書いてあること

  • 主な読者:資金繰りに不安があり、もう一段のコスト削減を図りたい経営者や財務担当者
  • 課題:コスト削減の中でも、手始めに経費削減を行う際のポイントを確認したい
  • 解決策:まずは基本的な考え方や進め方に立ち返り、従業員の通勤費と出張費の削減を検討する。定期券を6カ月単位にするなどルール変更で実行できるものから始め、エコ通勤の奨励など従業員の自発的な協力が必要なものにまで広げていく

1 難易度別・コスト削減のヒント

1)従業員の通勤費

難易度C(ルールの変更や制度の導入をすれば実行が可能)

  • 定期代を3カ月・6カ月単位で支給する
  • リモートワークが中心になる場合は、交通費を実費で支給する

難易度B(実行するための作業や準備が必要)

  • 適正な通勤経路かを確認する

難易度A(従業員の自発的な協力が必要)

  • エコ通勤(自転車・徒歩など)を推奨する

2)従業員の出張費

難易度C(ルールの変更や制度の導入をすれば実行が可能)

  • グリーン車の利用を禁止する
  • タクシーの利用は事前申請とする
  • 運賃の安い航空会社を利用する
  • 部屋のグレードは従業員も役職者も同じにする
  • 短期宿泊の場合は格安ビジネスホテルを利用する

難易度B(実行するための作業や手続きが必要)

  • 「エクスプレス予約」などの割引切符を利用する
  • 割引チケットを利用する
  • チケットショップで格安チケットを探す
  • 1日乗車券を利用する
  • レンタルやシェアリングサービスを利用する
  • ホテル予約の割引プランを利用する
  • インターネット予約サイトで格安ホテルを利用する
  • 長期宿泊の場合は短期賃貸マンションを利用する

2 従業員の通勤費・出張費を削減する際の考え方

従業員の通勤費・出張費は、ともに移動に必要となる費用です。

通勤費は、

企業が通勤のために従業員に支給する費用で、電車・バスの定期代、自動車通勤の場合のガソリン代など

が該当します。

出張費は、

取引先を訪問した際などの運賃や宿泊などのための費用で、取引先を訪問する際の電車運賃やタクシー代、出張時の交通費や宿泊費など

が該当します。

通勤費は決まった経路に関する費用のため、コスト削減の具体的な手法が限られます。また、従業員が住む場所や交通手段は基本的に社員が自由に決めるため、企業側の意向だけではコスト削減に結び付けられない側面があります。

これに対して出張費は、交通手段や宿泊先の選択肢が多く、通勤交通費に比べてコスト削減の余地が大きい可能性があります。そもそも企業の判断によって、対面による業務や打ち合わせが必要かを見直し、オンライン会議で代替できるものは切り替えることで、コスト削減につなげることも検討できます。

なお、多くの企業では、通勤費については「就業規則」、出張費については「旅費交通費規程(出張旅費規程)」において、それぞれの費用を支払う際の基準やルールを定めています。従来は実費を支給していたところを、「上限3万円/1カ月」などのようにする場合は、就業規則や旅費交通費規程の変更が必要になります。

3 通勤費を削減する際の具体的な方法

1)難易度C:定期代を3カ月・6カ月単位で支給するなど

定期代を1カ月単位ではなく、3カ月・6カ月単位で支給します。例えば、東京駅と千葉県の船橋駅間(JR東日本・総武線)の定期代だと、「1カ月・1万1850円」「3カ月・3万3790円」「6カ月・5万6910円」です。1カ月定期を6回購入した場合(7万1100円)と6カ月定期を購入した場合とでは、1万4190円(7万1100円-5万6910円)の差が出ます。

また、リモートワークが中心となっている社員には、定期代を支給するのではなく、出社の際に掛かった実費のみを支給したほうが安くなる可能性があります。先ほどの東京駅と船橋駅間の往復の運賃は792円(ICカードを使わない場合は800円)ですので、1カ月のうち出勤する日数が12日未満の場合は、6カ月定期の費用を支給するよりも実費で支給したほうが安い計算になります。

2)難易度B:適正な通勤経路かを確認する

従業員に通勤経路を再度確認してもらい、通勤時の負担が増えることなく、より安く利用できる経路があれば、そちらに変更してもらうように通知します。

3)難易度A:エコ通勤(自転車・徒歩など)を推奨する

自動車などの環境負荷の高い交通手段から、公共交通機関・自転車・徒歩などの交通手段に変えるエコ通勤を推奨します。エコ通勤はコスト削減だけでなく、従業員の健康増進や環境負荷を低減することにもつながります。

4 出張費を削減する際の具体的な手法

1)難易度C:グレードの高い交通手段や宿泊施設の使用を制限する

グリーン車やタクシー、フルサービスキャリア(従来型の航空会社)といった交通手段や、グレードの高いホテルおよび部屋の使用を制限することで、コスト削減につながります。

その際、もし一定の役職以上の従業員とそれ以外の従業員との格差がある場合は、まず格差解消から着手すれば、多くの従業員からの納得感を得られやすくなるでしょう。

タクシーチケットを使用している場合は廃止し、利用する従業員には、事前に申請してもらうようにします。タクシー利用を制限することで、従業員の深夜残業の自粛などの効果も期待できます。

2)難易度B:格安チケットや割引プランを利用するなど

電車の場合、割引切符を利用することで、コスト削減を図ることができます。例えば、JR東海とJR西日本では、携帯電話やパソコンから東海道・山陽新幹線の割引切符を予約できるチケットレスサービス「エクスプレス予約」などを提供しています。東京駅から新大阪駅まで新幹線指定席を利用した場合、通常料金が1万4720円のところを1万3620円で購入できるため、1100円安くなります(繁忙期などを除いた日程での料金です。対象のクレジットカードで入会手続きをし、年会費1100円(税込)が必要です)。

また、最寄りのチケットショップで格安チケットを販売していないか、日頃からチェクしておくこともよいでしょう。

飛行機の場合、早期予約が可能であれば、多くの航空会社が行っている「早割」「特割」といった割引を利用しましょう。航空会社によっては自社の会員カードによる決済限定で、航空チケットの割引を実施している場合があります。「早割」などに比べて割引率は低いものの、当日の予約変更が可能であるといったメリットがあります。航空チケットの比較予約サイトなどでは、出発日時などの条件によって航空会社各社の運賃を比較することができるため、こうしたサイトを活用するとよいでしょう。

この他にも、旅行会社などが往復の航空チケットと宿泊費をセットにした格安チケットを販売しています。中には航空チケットと宿泊費を合わせた金額が、片道の航空チケットの普通運賃より低価格な場合がありますので、旅行会社などのウェブサイトをチェックするようにしましょう。

3)難易度B:出張先での移動は1日乗車券やレンタルサービスなどを検討する

出張先で特定路線を使用して一日中巡回する場合などは、1日乗車券を購入したりするとよいでしょう。

出張先で広範囲にわたる複数の取引先を訪問するなどの場合は、公共交通機関やタクシーを使うよりも、レンタカーやカーシェアリングを利用したほうが割安なこともあります。

逆に近距離圏内を移動するのであれば、電動アシスト自転車のレンタルなども便利です。多くの場合、利用には事前登録が必要ですが、登録後は複数設けられた自転車ポート(置き場)で簡単に借りることができるようになっています。都心ではこうしたレンタル自転車のサービスを提供している場合が多いので、頻繁に通う地域などがあれば事前に調べておきましょう。

4)難易度B:インターネット予約サイトで格安ホテルを利用するなど

出張でホテルに滞在する場合は、時期などによっても異なりますが、格安ビジネスホテルであれば、東京都心部でもシングルルーム1泊につき5000円~6000円程度で宿泊できる場合もあります。格安ビジネスホテルチェーンの中には、法人向けの会員サービスを設けている場合があり、会員になれば、宿泊料金の割引などの特典を受けられることがあります。

また、インターネットの予約サイトなどでは、簡単に希望の宿泊地や価格を絞り込むことができるので、こうした予約サイトを調べて、比較検討をしてホテルを予約することをおすすめします。

長期宿泊の場合は、短期賃貸マンション(いわゆるウィークリーマンション、マンスリーマンションなど)の利用を推奨しましょう。

以上(2023年2月)

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画像:pexels

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