【助成金(賃上げ編)】基本給の増額などで最大740万円!

1 賃上げの不安は、助成金を上手に活用して払拭する

物価高の影響等から、賃上げ(定期昇給やベースアップ)に向けた動きが活発になっています。2026年春闘の動向を見ても、賃上げ率は2024年・2025年に引き続き、「5%以上(定期昇給相当分を含む)」と高水準です。

一方で、多くの経営者は「先行きが不透明で、簡単には賃上げができない……」と不安を抱えています。一度賃金を引き上げてしまうと簡単には引き下げることができないのが現状です。賃上げは簡単でも、賃下げは「労働条件の不利益変更」等の問題が絡み、経営者の一存での対応は非常に難しいので、不安になるのも無理はありません。

そこでご提案したいのが、助成金を上手に活用し、賃上げによるコストアップの補填に充てることです。例えば、中小企業の場合、

有期パート等(契約期間の定めがある非正規雇用の社員)の基本給を3%以上増額すると、最大740万円を受け取れる

のをご存じでしょうか。これは「キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)」というものですが、他にも賃上げに関する助成金があります。

以降で、中小企業(雇用保険の適用事業主であることを前提とする)向けの助成金を取り上げ、支給額や要件等の情報に加え、専門家のワンポイントアドバイスも併せて紹介します。ぜひ、参考にしてみてください。

なお、助成金の内容は、2026年4月22日時点のもので、将来変更される可能性があります。申請書の書き方や添付書類等については、各章で紹介しているURLをご参照ください。また、いわゆる「賃上げ促進税制」については、こちらのコンテンツをご確認ください。

2 キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)(最大740万円)

1)キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)とは?

有期パート等の基本給を3%以上増額するように賃金規定等を改定し、その規定を適用させた場合、賃上げをした有期パート等の人数に応じ、助成金を受け取れるというものです。

厚生労働省「キャリアアップ助成金」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html

2)助成金を受け取るには?

まず、会社が次の要件を全て満たす必要があります。「キャリアアップ計画」は、有期パート等のキャリアアップを図る上での目標や会社の取り組みに関する計画、「賃金規定等」は、就業規則の賃金規定、賃金テーブル、賃金一覧表等のことをいいます。

  • コースの実施日(賃金規定等の改定日)の前日までに、キャリアアップ計画を作成し、都道府県労働局に提出すること
  • 有期パート等の基本給を3%以上増額するように賃金規定等を改定すること
  • 改定後の規定に基づき、増額した賃金を6カ月間支給していること

ちなみに、既存の賃金規定等を改定した場合だけでなく、新たに規定を作成した場合であっても、過去3カ月の賃金実績と比較し3%以上増額していれば助成の対象となります。

なお、助成金は賃上げをした有期パート等の人数(1年度1社当たり100人が上限)に応じて支給されますが、対象となるのは、

雇用保険の被保険者で、賃金規定等の改定の3カ月以上前から勤務している有期パート等だけ(助成金の申請時点で離職している者等を除く)

なので注意が必要です。ちなみに、原則として週の所定労働時間が20時間以上で、雇用期間の見込みが31日以上ある人が、雇用保険の被保険者になります。

会社も有期パート等も要件を満たしている場合、6カ月分の賃金を支給した日の翌日から2カ月以内に都道府県労働局に申請をすれば、助成金を受け取れます。

3)受け取れる金額はいくら?

「賃上げ率に応じた支給額」(具体的には図表1の額)を定額で受け取れます。また、職務評価(職務の大きさを相対的に把握すること)を実施し、適正に有期パート等の賃金規定等に反映した場合、別途加算が受けられます。

キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)

仮に中小企業が100人に対し、6%以上の賃上げを実施した場合、加算額も含めると、1年度につき最大740万円を受け取れる計算になります。

4)専門家のワンポイントアドバイス

賃金規定等を3%以上増額改定する場合でも、

基本給以外の諸手当等を減額している場合は、支給対象とならない

ので注意が必要です。なお、増額改定とする制度設計は、申請者だけでなく、原則として全ての有期パート等を対象とする必要があります(ただし、合理的な理由があれば、一部に限定した改定・昇給であっても対象と認められるとされています)。

また、賃上げの実施前にキャリアアップ計画を作成・提出しないと、この助成金は受け取れません。また、労働保険料の未納や労働関係法令の違反がある会社は、助成金の対象から外れる恐れがあります。なお、

第3章で紹介する「業務改善助成金」の賃上げ対象にした社員は、キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)の対象にカウントすることができない

ので注意が必要です。

3 業務改善助成金(最大600万円)

1)業務改善助成金とは?

会社(実際は支店等の事業場単位)が事業場内最低賃金(最も賃金が低い社員の時給)を50円以上引き上げ、生産性を向上させるための設備投資等を行った場合、その費用の一部について助成金を受け取れるというものです。こちらは中小企業・小規模事業者だけが対象です。

厚生労働省「業務改善助成金」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03.html

2)助成金を受け取るには?

まず、会社が次の要件を全て満たす必要があります。

  • 中小企業・小規模事業者であること
  • 事業場内最低賃金が、2026年度の地域別最低賃金未満であること
  • 解雇や賃金引き下げ等の不交付事由に該当しないこと

要件を満たしている場合、「賃上げの計画」「設備投資等の計画」を作成し、都道府県労働局に提出します。交付が決定されたら、計画に沿って賃上げと設備投資等を実施し、都道府県労働局に結果を報告すれば、助成金を受け取れます。

なお、賃上げの対象は雇用保険被保険者に限定され、助成金の対象になる設備投資等の例としては、次のようなものが挙げられます。

  • 設備投資(例:POSレジシステム導入による在庫管理の短縮、リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮)
  • コンサルティング(例:専門家による業務フロー見直しによる顧客回転率の向上)
  • その他(例:店舗改装による配膳時間の短縮)

3)受け取れる金額はいくら?

「助成上限額」までの範囲内で、「設備投資等の費用×助成率」で計算した額(具体的には図表2の額)を受け取れます。なお、「社員数30人以上」か「社員数30人未満」によって、助成上限額が一部異なる場合があります(図表2の赤字部分参照)。

業務改善助成金

要件を満たす場合、最大600万円を受け取れる計算になります。

4)専門家のワンポイントアドバイス

業務改善助成金における賃上げとは、全ての賃金の合計額をみて、所定の額以上の引き上げがされているものをいいます。そのため、

手当等を減額して基本給を引き上げた場合でも、ただちに助成金の対象から除外されるものではない

とされています。キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)とは、賃上げの考え方が少し異なるため、注意が必要です。

事業場内最低賃金の計算に含まれるのは、「毎月支払われる基本給と諸手当(職務手当、役職手当、住宅手当等)」だけで、時間外勤務手当(残業代)や賞与、通勤手当、家族手当などは対象外です(地域別最低賃金と同じ)。

ただし、事業場内最低賃金の計算の基礎に含まれないからと言って、通勤手当や家族手当などを減額や廃止するのは考えものです。その分の額を基本給などの引き上げに回したとしても、賃金全体の総額で見た場合に各コース所定の引き上げ額を下回っていると、賃上げとは認められません。

助成金の申請時に、賃上げ対象となる社員(必要がある場合は他の社員も)について、賃金台帳を基に実際の支給状況を確認されることがあるので、自社の賃金形態をあらかじめ確認しておきましょう。

厚生労働省「最低賃金の対象となる賃金」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/chingin/newpage_43898.html

なお、2026年度の交付申請は、2026年9月1日からスタートしますが、

締切は地域別最低賃金の発効日(2026年10月1日以降、各都道府県で随時発効。2026年11月30日以降の発効になる場合は、11月30日が締切)となっていて、申請期間が短い

です。また、

賃上げは、2026年9月1日から地域別最低賃金の発効日の前日までの間に行う

必要があるので、申請前に賃上げを実施してしまわないよう注意しましょう。

4 人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)(最大325万円)

1)人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)とは?

社員の離職率を低下させるために、

  • 雇用管理制度(賃金規定制度、諸手当等制度、人事評価制度、職場活性化制度、健康づくり制度)
  • 雇用環境整備(業務負担軽減機器等の導入(社員の業務負担の軽減が図られる機器・設備等の導入))

の措置のいずれかを実施し、離職率が低下した場合に助成金を受け取れるというものです。

厚生労働省「人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000199292_00005.html

2)助成金を受け取るには?

まず、会社が次の要件を全て満たす必要があります。「雇用管理制度等整備計画」は、雇用管理制度や業務負担軽減機器等の導入に関する計画のこと、「評価時離職率算定期間」は、計画期間終了から1年経過するまでの期間のことで、この期間に離職率の変化を評価します。

  • 雇用管理制度等整備計画を作成し、都道府県労働局に提出して「認定」を受けること
  • 計画の認定申請日から計画期間末日までの間、同一の社員(最低1人)を計画の適用対象者として継続雇用すること
  • 雇用管理制度または業務負担軽減機器等を新たに導入し、適用対象者の2分の1以上に制度・機器等を適用し、さらに、制度・機器等を評価時離職率算定期間の末日まで運用すること
  • 離職等について一定の要件を満たし、評価時離職率算定期間が終了するまで(計画期間終了から1年経過するまで)の離職率を、計画提出前1年間よりも原則として1%ポイント以上低下させること(雇用保険被保険者数が10人未満である場合は、要件緩和あり)

上記の要件を満たした上で、評価時離職率算定期間が終了してから2カ月以内に、都道府県労働局に結果を報告すれば、助成金を受け取れます。

3)受け取れる金額はいくら?

雇用管理制度については「制度の内容に応じて定められた額」を定額で、雇用環境整備については、「対象経費の2分の1に相当する額」を受け取れます(いずれも上限額あり)。

また、このコースでは計画期間中に、雇用管理制度・雇用環境整備の対象者について、「毎月決まって支払われる賃金を5%以上(一定の要件を満たす場合は3%以上)賃上げ」すると、加算が受けられます。なお、雇用環境整備に限り、7%以上の高い賃上げを実施した場合は更に高額な加算を受けることができます。

人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)

雇用管理制度・雇用環境整備の措置を両方実施し、なおかつ、賃金要件も満たした場合、最大325万円を受け取れる計算になります。

4)専門家のワンポイントアドバイス

助成の要件として、計画開始日6カ月前から計画期間の末日までにおいて、雇用保険被保険者を会社都合で解雇等していないことが含まれています。助成の獲得を狙うのであれば、計画の達成だけに注視するのではなく、日常的な運営にも留意する必要があります。

賃金要件を満たすためには、雇用管理制度等整備計画の認定申請後、

雇用管理制度・雇用環境整備の措置の実施日から、計画期間の末日までに賃上げ

を行う必要があります。また、社員それぞれの「毎月決まって支払われる賃金」について、

賃上げ前3カ月間の合計額と、賃上げ後3カ月間(賃上げした月を含む)の毎月決まって支払われる賃金の合計額を比較して、原則5%以上増加

していることが必要です。

以上(2026年5月更新)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)

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画像:日本情報マート

【働き方改革推進支援助成金】年休の促進で最大1020万円!?

1 「年5日の年休取得」に向けた取り組みは助成金の対象

労働基準法には、会社の「年休の時季指定義務」が定められています。これは、

年10日以上の年次有給休暇(以下「年休」)が付与されている社員には、社員の意見を聴取した上で、会社が時季を指定して年5日の年休を取得させる

という義務で、違反すると30万円以下の罰金の対象となります。

仕事ばかりで休もうとしない社員や、周囲に遠慮して休みたいと言えない社員もいます。しかし、年休の取得は、社員の心身のリフレッシュや仕事の効率に繋がることから、この義務に真摯に向き合って確実に年休を取らせていくことは大切です。

それに、社員の年休取得を促進する取組は、助成金の対象にもなります。具体的には、

「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」で、最大1020万円を受給できる可能性がある

のです。助成金を受給するには、所定の「交付申請書」を事業実施計画書などとともに、所轄都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に提出します。

2026年度の申請期限は、2026年11月30日まで

ですので、詳細を確認してみてください。助成金の概要は次の通りで、赤字の部分が年休に関連する内容です。

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2 何をしたら年5日の年休取得が達成できるのか?

1)就業規則等の整備

働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)を受給するには、年5日の年休取得について就業規則等を整備する必要があります。定めるべきポイントは次の通りです。

  • 年休の付与日数が年10日以上の社員に、年5日の年休を取得させる
  • 5日の年休は、年休の付与日から1年以内に取得させる
  • 5日の年休は、社員の意見を聴取し、尊重するよう努めた上で、会社が時季を指定して取得させる

就業規則等の規定例は次の通りです。

【規定例】

第○条(年次有給休暇の時季指定)

会社は年次有給休暇を年10日以上付与する社員に対して、付与日から1年以内に、付与日数のうち5日について、会社が社員の意見を聴取し、その意見を尊重した上で、あらかじめ時季を指定して取得させる。ただし、社員が本人による時季指定または第○条で定める計画的付与により年次有給休暇を取得した場合、取得した日数分を5日から控除する。

なお、就業規則等を整備するだけでなく、運用面においても注意が必要です。具体的には、

社員ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存する

ことが義務付けられています。また、社員数が常時10人未満の会社(事業場)が働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)を受給する場合、就業規則に代えてこの年次有給休暇管理簿の添付で代替可能とされています。社員数が常時10人以上の場合も、万が一提出を求められた際にきちんと対応できるよう、準備をしておきましょう。

2)計画的付与を導入する

年休をなかなか取ろうとしない社員がいる場合は、計画的付与が有効です。計画的付与とは、

労使協定で定めた日に年休を与えられる制度

です。年休の時季指定義務との大きな違いは、

年休を与えるに当たって、社員の意見を聴取しなくてもよい

という点です。計画的付与では、会社全体で一斉に付与することも、チームや個人単位での交代制にすることもできます。導入するには「労使協定」(事業場の過半数労働組合、それがない場合は労働者の過半数代表との書面による協定)の締結が必要になります。

計画的付与の対象は、付与日数のうち5日を超える部分です。例えば、年休の付与日数が10日の社員の場合は5日まで、20日の社員の場合は15日までです。逆に言うと、年休の付与日数が5日以下の社員には、計画的付与を適用できません。また、計画年休に充てるべき休暇日数が不足する社員を含めて計画的に付与する場合には、年休の付与日数を増やす等の措置が必要となります。

図表2が年休の付与日数の一覧で、赤字が年休の時季指定義務の対象になる社員、網掛けにしているのが計画的付与を適用できない社員です。

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3)半日単位年休や時間単位年休の導入

半日単位年休や時間単位年休を導入すると、

  • 仕事の引き継ぎなどにかかる手間が減る
  • 病院や役所に行くなど、ちょっとした私用に活用できる

といったメリットにより、社員が年休を取得しやすくなることが期待できます。社員が出張先で仕事をした後、空いた時間で観光を楽しむ「ブリージャー(出張休暇)」なども取りやすくなるかもしれません。

なお、半日単位年休と時間単位年休は似ていますが、実は次のように大きな違いがあります。

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注意していただきたいのは図表3の赤字部分、「5.年休の時季指定義務との関係」「6.働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)との関係」です。

  • 半日単位年休では助成金はもらえないが、年休の時季指定義務には含まれる
  • 時間単位年休では助成金がもらえる可能性があるが、年休の時季指定義務とは無関係なので、別で年5日の年休を取得させる必要がある

以上(2026年4月更新)

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画像:pixabay

経営者から管理職へ 「名言」で伝える心構え

1 管理職に対してこそ必要な「メッセージ」

管理職は、部下の指導について多くの悩みを抱えています。部下との意思疎通をうまく図れない、部下がついてきてくれない、部下が思うように成長しない、部下が何を考えているか分からない……。こうした現状に疲弊している管理職は少なくありません。

さらに近年は、「何かを言うとパワハラと言われるかもしれない」「部下に踏み込みすぎて嫌われたくない」といった不安から、指導そのものを躊躇する管理職も増えています。自信を持って部下と向き合えずにいる、そんな管理職が多いのが現状です。

管理職の話を聞き、励ますのは、経営者の大切な仕事です。特に、組織を率いる立場の経営者から語りかけるメッセージは、管理職の「行動指針」にもなるでしょう。この記事では、「迷い」「視点」「行動」というテーマでそのようなメッセージを紹介します。

2 「迷い」を力に変えるための言葉

管理職の中には、「自分は管理職に向いていない」「どう接すればよいのか分からない」と感じ、自己否定に陥っている人もいます。部下指導への不安が積み重なり、次第に部下から距離を置くようになるーーそういった悪循環に陥りがちです。

経営者は、こうした管理職に「迷っていること自体は悪いことではない」と伝えましょう。その際、米国の研究者でリーダーシップ論の第一人者であるブレネー・ブラウン氏の次の言葉が参考になります。

「私たちは日々、不確実性やリスク、危険に生身がさらされるような場に直面する。そうなるのは不可抗力だが、それにどう関わるかは選ぶことができる」(*)

ブラウン氏は20年以上にわたって「脆弱性(vulnerability)」をテーマに研究を続けてきました。彼は、「自分をさらけ出すことへの恐れを持ちながらも、それでも踏み出す姿勢こそがリーダーに求められる本物の勇気だ」と言っているのです。

この考え方は、管理職にも当てはまります。迷いや不安を感じながら部下と向き合おうとしている管理職は、むしろリーダーとして誠実な姿勢を持っている証拠ともいえます。大切なのは、迷いを消すことではなく、迷いを抱えながらも部下の前に立ち続けることです。

経営者は、ブラウン氏の言葉を借りて、「あなたが迷っているのは、部下を真剣に考えているからだ」と管理職に伝え、自己否定から脱却する後押しをしましょう。

3 「視点」を変えるための言葉

管理職の中には、部下指導で「できないところを直させる」ことに注力しすぎて、かえって部下との関係が悪化してしまう人がいます。「なぜこれができないのか」「もっとこうすべきだ」という指摘が続くと、部下は委縮し、管理職への信頼も失われかねません。

経営者は、「部下を育てる」という視点を、「部下の強みを引き出す」という視点に転換するよう促しましょう。その際、経営学の父と称されるピーター・ドラッカー氏の次の言葉が参考になります。

「成果をあげるには、人の強みを生かさなければならない。弱みからは何も生まれない」(**)

ドラッカー氏はその著書の中で、「弱みを基盤にしてはならない(できないことからスタートしてはならない)」と述べています。重要なのは、一人ひとりの強みを見極め、それをチームの成果につなげる仕組みをつくることだというのがドラッカー氏の一貫した主張です。

部下一人ひとりには、それぞれ異なる得意分野があります。「なぜできないのか」ではなく「何ならできるのか」を問い続ける管理職こそが、チームを本当の意味で強くします。弱みに目を向けることをやめるわけではありませんが、それよりも強みを活かす視点を持つことが、部下の成長と組織の活性化につながります。

経営者は、ドラッカー氏の言葉を借りて、「部下の足りない部分ではなく、できることを見よ」と管理職の視点を切り替えさせることが大切です。

4 「行動」を継続するための言葉

部下の指導に真面目に取り組んでいる管理職ほど、悩みは深いものです。部下が思うように成長しないことに苛立ち、落胆し、つい「自分でやったほうが早い」と手を出してしまうーーこれは管理職の“あるある”といってもよいでしょう。

しかし、根本的な問題は、「部下が育たないこと」ではなく、「育てようとする行動が継続しないこと」にあります。経営者は、管理職に対して「気合いで続けろ」ではなく、「続けられる仕組みをつくれ」と伝えましょう。その際、習慣形成の専門家として世界的に知られるジェームズ・クリアー氏の次の言葉が参考になります。

「結果は設定した目標とはほとんど関係なく、取り入れた仕組みに左右される」(***)

クリアー氏は著書の中で、目標設定よりもそこに至る日々の「仕組み(システム)」の設計こそが成果を左右すると説いています。やる気が出たときだけ動くのではなく、やる気がなくても動けるような環境と習慣を整えることが、継続の本質だという考え方です。

これは部下指導においても同じです。「今日は時間があるから指導する」「気が向いたのでフィードバックする」という偶発的なアプローチでは、部下の成長は安定しません。定期的な1on1の時間を設ける、週に一度フィードバックを行う日を決めるなど、管理職自身が「仕組み」をつくることが重要です。

経営者は、クリアー氏の言葉を借りて、「あきらめるな」と精神論を語るのではなく、「続けられる仕組みをつくれ」という実践論で管理職を支援しましょう。経営者自身も、管理職が実行しやすい環境をつくることで、その仕組みづくりを後押しすることが肝要です。

【参考文献】

(*)「本当の勇気は『弱さ』を認めること」(ブレネー・ブラウン著、門脇陽子訳、サンマーク出版、2013年8月)

(**)「経営者の条件」(P・F・ドラッカー著、上田惇生訳、ダイヤモンド社、2006年11月)

(***)「複利で伸びる1つの習慣」(ジェームズ・クリアー著、牛原眞弓訳、パンローリング社、2019年10月)

以上(2026年4月更新)

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ヒント 9[職場 1]:“ウェルカムな職場”は人が辞めない/武田斉紀の『人が辞めない会社、10のヒント』(10)

1 一日も早く「仕事の手応え」や「仕事を通した貢献や成⾧」を感じられるように

今シリーズの狙いは、経営者、人事担当者、現場の皆さんのお悩みである「社員を採ってもすぐに辞めてしまう上に、そもそも採れない」という課題を解決することです。『人が辞めない会社、10のヒント』と題して、毎回1つずつご紹介していきます。

『人が辞めない会社』に変わるための課題、その原因と解決策は会社によってさまざまです。

今回ご提示するヒントが皆さんの抱える原因に明らかに当てはまらない場合は、読み飛ばしてくださって結構です。ですが、ヒントの1~9までが該当しなくても、10が当てはまるかもしれません。

全社共通の原因もあれば、部署ごとの固有の原因も存在することでしょう。原因が1つだけというケースは少ないので、何回分か読んでいただければ「これはうちにも当てはまるな」というものを見つけていただけるのではと思います。

『人が辞めない会社』に変わるために、前回の第9回では、人は「自分は今の仕事で大事な戦力なのだ」と思えれば簡単には辞めない、というお話をしました。

本人が仕事を通して十分な「仕事の手応え」や「仕事を通した貢献や成⾧」を感じられている間は、もっとここで頑張りたい、もっとここで役に立ちたいと思えるからです。

まずは新たに入社した人材が、早く職場になじめるように上司や既存社員のほうから働きかけ、一日も早い戦力化を目指しましょう。

その際に上司が取るべき行動は、一方的に指示命令をしてやらせるのではなく、彼らに徐々に「仕事を任せ」ていくことです。自分で自律的に考えてやらせてみて、一緒に「振り返る」のです。

初めての業務で分からない場合などは、これまでの自社のやり方を示して一度は試してもらいつつも、改善点や新たな提案があれば積極的に受け止める姿勢を見せましょう。

同時に「新戦力としての期待」や「本人ならではの経験、知識、スキル、アイデアを期待していること」も伝えましょう。そうすれば、誰もが少なからず”存在価値” や”存在意義”を感じられるはずです。

新戦力である彼らは、失敗をしながらも小さな成功体験を積み重ねることで、「仕事の手応え」や「仕事を通した貢献や成⾧」を感じられるようになっていくことでしょう。

2 「若手やよそ者に冷たい会社」と、「ウェルカムな会社」

さて、第10回からは、[仕事]に代わって、職場環境としての[組織]についてのヒントをご紹介します。今回は、「”ウェルカムな職場”は人が辞めない」というお話です。

世の中には、「若手やよそ者に冷たい会社」と、「ウェルカムな会社」が存在します。

「若手やよそ者に冷たい会社」は、新たに新卒や中途社員が入社してきても歓迎の意思を示しません。

恐らくまず、トップや幹部、人事の人たちが人に対して冷たいのでしょう。その影響もあって現場の各部署も人に冷たい。どちらも新しい人材への期待が薄く、両者の連携もなく、迎える準備ができていないのです。

極端なケースで言えば、「入社に向けた手続きの案内が適当」だったり「入社式が適当」だったり。さらには「配属部署での歓迎セレモニーがない」「部署全体やメンバーへの紹介がない」「歓迎会のような懇親会もやらない」など。

挨拶やセレモニーだけではありません。些事に思えるかもしれませんが、「配属初日に何をやるかが決まっていない」「仕事に必要な本人用の備品が用意されていない」。それだけで本人は、「自分は大事にされていない」「この会社は社員を大事にしていない」と感じるものです。

また、「入社後研修がない」。定期的にまとまった人数の新卒採用をしている会社なら新入社員研修はあるでしょうが、中途社員向けはどうでしょうか。さらには、「困ったときに相談しやすい相手(メンター)も用意されていない」。

「若手やよそ者にウェルカムな会社」は、「冷たい」会社の真逆です。

トップ、幹部、人事も新しい人材に大いに期待し、大切に思っている。その意思が現場にも伝わっていて、新しい人材をいかにウェルカムするかを部署内で真剣に話し合い、十分な準備をして入社当日を楽しみに迎えているのです。

「入社に向けた手続きの案内が丁寧」で、「入社式には社⾧や幹部から期待を伝えるなど、力を入れているのが分かる」。「配属部署に行くと、歓迎セレモニーがあり」「部署全体やメンバーへ丁寧に紹介してくれる」。迎えるほうは1人が相手でも、本人はたくさん覚える人がいますから、写真入りのメンバー紹介などがあればかなり助かります。

「歓迎会のような懇親会がある」。別に夜にお店で飲み会を開かなくても構いません。既存社員と気軽に話し、交流できる場でさえあれば、例えば職場の会議室や食堂でお酒抜きかつ短い時間でもいいのです。

入社後研修は何日もかけて⾧ければ充実しているというわけでもなく、内容が肝心です。数人の中途入社者相手であれば、お決まりの内容よりも当人の状況にカスタマイズした個別研修のほうがありがたいでしょう。

3 「ウェルカムな会社」は、戦力化までみんなでフォローする

「ウェルカムな会社」は、会社とメンバー一人ひとりが入社時に歓迎の意思を示すだけでなく、戦力化までみんなでフォローします。

第9回でも言及しましたが、採用した人材の最初のゴールは「戦力に育てる(戦力化する)」ことです。

本人が「自分は大事な戦力なのだ」と信じられてこそ、自身の”存在価値” や”存在意義”を感じて組織の大切な一員として頑張れるからです。

新卒にしても中途にしても、入社後研修を終えればすぐに戦力になるわけではありません。その後はOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング、職場業務を通した訓練)を通して学んでいくことになります。その際、日々の疑問点や悩みを解決できる環境を用意しておくことが肝要です。

皆さんの会社の中にも、「メンター制度」(直属の上司や先輩以外の相談相手を予め用意しておく制度)を導入しているケースがあるでしょう。

プライベートでもそうですが、相談内容によって親兄弟、恋人やパートナーに相談したいときもあれば、親友や詳しい知人に相談したいこともあるはずです。いくら上司がウェルカムな人で、相談しやすい相手であったとしてもそれは変わりません。

ただでさえ、入社したばかりでとまどいの連続の毎日です。彼らの疑問点や悩みはできるだけ早く、その日のうちに解決するのがベスト。翌日に向けて前向きな心の準備ができます。

上司や先輩、同僚など身近な人に相談しにくい場合、直接利害関係のない他部署のメンターがいれば心強いでしょう。人間同士の相性もあるでしょうから、メンターも入社者1人に複数人設定しておくといいかもしれませんね。

当然ですが、メンターの選抜には配慮が必要です。

相談すれば断らずに話を最後まで聞いてくれて、気持ちも含めて一旦受け止めてくれる人。その上で、問題解決のために社内人脈も活かして適切に対処してくれる人。本人を甘やかすのではなく、一日も早く戦力になれるように支援してくれる人です。

また、中途入社者の場合、入社同期を作ってあげることも有効です。

中途の場合、年齢や経験・スキルも全く異なるどうしで、新卒のような同期意識は少ないかもしれません。ですが、ベテランであっても、よそ者が一人で入社するのは孤独なものです。同じくらいの時期に入社した”同期”がいれば、悩みを打ち明けられるよき相談相手になれるかもしれません。

私は中途入社者に直接聞いたことがありますが、互いに年齢や経験によらず”中途入社同期”が一人いるだけでも心強いそうです。入社時期が少しずれる場合は、研修を一緒に行うだけでも”中途入社同期”の感覚が芽生えるようですよ。

4 「ウェルカム」を、会社の文化に育てる

私が新卒で入社したリクルート社にも数十年も前から「メンター制度」に近いものがあり、ありがたかったのですが、

最もありがたかったのは「誰に相談しても必ず相談に乗ってくれる、人を育てる文化」でした。

上司だったか先輩だったか忘れましたが、入社後に教えてくれました。「何でも相談したいことがあれば、誰に相談してもいいんだよ。課⾧を飛ばして部⾧や他部署の人に直接聞きに行ってもいいし、必要なら役員や社⾧に聞いたっていい。そういう会社だから」と。

それは本当のことでした。しかも、相談に行くと誰一人断らないのです。こちらの思いをちゃんと伝えれば、たとえ初対面でも笑顔で「いいよ」と気さくに声をかけてくれました。そのとき忙しければ、「分かった。今無理だけど、〇時くらいでも大丈夫?」とわざわざ時間を取ってくれるのです。

「仕事の報酬は仕事」というのも同社の文化で、仕事のできる人には新しい仕事がどんどん舞い込んできます。そういう人は目立つし頼りにもなるので、若手だけでなく先輩や他部署からも相談されやすい。でも、どんなに忙しくても基本的に断らないのです。

「相談内容の資料があったら事前に読んでおくから送っておいて」と言って、時間になって相談に行くとすでに目を通していて、的確なアドバイスをくれました。あるいは、「これね、自分じゃなくて□□部の〇〇さんの事例が使えるよ。つないであげるよ」と目の前で連絡してくれるのです。

それを見た私は、「自分もいつかこうして誰かに相談され、力になれる人間になりたい」と強く心に刻んだものです。そんな思いが循環して、会社全体の文化になっていたのかもしれません。

上司によっては、部下が事前に断りなく自分を飛ばして、上の上司や他部署の管理職、ましてや役員、社⾧に相談に行くことをよく思わない人もいそうです。しかし、同社では「本人がその人に相談したかったのだ。それで問題が解決したのならオッケー、何の問題もない」という考え方が浸透していたのです。

5 「ウェルカム」は「甘い」のではない、互いが”プロ”を求める

人に対して「ウェルカム」なのと、人に対して「甘い」のとは異なります。

新しい人を「ウェルカム」に迎えるのは、彼らに大いに期待しているから。互いの成⾧と会社の発展のためにも、「一日も早く戦力になってもらい、同じ”プロ”として一緒にいい仕事をする」ことを目指すのです。

「ウェルカム」の根底にはDEI(Diversity:多様性、Equity:公平性、Inclusion:包摂性)の、特にInclusionの考え方があります。「企業理念など中心となる価値観を共有できるか否かは譲れないが、それ以外の属性は問わない、むしろ違いを歓迎する」という思想です。

生物の種が強くあるためには、均一のDNAではなく、外部環境の変化やウィルスなどに抗えるDiversity:多様性が不可欠です。そのためにはEquity:公平性を持って違いを受け入れる=Inclusion:包摂性が前提となる、会社もそれと同じです。

新卒や中途社員は自社をさらに強くしてくれる存在であり、「ウェルカム」の気持ちで受け入れて、同じ”プロ”としての戦力の一員になってもらえるように会社と社員が努力するべきなのです。

一日も早く戦力になってもらいたければ、入社時には大歓迎し、大いに期待していることをトップから現場まで会社全体で伝えましょう。

入社までの準備や手続き、当日の準備を怠りなく。職場に来たらメンバーを丁寧に紹介し、早く環境に慣れてもらうために既存社員との交流の場を作るのです。

新卒、中途に限らず入社後研修を実施し、OJTに移ってからも直接の教育担当でなくても随時声をかけ、積極的に相談に乗る。「メンター制度」や入社同期のつながりを作り、自身の職場以外でも相談しやすい環境も用意してあげる。

これら全ては、「一日も早く戦力になってもらい、同じ”プロ”として一緒にいい仕事をする」ための布石です。

もちろん新卒と中途、また中途の中でもスキルやキャリアによっても戦力化までにかかる時間は違います。必要以上に急かすのは逆効果。優秀な人材、期待の大きい人材ほどプレッシャーになってしまいます。

各々の新しい環境への適用度合いを確認しつつ、「早く同じ立場で一緒に働きたい」気持ちと、「そのためには協力は惜しまないし、いつでも相談に乗りますよ」という気持ちで接していけばいいでしょう。

会社としてこの人材を採用したいと決めた以上、受け入れる側が戦力化することを途中であきらめないことです。

第10回を最後までお読みいただきありがとうございました。次回はいよいよ『人が辞めない会社、10のヒント』の最後の1つです。今回と同じく職場環境としての[組織]についてのヒントをご紹介します。

毎回ご紹介するヒントを参考にしながら、自社を退職する一人ひとりの「辞める理由」と、働いている一人ひとりの「辞めない理由」を丁寧に拾ってみましょう。見えてきた自社ならではの“課題”を解消し“強み”を活かせれば、『人が辞めない会社』へと変われるはずです。

<ご質問を承ります>

ご質問や疑問点などあれば以下までメールください。※個別のお問合せもこちらまで

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※武田が以前上梓した書籍『新スペシャリストになろう!』および『なぜ社長の話はわかりにくいのか』(いずれもPHP研究所)が、ディスカヴァー・トゥエンティワンより電子書籍として復刻出版されました。前者はキャリア選択でお悩みの方に、後者はリーダーやトップをめざしている方にお薦めです。

『新スペシャリストになろう!』
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『なぜ社長の話はわかりにくいのか』
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以上(2026年4月作成)
(著作 ブライトサイド株式会社 代表取締役社長 武田斉紀)
https://www.brightside.co.jp/

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画像:VectorMine-Adobe Stock

健康保険の被扶養者の年収判断

健康保険の被扶養者の認定基準の一つに、年間収入に関する基準があります。これまで、この年間収入は「今後1年間の収入見込み」によって判断されていましたが、4月からは「労働条件通知書から見込まれる年収」に基づいて判断する取扱いに変わりました。本稿では、この変更についてお伝えします。

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【株主総会】「オンライン株主総会」を開催するときの注意点

1 中小企業が開催できるのは「ハイブリッド型」

今や定時株主総会(以下「株主総会」)もオンラインで開催する時代。現在認められているオンラインを利用した株主総会の開催方法は、

  1. ハイブリッド型バーチャル株主総会
  2. バーチャルオンリー株主総会

です。このうち、「2.バーチャルオンリー株主総会」の対象は上場企業などに限られるので、中小企業が開催できるのは、

「1.ハイブリッド型バーチャル株主総会」と呼ばれる、リアルの会場を準備した上でオンラインでも中継する形態

です。

また、ハイブリッド型バーチャル株主総会(以下「オンライン株主総会」)は、

  • 参加型:株主はオンラインで株主総会の審議等を「確認・傍聴」する
  • 出席型:株主はオンラインで株主総会の審議等に「出席」する

に大別されます。参加型は、リアル株主総会の中継を見るだけです。質問や議決権の行使はできません。一方、出席型は、リアル株主総会に出席している株主と同じように、質問や議決権の行使ができます。出席型のオンライン株主総会を開催するには、「双方向性と即時性」が必要です。具体的には、

リアル株主総会での発言がオンライン出席している株主にすぐに伝わり、反対にオンライン出席している株主の発言も、すぐにリアル株主総会に伝わること

です。

オンライン株主総会は制約が多いですが、遠方の株主や障害を有している株主などがいる場合は効率化につながる可能性もあります。この記事では、出席型を前提に説明していきます。

2 オンライン株主総会の注意点

1)議決権行使や質問などの方法

オンライン株主総会の利用システムは、一般的なテレビ会議システムやライブ配信ツールにするのが無難です。会社も株主も操作に慣れているからです。また、

株主の本人確認の方法として、システムにログインするためのIDやパスワードを設定し、招集通知などに記載すること

が考えられます。

オンライン出席の株主がどのように議決権行使、質問や動議をするのかについても決めておきましょう。

  • 議決権行使:テレビ会議システムの挙手機能を利用
  • 質問や動議:テレビ会議システムの挙手やコメント機能を利用

また、事前質問を受け付けたり、よくある質問を審議の冒頭で紹介し回答したりすることも考えられます。

賛否が分かれそうな議案がある場合は、書面による事前の議決権行使を採用したほうが無難かもしれません。また、オンライン出席の株主からの質問や動議については、テレビ会議システムのコメント機能を利用することが考えられます。

動議の提出については、

オンライン出席の株主の動議は受け付けないこともできる

ことになっています。ただし、事前に招集通知などに、

バーチャル出席者の動議については、取り上げることが困難な場合があるため、動議を提出する可能性がある方は、リアル株主総会へご出席ください

といった案内を記載すべきでしょう。

2)利用ツールの使用や通信環境

基本として、オンライン株主総会で利用しようとしているシステムに外部から接続できるか、議決権行使などで使う挙手機能やコメント機能が使えるかを確認します。また、リハーサルにおいて、オンライン出席している株主の挙手や質問を見逃すことはないか、こちらからの回答となる音声やテキストがきちんと相手に届くかなども確認します。

さらに、オンライン株主総会で起こる問題として、配信遅延や通信障害があります。配信遅延については、事前にテストで確認できますが、通信障害はいつ発生するか分かりません。もし、株主総会の途中で通信障害が発生してしまった場合、オンライン出席の株主が中継を観ることができず、議決権行使などもできなくなる恐れがあります。

そのため、

  • 通信障害のリスクがあることを招集通知などに記載する
  • バックアップの通信手段を確保しておく
  • 通信障害が発生したときは、一度休憩を入れる
  •  通信障害により議事に著しい支障が生じる場合には、議長が延期・続行を決定することができることを、株主総会の冒頭において諮る

などの準備をし、リハーサルに組み込んでおく必要があります。

3)議事録の注意点

株主総会の議事録には、オンライン出席の株主についても記載する必要があります。この際、開催場所と株主との間で情報伝達の「双方向性と即時性」が確保されていることが分かるよう、利用したシステム等を記載することが望ましいです。

3 オンライン株主総会の招集通知の例

○年○月○日

株主各位

住所:○○○○○○○

社名:株式会社○○○

代表取締役 ○○○○

 

第○回 定時株主総会 招集ご通知

 

拝啓 ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

さて、当社第○回定時株主総会を下記の通り開催いたしますので、ご出席くださいますようご通知申し上げます。

(略)

本総会におきましては、当日会場にご来場いただけない株主様も、後記のインターネット等の手段を用いた「オンライン出席」の方法により本総会にご出席いただくことができます。

(注意事項)

オンライン出席の場合の議決権行使、質問、動議の方法につきましては……(略)

オンラインでご出席されている最中に通信障害などが起きた場合は……(略)

 

(オンライン出席のご案内)

1.オンライン出席に必要となる環境

オンライン出席を行うためには、株主の皆様におかれては、以下の環境を整えていただく必要があります。(略)

 

2.システムへのログイン方法

オンライン出席を希望される株主様は、以下に記載のIDおよびパスワードを用いて、以下のURLまたはQRコードによりアクセスいただき、当社所定のオンライン出席システムにログインいただきますようお願いいたします。

なお、オンライン出席の方法によるご出席は、株主様本人に限定しております。

 

<オンライン出席用の特設ページ>

https://……

<ID・パスワード>

ID:……

パスワード:……

 

(略)

●.お問い合わせ先

03-……

4 オンライン株主総会の議事録の例

開催場所:東京都○○区△△ 第××会議室

なお、当日出席の株主の一部は、当社所定の「○○」システムに所定のIDとパスワードを用いてログインし、会場の画像および音声の配信を受け、インターネットにより質問および議決権行使を行う方法により本総会に出席した。

(略)

議事の経過の要領およびその結果

定刻、取締役社長△△は、定款の規定に基づき議長となり、開会を宣した。

議長は、本総会においては、一部の株主がインターネットを用いて当社所定の「○○」システムにログインする方法で出席しているところ、当該出席者の発言が即時に本総会の会場の出席者に伝わり、一堂に会するのと同等の意見表明が、互いにできる状態であることが確認し、議事に入った。

(略)

5 「バーチャルオンリー株主総会」導入に向けた動き

政府は、現在、会社法を改正して、上場会社に限ることなく「バーチャルオンリー株主総会」を導入することも検討しています。

そのため、中小企業においても、今のうちからオンライン株主総会の開催に慣れておくことが良いでしょう。

以上(2026年4月更新)
(執筆 石原法律事務所 弁護士 磯田翔)

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画像:Mariko Mitsuda

健康保険の被扶養者の年収判断

健康保険の被扶養者の認定基準の一つに、年間収入に関する基準があります。これまで、この年間収入は「今後1年間の収入見込み」によって判断されていましたが、4月からは「労働条件通知書から見込まれる年収」に基づいて判断する取扱いに変わりました。本稿では、この変更についてお伝えします。

1 健康保険の被扶養者の認定

健康保険の被扶養者になるためには、次の年収に関する基準を満たす必要があります。この点は以前と変わりません。

年収が130万円(※1)未満で

  1. 被保険者と同居の場合には、被保険者の年収の2分の1未満
  2. 被保険者と別居の場合には、被保険者からの仕送り額未満

(※1)19歳以上23歳未満(被保険者の配偶者を除く)は150万円。60歳以上、または障害厚生年金を受けられる程度のある人は180万円

今年3月まで、年収130万円未満かどうかは、過去の収入や現時点の収入などから、今後1年間の収入を見込んで判断していました。

4月1日以降は、労働契約で定められた賃金から見込まれる年間収入で判断することになりました。その際は、労働条件通知書等の労働契約の内容が分かる書類により、年収130万円未満かどうかを確認します。

年収の計算は、労働条件通知書等に規定された時給、労働時間、労働日数などを基に行います。諸手当や賞与も、労働条件通知書等に記載されていれば計算に含めます。

労働契約書等に明確な定めがなく、契約段階で金額を見込みにくい時間外労働に対する賃金等は、年間収入の見込額に含まないこととなります。そのため、給与明細書や課税(非課税)証明書等で結果的に年収が扶養認定基準を上回っていても、残業代等が「社会通念上妥当な範囲」であれば扶養認定を取り消す必要はないとされています。

今年3月までは、残業代を含めて年収を見込んでいました。このため、パート・アルバイトで働く人は、毎年秋ごろになると、年収が130万円以上にならないように労働時間を減らさざるを得ませんでした。こうした働き控え(就業調整)が行われると、繁忙期に人手が不足するため、企業にとっても痛手でした。今回の見直しは、こうしたマイナス面に対処する取り組みとなっています。

2 実務面の注意事項

従業員の家族を被扶養者にする場合、企業はその届を保険者(※2)に提出します。保険者はこの届をもとに、被扶養者にするかどうかを判断します。

(※2)全国健康保険協会(協会けんぽ)や各健康保険組合のこと。協会けんぽに加入している企業は、年金事務所に健康保険被扶養者(異動)届」を提出する。

全国健康保険協会の届を例に挙げると、企業の担当者は「健康保険被扶養者(異動)届」を書く際、労働条件通知書等から見込み年収を確認し、「収入(年収)」欄に記載します。また、異動届の「扶養に関する申立書」欄に、対象者が給与収入のみである旨を書きます。

労働条件通知書等で年収を確認するのは、対象者が給与収入のみのケースです。給与収入のほかに、年金収入や事業収入があるときには、従来通り、給与明細書や、自治体が発行する課税(非課税)証明書などにより年収を判定します。

また、労働条件通知書等で見込み年収が計算できないことがあります。例えば「シフト制」で労働時間がはっきりしない方や、契約期間が1年に満たない方などです。このようなケースも、給与明細書や課税(非課税)証明書などにより見込み年収を計算します。労働条件通知書がない場合も同様です。

3 さいごに

本稿制作時点では、厚生労働省の通知やQ&Aにより、基本的な取扱いは示されています。実際の手続きや必要書類の案内は保険者によって異なる場合があるため、日本年金機構や加入先の健康保険組合等のホームページなどで最新情報を確認しておきましょう。

また、企業は保険者から年1回、被扶養者の収入確認を求められます。その際も、給与収入のみの被扶養者については、労働条件通知書で年収を確認します。

※本内容は2026年4月10日時点での内容です。

(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)

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画像:photo-ac

目的で異なる3つの会計。 財務会計・税務会計・管理会計はどのように違うのか?

1 経営者が意識する3つの会計

会計は、法令に基づく「制度会計」と「管理会計」とに大別され、さらに制度会計は「財務会計」と「税務会計」とに分かれます。それぞれを簡単に説明すると、

  • 財務会計:制度会計の1つ。株主など社外の関係者に経営状況を説明するための会計
  • 税務会計:制度会計の1つ。税金を正しく計算、納税するための会計
  • 管理会計:投資判断やコスト管理など、経営者などが経営判断をするための会計

といった具合になります。また、気になるこれらの関係性は次の通りです。

3つの会計の関係(イメージ)

中小企業には、上場企業のように財務諸表を外部に開示する義務がありません。一方、納税義務はあるので、財務諸表は財務会計(会社法や企業会計原則など)ではなく、税務会計(法人税法など)に基づいて作成されるなど、税務会計に偏りがちです。

しかし、金融機関などに業績を説明する際、税務会計に基づく財務諸表だけだと内容が不十分なことがあります。それに、管理会計によって、定量的な指標から意思決定をすることも大切です。大切なのは、それぞれの会計の使い分けなので、この記事でそれぞれの特徴を分かりやすく説明していきます。

2 財務会計とは

財務会計は、

会社法・金融商品取引法(上場会社のみ)・会計基準などの法律や規則に基づいて実施

されます。そのため、財務会計に基づいて作成された財務諸表は他社と比較することができ、株主にとっては投資の参考資料、取引先などにとっては取引の判断材料になります。

財務会計では、会社の活動を「資産」「負債」「純資産」「収益」「費用」に区分して財務諸表を作成します。このうち資産・負債・純資産は「貸借対照表」に集計され、ある時点の会社の財産の状態を表します。また、収益・費用は「損益計算書」に集計され(収益と費用の差額が利益(または損失))、一定期間の業績を表します。

貸借対照表と損益計算書以外にも、会社のキャッシュの流れを表す「キャッシュフロー計算書」や、純資産の増減内容を表す「株主資本等変動計算書」などが作成されます。

3 税務会計とは

税務会計は、

法人税法・地方税法などに基づいて実施

されます。正しく納税額を計算して、申告期限までに確定申告書を税務署などに提出します。

税務会計では、財務会計で計算された当期純利益に一定の調整を加え、納税額を計算するための基礎となる所得を導きます。なお、財務会計の「収益・費用・利益」は、税務会計の「益金・損金・所得」と言い換えられますが、一部で取り扱いが異なります。そのため、税務会計の所得を計算する際は、次の4つの調整をします。

税務会計上の調整

なお、中小企業の制度会計は、上述の通り税務に偏っているのが実情であり、多くの中小企業では、税務上の益金・損金の基準に合わせて決算書を作成しています。例えば、財務会計上は認識すべき退職給付引当金について、税務上は損金不算入となるため費用計上しないといったことが生じます。その結果、貸借対照表、損益計算書に会社の財務状況が正しく反映されていないケースが多いことに留意が必要です。

4 管理会計とは

管理会計は、

法令上の決まりなどはなく、会社の考えに従って実施

されます。社内で利用するために管理会計の代表的な分析方法にCVP分析(損益分岐点分析)があります。CVP分析では、まず、財務会計上の費用(製造などに係るもの)を、

  • 変動費:売上の増減に比例して発生する費用。材料費、外注費など
  • 固定費:売上の増減に関係なく発生する費用。地代家賃、水道光熱費、交際費など

に分けます。そして、損益分岐点を計算するのですが、損益分岐点とは、

売上高から変動費を引いた「限界利益」と固定費が同額になる状態

であり、限界利益が固定費を上回ったら黒字です。損益分岐点の計算式は次の通りです。

損益分岐点=固定費/(1-(変動費/売上高))

5 それぞれの会計の処理と利益の違い

それぞれの会計の処理の違いを比べてみましょう。分かりやすく示すために、交際費を年間1000万円とします。

  • 収益:10億円
  • 費用:9億8000万円(材料費5億8000万円、労務費3億円、経費1億円(交際費1000万円))
  • 資産:3億円
  • 負債:2億5000万円
  • 純資産:5000万円
  • 1年決算法人

1)財務会計における取り扱い

財務会計では、交際費は損益計算書の費用になります。この場合の貸借対照表と損益計算書は次の通りです。

前提要件を集計した貸借対照表および損益計算書

2)税務会計における取り扱い

税務会計では、原則として、交際費は全額が損金不算入とされます。ただし、会社規模に応じた一定の措置が設けられています。期末の資本金の額または出資金の額が1億円以下であるなどの場合、損金不算入額は次のいずれかの金額を選択できます。

  • 交際費(全額接待飲食費に該当する場合)の50%相当を超える部分の金額
  • 年間800万円に事業年度の月数を乗じ、これを12で除して計算した金額(定額控除限度額)を超える部分の金額

交際費が年間1000万円の場合の損金不算入額および所得は、次のようになります。

交際費(全額接待飲食費に該当する場合)

3)管理会計における取り扱い

管理会計でCVP分析を行う場合、交際費は固定費に分類します。前提要件に基づいて作成する管理会計(CVP分析)上の損益計算書は次の通りです。

管理会計(CVP分析)上の損益計算書

限界利益は4億2000万円で、固定費の4億円を上回っているので2000万円の利益が出ています。

ここで、CVP分析により、翌期に3000万円の利益を出すために必要な売上高を考えてみましょう。変動費率は今期と同じ58%(5億8000万円/10億円)、固定費は今期より2000万円増えて、4億2000万円になる予定です。この場合、来期に必要な売上高は次のように計算することができます。

(固定費+必要利益)/(1-変動費率)
=(4億2000万円+3000万円)/(1-0.58)
≒10億7143万円

以上(2026年4月更新)
(監修 辻・本郷税理士法人 税理士 安積健)

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画像:photo-ac

周りに遠慮して休まない社員に上手に休暇を取らせる方法とは?

1 仕事をしながら休暇を取ってもいい!

適度に休み、心身のコンディションを整えて仕事のパフォーマンスを上げる。何の異論もないところですが、なぜか休まない社員がいます。どうやら、

  • 周囲が忙しそうなのに自分だけ休めない
  • 休むといっても引き継ぎをするのが面倒

などと考えているようなのです。こうした社員は、

この会社は、いざというときに周囲のサポートを当てにできない

と考えており、ちょっとした気持ちの変化で文句を言ったり、ライフイベント(結婚や出産、介護など)の発生によって転職を決意したりします。そうならないために、

  • 雰囲気づくり:休暇を歓迎し、上司も快く部下の休暇を承認する
  • 休暇制度の見直し:半日休暇などを検討する

を進めることをご提案します。なお、休暇取得を促進するのは、決して甘い組織をつくりたいわけではなく、メリハリのある働き方の実現するためです。

2 休暇を取りやすい雰囲気づくり

1)休暇は楽しい!

「休暇は楽しい!」という雰囲気をつくりましょう。「え、そんなことでいいの?」と思われるかもしれませんが、とにかく休暇を取得する社員には明るく接し、プライベートに深入りしない程度に「いいね! どこに行くの?」「何の映画を見るの?」など、休暇を歓迎します。

もちろん、経営者自身も休みを取りましょう。差し支えなければ、自分の休暇の過ごし方をみんなに話して、

仕事もプライベートも大切にする会社であることをアピール

します。

2)上司(管理職)を巻き込む

休暇を申請したら上司がいい顔をしなかった。あるいは、上司がいつも残業しているのに自分だけ休むのは気が引ける……。こんな職場では部下は畏縮して休暇を取得できません。

そこで、経営者は、上司に部下の休暇取得を促進するように指示します。人事考課の中に、

部下の年休(年次有給休暇)の取得率を対前年度比で◯%向上させる

ことを加えるのもよいでしょう。

また、部下が遠慮しないで済むよう、上司自身にも休暇を取らせましょう。例えば、マネジメントが苦手で1人で仕事を抱え込んでしまう上司には、「それは君がやる仕事ではない」と伝え、部下に振るよう指導します。そうすれば、休暇のための時間は案外簡単に捻出できるものです。

3 休暇制度の中身を見直す

1)半日単位・時間単位の休暇にしてみる

半日単位や時間単位の休暇は、比較的、取得しやすいです。仕事とプライベートの用事(子どもの送り迎えや家族の介護など)を交互にこなす社員は多いですし、旅行先でレジャーを楽しみながら合間に仕事をしたい社員にとってもうれしいものです。

年休については半日単位で付与できますし、過半数労働組合(ない場合は過半数代表者)と労使協定を締結すれば1時間単位でも付与できます。会社が独自に就業規則等で定める特別休暇についても、内容によっては半日単位・時間単位を検討してみましょう。

2)休暇取得日をあらかじめ指定する

休暇取得日をあらかじめ指定するのも一策です。年休の場合、

付与日数が年10日以上の社員(基本は正社員)については、そのうち5日まで会社が休暇取得日を指定して取得させる義務

があります。会社命令であれば、社員も周囲に遠慮せず休むことができます。

また、会社が年休取得日を計画的に割り振る「計画的付与」という制度もあります(労使協定の締結が必要)。社員が休暇を取得する日が事前に分かるので、同僚は協力してフォローすることができます。ただし、一度割り振った休暇取得日を後から変更することはできません。

休暇取得日を指定する場合は、ゴールデンウイークや夏季休暇、年末年始などに合わせて長期休暇を実現させるのもよいでしょう。例えば“年末年始が10連休以上”となれば、社員はそれを1つのゴールとして頑張ることができます。なかなか休暇が取得できない社員でも、夏季休暇や年末年始などであれば休みを取りやすいでしょう。

3)取得時季や目的が明確な特別休暇を利用する

休暇には、法令で定められている「法定休暇」と、会社が独自に設定する「特別休暇」があります。特別休暇は、取得時季や取得目的が明確な場合が多いことが特徴です。原則としていつでも取得できる年休よりも、特別休暇のほうが取得しやすいという社員も少なくないようです。

例えば、次のような特別休暇があります。

特別休暇の例

ちなみに、図表の赤字の休暇は、「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」という助成金と関わりがあります。

図表の赤字の休暇のいずれか(有給のものに限る)を導入し、就業規則等で前述した「年休の5日取得」の規定を整備するなど一定の取り組みをすると、最大1020万円

を受給できる可能性があります(なお、図表の赤字以外にも、助成金の対象となる特別休暇があります)。興味のある人は、厚生労働省のウェブサイトをご確認ください。なお、2026年度の助成金の申請期限は、2026年11月30日までです。

■厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」■

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000120692.html

以上(2026年4月更新)

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画像:pixabay

令和7年の交通事故の発生状況(2026/5号)【交通安全ニュース】

※ボタンを押すとSOMPOリスクマネジメント(株)のサイトへ移動します。

活用する機会の例

  • 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
  • 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
  • マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など

警察庁より「令和7年における交通事故の発生状況について」が公表されました。

今号では、近年の交通事故の発生状況とその対策をまとめました。

1 交通事故死者数・重傷者数の推移

令和7年の交通事故死者数は2,547人で、昨年から116人減少し、過去最少を記録しました。

うち、65歳以上の高齢者の死者数は1,423人で昨年より90人減少したものの、全体の55.9%を占めています。(図1)

図1.死者数の推移

交通事故死者数・重傷者数の推移

一方、重傷者数は27,563人で、昨年から278人増加しました。

命に別状はなくとも、身体に長期的な影響を及ぼす重大な事故は減っていないことが浮き彫りになっています。(図2)

図2.重傷者数の推移

重傷者数

出典:図1、図2とも、警察庁「令和7年における交通事故の発生状況について」から当社作成

政府が策定した「第11次交通安全基本計画」では、令和7年までに交通事故による死者数を2,000人以下、重傷者数を22,000人以下にするという目標を掲げていましたが、達成することはできませんでした。

2 主な交通事故におけるドライバーの対策

1.歩行者との事故

【特徴】

  • 歩行中の死者の約7割が高齢者(図3)
  • 高齢者の事故は、横断歩道ではない場所を渡っている時が半分近くを占める
  • 歩行中の事故の約6割は、横断違反などのルール 違反が原因

図3.年齢別歩行中死者数

歩行者との事故

【対策】

  • 歩行者が多い住宅街などでは、時速30km以下でゆっくり走行
  • 危険が予測される場面では、いつでもブレーキを踏めるように準備しておく(構えブレーキ)

2.携帯電話を使いながらの運転の事故

【特徴】

  • 罰則が厳しくなったにもかかわらず事故は近年増加傾向(図4)
  • 携帯電話を使っていると死亡事故を起こす確率が約3.4倍も高くなる(図5)

※例えば、時速60kmで2秒よそ見をすると、車は約33mも進んでしまう

図4.携帯電話等使用による死亡・重傷事故件数の推移

携帯電話を使いながらの運転の事故

図5.携帯電話等使用有無別死亡事故率の比較

携帯電話を使いながらの運転の事故

出典:図3~図5とも、警察庁「令和7年における交通事故の発生状況について」から当社作成

【対策】

  • 運転中は携帯電話の電源を切るか、ドライブモードに設定
  • 携帯電話を操作する必要がある場合は、安全な場所に車を停めてから利用

3 交通事故のない社会を目指して

統計数値だけを見ると、事故は減少傾向にあるように見えます。しかし、悲惨な事故は後を絶たず、尊い命や人々の生活が失われているという現実は依然として存在します。

政府は、「第12次交通安全基本計画」において、「令和12年までに交通事故による死者数を1,900人以下、重傷者数を20,000人以下にする」という目標を掲げています。

この目標を達成するためには、私たち一人ひとりが運転者としての高い安全意識を持ち、安全運転を心がけることが不可欠です。

以上(2026年5月)

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画像:amanaimages

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