書いてあること
- 主な読者:出張の多い経営者や営業担当、経費精算を担当する経理担当者
- 課題:出張先での行動を第三者が把握するのは難しく、経費の妥当性が確認しにくい
- 解決策:出張行程や行動予定などを記載した「出張予定表」を作成することで、行程と領収書の突き合わせがしやすくなる。インボイス制度などにも対応しやすい
1 出張の経費は正しく確認できていますか?
インボイス制度の導入や電子帳簿保存法改正による電子保存の義務化など、経費精算時の業務が増えていますが、「出張後の精算」もその1つです。多くの領収書を前に、過去の経路を思い出しながら集計し、ときおり抜け漏れもあるのではないでしょうか。
経費精算をチェックする経理担当者からすると、出張時の現地の動きは把握しにくく、正確な出張費用の把握や金額の確認は難しいものです。ただでさえ忙しくなった経理担当者にとって、確認作業の効率化を進めていきたいのは当然です。
そのような際、コストをかけずに導入できるのが出張予定表です。出張予定表とは、
出張の日程や行動予定を表す、いわば計画表
です。特に出張の「行程」に重点を置いて作成されるので経費との突き合わせがしやすくなります。また、出張時のスケジュールを詳しく記載することで、出張の正当性を裏付ける書類にもなります。
2 出張予定表に必要な項目は?
早速、出張予定表を作成する上で必要となる項目を確認していきましょう。出張予定表は法令で定められたものではないので、様式や項目は自由に決めることができます。ここでは一般的に記載されている主な項目をピックアップしているので、参考にしてください。
1)申請日
申請日(提出日の場合もある)は出張予定表を作成し、会社へ出張予定表を提出する日を記入します。
2)申請者
誰が出張するのか分かるように出張する社員の氏名、所属等の情報を記載します。
3)出張先、出張の目的など
出張先(得意先や出張先など)を具体的に記載し、出張の目的を記載します。出張先での訪問先に面会相手の担当者などがいる場合、その担当者の役職、氏名なども記載しておくとよいでしょう。
4)出張期間
移動の期間も含め、どのくらい出張することになるのかの期間を記載します。
5)日付
行動日について記載します。のちに経費精算で領収書と突き合わせができるように、抜け漏れ防止のため、正確に記載しましょう。
6)出発地
出発した場所を記載します。
7)到着地/宿泊地
到着した場所、もしくは宿泊があれば到着先での宿泊地を記載します。
8)移動手段/宿泊地
移動するのに使用する交通手段、もしくは宿泊地を記載します。
9)決済方法
現金、法人カードなど、決済をどのような方法で行ったかを記載します。
10)金額
移動にかかる費用、宿泊があるなら宿泊費、その他出張にかかる諸々の費用などを計算した金額を記載します。予定の段階で分からないものについては、概算値を記載します。
11)領収書、領収書の種類
領収書の有無を記載します。2024年1月以降、領収書が電子発行されている場合などには、電子保存が義務化されているため、発行された領収書が電子媒体のものか、紙媒体のものか分かるようにしておくことも大切です。
12)備考
特筆すべき事柄があれば記載します。
この他、仮払金がある場合はその金額を記入する欄や、出張先での詳細なスケジュールまで把握しておきたい場合にはその行動予定を記入できるようにしておくなど、会社ごとに必要に応じて項目を追加してみてください。
3 出張予定表を作成・運用する際の注意点は?
1)出張の目的は具体的に
出張予定表は、出張の必要性、スケジュールの妥当性などを会社側が確認するための書類です。例を挙げると、「〇〇会社への訪問のため」「〇〇の研修のため」「残務整理のため」「新規の販売ルートの開拓のため」など、出張の目的が誰の目から見ても分かるようにしておきましょう。
2)出張の行程も可能な限り具体的に
出張の目的と同じく、出張の行程についても予定表作成時点で分かっている範囲で「〇月〇日の〇時~〇〇社へ訪問予定」など、何日の何時にどこで何をするのかを具体的に確認できる状態がベストです。
3)提出期限は厳守
これは出張予定表だけに限った話ではありませんが、書類の提出期限についてもしっかり定めておくことをお勧めします。特に出張予定表の場合は、毎月の経費精算などと違ってイレギュラーな書類ともいえますので、期限通りに提出されない、できないケースも多いでしょう。
このような書類は一度ルーズになってしまうと、なかなか正すことができません。事前に期限を定め、それを会社全体に浸透させるよう心掛けましょう。
4 出張予定表の活用方法
1)出張報告書を書く際の補助書類として
出張予定表は出張前に会社へ提出するものですが、出張から帰って来た後に会社へ提出する書類に「出張報告書」があります。
これは出張した社員が出張中の業務内容や成果を会社へ報告するために作成する書類となり、記載項目が出張予定表と重なるため、出張予定表を元にすれば出張報告書を作成する際にとても役に立つことでしょう。
2)出張内容のフィードバックに活用
出張予定表には会社側へ出張の正当性を伝えるため、基本的には詳細な出張の際の行程が記載されます。
その行程を確認しながら、出張の目的と達成度、出張先で得た情報や、どういった進展があったのかを整理することも可能でしょう。
特に出張中は普段の業務とは異なり、周囲の環境や仕事の相手などがガラッと変わるため、振り返る時間がなかなか取れずバタバタと時間が過ぎていくことも多いと思います。
出張から帰ってきた後のことも考えて出張予定表を作成しておくことで、自身や業務内容の振り返りにも大いに活用できるはずです。
以上
(監修 税理士 石田和也)
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