1 グミ市場急拡大のきっかけはコロナ禍?
ゼラチンや砂糖、水あめを使って果汁を固めた、弾力ある食感を楽しむお菓子の「グミ」。メーカー各社から、味や色、デザインなどの趣向を凝らしたグミが発売されています。コンビニやスーパーでも、グミの売り場が以前よりも広くなり、さまざまな種類のグミを見かける機会が増えたことを実感している人もいるのではないでしょうか。
実はグミの市場規模は、2020年頃までは500億~600億円ほどだったのですが、新型コロナウイルス感染症の流行中に、
ガムと違って食べた後にゴミが出ないため、衛生的かつ、環境にも配慮したお菓子
として注目され始め、2024年には1000億円を超えるまでに急拡大しています。

さらに、菓子メーカーのカンロ(東京都新宿区)では、グミ市場は2030年に1500億円規模に達すると試算しており、今後も市場規模が拡大していくことが見込まれています(カンロ「IR情報」2025年9月16日)。
市場規模の急拡大の背景には、グミならではの次の要素が寄与しているとされています。
- 家庭でも作れる手軽さもありながら、原材料の供給も市況や季節に左右されにくいため、商品開発をしやすい
- 色や形が独特で、SNS映えによるプロモーションがしやすい
- 業界団体が主導し、メーカーを横断したプロモーション活動が盛んとなっている
また、グミの市場拡大や魅力発信を目的に活動している日本グミ協会では、グミの動向や今後注目され得る要素を次のように見ています(2026年2月のヒアリングより)。
- グミは年間で400種類もの新商品が発売されています。
- 2026年2月は、バレンタインに向けてグミをチョコレートでコーティングした商品を発信するメーカーがありました。デパートでも、バレンタインの催事に合わせてグミの販売やルーレット、スタンプラリーを合わせたイベントを開催するところもありました。
- また、2月22日の「猫の日」に向けて、猫をモチーフにしたさまざまなグミを発売するメーカーもありました。
- 今後も「○○の日」など、1年のカレンダーや記念日での盛り上がりに合わせたグミが多く出るのではないかと見ています。
以降では、グミ市場の外部環境分析やトレンド、メーカー各社の商品事例などを通じて、市場規模拡大の背景をさらに深掘りしていきます。
2 グミ市場を取り巻く環境と企業の戦略
1)PEST分析
まずは、グミ市場を取り巻く環境について、ビジネスフレームワークのPEST分析を基に整理します。

1.政治(Political)
グミ製造に関連する法規制が挙げられます。果汁を含む商品は、「果実飲料等の表示に関する公正競争規約及び施行規則」によって、パッケージデザインに制限があります。例えば、
商品に含まれる果汁の含有割合が5%未満の場合は、リアルな果実の絵やイラストをパッケージデザインに使うことができない
といった規制があります。また、さらなる市場拡大に向けて、海外輸出を計画する企業もある一方で、国内のグミに使われている着色料が現地で認可されていないために輸出ができない、ブランドとしての認知が低いなどの課題もあるとされています。
2.経済(Economic)
メーカー各社が消費者のさらなる需要に応えるため、生産設備を増強し、グミの生産量拡大を目指す動きがあります。また、グミの主原料のゼラチンや砂糖などは他のお菓子の原材料と比べて安価な傾向にあり、チョコレートやスナック菓子に比べ、
原材料の市況や季節に左右されずに、商品開発・販売をしやすい
ことも特徴です。
3.社会(Social)
前述した通り、グミは新型コロナウイルス感染症の流行中に、
食べた後にゴミが出ないため、衛生的かつ、環境にも配慮したお菓子
として注目され、需要が拡大しました。果実の価格高騰や、食べる際に手間がかかるなどの理由で果実離れが進み、その代わりとしてグミを求める消費者もいます。色や形、デザインなどビジュアルが映えやすく、SNS上の商品紹介で消費者の注目を集めやすいのも人気の理由です。
4.技術(Technological)
メーカー各社が
栄養が豊富であったり、添加物を使わなかったりするグミを開発
することで、他社との差異化や、消費者の需要にあった商品の提案に取り組んでいるほか、健康への関心の高まりから噛む力の測定や舌を鍛えるという観点にも注目が集まっています。
2)5F分析
続いて、グミ市場の業界内での競争環境や新規参入のハードルについて、ビジネスフレームワークの5F分析を基に触れていきます。

グミ自体は一般家庭でも作ることができ、使う原材料の種類も少ないため、新規参入のハードルが低い分、業界内での競争が激しいといえます。そのため、食感や色味、形状など、商品を際立たせる特徴づけや、ターゲット層を絞るなどの差異化策は必要です。
また、SNSをきっかけにユニークな形や食感のグミが話題になるなど、SNSがグミ市場の成長を後押しする重要な要素になっています。SNSは、製品の認知度向上だけでなく、トレンド形成や購買意欲の喚起にも直結しています。
3 グミ市場における企業の戦略
グミ市場では、次のような戦略の展開例が挙げられます。

1)食感の多様化への対応
当初は子どもの噛む力を強くして、健康維持を図るためのお菓子として製造されたグミですが、今ではさまざまな噛み応えの商品が発売されており、噛み応えに応じた消費者の利用シーンや効果にも注目が集まっています。
例えば、1980年に日本で初めてグミを発売した明治(東京都中央区)では、「ORAL-MAPS/オーラルマップス®」という実験装置を活用し、グミを噛む力を6段階のレベルに分けて商品の「かみごたえチャート」を作成して「見える化」するといった、「噛む力」の可能性について研究を続けています。同社が2022年にグミの噛み応えと気分や感情の関係を研究した際には、
- 噛み応えが弱いグミは、リラックス感がある
- 噛み応えが中程度のグミは、やる気がでる
- 噛み応えが中程度~強いグミは、覚醒感を想起する
などの研究結果があったそうです。
また、噛み応えだけでなく、食感や見た目もさまざまなものがあります。例えば、カンロが手掛ける「グミッツェル」は、その独特な食感と噛むときの音からASMR(リラックス効果や心地よさを求めて聞く音声のこと)コンテンツとして注目を集め、咀嚼(そしゃく)音動画の公開や、直営店での咀嚼音体験ブース設置などのユニークなプロモーションがメディアに取り上げられました。
2)ご当地ものの商品展開
地元の特産品を原材料に使用したグミも、さまざまなものがあります。例えば、JA全農では、グループ会社の全国農協食品を販売者として、全国各地の特色ある国産果実を使用したご当地グミを「ニッポンエール」のブランドで展開しています。
使用する果実に、規格外品を使用したり、新しい品種や、普段は食べる機会が少なくなじみのない果実をグミとして商品化したりすることで、その果実の知名度向上をはかり、生鮮での販売強化にもつなげることを目的としています。
また、UHA味覚糖(大阪府大阪市)でも、「ご当地PREMIUM」のブランド名でグミやキャンディーを製造しています。全国各地の果物を使用し、パッケージは地域の学生から募集を行うなど、産学官の連携を取り入れた開発が特徴です。
他にも、企業や地元の生産者が提携して商品開発を手掛けるケースもあります。
小売店や飲食店舗の運営などを手掛ける近鉄リテーリング(大阪府大阪市)では、奈良県産いちごの古都華や大阪府産のシャインマスカットを原料に使用した「いろどりグミ」を販売しています。
近鉄沿線の生産者と連携して、近鉄リテーリングが商品企画をプロデュース、沿線地域の魅力を発信する「irodori kintetsu」事業の一環で開発された商品です。
山梨県の甲斐市商工会では、山梨学院大学の学生と共同で「桑のグミ」を開発しています。観光客にも商品の内容が伝わるよう、パッケージに韓国語や中国語も記載しているのが特徴で、山梨県内の道の駅や農産物の直売所などで販売されています。
3)アップサイクル
アップサイクル(リサイクルのように元の素材に戻すのではなく、付加価値を与えて別の製品として再生させること)によって作られるグミもあります。
例えば、カンロでは、ドライフルーツ製造を手掛ける南信州菓子工房(長野県下伊那郡)と共同開発したアップサイクルグミ「しずくの宝石グミ芳醇白桃味」を発売しています。原材料にドライフルーツを製造する過程で出たシロップを使用していることが特徴です。
また、直営店「ヒトツブカンロ」の店舗および「KanroPOCKET(カンロポケット)」オンラインショップでも、ドライフルーツの製造過程で生じるシロップを使用したアップサイクルグミ「CYCLECUBE(サイクルキューブ)」を販売しています。
4)栄養面や機能性の強化
グミの中には、健康管理や美容ケアに着目した商品もあります。健康管理では、UHA味覚糖が展開する「UHAグミサプリ」のシリーズがあります。例えば、野菜不足が気になる、骨や歯の健康が気になるなど、目的や悩みに合わせたグミを探すことができます。
また、美容ケアに着目した商品の例では、カネカ(東京都港区)が手掛ける『わたしのチカラ®「カネカQ10® 果実グミ」』があります。栄養分からのエネルギー生成を助け、抗酸化作用のある還元型コエンザイムQ10を含んでおり、肌のうるおいや一時的なストレス軽減の効果があるとされています。
他にも、機能性の強化の例として、メッシュ加工品製造を手掛けるtantore(タントレー・愛知県豊橋市)が販売しているシート状のグミ「tantore sheet(タントレシート)」があります。舌の筋力低下が原因で起こるとされている無呼吸症候群や誤嚥(ごえん)性肺炎などを予防するために開発された商品で、噛まずに舌先でなめながら溶かすことで、舌のトレーニングができます。
5)自己表現のツール
Z世代(1990年代半ばから2010年序盤生まれの年齢層の若者)の間では、グミが単なるお菓子ではなく自己表現やコミュニケーションの手段にもなっているといいます。また、そうしたZ世代の需要に応える商品開発も盛んです。
例えば、クリート(東京都渋谷区)では、自分の個性や性格などを16のタイプに分類して分析ができる「MBTI」をグミやラムネの形に落とし込んだお菓子の「MyBTIシリーズ」を発売しました。お菓子を購入し、SNSで発信したり、自己紹介で自身のタイプを伝えたりするときのツールとして活用されることが期待され、注目を集めました。
6)メーカーを横断したプロモーション
グミのプロモーション策は、メーカーを横断した取り組みも特徴的です。例えば、UHA味覚糖が2007年に日本記念日協会に登録した9月3日の「グミの日」があります。
「グミの日」や3月9日の「裏グミの日」を通して、日本グミ協会やGUMMIT(複数のグミ・キャンディー企業・ブランドが参加する共同プロモーション組織)がプロモーション活動を展開しています。
例えば、GUMMITは2024年にグミの日を記念して、「93タイプ診断」というウェブサイトをリリースしました。全12問の質問に答えると、ユーザーの性格を「93タイプ(グミタイプ)」に分類して、おすすめのグミの紹介や性格などの診断結果が表示されます。診断結果はX(旧twitter)でシェアすることができ、ユーザー間でのコミュニケーション活性化につながります。

日本グミ協会が監修した「メーカー横断!グミ食感マップ」では、GUMMITに参加しているメーカー各社のグミについて、食感(ハードorソフト)と誰にオススメできるか(王道 or 玄人)で分類しています。グミマップは、全国の小売店のグミコーナーに掲出することで消費者への周知を図りました。

7)OEM生産
自社で商品を製造する以外にも、グミを専門にOEMを手掛ける企業も存在し、プライベートブランドやサプリメントタイプのグミの製造を委託することで、新規参入が可能となります。
例えば、ゼリー・グミの専業メーカーとして、原材料の調達から成形加工、包装加工までの工程を一貫して手掛ける富士高フーヅ(東京都豊島区)は、顧客のニーズに合わせて、小ロットでの対応をはじめ、角型、半球型、ハート型、コーラ瓶型などのさまざまな形状のグミを製造しています。
また、「グミ研究所」の名前でグミのOEM・ODMでの製造を手掛ける日進乳業(愛知県北名古屋市)は、FSSC22000(食品安全システム認証のための国際規格)を取得して、品質管理を徹底した製造ラインでのグミ製造を行っています。フルオーダー、セミオーダー形式でのグミ製造に対応しており、セミオーダーの場合は6カ月の短納期での開発ができます。
以上(2026年2月作成)
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画像:Suresh Thangavel-Adobe Stock