書いてあること

  • 主な読者:納期を管理したいと考える経営者
  • 課題:納期を守れない、抜本的な対策を講じることができない
  • 解決策:日程管理や進度管理を導入するなどした体制を築く

1 納期に対する“甘え”をなくす

1)なぜ、納期遅れが生じるのか?

製造業でいわれる「Q:Quality(品質)」「C:Cost(コスト)」「D:Delivery(納期)」は、その他の業種においても重要であることは言うまでもありません。しかし、これらをバランスよく実現することは難しいものです。

例えば、「D:Delivery」です。納期については社員の甘えが出やすく、なかなか実現することができません。「多少遅れても大丈夫」であるとか、「自分だけの責任ではない」などの意識が働くためです。

仕事の流れに沿って、部門別の納期を分類してみましょう。1つの業務は複数の部門や担当者によって成立していることがよく分かりますし、どこかで納期遅れが生じれば、全体に悪影響を及ぼすことになってしまいます。

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図表1で示した6つの納期の中で最も長いのは「1」であり、ゴールである「6」に近づくほど短くなります。取引先納期である「1」と、社内納期である「2」との間に余裕がないと納期遅れが生じる恐れがあるため、多くの企業で相応の余裕を設けています。

2)過度の余裕による弊害

とはいえ、「1」と「2」の間に必要以上の余裕を設けるのは問題です。製造部門の担当者は「2」の納期に相当な余裕があると感じ、「3」にも余裕を持たせますし、社内ということもあり、納期厳守の意識がルーズになります。

加えて、「多少の遅れは急げば取り返せる」という、間違えた安心感も生まれます。そして、納期に余裕があったのにギリギリになって追い込みをかける、まるで“夏休みの宿題”のような状態になり、焦って対応した分、歩留まりも悪くなります。

3)適切な納期の設定

このように、必要以上の余裕は、納期意識を低下させるだけでなく、生産性や部門間の信頼関係をも低下させてしまいます。もちろん、歩留まりが悪くなれば、クライアントの信用も失います。

そこで、週1回、納期に関する情報共有を図るなど各部門の担当者は連絡を密にし、適正納期を設定し、それを必ず順守するように心掛けます。わざわざ集合する必要はなく、社内SNSなどを利用すれば十分でしょう。

2 納期管理のための実践方法

1)日程管理(生産の着手、完了時期をいつにするか決める)

日程管理では、「ガントチャート」が多く利用されます。ガントチャートとは、生産管理やプロジェクトの管理などで使用される工程管理図のことで、作業計画やスケジュールを棒グラフで横形に示します。

ガントチャートで日程計画は一目で分かりますが、部門や部署との関係が不明瞭です。工程が多いとガントチャートで管理するのは難しいため、相互関係を明確化したパート図を使った日程管理をしましょう。

2)現品管理(何が、どこに、どれだけあるのかを把握する)

現品管理は、次の進度管理に直接結び付く基本要素で、「工程間の現品受け渡しを容易にする」「運搬や保管が分かりやすいように整理整頓する」「現品の紛失や劣化によるロスを防止する」ためのものです。例えば現品の保管であれば、「何が、どこに、どれだけあるのか」を把握するために、管理状況(安全面など)を確認します。

3)進度管理(工程における仕掛量や進み具合を把握する)

毎日の生産状況を把握するためには、「生産進度管理図」や「流動数曲線による進度表」を用いて管理します。「流動数曲線による進度表」は継続生産を行うような現場には適していますが、個別生産には適しません。

また、作業の遅れを段階的に早期発見する仕組みとして「カムアップシステム」を導入することも一案です。カムアップシステムは納期前に、担当者に納期を確認することを全ての納期段階で行うので、納期遅延対策としては非常に有効です。

4)基準日程の策定(納期に対して各工程作業の着手を決めるためのベース作り)

基準日程とは、「工程待ち→加工→検査→運搬」の全ての作業日数を決めるものです。基準日程は継続生産、ロット生産、少量多品種生産を行う場合に設定方法が変わります。また、ある程度経験と勘に頼るところがあります。ただし、基準日程が適切でないと納期遅延の原因となります。

5)現場や企業としての取り組み

1.現場としての取り組み

納期遅延対策として行われているのが、生産現場での「差し立て板(さしたてばん)」「工程管理板」による確認です。これらを利用すれば、工程管理者や作業者が一目で作業の進捗状況を把握することができます。

また、工程管理に正確性を期するためにバーコードやQRコード(二次元バーコード)付き作業票を取り入れているところもあります。バーコードやQRコードの導入は、作業者の作業票記入を省くだけでなく、各工程の進捗状況を把握できるメリットがあります。加えて、工程ごとの実績や停滞時間なども明らかにできることから、データを分析しやすくなり、問題点の把握も容易となることから、さらなる改善につながります。

2.企業としての取り組み

納期管理を部門ごとに徹底して行うのは当然ですが、一歩先を考えれば、企業全体で、あるいは下請けメーカー、物流会社、販売会社など関連するところ全体で一貫した納期管理を行う必要があるでしょう。

製品製造に関わる関連部門を巻き込んで情報化を図ることが第一歩です。正しい伝達なしに、納期管理は実践できませんし、納期遅延などの対応にも苦慮することになります。正しい情報が即座に伝達できるシステムの構築が納期管理には必要です。

以上(2019年4月)

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画像:unsplash

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