書いてあること

  • 主な読者:コスト削減を進めたい経営者
  • 課題:どのような手順で、何を対象に削減していけばよいのか迷う
  • 解決策:利益に貢献しないコストを科目ごとにあぶり出し、アプローチする

1 コストダウンの意識を持った組織

経営者や経営幹部はもちろん、全ての社員がコストダウンの意識を持つことが理想です。コストダウンの意識を持った組織では、社員は常に「費用(コスト)対効果」を考えて行動し、また、ムダを発見した場合は率先して改善しようと試みます。

こうした組織を作り上げるためには、組織の立ち上げや評価制度の整備が必要になります。「コストダウンの意識を持った組織」作りのステップは次の通りです。

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以降で各ステップの内容を確認していきましょう。

2 「当たり前の意識」を改善

1)課題:「接待」は当たり前?

コストダウンを進める際、長い期間をかけて定着した社員の「当たり前の意識」が邪魔になることがあります。例えば、「接待がなければ顧客との親密な関係が築けない」と考えている営業担当者がいるかもしれません。

そこに突然のコストダウン宣言があり、接待交際費がこれまでの半分しか認められなくなったら、営業担当者は反発するでしょう。こうした当たり前の意識は、他にもたくさんあります。

2)対策:コストダウン推進の理由を説明

当たり前の意識を改善する方法として、経営者の宣言があります。ただし、「コストダウンを進めるので、来年度から接待交際費枠は半分になります」と説明しただけでは不十分です。これでは社員の当たり前の意識とぶつかってしまうでしょう。

ここで経営者が社員に説明しておきたいのは、「コストダウンは決して最終目標ではない」ということです。コストダウンは、新商品開発、営業活動などと同様に利益追求のための取り組みです。

この点を強調しながら、経営者はコストダウンを推進する理由を社員にきちんと説明しましょう。その際、コストダウンを推進しなかった場合の最悪のシナリオ(いくらのコストがムダになっているのか)を示すことが効果的です。

3)効果:社員の「当たり前の意識」が変わる

経営者の説明によって、社員は「なぜ、変わらなければならないのか」に気が付きます。同時に、これまでの当たり前が「本当に当たり前なのか?」と疑問を感じるようになってきます。

例えば、先の「接待」の場合は、「同僚の営業担当者Aは、接待なしでも新規顧客を獲得しているな。本当に接待は必要なのだろうか? もしかすると、接待に頼る営業スタイルに問題があるのかもしれない」といったように変化してきます。

3 「コストダウン推進委員会」の設立

1)課題:コストダウンに対する社員の意識は継続しない?

経営者の説明によって、社員のコストダウンに対する意識は高まります。しかし、そうした意識は、放っておけばすぐに薄らいでしまうため、何らかの仕掛けが必要になってきます。

2)対策:コストダウン推進委員会を設置する

そこで、社員のコストダウンに対する意識を持続するために「コストダウン推進委員会」を設置しましょう。コストダウン推進委員会とは、「コストダウンを推進するために設置される専門チーム」です。

企業規模などによってコストダウン推進委員会の概要などは異なりますが、理想は、経営者が委員長になることです。経営者が出席するだけでも、委員会の場に良い意味での緊張感が生まれます。

また、各部門から少なくとも1人ずつメンバーを選出して全社的なタスクフォースとします。メンバーは、部長クラスなど意思決定権を持つ社員を選出したほうが好ましいといえます。

コストダウン推進委員会では、コストダウン計画を立案します。計画のポイントは、具体的に「どのコストを」「いつまでに」「何%削減する」といった目標を部門ごとに設定することです。

コストダウン推進委員会の活動状況(議事録、決定事項など)は、必ず社員に通知します。全体朝礼・部門別朝礼・回覧物などを利用するとよいでしょう。コストダウン推進委員会の活動は全て社員に伝え、コストダウンに対する意識の統一を図ります。

コストダウン計画の対象期間が終了した時点で、コストダウン計画の実効性を確認し、見直しを行います。その際、目標を達成した部門と未達成の部門にヒアリングを行い、双方で相違点がないかを確認してみましょう。

もしかすると、達成組には「部長が先頭に立って部全体でコストダウンに取り組む強い機運が生まれていた」「定期的にコストダウンミーティングを開き、効果を検証していた」など、未達成組にはない動きがあったかもしれません。

3)効果:社員はコストに対する意識を高めていく

コストダウン推進委員会は、コストダウンを進める上で大きな権限を持つタスクフォースです。ここがきちんと機能していれば、社員はコストダウンに対する意識を高め、それを持続することができるでしょう。

4 小規模な「分科会」の設置

1)課題:他人任せの社員が出てくる

コストダウン推進委員会は、総務部門、製造部門など各部門に具体的なコストダウンの目標を与えます。しかし、部門全体の目標の場合、個々の社員は「自分がやらなくても、同僚がやってくれるだろう」と考えてしまいがちです。

2)対策:小規模な分科会を設置する

社員にコストダウンに対する責任を持ってもらうためには、コストダウン推進委員会が決定した各部門のコストダウンの目標を、個々の社員の業務目標に置き換える必要があります。

例えば、総務部門の中に「冷暖房の設定温度に気を配り、光熱費のコストダウンを推進するチーム」「オフィス備品購入のコストダウンを推進するチーム」といったような、小規模な分科会を設置し、それぞれが責任を持って活動します。

3)効果:個々の社員が責任を持ってコストダウンに取り組む

分科会を設置し、コストダウンの目標の達成に対する責任の所在を明確にすることで、社員はこれまで以上に強い責任を持ってコストダウンに取り組むようになるでしょう。

5 評価する仕組みを作る

最後に、コストダウンを推進する際、企業(経営者)と社員の関係を良好に保つための取り組みを紹介します。コストダウンを成功させるために、ある程度の責任を社員に課すことは重要です。しかし、責任があまり重過ぎてはいけません。

多くの社員はコストダウンにマイナスのイメージを抱いており、責任まで問われることになれば大きな負担に感じます。こうした問題に対応するために、コストダウンへの取り組みを評価できる仕組みを構築することです。

例えば、経営者が目標を達成した部門(総務部門)や分科会(光熱費チームなど)を表彰し、賞金を出します。また、コストダウンの目標達成手当を作ることや、コストダウンへの意欲的な姿勢を人事考課の対象とするなどの方法もあります。

正しいコストダウンを推進するには、個々の社員が当たり前の意識を改善し、責任を持ってコストダウンに取り組むことが必要です。そのためには、コストダウン推進委員会の設置と、評価体制の整備が非常に重要なポイントになるといえるでしょう。

以上(2018年10月)

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画像:pexels

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