書いてあること

  • 主な読者:資金繰りに不安があり、もう一段のコスト削減を図りたい経営者や財務担当者
  • 課題:コスト削減の中でも、手始めに経費削減を行う際のポイントを確認したい
  • 解決策:まずは基本的な考え方や進め方に立ち返り、車両費の削減を検討する。社用車の利用を許可性にするなどによる燃料費の抑制といった難易度の低いものから始め、社用車の車種および適正台数の見直しなどへと広げていく

1 難易度別・コスト削減のヒント

難易度C(ルールの変更や制度の導入をすれば実行が可能)

  • 社用車の利用を許可制にする(車両を利用する頻度が低い場合)
  • 交通事故防止のための研修を実施する

難易度B(実行するための作業や準備が必要)

  • 法人向けクレジットカードを活用する
  • 従業員の車両利用とデータを一元管理する
  • 社用車の車種を見直す
  • カーリースやサブスクリプション・サービスを利用する
  • 自家用自動車管理業者を活用する

難易度A(事業全体への影響の考慮が必要、従業員の自発的な協力が必要)

  • 社用車の適正台数を割り出す(レンタカーやカーシェアリングの活用)
  • 従業員にエコドライブを徹底させる

2 車両費を削減する際の考え方

車両費とは、自動車(以下「社用車」)の維持管理のために支払う費用で、

社用車の自社保有に伴う減価償却費、税金(環境性能割、自動車税または軽自動車税、自動車重量税)、保険料(自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」)、任意保険)、駐車場代、燃料費、走行中の諸費用(高速道路料金、駐車料金など)、修繕費、消耗品費、整備費など

が該当します。

車両費は、社用車の台数や種類、排気量、あるいは所有形態(自社で所有、リース、レンタル、カーシェアリング、サブスクリプションなど)などを見直すことによって、削減できる余地があります。また、走行ルートや走行時間、走行方法などの見直しも、車両費の削減につながる可能性があります。

単純な社用車の利用廃止や制限は、業務効率を低下させてしまうことがあるので、車両の用途や頻度に応じてコスト削減策を検討することがポイントになります。

3 車両費を削減する際の具体的な方法

1)難易度C:社用車の利用を許可制にする(車両を利用する頻度が低い場合)

都市部では渋滞が多く、公共交通機関などよりも車両を利用したほうが、時間がかかることがあります。社用車を使う必要性が高くない場合であれば、利用を控えることがコスト削減につながります。

また、社用車を利用する頻度が低い場合、従業員にその都度、利用届を提出させる事前許可制にすることで、無駄な利用を防ぐことができるようになります。

2)難易度C:交通事故防止のための研修を実施する

従業員に対して安全運転を徹底し、交通事故の防止に取り組むことも、車両費のコスト削減につながります。自動車保険には、一定期間、交通事故を起こさなければ保険料を割り引くなどのサービスを実施しているものがあります(各自動車保険によってサービスの内容は異なります)。

例えば、従業員に対して定期的に交通事故防止の研修を行うなどの取り組みが考えられます。損害保険会社では、自動車保険に加入している法人向けに交通事故防止支援サービスなどを実施しているところもあります。こうしたサービスを利用して交通事故防止に努めてもよいでしょう。

3)難易度B:法人向けクレジットカードを活用する

カード発行店との契約価格で給油ができる、法人向けクレジットカードを活用するのも1つの方法です。法人向けクレジットカードでは、給油代金を指定口座から自動振替で支払うため、請求書・領収書の事務処理が大幅に軽減されます。また、カード利用代金明細書によって、使用者ごとの月間利用状況を把握することができます。経費支出のチェックが容易となり、予算管理や経費節減にも役立ちます。

4)難易度B:車両の車両利用とデータを一元管理する

給油データを利用して、営業担当者やルートドライバーの走行距離、給油量、給油頻度、給油代金を管理しましょう。

燃費管理のアプリがありますので、利用するとよいでしょう。中には、スマートフォンのカメラで給油時のレシートを撮影し、走行距離を入力するだけで燃費が算出されるアプリや、スマートフォンを携帯することで車両の走行記録を残せる機能が付いたアプリもあります。

また、営業担当者1人につき1台の営業車を割り当てている企業であれば、車両ごとに給油記録のためのカードなどを用意しておき、そこで集めたデータを基に個人の削減目標などを設定することもできます。特に燃費の良い運転を行う従業員がいれば、その運転技術を模範として、他の従業員にも共有させるようにしましょう。

5)難易度B:社用車の車種を見直す

1.軽自動車に変える

営業などに普通自動車を使用している場合、車両を軽自動車に変更することも1つの方法です。軽自動車のメリットとしては、「税金が安い」「細い路地でも走行が可能」などが挙げられます。

2.ハイブリッド車など環境性能に優れた自動車に変える

車両の燃費は走行距離と速度によって変わるため一概には言えませんが、一般道で同じ距離を走行するのであれば、普通自動車よりもハイブリッド車や電気自動車などのほうが燃費が良いため、燃料費が少なくて済みます。車両を使う頻度が高く走行距離が長い場合、ガソリン車よりもハイブリッド車を選択するほうが、中長期的にはコスト削減につながるでしょう。

環境性能に優れた自動車は、購入に際して政府の補助金を得られる場合もありますので、車両の更新期には購入を検討してみるとよいでしょう。

6)難易度B:カーリースやサブスクリプション・サービスを利用する

リース契約やサブスクリプション・サービスを活用して車両を使用することも一策です。メンテナンスリースやサブスクリプション・サービスであれば、車両本体とメンテナンスを含む維持管理業務のほとんどをリース事業者やサブスクリプション・サービス事業者に引き受けてもらえます。

サービスの利用期間中は、車両に掛かる課税やその手続き、メンテナンスや車検に掛かる費用や手続きが不要です。ただし、利用期間中の解除・解約は、カーリースの場合は原則としてできませんし、サブスクリプション・サービスの場合は追加精算金が必要になることがあります。

7)難易度B:自家用自動車管理業者を活用する

企業が社用車の管理・運行のために行う業務をパッケージ化して請け負う「自家用自動車管理業者」を活用することも1つの方法です。車両本体、自動車税・重量税、自賠責保険料は企業(ユーザー)の負担となりますが、自家用自動車管理業者のサービスを活用すれば、任意自動車保険の加入や事故処理などは自家用自動車管理業者の負担となります。社用車を保有する企業にとっては、社用車の管理・運行に伴うさまざまな業務を自家用自動車管理業者1社に委託することができるため、リスク管理やコスト削減が望めます。

例えば、自社で管理・運行している役員専用車などがあれば、運転手の人件費などの総費用を算出し、その総額と委託した場合の総額および減少する事務負担などを勘案し、選択肢の1つとするのもよいでしょう。

8)難易度A:社用車の適正台数を割り出す(レンタカーやカーシェアリングの活用)

車両費のコスト削減には、社用車の適正台数の把握が欠かせません。営業や配送の効率を下げない範囲で、適正台数を算出し、その台数に近づけていきましょう。仮に廃止できる台数がわずか1台でも、それは大きなコスト削減につながります。

適正台数を割り出すためには、現在の使用台数から「走行ルートや回る順序、頻度などが重複していないか」「より効率的に回る方法はないか」を検討していきましょう。

最近では、オンラインを活用した非対面による営業や外部との打ち合わせも広がってきており、車両での移動を伴う面会を代替できる機会も増えています。こうした要素も踏まえながら、適正台数の見直しを図りましょう。

車両の利用頻度が低めで、事前に車両の利用計画が立てられるような場合は、社用車ではなくレンタカーやカーシェアリングを活用することも検討してみましょう。レンタカーやカーシェアリングは、社用車の場合であれば必要となる税金・保険・駐車場代などが掛からないため、少々割高となる料金を払ったとしても、利用頻度によってはコスト削減につながります。

また、レンタカーは、荷物の量が多いときには大型車、少ないときには軽自動車など、用途に応じて車両を使い分けられるメリットもあります。カーシェアリングについては、15分などの分単位で料金が決まることが多いため、従業員が少しでも無駄な車両の利用を控えようとする意識が高まる傾向もあるようです。

9)難易度A:従業員にエコドライブを徹底させる

エコドライブを従業員に徹底させましょう。燃費向上によって給油頻度が減少すれば、車両費のコスト削減につながります。例えば、交通エコロジー・モビリティ財団では、エコドライブ講習を受講できる自動車教習所などを認定し、ウェブサイトで公表しています。こうしたサービスを利用してエコドライブの徹底に努めるとよいでしょう。

以上(2023年2月)

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画像:pexels

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