私傷病休職規程は、一般的にはどのように定めればいいですか。

QUESTION

私傷病休職規程は、一般的にはどのように定めればいいですか。

ANSWER

以下のとおりです。

解説

私傷病での休職は、欠勤が長期に渡り一定の期間を超えた場合に、勤続年数および疾病により3ヶ月から2~3年、事故休職では1ヶ月から3ヶ月の期間を定めている企業が多くなっています。
また、休職として取り扱うまでの欠勤期間は、欠勤期間が長引くかどうかの判断基準として1ヶ月から3ヶ月の期間を定めるのが一般的です。
休職期間の延長規定を設ける企業も、少数ですがあります。この場合は、「会社が特に必要と認めた場合には」等と限定することが望ましいです。
休職期間を勤続年数に算入するか否かは、休職事由ごとに決めておきます。私傷病休職の場合は、一般に算入しません。
賃金その他(社会保険料等)について、一般と異なる取扱いをする場合は、賃金規程等の別規程に整理しておきます。
私傷病休職期間については、一般的には無給とする会社が多くなっています。社会保険料の労働者分も、本人に負担させています。
復職については、医師の診断書および復職願を提出させる会社が一般的です。そして、「同じ事由でさらに休職した場合、休職した期間は中断しない」との規定も有効です。
そして、「休職期間が満了した時点で休職事由が存続しているときは、退職とする」という規定も必要です。

※本内容は2026年2月28日時点での内容です。
 <監修>
   社会保険労務士法人中企団総研

No.95060

画像:Mariko Mitsuda

障害者雇用率を下回る場合、納付金の徴収があると聞きましたが。

QUESTION

障害者雇用率を下回る場合、納付金の徴収があると聞きましたが。

ANSWER

法定雇用障害者数に不足する障害者数に応じて1人につき原則月額5万円の障害者雇用納付金を納付しなければなりません。

解説

障害者の雇用に伴う事業主の経済的負担の調整を図るとともに、全体としての障害者の雇用水準を引き上げることを目的に、雇用率未達成企業(常用労働者100人超)から不足する障害者数(障害者法定雇用率2.3%(令和3年3月以降)(令和3年3月前は2.2%)に基づく人数)に応じて1人につき月額5万円の障害者雇用納付金を徴収しています。
一方、常時雇用している労働者数が100人を超える事業主で障害者雇用率を超えて障害者を雇用している場合は、その超えて雇用している障害者数に応じて1人につき月額2万7千円の障害者雇用調整金が支給されます。常用労働者100名以下で雇用障害者数が一定数を超えている(いわゆる“障害者多数雇用中小事業主”である)場合は、その一定数を超えて雇用している障害者の人数に21,000円を乗じて得た額の報奨金が支給されます。

※本内容は2026年2月28日時点での内容です。
 <監修>
   社会保険労務士法人中企団総研

No.99170

画像:Mariko Mitsuda

賃金の過払いを翌月に清算してもいいですか。

QUESTION

賃金の過払いを翌月に清算してもいいですか。

ANSWER

翌月に清算することは可能です。

解説

行政解釈は、前月分の過払賃金を翌月分で清算する程度は賃金それ自体の計算に関するものであるから、労働基準法24条(賃金の全額払の原則)の違反とは認められないとしています。
また最高裁判例においても過払賃金の清算は、合理的理由があり、労働基準法24条(賃金の全額払の原則)に反しないとしています。
ただし、判例では、清算の時期は過払い後2~3ヶ月程度の期間内、清算金額は賃金水準の高低等によりケース・バイ・ケースであり、事前に労働者に予告したうえ、労働者の経済生活の安定を脅かすおそれのない場合について事後の賃金との相殺による清算が許されるとしています。

※本内容は2026年2月28日時点での内容です。
 <監修>
   社会保険労務士法人中企団総研

No.92050

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賞与支給日直後に退職したいとの申し出を拒否できますか。

QUESTION

賞与支給日直後に退職したいとの申し出を拒否できますか。

ANSWER

拒否できません。

解説

労働者が一方的に使用者に通告して退職する場合は、通告の翌日から起算して2週間たつと使用者の承諾がなくても効力が発生します。このように労働者には退職の自由が認められていますので、賞与支給日直後に退職したいとの申し出も拒否することはできません。
民法627条1項によれば、期間の定めのない契約はいつでも解約の申入れをすることができ、2週間経過すると効力が発生すると定めているからです。

※本内容は2026年2月28日時点での内容です。
 <監修>
   社会保険労務士法人中企団総研

No.97090

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営業秘密の漏洩を防ぐためにライバル会社への転職対策を講じることができますか。

QUESTION

営業秘密の漏洩を防ぐためにライバル会社への転職対策を講じることができますか。

ANSWER

講じることができます。

解説

まず、就業規則や雇用契約書の中に、社員が会社の営業秘密について、秘密保持義務を負うことを明記します。
次に、制裁に関する規定および競業避止に関する契約書を準備します。

  • 1.在職中に営業秘密を漏洩した場合は、それを理由として懲戒解雇できるとする。
  • 2.在職中に営業秘密を漏洩した場合は、雇用契約上の債務不履行を理由として、その社員に対し損害賠償請求もできるとする。
  • 3.「退職後に同業他社に就職したときは、退職金の半額を返金する」と退職金規程に盛り込む。
  • 4.営業秘密を管理する立場にある幹部社員または取締役との間で退職後も2年間は、競合他社で就業(役員就任を含む)しないという特別の契約を結ぶ。

その際、以下の妥当性を判断し適正でないものは裁判上無効となることもあるので注意が必要です。
 (a)競業避止義務の対象職種・制限期間・地域範囲の妥当性
 (b)退職者の在職者の地位・職種の妥当性
 (c)労働者の競業行為の背信性の程度
 (d)代償措置が設けられているか
《参考》三晃社事件(最高裁判例昭和52年8月9日判決)
中小の広告代理業で、従業員と顧客との個人的なつながりが強く、その従業員が同業他社に移ることによって、営業上の不利益が生じる場合には、退職後一定期間内に競合他社に就職したときに、退職金を減額支給するとの扱いを合法としました。

※本内容は2026年2月28日時点での内容です。
 <監修>
   社会保険労務士法人中企団総研

No.99110

画像:Mariko Mitsuda

年俸制適用者にも残業代を支払わなければなりませんか。

QUESTION

年俸制適用者にも残業代を支払わなければなりませんか。

ANSWER

年俸制でも、管理監督者に該当しない限り、労働時間を管理し、残業代を支払う義務があります。

解説

年俸制の労働者であっても管理監督者に該当する場合を除き、残業時間に応じた割増賃金の支払いが必要です。使用者は、この場合も始業・終業時刻の把握をしなければなりません。
通達では、

  • 年俸に時間外労働等の割増賃金等が含まれていることが労働契約の内容であることが明らかであって、
  • 割増賃金相当部分と通常の労働時間に対応する賃金部分とに区分することができ、かつ、
  • 割増賃金相当部分が法定の割増賃金額以上支払われている

場合は、労働基準法第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)に違反しないと解されるとしています。

また、あらかじめ、年間の割増賃金相当額を各月均等に支払うこととしている場合において、各月ごとに支払われている割増賃金相当額が、各月の時間外労働等の時間数に基づいて計算した割増賃金額に満たない場合も、労働基準法第37条に違反するとしています。

つまり、割増賃金を含めて年俸を決めていても、各自の各月の残業時間をきちんと把握する必要があります。

たとえ、管理監督者であっても、深夜の時間帯(午後10時から午前5時)に労働させる場合は、深夜業の割増賃金を支払わなければなりません。

なお、「時間外労働の罰則付き上限規制」が平成31年4月1日施行(中小企業:令和2年4月1日施行)され、1か月及び1年に残業させることができる時間数の上限と罰則が法律に規定されました。

※本内容は2026年2月28日時点での内容です。
 <監修>
   社会保険労務士法人中企団総研

No.92020

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自転車の青切符制度導入と運転の心がけ(2026/3号)【交通安全ニュース】

※ボタンを押すとSOMPOリスクマネジメント(株)のサイトへ移動します。

活用する機会の例

  • 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
  • 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
  • マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など

自転車は、エコで健康増進にもつながる身近な移動ツールです。しかし、令和6年の自転車乗用中の死亡・重傷事故件数は7000件を超えており、自転車運転者のルール違反も社会的な問題となっています。

令和8年4月から自転車運転者を対象に「青切符」が導入されることから、今月は、導入の背景、違反例、そして交通安全に向けた取り組みについて解説します。

自転車の青切符制度導入と運転の心がけ

青切符導入の背景

令和6年に発生した自転車乗用中の死亡・重傷事故のうち、約75%は自転車側に法令違反があります(図1) 。過去10年間の自転車違反の検挙数は増えていますが(図2) 、従来の制度では違反しても不起訴となることが多く、責任追及が不十分でした。

「青切符」制度の導入によって検挙後の手続きが変わり、違反者に対する実効性のある責任追及が可能となります。

図1.自転車乗用中の死亡・重傷事故(令和6年)における自転車による法令違反の有無

図1.

出典:警察庁「自転車ルールブック」より当社作成

図2.自転車違反取締検挙推移

図2.

出典:警察庁「自転車の交通指導取締り状況」より当社作成

交通反則通告制度(青切符)とは

青切符対象となる違反例

令和8年4月から導入される青切符制度で対象となる主な交通違反は、次の通りです。

対象は16歳以上の運転者です。

青切符対象となる違反例

青切符対象となる違反例

警察庁は、制度改正の趣旨や安全・安心な自転車の利用に役立ててもらうことを目的として、「自転車を安全・安心に利用するために-自転車への交通反則通告制度(青切符)の導入-(自転車ルールブック)」を公開しています。

https://www.npa.go.jp/news/release/2025/20250902001.html

自転車事故をなくそう

青切符制度は、自転車の交通ルールの遵守を促し、事故を減らすための重要な一歩です。

一人一人が交通ルールを守り、安全運転を心がけることが自転車事故をなくす取り組みとなります。

自転車を運転する際の心がけ

車両の運転者であるという意識を持ち、基本ルール「自転車安全利用五則」を心がけましょう。

  • 「車道が原則、左側を通行 歩道は例外、歩行者を優先」
  • 「交差点では信号と一時停止を守って、安全確認」
  • 「夜間はライトを点灯」
  • 「飲酒運転は禁止」
  • 「ヘルメットを着用」

自動車を運転する際に特に注意する時間帯・場所

【時間帯】朝夕の通勤・通学時間帯、 日没前後の薄暗い時間帯
【場 所】自転車関連事故が実際に発生している、または発生が懸念される地区や路線

以上(2026年3月)

sj09170
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カスハラ防止措置が2026年10月1日から義務化! 悪質クレームを退ける4つのポイント

1 2026年10月1日から「カスハラ」の防止措置が義務化!

カスハラ(カスタマーハラスメント)とは、

顧客などが、社員に悪質な嫌がらせ(土下座の強要など)をすること

です。「お客様は神様です」などというように、日本の会社は昔から、顧客を大切にする傾向がありますが、一方で「土下座などを強要されそれに応じることが、本当に顧客を大切にすることなの?」という当然の疑問があり、実際にカスハラが社会問題化している現実があります。

こうした状況から、改正労働施策総合推進法により、

「1.カスハラの定義」が明確化され、さらに2026年10月1日から「2.一定のカスハラ防止措置の実施」が会社に義務付けられる

ことになりました。

1.カスハラの定義

次の3つを全て満たす場合、カスハラになることが定められました。

  • 顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行う
  • 社会通念上許容される範囲を超えた言動により、
  • 社員の就業環境を害すること

2.一定のカスハラ防止措置の実施

通常のパワハラやセクハラと同様に、カスハラについても次のような防止措置が義務付けられることになりました。

  • カスハラを許さない旨の方針等の明確化、周知・啓発
  • カスハラに関する社員からの相談体制の整備・周知
  • カスハラ事案が発生した後の迅速かつ適切な対応・抑止のための措置
■厚生労働省「カスタマーハラスメント及び求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が事業主の義務となります!」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html
 

国が法律による規制に踏み切ったことで、会社においてもこれまで以上のカスハラ対策が求められることになるでしょう。大切なのは、

正当なクレームには真摯に、理不尽なカスハラには毅然と対応すること

です。

この記事では、厚生労働省が公表している「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」をもとに、カスハラ対応のポイントとして、

  • どのような言動がカスハラになるのかを押さえる
  • 類型別に大まかな対応方針を決める
  • 社員は事実を正確に会社に報告する
  • 上司または経営者が具体的な対応を決める

の4つを紹介します。

■厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」■
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000915233.pdf

2 どのような言動がカスハラになるのかを押さえる

厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、

顧客などからのクレームのうち、要求の内容が妥当でない、または要求の実現方法が社会通念上相当でない言動で、就業の妨げになるものがカスハラになり得る

とされています。

同マニュアルによると、カスハラになる可能性がある言動の例は次の通りです。

カスハラになる可能性がある言動の例

法的には、カスハラは

民法の「不法行為」(故意・過失によって他人の権利や法律上の利益を侵害する行為)

に該当する可能性があります。また、言動の内容によっては、刑法(傷害罪、脅迫罪、強要罪、名誉毀損罪、不退去罪など)や軽犯罪法が適用されることもあります。逆に図表1のような言動に当たらない(要求の内容・実現方法に問題がない)場合、カスハラではなく正当なクレームということになります。より詳細なカスハラの具体例を知りたい場合、こちらもご参照ください。

■厚生労働省「第9回雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会」(参考資料1「カスタマーハラスメント事例集」を参照)■
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40906.html

3 類型別に大まかな対応方針を決める

正当なクレームならば誠実に対応を検討する必要がありますが、カスハラの場合、要求には応じず、法的措置なども含めて厳正に対処します。前述した通り、カスハラは幾つかの類型に分類できるので、大まかな対応方針は事前に決めておくことができます。

カスハラの類型に応じた対応方針の例は次の通りです。

対応方針

これらは大枠の方針なので、実際にどのように対応すべきかは、

  • カスハラが初めて行われたのか、繰り返し行われているのか(初めての場合、内容によっては注意だけで済ませることも検討)
  • 対応した社員に落ち度はなかったのか(正当なクレームだったのに、社員の対応不十分でカスハラに発展した場合、社員の対応については謝罪が必要)

なども考慮して慎重に判断します。そのためには、カスハラ対応における社内の役割分担を明確にする必要があります。次章以降で見ていきましょう。

4 社員は事実を正確に会社に報告する

顧客などから電話や対面などで会社に対してクレームがあった場合、まずは窓口の社員が初期対応に当たります。ここで社員に求められるのは、

顧客などを不用意に刺激しないよう注意しつつ、会社が顧客などへの対応を検討するために必要な情報を集めること

です。ポイントは次の2つです。

  • 限定的な謝罪:不快感を与えたことについてだけ謝罪する
  • 事実の把握:顧客などの要求の内容や問題が発生した経緯を正確に把握する

1.では、顧客などに対し、「このたびは不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ありません」など、不快感を与えたことだけを謝ります。正確に状況が把握できていない段階では、不用意に会社の非を認めたり、相手の要求に応じたりするべきではありません。

2.では、顧客などの住所・名前・連絡先などを確認した上で、話を一通り聞き、要求の内容や問題が発生した経緯を確認します。事実を正確に把握するため、必要に応じて会話を録音するなどして証拠に残します。また、現場対応は1人で行わず、可能な限り複数名で対応するのがよいでしょう。

1.と2.が完了したら、社員は顧客などから確認した情報を上司に報告し、今後の対応について相談します。ただし、身体的な攻撃や性的な言動を受けたなど緊急性が高いときは、1.と2.の状況に関係なく、即座に上司に報告します。

5 上司または経営者が具体的な対応を決める

カスハラに関する社内対応の流れは次の通りです。

社内対応の流れ

上司は社員から、顧客などの要求の内容や問題が発生した経緯について話を聞き、

カスハラであれば、その内容に基づいて顧客などへの具体的な対応を決定

します。ただし、

  • 顧客などが重要な取引先である
  • 弁護士、警察などに相談すべき案件である(訴訟手続が必要、犯罪行為に当たるなど)

などといった場合は、必要に応じて経営者が判断します。詳細が決まったら、状況に応じて適切な人が対応します。顧客などが取引先(会社)の場合は、社内にハラスメント相談窓口があるでしょうから、必要に応じて窓口担当者とも連携しましょう。

なお、社員がすでにカスハラによって精神的ショックを受けている場合、顧客などから引き離す、医師による面談を実施するといった措置も併せて検討します。

この他、上司または経営者が具体的な対応を決定したり、社員が前述の初期対応を行ったりする上で支障がないよう、定期的に社内で対応ルールの教育・研修を実施するとよいでしょう。

以上(2026年2月更新)

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法改正で2026年10月1日から対策義務化! 就活ハラスメントにどう立ち向かう?

1 2026年10月1日から「就活セクハラ」の防止措置が義務化!

「就活ハラスメント」とは、

  • インターンシップやOB・OG訪問などの後、食事やデートに執拗に誘う
  • 「内定を出すから」と言って、他社の選考を辞退するよう要求する

などの就活生に対するセクハラ(セクシュアルハラスメント)やパワハラ(パワーハラスメント)のことです。

会社は、職場におけるハラスメントについて一定の防止措置を講じる義務を負っていますが、就活ハラスメントについてはこれまで、「(ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化等をする際に)同様の方針を合わせて示すのが望ましい」というレベルにとどまっており、各社の対応にバラツキがありました。

しかし、改正男女雇用機会均等法により

2026年10月1日から、いわゆる「就活セクハラ(後述)」について、セクハラを防止するために必要な措置を講じることが義務化

されることになりました。就活生を対象とするハラスメント規制も強化されつつあるのです。

また、就活生は応募する会社について知人と情報交換したり、SNSのグループに参加したりしています。「自社が就活ハラスメントをしている」との情報が出回ったら、そのような会社に応募しようとする学生はいなくなってしまうかもしれません。

ハラスメントにもいろいろありますが、今、経営者が注目すべきものの1つに就活ハラスメントがあるのです。改めてリスクや防止策を紹介します。

■厚生労働省「カスタマーハラスメント及び求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が事業主の義務となります!」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html
■厚生労働省「今すぐ始めるべき就活ハラスメント対策!」■
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/syukatsu_hara/enterprise/

2 就活ハラスメントの4つの種類

1)就活セクハラ(就活生に対するセクシュアルハラスメント)

就活生に対する身体的な接触や言葉による性的な嫌がらせです。

  • 不必要に体に触る
  • 「内定を出すから」と言って性的な関係を要求する
  • 性的な冗談を言う、恋愛経験などを尋ねる
  • オンラインの採用面接で、体全体や部屋の様子などを見せるよう要求する
  • インターンシップやOB・OG訪問などの後、食事やデートに執拗に誘う

2)オワハラ(就活終われハラスメント)

就活生の内定辞退を回避するための嫌がらせです。

  • 「内定を出すから」と言って、他社の選考を辞退するよう強要する
  • 他社の選考と日程が重なることを知りながら、内定者懇親会に連れ出すなど、他社での就活を妨害する
  • 内定を辞退しようとした場合、「ふざけるな」「嘘つきだ」と罵る。または「訴える」「内定を辞退するやつだと他の会社に言いふらす」などの発言をする

3)圧迫面接

就活生のストレス耐性や状況判断能力を試すため、採用面接で必要以上に否定的な発言をしたり、嫌な態度を取ったりする嫌がらせです。

  • 採用担当者の質問に就活生が回答した際、正当な回答かどうかに関係なく否定する
  • 「それで?」「理由は?」といった発言を必要以上に繰り返し、回答をできなくさせる
  • 就活生の適性に関係なく、「ウチの会社には向いていない、通用しない」と言う
  • 就活生の発言中にため息をつく、携帯電話を触るなど、あからさまに嫌な態度を取る

4)その他

1)から3)以外の就活ハラスメントとしては、パワハラを含め、次のようなものがあります。

  • 「男のくせに覇気がない」「女はすぐ辞めるから困る」などと、差別的な発言をする
  • 結婚したり妊娠したりした場合に、会社を辞めるかどうかを聞く
  • 内定した学生に、内定者でつくるSNS交流サイトに毎日の書き込みを強要する。書き込みをしないと「やる自信がないなら辞退しろ」など、威圧的な態度を取る
  • インターンシップに参加した学生に対し、人格を否定するような暴言を吐く

3 就活ハラスメントのリスク

1)就活ハラスメントは民法の「不法行為」になり得る

就活ハラスメントによって、就活生が精神的な苦痛を受けた場合、

民法の「不法行為」(故意・過失によって他人の権利や法律上の利益を侵害する行為)

が成立する可能性があります。ハラスメントを行った社員は損害賠償を請求される恐れがあり、会社も就活生から使用者責任を問われ損害賠償を請求される恐れがあります。

また、言動によっては刑法が適用される可能性もあります。

  • 不必要に体に触る(不同意わいせつ罪)
  • 内定を辞退しようとした就活生に「訴える」「内定を辞退するやつだと他の会社に言いふらす」などと発言する(脅迫罪)
  • 人格否定や差別的な発言をする(侮辱罪)

2)会社のイメージが低下し、採用ができなくなる?

就活生がSNSに「就活ハラスメントを受けた!」と書き込んで、それが拡散されれば、ハラスメントが横行している会社だと見られ、会社のイメージは低下します。また、大学のキャリアセンターなどでは、就活ハラスメントに関する就活生からの相談を受け付けているので、大学に定期的に求人を出している会社の場合、今後の大学との関係にも影響が出るかもしれません。

就活ハラスメントに関する就活生からの相談は、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)でも受け付けていて、就活ハラスメントをした会社には、助言や指導が入る可能性もあります。

4 就活ハラスメントの防止のポイント

1)「会社と就活生は対等」という意識を持つ

就活ハラスメントが起きやすい会社は、就活生に対して「雇ってやる」「試してやる」といった上から目線の態度を取っているケースが少なくありません。雇用が懸かっている就活生は、こうした会社の態度を拒否することができず、それが就活ハラスメントの問題を深刻化させるのです。

会社として就活生に適性があるかを見極めることは大切ですが、入社した場合は、会社も労力を提供してもらう立場になるわけですから、常に「会社と就活生は対等」という意識を持って採用活動に臨むことが大切です。

2)「業務上必要ない対応」「行き過ぎた対応」を洗い出して排除する

就活ハラスメントが違法になる(民法上の不法行為などに当たる)場合、次の1.か2.に該当している可能性が高いです。

  • 会社の対応(採用面接での質問など)が、業務上必要ない
  • 業務上必要があったとしても、行き過ぎている

就活セクハラなどは1.に当てはまります。オワハラや圧迫面接などは、1.に当てはまるケースもあると思いますが、仮に「内定辞退を防ぎたい」「就活生のストレス耐性や状況判断能力を試したい」という会社の思惑があったとしても、2.に該当する可能性が高いです。

就活生に対する不法行為や不適切な言動が行われないように、2章で紹介したような言動を排除していった上で、就活生への対応の仕方を模索していきましょう。例えば、

  • 就活生を内定者懇親会に連れていきたいのであれば、オワハラにならないよう本人のスケジュールを考慮する。就活セクハラ(個人的な食事やデートの誘い)にならないよう時間を区切り、2人以上の社員で参加し、個室はできるだけ避ける
  • 場の雰囲気を和ませたいのであれば、就活セクハラ(性的な冗談など)や差別的な発言(「男は○○だから、女は○○だから」など)に該当しないジョークを織り交ぜる
  • 就活生のストレス耐性や状況判断能力を試したいのであれば、圧迫面接という形ではなく課題などを与えてみる

といった具合です。

3)社内のハラスメントの防止措置を、就活ハラスメントにも適用する

第2章の1)で紹介した「就活セクハラ」については、冒頭で紹介した通り、2026年10月1日から、防止措置を講じることが会社に義務付けられます。改正男女雇用機会均等法では、

  • 就活生からの相談に応じ、対応するための体制の整備などが求められること
  • 防止措置を講じない場合、厚生労働大臣による勧告が行われ、それにも従わなければ「企業名公表」の対象になること

などが定められています。オワハラなど他の就活ハラスメントについては、特に防止措置は義務付けられていませんが、

若者雇用促進法に基づく事業主等指針に、会社は就活ハラスメントに対して「必要な注意を払うよう配慮する」取組を行うのが望ましい

という記載があり、前述したリスクの観点からもやはり防止措置を講じたほうがよいでしょう。

就活セクハラについては、2026年2月26日に公表された厚生労働省の指針により、

  • ハラスメントに対する対応方針(ハラスメントを許さない旨など。就業規則等の文書に規定)の策定、周知徹底
  • ハラスメントに関する相談窓口の設置、運用
  • ハラスメントに関する相談があった場合の事実確認、行為者の処分、再発防止策の検討
  • プライバシーの保護、相談者などに不利益な取扱いをしない旨の周知徹底など

の4つの措置を講じることが会社に求められており、これを就活ハラスメント全般に適用するのが望ましいです。

基本的なポイントは、既に法制化されている職場のハラスメント(社員に対するハラスメント)の防止措置と同じですが、例えば、

  • 指針が想定している求職活動の範囲が幅広く(採用面接、就職説明会、従業員訪問、インターンシップ、教育実習など)、従業員が通常就業している場所でハラスメントが行われるとは限らない
  • 就活生に対し、あらかじめ会社のパンフレットやウェブサイトを通じて、相談窓口の存在を周知する必要がある

など、就活ハラスメント特有の注意点もあるので気をつけましょう。

指針の詳細については、こちらをご確認ください。

■厚生労働省「事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和8年厚生労働省告示第52号)■■
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662589.pdf

以上(2026年2月更新)

pj00249
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なぜ、会ったこともない「第三者」が自社の取引を邪魔するの?  

1 取引に影響を与える「第三者」の存在

ビジネスは、売主と買主、貸主と借主といったように二者間で行われるのが基本です。しかし、もう少し視野を広げてみると、二者以外にも関係者が存在する場合があります。例えば、売主から売買代金債権を譲渡された第三者のように、直接の取引関係はないものの、取引について何らかの利害を有している者がいます。

そして、

こうした第三者が法律関係の発生、消滅、効力に影響を及ぼす

ことがあります。経営者の皆さんは、取引上のリスクを避けるために第三者の存在を意識しておくことが重要です。自身がどの立場になるかによって異なりますが、押さえておきたいのは、

  • 第三者が善意か悪意か(知らないか、知っているか)
  • 対抗要件は具備されているか
  • 第三者が悪意であり、かつ、信義則違反があるか否か(背信的悪意者)

となります。この記事で分かりやすく説明していきます。

2 第三者の正体と、善意と悪意の違いとは

法律上、第三者の定義は必ずしも一律ではありませんが、一般的には、

当事者およびその「包括承継人(ある者の法律上の地位を一括して引き継ぐ者(例:相続人や合併後の会社))」ではない者

となります。この第三者が法律上保護されるか否かの判断では、

「善意の第三者」なのか「悪意の第三者」なのかが問題

になることがあります。法律上の善意と悪意は、正義と悪というような倫理的な意味ではなく、対象となる取引や法的効果について、

善意は「知らない」、悪意は「知っている」

といったように、その人の主観的事情を指しています。そして、当該主観的事情は、法律関係につき第三者が利害関係を有するに至った時期を基準として判断されます(最判昭和55年9月11日)。

3 事例1:他社に所有権がある商品を販売した第三者

A社は、B社に継続的に同一商品(動産)を販売する契約を交わしました。代金は後払いです。ただ、A社にとってB社との取引は初めてであり、代金回収に不安がありました。そこで、代金の支払いを受けるまでは、自社(A社)に商品の所有権を留保する契約内容としました。

ところが、B社は、A社に所有権が留保されている商品をC社に売却して引き渡してしまいました。この場合、C社は当該商品の所有権を取得できるのでしょうか?

A社・B社・C社(第三者)の関係図

C社がA社とB社の取引内容(所有権が留保されていること)について知らなければ善意の第三者、知っていれば悪意の第三者とみなされます。

C社が善意の第三者である場合、上記事例で問題となるのは「動産」の所有権なので、

取引の安全が重視され、真の権利者(A社)よりも無権利者(B社)を真の権利者と誤信して取引をした第三者(C社)が保護され、C社が動産の所有権を取得できる

ことになります(即時取得・民法第192条)。ただし、C社の不注意(過失)で、A社とB社の取引内容について知ることができなかった場合、C社は動産の所有権を取得できません。

また、C社が悪意の第三者である場合、

取引の安全よりも真の権利者が保護され、C社は所有権を取得できない

ことになります。

4 事例2:対抗要件を具備した第三者とそうでない第三者

甲社は乙社に対して売買代金債権を有しています。ただ、すぐに現金化したかったので、当該債権を丙社に譲渡して現金化しました。

ところがその後、甲社は資金難に陥り、同じ債権を丁社に二重で譲渡してしまいました。その際、丁社は甲社を代理して「確定日付のある証書」で債務者(乙社)に通知しました。この場合、丙社と丁社のいずれが債権を取得できるのでしょうか?

甲社・乙社・丙社・丁社の関係図

丙社と丁社とは同一の権利について争う関係にあり、法律上は「対抗関係」と呼びます。丁社が甲社と丙社の債権譲渡について知らなければ善意の第三者、知っていれば悪意의 第三者とみなされます。

前述した「事例1:他社に所有権がある商品を販売した第三者」と決定的に異なるのは、

丙社も丁社も、真の権利者(債権者)である甲社から債権を譲り受けている

ことです。このようなケースを債権の二重譲渡といい、先に債権を譲り受けた丙社に権利がありそうですが、法的には逆で、

丁社が善意か悪意かにかかわらず、権利を有する

ことになります。なぜかと言うと、丁社は甲社を代理して「確定日付のある証書」で債務者(乙社)に通知することで、第三者への対抗要件を具備しているからです。

対抗要件とは、

第三者に自分が権利者であることを主張するために必要な要件

のことです。皆さんにここで押さえていただきたい重要なポイントは、

対抗関係が問題になる場合、原則として、当事者の善意と悪意は優劣に関係せず、先に対抗要件を具備したほうが権利を主張できる

ということです(なお、不動産の権利変動に関しては、後述する背信的悪意者である場合は除きます)。

対抗要件にはさまざまな種類があるので次章で確認しましょう。

5 さまざまな取引の対抗要件

取引の内容によって対抗要件が異なるので整理しましょう。2020年4月1日施行の改正民法で、対抗要件を登記に一元化することも議論されましたが、これは実現しませんでした。

1)不動産の対抗要件

不動産の場合は、登記が対抗要件になります。

2)動産の対抗要件

動産の場合は、引渡しが対抗要件になります。引渡しには4つの方法があり、それぞれの特徴は次の通りです。

(図表3)【動産の引渡し方法】

方法 概要
1.現実の引渡し 譲渡人が目的物を物理的に譲受人に引き渡すこと
例:AがBに目的物を手渡す
2.簡易の引渡し 既に移転している目的物を譲渡人と譲受人の合意によって引き渡すこと
例:AがBに貸していた目的物を、AがBに贈与する
3.占有改定 目的物を譲渡人が引き続き保有しながら、譲渡人と譲受人の合意によって引き渡すこと
例:AがBに目的物を売却したものの、当面は当該目的物をBから借りる
4.指図による占有移転 第三者が占有し、その者に引き続き保有させる場合において、譲渡人と譲受人の合意によって引き渡すこと
例:AがCに保管させている目的物をBに売却し、売却後も引き続きCに保管させる

(出所:民法第182条第1項、第2項、第183条、第184条を基に作成)

この他に「動産譲渡登記制度」というものがあります。これは、企業が保有する在庫商品、機械設備、家畜(牛や豚等)などの動産を活用した資金調達の円滑化を図るために法人が行う動産譲渡について、登記によって対抗要件を具備できる制度です。

3)債権の対抗要件

債権の場合は、債務者への「確定日付のある証書」による通知または「債務者の承諾」が対抗要件となります。動産と同じで債権譲渡にも登記制度があり、債権譲渡登記ファイルに記録することで、「確定日付のある証書」による通知があったものとみなされます。

6 事例3:背信的悪意者である第三者

対抗要件が重要であることを説明してきましたが、

不動産の権利変動に関しては、背信的悪意者の場合は対抗要件を優先的に具備しても保護されない

ことになります。事例で確認しましょう。

A社は、所有する土地を資材置き場として利用したいというB社に売却することにしました。土地はB社に引き渡されましたが、B社はすぐに所有権移転登記をしませんでした。この状況を知ったC社が、B社に高く売りつける目的で、A社を強引に説得してこの土地を譲り受けて登記しました。

その後、C社はB社に対し、土地の買取りを要求しましたが、B社は、自らが所有者であると主張して応じなかったため、C社はB社に対し、土地の明け渡しを求める訴えを提起しました。この場合、C社の主張は認められるのでしょうか?

背信的悪意者の関係図

譲受人が形式的に対抗要件を具備しても、

その者の権利取得を認めることが取引上の信義に反する場合、例外的に対抗要件具備の先後で権利の取得が決まらない

ことがあります。これを「背信的悪意者排除の法理」といい、C社を「背信的悪意者」といいます。取引上の信義に反するか否かの明確な基準はありませんが、次のような場合などに認められるといえるでしょう。

  • 詐欺や強迫によって登記の申請を妨げるなど
  • 不当に利益を上げようとする意図、他人の利益を害そうとする意図がある場合

問題は、このような背信的悪意者からの転得者は、対抗要件を具備すれば権利を取得できるのかということです。例えば、

C社からD社が土地を譲り受けた場合、D社は権利を取得できるのか

ということです。詳細は割愛しますが、D社が権利を取得できる可能性はあります。背信的悪意者であることを理由に権利を主張できないのはC社にだけ該当する主観的事情であり、D社が背信的悪意者でない限り権利を取得できることになります。

以上(2026年1月更新)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 平田圭)

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