皆さんは、AIと聞いて、どんなことをイメージするでしょうか。最近は、テレビや新聞のニュースでAIという言葉を聞かない日がないほどです。AIが囲碁で人間を負かすようになったとか、乗用車の自動運転をするとか、そういったニュースを見て、人間と同等、あるいはそれ以上の万能な存在をイメージするかもしれません。

1 もはや遠い存在ではないAI

また、今後10~20年程度で47%の仕事がAIやロボットに取って代わられるという話や、2045年ごろにはAIが人間の能力を超え(シンギュラリティ)、世界が劇的な変化を迎えるという話などを聞き、AIに不安や脅威を感じているかもしれません。

皆さんそれぞれ、AIについて、いろいろな漠然としたイメージを持っているでしょう。しかし、実際のところ、AIについての断片的な情報をもとに想像していて、何か遠い存在のように感じていることはないですか。

AIに関するニュースでは、Google、Apple、Microsoftなどの世界的な企業の名前が出てきますし、日本でも大企業や最先端技術に取り組む企業の名前が出てきます。こうしたニュースを見ていると、「うちの会社には関係ない」と思い、遠い存在と感じても仕方がないかもしれません。

しかし、もはや、AIは身近な道具として捉えるべき時代です。産業や業種を問わず、また規模の大小にかかわらず、AIは皆さんのビジネスにとって、重要で便利な道具として店頭に並んでいる状態なのです。

2 AIって何? AIって必要?

AIは、Artificial Intelligenceの略で、人工知能と訳されています。しかし、AIという概念は、専門家や研究者によっても、捉え方が異なるのが事実です。

AIについてはさまざまな考え方が存在しますが、皆さんのビジネスにおいては、広く捉えることが大切です。日々の業務の中で、一部の処理や作業を、あたかも人間のようにやってくれる存在。そのくらい広く捉えるほうが、ビジネスに役立つ道具として、目利きすることができるでしょう。

今、日本では、少子高齢化に伴う働き手の不足が大きな課題になっています。皆さんの会社でも、人手不足は大きな課題ではないでしょうか。

特に、地方の企業や中小企業において、人手不足は深刻な課題となっています。これを逆手に取り、AIという道具を上手に使って人手不足という課題を克服すると考えることが、自社のビジネスを守ることになります。

むしろ地方の企業や中小企業こそ、AIという道具を有効に活用できる有利な立場にあります。大勢の従業員を抱える大企業では発想し得ないAIの活用が、大きなテコとなって、創造性と生産性を生み出すことになるのです。

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3 利用が広がるAI

「では、AIはどんなことをしてくれるの?」

ニュースで見聞きする例を見ると、難しそうで、取っつきにくいかもしれません。AIは万能ではありませんが、皆さんの日々の業務のあらゆる場面で、役に立つ道具です。幾つか参考になりそうな例をご紹介します。

AIの中で比較的利用が進んでいるのが「チャットボット」です。チャットボットとは、メッセージのやり取りを会話形式などで自動で対応する「チャット」のロボットのことです。現在、利用が進んでいるチャットボットの多くは、“人工無脳(無能)”といわれることも多く、AIには含まれないという見方もあります。人間が与えたルールにのっとって動きや判断を行うレベルのものです。皆さんが想像するAIに比べると、ちょっとレベルが低いかもしれませんが、比較的簡単なやり取りが想定される業務では、かなり利用が進んでいます。

例えば、企業のウェブサイトなどでは、最近、メッセージボックスが用意され、そこで質問を受け付けていることがあります。オペレータが控えている場合もありますが、チャットボットが備えられているケースが増えています。銀行のホームページにあるメッセージボックスに「口座開設したい」と打つと、簡単な説明文章が並び、「詳しくはこちらをご覧ください」という文章が続き、そこから、詳しい情報が書かれたページにリンクされています。

その他、LINEなどを使って、注文や配達を受け付けるような業務も、チャットボットが担うようになっています。こういった簡単なやり取りは、事前にルールを与えておけば円滑に処理できます。また、業務量としては意外と多いこともあって、費用対効果の観点から利用が広がっているのです。

もう1つ、利用が進んでいるのが「RPA」です。RPAとは、Robotic Process Automationの略で、これまでパソコンを使って比較的簡単で単純に繰り返していた作業を自動化するソフトウェアです。これまでの自動化とは違い、プログラミングをしてシステムを作るのではなく、作業を新人に教えるようなイメージで、直感的かつ短時間で自動化の仕組みを作ることができます。

現状のRPAの多くは、人間が与えたルールにのっとって動きや判断を行うレベルです。例えば、毎日、見込み顧客リストに載っている企業をインターネットで検索し、その結果をもとに企業情報をエクセルシートに記録する、というような作業があったとします。検索で見つからなかった場合は、別のエクセルシートに記録するというようなこともあるかもしれません。こういった比較的簡単で、繰り返し行う作業などをRPAに次々と覚えさせ、毎日、決まった時間に処理させるといった使い方があります。

その他、手続き書類の内容をシステムに登録する作業や、データを定型のフォーマットに転記する作業など、新人に教えることができる程度の一定の作業上のルールがあれば、さまざまな場面で利用することができます。

チャットボットもRPAも月額10万~30万円程度で使えるため、いろいろな業務や作業をこれらに任せていくことで、費用対効果の高いツールとなり得ます。こうしたことから、地域や規模感を問わず、さまざまな企業で利用が広がっています。その他、最近よく耳にする「機械学習」(詳細後述)などを備えたRPAも出てきており、今後ますます利用の幅も広がっていくことでしょう。

4 今、注目されているAI

最近、ニュースなどでたびたび取り上げられるAIは、チャットボットやRPAのようなレベルではなく、一段上のAIがほとんどです。ただし、利用が広がっているという段階にはなく、大企業や最先端技術に取り組む企業が先行的に行っているという状況です。その取り組みもまだ試行段階にある例がほとんどです。商用として提供されているものもまだまだ発展途上であり、今後、本当の意味での実用化が広がっていくと見るべきでしょう。

しかしながら、それは決して遠い話ではなく、もう間近に迫ってきています。昨今の技術発展が急速に加速化しているのと同様に、こうした一段上のAIは、短期間で実用レベルに近づきつつあり、それとともに利用にあたっての費用も低くなってきています。多くの企業にとって、このようなAIを利用する機会は、すぐそこに来ているのです。

それらの代表格としては、「機械学習」と「深層学習(ディープラーニング)」ではないでしょうか。そのあたりを少しご紹介します。

まず、学習するという行為の基本的なことは、「物事の違いが分かって、分けることができる」ということです。機械学習は、この分けるためのコツや軸を教えてあげると、AIがそれを生かして大量のデータで学習し、分けることができるようになる仕組みです。一方、深層学習(ディープラーニング)は、分けるためのコツや軸も、大量のデータからAIが自分で見つけ出して学習し、分けることができるようになる仕組みです。

私たちは、犬をすぐに見分けることができます。なぜ見分けることができるのかを説明するのは案外、難しいことです。こうした事柄を機械学習に覚えさせる場合には、どこを見れば分かるのかのポイントを教え、そのサンプルを大量に見せることで、見分けることができるようになります。

深層学習(ディープラーニング)の場合には、「これは犬」という大量のサンプルを与えてあげると、自分でどこを見れば分かるのかというポイントを見つけて、AI自身が見分けることができるようになります。こういった仕組みを利用して、「人間がなんとなくしていること、できていること、あるいはやりたくてもできなかったことを、コンピューターに代わりにやってもらう」というのが、最近、注目されている一段上のAIです。

今回は、AIのおおまかな話でした。次回は、AIの活用事例などをご紹介していきたいと思います。

以上

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