生半可な道ではありません。
私たちの会社はまだ小さく、業界でも無名です。しかも、世の中は、ますます変化の激しい時代を迎えています。登竜門の語源になぞらえるなら、私たちの会社は鯉であり、まさにこれから黄河の急流を登っていこうとしている状況です。
そんな時代を生き抜く上で、私たちを支えるのは「仕事・事業を通じてこんなことを成し遂げたい」という強い意思です。一人ひとり目指すものは違っても構いません。ですが、常に前を向いて前進し続けることが大切です。
急流を登り切った者にのみ、竜になる権利が与えられます。この業界の竜になるためにみんなで今年を乗り切りましょう。
3 干支の起源・豆知識
1)干支の起源
ところで、「干支とは何か?」と聞かれたら、どう答えますか? 一般的に、干支とは、辰(たつ)年や申(さる)年など、12種類の動物を、年ごとに当てはめたものと認識されています。しかし、実は干支(えと=かんし)とは、古代中国に起源を持つ、年月日や時刻、方位などを表す呼称で、10種類の「干(え)」と12種類の「支(と)」を組み合わせた60通りがあるのです。本章では、意外と知られていない干支の起源についてご紹介します。
干支の「干(え)」は10種類あり、十干(じっかん)といいます。
これに陰陽五行思想を結び付けて、それぞれ陽を意味する兄(え)、陰を意味する弟(と)を当てて、次のようにも読みます。
一方、干支の「支(と)」は古代中国の天文学で、木星の位置を示すために天を十二分した呼称を起源にしており、十二支といいます。
さらに、十二支を動物に当てはめて、次のように呼ばれるようになったのです。
中国では、古く殷(いん)の時代(紀元前16世紀~紀元前11世紀頃)から、この十干十二支の組み合わせで年月日が数えられたといいます。これが干支の起源です。
2)干支と十二支
現在の日本では、干支は十二支を指すように使われていますが、このように、厳密には干支と十二支とは異なります。本来の干支(十干十二支)の組み合わせは全部で60通りあり、日本で使われている12通りの十二支とは違うのです。干支は年月日や時刻に当てられますが、日本では一般的に年に当てられて使われています。満60歳を還暦(かんれき、もしくは生まれ年の干支を「本卦(ほんけ)」と呼ぶことから本卦還(がえ)りともいう)というのは、干支が1周して生まれ年の干支に還(かえ)るところからきています。
また、「丙午(ひのえうま)」という言葉を耳にしたことがある人も多いはずです。この呼び方も干支からきています。
ちなみに、2024年の干支は甲辰(きのえたつ)、2025年の干支は乙巳(きのとみ)です。自分の生まれ年の干支が何かを、下表で確認してみましょう。
3)干支が表す歴史年代
干支は年月日などの時間を表す呼称として、古くから使われており、具体的な年がすぐ分かるため、歴史上の事件の呼称としても多く用いられています。
有名な例としては以下のようなものがあります。
- 672年 みずのえさる 壬申(じんしん)の乱
- 1592年 みずのえたつ 壬辰(じんしん)倭乱(わらん)(注)
- 1868年 つちのえたつ 戊辰(ぼしん)戦争
- 1911年 かのとい 辛亥(しんがい)革命
(注)日本でいう「文禄(ぶんろく)の役」です。
ちなみに、阪神甲子園球場は、「甲子(きのえね)」年の1924年に完成したことから名付けられています。
以上(2023年11月)
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画像:metamorworks-Adobe Stock