書いてあること
- 主な読者:Excelを使ってデータの集計やグラフ化などの加工編集をする人
- 課題:Excelの使い方が各人でバラバラなので、加工編集に余計な手作業が発生している
- 解決策:総務省が示したデータ入力の統一ルールを参考に、作法を身に付ける
1 ご存じですか? 総務省が示したデータ入力の統一ルール
総務省が2020年末に公表した「統計表における機械判読可能なデータ作成に関する表記方法」(以下「総務省統一ルール」)をご存じですか? もともとは各府省を対象として、Excelでデータ入力するときの注意点をまとめたものですが、一般事業者も必見の資料です。
■総務省「統計表における機械判読可能なデータ作成に関する表記方法」■
https://www.soumu.go.jp/main_content/000723626.pdf
例えば、誰かが作ったExcelファイルを加工編集しようとしたとき、
- セルが結合されていて並び替えができない
- 1つのセルに数値と単位が書かれていて、関数を使った計算ができない
といった事態に遭遇し、それに対応するために余計な手作業が発生していないでしょうか?
Excelの使い方は各人任せになりがちで、体裁を整えるためによかれと思ってやったことなどが、後々、作業の妨げになってしまうことがあります。
Excelでデータ入力をするときの作法として、総務省統一ルールを基にポイントを押さえ、関数を使った計算やRPA(Robotic Process Automation)による自動処理などができるようにして、業務効率化に活かしましょう。
2 データ入力の作法として押さえておきたい8つのポイント
総務省統一ルールの中から、データ入力の作法として押さえておきたい8つのポイントを、修正前後のイメージを交えて紹介します(修正前=悪い例、修正後=良い例です)。
1)1つのセルには1つのデータだけ
1つのセルに複数のデータが入力されていると、関数を使った計算や昇順・降順の並べ替え、機械判読が正確にできなくなります。すぐに加工編集できるように、
1つのセルに入力するのは1つのデータだけ
にしましょう。
2)数値データは数値属性とし、文字列を含まない
数値データに、「円(通貨単位)」「▲(マイナス表記)」「,(カンマ)」などを文字列として入力すると、Excel上は数値ではなく文字列として扱われるため、関数を使った計算ができなくなります。また、昇順・降順の並べ替えも正確にできなくなることがあります。
数値データは数値属性とし、文字列を含まない
ようにしましょう。
3)セルの結合をしない
1件のデータは、横1行(または縦1列)で表記し、
セルの結合または不必要な分離は行わない
ようにしましょう。セルが結合または分離されていると、機械判読には適しません。
4)スペースや改行などで体裁を整えない
例えば、「合計」の内数であることを表すのに、本来の情報が「A」「B」「C」であるのに、「□A」「□B」「□C」とスペースを挿入して体裁を整えた場合、他のデータとうまく結合できなくなります。
また、セルの中で文字を入力中、Windowsの場合「Alt+Enter」で改行できますが、その改行に意味があるのか機械では判断できません。
体裁を整えるためのスペースや改行などは解除(削除)
しましょう。
5)項目名などを省略しない
例えば、項目の一番上に「鎮静剤A-1」と入力されていて、その下に「2」「3」「4」と続いている場合、人が見れば「鎮静剤A-」が省略されているに違いないと分かりますが、機械では「2」「3」「4」という項目が何を意味するのか判断できません。見た目が冗長であったとしても、
項目名などは省略せずに全て入力
しましょう。
6)オブジェクトを使用しない
例えば、「{(左中かっこ)」などのオブジェクトを挿入して体裁を整えても、機械では判別できません。
オブジェクトを削除した上で、それぞれのセルにデータを入力
しましょう。
7)データの単位は別セルに記載
データの単位(物理単位、通貨単位など)は、データ処理に必須です。
単位は数値とは別セルに記載
しましょう。
8)機種依存文字を使用しない
例えば、「①」などの丸囲み数字、「㈱」「㈲」といった囲み文字などは、機種依存文字で、利用者の環境によっては正しく表示されません。
機種依存文字を使用しない
ことを徹底しましょう。
■(参考)デジタル庁「e-Gov電子申請 入力可能な文字について」■
https://shinsei.e-gov.go.jp/contents/help/notes/letters.html
3 機械的に読み取れるようにデータを整えるのが大切
Excelで行う作業の多くは、データ入力や集計作業などの定型業務かもしれません。やり方が決まっており、繰り返し行う作業であれば、RPAで自動化できる可能性があります。
RPAは、人間が普段パソコン上で行っている作業の手順を、ソフトウエアロボットに覚えさせることで、自動化を実現する仕組みです。ノンコードやローコードで扱えるツールも多く登場しているので、ExcelのマクロやVBA(Visual Basic for Applications:マクロで呼び出した機能を実行するためのプログラミング言語)の知識がなくても、ある程度は使いこなすことができるでしょう。
また、Excelのマクロで効率化・自動化できるのはMicrosoft Officeのソフト内の動作に限られますが、RPAは他のソフトやアプリ、システムなどと柔軟に連携でき、より広範囲で複雑な作業の効率化・自動化も実現できるかもしれません。
ただし、RPAでは人間の判断や感性が必要になる作業は自動化できません。例えば、集計作業をRPAで自動化するとした場合、どのデータが何を意味しているのか、人間の判断が介在しないでも、機械的に正しく読み取れるようにデータを整えておく必要があります。
4 (参考)Excelでデータ分析も
データが整っていれば、Excelのアドイン「分析ツール」を使って、相関分析や回帰分析などのデータ分析もできます。マイクロソフトのウェブサイトなどを参考に試してみてはいかがでしょうか。
■マイクロソフト「Excelで分析ツールを読み込む」■
https://support.microsoft.com/ja-jp/office/-6a63e598-cd6d-42e3-9317-6b40ba1a66b4
■マイクロソフト「分析ツールを使用して統計学的および工学的分析を行う」■
https://support.microsoft.com/ja-jp/office/-6c67ccf0-f4a9-487c-8dec-bdb5a2cefab6
以上(2023年11月更新)
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画像:Kaspars Grinvalds-shutterstock