書いてあること

  • 主な読者:資金繰りに不安があり、もう一段のコスト削減を図りたい経営者や財務担当者
  • 課題:コスト削減の中でも、手始めに経費削減を行う際のポイントを確認したい
  • 解決策:まずは基本的な考え方や進め方に立ち返り、材料費の削減を検討する。開発段階での機能や材料そのものの見直し、調達段階での仕入先の見直しなど、メリットとデメリットを理解した上で実施する

1 難易度別・コスト削減のヒント

1)開発段階

難易度A(事業全体への影響の考慮が必要)

  • 製品の機能の価値と、機能の実現コストを評価する
  • 使用する材料を見直す

2)調達段階

難易度B(実行するための作業や準備が必要)

  • 材料市況や為替など外部環境の変化に備える
  • インターネットでの調達を検討する

難易度A(事業全体への影響の考慮が必要、対外的な交渉が必要)

  • 取引数量を増やす
  • 現金仕入れを行う
  • 支払いサイトを短縮する
  • 仕入先を見直す

2 材料費を削減する際の考え方

1)直接材料費と間接材料費

材料費とは、製品を製造するために消費した物品の原価です。製品の主たる実体を構成するか否かで、直接材料費と間接材料費に分けられます。

直接材料費は、

製品の主要部分に用いられる物品の費用である主要材料費(原料費)、製品に取り付けられる部品の費用である買入部品費など

が該当します。

一方、間接材料費は、

接着剤や塗料など、製品を製造する際に補助的に消費される物品の費用である補助材料費、製品を製造する機械設備に使用する潤滑油や機械油などの消耗品の費用である工場消耗品費、金づちやドライバー、机・椅子などの工具・器具・備品の費用である消耗工具器具備品費など

が該当します。

材料費をコスト削減する際は、各材料の特性や購買実態を踏まえながら、最適な案を検討する必要があります。

2)製品の開発段階から材料設計を入念に行う

例えば、「耐久性」を売りとして製品の開発を企画したとします。しかし、アンケート調査を行った結果、顧客が製品の「耐久性」を重要視していないことが分かれば、「耐久性」を実現するために掛かる材料費は、削減の対象です。

しかし、生産が始まってからでは見直しが難しくなります。製品の開発段階から材料設計を行い、使用する部品の点数を減らせないか、部品の加工に要する工数を減らせないか、標準化した部品を組み合わせてモジュール化できないかなどを検討します。そして、調達段階で安価に仕入れる方法を検討するのがポイントです。

3)調達先の変更はメリットとデメリットを理解する

材料の調達段階におけるコスト削減の手法には、それぞれメリットとデメリットがあります。例えば、取引先を集約して取引数量を増やすと価格引き下げの可能性は高くなる一方、少数の取引先に依存しがちで、リスク管理の面からは好ましくない場合もあります。こうしたメリットとデメリットを理解した上で、材料費のコスト削減を進めていくことがポイントです。

3 材料費を削減する際の具体的な方法(開発段階)

1)難易度A:製品の機能の価値と、機能の実現コストを評価する

製品はさまざまな材料・部品で構成されており、それらの材料・部品は製品を特徴付ける個々の機能を果たしています。しかし、全ての機能が製品にとって本当に必要な機能とは限りません。

例えば、他社との差異化を図るためにさまざまな機能を付加したものの、製品が次々とリニューアルされていくうちに、当初の目的が曖昧になったり、多くの他社製品にも同様の機能が付加されて、既に差異化要因にならなくなったりしているケースが見られます。

材料費をコスト削減する際は、製品の機能と、それを実現するために使用する材料・部品に掛かるコストを評価します。評価は、実現された機能が顧客にとってどれだけの価値をもたらすのかという視点で行い、コストが掛かる割に価値が低い機能があれば、見直しを図ります。

2)難易度A:使用する材料を見直す

材料は、常により安いものに替えることができないかを検討します。ただし、製品の品質や価値を低下させては意味がありません。企業の信頼にも関わる問題ですので、材料を替えることの影響を、さまざまな角度から検討する必要があります。また、材料を替えることで、加工費が高くなってしまわないか考慮する必要もあります。

4 材料費を削減する際の具体的な方法(調達段階)

1)難易度B:材料市況や為替など外部環境の変化に備える

事業のグローバル化、製品の安全性や環境配慮へのニーズの高まりなど、材料・部品の調達を取り巻く環境は変化しています。材料費は、材料市況や為替によって変動するため、仕入先との情報連携を密にしつつ、景気の先行きも見据える必要があります。

購買担当者が知っておきたい指標の1つに、「PMI(Purchasing Managers’ Index、購買担当者景気指数)」があります。PMIは、製造業やサービス業の購買担当者を対象にアンケート調査や聞き取りなどを行い、新規受注・生産高・受注残・価格・雇用・購買数量などの指数に一定のウエートを掛けて算出されます。通常、50を分岐点とし、それを上回ると景気拡大、下回ると景気後退を示唆するとされます。

英国の金融情報・調査会社IHSマークイットが各国のPMIを算出している他、米国ではサプライマネジメント協会、中国では国家統計局・中国物流購買連合会がPMIを算出しています。

2)難易度B:インターネットでの調達を検討する

インターネットの発達に伴い、企業の中にはインターネットを経由した材料の調達を行っているところもあります。インターネットを経由し、仕入先と原材料や部品の情報を交換し、見積もりを取りながら商談を行い、仕入れを検討します。

インターネットでの調達によって削減が期待できるコストには、原材料や部品の仕入価格の削減に加え、仕入れに関連する業務の効率化もあります。このため、仕入れを担当する部署などの人件費を削減できる可能性もあります。

また、企業の中には、購買情報をウェブサイトに掲載し、仕入先を広く募集する「リバースオークション(逆オークション)」を導入しているところもあります。これは、仕様や契約条件などを専用のウェブサイトに掲載し、最低価格で落札した仕入先と契約する手法です。リバースオークションを用いることで、仕入先が提示する相場を把握でき、コスト削減が見込まれます。

3)難易度A:取引数量を増やす

取引数量を増やし、交渉力を高めることで、仕入価格を引き下げられる場合があります。具体的な方法は次の通りです。

1.取引先を集約する

類似した原材料などを複数の取引先から仕入れている場合は、取引先を集約することで、取引数量を増やすことができます。

2.社内の発注窓口を集約する

複数の工場があり、原材料の発注をそれぞれの工場で行っている場合は、発注窓口を1つに集約することで、取引数量を増やすことができます。

3.他社と共同仕入れを行う

同じ材料を仕入れている他社と共同仕入れを行うことで、取引数量を増やすことができます。  なお、地域によっては、同業種の企業などが共同仕入れなどを目的とした協同組合などの団体を設立していることがあるので、こうした団体へ加入できないか相談・検討してもよいでしょう。

4)難易度A:現金仕入れを行う

仕入れの支払いを手形で行ったり、掛け取引で購入したりするケースは多くありますが、現金で仕入れを行えば、仕入先は資金繰りが楽になります。そのため、現金決済を交渉材料に、仕入先と単価の引き下げについて折衝することも可能でしょう。

5)難易度A:支払いサイトを短縮する

支払いサイトを短縮できるならば、仕入先にとって都合の良い条件改善となります。例えば、平均サイトが60日であるところを45日に短縮できれば、その分、仕入先は短期間で資金化を図れます。そのため、支払いサイトの短縮を交渉材料に、仕入先と単価の引き下げについて折衝することも可能でしょう。

6)難易度A:仕入先を見直す

原材料や部品は商社や問屋などを通じて仕入れるのが通常です。仕入れルートが、元卸、1次卸、2次卸と多段階になっていると中間マージンが掛かる分、仕入価格が高くなります。直接メーカーから仕入れることができれば最良ですが、それができなくても、メーカーに近い商社や問屋などから仕入れる努力をしましょう。

法人取引の場合、仕入先を見直す機会はあまり多くありませんが、単価の引き下げ交渉が不調となってしまった場合には、仕入先の見直しの検討も必要でしょう。

以上(2023年2月)

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画像:pexels

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