書いてあること
- 主な読者:主な読者:作業の進捗や工程を管理するプロジェクトリーダーなど
- 課題:作業の進捗や遅延を把握できない、遅延が後工程にどう影響するのか分からない、スケジュール管理表が形骸化しているなど
- 解決策:プロジェクトに関連する情報を集約したり、従業員の作業内容を“見せる化”したりするなどの取り組みが必要
1 グループウェア開発企業にスケジュール管理のコツを聞く
プロジェクトの進捗を管理するために、Googleカレンダーなどのスケジューラーやエクセルを使う企業は少なくありません。しかし、工程管理表などを作ったものの十分活用していないと頭を抱えるプロジェクトリーダーは少なくないはずです。
スケジュール管理を形骸化させないためには、管理表をどう使いこなすべきでしょうか。
カレンダーやプロジェクト管理などの機能を備えるグループウェア「desknet’s NEO」を開発するネオジャパンのマーケティング統括部 マネージャーの正木伸城氏に、スケジュール管理のコツを聞きました。
Q.1-1 スケジュール管理が失敗しがちな理由は?
プロジェクトに携わる人にとって必要な情報が、管理表に載っていないことが理由の1つです。管理表に書き込めるスペースの問題だと思いますが、作業名だけが記載され、具体的な内容は分からないというケースが目立ちます。自分が直接関わらない作業でも、どんな作業があるのか、後工程でどれくらい時間が掛かるのかなどを推察できる程度の情報は必須でしょう。
古い情報が載っているケースもあります。週次や日次、時間単位で進捗を管理しなければならないプロジェクトでは情報の鮮度が大事です。更新が滞れば管理表の信頼は失われ、プロジェクトの成功さえ危ぶまれます。作業の進捗率はもとより、作業に必要なマニュアルや資料なども適宜更新すべきです。リアルタイムに更新するのが理想ですが、頻繁に更新するケースはまれです。無理のない範囲で、せめてお昼や夕方など、1日に数回は進捗率などを更新するルールを決めるとよいでしょう。
Q.1-2 スケジュールの変更を管理表に反映するときの注意点は?
スケジュールの変更は影響範囲を考慮することが不可欠です。そのため、プロジェクトリーダーにはスケジュール変更による影響を洗い出し、必要な人員や時間、コストを算出した上でスケジュールを引き直す“調整力”が求められます。
例えば前工程が大幅に遅れたものの納期を延ばせない場合、後工程の作業時間を圧縮しなければなりません。従業員の負荷がどの程度増すのか、増員や残業しなければならないのか、さらには同時並行で進む他プロジェクトにも遅延の影響が及ぶのかも考慮しなければなりません。
Q.1-3 管理表を賢く運用するには?
分かりやすさ、見やすさにこだわるべきです。必要最低限の情報は記載すべきですが、ごちゃごちゃと書かれた管理表は状況を理解しづらくするだけです。
こんなとき活用したいのがアイコンです。作業の進捗率を数字ではなく、アイコンを使って直感的に把握できるようにするのもお勧めです。当社の顧客の中には、作業の進捗率を月の満ち欠けを模したアイコンで表現する事例もあります。三日月形のアイコンなら進捗率30%、半月形なら50%といった具合です。
色分けするのも手です。例えば、作業が遅れそうなら黄色、遅れだしたら赤色で示すだけでも効果を見込めます。ホワイトボードに管理表を書いているなら、色付きのマグネットを使ってもよいでしょう。作業の状況ごとの色を会社で統一しておけば、プロジェクトの内容を問わず、色だけで作業の進捗や遅延をおよそ把握できるようになります。
プロジェクトに関わる情報を管理表にひもづけることも大切です。予定は管理表、作業の詳細はガントチャート、作業に必要な資料や申請書はファイルサーバーといった具合に、情報が散在しているケースは珍しくありませんが、これでは管理しにくくなります。ポイントは、管理表からガントチャートやファイルサーバーへ容易にアクセスできるようにすることです。管理表を見ながらガントチャートをすぐに開く、あるいは必要書類をすぐ呼び出すといった効率性を徹底することが何より重要です。
2 プロジェクト管理ツール開発企業にスケジュール管理のコツを聞く
計画と実績の乖離(かいり)を把握する予実管理を実施したいけれど、必要な情報が管理表に記載されていないと嘆くプロジェクトリーダーは多いのではないでしょうか。
では、予実管理を成功へと導くためには何を見直し、どんな工夫をすることが必要なのでしょうか。プロジェクト管理ツール「TimeKrei(タイムクレイ)」を開発するテンダのITソリューション事業部 執行役員事業部長の高木洋充氏と、同事業部 副事業部長兼仙台支店長の村山友樹氏に管理のコツを聞きました。
Q.2-1 予実管理が失敗しがちな理由は?
村山氏
本来は事前に作業ごとの時間や原価を設定した上で実績と比較すべきですが、そこまで取り組めない事例が目立ちます。管理表に作業時間や進捗率の記載を徹底できたとしても、予定と比較するにはそれらを集計する手間も掛かります。エクセルで予実管理に取り組んだものの、集計に費やす時間と手間に見合わないと挫折した事例は少なくありません。
高木氏
カレンダーやエクセルでスケジュール管理はできても、予実管理を実践するのは難しいでしょう。予実の把握も含めたスケジュール管理に取り組むのなら、作業時間だけではなく原価も把握できる専用のITツールを検討すべきではないかと考えます。
特に経営者は、プロジェクトのスケジュールと併せて原価も把握したいはずです。こうしたニーズにカレンダーやエクセルでも応えられるものの、情報を収集、整理、分析する時間と手間は覚悟すべきでしょう。
もっとも予実管理を徹底できれば、作業時間を短縮できそうな作業を洗い出せます。短縮可能な作業を把握できることから、遅延による影響をどの作業で吸収すべきかを決める判断材料にもなります。予定変更によってスケジュールを調整する、プロジェクトのコストを見直すといったときに強みを発揮します。
Q.2-2 予実管理を根付かせるためには?
村山氏
進捗率の精度を高めるため、進捗率の考え方を統一すべきです。従業員が自身の作業の進捗率を管理表などに記載する場合、人によって「進捗率」の捉え方が異なることがあります。例えば、自分の中では作業し終えたので「100%」と記入する人がいる一方で、作業終了後、上司に確認してもらうので「90%」と記入する人もいます。こうしたわずかな揺らぎが予実の精度を下げ、予実管理の定着を妨げる要因になります。
製造業なら、作り終えた製造物の個数で進捗率を容易に示せますが、システムのように進捗率を示しにくい成果物は多々あります。会社として、どんなケースなら進捗率が何%になるのかをきちんと明示すべきでしょう。
高木氏
予実管理を根付かせるにはトップダウンによる取り組みも必要です。現場にとって作業の進捗を管理表に記載するのは手間なもの。余計な仕事が増えたとつい受け止められがちです。そこで場合によっては、経営者やプロジェクトリーダーが先頭に立ち、作業時間や作業の進捗率を正しく記載することの必要性を訴求すべきです。
予実管理は現場にメリットがあることを理解してもらうのも手です。一番のメリットが「見せる化」です。プロジェクトに携わる従業員は、「自分の1日の作業内容はギッシリで、新たな作業を引き受ける余裕はありません」「自分はこれらの作業を1日で終わらせています。作業の効率化に努めています」などと、プロジェクトリーダーに作業状況を示すことで、自身の姿勢や取り組みを理解してもらえるようになります。作業状況を「見せる化」する取り組みが、結果として実績の記載を促進し、予実管理の定着に向けて作用します。
Q.2-3 予実を把握できるようにするスケジュール管理のコツは?<
村山氏
予実管理では、作業予定時間や原価と、実際の作業時間や進捗率を記載しなければなりませんが、最初から全てを記載する必要はありません。まずは誰がどの作業に何時間関わったのかという実績だけ記載すれば十分です。1カ月程度の実績を集めたら、プロジェクトに潜む無駄を探ってみましょう。次のステップで、作業予定時間や原価を設定し、予実を把握できるようにします。こうして段階的に取り組む事例は少なくありません。
また、複数のプロジェクトを同時に走らせる企業の場合、経営者向けに各プロジェクトの「進捗」と「遅延」だけでも横断的に確認できるようにすべきです。複数のプロジェクト全体を俯瞰(ふかん)するための管理表、各プロジェクトの詳細を把握するための管理表といった具合に、プロジェクトを見る人の立場に応じて粒度の異なる管理表を用意しておくのが望ましいでしょう。
以上(2020年1月)
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画像:pixabay