目次
1 6月病の社員にご用心
6月病(5月病と近い意味で使われることもあります)とは、
4月に入社や異動をした社員が、環境の変化に適応できずにストレスを抱え過ぎて心身の不調を起こすこと
です。医学的な正式診断名ではありませんが、背景に適応障害などのメンタルヘルス不調が見られることがあります。6月病の主な症状は次の通りです。抑うつ気分や不安などの情緒面の変化が見られることが多く、行動面や身体面の不調が併せて現れることもあります。
- 情緒面:抑うつ、不安、焦り、緊張、イライラ、突然泣き出すなど
- 行動面:暴飲暴食、遅刻・欠勤の増加、集中力の低下、仕事上のミスの増加など
- 身体面:疲労感、不眠、頭痛、胃痛、動悸(どうき)、めまい、手の震えなど
ちなみに、適応障害とうつ病が混同されることがありますが、一般的に適応障害ではストレス因との関連が比較的明確で、環境調整により症状が和らぐことがあります。一方、うつ病との鑑別は必ずしも容易ではなく、症状の持続や重症度、経過を含めて医療機関での評価が重要です。
放置すると、症状が長引いたり悪化したりし、うつ病など他の精神疾患との鑑別や治療が必要になる場合もあります。最悪の場合、離職につながるリスクがあります。
そうならないためには「早期の発見、早期の対処」が肝心です。この記事では、産業医監修のもと、6月病対応のポイントを次の3つにまとめました。
- 6月病になりやすい社員を早期に発見する
- 不調が続くときは、産業医や医療機関への相談を勧める
- 医師の意見を参考に、休職や職場復帰について判断する
2 6月病になりやすい社員を早期に発見する
一般的に次のような性格の人は6月病になりやすいといわれます。
真面目、責任感が強い、心配性、完璧主義、頼まれると断れない、気が小さい、周りの意見を気にする、失敗や苦悩を引きずりやすい
特に若手の社員は、仕事上のストレスとまだうまく付き合うことができず、ささいなことでもストレスをためて6月病になってしまうことがあります。思い当たる社員がいる場合、試しに次の視点で観察してみると、何らかの変化が起きているかもしれません。
(図表)【6月病の社員に起こりがちな変化】
| 自信過剰になった | 覇気そうで元気がなくなった | 考え込むことや、独り言が増えた |
| 他人の言動を必要以上に気にするようになった | 親しくなかった人に対して、急になれなれしくなった | 自分と関係のないことに口を挟むことが増えた |
| 議論好きになった、けんかや口論をすることが増えた | 遅刻・早退・病欠が増えた | 服装や髪形がだらしなくなった |
| 酒癖が悪くなった | 仕事に積極性がなくなった、先延ばし癖がついた | ケアレスミスが増えた |
| 整理整頓や後始末が雑になった | 席を離れることが増えた | 与えられた権限を踏み越えて行動するようになった |
(出所:産業医へのヒアリングなどを基に作成)
該当項目が多い場合、上司のほうから、
「いつもと様子が違うようだけど、何かあった?」
などと声を掛け、話を聞いてみます。その際、上司が一方的にアドバイスをするだけでは、悩んでいる社員にそれを受け入れる余裕はありません。そのため、
「それは大変だね」「つらかったね」
など、社員の話に「共感を示す」ことがまずは大切です。「自分のことを分かってもらえる」という安心感があれば、社員は自分のことをもっと話してくれます。また、ストレスによって離職を考えていたとしても、こちらの対応によって離職を思いとどまるかもしれません。
社員が話しやすい環境を整えるポイントとしては、
- 対面:個室など他人の目のない場所で話す、飲み物を飲みながらなど、緊張しない空気づくりを意識する
- オンライン:個別のミーティングルームを設定する、「顔出し」を強要しない
などが考えられます。また、日ごろから「いつでも相談してほしい」など、次につながる声掛けをするのも大切です。
3 不調が続くときは、産業医や医療機関への相談を勧める
6月病の場合、受診のタイミングは
症状が表れてから1、2週間以上続いている状態が目安
といわれています。もっとも、希死念慮、自傷のおそれ、著しい不眠、急激な体重減少、業務遂行が難しい状態にある場合は、期間にかかわらず早めの相談・受診が必要です。まず「いつごろからつらいの?」と症状が表れた時期を確かめ、産業医への相談や医療機関(通常は心療内科や精神科)の受診を勧めることを検討します。
ただし、
- 「君はきっと病気だよ! 受診してきなさい」などと決めつけるのはNG
- 「最近遅刻やミスが多くて、どうも疲れているように見えるよ。だから一度体調を診てもらったほうがいいんじゃない?」など、理由を提示して受診を勧めることが大切
です。
受診を勧めても本人が迷っている場合は、改めて説明したうえで産業医面談を提案します。産業医がいない小規模事業場では、地域産業保健センターの無料相談を活用する方法もあります。家族への相談は本人の同意が原則です。相談する際は本人を責めず、家族の反感や本人への追い打ちにつながらないよう配慮が必要です。相談の際は、
「○○さんのご家庭での様子はどうですか? 会社としても心配しています」など、社員を気遣う伝え方
を心がけましょう。
4 医師の意見を参考に、休職や職場復帰について判断する
1)通院しながら働いてもらうか、休職させるか
いわゆる6月病の背景に適応障害などがあり、医師の診断を受けた場合、会社はその社員について就業継続の可否を検討します。その際は、会社の産業医や社員の主治医の意見を参考にしつつ、就業規則の休職規定と照らし合わせて決めます。
通院しながら働いてもらう場合、今の業務が治療に影響を与えないかを十分検討し、場合によっては軽度な業務などに転換します。
2)職場復帰させるか
復職や就業継続の可否は、主治医の診断書だけで決めるのではなく、本人の回復状況、業務内容、職場の受入体制、必要に応じた産業医の意見を踏まえて総合的に判断します。残業制限、業務量の調整、段階的な復職などの配慮が必要になることもあります。職場復帰後に再び症状が出るケースもあるので、職場復帰の時期や復帰後の配置などについては慎重に検討します。
職場復帰の手続きや条件、復帰後の配置などについては、あらかじめ休職規定に定めておきます。また、「長い休職の後でいきなり通常勤務に戻すのは不安……」ということであれば、
就業規則に試し出勤制度や段階的復職に関するルールを整備しておく
と、復職支援を進めやすくなります。あわせて、医療機関や支援機関が提供するリワークプログラムを活用する方法もあります。そうすれば、社員は徐々に体を慣らしながら復職することができます。
職場復帰の具体的な手順は、厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」が参考になります。職場復帰の可否を判断する基準の例は次の通りです。
- 労働者が十分な意欲を示している
- 通勤時間帯に1人で安全に通勤ができる
- 決まった勤務日、時間に就労が継続して可能である
- 業務に必要な作業ができる
- 作業による疲労が翌日までに十分回復する
- 適切な睡眠覚醒リズムが整っている、昼間に眠気がない
- 業務遂行に必要な注意力・集中力が回復している など
診断上は職場復帰が可能でも、社員が離職の意思を固めていることもあります。その場合、面談などを通じて丁寧に話し合い、後にトラブルが生じないようにします。
■厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055195_00005.html
5 6月病にならないためには?
6月病の予防には、本人のセルフケアと会社側の取り組みの両方が重要です。本人に対しては、趣味を楽しむ時間の確保や生活リズムの維持など、基本的なセルフケアを促します。会社としては、管理職教育、相談しやすい体制づくり、必要に応じた業務量や役割の見直し、早期面談の機会確保、職場環境の改善などを継続的に行うことが望まれます。
特に、真面目でミスを引きずる人が6月病になりやすいといわれますので、経営者が率先して
「失敗を許容する雰囲気」をつくることも大切です。甘やかすということではなく、失敗から学び、次にチャレンジする文化を育むという意味
です。
また、テレワークだとコミュニケーションが取りにくく、社員がストレスを抱え込みやすくなります。さじ加減が難しいところですが、個別チャットなどで上司がこまめに簡単な連絡を入れたり、定期的に社員と個別に面談する機会を設けたりして、通常よりも意識的にコミュニケーションを取るようにしましょう。
以上(2026年5月更新)
(監修 株式会社中央総合産業医事務所 代表産業医 細江隼)
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画像:PhotoSB23-Adobe Stock






















































