書いてあること
- 主な読者:マニュアルを参考に、会社が大切にする思いを社員に体現してほしい経営者
- 課題:マニュアルを作成したが、守られなかったり、改善提案がされなかったりする
- 解決策:マニュアルの根底にある経営者の思いを伝える。エバンジェリストも任命する
1 業務マニュアルの形骸化と硬直化をどちらも防ぐ
この記事では、作成した業務マニュアルを運用していくときのポイントを紹介します。業務マニュアルは、社員がそれに則って行動することで一定の業務効率化をもたらすはずのものですが、定期的に見直して、しっかりメンテナンスしないと形骸化してしまいがちです。現場の社員の判断が必要なシーンは多々ありますが、やがてそれが優先されるようになり、マニュアルを無視した行動がパターン化されてしまうかもしれません。
一方、現場の社員が、業務マニュアルには絶対従わないといけないと思い込むと、やがて組織として硬直化してしまう恐れがあります。画一的な対応しかできずにクレームになってしまったり、誰にも求められていないような過剰な対応が改善されないまま放置されたりすることで、かえって非効率になってしまう危険すらあります。
業務マニュアルの形骸化と硬直化をどちらも防ぐために重要なのは、
業務マニュアルの根底にある「経営者の思い」を社員に共有すること
です。どのようにしていけばよいのか探っていきましょう。
2 「経営者の思い」をしっかり伝える
例えば、接客マニュアルを作成するのは、
お客様への感謝の気持ちをきちんと伝えたいから
といった経営者の思いがあるからです。マニュアルに「笑顔を絶やさず、相手にきちんと伝わる声の大きさで『ありがとうございました』と言いましょう」と示したとしても、
「ありがとうございました」というのは、感謝の気持ちを伝える1つの手段であり、そのこと自体が目的ではない
ということになります。ここで大切なのは、
マニュアルを作成するのは、お客様に感謝の気持ちをきちんと伝えられていないから
という、根底にある経営者の思いを共有することです。これができていないと、
ロボットのように「ありがとうございました」と言う社員が出てくるなど、マニュアル運用でよくある問題
が生じることになります。
ここで紹介したのは、非常に単純な例ですが、経営者はマニュアル作成の根底にある思いを社員に丁寧に伝え続けなければなりません。繰り返しになりますが、これがマニュアル運用を成功させる秘訣です。
3 マニュアルのエバンジェリストを任命する
経営者の思いを伝えるといっても、経営者の意図を深く理解できる社員は限られてしまうものです。そこで、
社員に近い立場から、マニュアルに込めた思いとともに、その遂行を広めるエバンジェリストを任命
しましょう。エバンジェリストは「伝道者」という意味で、マニュアルの大切さを社員に伝える役割です。また、マニュアルの目的や意図を理解していることはもちろん、社内でマニュアルがどう使われているのかの実態や、社内のマニュアルに対する不満などについても吸い上げて、改善につなげていくことが求められます。
マニュアルの周知徹底には時間がかかりますが、エバンジェリストがうまく機能すれば、
社内にマニュアルが定着するだけではなく、有意義な改善提案も出てくる
ようになるでしょう。
4 マニュアルの改善も忘れずに
ここまで経営者の思いを伝えることの大切さをご紹介してきましたが、もちろんマニュアル自体の分かりやすさは不可欠です。また、社員が自分たちもマニュアルの運用に携わっているという意識を持ってもらう工夫も必要です。
そこで、事業所や店舗などのグループに分けて、グループ対抗でマニュアルの改善や活用例に関するコンテストを開催したりするとよいでしょう。また、グループウエア上に、マニュアルについての掲示板を設けて、全員がマニュアルに関する改善点などを書き込めるようにしておくのも一案です。
以上(2023年11月更新)
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画像:pixabay