書いてあること
- 主な読者:資金繰りに不安があり、もう一段のコスト削減を図りたい経営者や財務担当者
- 課題:コスト削減の中でも、手始めに経費削減を行う際のポイントを確認したい
- 解決策:まずは基本的な考え方や進め方に立ち返り、事務用品費の削減を検討する。不要な印刷物の裏面を利用するなどルール変更で実行できるものから始め、コストの見える化やペーパーレス化などへと広げていく
1 難易度別・コスト削減のヒント
難易度C(ルールの変更や制度の導入をすれば実行が可能)
- 通信販売などを利用して、過剰在庫をなくす
- 詰め替えなどを利用する
- ミスコピーや不要な印刷物の裏面を利用する
- 整理整頓を徹底し、再利用が可能なものをプールして使用する
難易度B(実行するための作業や準備が必要)
- 頻繁に使用する事務用品のコストを見える化する
難易度A(事業全体への影響の考慮が必要、従業員の自発的な協力が必要)
- ファイルやスキャンデータのやり取りなどでペーパーレス化する
- 適正数と現在の使用実態を把握し、管理する
2 事務用品費を削減する際の考え方
事務用品費は、オフィスで使用する事務用品に掛かる費用のことで、
文具、コピー用紙、トナーなどの消耗品に対する費用
が該当します。事務用品費は一つひとつが高価ではなく、コスト削減に成功しても削減額が少額などの点から、社内でも重要視されず、見逃されがちです。
ですが、コスト削減を徹底させるには、対象や部門などを問わず、聖域を設けないで全社的に取り組むことが大切です。たとえ事務用品のような少額の削減額しか効果を得られない取り組みであっても、全社員にコスト削減の意識を植え付け、共有するために取り組むべき課題といえます。
3 事務用品費を削減する際の具体的な手法
1)難易度C:通信販売などを利用して、過剰在庫をなくす
カタログやインターネットの通信販売を利用することで、事務用品を安く購入することができます。1回の注文が1000円以上であれば、送料は無料などとしている場合も多く、当日・翌日などに配送され、インターネット上で購入履歴なども確認できます。
必要なときに必要な数量だけ購入できるため、「過剰在庫」を避けることができます。
2)難易度C:詰め替えなどを利用する
ボールペンなどの文具は消耗品というイメージが根強いものの、替え芯や詰め替えなどを利用すれば、長く使うことができます。ボールペン以外にも、替え芯や詰め替えを利用できる文具は多数あります。
また、プリンターのトナーにリサイクルトナーを使用するなどして、コストを削減することができます。ただし、リサイクルトナーは故障の際に、メーカー保証の対象外となるケースがあるため注意が必要です。もし、メーカー保証、故障などの問題が解消できるのであれば、使用するトナーを廉価なリサイクルトナーにすることも検討してみましょう。
3)難易度C:ミスコピーや不要な印刷物の裏面を利用する
ミスコピーや不要な印刷物は、すぐに捨ててはいけません。裏面が白紙であれば、社内用のメモ用紙に利用することができるからです。
例えば、プリンターの横などに段ボール箱を設置し、「使える用紙はこの箱へ」などと貼り紙をしておけば、利用可能な紙を回収することができます。ただし、個人情報や機密情報が記載されている印刷物はメモ用紙にせず、シュレッダーにかけるようにします。
4)難易度C:整理整頓を徹底し、再利用が可能なものをプールして使用する
基本的なことですが、整理整頓を徹底します。これができないと、まだ使用できる事務用品があるにもかかわらず新たな事務用品を購入したり、新品を使い始めたりといったことにつながります。清掃時などに、各従業員の机周辺の整理整頓を徹底しましょう。
また、整理整頓によって、事務用品で使っていないものや、使用可能なものが出てきた場合、それを片付ける場所を確保し、新品より先に使うことを徹底しましょう。
5)難易度B:頻繁に使用する事務用品のコストを見える化する
従業員が頻繁に使用する事務用品は、どれくらいのコストが掛かっているのかを実感してもらうために、コストの見える化を図りましょう。
例えば、「1枚当たりのコピー代:5円、1日の平均コピー枚数:500枚、1日当たりの平均コピー代:2500円です。無駄なコピーを削減するようにご協力ください」など、1日のコピー代を記載した紙をコピー機に貼り付けるなどして、従業員が具体的な数値としてコストを把握し、コスト削減を意識するようにします。
6)難易度A:ファイルやスキャンデータのやり取りなどでペーパーレス化する
プリンターのトナーを節約するためには、不必要な印刷を極力減らすことが重要です。「会議時の資料は基本的に印刷禁止」などとして、ファイルやスキャンデータなど、データをやり取りします。社内サーバーやクラウド上などに会議用のファイルを格納する場所をあらかじめ設けておくなど、データの格納・保管ルールを決めておくと、やり取りがスムーズです。
この取り組みは、トナーの節約だけでなく、紙の節約にもつながります。また、書類の枚数などを抑制できるため、保管や整理といった意味での業務環境や業務効率を多少改善することにつながります。
7)難易度A:適正数と現在の使用実態を把握し、管理する
事務用品費のコスト削減の前提は、必要なものを必要な数量だけ使うという使用量の適正化です。コスト削減を進める経営者や購買・支給を担当する総務部などの部門、事務用品の管理担当者(以下「管理側」)が、自社の適正数と使用実態を把握し管理することで、今後の事務用品数の適正化や削減目標などを、客観的な数値として明示することができます。
まず、管理側は経費請求書などから、「どの部門で、どの事務用品が、どれだけ使われているか」を把握するところから始めましょう。次に、各部門の事務用品請求担当者からヒアリングなどを行い、各部門の事務用品の使用実態を詳細に把握し、部門間での比較などを行って、部門ごとに妥当と考えられる適正数を算出します。
リモートワークをするために、事務用品を自宅に持ち帰る人がいるような場合、管理側は、改めて使用実態を把握する必要があります。また、リモートワークを行う人に対して、特に消耗品について公私の区別を徹底するよう注意を喚起しておくとよいでしょう。
以上(2023年2月)
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画像:pexels