書いてあること
- 主な読者:ITを活用した業務効率化に取り組みたいと考えている経営者
- 課題:他社と比べて自社がどの程度遅れているのか、何から着手すればよいのか知りたい
- 解決策:多くの企業が導入している項目や業務効率化に成功しやすい項目などを参考に、優先順位を付けて取り組む
1 ITを活用した効率化、他社はどうなの? 何からすべき?
「ITを活用して業務効率化を!」――。最近よく耳にする言葉ですが、一口にITを活用した業務効率化といっても、導入すべき分野や項目はさまざまです。項目によっては、既に中小企業にも定着しているものや経営者の関心の高いものがある一方で、頑張って取り組んでみても業務効率化につながる可能性が低いものもあります。実際にITを活用して業務効率化に結びつけるには、項目ごとに優先順位を付けるべきです。
そこで、この記事では、経営者を対象に実施した、ITを活用した業務効率化の取り組み状況についてのアンケート結果を、ランキング形式で紹介します。アンケートは2021年5月にインターネットで行い、経営者111人から回答を得ました。ITを活用した業務効率化に取り組んでいる企業、これから取り組もうと考えている企業の皆さんが、今、何に優先して取り組めばよいのかの判断材料にご活用ください。
なお、質問した取り組みは30項目に上り、分野は「社内の連絡」「社内の機器」「経理関連」「営業関連」「人事・総務関連」と多岐にわたります。詳しくは巻末をご参照ください。
2 ライバルに後れを取るな!:既に導入して成功している企業が多い項目
30項目のうち、「既に導入し、業務効率化に成功している」との回答率の高かった上位5項目は、次の通りです。
インターネットによるアンケートということもあり、さすがにフロッピーディスクの廃止やインターネット回線の導入は、既に終えている企業が少なくないようです。
注目すべきは、インターネットバンキングの活用です。まだ経理担当者が銀行回りをしている企業は、早めに見直しを検討したほうがよさそうです。また、チャットやSNSに詳しい社員も増えているので、こうしたツールの活用や、ノートPC・タブレット端末の支給が、業務効率化につながる可能性は高まっているといえるでしょう。
3 今、最もホットなのはこれ!:多くの企業が取り組みたいと思っている項目
30項目のうち、「早急に取り組みたいと思っている」との回答率の高かった上位7項目(同率第2位まで)は、次の通りです。
上位7項目のうち、4項目がペーパーレス化に関する項目でした。ペーパーレス化はITの活用を広げていくために、避けては通れない入り口です。今のうちに、ペーパーレス化できる項目がないか、検討しておくとよいでしょう。
4 ライバルは尻込みしている!:取り組みたいけど難しいと思われている項目
30項目のうち、「取り組みたいが、実際に導入するのは難しいと思う」との回答率の高かった上位5項目は、次の通りです。
見積書・請求書・発注書といった取引関連の書類のペーパーレス化については、図表2のように早急に取り組みたいという企業が多い一方で、導入は難しそうとの見方も多くなっています。経営者にとっては最も「頭の痛い課題」といえそうですが、既に導入したと回答した28人のうち、6割弱に当たる16人が「業務効率化に成功している」と回答しています。同業他社を引き離すために、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
「日本ならでは」の課題ともいえるのが、FAXやハンコの廃止です。この2項目がボトルネックとなってITの活用が滞る可能性もありますので、この際、思い切って検討してみるのも一策です。
5 導入した場合の成功率と失敗率に注目
せっかく導入しても、業務効率化につながらなければ、経費の無駄遣いとなるだけでなく、社員の間に混乱を来すという弊害も生じてしまいます。導入した場合の成功率と失敗率を参考に、取り組むべきかどうかを検討してみてはいかがでしょうか。
1)導入して業務効率化に成功した割合が高い項目
30項目のうち、「既に導入し、業務効率化に成功している」「導入したが、あまり成果が上がっていない」と回答した人の中で、「既に導入し、業務効率化に成功している」人の割合が高かった上位5項目は、次の通りです。
チャット・SNSツールの活用やフロッピーディスクの廃止に関しては、既にプライベートでも定着していることが、社員にはなじみがあり技術的にも対応が容易という、ソフト・ハードの両面で成功率を高める要因になっているとみられます。
一方、稟議書のペーパーレス化、インターネットバンキングの活用、電子納税・電子申告については、社員全員が関わるものではなく、一部の担当者だけが対応すれば導入可能という点が、成功率の高さにつながっているとみられます。経理関連の項目は、多くの社員の対応が必要な「経費申請や領収書、会計処理などの書類のペーパーレス化」を除くと、比較的成功率が高くなっています。
2)導入しても成果が上がっていない割合が高い項目
30項目のうち、「既に導入し、業務効率化に成功している」「導入したが、あまり成果が上がっていない」と回答した人の中で、「導入したが、あまり成果が上がっていない」人の割合が高かった上位5項目は、次の通りです。
上位5項目のうち、営業関連が上位3項目を占めています。顧客分析に基づくターゲットマーケティングやWebサイトを使ったマーケティングなど、今までの営業の手法と大きく異なる上に、専門性の高さが難易度を高めている背景にありそうです。
また、非対面での研修や、図表にはありませんが第6位に入っている「テレビ会議システムを活用した営業や接客(オンライン商談)」(45.0%)など、対面の強みを持っている項目は、ITを活用しても強みを維持できるかどうか慎重に検討する必要があるかもしれません。
3)成功率を分ける要因
一概には言えませんが、大きな傾向として、導入して成功する可能性が高い項目は、
- 少ない人数が対応すれば導入できる
- 既に社員にとってなじみがある
- 技術的に導入が容易
といった要素が影響している側面もあるとみられます。
一方、導入をしても失敗する可能性の高い項目は、
- 従来と手法が大きく異なる
- 専門性が高い
- IT化すると強みを発揮させにくい
といった要素が影響しているといえるかもしれません。
6 参考:アンケートで質問した項目のリスト
今回のアンケートでの質問項目は、次の30項目です。
以上(2021年8月)
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画像:pixabay