事前にわかる入社と退職手続き実務

1 はじめに

新年度を迎える春は、人事労務担当者の皆さまにとって、1年のなかでも特に手続き業務が増える時期であると思います。その中心となるのが、入社と退社に関する手続きではないでしょうか。

中小企業では、採用計画に沿った人材確保が困難になってきているなか、厚生労働省が2月に公表した最新の人口動態統計速報では、昨年の出生数が720,988人と過去最少を記録しました。今後も少子高齢化による深刻な人手不足の流れが続くと予想され、それを裏付けるように2024年の人手不足倒産は、累計で342件発生したというショッキングなデータを帝国データバンクが公表しています。この数値は、調査開始以降過去最多であり、2年連続で大幅に更新したとされています。

このように、会社の存続にも影響を及ぼしかねない厳しい採用難の時代において、法令遵守のできていない企業に対する求職者からのエントリーは、今後より一層見通しづらくなるでしょう。まずは、皆さまの会社に入社された社員が安心して働き続けられるよう、正しい手続きを適切に行うことで、会社の土台をしっかりと固めていきたいものです。

そこで今回は、適切な手続きについて皆さまとともに確認しながら、この春、特に気を付けておきたいポイントについてもご紹介いたします。

2 入社手続き

(1)採用内定から入社までの流れ

人手不足でエントリー数自体が減少している昨今、これまでよりも選考基準を引き下げざるを得ないという声も聞こえてきています。採用判断の際、業務適性や定着率等を客観的に判断できる資料となり得る適性検査を実施するケースも増えており、当日中に結果が分かるものもありますので導入してみるのもよいでしょう。

さまざまなステップを経て採用内定を決定したあとは、採用内定通知を交付することが多いと思います。書面で採用選考結果を通知するとともに、入社日の案内や、マイナンバー等の提出内容を記載したり、内定誓約書の返送を求めたりするものが一般的です。

内定誓約書は、内定者が就職を承諾するとともに、他社への就職をしない旨を約束させたり、卒業できなかったときや、採用試験の過程に重大な偽りがあった等の内定取り消し事由に該当したりした場合の取り扱いについても記載することが多いです。内定については、法的に「解約権留保付労働契約」が成立したものと解釈されており、内定取り消し事由以外での内定取り消しは難しく、解雇同等の取り扱いとなりますので注意が必要です。

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画像:photo-ac

全国初! 東京都などで「カスハラ」の防止条例が施行!

2025年4月1日より、東京都、群馬県、北海道などで「カスハラ(カスタマーハラスメント)」の防止条例が施行されました。カスハラとは、

顧客等が、就業者(社員など)に対し、著しい迷惑行為(土下座の強要など)をすること

で、法的には民法の「不法行為」(故意・過失によって他人の権利や法律上の利益を侵害する行為)などに該当する可能性があります。

2025年4月1日時点では、カスハラをピンポイントで取り締まる法律はないのですが、東京都などがカスハラの社会問題化を受け、全国で初めて防止条例を作った

のです。

例えば、「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」では、次の通り14の条文が定められています。

東京都カスタマー・ハラスメント防止条例(要約)

この条例により東京都内の事業者(会社)には、努力義務ではあるものの、東京都の施策に協力しつつ、カスハラから就業者(社員)を守るための体制の整備、カスハラ防止のための手引きの作成などが求められるようになりました(赤字)

また、東京都はこの条例に加えてカスハラ防止に関する指針を定め、それに基づいてカスハラ防止につながる情報提供や啓発・教育などの防止施策を実施していくようです(青字)。

■東京都カスタマー・ハラスメント防止条例■

https://www.reiki.metro.tokyo.lg.jp/reiki/reiki_honbun/g101RG00005328.html

なお、冒頭で「カスハラをピンポイントで取り締まる法律はない」と言いましたが、実は

2025年通常国会において、カスハラ防止対策を強化するための「労働施策総合推進法」の改正案が提出

されているので、今後は状況が大きく変わっていくかもしれません。改正案の内容は下記URLの「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案」の項で確認できますので、今後の動向に注意しておきましょう。

■厚生労働省「第217回国会(令和7年常会)提出法律案」■

https://www.mhlw.go.jp/stf/topics/bukyoku/soumu/houritu/217.html

次のコンテンツで、厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」に基づく、カスハラの基本的な対応についてまとめているので、興味のある方はぜひご確認ください。

また、こちらはカスハラ防止に使える「職場ポスター」です。社員への周知や顧客への注意喚起のため、職場や店舗に貼ってご活用ください。

以上(2025年4月作成)

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画像:正樹 国府田-Adobe Stock

【労務のお仕事】社員が「入社」したとき

1 入社時の手続きの見落としに備えよう

社員の入社時は、労働条件通知書の交付や社会保険の手続きなど、やるべきことがたくさんあり、実務の抜け漏れが生じがちです。そこで、この記事では正社員を中途採用したことを想定し、必要な手続きをリストにまとめつつ、重要なポイントを紹介します。なお、便宜上、健康保険の保険者は全国健康保険協会(協会けんぽ)とします。

手続きリストは、

  1. 入社前または入社当日
  2. 入社後

の2段階に分かれています。また、

各手続きをオンライン化できるかについても記載

していますので、書類のペーパーレス化を検討したい場合などにもご活用いただけます。ただし、手続きで必要となる添付書類については省略していますので、その点は各書類の提出先などにご確認ください。

なお、退職時の手続きについて知りたい場合、こちらのコンテンツをご確認ください。

2 入社前または入社当日の手続き

一般的な入社前または入社当日の手続きは次の通りです。

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1)法定書類の交付:労働条件通知書

労働条件通知書は、社員に労働条件を明示するための書類です。労働条件には、必ず明示すべき事項(契約期間、就業場所、昇給に関する事項など)と、就業規則などに定めがある場合に明示すべき事項(退職金、賞与など)があります。

労働条件通知書は、労働契約を締結する際に書面で交付しなければなりませんが、社員が希望した場合はメールなどでも交付できます(退職金、賞与などの労働条件は口頭での明示も可)。

2)手続き書類の取得:マイナンバーカードのコピー

マイナンバーカードのコピーには、社会保険や税務の手続きで使用するマイナンバー(個人番号)が記載されています。マイナンバーは極めて機微な個人情報なので、マイナンバー法に従い、取り扱いには細心の注意を払います。例えば、マイナンバー取得の際に「利用目的を社員本人に通知する」「本人確認(番号確認・身元確認)をする」などの手続きが必要です。

メールなどでマイナンバーカードのコピーを受け取ることもできますが、その場合、添付ファイルにパスワードをかける、個人番号事務取扱担当者だけが閲覧できるメールアドレスに送信をしてもらうなどの配慮が必要です。

3)その他の書類の取得:誓約書・身元保証書

誓約書・身元保証書は、社員の故意や重過失による会社への損害リスクを減らすために取得します。損害賠償額や違約金の具体的な金額をあらかじめ定めることはできません。ただし、身元保証書については、極度額(連帯保証人の責任すべき限度額)を定める必要があります。

なお、誓約書・身元保証書などの書類は法的には本来必要のないものなので、社員からの提出方法は、会社が自由に決められます(PDFなどで提出してもらうことも可)。

3 入社後の手続き

一般的な入社後の手続きは次の通りです。

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1)法定書類の提出:社会労働保険関連

健康保険・厚生年金保険については、法定書類の提出後、資格取得に関する通知が会社に送付されます。到着を確認したら、

  • 資格取得に関する通知は社内で保管(退職日から2年間保管)
  • 所定の事項(資格取得や標準報酬月額など)は通知書(書式は任意)を作成して社員に交付

します。なお、従前は法定書類の提出後に「健康保険被保険者証」が交付されていましたが、

2024年12月2日以降は、マイナンバーカードが「マイナ保険証」として利用できるようになった関係で、新規の健康保険被保険者証は発行されない

ようになっています(既存社員の健康保険被保険者証は、経過措置により2025年12月1日まで使用可)。ちなみに、マイナンバーカードを保有していない場合、またはマイナンバーカードを保有しているがマイナ保険証登録をしていない場合、

マイナ保険証の代替となる「資格確認書」の交付

を受けられます。具体的には、健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届にチェック欄が設けられており、そこにチェックを入れることで交付を受けられます。

雇用保険については、次の書面が発行されます(1.から3.までは一体の書面です)。3.は社員に交付し、1.と2.は社内で保管します(退職日から4年間保管)。

  1. 雇用保険被保険者資格喪失届・氏名変更届
  2. 雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)
  3. 雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)・雇用保険被保険者証

なお、法定書類の提出手続きは、社会労働保険関連は「電子政府の総合窓口(e-Gov)」から、税務関連は「地方税ポータルシステム(eLTAX)」から、電子申請で行えます(どちらも事前に電子証明書の取得が必要)。

■電子政府の総合窓口(e-Gov)■

https://www.e-gov.go.jp/

■地方税ポータルシステム(eLTAX)■

https://www.eltax.lta.go.jp/

2)法定帳簿の作成:労働者名簿、賃金台帳、出勤簿

法定帳簿には社員の氏名、生年月日、入社日などを記入します。社内にて保管されていれば特に提出の必要はなく、また、速やかに印刷などができる状態であれば、PDFなどで保管して差し支えありません。

3)雇入時健康診断

社員が入社3カ月前までに受診した健康診断書があれば、その診断項目については雇入時健康診断の受診が免除されます。なお、採血などを行う関係上、受診自体はオンライン化できませんが、診断結果についてはPDFなどでの保管も認められています。

以上(2025年4月更新)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)

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画像:pexels

【労務のお仕事】社員が「退職」したとき

1 退職時の手続きの見落としに備えよう

社員の退職時は、退職届の徴求や雇用保険の手続きなど、やるべきことがたくさんあり、実務の抜け漏れが生じがちです。そこで、この記事では正社員が自己都合退職したことを想定し、必要な手続きをリストにまとめつつ、重要なポイントを紹介します。なお、便宜上、健康保険の保険者は全国健康保険協会(協会けんぽ)とします。

手続きリストは、

  1. 退職前または退職当日
  2. 退職後

の2段階に分かれています。また、

各手続きをオンライン化できるかについても記載

していますので、書類のペーパーレス化を検討したい場合などにもご活用いただけます。ただし、手続きで必要となる添付書類については省略していますので、その点は各書類の提出先などにご確認ください。

なお、入社時の手続きについて知りたい場合、こちらのコンテンツをご確認ください。

2 退職前または退職当日の手続き

一般的な退職前または退職当日の手続きは次の通りです。

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1)手続き書類の取得:健康保険被保険者証、退職所得の受給に関する申告書

健康保険被保険者証を返却できない(紛失したなど)場合、「健康保険被保険者証回収不能届」を年金事務所に提出すれば返却が免除されます。ただし、健康保険被保険者証の返却も健康保険被保険者証回収不能届の提出も、手続きは訪庁または郵送でしか行えません。なお、

2024年12月2日以降は、マイナンバーカードが「マイナ保険証」として利用できるようになった関係で、新規の健康保険被保険者証が発行されなくなっていますが、2025年12月1日までに退職した既存社員の被保険者証については、引き続き返却手続きが必要

なので、注意してください。また、「高齢受給者証」の交付を受けている70~74歳の社員については高齢受給者証も併せて返却が必要です(健康保険被保険者証も高齢受給者証も、2025年12月2日以降は回収不要で、社員が自分で破棄してよい)。

なお、2024年12月2日以降に入社した社員については、マイナンバーカードを取得していない場合、またはマイナンバーカードを保有しているがマイナ保険証登録をしていない場合に限り、

保険証の代替となる「資格確認書」の交付

を受けられます。この交付を受けた社員が退職する場合、資格確認書の返却義務が生じますので、漏れが生じないようにきちんと状況を把握しておく必要があります。

退職所得の受給に関する申告書は、社員が正しい税額で、所得税の源泉徴収を受けるために必要な書類です。取得しない場合、退職金の支給額に対し、一律で20.42%が源泉徴収されます。こちらはPDFなど、オンラインでの取得が可能です。

2)法定書類の作成:雇用保険被保険者離職証明書

雇用保険被保険者離職証明書は3枚複写となっており、書面の名称は、

  • 「雇用保険被保険者離職証明書(事業主控)」(1枚目)
  • 「雇用保険被保険者離職証明書(安定所提出用)」(2枚目)
  • 「雇用保険被保険者離職票-2」(3枚目)

となっています。

雇用保険被保険者離職証明書(安定所提出用)と雇用保険被保険者離職票-2には、社員が離職理由に異議がないことなどを証明するための署名欄があります。社員本人の署名が原則ですが、帰郷その他やむを得ない理由により、社員本人の署名が困難な場合は、その理由を記載した上で会社の印を押印することが認められています。

なお、雇用保険被保険者離職証明書は、「電子政府の総合窓口(e-Gov)」上で作成し、電子申請で提出することもできます(事前に電子証明書の取得が必要)。その場合、「離職証明書の記載内容に関する確認書」という書類を作成して社員に署名なつ印をしてもらい、PDFで電子申請データに添付することで、離職理由に異議がないことなどを証明します。

■電子政府の総合窓口(e-Gov)■

https://www.e-gov.go.jp/

3)その他の書類の取得:退職届

退職届の取得は任意ですが、後述する「雇用保険被保険者資格喪失届」を所轄ハローワークに提出する際、退職の事実を客観的に証明する書類が必要となるため、取得しておくのが無難です。労務管理上の観点からも、退職の意思、退職日、退職理由などを明らかにしておくことで、社員とトラブルになるリスクを減らす上で有効です。

オンラインで退職届を取得する場合、社員の直筆で署名なつ印のある退職届をPDFなどにして送ってもらいます。なお、「一身上の都合で退職します」と記載されたメールなどを退職届の代わりにするのは、本人が作成したものであると証明することが難しくなるので避けたほうがよいでしょう。

3 退職後の手続き

一般的な退職後の手続きは次の通りです。

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1)給与・退職金の支払い

退職金に関する社員とのトラブルを防ぐため、退職金の支給の有無、支給する場合は支給額や支給時期などについて、退職時に本人に通知しておくとよいでしょう。なお、給与明細や退職金支給明細は、社員の同意があればPDFなどで交付できます。

2)法定書類の提出:社会労働保険関連

健康保険・厚生年金保険については、法定書類の提出後、資格喪失に関する通知が会社に送付されます。これは社内で保管します(退職日から2年間保管)。

雇用保険については、法定書類の提出後、次の書面が交付されます(1.と2.は一体の書面)。2.と4.は社員に交付し、1.と3.は社内で保管します(退職日から4年間保管)。

  1. 雇用保険被保険者資格喪失確認通知書(事業主通知用)
  2. 雇用保険被保険者資格喪失確認通知書(被保険者通知用)・雇用保険被保険者離職票-1
  3. 雇用保険被保険者離職証明書(事業主控)
  4. 雇用保険被保険者離職票-2

なお、法定書類の提出手続きは、社会労働保険関連は「電子政府の総合窓口(e-Gov)」から、税務関連は「地方税ポータルシステム(eLTAX)」から、電子申請で行えます(どちらも事前に電子証明書の取得が必要)。ただし、健康保険被保険者証(高齢受給者証、資格確認書)については、現物を年金事務所に訪庁または郵送で返却しなければなりません。

■電子政府の総合窓口(e-Gov)■

https://www.e-gov.go.jp/

■地方税ポータルシステム(eLTAX)■

https://www.eltax.lta.go.jp/

3)社員への書類送付:雇用保険被保険者離職票、退職証明書

2025年1月20日から、雇用保険被保険者離職票など雇用保険資格の喪失関係書類(本人控え分)を、マイナポータルで受け取れる行政システムがスタートしています。本人がマイナポータルからデータを直接取得できるので、会社からの送付作業のひと手間が減ります。ただし、サービスを利用するには、資格喪失の手続きを電子申請(e-Gov)で行うのに加え、「マイナンバーをハローワークに登録する」などの事前準備が必要になります。

■厚生労働省「被保険者の皆さまへ 2025年1月から、『離職票』をマイナポータルで受け取れるようになります!」■

https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001353163.pdf

■マイナポータル「離職票をマイナポータルで受け取る」■

https://img.myna.go.jp/manual/03-04/0230.html

退職証明書は、退職後であっても社員から請求があった場合は、必ず交付しなければなりません。実務上は、退職前に要否を確認しておくとよいでしょう。なお、退職証明書は、社員の同意があればPDFなどで交付できます。

なお、会社の中には、あらかじめ退職証明書を作成して退職時に本人に交付しているところも多いです。退職後、本人が国民健康保険に加入する場合などに、市区町村から前職の退職証明の提示を求められるケースがあるからです。

以上(2025年4月更新)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)

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画像:Andrey Popov-Adobe Stock

「賃上げ」はどこまで必要? 労働分配率や賞与・退職金を基準に考える

1 賃上げ前に労働分配率を確認する

毎年春闘の時期になると、賃上げに関する話題を耳にする機会が増えます。例えば、

2025年春闘では、「みんなでつくろう!賃上げがあたりまえの社会」をスローガンに、昨年に引き続き、賃上げ目標を「5%以上(定期昇給相当分を含む)」とする方針

が打ち出されています。

どこまで賃上げに取り組むかは経営者次第ですが、人件費の負担を考えるのであれば、

賃上げを検討する前に、自社の人件費が適正な水準にあるのかを「労働分配率」で確認

しておく必要があります。労働分配率の計算方法はさまざまで、適正な数値は業種や業態によって異なります。ここでは労働分配率を求めるための計算式を紹介します。実際に、自社の適正水準を検討する際は、社会保険労務士や会計士・税理士などに相談してみるとよいでしょう。

1.労働分配率の算出方法

労働分配率=人件費÷付加価値

2.付加価値の算出方法

  • 控除方式:主に製造業で使用
      付加価値=売上高-外部購入価値(製品仕入高、直接材料費、外注加工費等)
  • 加算方式:主に非製造業で使用
      付加価値=経常利益+人件費+金融費用+賃借料+租税公課+減価償却費

平均的な労働分配率や付加価値を知りたい場合、経済産業省「企業活動基本調査」の業種別データが参考になります。自社の過去3~5年程度の労働分配率を計算して、適正と思われる利益を出していた年度を基準にするとよいでしょう。

■経済産業省「企業活動基本調査」■

https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kikatu/index.html

以降では、賃上げの種類、賞与や退職金への影響を回避する方法などを紹介します。ここまでの内容を踏まえた上で賃上げを検討する場合は、ぜひご確認ください。

2 2種類の賃上げ「定期昇給」「ベースアップ」

1)定期昇給

定期昇給とは、

企業の定める賃金テーブル(賃金表)に基づき、賃金が従業員の年齢や勤続年数に応じて自動的に昇給(自動昇給)すること

です。査定昇給(人事考課などに基づいて昇給を行うこと)も、定期的に実施する場合は定期昇給に含まれますが、自動昇給とは異なります。企業の中には、能力や成果をもっと賃金に反映させようと、自動昇給の見直しに取り組んでいるところが少なくありません。

2)ベースアップ

ベースアップとは、

賃金テーブルを書き換え、全従業員の賃金水準を一斉に引き上げること

です。賃金テーブルが書き換えられるため、能力や成果が低い従業員も昇給(賃上げ)の対象となります。昇給は賃金規程で定められているもの、ベースアップは業績などに応じて臨時的に実施されるものです。

3 賞与や退職金への影響を回避する

1)賞与や退職金の負担を回避するには「基本給連動型→基本給非連動型」

賃上げをした場合、毎月の賃金だけでなく、賞与や退職金の負担も増えることがあります。それは、

基本給を賞与や退職金の計算基礎とする「基本給連動型」の制度

を導入している場合です。基本給連動型は、基本給に一定の支給率を掛けて賞与や退職金を計算するなど、シンプルな運用が可能ですが、基本給が支給額のベースになるため、賃上げの影響を受けやすくなります。賃上げの影響を回避したい場合、

基本給を賞与や退職金の計算基礎としない「基本給非連動型」の制度

を導入するという方法があります。

以降で、基本給非連動型の賞与・退職金制度の例を紹介します。なお、賞与・退職金制度を従前のものから変更する際は、「労働条件の不利益変更」に注意する必要があります。

2)賃上げの影響を回避する賞与制度(業績連動型)

ここでは、基本給非連動型の賞与制度の例として、「業績連動型」を紹介します。

業績連動型は、企業が重視する業績指標、勤務成績などを基に支給率を決め、賞与原資にその支給率を掛けて賞与を計算する仕組みです。業績指標については営業利益や経常利益などが、勤務成績については部門業績や人事考課の結果などがよく用いられます。

  • メリット:能力や成果を賞与に反映させやすい
  • デメリット:賞与の支給額が安定しにくく、従業員からすると不安がある

3)賃上げの影響を回避する退職金制度(定額制、別メニュー方式、ポイント制)

ここでは、基本給非連動型の退職金制度の例として、「定額制」「別メニュー方式」「ポイント制」を紹介します。

1.定額制

定額制は、勤続年数に応じて定額を定め、退職金を支給する仕組みです。例えば、20年勤続で退職した従業員の退職金は400万円、30年なら600万円といった具合です。

  • メリット:退職金の計算が不要
  • デメリット:能力や成果を退職金に反映させられない

2.別メニュー方式

別メニュー方式は、退職時の役職に応じて定額を定め、勤続年数別の支給率を掛けて退職金を計算する仕組みです。基本給連動型(退職時の基本給を退職金の基礎とする制度)と定額制を混合したようなイメージです。

  • メリット:退職金の計算が簡単
  • デメリット:能力や成果を退職金に反映させにくい

3.ポイント制

ポイント制は、一定のルールに基づいて従業員にポイントを付与し、退職時の累計ポイント数に単価を掛けて退職金を計算する仕組みです。ポイントには、勤続年数に応じて付与する「勤続ポイント」、資格等級などに応じて付与する「等級ポイント」、人事考課の結果などに応じて付与する「個人ポイント」などがあり、一般的に複数のポイントを組み合わせて運用します。

  • メリット:能力や成果を退職金に反映させやすい
  • デメリット:退職金の計算が複雑、付与されるポイント数などについて従業員の納得が得られないケースがある

4 社会保険料などへの影響にも注意する

1)労働保険料

労働保険料(労災保険料と雇用保険料)は、毎月の賃金の総支給額に保険料率を掛けて計算します。そのため、残業代などで賃金が変動すると保険料も異なってきます。また、賃上げの場合も保険料に影響します。

2)社会保険料

社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料)は、4~6月に支給した賃金の平均額をベースに決まります。そして、その年の9月から翌年の8月までは原則固定となります。この手続きを「定時決定」といい、算定基礎届を毎年7月初旬に年金事務所に届け出ます。

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ただし、固定的賃金(稼働実績に関係なく支給されるもの)が変動し、連続する3カ月間の賃金の平均額が2等級以上変わると、4カ月目から社会保険料が改定されます。これを「随時改定」といい、月額変更届を固定的賃金が変動した月から起算して4カ月目に速やかに届け出ます。

なお、7月から9月までのいずれかの月に随時改定をした場合、定時決定は行いません。4月から賃上げをする場合などは、随時改定の要件に該当しても定時決定として扱い、9月分の保険料から改定してしまうことがありますが、これは誤った運用です。

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5 賃上げに表れる経営者の思い

ベースアップをした場合、以降の人件費が増大します。将来的に企業の業績が悪化しても、賃下げは労働条件の不利益変更になるので、簡単に行うことができません。そのため、足元の業績好調を理由に、利益分配の目的で賃上げを検討しているのであれば、ベースアップではなく、賞与で賃上げをしたほうが無難という考え方もできます。これであれば、翌年度の業績に応じて柔軟に賞与の支給額を決められます。

頑張っている従業員に報いたいというのは、経営者の変わらぬ思いです。そうした意味で、賃上げは従業員に感謝の気持ちを伝える重要な取り組みです。ただし、事前に賃上げのメリットとデメリットを把握し、業績などに見合った適切な方法を選択しましょう。

以上(2025年3月更新)

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画像:Team Oktopus-shutterstock

【業種別データ】水産食料品製造業の動向

2023年の水産食料品製造業は、事業所数・出荷額ともに前年をやや下回る一方、現金給与総額や従業者1人当たり給与は増加しております。原材料費比率は約70.7%と高く、付加価値率は低下傾向にあります。分野別では海藻加工品や冷凍食品が増収となる一方で、品目間の差が広がっております。コスト高や需給変動への対応、生産効率の向上が引き続き重要な課題となっております。

1 業界動向

1)業界全体

2023年の水産食料品製造業の事業所数は4857事業所(対前年比98.7%)、従業者数は13万1494人(対前年比98.5%)、製造品出荷額等は3兆7839億8800万円(対前年比98.3%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は27人(対前年比99.8%)、現金給与総額は8000万円(対前年比101.9%)、原材料使用額等は5億5100万円(対前年比100.2%)、製造品出荷額等は7億7900万円(対前年比99.6%)、付加価値額は2億700万円(対前年比97.8%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は295万円(対前年比102.1%)、製造品出荷額等は2878万円(対前年比99.8%)、付加価値額は764万円(対前年比98.0%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は70.7%(対前年比100.6%)、同付加価値額比率は26.5%(対前年比98.2%)、同現金給与総額比率は10.3%(対前年比102.3%)となっています。

【0920 水産食料品製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

2)水産缶詰・瓶詰製造業

2023年の水産缶詰・瓶詰製造業の事業所数は113事業所(対前年比99.1%)、従業者数は4500人(対前年比100.3%)、製造品出荷額等は1兆119億2600万円(対前年比101.0%)となっています。

【0921 水産缶詰・瓶詰製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

3)海藻加工業

2023年の海藻加工業の事業所数は685事業所(対前年比99.6%)、従業者数は1万6103人(対前年比100.4%)、製造品出荷額等は3848億5500万円(対前年比103.0%)となっています。

【0922 海藻加工業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

4)水産練製品製造業

2023年の水産練製品製造業の事業所数は518事業所(対前年比99.2%)、従業者数は1万9802人(対前年比96.7%)、製造品出荷額等は4113億8800万円(対前年比98.4%)となっています。

【0923 水産練製品製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

5)塩干・塩蔵品製造業

2023年の塩干・塩蔵品製造業の事業所数は535事業所(対前年比99.1%)、従業者数は1万2093人(対前年比97.2%)、製造品出荷額等は2752億2000万円(対前年比98.7%)となっています。

【0924 塩干・塩蔵品製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

6)冷凍水産物製造業

2023年の冷凍水産物製造業の事業所数は621事業所(対前年比99.5%)、従業者数は1万8357人(対前年比102.0%)、製造品出荷額等は8130億8600万円(対前年比101.2%)となっています。

【0925 冷凍水産物製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

7)冷凍水産食品製造業

2023年の冷凍水産食品製造業の事業所数は576事業所(対前年比96.2%)、従業者数は1万7598人(対前年比98.6%)、製造品出荷額等は7265億5500万円(対前年比97.6%)となっています。

【0926 冷凍水産食品製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

8)その他の水産食料品製造業

2023年のその他の水産食料品製造業の事業所数は1809事業所(対前年比98.7%)、従業者数は4万3041人(対前年比97.5%)、製造品出荷額等は1兆609億6000万円(対前年比94.7%)となっています。

【0929 その他の水産食料品製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

2 品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)

品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)は次の通りです。

【品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

3 経営指標

【水産食料品製造業の経営指標】

(出所:日本政策金融公庫「小企業の経営指標2024」)

(注1)( )内は、調査対象企業数です。

(注2)受取利息を加味できないなど調査項目に限界があるため、「黒字かつ自己資本プラス企業」でも損益分岐点比率が100%を超える場合があります。

以上(2026年3月更新)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】なぜ、「新年度だから、目標を立てよう」では駄目なのか?

【ポイント】

  • ビジネスの環境は日々変わるので、変化に応じて即行動できる姿勢が大切
  • 年度のように、思考や行動を縛っている「見えない呪縛」がたくさんある
  • 目の前にあるルールを考えて、納得がいかなければ、声を上げるべき

新年度を迎えて、新しい目標を立てた人もいるでしょう。これまでの私であれば、「新年度に目標を立てて取り組むことは、とても良いことです。努力をして、ぜひ、目標を達成できるようにがんばってください」と言って、皆さんを叱咤(しった)激励してきました。

しかし、今回は、冒頭に「新年度に」という言葉を付けるのをやめて、「目標を立てて取り組むことは、とても良いことです。努力をして、ぜひ、目標を達成できるようにがんばってください」としました。その理由は、「年度」という縛りから解放されてほしいからです。

もちろん、新年度に目標を立てるのは悪いことではありません。会社も、皆さんに年度単位で目標を立ててもらい、その達成度を評価します。私自身も経営者として1年間の「業績」という結果に基づいて評価を受けます。そのため、年度という期間を全く無視していいわけではありませんが、過度に年度という単位に縛られることは良くないと思っています。

理由は至ってシンプル、「日々のビジネス活動は、年度単位では動いていないから」です。私たちが考えなければならない市場環境、競合他社、お客様のニーズなどは、日々変わります。その変化に応じて、年度にとらわれることなく即行動、そんな姿勢を持ってもらいたいと思っています。

実は、年度と同じように、私たちの思考や行動を縛っているものはたくさんあります。私は、こうした「見えない呪縛」が成長しようとしている会社や皆さんの障害になっていると思っています。
身近な例でいえば「担当業務」がそうです。担当業務の内容や手順は、「必ず守るべきもの」と思い込みがちです。しかし、より効率的な方法やミスが発生しない方法があれば、すぐに変更できるようなスピーディーかつ柔軟な組織になってほしいと思っています。

そのための大切なことは2つあります。1つは、目の前にあるルールの意味を考えることです。もう1つは、もし、考えても自分が納得できなければ、「なぜ、こうなっているのですか?」と声を上げることです。そのひと声が、皆で考え、ルールを良い方向に変えていくきっかけになるはずです。

こうしたことの積み重ねが、会社の成長のために、一番必要だと肝に銘じてください。

以上(2025年3月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

【業種別データ】畜産食料品製造業の動向

2023年の畜産食料品製造業は、事業所数が2687事業所(前年比90.0%)、従業者は16万8471人(96.7%)、製造品出荷額は7兆7310億円(88.6%)と全体はやや縮小しています。一方で原材料費比率は72.9%、付加価値額比率は23.3%と利益率が圧迫されており、部分肉・冷凍肉や一部の乳製品は増収となる品目もあるものの品目間で明暗が分かれています。コスト高や需給変動への対応、中小事業者の収益改善と生産性向上が喫緊の課題です。

1 業界動向

1)業界全体

2023年の畜産食料品製造業の事業所数は2687事業所(対前年比90.0%)、従業者数は16万8471人(対前年比96.7%)、製造品出荷額等は7兆7310億3900万円(対前年比88.6%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は63人(対前年比107.4%)、現金給与総額は2億1400万円(対前年比99.1%)、原材料使用額等は20億9900万円(対前年比94.9%)、製造品出荷額等は28億7700万円(対前年比98.4%)、付加価値額は6億6900万円(対前年比108.7%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は341万円(対前年比92.3%)、製造品出荷額等は4589万円(対前年比91.6%)、付加価値額は1067万円(対前年比101.2%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は72.9%(対前年比96.4%)、同付加価値額比率は23.3%(対前年比110.4%)、同現金給与総額比率は7.4%(対前年比100.7%)となっています。

【0910 畜産食料品製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

2)部分肉・冷凍肉製造業

2023年の部分肉・冷凍肉製造業の事業所数は908事業所(対前年比100.4%)、従業者数は4万7185人(対前年比102.6%)、製造品出荷額等は2兆3055億2000万円(対前年比106.7%)となっています。

【0911 部分肉・冷凍肉製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

3)肉加工品製造業

2023年の肉加工品製造業の事業所数は519事業所(対前年比100.0%)、従業者数は3万6399人(対前年比98.8%)、製造品出荷額等は1兆1149億1800万円(対前年比97.9%)となっています。

【0912 肉加工品製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

4)処理牛乳・乳飲料製造業

2023年の処理牛乳・乳飲料製造業の事業所数は233事業所(対前年比99.6%)、従業者数は1万7546人(対前年比104.8%)、製造品出荷額等は1兆3537億7800万円(対前年比103.3%)となっています。

【0913 処理牛乳・乳飲料製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

5)乳製品製造業(処理牛乳、乳飲料を除く)

2023年の乳製品製造業(処理牛乳、乳飲料を除く)の事業所数は313事業所(対前年比99.4%)、従業者数は2万3396人(対前年比98.2%)、製造品出荷額等は1兆5488億3000万円(対前年比105.7%)となっています。

【0914 乳製品製造業(処理牛乳、乳飲料を除く)】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

6)その他の畜産食料品製造業

2023年のその他の畜産食料品製造業の事業所数は714事業所(対前年比99.4%)、従業者数は4万3945人(対前年比99.7%)、製造品出荷額等は1兆4079億9400万円(対前年比106.3%)となっています。

【0919 その他の畜産食料品製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

2 品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)

品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)は次の通りです。

【品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

3 経営指標

【畜産食料品製造業の経営指標】

(出所:日本政策金融公庫「小企業の経営指標2024」)

(注1)( )内は、調査対象企業数です。

(注2)受取利息を加味できないなど調査項目に限界があるため、「黒字かつ自己資本プラス企業」でも損益分岐点比率が100%を超える場合があります。

以上(2026年3月更新)

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画像:Mariko Mitsuda

【業種別データ】通信機械器具・同関連機械器具製造業の動向

通信機械器具・同関連機械器具製造業は、2023年に事業所数485所、従業者数5万3880人、製造品出荷額2兆9076億6300万円と大規模だが、全体では出荷額は対前年比99.1%で概ね横ばい。

無線分野は伸長(同106.4%)し高付加価値を確保する一方、有線はやや低迷。特に携帯電話機製造は事業所13所、出荷額117億円と13.5%に急落し付加価値がマイナスになるなど品目差が顕著。賃金や従業者1人当たり付加価値は上向きで、生産性向上と高付加価値化が進む構図です。

1 業界動向

1)業界全体

2023年の通信機械器具・同関連機械器具製造業の事業所数は485事業所(対前年比99.4%)、従業者数は5万3880人(対前年比97.0%)、製造品出荷額等は2兆9076億6300万円(対前年比99.1%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は111人(対前年比97.6%)、現金給与総額は6億9200万円(対前年比102.3%)、原材料使用額等は39億1800万円(対前年比98.4%)、製造品出荷額等は59億9500万円(対前年比99.7%)、付加価値額は19億2300万円(対前年比102.1%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は623万円(対前年比104.8%)、製造品出荷額等は5397万円(対前年比102.1%)、付加価値額は1731万円(対前年比104.6%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は65.4%(対前年比98.8%)、同付加価値額比率は32.1%(対前年比102.5%)、同現金給与総額比率は11.5%(対前年比102.6%)となっています。

【3010 通信機械器具・同関連機械器具製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

2)有線通信機械器具製造業

2023年の有線通信機械器具製造業の事業所数は83事業所(対前年比102.5%)、従業者数は1万1455人(対前年比97.8%)、製造品出荷額等は7839億7100万円(対前年比94.6%)となっています。

【3011 有線通信機械器具製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

3)携帯電話機・PHS電話機製造業

2023年の携帯電話機・PHS電話機製造業の事業所数は13事業所(対前年比86.7%)、従業者数は771人(対前年比49.8%)、製造品出荷額等は117億2900万円(対前年比13.5%)となっています。

【3012 携帯電話機・PHS電話機製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

4)無線通信機械器具製造業

2023年の無線通信機械器具製造業の事業所数は165事業所(対前年比98.2%)、従業者数は2万7377人(対前年比98.3%)、製造品出荷額等は1兆6211億5900万円(対前年比106.4%)となっています。

【3013 無線通信機械器具製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

5)ラジオ受信機・テレビジョン受信機製造業

2023年のラジオ受信機・テレビジョン受信機製造業の事業所数は10事業所(対前年比100.0%)、従業者数は1229人(対前年比87.7%)、製造品出荷額等は513億6800万円(対前年比91.2%)となっています。

【3014 ラジオ受信機・テレビジョン受信機製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

6)交通信号保安装置製造業

2023年の交通信号保安装置製造業の事業所数は121事業所(対前年比100.0%)、従業者数は5889人(対前年比101.0%)、製造品出荷額等は2144億5500万円(対前年比99.8%)となっています。

【3015 交通信号保安装置製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

7)その他の通信機械器具・同関連機械器具製造業

2023年のその他の通信機械器具・同関連機械器具製造業の事業所数は93事業所(対前年比100.0%)、従業者数は7159人(対前年比99.5%)、製造品出荷額等は2249億8100万円(対前年比100.2%)となっています。

【3019 その他の通信機械器具・同関連機械器具製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

2 品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)

品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)は次の通りです。

【品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

3 経営指標

【通信機械器具・同関連機械器具製造業の経営指標】

(出所:日本政策金融公庫「小企業の経営指標2024」)

(注1)( )内は、調査対象企業数です。

(注2)受取利息を加味できないなど調査項目に限界があるため、「黒字かつ自己資本プラス企業」でも損益分岐点比率が100%を超える場合があります。

以上(2026年3月更新)

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画像:Mariko Mitsuda

【業種別データ】電気計測器製造業の動向

電気計測器製造業は、2023年において事業所数はほぼ横ばいで推移する一方、従業者数や製造品出荷額は増加しており、業界全体としては緩やかな拡大傾向がみられます。特に医療用計測器製造業では出荷額や付加価値額が大きく増加し、成長が目立っています。一方、工業計器製造業では出荷額や付加価値額が減少するなど、分野によって動向に差がみられます。また、原材料使用額比率がやや低下し付加価値率は改善していることから、生産効率の向上がみられる業界となっています。

1 業界動向

1)業界全体

2023年の電気計測器製造業の事業所数は948事業所(対前年比99.8%)、従業者数は4万6997人(対前年比101.9%)、製造品出荷額等は1兆6785億8400万円(対前年比104.3%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は50人(対前年比102.1%)、現金給与総額は2億6800万円(対前年比99.5%)、原材料使用額等は10億1500万円(対前年比101.1%)、製造品出荷額等は17億7100万円(対前年比104.5%)、付加価値額は7億4800万円(対前年比105.5%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は540万円(対前年比97.4%)、製造品出荷額等は3572万円(対前年比102.3%)、付加価値額は1509万円(対前年比103.3%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は57.3%(対前年比96.7%)、同付加価値額比率は42.2%(対前年比100.9%)、同現金給与総額比率は15.1%(対前年比95.2%)となっています。

【2970 電気計測器製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

2)電気計測器製造業(別掲を除く)

2023年の電気計測器製造業(別掲を除く)の事業所数は535事業所(対前年比99.6%)、従業者数は2万3273人(対前年比101.4%)、製造品出荷額等は7237億7400万円(対前年比101.9%)

となっています。

1事業所当たりの従業者数は44人(対前年比101.8%)、現金給与総額は2億4100万円(対前年比103.1%)、原材料使用額等は7億2300万円(対前年比99.2%)、製品出荷額等は13億5300万円(対前年比102.3%)、付加価値額は6億700万円(対前年比105.0%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は554万円(対前年比101.3%)、製品出荷額等は3110万円(対前年比100.5%)、付加価値額は1396万円(対前年比103.1%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は53.5%(対前年比97.0%)、同付加価値額比率は44.9%(対前年比102.6%)、同現金給与総額比率は17.8%(対前年比100.8%)となっています。詳しくは、下表を参照してください。

【2971 電気計測器製造業(別掲を除く)】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

3)工業計器製造業

2023年の工業計器製造業の事業所数は283事業所(対前年比100.4%)、従業者数は9483人(対前年比104.3%)、製造品出荷額等は3367億2100万円(対前年比98.2%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は34人(対前年比103.9%)、現金給与総額は1億6500万円(対前年比102.5%)、原材料使用額等は7億3900万円(対前年比100.2%)、製品出荷額等は11億9000万円(対前年比97.8%)、付加価値額は4億3600万円(対前年比92.8%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は492万円(対前年比98.6%)、製品出荷額等は3551万円(対前年比94.1%)、付加価値額は1300万円(対前年比89.3%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は62.2%(対前年比102.4%)、同付加価値額比率は36.6%(対前年比94.8%)、同現金給与総額比率は13.9%(対前年比104.8%)となっています。詳しくは、下表を参照してください。

【2972 工業計器製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

4)医療用計測器製造業

2023年の医療用計測器製造業の事業所数は130事業所(対前年比99.2%)、従業者数は1万4241人(対前年比101.3%)、製造品出荷額等は6180億8900万円(対前年比111.2%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は110人(対前年比102.1%)、現金給与総額は6億300万円(対前年比93.0%)、原材料使用額等は28億1500万円(対前年比104.1%)、製品出荷額等は47億5500万円(対前年比112.1%)、付加価値額は20億600万円(対前年比114.1%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は550万円(対前年比91.1%)、製品出荷額等は4340万円(対前年比109.8%)、付加価値額は1831万円(対前年比111.8%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は59.2%(対前年比92.9%)、同付加価値額比率は42.2%(対前年比101.8%)、同現金給与総額比率は12.7%(対前年比83.0%)となっています。詳しくは、下表を参照してください。

【2973 医療用計測器製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

2 品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)

品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)は次の通りです。

【品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

3 経営指標

【2970 電気計測器製造業の経営指標】

(出所:日本政策金融公庫「小企業の経営指標2024」)

(注1)( )内は、調査対象企業数です。

(注2)受取利息を加味できないなど調査項目に限界があるため、「黒字かつ自己資本プラス企業」でも損益分岐点比率が100%を超える場合があります。

以上(2026年3月更新)

pj55117
画像:Mariko Mitsuda