【朝礼】月面着陸は、はたして誰の偉業か?

11月に入りました。皆さん、今年も間もなく終わりますが、1年を振り返ってみていかがですか。「十分な活躍ができた」「目標を達成できた」という人もいれば、あるいはその逆の人もいるでしょう。今日は、そんな皆さんに向けて、米国の宇宙開発の話をします。

今から50年前の1972年12月、「アポロ計画」最後の宇宙船である「アポロ17号」が、月から地球に帰還しました。アポロ計画は、米国が1961年から1972年までの11年間にわたって実施した、月への宇宙飛行計画です。また、有人宇宙船での月面着陸の初めての試みでした。最初に月に降り立ったのは、1969年7月の「アポロ11号」。米国はそこからさらに3年間で、アポロ12号から17号まで計6回の月面着陸を試み、うち5回を成功させています。

ところで、この月面着陸という偉業について考えるとき、皆さんは誰の顔を思い浮かべるでしょうか。まずは、月に降り立った宇宙飛行士、次いで、強いリーダーシップで計画を動かした当時の米国大統領でしょうか。ですが、忘れてほしくないのが、裏方である「技術者」の人たちです。

例えば、宇宙船に人を乗せて飛ばすには、宇宙飛行士の安全を守るための技術や、宇宙船を大気圏外に打ち出す角度など、とにかく緻密なコントロールが求められます。実際、アポロ計画初期の「アポロ1号」が、設計上の欠陥によって大事故を起こしたこともあります。

現代と比較すれば、まだ技術もおぼつかなかった50年前に、技術者たちがこうした事態が起きるたびに問題に向き合い、改善を重ねてきたからこそ、人類は月に降り立つことができたわけです。

この話を通じて、私は1年を振り返ってみた皆さんに伝えたいメッセージが2つあります。

まずは、この1年で「十分な活躍ができた」「目標を達成できた」という人は、本当によく頑張りました。自身の努力を大いに誇ってください。ただ、それと同時に、皆さんの成果が、はたして自分一人のものなのかということも考えてみてください。皆さんの成果が「月面着陸」だとすれば、皆さんをそこに到達できるように支えてくれた人がいませんでしたか。陰ながら見守ってくれた上司や、忙しいときに手伝ってくれた部下がいるはずです。もし、思い当たる人がいるなら、ぜひ、その人に感謝の気持ちを伝えてください。

次に、「あまり活躍できなかった」「目標を達成できなかった」という人は、なぜ思い通りにいかなかったのかの反省は必要ですが、決して気に病むことはありません。悔しいという気持ちがあるなら、それは皆さんが努力をしたということです。皆さんは、今年のスタート地点から見れば、間違いなく成長しています。いうなれば、アポロ計画の途中、宇宙船を月に着陸させるための研究を続けている段階です。腐らず、自分を磨くことを忘れないでください。皆さんが「月」に降り立つ日はすぐそこです。

以上(2022年11月)

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画像:Mariko Mitsuda

【規程・文例集】 「ポイント制退職金規程」のひな型

書いてあること

  • 主な読者:ポイント制退職金制度に対応した会社規程のひな型が欲しい経営者
  • 課題:通常の退職一時金規程とどう違うのか、具体的に何を定めればよいのかが分からない
  • 解決策:「支給額の計算方法」「ポイントの種類と単価」を明らかにし、さらに勤続年数や等級に応じてポイント数がどう変わるのかを別表などで示す

1 ポイント制退職金制度とは

ポイント制退職金制度とは、勤続年数や等級など、一定のルールに基づいて社員にポイントを付与し、そのポイント累計にポイント単価(1ポイント当たり1万円など)と退職金支給率(勤続5年で自己都合退職した場合は0.5など)を掛け、退職金の支給額を計算する制度です。

退職金の支給額 = 退職時のポイント累計 × ポイント単価 × 退職金支給率

ポイントには次のような種類があり、一般的に複数のポイントを組み合わせて運用します。

  • 勤続ポイント:勤続年数に応じて付与
  • 等級ポイント:職能資格等級などの格付けに応じて付与
  • 業績ポイント:会社の業績の良し悪しに応じて付与
  • 職務ポイント:個人の業務の難易度や責任に応じて付与
  • 個人ポイント:個人の人事考課結果などに応じて付与

ポイントの組み合わせ次第で、例えば「等級ポイントや個人ポイントの比率を上げて、能力重視の退職金制度にする」「職務ポイントの比率を上げて、職務重視(ジョブ型)の退職金制度にする」といった運用が可能です。ただ、ポイントの種類が多くなると管理が煩雑になりやすく、一般的には「勤続ポイント」と「等級ポイント」の2階建て方式がよく用いられます。

ポイント制退職金制度を社内規程に落とし込む場合、制度の内容が社員に正しく伝わるよう、

「支給額の計算方法」「ポイントの種類と単価」を明らかにし、さらに勤続年数や等級に応じてポイント数がどう変わるのかを別表などで示す

ことが大切です。次章で、専門家の監修付きひな型を紹介するので、確認してみましょう。

2 ポイント制退職金規程のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の会社によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【ポイント制退職金規程のひな型】

第1条(目的)
本規程は、就業規則第○条の退職金について定めたものである。会社は、本規程に基づき、永年勤続および中途にて退職した従業員の退職後の生活の安定および遺族の支援を図るために退職一時金制度を設ける。本規程に定めのない事項は、本制度の実施について定める関係法令によるものとする。

第2条(差別的取り扱いの禁止)
会社は退職一時金制度を実施するに当たり、特定の者について不当に差別的な取り扱いをしない。

第3条(支給範囲)
本規程に定める退職金は、従業員が退職(死去による退職を含む)または役員に就任した場合に支給する。ただし、兼務役員の場合を除く。

第4条(適用)
本規程は、次の各号に定める者を除く全ての従業員に適用する。ただし、個別の契約書などにより、会社と従業員との間に別段の合意がある場合については、この限りでない。

  • 役員。
  • 嘱託。
  • 短時間勤務従業員。
  • 臨時に期間を定めて雇い入れられる者(臨時雇い)。
  • 日々雇い入れられる者。
  • 入社後、定年までの予定勤続年数が3年未満の者。

第5条(支給額の計算方法)
1)退職金の支給額は、次の算式により計算する。
  (勤続ポイントの累計+等級ポイントの累計)×ポイント単価
2)退職金の支給額において、1000円未満の端数が生じたときはこれを切り上げる。

第6条(ポイントの種類と単価)
1)勤続ポイントは、勤続1年ごとに付与されるポイントである。入社からの勤続年数に応じたポイント数は別表第1「ポイント表」に定める通りとする。
2)等級ポイントは、各職能資格等級への在級1年ごとに付与されるポイントである。職能資格等級に応じたポイント数は別表1「ポイント表」の通りである。
3)勤続ポイントおよび等級ポイントの1ポイント当たりの単価は1万円とする。

第7条(勤続年数などの計算方法)
退職時における勤続年数および職能資格等級への在級期間は、次の各号に定める通りとする。

  • 勤続年数は、入社日から退職日までとする。
  • 勤続年数および在級期間に1年未満の端数が生じた場合は月割で計算し、1カ月未満の端数は15日以上を1カ月とする。
  • 休職期間(業務上の事由による傷病での休職期間を除く)は、勤続年数および在級期間に算入しない。

第8条(加算金)
在職中に特に功労のあった者または勤務成績が優秀であった者には、加算金を支給する。加算金の支給の有無およびその額は取締役会で決定するものとする。

第9条(自己都合退職時の減額)
自己都合退職に該当する者の退職金は、別表2「自己都合の退職金支給率」を乗じた支給率により算定する。

第10条(支給制限)
就業規則第○条に定める懲戒解雇をされた従業員には、原則として退職金を支給しない。ただし、情状により一部を支給することがある。

第11条(死亡時の取り扱い)
1)死亡した従業員の退職金は、次の各号に定める順位に従い、その遺族に支給する。第2号から第5号については、従業員の死亡当時、死亡した従業員の収入によって生計を維持していた、あるいは生計を一にしていた者に限る。

  • 死亡した従業員の配偶者(婚姻の届け出をしなくとも事実上婚姻と同様の関係にある者を含む)。
  • 死亡した従業員の子。
  • 死亡した従業員の父母(実父母より養父母を優先する)。
  • 死亡した従業員の孫。
  • 死亡した従業員の祖父母。

2)同順位の者が2名以上となる場合には、そのうち最年長者を代表者としてその者に給付する。

第12条(支給時期)
退職金は、原則として退職日より3カ月後に支給する。ただし、不正行為等に対する調査中の場合については、当該支給を一旦保留とすることがある。

第13条(支給方法)
退職金は原則として一括払いとし、退職金の支給を受ける者があらかじめ指定した金融機関に振り込む。

第14条(譲渡などの禁止)
退職金を受ける権利は、これを譲渡し、または質権、担保に供したりしてはならない。

第15条(債務等への相殺)
従業員が会社に対して債務等を有する場合については、本人の同意を得ることにより、退職金をもって当該債務等の返済に充てることができるものとする。

第16条(書類の提出等)
退職一時金の給付を受けようとする者は、会社が指定する書類を指定の期日までに提出しなければならない。

第17条(罰則)
従業員等が故意または重大な過失により、本規程に違反した場合、就業規則に照らして処分を決定する。

第18条(取消および返還)
退職後、在職中の勤務に関し、懲戒解雇に相当する事由が明らかになった場合には、会社は退職金の支給を取消し、支給済の退職金を返還させることができる。

第19条(改廃)
本規程の改廃は、取締役会において行うものとする。

附則
本規程は、○年○月○日より実施する。

■別表1「ポイント表」■

別表第1「ポイント表」

■別表2「自己都合の退職金支給率」■

別表第2「自己都合の退職金支給率」

以上(2022年11月)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)

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画像:ESB Professional-shutterstock

【朝礼】正しい言葉遣い

先日、インターネットでグラスを購入したのですが、私の注文したものと異なる商品が手元に届きました。そこで、販売会社に商品交換の連絡をしました。先方の電話口に出た人は若い男性だったのですが、その人の言葉遣いが気になりました。例えば、用件の確認をする際に「商品の交換ということでよろしかったでしょうか?」など、いわゆるファミレス用語を使っていたのです。彼なりに「失礼の無いように」と一生懸命に話しているのは伝わるのですが、やはり間違った言葉遣いは「いただけないなぁ」と感じました。私は間違った言葉遣いをしている本人だけではなく、その販売会社に対してもあまりよい印象が持てなくなりました。

逆に印象のよい言葉遣いに出合った経験もあります。私が新人だったころ、取引先の会社に訪問したときのことです。取引先の担当者は、私より随分年上にもかかわらず、私に丁寧な言葉遣いで接してくれました。

私はその対応に、自分が一人前のビジネスパーソンとして扱ってもらっていると感じ、「きちんとした仕事をしなければ」と思いました。同時に、先方の担当者に対しても、「この人であれば仕事を任せても安心だ」と信頼を寄せるようになりました。

言葉遣いについて、なぜ私がこれほどうるさくいうのかといえば、正しい言葉遣いはビジネスパーソンとして、身に付けておくべきスキルだからです。

正しい言葉遣いで話すことは相手への敬意を目に見える形にするという意味を持っています。間違った言葉遣いでは、いくら相手に敬意を持って接していても、その気持ちが十分に伝わりません。人によっては、間違った言葉遣いをとても失礼な対応だと感じる人がいるでしょう。

また、正しい言葉遣いには説得力があります。大切な業務でミスをしてしまい、謝罪する場面を考えてみてください。間違った言葉遣いで謝罪をするのに比べて、正しい言葉遣いで謝罪をするほうが説得力は増すのではないでしょうか。

このように、言葉遣いはビジネスのあらゆるシーンで必要とされるスキルですから、ぜひとも身に付けておくべきなのです。

ついつい使ってしまう間違った言葉や言い回しは、誰にでもあると思います。そして、そういった癖は、自分自身では意識することが難しいものです。もし、間違った言葉遣いをしている人がいれば、周囲の人たちがそれを注意してあげてください。皆で気を付け、間違った言葉遣いを無くしていきましょう。

以上(2022年11月)

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画像:Mariko Mitsuda

干支のエトセトラ(卯編)

書いてあること

  • 主な読者:卯年にちなんだ話題や、スピーチ例などを探しているビジネスパーソン
  • 課題:卯年に関連する話題を調べたり、スピーチを考えたりする時間がない
  • 解決策:過去の卯年に起きた出来事、卯年にちなんだスピーチ例を参考にする

1 卯(う・うさぎ)に関する話

1)卯年に起きた出来事

2023年の干支(えと)は「卯(う・うさぎ)」です。前回の卯年は、2011年(平成23年)の辛卯(かのとう)でした。この年は、3月11日に東日本大震災が発生し、日本中が大きな混乱と悲しみに包まれる中、FIFA女子ワールドカップで、なでしこジャパンが初優勝をし、私たちを勇気づけてくれました。世界中から、被災地・日本への祈りが寄せられ、大切な人との絆を確かめ合い、忘れられない年だったという人も多いのではないでしょうか。

過去5回の卯年に起きた主な出来事や流行語は次の通りです。

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2)卯年生まれの有名人

卯年生まれの日本の有名人には、次のような人がいます(既に亡くなられた方も含みます)。

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3)うさぎの話

卯年の「卯」という字は、ものを両側に押し開けたさまを表すとされています。これは閉じたものや障害を押しのける意を含んでおり、芽生えなどの意味もあるようです。

「卯」という字を用いたもので、よく知られているのが「卯建(うだつ)」です。「卯立」と書くこともあるようです。これは、古民家などにある、屋根の両端から立ち上がった小屋根付きの袖壁のことを指し、防火の役割を果たしていました。また、雨除けとして、あるいは装飾として、その家の権威や格式を象徴するものでもありました。かつては、卯建の高さで、身分を表すこともあったそうです。「うだつの上がらない人」という言葉は、「卯建を高くすることができない人」。そこから派生して、「出世の望めない情けない人」という意味で用いられるようになったのです。

さて、卯は、干支ではうさぎを指します(第3章「干支の起源・豆知識」に詳述しています)。うさぎは坂などを走るのが速いところから、何事も速やかに良いほうに進むシンボルとされることがあります。また、山岳などで野生のうさぎを見かけることができる他、幼稚園や保育園、小学校でも飼育され、子どもたちに親しまれている身近な動物の1つです。

うさぎというと、夜空の月で「きね」をついている姿を思い浮かべる人も少なくないでしょう。この月とうさぎの組み合わせの話は、中国は唐代の僧、玄奘(げんじょう)のインド旅行記である「大唐西域記」に見ることができます。その概要は以下の通りです。

あるとき、「うさぎ」と「きつね」と「さる」の3匹が仲良く暮らしていました。3匹は、前世の行いが悪く、現世では動物の姿にされてしまっていました。そこで、人のためになる善行をしようと話し合っていました。それを天上から見ていた帝釈天(仏教を守護するという天上界の王)が、みすぼらしい老人に変身し、3匹の前に現れました。老人を助けようと、さるは木に登って果物や木の実を採取し、きつねは川魚を捕獲してきました。しかし、うさぎにはこれといった特技がありませんでした。

老人へ何もできないうさぎは悩み続けた結果、「自らの肉を食べてほしい」と言い残し、自ら火をおこし、そこに飛び込んで焼け死んでしまいます。老人は帝釈天の姿に戻って火を鎮め、うさぎを哀れんで、その亡きがらを、月の中に納めたのでした。これが、うさぎが月の象徴となったと由縁といわれています。

この言い伝えが日本にも伝わり、特に江戸時代には、月にうさぎの模様がよく用いられました。そのため、さまざまな工芸品にうさぎの姿が残されているのでしょう。

2 卯(う・うさぎ)にちなんだスピーチ事例

1)スピーチ事例1

古事記に記されている「因幡の白兎(いなばのしろうさぎ)」は皆さんもよくご存じではないでしょうか。粗筋をお話ししますと、隠岐(おき)の島にすんでいたうさぎが、本土に渡ろうと考え、ワニ(サメのことといわれています)をだまして1列に並ばせ、その上を渡って岸へたどり着きました。しかし、最後にワニをだましたことを明かしたところ、怒ったワニから皮をむかれてしまいました。

痛みにむせび泣くうさぎの近くを通ったのは、因幡の国に八上比売(やかみひめ)という美しい姫がいると噂に聞いて、求婚しようと向かっていた、兄弟の神々である八十神(やそかみ)らでした。彼らは、あろうことか、うさぎに嘘の治療法を教えました。それを信じたうさぎの傷は、もっとひどくなってしまいました。

その後に通りかかったのは「だいこくさま」として知られる、大国主神(おおくにぬしのかみ)。八十神ら兄弟からは疎まれ、いつも意地悪をされており、そのときも重い荷物を背負わされていたため、1人遅れていたのでした。彼はうさぎに正しい傷の手当てを教え、おかげですぐに治りました。そして、うさぎは「きっと八上比売は、あなたを選ぶでしょう」と告げました。

そして、皆が因幡の国にたどり着くと、うさぎの言った通り、八上比売が選んだのは、ほかでもない、心優しい大国主神でした。

さて、この話から考えたいのは、1つは、私利私欲のために他人をだませば、必ず報いを受けるという、いわゆる因果応報です。また、そのように人を陥れることで、のし上がろうとすれば、そんな自分をさらに欺き、足を引っ張ろうとする者がいるのだ、という啓示を与えてくれます。一方、窮地に陥っている自分を助けてくれる人もいますよね。善い行いをすれば、その人から直接ではなくとも、必ず良いことが返ってきます。

では、皆さんは、もし困っている人を目の前にしたとき、どのように動きますか? 迷わず手を差し伸べることができるでしょうか?

これは仕事をしていく上でも大切なことです。とっさのときにこそ、その人の真の人間性が表れます。それを築くのは、その人がどのように生きてきたか、日々の積み重ねに他なりません。仕事でも、足をすくわれるようなことがあるかもしれません。ピンチのときには、お互いにフォローし合い、皆で手を取り合って乗り越えていけるようになってほしいと願います。

2)スピーチ事例2

皆さんは、絵本作家のディック・ブルーナをご存じでしょうか。世界中で愛されているうさぎのミッフィー(正式名称「ナインチェ・プラウス」。日本語翻訳版では「うさこちゃん」)の生みの親です。お子さんやお孫さんに絵本を読み聞かせてあげた人もいるでしょうし、幼い頃に親しんだ記憶のある人もいるのではないでしょうか。

オランダに生まれたディック・ブルーナは、出版社を経営する父の下、本の装丁デザイナーとしてキャリアをスタートしました。その後、絵本作家の道へ進んでいきますが、鮮やかな色彩感覚や、はっきりとした線に、パブロ・ピカソやアンリ・マティスから受けた影響が見て取れます。以前、美術館で、デザイナー時代に手掛けたものから絵本に至るまで、ディック・ブルーナの生涯描いてきた作品の展示を見ましたが、作風の変遷は、とても興味深いものでした。

さて、ミッフィー、ディック・ブルーナと聞いて、皆さんが思い浮かべるのは、どのような絵でしょうか? とことんシンプルで分かりやすい図柄ではないでしょうか。

ディック・ブルーナは「僕の作るものはシンプルでいて、見る人にイマジネーションを働かせるものでなくてはならない」という言葉を残しています。シンプルに、極限まで削って、引き算で表現した作家だったのではないでしょうか。

仕事でも同じことがいえます。足し算で、部下へ全て指示をして動いてもらえば、確かに、自分の思った通りのことをしてくれるかもしれません。

しかし、その部下の成長という点ではどうでしょうか。全てを指示してしまうのではなく、引き算で、あえて相手に、自分で考えてもらう余白を残す。そうすることで自主性や成長を促すことが大切なのではないでしょうか。そのような接し方を、皆さんにも意識してもらいたいと考えています。

3 干支の起源・豆知識

1)干支の起源

一般的に、巳(み)年や申(さる)年など、動物の名前を当てはめたものが干支であると認識されています。

しかし、よく考えてみると「干支とは何か?」について、はっきりと答えられる人は意外と少ないものです。

干支(えと=かんし)は、古代中国に起源を持ち、年月日や時刻、方位などを表す呼称とされる言葉です。

干支の「干(え)」は10種類あり、十干(じっかん)といいます。

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これに陰陽五行思想を結び付けて、それぞれ陽を意味する兄(え)、陰を意味する弟(と)を当てて、次のようにも読みます。

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一方、干支の「支(と)」は古代中国の天文学で、木星の位置を示すために天を十二分した呼称を起源にしており、十二支といいます。

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さらに、十二支を動物に当てはめて、次のように呼ばれるようになったのです。

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中国では、古く殷(いん)の時代(紀元前16世紀~紀元前11世紀ごろ)から、この十干十二支の組み合わせで年月日が数えられたといいます。これが干支の起源です。

2)干支と十二支

現在の日本では、干支は十二支を指すように使われていますが、厳密には干支と十二支とは異なります。本来の干支(十干十二支)の組み合わせは全部で60通りあり、日本で使われている12通りの十二支とは違うのです。干支は年月日や時刻に当てられますが、日本では一般的に年に当てられて使われています。満60歳を還暦(かんれき、もしくは生まれ年の干支を「本卦(ほんけ)」と呼ぶことから本卦還(がえ)りともいう)というのは、干支が1周して生まれ年の干支に還(かえ)るところからきています。

また、「丙午(ひのえうま)」という言葉を耳にしたことがある人も多いはずです。この呼び方も干支からきています。

ちなみに、2023年の干支は癸卯(みずのとう)、2024年の干支は甲辰(きのえたつ)です。自分の生まれ年の干支が何かを、下表で確認してみましょう。

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3)干支が表す歴史年代

古くから、干支は年月日などの時間を表す呼称として使われてきました。具体的な年がすぐ分かる干支は、歴史上の事件の呼称としても多く用いられています。

有名な例としては以下のようなものがあります。

  • 672年  みずのえさる 壬申(じんしん)の乱
  • 1592年 みずのえたつ 壬辰(じんしん)倭乱(わらん) ※日本でいう文禄の役
  • 1868年 つちのえたつ 戊辰(ぼしん)戦争
  • 1911年 かのとい   辛亥(しんがい)革命

ちなみに、阪神甲子園球場は、「甲子(きのえね)」年の1924年に完成したことから名付けられています。

以上(2022年11月)

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画像:metamorworks-Adobe Stock

【朝礼】マネジメントに必要な“調整力”

私が主任として制作現場のマネジメントを任されて、半年余りがたちました。そこで、この半年余りを振り返って、自分がやってしまった失敗と、失敗から得た私なりの改善点をお話しします。皆さんも参考にしてください。

まず学んだのは、相手の立場を理解して、尊重することの大切さです。主任だから何でも指示を出せば従ってもらえるわけではなく、相手の立場を踏まえてお願いすべきだと感じました。

具体的には、部長から、1週間以内にサンプルを3パターン提出するように言われたときのことです。取引先からどうしても急いでほしいと頼まれたとのことでしたので、私は現場の人に、最優先でサンプルを作ってもらうようにお願いをしました。ところが、現場では作業が立て込んでいて、「1週間でサンプルを3パターン作るのは難しい」との苦情が出たのです。

私は、現場の人の気持ちを考えず、取引先からの特別な依頼だということを金科玉条(きんかぎょくじょう)にして、一方的に仕事を押し付けようとしていた自分を、とても恥ずかしく思いました。現場でサンプル作りをしていた頃の私でしたら、部長に言われた時点で、この業務が難しいことを伝え、もう少し時間的な猶予をいただけないか相談していたはずです。

次に学んだのは、マネジメントの仕事は、ただ単に上司と現場の声を伝えるだけでなく、自分で考えて調整を行うことが重要だということです。

先ほどの話の続きですが、現場の人の声を踏まえて、部長に納期を1週間遅らせてもらうようにお願いをしたのですが、部長から、「なぜ1週間も必要なのか」を聞かれたときに、私は明確な根拠を示すことができませんでした。ただ「1週間はほしい」という現場の声を伝えていただけだったのです。

その後、課長のアドバイスもあって、改めて現場の作業日程を確認したところ、自分が関わっていない別の業務の納期に若干の余裕があることが分かりました。また、営業担当の同僚に相談したところ、他の取引先の案件の納期を少し遅らせてもらえることになりました。このため、結果的に3パターンのサンプルは、2日の遅れだけで納品することができました。

今お話しした一件から、私は、マネジメントに必要なことは“調整力”なのだと肝に銘じました。調整するためには、常に全体を見ておき、たとえ自分が関わっていない業務であっても、現場の全ての工程と、社内での優先事項という両方の状況を把握しておくことが大事なのだと感じました。そして、ただ状況を把握するだけでなく、その状況にいる人たちが、どんな思いを持っているのかも理解する必要があるのだと思いました。

これらを全て一気にできるようになるのは難しいですが、一歩一歩、前に進んでいきたいと思いますので、これからもご指導、ご鞭撻(べんたつ)のほど、よろしくお願い致します。

以上(2022年11月)

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画像:Mariko Mitsuda

従業員・元従業員からの情報漏洩を防ぐにはどうしたらよいのか?

書いてあること

  • 主な読者:従業員・元従業員からの情報漏洩を防止したい経営者
  • 課題:リモートワークで情報漏洩のリスクが高まっている
  • 解決策:情報漏洩のルートは、「第三者からの攻撃」「従業員・元従業員のミス」「従業員・元従業員の故意」の3つであり、それぞれ対策を講じる

1 情報漏洩のルートは3つ

企業は取り扱う情報の重要度に応じて防御の要否やその対策を検討・実行していますが、情報漏洩が後を絶ちません。情報漏洩のルートは、

  • 第三者からの攻撃による漏洩
  • 従業員・元従業員のミスによる漏洩
  • 従業員・元従業員の故意による漏洩

の3つとされるので、それぞれ対策を進めましょう。例えば、

従業員の情報の取り扱いにミスがあっても、第三者からの攻撃を防止する対策を講じていたので難を逃れた

といったこともあります。

2 第三者からの攻撃による漏洩を防止

第三者からの攻撃は、過去の脆弱性を悪用したものが多いです。そのため、OSやソフトを最新の状態にすることで多くを防止できるとされています。ここでは、IPA(情報処理推進機構セキュリティセンター)が中小企業向けに公表している「情報セキュリティ5か条」を基に対策を紹介します。

1)OSやソフトは常に最新の状態にする

Windows UpdateなどOSのアップデートや、ソフトの修正プログラムを適用するなどして、常に最新の状態にしておきます。古いまま放置していると、セキュリティー上の問題が改善されずに、それを悪用したウイルスに感染するリスクがあります。

2)ウイルス対策ソフトを導入する

各PCなどにウイルス対策ソフトを導入・設定していることを確認します。また、次々と新しいウイルスが出現しているため、ウイルスの定義ファイルが自動更新されるように設定しておく、統合型のセキュリティー対策ソフト(ファイアウオールや脆弱性対策など統合的な機能を搭載したソフト)の導入などを検討するとよいでしょう。

3)パスワードを強化する

名前や電話番号などの推測しやすいものは使用しないということに加えて、英数字記号を含めて10文字以上にします。また、ウェブサービスからID・パスワードが流出して悪用されることもあるため、同じパスワードを複数のウェブサービスで利用しないようにします。

4)共有設定を見直す

ファイル共有サービスやグループウエアなどの情報共有ツールの設定を誤り、共有すべきではない人にも、情報が共有されることがあります。特に社外共有時は慎重に設定することに加えて、ファイル開封時にパスワードを設定するなど、共有時のルールを決めておきます。また、従業員の異動時・退職時には、アクセス権限を無効にする作業も忘れずに行いましょう。

5)脅威や攻撃の手口を知る

日々、悪意ある第三者が情報を盗むために、さまざまな攻撃・手口を生み出しているので、最新の情報を知り、対策を実施します。IPAやセキュリティーソフトを手掛けるメーカーなどが新しいウイルスや攻撃の手口、その対策などの情報発信をしているので、参考にします。

3 従業員・元従業員のミスによる漏洩を防止

1)情報管理の6つの視点

従業員・元従業員のミスによる情報漏洩は多いものです。ミスの中には、誤操作、紛失・置き忘れ、盗難、管理ミス、設定ミスなどがあります。ミスを防止するためには、次の視点から情報を管理します(IPA「情報漏えい対策のしおり(第7版)から一部抜粋」)。

  • 情報を許可なく、持ち出さない
  • 情報を未対策のまま目の届かない所に放置しない
  • 情報を未対策のまま廃棄しない
  • 私物の機器類やソフトなどのデータを、許可なく持ち込まない
  • 個人に割り当てられた権限を許可なく他の人に貸与または譲渡しない
  • 業務上知り得た情報を、許可なく公言しない

上記はどれも重要な対策であり、「情報を持ち出す際は許可を取る」「誤操作がないように2人1組で作業をする」などの社内ルールを策定している企業も多いと思います。とはいえ、ルールが形骸化している、従業員が十分にルールを認識していないこともあります。上記6つや、それに関連する社内ルールを、いま一度、組織に周知徹底しましょう。

2)リモートワーク下での対策

リモートワークをしている企業は、前述の「1.情報を許可なく、持ち出さない」「4.私物の機器類やソフトなどのデータを、許可なく持ち込まない」「5.個人に割り当てられた権限を許可なく他の人に貸与または譲渡しない」の視点に立った管理が重要です。

リモートワークでは、ある程度情報にアクセスできなければ仕事になりません。そのため、従来よりも多くの従業員に情報を持ち出す許可や、アクセスする権限を与えているかもしれませんが、社外に漏洩しては困る情報の持ち出しは禁止するなどしましょう。

情報へのアクセスについては、まずファイル共有時の設定に注意しましょう。加えて、特に機微な情報を扱う場合は、VPN(仮想専用線)接続によるアクセスなどを検討します。VPN接続とは、インターネット上に仮想的な専用線を設けて、セキュリティー上の安全な経路を使ってデータをやり取りするものです。端末の電子証明書などの認証方式を採用しているセキュリティーの高い製品を選ぶようにしましょう。

4 従業員・元従業員(内部)の故意による漏洩を防止

従業員・元従業員の故意による漏洩はミスによる漏洩などに比べて少数です。しかし、漏洩するのは顧客情報などで、そうなったときのダメージは大きなものです。

ここまでで紹介した、「従業員の異動時・退職時には、アクセス権限を無効にする」など、情報へのアクセスを制限する対策の他に、秘密保持・競業避止義務を課すことを検討します。これにより、従業員・元従業員に対する抑止力が働き、漏洩が起こった場合は当該従業員・元従業員の責任を追及できる可能性があります。

1)従業員・元従業員の秘密保持義務

労働契約の存続期間中、従業員(パートなどを含む)は秘密保持義務を負うと考えられています。秘密保持義務とは、

企業の業務上の情報を第三者に開示・漏洩しない義務

です。就業規則などで明確に定めていなくても、労働契約の付随的義務として信義則上負うものと考えられています。

一方、労働契約の終了後は、原則として契約中に知り得た情報について、当然に労働契約の存続期間中と同様の秘密保持義務を負うとまでは考えられていません。そのため、別途秘密保持契約を締結するなどの手立てを講じる必要があります。

2)秘密保持・競業避止義務の範囲

従業員・元従業員が秘密保持義務を負う場合でも、その範囲は無制限ではありません。職業選択の自由や営業の自由を制約することはできないため、度が過ぎると公序良俗に反するものとして、無効になる場合があります。

例えば、従業員に対して「秘密情報を利用して、在職中、退職後に競合他社に就職するなどの競業行為を行ってはならない」とする競業避止義務を課す場合がありますが、このような規定の有効性については個別具体的な状況によって判断されます。

裁判では次の4つが総合的に考慮され、有効性が判断されるといわれています。ただし、個別の事案によって異なるため、この例と類似するからといって、必ずしも有効性が認められるわけではありません。

競業避止義務の有効性が認められた例

その他、就業規則に退職後の競業避止義務を明確に規定しておくことは、有効性の判断にとって有用です。

3)秘密情報・秘密保持義務などの定義

秘密情報の定義やその管理方法は法的に定められていません。従業員・元従業員に秘密保持義務や競業避止義務を課すためには、従業員・元従業員に秘密情報の対象を明示し、秘密情報として管理されていることが認識できる状態にしていたか否かなどが問われます。

そのため、例えば、従業員・元従業員に秘密情報の対象を示さず、全従業員が容易に秘密情報にアクセスできるような管理状態では、秘密情報だと主張して、従業員・元従業員に秘密保持義務を課すには不十分だということです。

以上から、就業規則や秘密保持に関する誓約書などにおいて、秘密情報の対象と取り扱い範囲を規定することが必要といえるでしょう。これらに違反した場合の処分規定を設けておけば、従業員・元従業員が秘密情報を不当に持ち出すことの抑止力にもなります。

秘密情報の範囲は不明瞭になりがちなので、できるだけ具体的に秘密情報を規定し、新しい情報をその都度、追加していくとよいでしょう。

なお、経済産業省のウェブサイトでは、秘密情報の管理方法や秘密保持契約(誓約書)のひな型などが公開されているため、参考にするとよいでしょう。

■経済産業省「営業秘密~営業秘密を守り活用する~」■
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/trade-secret.html

4)従業員以外にも及ぶ営業秘密の効力

特に重要な秘密情報については、「営業秘密」として管理することが肝要です。従業員・元従業員が秘密保持義務に違反し、第三者に秘密情報を漏洩させても、企業は当該第三者と契約関係がないため、第三者に対して債務不履行責任を問うことは基本的にできません。しかし、不正競争防止法上の「営業秘密」と認定されれば、その侵害については罰則が設けられているため、刑事・民事の両面で、当該第三者に対する法的措置が取りやすくなります。

また、情報を持ち出された企業が損害賠償を請求する場合、企業が損害の発生や損害額を立証する必要がありますが、営業秘密と認定されることで、不正競争防止法上の損害額の推定規定が適用されます。

営業秘密とは、不正競争防止法の保護・規制を受ける、次のような情報です。

秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの

営業秘密として認定されるためには、

  • 秘密管理性(秘密として管理されていること)
  • 有用性(有用な営業上または技術上の情報であること)
  • 非公知性(公然と知られていないこと)

の3要件を満たす必要があります。この3要件を意識し、情報に接することができる従業員等にとって、秘密だと分かる程度の措置(例えば、紙や電子記録媒体へ「マル秘」「持ち出し禁止」の表示をする、秘密保持契約等によって秘密情報の対象を特定するなど)を講じるとよいでしょう。

以上(2022年11月)
(監修 みらい総合法律事務所 弁護士 田畠宏一)

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画像:pixabay

【朝礼】壁を乗り越えろ

一心不乱に一つのことに取り組んでいたら、いつのまにか難しい課題もクリアできていたという経験をしたことはありませんか?今日は、がむしゃらに取り組むことの大切さを改めて皆さんに考えてほしいと思います。

例えば、スポーツが上達する上で、継続した練習が欠かせないのはご存じの通りです。かつての練習は根性論が主流でしたが、最近では科学を取り入れた理論的な裏づけに基づく練習が盛んです。運動生理学に基づく練習プログラムを計画通りにこなし、かつ、実践を数多く経験することで、スポーツの技量は向上します。

皆さんの場合であれば、ビジネス理論を学び、ノウハウやスキルを身に付けて、さまざまな実務経験を積むことで、順調に成果を上げるというものです。スポーツ選手もビジネスパーソンもこうなれば、まさに理想的な成長プロセスを歩んでいると言えるでしょう。

しかし、現実はそうではありません。何をやってもうまくいかない、つまり、結果がともなわないときがやってきます。結果がともなわないと、これまでの取り組み方法が間違っていたのではないかと、不安になります。こうした状態が続くと、自信をなくし、やる気さえ失いかけます。これが、壁とかスランプとか言われるものかもしれません。この壁やスランプは誰にでも起こるものです。私にもそうした時期は何度もありました。

人は壁やスランプの状態に陥ると、「私にはできない。この取り組みで結果を出すのは私の能力を超えている。そもそも無理なことだった。だからできなくても仕方ない」というように、言い訳やあきらめが口に 出るようになります。これこそ、脳が自らの限界を設定した瞬間です。しかし、これを乗り越えなければ、ビジネスパーソンとしても、人としての成長もありません。

では、どうすればよいかが問題です。「初心に戻り、改めて計画的に取り組む」ことができればよいのですが、そんな気持ちになれないのが人間です。

そこで、私がお勧めするのは「1週間だけ“がむしゃら”に行動する」ことです。例えば、「目に付いた本を片端から乱読する」「アイデアをすべて企画書にする」「映画を見続ける」「毎日ハードなトレーニングをする」など、言葉通りに我を忘れてやってみることです。考えるのではなく行動することがポイントです。こうすることで、皆さんが自ら設定している身体的な限界や心理的限界は突破できるのです。

幸いにも、これまで大きな壁やスランプを知らないという人は、自ら限界を作らないタイプの人でしょう。今後も限界を作らないようにしてください。

最後に、私が「もう限界かな」と思うようなときは、東京六大学野球で成績が振るわない東大野球部の元主将の言葉を思い出し、自分を鼓舞します。

彼の言葉は「勉強は簡単だ。勉強では戦う相手は自分だけだから限界を設けなくてよい。しかし、野球の場合は相手がいる。自分たちがいくら頑張っても相手が強いと試合は負けてしまう。ここで大切なのは、勝つことを目標に、自分たちが頑張り続けることだ。さあ、練習しよう」です。勉強で限界を設けない姿勢と、負け続ける野球においても勝つことを目標に練習する姿は素晴らしいでしょう。

以上(2022年11月)

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画像:Mariko Mitsuda

【値上げに成功する交渉術(2)】誰と、いくらの値上げ交渉をするか?

書いてあること

  • 主な読者:物価高騰で苦戦し、自社も値上げをしようと決意している経営者
  • 課題:誰と、いくらの値上げ交渉をするか決めなければならない
  • 解決策:まずは「交渉しない相手」を決める。値上げ交渉をすることにした相手については、変動損益計算書を用いて条件を決める

1 誰と、いくらの値上げ交渉をするか?

前回の「交渉の本質を知り、交渉に対する恐れをなくす」では、交渉の本質に触れながら、大切なポイントとして、

  • プラスサム型の交渉で「Win-Win」の関係を目指すが、自社のほうが得をしてよいこと
  • 相手も値上げ交渉を恐れていること
  • 値上げ交渉といえども、論点は「お金」だけではないこと

を確認しました。これらのポイントを押さえるだけでも、交渉に対するイメージが変わったと思います。ただ、実際の値上げ交渉では、

その値上げ交渉に失敗したら、大きな損失が出る

といったケースもあるので、やはり緊張します。

どのような交渉も軽んじてはいけませんが、事実として難しさはそれぞれ違います。また、企業間の取引では、交渉相手によって提示する条件も変わります。こうした、ある意味でレベル感がバラバラの値上げ交渉について、組織としての勝率を高めるために経営者がすべきことは、

誰と、いくらの値上げ交渉をするか?

を明確にすることです。この絶対的な基準によって交渉担当者は安心と自信を得て、不要な譲歩をすることもなくなるのです。

2 誰と交渉をするか?

1)交渉する相手を決める

早速ですが、交渉相手となり得る先をリストアップしてみましょう。この記事は、値上げ交渉について紹介していますが、仕入れ先との「値下げ交渉」も視野に入れてください。

仮に100件がリストアップされたとします。ここで、「よし! 上から順番に値上げ交渉をしよう」という経営者がいたら、ちょっとお待ちください。このリストで最初に行うべきことは、

交渉しない相手を決めること

だからです。例えば、

  • 交渉決裂の際のリスクがかなり大きい相手
  • 収支は厳しいが、取引することで業界に影響を与えられる相手

などとは、あえて交渉しなくてもいいのです。これは企業間取引における一つの特徴です。一斉値上げなどをせず、他との取引条件を知られることなく、しかるべき相手と値上げ交渉をすればよいのです。

2)交渉する順番を決める

値上げ交渉をする相手を決めた後は、交渉する順番を決めます。値上げ交渉に限らず交渉は、情報が多く経験が豊富なほど有利になりますから、

簡単な先から交渉をして相手の出方や感触を確かめ、そこで学んだことを次の交渉に活かしていくことの繰り返し

が基本になります。

値上げ交渉の難易度を整理する参考として、縦軸を「交渉への依存度」、横軸を「交渉の論点(価格以外の納期や品質などの交渉余地)」とするポジションマップを紹介します。交渉への依存度とは、「その交渉に必ず勝たなければならない」といったように、文字通り、依存度が高い交渉を指します。

交渉のタイプ

上段は依存度が高く、難しい交渉になりそうですから、最初は下段にある決裂しても仕方がないと判断した相手から、値上げ交渉を始めるとよいでしょう。

左右の「論点が多いか少ないか」は状況次第で有利、不利が変わりますが、交渉担当者には、それぞれ次のような性質が求められます。

  • 論点が多い:相手のことをよく知っており、的確な状況判断ができる
  • 論点が少ない:タフな場面でも感情的にならず、突破することができる

3 いくらの値上げ交渉をするか?

1)相手によって条件を変える

値上げ交渉をする相手を決めたら、相手ごとに、

  • 値上げ額
  • 留保価値(それを下回ったら交渉を打ち切る水準)

を設定します。値上げ額と留保価値は同じ場合もありますし、次のように違う場合もあります。

できれば100万円の値上げをしたいが(値上げ額)、80万円までなら譲歩できる。ただし、80万円を下回るのはあり得ない(留保価値)

最もシンプルな考え方は、

値上げ額=仕入れ額の増加分以上

とすることです。仕入れ額が80万円増加したら、販売価格も80万円上げればよいですし、これまで無理してきた分も取り返したければ、100万円の値上げをするということです。現実には、

  • 取引の規模(自社の収益に与えるインパクト)
  • その相手と取引に至った背景や取引年数
  • その相手と取引することによる宣伝効果

といった事情も考慮することになりますから、

  • 販売先であるA社とは、100万円の値上げ交渉
  • 販売先であるB社とは、60万円の値上げ交渉
  • 販売先であるC社とは、値上げをしない代わりに、取引量の増加交渉

といったように対応が分かれていくでしょう。もちろん、

仕入先であるD社とは、10%の値下げ交渉

といったように、仕入れ額の減額交渉も行います。結果として、自社の取引全体から適正な収益が生まれればよいわけです。

2)変動損益分岐点を用いた値上げ額の設定

具体的な値上げ額を決める際に使うのが「損益分岐点」です。詳細は割愛しますが、損益分岐点は固定費と限界利益が同じになる水準です。限界利益は「売上高?変動費」で求められ、売上高に占める限界利益の割合を限界利益率と呼びます。

損益分岐点は、

固定費÷限界利益率(売上高に占める限界利益の割合)

で出します。目標利益がある場合は、固定費に目標利益を足して計算します。例えば、固定費が400万円、営業利益が100万円の取引で、限界利益率が50%から40%に下がった場合、損益分岐点売上高は次のように変化します。

・限界利益率が50%の場合:(400万円+100万円)÷0.5=1000万円
・限界利益率が40%の場合:(400万円+100万円)÷0.4=1250万円

今の仕入れ額を受け入れつつ、同じ営業利益を確保したければ25%の値上げが必要になります。こうした計算をするには、自社の収益構造を正しく把握する必要があるので、「変動損益計算書」を作成してみるとよいでしょう。変動損益計算書とは、

費用を変動費と固定費に分けて作成する損益計算書

であり、財務会計上の損益計算書とは次のように違います。

赤字転落後の対応パターン

変動損益計算書を見ると、企業全体と取引先ごとの収益構造が把握しやすくなります。もとの状態からの変化を、

・変動費(仕入れ)の上昇で赤字転落
・値上げによって利益を確保
・変動費(仕入れ)削減で赤字を回避
・固定費の削減で赤字を回避

の例を示すと、次のようになります。

損益計算書と変動損益計算書の違い

仮に、企業全体で10%の値上げを目標とするなら、

・大手取引先と交渉して、1社で10%分を値上げする
・小口取引先と交渉して、10社で10%分を値上げする

といった方法があります。変動損益計算書で収益構造を把握しつつ、交渉条件の方針を決めましょう。

4 現場に情報を伝える

方針が決まったら、現場の社員に伝えます。値上げをする企業が増える中で、現場の社員が、取引先の担当者から、

御社との取引価格は今のままで大丈夫ですよね? 上司から確認するように指示されていまして

などと確認を受けることもあるでしょう。そうしたときに、

・申し訳ありませんが、変更したいと考えています。上司より改めて取引条件についてご相談させていただく予定です
・はい、大丈夫です。御社との取引条件は当面、今のままで変わりません

などと明確に答えられるようにしてあげることで、現場の社員と取引先とのコミュニケーションが図れるようになります。

今回の記事で交渉する相手と条件が決まりましたので、次回は、

・実際の値上げ交渉でやりとりされる数字の意味
・交渉余地の作り方

について図解します。この記事で紹介した「留保価値」が、交渉においてどのような意味を持つのかについてもご理解いただけると思います。

以上(2022年11月)

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画像:Mariko Mitsuda

全社員が持てる“経営的視点”(1)~組織は毎年歳を取る~/武田斉紀の『誰もが身に付けておきたい“経営的視点”』(5)

書いてあること

  • 主な読者:会社経営者・役員、管理職、一般社員の皆さん
  • 課題:経営幹部や管理職の方はもちろん、若手社員の方でも「経営的視点で見るように」と社長や上司から求められた経験があるのではないでしょうか。その場でうなずきはするものの、「経営的視点とは何か?」「それは社長以外の社員に必要なのか?」「会社員として働く上で、人生において価値があるのか?」「そもそもどのように身に付けていけばいいのか?」といった疑問があるのではないでしょうか
  • 解決策:課題で挙げたさまざまな質問に対して、『“経営的視点”の身に付け方』というテーマで、全国で多くの講演を行っている筆者が明快に回答します。“経営的視点”はこれからの時代において新入社員から求められる視点であって、より早く身に付けることができれば、その分、仕事においても人生においてもプラスであることが分かるはずです

1 社長だけの“経営者の視点”と、全社員が持てる“経営的視点”を分けた上で

シリーズ『武田斉紀の「誰もが身に付けておきたい“経営的視点”」』の第5回です。

このシリーズでは、社長や上司から「“経営的視点”を持て!」と言われるけれど…「経営的視点って何?」「社長以外の社員にも必要なの?」「会社で働く上で、人生において価値があるの?」「そもそもどうやって身に付ければいいの?」。こうした疑問にお答えしています。

さらには、『“経営的視点”の身に付け方』の具体的なノウハウと、経営における効用、働く側のメリットなどを、事例も交えながらご紹介していきます。

“経営的視点”はこれからの経営や働き方において、新入社員から求められる視点であり、誰にとってもより早く身に付けられれば、その分、仕事においても人生においてもプラスになるといえるでしょう。

前回まで3回にわたって、“経営者の視点”とは何かについて詳しくお話ししてきました。“経営者の視点”はトップである社長だけが持てるものであり、“経営的視点”とは異なるとご理解いただきたかったからです。

社長や上司が「“経営的視点”を持て!」と言いながら、もしも“経営的視点”ではなく、“経営者の視点”を求めているとしたら、それは無理な話です。でも、“経営的視点”なら全社員が持てます。

さて、今回からは“経営者の視点”ではなく、本題の“経営的視点”の身に付け方のノウハウについて解説していきたいと思います。

私からご提案する誰もが持てる、全社員が持てる“経営的視点”の観点は次の3つです。
1)会社の【成長】
2)会社の【組織力】
3)会社の【存在意義】

1)と2)については少し視点を意識して見直すだけで、比較的簡単に“経営的視点”を身に付けられます。3)は、理解し、身に付けるのに少し時間がかかりますが、身に付けた際は会社にとって、社員一人ひとりにとって得られる効果は絶大です。

2 会社組織は全員が毎年1歳、歳を取る

まずは「1)会社の【成長】」の観点からお話ししていきましょう。前提となるのは「会社組織は全員が毎年1歳、歳を取る」という事実です。

現状、日本の多くの企業が採用しているのが、「年功序列型賃金制度」と「終身雇用制度」です。

入社時点では一人ひとりが担当する職種や専門分野が決まっておらず、異動によりさまざまな部署での経験を積みながら成長していくので、「メンバーシップ型(職能型)」人事制度とも呼ばれています。

「年功序列」とは言葉の通り、勤続年数や年齢が増すにつれて給料が上がっていくことを意味します。けれど給料はどこから出てくるのでしょう。説明するまでもなく、会社として経済活動を行って残した利益が原資ですね。

しかしながら、もしも社員一人ひとりの能力(稼ぐ力)が今年度と来年度で全く変わらなかったとすれば、会社全体の利益は変わりません。となると、社員が「年功序列で1年たったのだから、その分の給料を上げてくれ」といくら要求しても、会社としては支払えないのです。

ない袖は振れません。

大抵の会社組織はピラミッド型にできています。山の頂上に社長がいて、山頂付近に取締役や部長がいて、中腹に課長がいて、裾野にそれ以外の一般社員がいて、お客様や現場の第一線と対峙しています。

先ほど触れたように「会社組織は全員が毎年1歳、歳を取る」ので、放っておくとどんどん高齢化していきます。そこで人事的には一定年齢に達した社員には定年制度で会社組織の山から去ってもらい、その分を裾野に若い新入社員を採用して補い、組織の平均年齢が上がらないようにしています。

社員一人ひとりの能力(稼ぐ力)が、今年度と来年度で全く変わらなかったとすればどうなるでしょうか。平均年齢は変わらず会社組織全体では問題ないように見えますが、平均能力では前年度より1年分落ちているのです。

しかも、一人ひとりがピラミッドの1年上の立場に上がったのに、役割に応じた能力が発揮できず機能不全に陥ってしまうでしょう。

すなわち、会社組織においては、全員が1年で1年分以上成長しないと給料は上げられない。自分自身はもとより、社会人1年目の新人も含めて、自分の部下も全員責任を持って1年分育てて初めて給料を上げられるのです。

ここまで理解できたら、あなたは次の意味がわかるでしょう。

■毎年給料を上げたいのであれば、全員が、自分が1年後にいるべきピラミッドの高い位置から常に物事を見て、仕事を進めていかなければならない。

3 話題の「ジョブ型」人事制度ではどうなるか

コロナ禍がきっかけで、リモートワークが一気に日本企業に浸透して、働き方に変化が生まれ、同時に会社や上司には新たなマネジメント上の課題が発生しました。日々近くにいて仕事の進捗確認や指導、時間管理が難しくなったのです。

片や少子高齢化で縮小市場となった国内から海外へのグローバル化の流れも相まって、欧米型といわれる「ジョブ型(職種型)」人事制度が注目されています。

大手企業の一部ではコロナ前からすでに一部導入、あるいは完全導入が始まっていて、他の大手や中堅中小企業でも「メンバーシップ型」から「ジョブ型」への転換を検討するところが増えているようです。

日本政府も「年功序列を見直し」て、「ジョブ型」への移行を経済界に推奨し始めています。法律が後手では現場は混乱するだけですから、本気で取り組む覚悟なら掛け声より法整備を先行しなければなりません。

とはいえ、日本企業のすべてが「ジョブ型」に一気に変わって、はたしてうまく機能するのか、生産性が上がって成長軌道に乗れるのか。その点は十分に検討されているのでしょうか。

「ジョブ型」は魔法の杖ではありません。比較調査データで提示される生産性の低さや教育投資の低さは、全て年功序列や「メンバーシップ型」が原因なのでしょうか。私にはどちらを選ぶかは各社の考え方次第でよく、問題はその運用方法にあるように思えます。

さて、「ジョブ型」は仕事ありき。あらかじめ仕事の要件を明確にしておいて、それをできる人を専門家として採用します。仕事と目標を定めてあるので、プロセスや時間を管理しなくとも、できたかできなかったかの結果で評価すればよい仕組み。リモートワークのマネジメントとも親和性があるとわかります。

その仕事ができるであろう人を採用するので、「メンバーシップ型」のような新卒一括採用主体ではなく、中途採用が中心となります。

前説が長くなりましたが、「ジョブ型」では、「1)会社の【成長】」の観点における前提=「会社組織は全員が毎年1歳、歳を取る」はどうなるでしょうか。

「ジョブ型」人事制度が浸透している世界では、働く側は年功序列のように「1年たったのだから、その分の給料を上げてくれ」とは言いません。もちろん世の中の物価が上がれば給料を上げてくれないと生活ができないとは言いますが、その点は「メンバーシップ型」も同じ。

「ジョブ型」で働く人たちは、「能力が以前より上がった(のでより高い成果を出せるはずだ)」から「成果を以前より出した」から、「その分の給料を上げてくれ」と言うのです。ピラミッドの上のポジションに就かない限り、給料は上がらないと知っているからです。

後は、会社側が賃上げ要求に応じるか、転職して他社により好条件で採用されでもしなければ、何年真面目に働いても仕事内容は変わらず、給料は1円も上がりません。

日本企業のOJT(On the Job Training)のように、上司や周りの誰かがいちいち面倒を見てくれるわけではありません。求める仕事ができないなら、他の人を募集して入れ替わってもらうだけです。

だから自身の給料を上げたい人は、会社や上司がいちいち先ほどのように説明しなくても自ら動きます。能力を上げるために学び直して(リスキリングやリカレント教育)、何とかチャンスをつかんで成果を上げ、それをアピールして昇給や上のポジションに就こうとするのです。

上司の仕事は、現場を回すのに必要な部分(そこもできれば非正規か外部委託化してコストを下げたい)以外は、現状維持ではなく、より高い成果を出そうと意欲のある人材に入れ替えることです。前年度以上の成果を上げるようにと「ジョブ」として求められているからです。

4 どうすれば、「会社の【成長】」の観点から“経営的視点”が持てるのか

2つの人事制度と比べて見てみると、会社としては「ジョブ型」のほうが楽なように思えませんか。自身の給料を上げたい意欲のある人さえ連れてくれば、会社や上司がいちいち説明しなくても、彼らは自ら成長し、前年度よりも高い成果を上げてくれそうです。

ところがそうした人材は世の中に豊富にいるわけではありません。

結局は優秀な人材ほど争奪戦となり、好条件を提示できる企業以外は、なかなか描いた理想通りにはいかないのが現実でしょう。

好条件を提示できない会社の上司は、意欲の高い人材を採用したつもりがそうでもなくて、結果を出せずに入れ替えてばかり。部署としての結果を出せていないと、揚げ句は自分自身が上から入れ替えられる。これでは会社の成長はイメージできません。

であるならば、社長や上司が「メンバーシップ型」の全員を説得していったほうが早いといった考え方もあるでしょう。

「給料は1年たったからといって当たり前には上がりません。一人ひとりが1年で1年分以上成長して、ようやく上げられるのです」「だからこそ全員が、自分が1年後にいるべきピラミッドの高い位置から常に物事を見て、仕事を進めていかなければならないのです」と。

第5回も最後までお読みいただきありがとうございました。次回は全社員が持てる“経営的視点”の観点の2つ目、「会社の【組織力】」についてお話しします。

<ご質問を承ります>
最後まで読んでいただきありがとうございます。ご質問や疑問点などあれば以下までメールください。※個別のお問合せもこちらまで

Mail to: brightinfo@brightside.co.jp

以上(2022年11月)
(著作 ブライトサイド株式会社 代表取締役社長 武田斉紀)
https://www.brightside.co.jp/

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画像:NicoElNino-shutterstock

紅葉のふしぎ

1 紅葉のメカニズム

1)3つの紅葉

紅葉とは葉が落ちる前に黄や橙(だいだい)、赤などに色づくことをいいます。細かく分類すると、次のように分けられます。

  • 狭義の紅葉:赤や橙に色づくこと
  • 黄葉:黄色に色づくこと
  • 褐葉:褐色に色づくこと(褐色に色づくのが早いこと)

ただし、厳密にこれらを分けることは困難であるため、まとめて「紅葉」といわれる場合がほとんどです。

紅葉

2)葉の色づき方

緑色にみえる葉には、クロロフィルという緑色の色素とカロテノイドという黄色の色素の2種類が含まれます。紅葉するときには、これらの色素に変化が現れます。

  • 黄色く色づく場合
    黄色くなる黄葉は、秋になると緑の色素であるクロロフィルが先に分解されるため、黄色くみえるようになります。

  • 赤く色づく場合
    紅葉は、葉のクロロフィルが分解され、アントシアンという赤色の色素に変わることで起きます。クロロフィルがすべて分解されてしまう前にアントシアンができ始めるため、紫色に近い紅葉がみられます。その後、クロロフィルがアントシアンに完全に変わることで赤く色づきます。これが狭義の紅葉です。

紅葉するまでのイメージ

2 紅葉と気温・標高の関係

1)気温との関係

紅葉が始まる主な条件は次の通りです。

  • 紅葉が始まるのに適した気温
  • 適度な湿度
  • 十分な光

この中で最も重要な条件なのが気温です。一般的に最低気温が8度以下で色づき始め、5~6度になると一気に色づきます。また、昼夜の寒暖差が大きいときれいに色づきます。一般的に都心部よりも山岳地のほうが紅葉が美しいといわれるのはこのような理由からです。

2)標高との関係

紅葉は標高の高いところから始まり、徐々に低地に向かっていきます。

  • 高地の紅葉
    北海道では主に標高500メートル以上の山でみられますが、本州では日本アルプスや東北地方の一部の、標高1500メートル以上の山でみられるといわれます。気温差が大きく、紫外線が強いため、非常に鮮やかな紅葉がみられます。常緑針葉樹も少なくないので、紅葉の時期には、ナナカマドやタカネザクラなどの赤色、ミネカエデなどの黄色とのコントラストが鮮やかです。

  • 山地の紅葉
    北海道から九州までの雪が積もるような寒い地域でみられる紅葉です。落葉広葉樹林が広がる地域で、さまざまな種類の樹木による紅葉がみられます。そのため、紅葉の名所と呼ばれる場所が多いのが特徴です。代表的な樹木としては赤色がカエデ類やヤマウルシ、ヤマブドウ、黄色はブナやカラマツなどがあります。

  • 低地の紅葉
    特に関東以西の暖地でみられる紅葉です。寒暖の差が小さいため、鮮やかに色づくものは限られますが、常緑樹とのコントラストが美しいものが多くなっています。代表的な樹木としては、赤色がイロハモミジやケヤキ、ツツジ類などで、黄色はイチョウなどがあります。

3 主な紅葉の紹介(赤色に色づくもの)

紅葉する樹木にはさまざまなものがあります。以降では、その中でも代表的な種を紹介します。

1)高山などでみられるもの

  • ナナカマド(バラ科)
    ナナカマドは、北海道や東北では街路などにも植えられています。小さな真っ赤な葉が羽のように並び、一つの大きな葉を形成する独特の形をしています。小さな赤い実がつくのも特徴で、葉が落ちた後も枝に残っています。

2)山地、低地でみられるもの

  • カシワ(ブナ科)
    カシワは、日本全国の山地を中心に、庭木としても植えられる樹木です。鮮やかな橙に色づきますが、条件が良いと濃い赤になります。

  • ケヤキ(ニレ科)
    ケヤキは、木によって、赤や橙、黄など異なる色になるのが特徴の木です。しかし褐色になるのが早く、落ち葉もすぐにくすんでしまうため、いわゆる「褐葉」の代表格でもあります。本州から九州までの山地や低地に広く分布しており、公園の樹木や街路樹としても植えられています。

3)低地でみられるもの

  • イロハモミジ(ムクロジ科/旧カエデ科)
    イロハモミジは、低地でみられる赤い紅葉の代表格です。日陰では黄色くなるものの、全体的に鮮やかな赤に色づきます。低地での紅葉の名所ではよく植えられている種です。

  • ヤマザクラ、ソメイヨシノ(バラ科)
    ヤマザクラおよびソメイヨシノは、低地に植えられるサクラの代表格です。ヤマザクラは主に林や低地に植えられ、橙や赤に色づきます。ソメイヨシノは街路や公園によく植えられ、ヤマザクラより濃い赤や橙に色づくのが特徴です。どちらも日照によって色づきに差が出てしまい、葉によっては赤く色づく部分と黄色の色づきのどちらも現れるものが出るほどです。

  • ツタ(ブドウ科)
    ツタは、木の幹をはじめとして、建物の壁や塀をびっしりと覆うことが多いツル植物です。若い枝は丸い葉が多く、成長していくにつれ葉に切れ込みが入るようになります。成長した葉には強い光沢があり、全体的に赤くなりますが、中には紫に近い色のものもあります。童謡「まっかな秋」に歌われていることでも知られています。

4 主な紅葉の紹介(黄色に色づくもの)

1)山地などでみられるもの

  • ブナ(ブナ科)
    ブナは、寒い地方の森林や全国各地の山林でよくみかける木です。紅葉し始めた当初は黄色ですが、紅葉が進むにつれ橙から赤茶色に変化していきます。しかし、鮮やかな色は長続きせずに葉が落ちるころには褐色になってしまいます。

  • カラマツ(マツ科)
    カラマツは寒冷地を中心に山地でよくみられる木で、日本原産の針葉樹の中で唯一の落葉樹です。ごく短い枝に、多数の細長い葉がついている独特の姿が特徴です。紅葉すると色鮮やかな黄色に色づき、秋が深まると黄土色に変わっていきます。

2)山地、低地でみられるもの

  • コナラ(ブナ科)
    コナラは、低地や山地などを中心に、よくみかける木の一つです。特によくみられるのは身近な雑木林です。初めは黄色ですが、紅葉が進むにつれ橙から赤茶色に変化します。

  • イタヤカエデ(ムクロジ科/旧カエデ科)
    旧カエデ科の仲間は赤く色づくものが多いですが、中には黄色く色づくものもあります。黄色く色づくものの代表格がイタヤカエデで、特に山地で多くみられます。なお、若木は橙や淡い赤に色づくこともあり、成長した木に比べ葉の形に深い切れ込みが入るのが特徴です。

3)低地でみられるもの

  • イチョウ(イチョウ科)
    イチョウは黄色に色づく木の中でも代表的なものの一つで、全国各地に植えられています。見ごろの時期になると、低地でも鮮やかな黄色をみることができます。全体的に高木になるのが特徴です。

  • エノキ(ニレ科)
    エノキは都市部を中心に、公園や寺社など身近でみられる樹木の代表格です。葉の色は濃い黄色で、全体的によく色づくのが特徴です。

以上(2022年11月更新)

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