【業種別データ】化粧品・歯磨・その他の化粧用調整品製造業の動向

2023年の化粧品・歯磨等製造業は、製造品出荷額が前年比約103.5%と回復し、従業者1人当たり出荷額も改善するなど生産性は向上しましたが、従業者数は減少傾向にあります。原材料費の上昇でコスト比率が上がる一方、頭髪用製品は大幅増、仕上用化粧品は従業者減で停滞と分野差が鮮明です。地域別では神奈川・東京などが上位で、総じて「生産は回復基調だが人員確保とコスト管理が課題」の状況です。

1 業界動向

1)業界全体

2023年の化粧品・歯磨・その他の化粧用調整品製造業の事業所数は689事業所(対前年比100.3%)、従業者数は4万8178人(対前年比97.1%)、製造品出荷額等は2兆1351億7800万円(対前年比103.5%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は70人(対前年比96.8%)、現金給与総額は2億9600万円(対前年比99.8%)、原材料使用額等は12億6600万円(対前年比105.6%)、製造品出荷額等は30億9900万円(対前年比103.2%)、付加価値額は16億2600万円(対前年比102.5%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は423万円(対前年比103.1%)、製造品出荷額等は4432万円(対前年比106.6%)、付加価値額は2326万円(対前年比105.9%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は40.8%(対前年比102.3%)、同付加価値額比率は52.5%(対前年比99.3%)、同現金給与総額比率は9.5%(対前年比96.8%)となっています。

【1660 化粧品・歯磨・その他の化粧用調整品製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

2)仕上用・皮膚用化粧品製造業(香水、オーデコロンを含む)

2023年の仕上用・皮膚用化粧品製造業(香水、オーデコロンを含む)の事業所数は420事業所(対前年比99.1%)、従業者数は3万1357人(対前年比89.4%)、製造品出荷額等は1兆4724億7700万円(対前年比98.7%)となっています。

【1661 仕上用・皮膚用化粧品製造業(香水、オーデコロンを含む)】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

3)頭髪用化粧品製造業の事業所数

2023年の頭髪用化粧品製造業の事業所数は122事業所(対前年比101.7%)、従業者数は9933

人(対前年比130.5%)、製造品出荷額等は4203億1200万円(対前年比117.9%)となっています。

【1662 頭髪用化粧品製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

4)その他の化粧品・歯磨・化粧用調整品製造業

2023年のその他の化粧品・歯磨・化粧用調整品製造業の事業所数は147事業所(対前年比102.8%)、従業者数は6888人(対前年比99.2%)、製造品出荷額等は2423億9000万円(対前年比113.0%)となっています。

【1669 その他の化粧品・歯磨・化粧用調整品製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

2 品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)

品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)は次の通りです。

【品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

3 経営指標

【化粧品・歯磨・その他の化粧用調整品製造業の経営指標】

(出所:日本政策金融公庫「小企業の経営指標2024」)

(注1)( )内は、調査対象企業数です。

(注2)受取利息を加味できないなど調査項目に限界があるため、「黒字かつ自己資本プラス企業」でも損益分岐点比率が100%を超える場合があります。

以上(2026年3月更新)

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画像:Mariko Mitsuda

【コスト削減】社会保険料のコントロール 労働時間や賃金の工夫で負担が減る?

1 【提案】社会保険料をコントロールしましょう

社会保険料は、社員だけでなく、会社にとって明確かつ予測可能なコストです。これをコントロールしようとする取り組みに対しては、「公的保険の趣旨に反するのではないか」「社員の将来の給付を損なうのではないか」といった批判的な声が向けられることも事実です。

しかし、社会保険料は労使合計では賃金の約3割に相当し、会社負担だけでも大きなコストになります。この仕組みを正確に理解し、合法的な範囲で最適化を検討することは、会社の財務基盤を健全に保つ上で重要です。

そこで、労働時間や賃金のルールを工夫して、社会保険料の負担を減らす方法をご提案します。この記事で紹介するのは、社員1人当たりの社会保険料を労使合計で

  • フレックスタイム制を導入し、「1年間で10万2168円」削減する
  • 賃金の一部を賞与として支給し、「1年間で1万7028円」削減する

というシミュレーションです。会社負担分だけを見れば、削減額はおおむねその半分になります。第2章で前提となる社会保険料の基本ルールをおさらいし、第3章からシミュレーションの紹介に入ります。実際にどの程度の社会保険料を削減できるかは会社の状況などにもよりますが、人件費見直しにご活用ください。

ただし、注意すべきは、この記事で紹介する方法を採用した場合、傷病手当金や老齢年金などの保険給付が減少するケースがあることです。足元ではコストを削減できますが、将来的な保険給付で社員が損をする恐れがあります。この点は民間の保険に入る場合と同じ考え方です(支払い保険料を抑えた分、万一の際の保険給付は低くなります)。

賃金の一部を賞与として支給する場合、特に次の給付に影響が生じます。

  • 失業給付(基本手当)
  • 育児休業給付金
  • 老齢厚生年金
  • 傷病手当金

2 社会保険料の基本ルール

1)社会保険料の計算方法

社会保険料は、

標準報酬月額(または標準賞与額)×保険料率

で計算した額を、会社と社員が折半して負担します。保険者が協会けんぽ(全国健康保険協会)の場合、健康保険料率は9.85%(介護保険の適用がない場合)、厚生年金保険料率は18.3%です。さらに2026年度からは子ども・子育て支援金の0.23%が加わり、合計28.38%となかなかの負担です(協会けんぽ「令和8年度保険料額表(東京都)」)。なお、40歳以上65歳未満の方(介護保険第2号被保険者)は、これに介護保険料率1.62%が加算され、合計30.00%となります。

2)標準報酬月額

標準報酬月額とは、

報酬(正確には所定の方法で計算した報酬月額)を一定の金額幅で等級別に区分したもの

です。報酬には、基本給、役付手当、勤務地手当、家族手当、通勤手当、住宅手当、残業代などが含まれます(名称を問わず、また金銭に限らず、労働の対償となるものが原則として算定対象)。ただし、臨時に支給されるもの、支給回数が年3回以下の賞与や退職金は含まれません。

標準報酬月額の主な決定方法は次の3つです。

1.資格取得時決定

雇用したときなど(被保険者資格取得時)の報酬月額に基づいて標準報酬月額が決定され、その月から適用されます。報酬月額は次の式で計算します。

【月、週その他一定期間によって報酬が定められる場合】

被保険者資格取得時の報酬(労働条件通知書などで定める額)÷月の暦日数×30日

2.定時決定

毎年4月、5月、6月(いずれの月も支払基礎日数が原則17日以上。ただし、特定適用事業所に勤務する短時間労働者の場合は11日以上)の報酬月額に基づいて標準報酬月額が決定され、その年の9月から適用されます。報酬月額は次の式で計算します。

4月、5月、6月に支払われた報酬の総額÷3カ月

(注)支払基礎日数が17日未満の月は除外して算定します(特定適用事業所に勤務する短時間労働者の場合は、11日未満の月は除外)。また、パート等の短時間労働者については、別に定める算定方法を用いて算出します。

9月以降、1年間の社会保険料を決める4・5・6月に、残業や臨時手当が集中すると、保険料が上がります。決算賞与など年1回支給の臨時手当は、可能であれば3月以前または7月以降の支給にすることで標準報酬月額への影響を回避できます。

昇給は4月実施が一般的ですが、昇給時期をずらすと定時決定の平均額に影響する場合があります。ただし、固定的賃金の変動後3カ月平均で2等級以上変動すれば随時改定の対象になるため、翌年まで必ず反映を持ち越せるわけではありません。

3.随時改定

昇給・降給などにより、当該変動月を含めた3カ月平均値が今の標準報酬月額より2等級以上変動した場合、変動月の3カ月後から新しい標準報酬月額が適用されます。新しい標準報酬月額は、次の式で計算した報酬月額に基づいて決まります。

報酬の変動月、その翌月、翌々月に支払われた報酬の総額÷3カ月

(注)いずれも支払基礎日数が17日以上である必要があります(特定適用事業所に勤務する短時間労働者の場合は11日以上)。

3)標準賞与額

標準賞与額とは、

被保険者期間中に支給される賞与総額から1000円未満を切り捨てた額

です。標準賞与額の対象となる賞与は、労働の対償として支払われる支給回数が年3回以下のものです。夏季と年末に賞与を支給している場合、標準賞与額も年2回計算します。

なお、健康保険・介護保険・子ども・子育て支援金の標準賞与額には年間累計573万円(4月1日~翌年3月31日)の上限があり、これを超えた部分には保険料がかかりません。厚生年金保険についても、1回あたり150万円が上限となっています。

つまり、健康保険は年度累計の標準賞与額573万円、厚生年金保険は同一月の標準賞与額150万円が上限です。上限を超える部分には、それぞれの保険料がかからない仕組みです。そのため、高額な報酬を受け取る役員や高給社員の賞与設計においては、この上限を意識することで実質的な保険料負担率を引き下げられる可能性があります。

3 フレックスタイム制で社会保険料を削減

1)フレックスタイム制特有の残業の計算方法を利用する

定時決定の対象月の残業を減らせば社会保険料は下げられます。定時決定の対象は毎年4月、5月、6月ですから、「月末締め、翌月払い」の会社の場合、

3月、4月、5月の残業(時間外労働)を減らせばよい

ことになります。とはいえ、年度をまたぐ繁忙な時期でもあり、常に人手不足の会社などでは、残業削減に取り組んではいるものの、なかなかすぐに効果が出ないこともあります。

こうした場合、業務実態に合った柔軟な働き方として「フレックスタイム制」を導入することで、結果的に残業時間や残業代を抑えられる場合があります。フレックスタイム制とは、「清算期間」と呼ばれる単位期間内(3カ月以内)で始業・終業時刻の決定を社員に委ねる労働時間制度です。

清算期間が1カ月以内のフレックスタイム制の場合、残業は次のように計算します(法定労働時間の総枠を清算期間における総労働時間(所定労働時間)とした場合)。

清算期間内の実労働時間-(週の法定労働時間×清算期間の暦日数÷7日)

所定労働日数や休日などによって異なりますが、この計算方法によりフレックスタイム制では、通常よりも残業が減ることがあります。次の図表は、法定労働時間が1日8時間、1週40時間で、土・日・祝日が休日の会社で、社員が2026年3月、4月、5月に残業した場合のイメージです。

フレックスタイム制で社会保険料を削減

各月の総労働時間が同じでも、残業はフレックスタイム制のほうが45.6時間(120時間-74.4時間)も少なくなっています。これを社会保険料の計算に反映してみましょう。

ここでは、社員の残業代を除く賃金を

  • 月給32万円
  • 所定労働時間:1日8時間
  • 所定労働日数:年間240日(日曜日を法定休日、土曜日・祝日のほか夏季休業・年末年始休業などを所定休日として年間休日125日)
  • 所定内賃金を時給に換算した額:時給2000円(月額32万円÷(240日×8時間÷12)

と仮定し、「月給+残業代」で報酬月額を求めて、標準報酬月額を算定します。残業代の割増賃金率は、残業が月60時間以内の場合は25%、月60時間超の場合は50%です。

また、保険料率は、健康保険料率9.85%(介護保険の適用がない場合)、厚生年金保険料率18.3%、子ども・子育て支援金0.23%で、合計28.38%とします(協会けんぽ「令和8年度保険料額表(東京都)」)。

1.通常の労働時間制度の場合

  • 報酬月額:42万円(32万円+2000円×1.25×120時間÷3カ月)
  • 標準報酬月額:41万円
  • 社会保険料:11万6358円(41万円×28.38%)

2.清算期間が1カ月のフレックスタイム制の場合

  • 報酬月額:38万2000円(32万円+2000円×1.25×74.4時間÷3カ月)
  • 標準報酬月額:38万円
  • 社会保険料:10万7844円(38万円×28.38%)

このようにフレックスタイム制を導入することで報酬月額が下がる場合、社会保険料を社員1人当たり

  • 1カ月間で8514円(11万6358円-10万7844円)削減
  • 1年間で10万2168円(8514円×12カ月)削減

できることになります。

2)フレックスタイム制を導入する際の注意点

フレックスタイム制は「始業・終業時刻の決定を社員に委ねる」ことを前提とした制度です。そのため、導入後は会社が社員に対して始業・終業時刻を一方的に指定するような運用はしにくくなります。

社員に柔軟な働き方を求める経営方針であったり、フレックスタイム制という働き方が適した業種などであったりすればよいですが、単に残業を減らすためだけにフレックスタイム制を導入するといった運用は適切ではありません。

また、フレックスタイム制の導入によって、所定労働時間が増加したりする場合には「労働条件の不利益変更」となることがあります。労働条件の不利益変更は、社員の合意を得るか、変更内容が合理的なものでないと認められません。

なお、フレックスタイム制の導入には、

  • 就業規則の変更(常時10人以上の事業所は労基署への届出義務)
  • 労使協定の締結(対象労働者、清算期間、総労働時間、標準となる1日の労働時間、コアタイム・フレキシブルタイム等を規定)

が必要です。手続きの不備は制度自体が無効と判断され、過去に遡って残業代が発生するリスクがある点にも注意しましょう。

4 賞与のコントロールで社会保険料を削減

1)標準報酬月額と標準賞与額の計算方法の違いを利用する

標準報酬月額と標準賞与額の計算方法の違いを利用して、社会保険料を削減します。厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、2025年の賞与支給平均額は調査産業計で

  • 夏季賞与:42万6337円
  • 年末賞与:42万4889円

となっているので、ここでは、月給、夏季賞与、年末賞与を次のように仮定します。

  • 月給:32万円
  • 夏季賞与:43万円
  • 年末賞与:42万円

月給32万円を報酬月額とした場合、標準報酬月額は32万円です(協会けんぽ「令和8年度保険料額表(東京都)」)。

標準報酬月額が32万円になる報酬月額は31万~33万円なので、

月給を31万円未満に引き下げ、その分を賞与として支給する場合、標準報酬月額は30万円

になります。月間現金給与額から1万5000円(年間18万円)を夏季賞与と年末賞与に9万円ずつ振り替えた場合の社会保険料は次の通りです。

賞与のコントロールで社会保険料を削減

賃金の一部を賞与として支給することで、社会保険料を社員1人当たり

1年間で1万7028円(133万1022円-131万3994円)削減

できることになります。

2)効果が見込める「選択制確定拠出年金(選択制DC)」

さらに社会保険料の削減効果が見込める制度として、選択制DCがあります。社員が給与の一部をDC掛金として拠出することを選択できる制度で、拠出額は標準報酬月額・標準賞与額の双方から除外されます。

社会保険料の労使負担削減に加え、社員側も所得税・住民税が軽減され、老後資金の積立にもなる仕組みです。拠出額や標準報酬月額の等級によっては、一定の社会保険料削減効果が見込めます。ただし、効果額は社員ごとに異なるため、制度導入前に具体的なシミュレーションを行うことが重要です。

3)賃金の一部を賞与として支給する場合の注意点

「業績の状況等によって賞与を支給することがある」など、賞与の支給が不確実な制度設計になっている場合、注意が必要です。賃金の一部を賞与として支給する設計にしても、業績悪化などで賞与が支給されない場合、社員にとっては収入減となる可能性があります。制度設計によっては労働条件の不利益変更になる恐れがあり、慎重な検討が必要です。

もしも賃金を賞与に回すことを考えるのであれば、まずは存在意義の薄い手当がないかチェックしましょう。例えば、無遅刻・無欠勤の社員に支給する皆勤手当は、遅刻や欠勤が少ない会社では意外に喜ばれにくいものです。手当で社会保険料の負担が重くなるくらいなら、賞与に回したほうが社員も喜ぶでしょう。

こうした仕組みを利用することで、現状の賃金制度と向き合い、賃金設計の再構築を図るきっかけとするのもよいかもしれません。ただし、昨今の物価高により賃金が生活給になっているケースも多く、目先の事だけにとらわれて結果として社員の日常の生活を圧迫させてしまっては本末転倒です。充分に検討して対応しましょう。

以上(2026年6月更新)
(監修 社会保険労務士 柴田充輝)

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画像:Sumet-Adobe Stock

「企業価値担保権」スタート! 担保がなくても融資が受けられる?

1 2026年5月25日からスタート! 企業価値担保権

新事業を始めたいけれど、土地や建物がなくて融資が受けられない。かといって経営者保証に頼ると思い切った投資はしにくいし、事業承継にも差し支えるかも・・・・・・。多くの中小企業が抱える悩みです。そんな中小企業の経営者に紹介したいのが、2026年5月25日から始まった「企業価値担保権」です。企業価値担保権とは、

企業が金融機関から融資を受ける際に、信託という仕組みを通じて、有形資産(土地や建物)だけでなく、無形資産(ノウハウや顧客基盤) も含む 「企業の総財産」を担保にできる制度

です(根拠法は「事業性融資の推進等に関する法律」)。

企業価値担保権

これまでの融資は、決算書の数値と不動産の担保価値が審査の中心で、有形資産に乏しい企業、経営者保証が課されることにより事業承継や思い切った事業展開をためらっている企業は、資金調達の選択肢が限られてしまうのが課題でした。しかし、企業価値担保権が開始されることで、

事業の実態や将来性に着目した融資 (事業性評価に基づく融資)を受けやすくなる

のです。一方、その特性故に、融資を利用する経営者には、

金融機関に対し、自社の事業の継続性や収益性、事業計画などを説明するプレゼン力

が一層求められることになります。

そこで、この記事では、

  • 企業価値担保権のポイント
  • 自社の事業を金融機関に説明するポイント

を紹介します。新年度、さらなる事業展開を検討している経営者の方はぜひご一読ください。

なお、企業価値担保権についてより詳しく知りたい方は、こちらをご確認ください。

金融庁「企業価値担保権(旧:事業成長担保権)について」
https://www.fsa.go.jp/policy/kigyoukachi-tanpo/index.html

2 企業価値担保権をざっくり解説!

1)従来の担保権との違い

従来の担保権と企業価値担保権の違いを比較表としてまとめました。

従来の担保権と企業価値担保権の違い

前述した通り、

企業価値担保権の担保対象は「企業の総財産」

です。現在保有している財産だけでなく、将来取得する財産も含まれますし、現預金や設備だけでなく、

  • 独自の技術やノウハウ
  • 顧客基盤・取引先との関係
  • ブランドカ

といった、貸借対照表に載らない無形資産も評価の対象です。

また、従来の担保権とのもう1つの大きな違いが「評価の視点」です。従来の担保権は、万が一返済できなくなった場合に「担保物を売っていくらで回収できるか」という処分価格で評価されていましたが、企業価値担保権では、「この事業が将来どれだけのキャッシュフローを生み出せるか」という事業継続価値を重視します。つまり、

過去の実績や現在の資産だけでなく、これからの成長の可能性が評価の対象

になるのです。

2)「企業」「金融機関」「企業価値担保権信託会社」の三者で運営する

企業価値担保権は、企業(借り手)と金融機関(貸し手)の間に、法律に基づき新設される「企業価値担保権信託会社(担保権者)」が入る仕組みになっています。

おおまかなスキームのイメージは図表3の通りです。

「企業」「金融機関」「企業価値担保権信託会社」の三者で運営

1.企業(借り手)

企業は企業価値担保権信託会社(担保権者)と信託契約を結び、企業価値(自社の総財産)を担保目的財産として提供します。企業価値担保権は商業登記簿への登記によって設定されますが、設定後も企業は通常の事業活動の範囲において、財産の処分を自由に行うことができるので、取引が制限されることはありません。

なお、企業価値担保権のルールでは、借り手となれるのは株式会社・持分会社だけです。

2.金融機関(貸し手)

企業価値を担保として融資を実行します。企業からの返済が滞る場合、企業価値担保権信託会社を通じて債権回収を行います。

なお、金融機関は金融庁の免許を取得した場合、企業価値担保権信託会社を兼任することが可能です。

3.企業価値担保権信託会社(担保権者)

企業から金融機関に対する債務の弁済が滞った場合、裁判所に申立てを行います。裁判所は事業の経営等を担う「管財人」を選定し、管財人は事業の経営等をしながら、スポンサーへの事業譲渡などを行い、その対価が金融機関への弁済に充てられることになります。

「事業を解体」して資産を売るのではなく、事業全体を維持したまま次の担い手に引き継ぐ「事業譲渡」などで対応するため、取引関係や従業員の雇用は維持される

というのが特徴です。

3)経営者保証は原則不要になる

企業価値担保権を設定する場合、

経営者個人の連帯保証は原則として制限

されます。事業全体の価値を担保として評価するため、経営者個人の資産に頼る必要がなくなるという考え方です。これにより、経営者は個人資産を失うリスクを恐れず、より積極的な事業展開に踏み切れるようになると期待されています。

ただし、経営者が意図的に粉飾決算を行った場合や、企業の資産を不正に流用した場合は例外です。

3 自社の事業をきちんと金融機関に説明するには?

前述した通り、企業価値担保権を活用した融資を利用する場合、経営者には「金融機関に対し、自社の事業の継続性や収益性、事業計画などを説明するプレゼン力」が一層求められます。ここでは、金融機関の元融資担当者にヒアリングした、経営者がプレゼン力を身に付けるために押さえておきたいポイントを紹介します。

1)経営者がハマりやすい3つの落とし穴

新事業などやりたいことが明確にあるのに、融資を断られてしまう・・・・・・。そうした経営者の多くには、陥りがちな落とし穴が3つあります。

1.自社を客観視できていない

自社の技術や商品に対する自信は大切ですが、経営者が「ウチには立派な技術や商品がある!」と力説するだけでは、融資の許可は下りません。融資担当者が重視するのは「客観的な根拠」です。市場ニーズや競合との比較分析が欠けていると、業績悪化時の立て直し能力にも疑問を持たれかねません。

2.根拠のない計画を立てる

売上や利益が常に右肩上がりになっているものの、「なぜその数字が達成できるのか」という裏付けがないケースも多いです。融資の担当者は、計画の数字の整合性を必ず検証します。「どの施策が売上につながるのか」「根拠となるデータは何か」まで、事業計画書に落とし込むことが大切です。

3.計画を言語化して説明できない

外部の専門家や財務担当者に事業計画書の作成を任せきりにし、経営者自身が計画の中身を説明できないケースも少なくありません。作成を専門家などに任せること自体は問題ありませんが、肝心の経営者自身が中身を説明できなければ、事業への理解が低いと判断され、計画の実現可能性そのものを疑われます。

2)伝わらないNGな説明を知る

融資担当者との面談は、書面だけでは伝え切れない熱意を補足できる絶好の機会です。以下のNGパターンを避け、担当者に確実に伝わる説明を心がけましょう。

1.具体性のない言葉に頼る

「革新的」「先進的」といった抽象的な表現では、担当者に事業の魅力が伝わりません。担当者はあらゆる業界の専門家ではないため、自社のビジネスモデルを具体的にイメージできる説明が不可欠です。

2. リスクや課題に触れていない

自社の強みだけをアピールし、競合参入やコスト高騰などのリスクに触れない説明は、「リスクを考慮していない」または「都合の悪い情報を隠している」という不信感を招きます。リスクと対策をセットで提示することが危機管理能力の証明になり、信頼感も高まります。

3.競合との違いが説明できない

自社と競合の違いを、単に「(ウチのほうが)品質が高い、サービスが丁寧」と力説しても、そうした曖昧な表現では融資担当者は納得しません。金融機関が求めているのは、自社の強みがどのような競争優位性を生み、事業の持続につながるのか、というつながりです。現時点で直接の競合がいない場合でも、今後の参入可能性を想定した見通しは必須です。競合調査が不十分だと、「市場のニーズ自体を把握できていない」と見なされかねません。

3)融資担当者が納得する説明のポイント

融資担当者は経営者の説明を基に、社内で融資の稟議(りんぎ)を通さなければならない立場です。上位者を納得させる稟議書を書けるよう、

担当者に「武器」を渡す意識を持つ

ことがポイントだそうです。

1.計画にデータを添える

事業計画の目標には、実績データに基づく根拠を添えましょう。担当者は「なぜその数字が達成できるのか」を上位者に説明する必要があるため、エビデンスのある資料は担当者の武器になります。例えば、

  • 売上目標であれば、直近の平均月商や前年度対比での推移
  • 顧客満足度であれば、アンケート結果や実際のリピート率

などの資料を添えるとよいでしょう。

融資担当者も、上位者への報告で活用できるレベルのデータがそろっている案件は、自信を持って説明ができますし、完成度の高い計画を提出してもらったなら、期待に応えたいという気持ちが高まるそうです。

2.収支計画はリスクも織り込む

収支計画は、売上・費用・利益の各項目が論理的につながり、「この前提なら達成可能」と担当者が納得できる水準に仕上げることが大切です。希望的観測より、堅実な根拠に基づく計画のほうが信頼を得られます。

審査では計画未達時のリスクシナリオも検証されます。返済を続けられる財務基盤や、経費削減などの経営判断ができることを計画に織り込んでおくことで、担当者からの信頼がより高まります。

以上(2026年4月作成)
(監修 石原法律事務所 弁護士 磯田翔)

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画像:日本情報マート

経営にも通じるサッカー選手の名言―クリスティアーノ・ロナウドはなぜストイックであり続ける?

「プロで生きる選手は、サッカーが上手くて当たり前」

クリスティアーノ・ロナウド氏は、言わずと知れた世界最高峰のサッカー選手です。レアルマドリードやマンチェスターユナイテッドなどのチームのスターとして、またポルトガル代表として数々の栄光を手にし、ファンを熱狂させました。

冒頭の言葉は、ロナウド氏がマンチェスターユナイテッド時代の恩師から学んだこととして語ったもので、この言葉の後には「サッカーを生業とするならば、サッカー界がどんなものか? どんな人たちに支えられているのか? プロのサッカー選手に何が求められているのか? これらのことを理解してこそ、エリート選手と呼ばれるんだ」という続きがあります。彼の徹底的なストイックさがうかがい知れますね。

そう、ロナウド氏と言えば「ストイック」。例えば、彼はチームメイトとの酒席や遊びにほとんど参加しません。ロナウド氏をよく知る選手は、「彼は酒を飲まない。彼にはわかっていた。彼を暴露したり、写真を撮ったり、なりふりかまわずそんなことをしてくる人がいることをね」と語ります。

また別の選手は、ロナウド氏にランチに誘われた際、「サラダと鶏のササミしか出てこなかったし、食べ終わったらすぐに練習に誘われた。彼はマシーンだからトレーニングを止めたくないんだ。」とからかいます。記者から「本当に1日に3000回も腹筋をしているのか」と問われれば、彼は事もなげに「本当にやっている。強く美しくあるために必要なことだから」と答えたことさえあります。

なぜ、そこまでストイックに……と疑問を禁じえませんが、冒頭の言葉と合わせて考えると、ロナウド氏は「世界中が期待する、プロのサッカー選手としての自分」を体現し続けるために、自分を律し、鍛え続けているように思えます。そして、それがロナウド氏にとっての「自分のありたい姿」でもあるからこそ、徹底してストイックになれるのです。ありたい姿が明確だからこそ、日々の鍛錬に迷いがない。逆に言えば、ストイックでいられるかどうかは、その人が「なりたい自分」をどれだけ鮮明に描けているかにかかっています。これは、経営者にとっても同じはずです。

では、皆さんにとって「経営者としてのありたい姿」とは何でしょうか。顧客に信頼される会社をつくりたい、地域になくてはならない存在でいたい、社員が誇りを持って働ける職場を育てたい。その答えは、経営者それぞれの胸の中にあるはずです。大切なのは、その姿を自分自身の言葉で描き、日々の判断や行動の拠りどころにすること。ありたい姿が定まっていれば、迷ったときの判断軸ができ、小さな積み重ねにも意味が生まれます。

「経営者として生きるならば、経営ができて当たり前」。その当たり前の水準を自ら高め続け、ありたい姿に向かってストイックに歩み続けること。それこそが、ロナウド氏の言葉が経営者に伝えてくれる、最も大切なことではないでしょうか。

出典:「Number735号」(文藝春秋社、2009年8月)

以上(2026年6月作成)

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2026年度版 税制改正早わかりハンドブック(2026年6月号)

ことしの3月31日、2026年度税制改正関連法案が参院本会議で可決・成立しました。政府は「物価高への対応」「強い経済の実現」「税負担の公平性確保」「グローバル・ミニマム課税の見直し」「防衛財源の確保」を基本軸とし、法人税制に関しては、大胆な設備投資の促進に向けた税制措置の創設、研究開発税制の拡充、賃上げ促進税制の見直し等を、所得税制に関しては、年収の壁の引上げ、NISAの拡充、極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置の見直し等を打ち出しています。

本冊子では、中小企業に影響を及ぼす内容を中心に、2026年度の税制改正について解説します。

※本冊子は、2026年4月30日時点の情報に基づいています。


【分かりやすい原価計算(2)】原価の区分~原価計算特有の費用の分け方

1 原価を分解すると見えてくる利益のカタチ

それでは前回と同様に、回転寿司店で利益や1皿当たりの原価を考えてみましょう。まず、月の利益がトントンになる売上高・販売数量(皿)はどれくらいでしょうか。考える際の前提条件は以下の通りです。

  • 販売単価(皿当たり):100円
  • 材料費(皿当たり):ネタは65円、シャリは5円
  • その他、料理人の人件費(1カ月当たり):21万円
  • 寿司ロボットのリース代(1カ月当たり):24万円

1皿食べてくれる(売れる)と、材料費を引いて、いくらもうかるでしょうか?

販売単価100円-材料費(65円+5円)=30円

何皿食べてくれると、人件費・家賃が賄えるでしょうか?

(人件費21万円+リース代24万円)÷1皿当たりの利益30円=15000皿

15000皿×100円=150万円

この150万円が月の利益がトントンになる売上高、いわゆる「損益分岐点売上高」です。仮に、1家族4人で、1人が10皿ずつ食べてくれるとすると、1家族40皿となり、

15000皿÷40皿=375家族

と計算できます。つまり、1日で、12家族(≒375家族÷31日)が来店してくれると利益がトントンになるということになります。

2 販売数で変わる1皿当たりの原価

1)15000皿売れた場合の、1皿当たりの原価

ネタやシャリの材料費は、1皿当たり(70円=ネタ65円+シャリ5円)がはっきり分かります。しかし、人件費やリース代はそう簡単にはいきません。人件費は1カ月当たり21万円、リース代は1カ月24万円かかります。これらの費用は、お寿司の売れ行きに関係なく、つまり何皿売れたかにかかわらず決まった額が発生します。このため、1皿当たりどれだけの費用がかかったかは正確には分かりません。

では、どうするかというと、ここでは1カ月15000皿売れれば利益がトントンになるということなので、この販売数で1カ月の人件費とリース代を割って、1皿当たりの費用を出すことにします。

  • 人件費(1皿当たり)は、21万円÷15000皿=14円
  • リース代(1皿当たり)は、24万円÷15000皿=16円

これで全ての原価について、1皿当たりの計算ができました。このように、原価計算や管理会計では、もともとある数値を目的に合わせて基準を設定し、加工することが必要になります。1カ月15000皿売れた場合の1皿当たりの原価は、

材料費70円+人件費14円+リース代16円=100円

となります。

2)30000皿売れた場合の、1皿当たりの原価

ネタやシャリの材料費(1皿当たり)は、30000皿のときも同じで、65円+5円=70円です。人件費とリース代は、それぞれ、

  • 人件費(1皿当たり)は、21万円÷30000皿=7円
  • リース代(1皿当たり)は、24万円÷30000皿=8円

となります。

販売数と原価の関係

このように、販売数によって1皿当たりの原価は変わってきます。そして、販売数が増えるほどに、1皿に割り当てられる費用が減って、原価が安くなります。これが、経済学の「規模の経済」につながる話です。

3 原価計算で使う費用の分け方1:直接費と間接費

上記を見ていただいて気付かれた方もいらっしゃるかもしれません。費用によって1皿当たりへの割り当て方が違ってきます。実は、原価計算を行うため、また、管理会計の手法を活用していくための準備として、それぞれの費用を大きく2つに分ける必要があります。

まず、製品との関係が直接紐づく費用です。これを、「直接費」と呼びます。もう1つは製品との関係が分かりづらく、紐づきが間接的にしか分からないような費用があります。これを「間接費」と呼びます。

直接費と間接費

原価を計算する場合、直接費は製品に直接割り当てることができます。これを、直課と呼びます。回転寿司の原価でいえば、ネタ、シャリが直接費に当たります。これらは、1皿ごとに費用を割り当てることができます。

一方で、間接費は製品との紐づきが明らかではないので、何かしらの基準で割り当てるしかありません。これを配賦と呼びます。回転寿司の原価でいえば、人件費やリース代がこれに当たります。先ほどは、販売皿数で1皿ごとに割り当てていきました。

人件費やリース代のいずれも、販売皿数には連動しないで決まった額が費用としてかかっています。このため、販売皿数によって1皿ごとの費用が変わってくるのです。

4 原価計算で使う費用の分け方2:変動費と固定費

もう1つ原価計算、管理会計に特有の費用の分け方があります。具体的には、費用について「売上と連動するかどうか」という点に注目します。

変動費と固定費の違い

まず、売上が増えたり減ったりすれば、それに連動して同じように増えたり減ったりする費用を「変動費」と呼びます。もう一つは、売上に連動しない費用です。つまり、売上が増えても減っても関係なく、決まった額だけかかってしまうような費用を「固定費」と呼びます。実務でも比較的使われる言葉ですので、皆さんも一度は聞いたことがあるかもしれません。

また、先ほどの直接費と間接費と似たような感じをうけられた方もいるかもしれません。このシリーズでは学問的な正確性は置いておいて、中小企業の原価計算・管理会計において、直接費と変動費、間接費と固定費は、同じと考えていきましょう。

5 変動費と固定費を分けるのは手間がかかる?

それでは、会社の損益計算書から費用を変動費と固定費に分ける方法を見ていきましょう。これには主に2つの方法があり、「勘定科目法」と呼ばれる方法と、「最小二乗法」と呼ばれる統計的な方法とがあります。

ここでは、基本であり、手間が少ない勘定科目法を見ていきます。なお、もう1つの統計的な方法は、エクセルで簡単にできて実務での使い勝手も良いものです。すでに勘定科目法に取り組んでいる方は、トライしてみるのもお勧めです。

変動費と固定費を分ける方法

勘定科目法は、試算表の中で、勘定科目によって、これは変動費、あれは固定費かなというふうに分けていく方法です。なかには同じ科目の中に売上に連動する項目と、連動しないで決まった額が発生するものの両方が含まれていることもあります。その場合は、さらに細かく、総勘定元帳まで遡って見ていくこととなります。

6 業種別の勘定科目の情報がとても参考になる

勘定科目法を使うにあたって、事業内容が理解できているベテランの方であれば、比較的簡単に変動費と固定費を分けていけるのではないでしょうか。ただ、経理経験の浅い方や事業内容の理解がまだまだであると、判断に迷ってなかなか作業が進まないことにもなりかねません。

そのようなときには、中小企業庁が出している変動費と固定費の分解の情報が参考になります。

業種別の変動費と固定費の分類

製造業、卸・小売業、建設業という3つの業種別に、勘定科目ごとに変動費と固定費に分けられています。

例えば、卸・小売業の場合に、売上原価は変動費、販売員給料手当は固定費となっています。また、卸売業では車両燃料費は50%が変動費で、残り50%が固定費というように、勘定科目の中に変動費と固定費が混在しているものにも対応しています。

さらに、これを見ると同業種の勘定科目ごとの変動費・固定費の傾向が分かるので、比較することで自分の会社の特徴が理解できるようになります。

7 100点満点はあり得ない。悩まずにやってみる!

ここで1つ大事なのが、変動費と固定費の分解はあまり悩みすぎないということです。

そもそも変動費と固定費というのは、100点満点の正解があるわけではないからです。例えば、工場の電気代や水道代なんかも、普通、製造量が拡大すれば増えていくはずです。しかし、実際は基本料金のようなものも含まれていて、決まった額発生する部分と、売上や製造活動と連動する部分に分かれています。これを準変動費と呼びます。

また、固定費の中にも、ある一定水準までは定額だけれど、それを超えると、もう1ランク上の金額で定額になるというような準固定費と呼ばれるものがあります。

準変動費と準固定費のグラフ

「まずはあまり悩まないでやってみる」というのが、中小企業の実務を知る立場からのアドバイスです。まずは分けてみて、実際に使ってみて、役に立つかどうか。活用した後で、調整していく進め方で十分といえます。

以上(2026年5月更新)

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【業種別データ】医薬品製造業の動向

2023年の医薬品製造業は事業所数800、従業者10万6,944人、製造品出荷額等9兆2,561億8,300万円(対前年度+3.1%)と全体は堅調に推移し、原薬・製剤がけん引しています。原薬は製造品出荷額約5,169億円(+17.1%)と大幅伸長した一方、生物学的製剤は2,845億円(97.0%)とやや減速、動物用医薬品は約392億円(49.3%)と大幅減少しました。現金給与や付加価値は増加したものの、営業利益率は約0.5%と低水準で、収益性改善が当面の課題です。

1 業界動向

1)業界全体

2023年の医薬品製造業の事業所数は800事業所(対前年比100.1%)、従業者数は10万6944人(対前年比101.7%)、製造品出荷額等は9兆2561億8300万円(対前年比103.1%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は134人(対前年比101.6%)、現金給与総額は7億3500万円(対前年比104.4%)、原材料使用額等は50億8700万円(対前年比101.1%)、製造品出荷額等は115億7000万円(対前年比103.0%)、付加価値額は57億7700万円(対前年比105.8%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は550万円(対前年比102.8%)、製造品出荷額等は8655万円(対前年比101.4%)、付加価値額は4322万円(対前年比104.2%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は44.0%(対前年比98.2%)、同付加価値額比率は49.9%(対前年比102.7%)、同現金給与総額比率は6.4%(対前年比101.3%)となっています。

【1650 医薬品製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

2)医薬品原薬製造業

2023年の医薬品原薬製造業の事業所数は120事業所(対前年比103.4%)、従業者数は1万1446人(対前年比106.0%)、製造品出荷額等は5169億4800万円(対前年比117.1%)となっています。

【1651 医薬品原薬製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

3)医薬品製剤製造業

2023年の医薬品製剤製造業の事業所数は525事業所(対前年比100.2%)、従業者数は8万4391人(対前年比102.1%)、製造品出荷額等は8兆879億700万円(対前年比103.1%)となっています。

【1652 医薬品製剤製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

4)生物学的製剤製造業

2023年の生物学的製剤製造業の事業所数は24事業所(対前年比100.0%)、従業者数は5224人(対前年比101.7%)、製造品出荷額等は2845億7100万円(対前年比97.0%)となっています。

【1653 生物学的製剤製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

5)生薬・漢方製剤製造業

2019年の生薬・漢方製剤製造業の事業所数は114事業所(対前年比97.4%)、従業者数は4744人(対前年比101.0%)、製造品出荷額等は3274億9900万円(対前年比104.2%)となっています。

【1654 生薬・漢方製剤製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

6)動物用医薬品製造業

2023年の動物用医薬品製造業の事業所数は17事業所(対前年比94.4%)、従業者数は1139人(対前年比60.3%)、製造品出荷額等は392億5800万円(対前年比49.3%)となっています。

【1655 動物用医薬品製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

2 品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)

品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)は次の通りです。

【品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

3 経営指標

【医薬品製造業の経営指標】

(出所:日本政策金融公庫「小企業の経営指標2024」)

(注1)( )内は、調査対象企業数です。

(注2)受取利息を加味できないなど調査項目に限界があるため、「黒字かつ自己資本プラス企業」でも損益分岐点比率が100%を超える場合があります。

以上(2026年3月更新)

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画像:Mariko Mitsuda

【財務分析】会社の良し悪しを判断する基本の指標20選

1 財務分析は「仮説→検証」の繰り返し

財務分析は、会社の状況について「仮説」を立て、それを検証するために行うものです。例えば、次のようなイメージです。

  • 「老朽化した設備があり、有形固定資産の効率性が落ちている?」と仮説を立てたら、有形固定資産回転率が低くないかを確認してみる
  • 「借入金が増加し、短期安全性が低下している?」と仮説を立てたら、流動比率や当座比率を比較してみる

この記事では、財務分析に使う代表的な20の分析指標を紹介します。ただし、上から順番に計算していく必要はありません。会社の状況で「収益性」「安全性」「生産性」のうち、どの要素を判断したいかによって、必要な指標を使いわけてみてください。

2 収益性に関する指標10選

1)総資本経常利益率

総資本経常利益率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど収益性は高くなります。

総資本経常利益率=経常利益÷総資本

また、総資本経常利益率の計算式は次のように分解することができ、収益性に影響を与える要因をより詳細に分析できます。

総資本経常利益率
=(経常利益÷売上高)×(売上高÷総資本)
=売上高経常利益率×総資本回転率

2)売上高総利益率

売上高総利益率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど収益性は高くなります。

売上高総利益率=売上総利益÷売上高

売上総利益は次の式で計算できます。

売上総利益=売上高-売上原価

売上原価とは、販売した商品の仕入れや製造にかかった費用です。例えば、小売業は販売した商品の仕入代金が該当します。また、製造業は製品の製造費用などが該当します。

3)売上高営業利益率

売上高営業利益率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど収益性は高くなります。

売上高営業利益率=営業利益÷売上高

営業利益は次の式で計算できます。

営業利益=売上総利益-販売費及び一般管理費

販売費及び一般管理費とは、販売部門や総務・経理といった管理部門などで発生する費用です。人件費・事務用品費・旅費交通費・広告宣伝費・支払家賃・減価償却費などが該当します。

4)売上高経常利益率

売上高経常利益率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど収益性は高くなります。

売上高経常利益率=経常利益÷売上高

経常利益は次の式で計算できます。

経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用

営業外収益とは、財務活動や投資活動など、本業以外で得た収益です。受取利息・受取配当金・有価証券売却益などが該当します。また、営業外費用とは、本業以外で発生した費用のことです。支払利息・為替差損・有価証券売却損・社債利息などが該当します。

5)ROE(Return On Equity、自己資本利益率)

ROEの計算式は次の通りです。この比率が高いほど効率性は高くなります。

ROE=税引後当期純利益÷自己資本

6)ROA(Return On Assets、総資本利益率)

ROAの計算式は次の通りです。この比率が高いほど効率性は高くなります。

ROA=税引後当期純利益÷総資本

7)総資本回転率

総資本回転率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど効率性は高くなります。

総資本回転率(回)=売上高÷総資本

なお、総資本回転率が悪化する例として、保養所などの売上獲得に直接貢献しない資産を多く所有していることなどが挙げられます。

8)売上債権回転率

売上債権回転率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど効率性は高くなります。

売上債権回転率(回)=売上高÷売上債権

売上債権は次の式で計算できます。

売上債権=受取手形+売掛金など

9)棚卸資産回転率

棚卸資産回転率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど効率性は高くなります。

棚卸資産回転率(回)=売上高÷棚卸資産

棚卸資産とは、販売されずに在庫として会社に残っている資産です。商品・製品の他に原材料・仕掛品なども含みます。棚卸資産回転率が低い場合、在庫過多や不良在庫の恐れがあります。

10)有形固定資産回転率

有形固定資産回転率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど効率性は高くなります。

有形固定資産回転率(回)=売上高÷有形固定資産

3 安全性に関する指標7選

1)流動比率

流動比率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど安全性は高くなります。

流動比率=流動資産÷流動負債

流動資産とは、現金預金・受取手形・売掛金・棚卸資産など1年以内に現金化が見込める資産です。また、流動負債とは、支払手形や買掛金など1年以内に支払う必要のある負債です。

流動比率は、短期的な支出を短期的な収入でどの程度補うことができるかが把握できる指標です。1年以内という基準で資産と負債の比率を見るわけですが、「1年以内に回収できるか、また、支払いが可能かどうか」までは考慮されていません。そのため、資産と負債が同一の状態である100%では安全とは言い切れず、200%以上が望まれます。

2)当座比率

当座比率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど安全性は高くなります。

当座比率=当座資産÷流動負債

当座資産は、流動資産から棚卸資産を除いた換金性の高い資産です。

当座資産=現金預金+受取手形+売掛金+有価証券など

受取手形・売掛金は、貸倒引当金を控除した後の値を用います。貸倒引当金とは、取引先の倒産などにより回収ができなくなる可能性がある金額を見積もった値です。

当座比率は流動比率よりも資産の回収可能性を考慮した指標であり、100%以上が望まれます。もし当座比率が低い場合、支払原資に対する短期借入金などの比率が大きいことが分かります。また、当座比率についても回収や支払いのタイミングは考慮されていません。流動比率が高いのに当座比率が低い場合、棚卸資産(在庫)が過剰となっている恐れがあります。

3)手元流動性比率

手元流動性比率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど安全性は高くなります。

手元流動性比率(カ月)=(現金預金+有価証券)÷月商

手元流動性比率は、短期的な安全性を見る際に信頼できる指標です。なぜなら、手元流動性は、現金預金とすぐに現金化できる有価証券だけで安全性を評価するからです。一概にはいえませんが、中小企業の場合は1.7カ月以上が望まれます。

4)固定比率

固定比率の計算式は次の通りです。この比率が低いほど安全性は高くなります。

固定比率=固定資産÷自己資本

固定資産とは、建物や土地など1年超にわたって使用される資産です。固定比率は、短期では回収の難しい固定資産が返済する必要のない自己資本によってどれくらい賄われているか、企業の長期的な安全性を見るための指標で、100%以下となることが望まれます。

5)固定長期適合率

固定長期適合率の計算式は次の通りです。この比率が低いほど安全性は高くなります。

固定長期適合率=固定資産÷(自己資本+固定負債)

固定負債とは、社債や長期借入金など1年以内に支払う必要がない負債です。固定長期適合率は、長期的な安全性を見るための指標ですが、自己資本に加えて固定負債も考慮していることが特徴です。固定長期適合率は、100%以下となることが望まれます。

6)自己資本比率

自己資本比率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど安全性は高くなります。

自己資本比率=自己資本÷総資本

自己資本比率は、総資本のうち、返済する必要がない自己資本が占める割合です。安全性の観点から見ると、自己資本比率は高ければ高いほど好ましくなります。ただし、負債で事業投資をして負債コスト以上の利益を上げている場合、自己資本比率が低くても問題はありません。そのため、収益性の観点から見ると、自己資本比率が高ければ良いというわけでもありません。

7)負債比率

負債比率の計算式は次の通りです。この比率が低いほど安全性は高くなります。

負債比率=負債÷自己資本

負債比率は、負債と自己資本を比較する指標です。負債比率は、自己資本比率を補完するものですが、安全性分析としては、自己資本比率もしくは負債比率のどちらか一方を分析すれば良いといえます。

4 生産性に関する指標3選

1)労働生産性

労働生産性の計算式は次の通りです。この比率が高いほど従業員1人当たりの生産性は高くなります。

労働生産性(円)=付加価値÷従業員数

労働生産性の計算式を次のように分解すると、生産性に影響を与える要因の詳細が見えてきます。

労働生産性(円)
=(売上高÷従業員数)×(付加価値÷売上高)
=1人当たり売上高×付加価値率

2)設備生産性

設備生産性の計算式は次の通りです。この比率が高いほど資産当たりの生産性は高くなります。

設備生産性=付加価値÷有形固定資産

設備生産性の計算式を次のように分解すると、生産性に影響を与える要因の詳細が見えてきます。

設備生産性
=(売上高÷有形固定資産)×(付加価値÷売上高)
=有形固定資産回転率×付加価値率

3)労働分配率

労働分配率の計算式は次の通りです。この比率が低いほど生産性は高くなります。

労働分配率=人件費÷付加価値

労働分配率が高ければ、労働生産性が低いか、余剰人員を抱えている可能性があります。

以上(2026年6月更新)
(監修 辻・本郷税理士法人 税理士 安積健)

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【業種別データ】油脂加工製品・石けん・合成洗剤・界面活性剤・塗料製造業の動向

油脂加工製品・石けん・合成洗剤・界面活性剤・塗料製造業は、事業所数・従業者数とも横ばいで、製造品出荷額は3.26兆円と微増し、付加価値額も伸びる一方、原材料使用額はやや減少し、収益性は持ち直しつつあります。内訳を見ると、脂肪酸・硬化油・グリセリンや界面活性剤、塗料、洗浄剤・磨用剤などは出荷額が増加する一方、石けん・合成洗剤や印刷インキ、ろうそくは減少傾向です。生活関連・工業用途向け需要を背景に全体としては底堅いが、品目による明暗が分かれ、需要構造の変化への対応が課題となっています。

1 業界動向

1)業界全体

2023年の油脂加工製品・石けん・合成洗剤・界面活性剤・塗料製造業の事業所数は1035事業所(対前年比99.7%)、従業者数は4万2064人(対前年比99.9%)、製造品出荷額等は3兆2571億3000万円(対前年比100.7%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は41人(対前年比100.2%)、現金給与総額は2億3100万円(対前年比102.7%)、原材料使用額等は17億4500万円(対前年比97.6%)、製造品出荷額等は31億4700万円(対前年比101.0%)、付加価値額は12億3000万円(対前年比103.7%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は569万円(対前年比102.6%)、製造品出荷額等は7743万円(対前年比100.9%)、付加価値額は3025万円(対前年比103.5%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は55.4%(対前年比96.6%)、同付加価値額比率は39.1%(対前年比102.6%)、同現金給与総額比率は7.3%(対前年比101.7%)となっています。

【1640 油脂加工製品・石けん・合成洗剤・界面活性剤・塗料製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

2)脂肪酸・硬化油・グリセリン製造業

2023年の脂肪酸・硬化油・グリセリン製造業の事業所数は34事業所(対前年比103.0%)、従業者数は1053人(対前年比108.3%)、製造品出荷額等は725億2800万円(対前年比114.1%)となっています。

【1641 脂肪酸・硬化油・グリセリン製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

3)石けん・合成洗剤製造業

2023年の石けん・合成洗剤製造業の事業所数は238事業所(対前年比98.8%)、従業者数は1万1703人(対前年比100.0%)、製造品出荷額等は9680億7800万円(対前年比96.8%)となっています。

【1642 石けん・合成洗剤製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

4)界面活性剤製造業(石けん、合成洗剤を除く)

2023年の界面活性剤製造業(石けん、合成洗剤を除く)の事業所数は76事業所(対前年比100.0%)、従業者数は4573人(対前年比94.1%)、製造品出荷額等は4628億7600万円(対前年比102.0%)となっています。

【1643 界面活性剤製造業(石けん、合成洗剤を除く)】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

5)塗料製造業

2023年の塗料製造業の事業所数は462事業所(対前年比100.9%)、従業者数は1万7483人(対前年比103.4%)、製造品出荷額等は1兆3351億2000万円(対前年比105.2%)となっています。

【1644 塗料製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

6)印刷インキ製造業

2023年の印刷インキ製造業の事業所数は87事業所(対前年比94.6%)、従業者数は4658人(対前年比91.3%)、製造品出荷額等は2987億6100万円(対前年比89.7%)となっています。

【1645 印刷インキ製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

7)洗浄剤・磨用剤製造業

2023年の洗浄剤・磨用剤製造業の事業所数は111事業所(対前年比100.0%)、従業者数は2153人(対前年比101.3%)、製造品出荷額等は1106億6500万円(対前年比106.7%)となっています。

(図表7)【1646 洗浄剤・磨用剤製造業】

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8)ろうそく製造業

2023年のろうそく製造業の事業所数は27事業所(対前年比100.0%)、従業者数は441人(対前年比99.3%)、製造品出荷額等は91億300万円(対前年比94.9%)となっています。

【1647 ろうそく製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

2 品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)

品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)は次の通りです。

【品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

3 経営指標

【油脂加工製品・石けん・合成洗剤・界面活性剤・塗料製造業の経営指標】

(出所:日本政策金融公庫「小企業の経営指標2024」)

(注1)( )内は、調査対象企業数です。

(注2)受取利息を加味できないなど調査項目に限界があるため、「黒字かつ自己資本プラス企業」でも損益分岐点比率が100%を超える場合があります。

以上(2026年3月更新)

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画像:Mariko Mitsuda

ルール違反ではないが態度が悪い社員のマネジメント

1 社員のための取り組みがかえってマイナスに……?

デジタル技術の進歩による市場環境の変化、少子高齢化に伴う労働力不足など、日本国内のビジネス環境は大きく変わってきています。そして、多くの経営者が「このままではマズい。社員がもっと力を発揮できる会社にしなければ」と、働き方改革などに取り組んできました。

テレワークやフレックスタイム制で働く場所・時間を柔軟にし、若手にチャンスを与えるために仕事の権限を委譲し、なるべく本音で話せるようコミュニケーションにも気を配る……。ところが残念なことに、そんな経営者の苦労も知らず、むしろこうした取り組みをきっかけに態度が悪くなる社員が時折出てきます。例えば、次のような社員です。

  • 働き方が自由になったら、勤務態度までルーズに。服装もマナーも悪化している
  • テレワークに慣れ、周囲に無関心に。他の人の仕事は手伝わない。挨拶もしない
  • 権限委譲した途端、自分勝手に。誰にも相談せずに仕事を進めてトラブルを起こす
  • 上司は優しくて当たり前だと勘違い。少しでも注意されると機嫌が悪くなる
  • 今以上の働きやすさをさらに会社に要求。要求が聞き入れられないとやる気を失う

経営者としては、働きやすい環境を整えた以上、社員にもそれに見合う働きをしてほしいところです。しかし実際には、その優しさに甘えるだけで期待に応えてくれない社員もいるのが現実です。就業規則の懲戒事由(無断欠勤・命令違反など)に当たる行動があれば懲戒処分も選択肢になりますが、「態度が悪い」というだけでは、それも難しいのが実情です。

腹が立つことこの上ないですが、もしかしたら社員が生意気になった原因は、経営者が

「何を実施するか」にとらわれ、「なぜ実施するか」をおざなりにしてしまったこと

にあるかもしれません。「なぜ働き方改革に取り組むのか」「社員に何を期待しているのか」といった経営者の思いを十分に伝えないまま、取り組みだけが先行してしまった結果、社員は会社の施策を表面的にしか捉えられなくなります。いわば「仏作って魂入れず」の状態です。

この状況を打開するには、今一度、経営者の思いを社員にきちんと届ける必要があります。以降では、働き方改革などをきっかけに態度が悪くなってしまった社員への、効果的な思いの伝え方をご紹介します。

2 社員が生意気になるパターンは2つある

対処法をお伝えする前に、まず押さえておいてほしいことがあります。社員が態度を悪化させるパターンには、大きく次の2つがあるという点です。

【パターン1:「線引きの誤解」タイプ】

本人なりに働き方改革などに適応しようとしているが、「ここまでなら許される」という線引きが間違っていて、結果として生意気に見えてしまっているタイプです。

【パターン2:「性格の顕在化」タイプ】

働き方改革など環境の変化を機に、隠れていた性格などが顕在化して、本当に生意気になってしまっているタイプです。

この違いを「働き方が自由になったら、勤務態度までルーズに。服装もマナーも悪化している」というケースで考えてみましょう。

1)パターン1:「線引きの誤解」タイプ

パターン1の社員の場合、服装やマナーが悪化しているのは、「ここまでならフランクにいっても大丈夫だろう」という線引きが誤っているだけの可能性があります。もともと働き方改革などに適応しようという気はあるので、「自分は間違っていたんだ」と気付けば考えを改めてくれることが期待できます。ですから、経営者が考えるべきは、

パターン1の社員に焦点を当てて、働き方改革などに関する自身の思いを積極的に発信すること

です(こちらは第3章で具体的な方法を紹介します)。

2)パターン2:「性格の顕在化」タイプ

パターン2の社員の場合、働き方の自由化や上司の監視が緩まったことで、もともと持っていた自分勝手な性格や怠惰な面が顕在化してしまった可能性があります。誰しも多少はそういった部分を持っているものですが、根本的な性格はそう簡単には変えられません。

ただし、「最初から諦める」のは早計です。まずはパターン1と同様に思いをしっかり伝え、行動基準(第4章で後述するジョブディスクリプションなど)を明示した上で改善を求める指導を行いましょう(なお、指導の内容は必ず記録に残すことがポイントです)。

それでも改善が見られない場合は、「最悪、分かり合えなくても仕方がない」とある程度割り切りながら、仕事に支障が出ない環境を整えること(上司の目の届くオフィスで業務させるなど)や、配置転換・業務範囲の見直しなども選択肢として検討しましょう。

3 大きなメッセージと小さなつぶやきを組み合わせる

経営者が自身の思いを社員に伝えようとするとき、まず思い浮かぶのは「朝礼」でしょう。社員が一堂に会するタイミングで、例えば次のようなメッセージを届けるイメージです。

「これまで働き方改革のため、さまざまな取り組みを実施してきました。ただ、それは『皆さんを甘やかすため』ではなく、『皆さんがもっと力を発揮できるようにするため』です。皆さんは今、本当に力を発揮できているといえますか? 会社が働きやすさを提供する代わりに、皆さんは何をしてくれますか?」

こうした問いかけをするだけでも、多くの社員は一旦、自分の言動を振り返ろうとするでしょう。ただ、このような「大きなメッセージ」はその場では心に響いても、時間がたつにつれて印象が薄れていくものです。

そこでお勧めしたいのが、全体への発信と並行して行う「小さなつぶやき」の活用です。具体的には、

社員全員が閲覧できるSNSに「社長チャンネル」などを設け、経営者がうれしかったこと・疑問に感じたことなどを日々こまめにつぶやく

というアプローチです。例えば、

  • 「クライアントを訪問した際、受付の方の対応がとても心地よかった。やっぱり笑顔って大事!」
  • 「プライベートは大事! でも、仮に3人で20分残業すれば終わる業務を、1人でやろうとしている人がいたら、自然とその人に手を差し伸べられる社員が私の理想です」

といった、日々の業務に関連した等身大のつぶやきは、社員も情景を思い浮かべやすく、納得感が生まれやすいものです。

ただし、全体への発信は効果的ですが、問題が見られる社員が「自分のことだ」と気づかないケースも少なくありません。態度の悪化が顕著な社員とは、個別に1on1の面談を設定し、具体的な行動の事実をもとに「こういう場面でこう感じた」「こう動いてほしい」と直接伝えることが重要です。抽象的な「態度が悪い」という指摘では伝わりにくいため、事実ベースで丁寧に話すよう心がけましょう。

4 職務記述書(ジョブディスクリプション)も活用する

職務記述書(ジョブディスクリプション)とは、

社員が担当する業務内容・その難易度・必要なスキルなど、職務内容をまとめた書類

のことです。専門職採用や中途採用の場面でよく使われますが、すでに在籍している社員の職務内容が配置転換や雇用形態の変更などで変わった際にも活用できます。

職務記述書は、あらかじめ特定の職務をこなせる人材を採用する「ジョブ型雇用」の考え方に基づいており、

職務記述書に記載された職務をこなせることが、社員としての最低条件

になります。このことを社員に丁寧に説明した上で、「経営者が社員に何を期待しているのか」をジョブディスクリプションに明文化すると、社員を経営者の理想とする方向へ自然と引っ張ることができます。

ただし、職務記述書は「経営者が一方的に作成して渡す」だけでは、社員の反発を招くことがあります。作成後は必ず社員本人と内容を確認する場を設け、

双方が合意した上で運用を開始する

ことが大切です。話し合いのプロセスを経ることで、社員に納得感が生まれ、行動変容につながりやすくなります。

具体的には職務記述書に「期待される特性」などの欄を設けることが考えられます。次の職務記述書は、アプリ開発を行う会社がシステムエンジニアを募集する場合の例です。

職務記述書:システムエンジニア

以上(2026年5月更新)

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画像: metamorworks-shutterstock