「室温は18度以上28度以下」など、御社のオフィス環境が法定基準を満たしているかを確認!

書いてあること

  • 主な読者:リモートワークをやめ、オフィス勤務を復活させている経営者など
  • 課題:法改正の関係で、オフィス環境が法定基準を満たさなくなっている恐れがある
  • 解決策:特に2022年に法改正のあった「照明」「トイレ」「洗面設備等」「休養室・休養所」「休憩設備」「救急用具」「室温」「作業環境測定」のルールを確認する

1 リモートワークをやめた会社は2022年の法改正に注意!

コロナ禍で広まったリモートワークですが、最近はオフィス回帰の動きが広まっています。その場合に注意が必要なのは、労働安全衛生法とその関係法令で定められている「オフィス環境の衛生基準(以下「法定基準」)」です。

会社は「照明の明るさ」「トイレの数」などについて、法定基準を守らなければならないのですが、図表1の通り、2022年(4月と12月)にルール変更があった関係で、知らないうちに法令に違反している可能性があるのです(違反は努力義務の場合を除き、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金)。

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以降で、図表1のそれぞれの項目について法令上のルールを紹介するので、今のオフィス環境に不安がある場合は確認してみてください。

2 照明

照明は、社員の作業内容に応じた「照度(照明の明るさ)」が法定基準を満たすようにしなければなりません(義務)。照度は、光の量を表す「ルクス」という単位で表され、照度計で測定できます。作業場所はルクスが高いほど明るく、低いほど暗くなります。

2022年12月1日からは、社員の作業内容と、作業内容ごとに満たすべき照度の基準が次のように変更されています。

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パソコン操作・計算などの「精密な作業」と電話応対などの「普通の作業」が「一般的な事務作業」に統合され、資料の袋詰めなど文字を読む必要のない「粗な作業」が「付随的な作業」に名称変更されました。作業に必要な照度も引き上げられているので注意が必要です。

オフィスの照明・採光は、図表2の基準の照度を満たした上で、「明暗の対照が著しくなく、かつ、まぶしさを感じさせない方法」とされています。

  • まぶしいと感じる場合は、照明を明るさの調節ができるものに変える、カバーのついた照明に変える、
  • 暗すぎる場合は、テーブルライトを設置する

などの対策が必要です。また、オフィス全体の照度は基準通りでも、パーテーションで作業スペースが暗くなるといったケースでは、基準を満たさなくなる恐れがあるので注意しましょう。

3 トイレ

トイレは、社員の性別や人数に応じて、次のように設置しなければなりません(義務)。

  • 男性用トイレ(大):男性社員60人までにつき1個以上
  • 男性用トイレ(小):男性社員30人までにつき1個以上
  • 女性用トイレ:女性社員20人までにつき1個以上

また、2022年4月1日からは、「独立設置型のトイレ」に関するルールが新設されました。

独立設置型のトイレとは、プライバシーが保護され、社員が性別などに関係なく利用できる、完全個室のトイレのこと

で、具体的には次の基準を満たすものをいいます。

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独立設置型のトイレを設置すると、そのトイレ1個につき、会社の男性社員と女性社員を、実際の人数よりも10人ずつ減らしてカウントすることができます。例えば、男性社員が70人いる場合、独立設置型のトイレを1個設置することで、男性社員は60人(70人−10人)としてカウントされ、会社が設置しなければならない男性用トイレの数が次のように変わります。

  • 通常:男性用トイレ(大)2個以上、男性用トイレ(小)3個以上
  • 独立設置型のトイレを設置:男性用トイレ(大)1個以上、男性用トイレ(小)2個以上

ただ、このルールは、会社が建物の都合上、トイレを男女別に設置できないケースなどに対応するためのものなので、法定基準を満たすからといって、今ある男性用・女性用トイレの数を減らしてスペースを節約するといったことはできません。

また、独立設置型のトイレを設置する場合、トイレは男女共用になり、重い持病や障害がある社員も使うことが想定されますから、次のような事項についても検討する必要があります。

  • 手洗い設備(トイレ内に設けるのが基本)
  • 消臭や清潔を保つマナー
  • サニタリーボックスの管理方法
  • 盗撮や侵入などの犯罪を防ぐ方法(非常用ブザーの設置など)
  • 体調が悪くなったときの措置(マスターキーを使って外部からの解錠を可能にするなど)

4 洗面設備等

会社は社員数に関係なく、社員が顔を洗える洗面設備を設置しなければなりません。加えて、業務上、社員の服が汚れたり、濡れたりすることがある場合は、更衣室やシャワー設備、乾燥機などを設置しなければなりません(義務)。

また、2022年4月1日からは、社員が更衣室やシャワー設備を、性別に関係なく安全に使えるよう、プライバシーに配慮することが会社に求められるようになりました。プライバシー保護の基本的な考え方は、前述した独立設置型のトイレと同じです。

5 休養室・休養所

休養室・休養所とは、体調が悪い社員や生理中の女性社員が横になって休むことのできる場所のことです。部屋の場合は「休養室」、施設の場合は「休養所」といいます。会社は、

社員が50人以上または女性社員が30人以上いる場合、休養室・休養所を「男女別」に設置

しなければなりません(義務)。

また、2022年4月1日からは、オフィスの空いているスペースを臨時の休養室として使う場合などに、社員がすぐに利用できる体制を整えることが求められるようになりました。例えば、

社員が体調不良を訴えたら、すぐに折りたたみ式のベッドを出せるようにする

といった具合です。また、社員が安心して休めるよう、プライバシーと安全に配慮することが求められるようになりました。例えば、

  • 入口や通路から直視されないように目隠しを設ける
  • 関係者以外の出入りを制限する
  • 緊急時に安全に対応できるよう、救急用具を揃えておく

といった具合です。

6 休憩設備

休憩設備とは、社員が食事をしたり、休憩したりするための場所です(設置は努力義務)。設置に関する具体的な基準は特にありません。

ただし、2022年4月1日から「休憩スペースの広さや設備内容については、衛生委員会などで調査審議・検討するのが望ましい」旨が示されたので、衛生委員会がある社員数50人以上の会社などは認識しておいたほうがよいでしょう。例えば、「同じタイミングで休憩する社員が多い場合、今の休憩設備は窮屈でないか」などについて確認してみましょう。

7 救急用具

会社は、負傷した社員の応急手当に必要な救急用具を備えて、清潔に保たなければなりません(義務)。救急用具の品目については、以前は最低でも

  1. 包帯・ピンセット・消毒薬
  2. 火傷薬(業務上、火傷の恐れがある場合)
  3. 止血帯、副木、担架等(業務上、重傷者が出る恐れがある場合)

の3つを用意することが義務付けられていたのですが、2022年4月1日からは具体的な品目が削除され、各社が想定される事故などに応じて必要な品目を準備することになりました。

ホワイトカラーの会社でも、はさみやカッターによるけが、階段での転倒などが起こり得るので、救急用具は必需品です。一概には言えませんが、包帯・ピンセット・消毒薬などの他、感染予防のためのマスク・ビニール手袋・手指洗浄薬などを用意しておく必要があるでしょう。

また、救急用具の保管場所や使用方法、応急手当後の対応ルール(医療機関への搬送など)については、あらかじめ社内で共有しておきましょう。

8 室温

会社には、空調設備(エアコンや加湿器など)がある部屋の室温を、法令で定める基準に設定することが求められています(努力義務)。

2022年4月1日からは、室温に関する努力目標値が次のように変更されています。

  • 法改正前:17度以上28度以下
  • 法改正後:18度以上28度以下

9 作業環境測定

オフィスに中央管理方式の空調設備がある会社は、原則2カ月以内に1回、次の項目に関する作業環境測定をし、その記録を3年間保存しなければなりません(義務)。

  • 一酸化炭素・二酸化炭素の含有率(原則、検知管方式の測定器で測定)
  • 室温・外気温(0.5度目盛の温度計で測定)
  • 相対湿度(0.5度目盛の乾湿球の湿度計で測定)

このうち、一酸化炭素・二酸化炭素の含有率の測定については、検知管方式と同等以上の性能がある場合、他の測定器の使用も認められています。2022年4月1日からは、具体的な測定器の例として次の2つが示されています。

  • 一酸化炭素の場合:定電位電解法を用いる測定器
  • 二酸化炭素の場合:非分散型赤外線吸収法(NDIR)を用いる測定器

なお、作業環境測定に必要な機器は、各都道府県の産業保健総合支援センターなどで貸し出している場合があります。また、自社で行うのが難しい場合は、「作業環境測定士」に依頼することもできます。

以上(2023年6月更新)
(監修 社会保険労務士 志賀碧)

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画像:pexels

税務のグレーゾーン 経営者が押さえておくべき勘所

書いてあること

  • 主な読者:税務処理を選択する際、課税リスクを押さえた判断をしたい経営者
  • 課題:課税リスクの判断基準や、すべてが明確に決まっているわけではない
  • 解決策:税務調査で指摘を受けやすい「不相当に高額」「通常要する費用」「専ら」と基準が曖昧な項目の考え方を押さえる

1 グレーゾーンを把握して、税務の勘所を高めよう

経営をしていると、税務処理を選択しなければならない機会が結構あります。問題は白黒がはっきりしていない、つまり場合によっては課税リスクが高まるかもしれないケースがあることです。税務処理の選択による課税リスクは、「白・黒・グレー」の3色で表現され、それぞれ次のような意味合いで使われます。

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経営者が税務の勘所を高めるために重要なのは、グレーゾーンの考え方を知ることです。グレーゾーンは解釈次第で税務署側の取り扱いが変わることがあるためです。グレーゾーンは「〇〇円未満なら白で、それ以上は黒」といったように、文字通り、金額で白黒はっきりするようなものではなく、法令でも、

「不相当に高額」「通常要する費用」「専ら」

などという言葉で表現されます。これらが具体的にどのようなことを示しているのでしょうか。税務調査で指摘を受けやすいグレーゾーンとして、

  • 「不相当に高額」な役員報酬
  • 「不相当に高額」な役員退職金
  • 「通常要する費用」としての交際費
  • 「専ら」従業員のために行われる福利厚生費

について解説していきます。

2 「不相当に高額」な役員報酬

1)「不相当に高額」と判断される一般的な基準(考え方)とは

役員報酬については、定期同額(毎月一定の額など)で支給されているなどの条件を満たしていれば基本的に損金(税務上の費用)とすることができます。しかし、その支給金額が「不相当に高額」な場合、その高額と判断された部分については損金と認められません。

役員報酬について「不相当に高額かどうか」を判断する基準には、

  1. 形式基準
  2. 実質基準

の2つがあります。

形式基準とは、

定款や株主総会の決議で決めた役員報酬の限度額と照らし合わせて判断するもの

です。つまり、あらかじめ決定した限度額を超えて支給した場合は、超過額部分については損金とされないことになります。

実質基準とは、

役員の職務の内容や会社の収益状況、従業員に対する給与の支給状況、あるいは、同業他社との比較などで「不相当に高額かどうか」を判断するもの

です。そのため、

  • 実質的に何もしていない役員(名前だけの役員)に役員報酬を支給している場合
  • 売上・利益が減少していて、従業員のボーナスなどもカットしているのに、役員報酬だけ増加傾向にある場合

には、税務調査で指摘されることが多いです。

2)現場レベルで注意すべき点は

形式基準は、定款や株主総会の議事録などで確認できます。もし実際の支給額と限度額の金額が近い場合には、次の株主総会で限度額の増額を決定しておくようにしましょう。

また、役員報酬を決定するときには、会社の利益の状況などを踏まえた上で決定することとし、「なぜその金額に決定したの?」という調査官からの問いかけに対して、合理的に説明できる資料を書面で準備しておくことが重要です。特に役員報酬を増額する際にはその理由を明確にしておきましょう。

3 「不相当に高額」な役員退職金

1)「不相当に高額」と判断される一般的な基準(考え方)とは

役員退職金は基本的に損金とすることができるのですが、その支給金額が「不相当に高額」な場合、その高額と判断された部分については損金と認められません。

役員退職金は、職務に従事していた期間や退職の事情や、同業他社の支給状況などを総合的に勘案して判断されます。よく利用される基準に「功績倍率法」というものがあります。これは、次の算式に当てはめて役員退職金の額を決定する方法です。

退職直前の役員報酬の月額 × 勤続期間 × 職責に応じた倍率

必ずしも功績倍率法で計算すれば税務上認められるわけではありませんが、支給額を決定する際の参考にするとよいでしょう。

なお、

  • 実質的に何もしていない役員(名前だけの役員)に退職金を支給した場合
  • 退職直前に極端に役員報酬を増額し、功績倍率法の計算結果を意図的に増やした場合

には、税務調査で指摘されることが多いので注意しましょう。

3)現場レベルで注意すべき点は

役員報酬と同じで、支給した役員退職金について「なぜその金額に決定したの?」という調査官からの問いかけに対して合理的に説明できる資料を書面で準備しておくことが重要です。

また、功績倍率法を使用する場合は役員退職金規程を整備するとともに、役員報酬については会社の利益の状況などを鑑みつつ、計画的に増額するようにするとよいでしょう。

4 「通常要する費用」としての交際費

1)「通常要する費用」と判断される一般的な基準(考え方)とは

中小企業の場合、損金として認められる交際費は「年間800万円まで」と決まっています。そのため、飲食費だからといってなんでも交際費にしてしまうと、損金として認められない交際費が出てくる可能性があります。

一般的に交際費となりそうな費用であっても、「通常要する費用」の範囲内であれば交際費としなくてもよいケースがあります。

一般的に多く見られる事例としては、

会議に関連して、茶菓、弁当等の飲食物を供与するために通常要する費用

があります。つまり、会議で提供された飲食関連の費用であっても「通常要する費用」の範囲内であれば交際費とせず、会議費(金額基準に関係なく損金とすることができる)として処理することができます。

通常要する費用とは、

  • 必要があって支出したもので、
  • 一般的・常識的な範囲内であるもの

ということになります。そのため、会議時に提供されたお弁当の金額が1000円から3000円くらいの範囲内であればさほど問題になるケースは多くないものと考えられますが、フレンチのフルコースなど、会議というより接待が主になると思われるようなものは交際費とされる可能性が高くなります。

また、月に数回程度の会議であれば問題ありませんが、ほぼ毎日会議を行い、お弁当を食べている場合には「必要外のもの」と判断されて交際費とされることもあります。いずれにしても「常識の範囲内」というのが判断基準になります。

2)現場レベルで注意すべき点は

会議費などで飲食を伴った場合には、まず「金額が大きくなりすぎていないか」について敏感になる必要があります。この金額についての判断が現場担当者の間で曖昧になるようであれば、社内規程などを設け、会議飲食費としての金額範囲などを決めてしまうのも一方法です。また、会議を行った場合は、

「本当に会議が存在したこと」を証明するため、議事録などは必ず作成する

ようにしておきましょう。

5 「専ら」従業員のために行われる福利厚生費

1)「専ら」と判断される一般的な基準(考え方)とは

「専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用」については交際費とせず、福利厚生費(金額基準に関係なく損金とすることができる)として費用処理することができます。

「専ら」とは、

必ずしも100%である必要はないものの、80%から90%は該当するような状態

と言われています。例えば忘年会などの催し事の場合、全従業員を対象として開催しつつも、最終的に80%から90%の人が参加すれば福利厚生費として処理されます。そのため、

  • 特定の役職者のみを対象とした飲み会
  • 役員のみを対象とした慰安旅行

については、税務調査で交際費に該当すると指摘されたり、給与として源泉徴収すべきと指摘されたりするので注意しましょう。

2)現場レベルで注意すべき点は

福利厚生費として処理すべき年間行事はさほど頻繁に行われるものではありませんので、行事の内容や参加者(人数)、費用の総額などを一覧にし、税務調査で指摘された際には明確な説明できるような書類を準備するようにしておきましょう。

以上(2023年6月作成)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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画像:ipuwadol-Adobe Stock

【海外展開の手引(5)】パートナー選び、資金手当て、法対応などの戦略と実務

書いてあること

  • 主な読者:販路拡大や生産コスト削減などのために、海外展開を検討している経営者
  • 課題:海外展開を成功させるために準備すべきことを知りたい
  • 解決策:現地拠点の形態やパートナー選びなどの戦略を立てる。資金手当て、人材確保・育成、法規制への対応といった実務面での対策も講じておく

1 海外展開の成否を左右する「戦略」と「実務」対応

海外展開のための構想を練って現地調査が完了したら、いよいよ実現に向けて具体的に動き出す段階です。ここで必要な手順は、次の2つです。

  1. 構想段階で立てた目的を実現するための戦略を立てる(現地拠点の形態、パートナー選びなど)
  2. 現地調査の結果を踏まえた実務面での対策を講じる(資金手当て、人材確保・育成、法規制など)

2 目的に適した現地拠点の形態を決める

海外展開の戦略を立てる上で欠かせないものの一つが、現地拠点の形態をどうするかです。

一般的に、現地拠点の形態は次のようなものが挙げられます。

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国や地域、業種によっては、外資規制のため単独出資で現地法人を設立できないこともあります。基本的には、拠点の規模が大きく、自社の出資比率が高いほど、ハイリスク・ハイリターンになります。

3 現地のパートナー候補を見つける

海外で事業を行うためのリソースやノウハウを持っている現地企業とパートナーシップを築くことは、海外展開の成否に大きく影響します。

1)アピールや商談に結び付く情報を集約しておく

現地での取引相手となるパートナーを探す際は、自社が求める具体的な希望条件と、自社のアピールポイントをまとめておくことが必要です。

例えば自社商品の販売先を探すのであれば、具体的な希望条件として金額、数量、納期、輸送方法などを決めておきます。自社のアピールポイントとしては、製品の強み(品質、販売実績、報道・表彰歴など)をまとめ、バイヤー(購買担当者)に示すことで、実際の商談に結び付けられるようにします。

2)マッチングサービスを活用する

海外展開を支援する機関の中には、専用のウェブサイトを設けるなどして、海外展開のためのマッチングサービスを提供している場合があります。

例えば、日本貿易振興機構(以下「ジェトロ」)が運営する国際ビジネスマッチングサイト「e-Venue」は、100カ国以上のビジネスパーソンが利用しており、ビジネス案件の登録や、ビジネス案件の検索・閲覧・問い合せ(引き合い)などを行うことができます。海外のビジネス案件は日本語でも閲覧でき、コンタクト先とチャットでやり取りすることも可能です。e-Venueの登録や利用は無料です。

■ジェトロ国際ビジネスマッチングサイト「e-Venue」■

https://e-venue.jetro.go.jp/bizportal/s/?language=ja

民間企業でも国際ビジネスマッチングのサービスを提供している企業があります。例えば、世界的な電子商取引仲介業であるアリババグループは、190以上の国と地域のバイヤーが参加しているというマッチングサイト「Alibaba.com」を展開しています。

3)国際的な展示会・展覧会・商談会に出展する

国内外で開催される国際的な展示会・展覧会・商談会に出展することで、国外のバイヤーと接触でき、具体的な取引へつなげることが可能になります。

自社で負担できる費用と、開拓したい市場(国・地域、販売チャネルなど)を勘案し、適切な展示会・展覧会・商談会に出展するようにしましょう。

ジェトロでは、ウェブサイト上で国際的な展示会・展覧会・商談会に関する情報を発信するとともに、要件を満たした事業者に対して出展に関する各種支援を行っています。また、国内外の展示会・商談会で、ジェトロが主催・参加するジャパンブースへの、個別企業・団体などの参加を支援します。一部の展示会の出展については、ジェトロから、出展にかかる各種手続きの支援と出展費用の一部補助を受けることができます。

■ジェトロ「展示会・商談会への出展支援」■

https://www.jetro.go.jp/services/tradefair/

この他、中小企業基盤整備機構では、海外の展示会に出展することをテーマに、必要な知識を集めた冊子「海外出展 海外展示会ハンドブック」を公開しています。

■中小企業基盤整備機構 海外ビジネスナビ「海外出展 海外展示会ハンドブック」■

https://biznavi.smrj.go.jp/handbook-overseas-exhibitions/

4)パートナー候補の信用情報もチェックをする

せっかく選んだ現地パートナーの経営が傾いてしまっては、元も子もありません。パートナー候補の信用情報は、ある程度のお金を掛けてでも押さえておきたい情報です。

海外企業の信用情報を入手するに当たっては、国内信用情報会社の海外企業調査サービスを活用する方法があります。例えば、東京商工リサーチでは、米国の企業情報サービス会社Dun&Bradstreet(D&B)社と提携し、同社がカバーする240カ国超、5億件超の「ダンレポート」を有料で提供しています。

■東京商工リサーチ「海外企業調査レポート(ダンレポート)」■

http://www.tsr-net.co.jp/service/detail/dun-report.html

4 資金の手当てに万全を期す

現地法人を設立するなどの大規模な海外展開を行う場合、相応の資金を要します。また、海外展開は思わぬ出費が嵩む場合もあります。資金の手当ては万全にしておきましょう。

1)日本政策金融公庫「海外展開・事業再編資金」

中小企業が海外の地域で事業開始・拡大・再編する際に必要な資金(海外企業に対する転貸資金を含む)の融資を受けられます。詳細は日本政策金融公庫の支店窓口で確認してください。

■日本政策金融公庫「海外展開・事業再編資金」■

https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/kaigaitenkai.html

2)国際協力銀行(JBIC)「中堅・中小企業分野」

中堅・中小企業の海外投資や製品輸出などに必要な長期資金を、民間金融機関との協調融資などで支援しています。また、対外借り入れ規制や諸手続きなどへの助言も行っています。

■国際協力銀行「中堅・中小企業分野」■

https://www.jbic.go.jp/ja/business-areas/sectors/smes.html

3)信用保証協会「海外投資関係保証制度」「特定信用状関連保証制度」

都道府県の信用保証協会は、中小企業が海外展開に要する資金を金融機関から借り入れる際の債務の保証を行います。「海外投資関係保証制度」は、国内の金融機関から海外直接投資事業資金の融資を受ける際に利用できます。「特定信用状関連保証制度」は、海外子会社が現地金融機関から融資を受ける際に利用できます。

■全国信用保証協会連合会「海外展開をお考えの方」■

https://www.zenshinhoren.or.jp/model-case/kaigaitenkai/

4)商工組合中央金庫(商工中金)「海外進出サポート」

商工中金は国内外全店舗に「中小企業海外展開サポートデスク」を設置し、海外進出に必要な海外投融資から貿易金融まで、個別相談によるサポートを行っています。

■商工中金「海外進出サポート」■

https://www.shokochukin.co.jp/corporation/service/support/

5 海外で渡り合える「グローバル人材」の確保・育成

初めて海外展開を行う企業にとって障害となりかねない問題として、「ヒト」の問題が挙げられます。海外で存分に力を発揮できる人材の確保や育成は、実務面での大きな課題です。

単に語学力があるだけでは、海外展開の重責を担う資質として不十分です。現地の文化や習慣に敬意を払って順応し、多様性や現地の事情を認めながらも、大事なところでは折れずに自社の立場を主張できる「グローバル人材」の育成が求められます。

1)東京都中小企業振興公社−海外展開支援−「海外人材育成支援」

国際ビジネスに対応できる人材育成を総合的にサポートしており、貿易実務者養成講習会やグローバル人材育成講座などを開催しています。

■東京都中小企業振興公社−海外展開支援−■

https://www.tokyo-kosha.or.jp/TTC/

2)日本生産性本部「コンサルティング・人材育成支援(海外進出企業支援)」

海外での経営の効率化や、現地スタッフおよび現地駐在日本人の育成を支援しています。具体的には、現地スタッフのマネジメント力向上などの課題の解決を支援しており、現地社員の意識調査や、マネージャー育成プラグラムなどを行います。

■日本生産性本部「コンサルティング・人材育成支援(海外進出企業支援)■

https://www.jpc-net.jp/consulting/mc/global/vietnam.html

3)海外産業人材育成協会(AOTS)「技術協力活用型・新興国市場開拓事業」

海外事業を展開する上で必要となる人材の育成を支援しています。対象となる国・地域は経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会が定めるODA対象国・地域です。一般研修と管理研修の2つのコースがあります。

■海外産業人材育成協会(AOTS)「技術協力活用型・新興国市場開拓事業」■

https://www.aots.jp/hrd/technology-transfer/receiving/oda/

4)外部人材の招請

社内でグローバル人材を育成するのは容易ではありませんし、時間もかかります。社内で人材が育つまで、外部から経験者を中途採用するというのも現実的な方法です。

最近では海外に居住している日本人も多いので、現地の事情に精通している日本人の現地採用を検討してもよいでしょう。

6 現地の法規制への対応は専門家のアドバイスが必須

海外展開を行うには、現地の法規制にしっかりと対応する必要があります。法規制への対応といっても、出資や土地取得などに関する法規制、知的財産権に関わる法規制、税制や会計制度など多岐にわたります。

それぞれ現地の事情に詳しい専門家のアドバイスを受けることが不可欠ですが、公的機関などが海外展開時の法規制への対応に関して、一部サービスを提供しています。

1)日本弁護士連合会「中小企業の国際業務支援事業(弁護士紹介)」

日本弁護士連合会では、ジェトロ、東京商工会議所、日本政策金融公庫、国際協力銀行、国際協力機構などを通じて依頼があった際に限り、弁護士の紹介サービスを行っています。

海外展開において、相手国側の企業・団体との契約書のチェックなどで法的知見を必要とする場合や、トラブルが発生した際のアドバイスをしてくれます。初回の相談は30分無料です。

■日本弁護士連合会「中小企業の国際業務支援事業(弁護士紹介)」■

https://www.nichibenren.or.jp/activity/resolution/support.html

2)法務省「日本企業及び邦人を法的側面から支援する方策等を検討するための調査研究」

日本企業の海外展開を法的な側面から支援するための調査研究の結果を掲載しています。調査対象の国は限られていますが、海外展開を検討している国であれば参考になります。

■法務省「日本企業及び邦人を法的側面から支援する方策等を検討するための調査研究」■

https://www.moj.go.jp/housei/shihouseido/housei10_00135.html

3)工業所有権情報・研修館「海外展開知財支援窓口」

海外駐在経験などを持つ知財のスペシャリスト「海外知的財産プロデューサー」が、海外ビジネスにおける知的財産のリスク管理に関してアドバイスします。また、ビジネス展開に応じた知的財産の権利化や、取得した権利を利益に結びつけるための活用方法を提案します。相談は無料で、全国どこにでも訪問します。

また、海外での知財リスクに対応するために、新興国などの知財実務情報を「新興国等知財情報データバンク」で提供しています。

■工業所有権情報・研修館「海外展開知財支援窓口」■

https://faq.inpit.go.jp/gippd/service/

■工業所有権情報・研修館「新興国等知財情報データバンク」■

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/

以上(2023年6月更新)

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画像:pixabay

【朝礼】基本に忠実になれば、仕事のレベルは上がる

最近、お客様から求められる仕事のレベルが高くなっています。お客様から期待されているということの表れだと思うと、大変うれしいことです。今後、お客様の期待に応えるためによりレベルの高い仕事をしていくためには、皆さんにはこれまで以上に頑張ってもらわなければなりません。とはいえ、これまで以上にレベルの高い仕事をするということは、仕事の密度が高くなることでもあります。そこで余裕を失い、ミスをしてしまってはむしろお客様の信頼を損ねてしまいます。

そうならないよう、今だからこそ、「仕事の基礎や基本に忠実になる」という点について、考えてみたいと思います。

仕事量が増えて忙しくなってくると、よくないとは思いつつ、忙しさを言い訳にして「決まった手順を省略する」といったよう、つい基礎や基本をおろそかにしてしまいます。

しかし、基礎や基本をおろそかにして仕事をすると、ミスを起こしたり、仕事がはかどらなくなりがちです。仕事に限ったことではありませんが、基礎や基本という土台が弱いと、レベルの高いことや、何か新しいことをやろうとしても、うまくいきません。なぜでしょうか。

例えば、家を建てる場合のことを考えてみましょう。家の土台や基礎がしっかりしていないと、たとえ柱を建てることができても、完成した家は不安定で、いわゆる欠陥住宅になってしまいます。

仕事でも家と同様のことがいえます。基礎や基本という土台をおろそかにしてはしっかりとした仕事はできません。そんな状態でレベルの高い仕事をするなど、到底無理でしょう。

もし、忙しさのあまり、仕事の基礎や基本をおろそかになりそうになったら、「『誰のために』『何のために』『どうして』その仕事をするのか」という点について考えてください。これらは、お客様の立場に立って仕事を考えるということであり、仕事をする上での原点です。お客様のことを常に考え、その上で仕事をすることで、無用なミスを減らし、高いレベルの仕事をするためのモチベーションとすることができると思います。

そして、私は皆さんに、できるだけ強い家、仕事に置き換えるならレベルの高い仕事に挑戦してもらいたいと願っています。そのためには、今まで培ってきた仕事の基礎や基本に忠実であると同時に、日々努力を怠らずに知識を習得して、新しい仕事の基礎や基本を増やしていくように心がけてもらいたいと思います。それは、強い家を支える多くの柱のように、皆さんが今、そしてこれから挑戦することになるレベルの高い仕事を支えるものとなるはずです。

最初にも言いましたが、お客様から求められる仕事のレベルが上がっている今、改めて仕事の基礎や基本の重要性を認識し、土台のしっかりとした、お客様に安心していただける仕事をするために頑張っていきましょう。

以上(2023年6月)

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画像:Mariko Mitsuda

上杉鷹山(米沢藩藩主)/経営のヒントとなる言葉

「成せばなる 成さねばならぬ 何事も 成らぬは人の 成さぬ成りけり」(*)

出所:「上杉家文書」(国宝)

冒頭の言葉は、

  • 「物事を成し遂げることができるか否かは、その人の意志にかかっている。どのような困難があっても、地道にあゆみを進め、決して諦めなければ必ずや成し遂げることができる」

ということを表しています。

古くからの名門であった上杉家は、かつては会津地方で石高120万石という広大な領地を治めていました。しかし、関ヶ原の合戦で徳川家康(とくがわいえやす)に敵対したため、戦後は石高を30万石に減らされた上、米沢に移されることとなりました。その後、世継ぎ問題の不手際などからさらに石高を15万石にまで減らされてしまいました。

このような経緯にもかかわらず、米沢藩は120万石の頃とほぼ同じ数の藩士を養っていました。このため、米沢藩は膨大な借金を抱え、8代藩主であった上杉重定は幕府へ領地の返上を検討するほどの存続の危機に陥っていました。

鷹山は、こうした危機に際して高鍋藩から米沢藩に迎えられ、17歳で藩主となりました。藩財政の窮乏を知った鷹山は、自身の食事を一汁一菜の質素なものとし、年間行事の中止や贈答の禁止などを行うなど倹約に努めました。また自らも鍬をとり、藩士全員に田畑の開墾に当たらせました。鷹山は、自身が率先して改革に取り組むことで、藩全体に改革の精神を広げようとしたのです。

こうした従来の慣例を破る改革は名門上杉家の伝統に背くとして、藩の保守的な重臣たちは鷹山に反発しました。しかし、鷹山はこうした反発に厳しく対処し、あくまでも迅速かつ果敢に改革を進めようとしました。

鷹山はまず、米沢に新しい産業を興すべく漆の植林に取り組みました。漆にはロウが含まれているため、漆から取れるロウを藩の専売品として販売し収益を上げ、藩財政を立て直そうと考えたのです。しかし、漆から取れるロウはほかのロウよりも品質が悪かったため市場で受け入れられず、この計画は失敗に終わりました。その後、信頼していた重臣が不祥事によって相次いで失脚し、さらに天明の大飢饉により藩内の田畑は大損害を受けました。このような悪条件が重なったことにより改革は頓挫し、1785年、鷹山は藩主の座を退くこととなりました。

鷹山が藩主の座を退いたのち、米沢藩の財政はさらに悪化の一途をたどりました。俸禄(給料)を大幅に削除された藩士のなかには、農民から不正に多くの年貢を徴収する者も現れ、厳しい生活に耐えられなくなった多くの農民たちが藩内から逃げ出しました。

このような状況を憂慮した鷹山は、隠居の身でありながら再び改革に着手することを決心しました。鷹山は、かつて性急に改革を進めようとして挫折した経緯を省みて、まずは藩士に藩の財政状況を公開し、危機を実感してもらうことに努めました。その後、武士だけでなく、農民や町人からも財政再建に関する意見を広く求めました。

そして、集まった意見について検討を重ねた結果、藩全体で養蚕による生糸の生産に取り組むことを決定しました。鷹山は織物の名産地から職人を招き、最新の織機なども導入しました。さらに、藩内で以前から栽培されていた紅花で生糸を染めて織物を織り、藩外に販売することを考案しました。こうして織られた織物は米沢織と呼ばれ、米沢藩の名産品となって藩士の暮らしを支えることとなりました。このような取り組みにより藩の財政は徐々に回復に向かい、鷹山が逝去した翌年の1823年には、これまでの借金のほとんどを返済し終わることができたのです。

鷹山は生涯倹約に努めましたが、後にその要点について次のように述べています。

「六ヶ敷(むつかしく)成難き筋に心を労すべからず、智者は事なき所を行(おこなう)と云へり」

この言葉は「最初から難しいことをやろうとしてはならない。まずは簡単に取りかかることができることから始めるべきである」ということを表しています。そこには、結果を急ぐあまり、性急に改革を進めて挫折してしまった鷹山の自省の念がうかがえます。

まず「必ずやり抜く」という強い信念を持つ。そして、簡単なことから取り組みを始め、一歩一歩、着実に結果を積み重ねていく。この2つの取り組みによってこそ、物事を最後まで成し遂げることができるのです。

【本文脚注】

本稿は、注記の各種参考文献などを参考に作成しています。本稿で記載している内容は作成および更新時点で明らかになっている情報を基にしており、将来にわたって内容の不変性や妥当性を担保するものではありません。また、本文中では内容に即した肩書を使用しています。加えて、経歴についても、代表的と思われるもののみを記載し、全てを網羅したものではありません。

【経歴】

うえすぎようざん(本名:上杉治憲(うえすぎはるのり))(1751~1822)。江戸(現東京都)生まれ。1767年、米沢藩9代藩主就任。

【参考文献】

「上杉家文書」(国宝)
「上杉鷹山」(横山昭男、吉川弘文館、1987年11月)
「その時歴史が動いた 13」(NHK取材班(編)、KTC中央出版、2002年5月)

以上(2012年5月更新)

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経理現場のインボイス対策!「売り手」と「買い手」の立場から必要な実務を最終確認

書いてあること

  • 主な読者:インボイス発行事業者の登録手続きを済ませた会社の経営者、経理担当者
  • 課題:取引先への登録番号などの通知など現場の準備が抜け漏れなく終わっているか不安
  • 解決策:売手(インボイスを発行する側)、買手(インボイスを受け取る側)の立場から現場ですべきことを整理する

1 いよいよインボイス! 対応漏れがあると消費税の負担増?

いよいよ2023年10月1日からインボイス制度が始まります。消費税の申告を行っている会社であれば、インボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)の登録は終わっていることでしょうが、対応はこれだけではありません。立場ごとにまとめると次のようになります。

1.売手(インボイスを発行する側)

  • インボイスの発行方法を決める
  • インボイスに必要な項目が記載されているか確認する
  • 簡易インボイス(簡易適格請求書)が発行できる業種かを確認する
  • 発行したインボイス(写し)の保存方法を決める
  • 取引先への登録番号や変更点を通知する

2.買手(インボイスを受け取る側)

  • 受け取ったインボイスの保存方法を決める
  • 会計システムがインボイス制度に対応しているか確認する
  • 経理上の注意点を担当者が認識しているか確認する
  • 免税事業者などへの対応を決める

3.売手・買手共通

  • 社員(特に、経理や営業部署の社員)への研修を実施する

これらに対応していないと、仕入税額控除(消費税額の計算上受けられる控除。以下「控除」)を受けられず、消費税の負担が増える恐れがあります。これでは意味がないですよね。そこで、この記事では、

インボイス発行事業者の登録届出後からインボイス制度開始までにすべきこと

をまとめますので、抜け漏れのチェックにご活用ください。

2 売手(インボイスを発行する側)の立場ですべきこと

1)インボイスの発行方法を決める

必要な項目(詳細は後述)が記載されていれば、請求書、領収書など、どの書類もインボイスになります。そのため、まずはどの書類をインボイスにするかを決め、追加しなければならない項目を確認しましょう。一般的には、現在使用している請求書にインボイスとして必要な項目を追加するケースが多いです。

また、契約書の締結だけで、毎月の請求書などを発行していない取引(オフィス賃貸料や会費など)がある場合は、インボイスとして必要な追加項目を記載した通知書を作成・送付し、契約書とともに保存してもらうようにしましょう。

また、インボイスを紙で発行するのか、電子データ(会計ソフトやPDFで作成したもの)で発行するのかを決め、取引先にも発行様式を伝えるようにしましょう。

2)インボイスに必要な項目は記載されているか確認する

インボイスには、今の請求書の記載項目に加えて、

  1. 適用税率
  2. 税率ごとに区分した消費税額等
  3. 適格請求書発行事業者の登録番号

を記載しなければなりません。記載項目に漏れがあるとインボイスとは認められず、受け取った側は消費税上の控除を受けられなくなるので注意が必要です。

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3)簡易インボイス(適格簡易請求書)が発行できる業種かを確認する

インボイスの記載項目は厳密に決められていますが、一部の業種では記載項目を簡略化したインボイス(簡易インボイス)の発行が認められています。一定の業種とは、不特定多数の客と取引を行う次の業種です。

小売業、飲食店業、旅行業、タクシー業、写真業、駐車場業など

簡易インボイスでは、

相手の名称の記載が不要

です。現在のレシートなどに追加しなければならない項目は、

  1. 適格請求書発行事業者の登録番号
  2. 税率ごとに区分した消費税額等または適用税率

の2点です。従来のレシートにスタンプや手書きで対応することも認められているため、取引規模によっては、レジシステムなどの更新をしなくても問題ないかもしれません。

4)発行したインボイス(写し)の保存方法を決める

発行したインボイス(写し)は、取引日の課税期間の末日の翌日から2カ月を経過した日から7年間保存しなければなりません。3月末決算(2023年度)の会社の場合、2024年6月1日から2031年5月31日までの7年間です。

インボイスは、

  • 電子データで受けったものは電子データで保存(2023年12月末までは紙で保存も可)
  • 紙で受け取ったものは紙またはスキャナして電子データで保存

します。

消費税法上、インボイスの保存方法は紙でも電子データでも問題ありません。しかし、電子帳簿保存法により、2024年1月以降は、電子データで受けたったものは電子データで保存することになっています。これは、法人税と所得税に限った話ですが、実務上、インボイスと請求書が別々に送られてくることはほぼ想定されません。インボイス制度が始まる2023年10月までに電子保存の体制を整えなければならないわけではありませんが、半年後には電子保存の義務化にかかる宥恕規定が無くなるので、インボイスへの対応と同時に電子保存の対応も進めていくのが効率的です。

5)取引先への登録番号や変更点を通知する

こうしてインボイスの体裁や発行方法が決まったら、インボイス制度が始まる前に取引先に通知しましょう。インボイスが発行されるかどうか、税金の計算上で影響を受けるのは買手(受け取る側)です。買手の管理や社内手続きの都合上、インボイス制度が導入される前に、インボイス発行事業者かどうかを把握しなければならないと考えている会社もあります。

準備が整っているならば、2023年10月を待たず、通知も兼ねて前もってインボイスを発行しておくと、スムーズに対応できるでしょう。

3 買手(インボイスを受け取る側)の立場ですべきこと

1)受け取ったインボイスの保存方法を決める

受け取ったインボイスの保存方法は、前述した売り手側の「4)発行したインボイス(写し)の保存方法を決める」と同じです。

2)会計システムがインボイス制度に対応しているか確認する

インボイス制度が始まると、会計システムに入力する取引項目に「インボイスの有無」を追加しなければなりません。これに対応していない会計システムだと、消費税の納税額計算時に取引すべてについて、インボイスの確認作業が必要になります。会計システムについては、請求書の発行部分だけでなく、日々の取引を入力する部分についても、インボイス制度に対応しているか確認しましょう。

3)経理上の注意点を担当者が認識しているか確認する

インボイス制度が始まっているのに従来の請求書のままだったり、必要な記載項目が抜けていたりする場合、こちらは仕入税額控除(消費税額の計算上受けられる控除)を受けられず、消費税の負担が増えます。また、フリーランスや小規模事業者への影響の大きさから、経過措置(詳細は後述)という特別な取り扱いがあります。

これらを踏まえ、経理担当者は、

  • インボイスに必要な記載項目のチェック
  • 仕入先がインボイス発行事業者か、そうでないかの把握
  • 仕入先が免税事業者かどうかの把握
  • インボイスの保存が不要な取引かチェック

という、あらたな確認作業が必要になります。

なお、経過措置とは、免税事業者などインボイス発行事業者でない業者からの仕入れであっても、一定の要件を満たした帳簿を保存していれば、制度開始後6年間は一部控除が受けられるというものです。

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また、自動販売機や公共交通機関など、不特定多数の利用者がいるような取引(かつ少額な取引)については、インボイスが不要です。主な取引に、

  • 3万円未満(税込)の公共交通機関の乗車券
  • 3万円未満(税込)の自動販売機や自動サービス機からの商品購入
  • 郵便切手の購入

などがあります。

4)免税事業者などへの対応を決める

経過措置で軽減されているとはいえ、インボイス制度が始まれば、インボイス発行事業者でない免税事業者などへの支払いについては、消費税の負担が増します。金額の大小や取引の重要性などを考慮して対応を決めなければなりません。考えられる対応には、

  • 消費税の負担増を受け入れ、これまでどおりの取引を行う
  • 消費税の負担増を考慮し、値下げ交渉を行う
  • インボイス発行事業者への移行をお願いする

などがあります。

自社で消費税の負担増を受け入れる場合は、事前に資金繰りへの影響をシミュレーションしておくことが大切です。また、値下げ交渉やインボイス発行事業者への移行のお願いについては、独占禁止法や下請法に違反しないよう注意が必要です。消費税の負担を超える値下げやインボイス発行事業者への移行について、強制的なやり方をした場合は違反となります。対等な立場で交渉するようにしましょう。

4 売手・買手共通ですべきこと

特に、経理や営業部署の社員への研修を実施しましょう。経理部に対して営業部や取引先からインボイスに関する問い合わせを受けるケースが増えてくるでしょう。まずは、

  • 自社のインボイス発行が始まる時期
  • 従来からの変更点(記載項目)

は押さえるようにしましょう。また、制度が始まる2023年10月以降は、新規取引先がインボイス発行事業者かどうか、免税事業者かどうかの確認も行わなければなりません。社内でインボイスに関する問い合わせの専任担当者を決めておくなど社内体制を整えておくと、スムーズな対応が可能になります。

以上(2023年7月作成)
(監修 税理士法人アイ・タックス 税理士 山田誠一朗)

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画像:haruiro-Adobe Stock

【海外展開の手引(4)】無料の基礎データによる市場調査/ASEAN・中国・台湾・香港編

書いてあること

  • 主な読者:販路の拡大や生産コスト削減などのために、ASEAN諸国・中国・台湾・香港への海外展開を検討している経営者
  • 課題:現地の市場調査を本格的に始める前に、基礎的なデータを集めて検討したい
  • 解決策:まずは各国・地域の基礎的なデータを無料で入手できるウェブサイトを活用する

1 海外展開先の検討は、まず東南アジアや東アジアから

日本の企業が海外展開を検討する上で最初に対象となるのは、距離的に近く、国内産業との補完性が高い東南アジア・東アジア諸国でしょう。東南アジア諸国および中国との貿易額は、日本の貿易総額の4割程度に上り、経済的に密接な関係にあります。

また、人口規模や経済が拡大している国・地域が多く、販路開拓先としても労働力の供給元としても魅力的な市場といえます。

この記事では、ASEAN諸国・中国・台湾・香港(以下「対象国・地域」)への海外展開を検討する際に、各国・地域の基礎的なデータを無料で収集できる情報ソースを紹介します。

2 対象国・地域の統計機関ウェブサイト

ターゲットとする市場に関する詳細な情報を入手する先として、各国・地域の統計機関のウェブサイトが挙げられます。

総務省「外国政府の統計機関」などによると、対象国・地域の統計機関ウェブサイトは次の通りです。

■インドネシア:Badan Pusat Statistik(BPS)(インドネシア中央統計庁)■

https://www.bps.go.id/

■カンボジア:National Institute of Statistics(NIS)(カンボジア統計局)■

http://www.nis.gov.kh/index.php/en/

■シンガポール:Singapore Department of Statistics(DOS)(シンガポール統計局)■

https://www.singstat.gov.sg/

■タイ:National Statistical Office(NSO)(タイ王国統計局)■

http://www.nso.go.th/sites/2014en

■台湾:National Statistics Republic of China(Taiwan)(中華民国行政院主計総処)■

https://eng.stat.gov.tw/

■中国:National Bureau of Statistics of China(中国国家統計局)■

http://www.stats.gov.cn/english/

■フィリピン:Philippine Statistics Authority(PSA)(フィリピン統計機構)■

https://psa.gov.ph/

■ベトナム:General Statistics Office of Vietnam(ベトナム統計総局)■

https://www.gso.gov.vn/en/homepage/

■香港:Census and Statistics Department(香港特別行政区政府 政府統計処)■

https://www.censtatd.gov.hk/en/

■マレーシア:Department of Statistics Malaysia(マレーシア統計庁)■

https://www.dosm.gov.my/portal-main/home

■ミャンマー:Central Statistical Organization(CSO)(ミャンマー中央統計局)■

https://www.csostat.gov.mm/

■ラオス:Lao Statistics Bureau(ラオス統計局)■

https://www.lsb.gov.la/en/home/

3 対象国・地域の情報収集に活用できる主な専門機関(日本語)

1)ASEAN諸国に関する専門機関:日本アセアンセンター

日本アセアンセンター(正式名称:東南アジア諸国連合貿易投資観光促進センター)は、日本とASEAN諸国との貿易、投資、観光、交流の促進を目的としています。具体的な活動内容としては、各種セミナーやワークショップの開催、人的交流プログラム、各種情報提供などの事業を行っています。

同センターのウェブサイトでは、ASEAN各国の基本データや日本とASEAN諸国との関係、セミナーなどの各種イベント情報などを公開しています。

■日本アセアンセンター■

https://www.asean.or.jp/ja/

2)中国に関する専門機関:日中投資促進機構、日本国際貿易促進協会

日中投資促進機構は、日本企業の対中投資の拡大を通じて日中両国の健全かつ安定的な経済関係の発展に寄与することを目的としています。具体的な活動内容としては、中国への投資環境改善の要望、中国政府による外資政策や中国ビジネス実務などに関するセミナー活動、会員からの相談の受け付けなど、対中投資に関わる実務サービスを提供しています。

同機構では、会員向けに中国投資関連の法令の日本語訳なども提供しています。

■日中投資促進機構■

http://jcipo.org/

この他、日本国際貿易促進協会は、日中国交正常化前の1954年に創立された機関で、対中貿易や経済交流の促進を目的としています。具体的な活動内容としては、経済政策や日中の経済交流などに関して中国政府と意見交換を行ったり、中国での投資環境の視察を行ったりしています。

また、輸出入貿易などに関する相談に応じたり、中国の知的財産権などに関する情報収集およびアドバイスを行ったりしています。

■日本国際貿易促進協会■

https://japit.or.jp/

3)台湾に関する専門機関:日本台湾交流協会

日本台湾交流協会は、日本と台湾の間の交流関係の維持を目的としています。具体的な活動内容としては、日台間の外交面での実務に関わる業務や、貿易・経済・技術交流を支援する事業などを行っています。

同協会のウェブサイトでは、台湾の経済や日台関係などの情報を公開しています。

■日本台湾交流協会■

https://www.koryu.or.jp/

4)香港に関する専門機関:香港経済貿易代表部

香港経済貿易代表部(香港特別行政区政府 駐東京経済貿易代表部)は、香港の駐日代表機関として、主として日本と香港の経済・貿易関係や相互理解、文化・観光面での交流を深めることを目的としています。具体的な活動内容としては、日本における香港のPRおよび文化活動、要人の訪問支援、香港の投資環境に関する情報提供などを行っています。

2022年12月には「企業・人材誘致専門チーム」が設置され、ターゲットとなる企業や人材の香港への進出を促進するとともに、世界のトップ100大学と連絡を取って香港への人材受け入れ制度をPRしています。

同代表部のウェブサイトでは、香港の基本情報の他、香港での経済動向などに関するニュースレター「香港ライナー」などを公開しています。

■香港経済貿易代表部■

https://www.hketotyo.gov.hk/japan/jp/

以上(2023年6月更新)

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【海外展開の手引(3)】無料の基礎データによる市場調査/世界編

書いてあること

  • 主な読者:販路の拡大や生産コスト削減などのために、海外展開を検討している経営者
  • 課題:現地の市場調査を本格的に始める前に、基礎的なデータを集めて検討したい
  • 解決策:まずは各国・地域の基礎的なデータを無料で入手できるウェブサイトを活用する

1 海外の市場調査は、無料の基礎データの活用から

海外展開を行うには、国内では想定できないようなリスクもあります。ですから、検討するに当たって、想定する国・地域に関する市場規模、参入企業の動向、法規制などの基礎情報の他、言語や慣習など、さまざまな観点から情報を収集することが欠かせません。

本格的な検討段階になれば、外部コンサルタントなどの起用も視野に入れる必要がありますが、初期の検討段階であれば、

無料で収集できる基礎データを活用する

だけでも、一定の情報を集めることができます。

この記事では、世界各国・地域の海外市場に関する基礎的な情報を無料で収集するための情報ソースを紹介します。

2 世界各国・地域の市場に関する情報ソース(日本語)

1)外務省「国・地域」

外務省「国・地域」では、各国・地域の面積、人口、民族、言語、宗教などの一般情報の他、主要産業、GDP、物価上昇率などの経済に関する基礎データを公表しています。

■外務省「国・地域」■

https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/

2)総務省「世界の統計」

総務省「世界の統計」では、各国・地域の人口、経済、社会、環境などのデータを抽出してまとめた統計を公表しています。

なお、国際連合(UN)や国際通貨基金(IMF)などの国際機関が公表しているデータ(詳細は後述)は、多くが英語で作成されており、検索方法やデータの見方が分かりにくい場合があります。「世界の統計」では、こうしたデータの日本語訳が集約されています。

■総務省「世界の統計」■

https://www.stat.go.jp/data/sekai/

3)国際協力銀行「投資環境資料のご案内」

国際協力銀行(JBIC)「投資環境資料のご案内」では、日本企業の関心が高い国の投資環境を紹介するレポートを公表しています。国土、民族、社会、歴史などの概観をはじめ、経済概況や直接投資受け入れ動向、外資導入政策と管轄官庁、主要関連法規、許認可・進出手続き、税制、貿易管理・為替管理、労働事情、物流・インフラなどさまざまな角度から投資環境を紹介しています。

また、地域ごとの特徴や、付録として進出企業へのアドバイスや国内外での相談窓口なども紹介しています。作成年が古いものがあったり、紹介している国が限定されていたりしますが、関心のある国のレポートが見つかれば、有益な情報ソースとなるでしょう。

■国際協力銀行「投資環境資料のご案内」■

https://www.jbic.go.jp/ja/information/investment.html

4)日本貿易振興機構「国・地域別に見る」

日本貿易振興機構(ジェトロ)「国・地域別に見る」では、ジェトロが海外事務所などのネットワークを駆使して入手した各国・地域の経済、産業、統計、貿易・投資実務などに関する情報を、国・地域別、目的別、産業別に整理して公表しています。

また、特定の国・地域に関する資料・情報源や、ビジネスに関わるニュースなども見ることができます。

■日本貿易振興機構「国・地域別に見る」■

https://www.jetro.go.jp/world/

5)中小企業基盤整備機構「海外ビジネスナビ」

中小企業基盤整備機構「海外ビジネスナビ」では、海外展開に関する実務情報や取り組み事例を紹介しています。

また、海外ビジネス情報として、各地の現地レポートや調査レポートも掲載しています。

■中小企業基盤整備機構「海外ビジネスナビ」■

https://biznavi.smrj.go.jp/

6)海外投融資情報財団「海外投融資」

海外投融資情報財団(JOI)「海外投融資」では、主に会員向けに、隔月発行しているビジネス情報誌「海外投融資」の内容を、バックナンバーも含めて紹介しています。基本は会員限定ですが、一部のレポートが一般公開されています。

■海外投融資情報財団「海外投融資」■

https://www.joi.or.jp/magazine/

3 世界各国・地域の主な指標データに関する情報ソース(英語)

1)男女別・年齢階級別などの人口の推移

国際連合(UN)「Demographic Yearbook」では、各国・地域が国際連合に報告したデータに基づいた1948年以降の人口を公表しています。男女別・年齢階級別人口や主要都市別人口、人口動態(出生率、死亡率など)などを調べることができます。

■国際連合「Demographic Yearbook」■

https://unstats.un.org/unsd/demographic/products/dyb/

2)推計人口の推移および将来推計人口

国際連合(UN)「World Population Prospects 2022」では、1950年以降の推計人口の推移、2100年までの将来推計人口を公表しています。

■国際連合「World Population Prospects 2022」■

https://population.un.org/wpp/

3)国内総生産・消費者物価指数などの経済指標

国際通貨基金(IMF)「World Economic Outlook Database April 2023」では、国内総生産・消費者物価指数などの経済指標を公表しています。

■国際通貨基金「World Economic Outlook Database」■

https://www.imf.org/en/Publications/WEO/weo-database/2023/April

4)農作物、畜産物、水産物、林産物ごとの各国・地域の生産量などのデータ

国際連合食糧農業機関(FAO)「FAOSTAT」では、農作物、畜産物、水産物、林産物ごとの各国・地域の生産量などのデータを公表しています。

■国際連合食糧農業機関「FAOSTAT」■

https://www.fao.org/faostat/en/#home

5)労働力に関する情報(経済活動人口、就業者、失業者などのデータ)

国際労働機関(ILO)「ILOSTAT」では、労働力人口、就業者、失業者、賃金、労働時間、労働災害、社会保障などのデータを公表しています。

■国際労働機関「ILOSTAT」■

https://ilostat.ilo.org/

6)衛生状態や感染症に対する予防状況

世界保健機関(WHO)「THE GLOBAL HEALTH OBSERVATORY」では、各国・地域の基本的な衛生サービスを受けられている人の割合や、ヒブ、豚サーコウイルス3型といった感染症に対するワクチン接種率などを公表しています。

■世界保健機関「THE GLOBAL HEALTH OBSERVATORY」■

https://www.who.int/data/gho/data/countries

7)新型コロナウイルス感染症に関する情報

世界保健機関(WHO)「WHO Coronavirus(COVID-19)Dashboard」では、新型コロナウイルス感染症による各国・地域の感染者数および死者数に関する累計や週ごとの推移を公表しています。また、各国・地域の感染症対策やワクチン接種率も公表しています。

■世界保健機関「WHO Coronavirus(COVID-19)Dashboard」■

https://covid19.who.int/

以上(2023年6月更新)

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画像:pixabay

【海外展開の手引(2)】リスクの把握と市場調査で「想定外の出来事」を回避する

書いてあること

  • 主な読者:販路拡大や生産コスト削減などのために、海外展開を検討している経営者
  • 課題:海外展開に当たって「想定外の出来事」で失敗したくない
  • 解決策:想定されるさまざまなリスクを把握して対策を講じるとともに、さまざまな角度から現地調査を行った上で海外展開を検討する

1 情報さえあれば「想定外の出来事」は回避できる

相応のコストや労力を費やして実現した海外展開が、「想定外の出来事」によって損失を被り、撤退を余儀なくされることもあります。こうした事態を避けるには、海外展開を検討する段階で「想定の範囲」を広げておくことが大切です。そのために必要なのは、なるべく多くの情報を集めておくことです。特に重要なのは、

現地のリスクの把握と市場調査

です。

リスクを把握しておけば、事前にリスクを回避したり、損失を最小限に抑えたりするための対策を講じておくことができます。また、市場調査をしっかりと行うことによって、構想段階の見通しに近い成果を得られる可能性が高まります。

この記事では、海外展開を検討する際に想定すべきリスクおよびその対策と、市場調査を行う上でのポイントを紹介します。

2 海外展開を検討する際に想定すべきリスク

1)情報の不足そのものがリスク

土地勘がなく、対面でのコミュニケーションが難しい外国企業との取引は、日本国内で取引をする場合に比べ、情報が不足しがちです。

情報の不足は、契約不履行(商品の相違、送金遅れなど)、詐欺、取引相手の倒産、現地政府の政策による活動制限、その他商習慣の違いなどに起因するトラブルの発生につながりかねません。自社での情報収集を強化するだけでなく、現地事情に精通した、信頼できる専門家や専門機関を活用し、確かな情報を得られるようにしておきましょう。不足しがちな情報としては、取引相手(外国企業)の信用情報、カントリーリスク、商習慣や文化の違いなどがあります。

なお、帝国データバンクや東京商工リサーチでは、提携先の現地調査機関から取得した外国企業の信用情報を提供しています。

■帝国データバンク「海外企業信用調査」■

https://www.tdb.co.jp/lineup/overseas/index.html

■東京商工リサーチ「海外企業調査レポート(ダンレポート)」■

http://www.tsr-net.co.jp/service/detail/dun-report.html

2)カントリーリスク

海外展開を行う場合、現地の「カントリーリスク」を踏まえる必要があります。これは、個別の取引相手が持つ商業リスク(契約不履行、詐欺、倒産など)とは別に、取引相手国の政治・経済・社会環境に起因する損害発生のリスクのことです。

具体的なカントリーリスクとしては、次のようなものが挙げられます。

  • 著作権や商標権など、知的財産権の侵害が頻発している
  • 行政手続きが不透明なことによる輸入手続きの遅延や、法的根拠が不明な流通の差し止めが生じる
  • 政府が民間企業の経営や案件に介入することがある
  • 政権交代が経済の混乱につながりやすい
  • 民族や宗教の対立が根深く、紛争が起こりやすい
  • 衛生環境への取り組みや感染症対策が不十分で、感染症の影響を受けるリスクが高い

なお、日本貿易保険(NEXI)や日本商工会議所では、輸出に伴うカントリーリスクなどに対応した保険制度も運用しています。取引相手を取り巻く環境などを踏まえ、こうした保険制度の活用を検討してもよいでしょう。

■日本貿易保険(NEXI)「貿易保険」■

https://www.nexi.go.jp/service/

■日本商工会議所「輸出取引信用保険制度」■

https://www.ishigakiservice.jp/export-transaction

3)商習慣や文化の違い

海外企業との取引に当たっては、商習慣や文化の違いによるトラブルが生じる可能性があります。

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ベースとなる考え方が違う以上、「常識的に考えれば○○してくれるであろう」という、以心伝心のコミュニケーションは海外企業との間では成立しません。

商習慣や文化の違いによるトラブルのリスクを低減するために、取引相手に求める詳細な事項を契約書に盛り込んで遵守させることが大切です。

4)手続きが煩雑

海外企業との取引においては、商品が輸出企業から輸入企業の手に渡るまでに多くの企業・機関が関与するため、手続きも煩雑になりがちです。しかし、手続きが滞ってしまうと、何らかの処罰の対象になったり、遵法意識が低いなどとして自社の信用低下につながったりするリスクがあります。

手続きに漏れがないよう、社内でのチェック体制を整える他、貿易取引の支援機関に照会するなどして、トラブルが発生しないようにしましょう。

5)輸出入の規制

貿易取引では、国内に持ち込まれると問題となる商品(病害虫が付いた農作物、偽ブランド商品、コメなど国の政策で保護されている農作物・工業製品)や、国外に持ち出すのが好ましくない商品(希少動植物など)については、輸出入が規制されています。

家庭用ゲーム機器など、通常の企業活動では取引の規制が想定しにくい商品でも、性能の高さや使われているソフトウエアなどを理由に、規制対象となっている場合もあります。もし輸出しようとした商品が規制の対象となっている場合、取引そのものが不履行となって損害が生じたり、十分な数量の輸出ができなくなったりします。

日本からの輸出が規制されている品目については、税関(財務省関税局)のウェブサイト「輸出入禁止・規制品目」で確認できます。また、輸出先で輸入が規制されている品目については、日本貿易振興機構(以下「ジェトロ」)がウェブサイト上で公開している「国・地域別に見る」で確認できます。

■税関(財務省関税局)「輸出入禁止・規制品目」■

https://www.customs.go.jp/mizugiwa/kinshi.htm

■ジェトロ「国・地域別に見る」■

https://www.jetro.go.jp/world/

6)為替レートの変動

海外企業との取引は、基本的に外貨によって行われます。当事者企業双方の利便性の観点から、米ドルやユーロなど基軸通貨(またはそれに準ずる通貨)を利用するのが一般的ですが、これらの通貨の為替レートは時として大きく変動します。

為替レートの変動への対応策としては、「円建てで取引する」「為替予約(一定時期後の外貨と円の交換を、事前にレートを決めて予約する金融取引のこと)をして事前に交換レートを確定させる」などが挙げられます。金融機関では為替レート変動対策の金融商品を提供している場合があるので、渉外担当者に確認してもよいでしょう。

7)感染症の影響を受けるリスク

展開する国や地域によっては、衛生環境への取り組みや感染症対策が不十分なため、マラリアやデング熱などの感染症にかかるリスクがあります。感染症対策に伴って、商取引に影響が出る可能性がある他、国内での行動が制限されたり、国外との行き来が困難となったりすることも考えられます。

外務省のウェブサイトの他、対象となる国や地域の保健衛生を管轄する部署などを通じて、事前の情報収集に努めましょう。

■外務省 海外安全ホームページ「医療・健康関連情報」■

https://www.anzen.mofa.go.jp/kaian_search/

3 市場調査を行う上でのポイント

1)仮説を立てる

海外展開を検討する際に、市場調査は不可欠です。とはいえ、全部の国・地域を対象に調査をするのは時間的にも資金的にも無理があります。そのため、「文化が近いから自社製品が受け入れられそう」「『現地で自社製品に近いものが好評を博している』と聞いたので、市場として有望」「1人当たりの実質GDPが高水準なので、購入してもらえそう」といった仮説を立て、調査対象国・地域や調査すべきテーマを絞るようにします。

2)実際に調査してみる

仮説を立てたら、それに基づいて海外展開を想定する国・地域についての市場調査を行います。国内での情報収集ルートは、統計データの確認、書籍や雑誌などの文献調査、インターネットでの検索、関係者へのヒアリング、支援機関などが開催するセミナーへの参加などがあります。市場調査の項目例として、次のようなものが挙げられます。

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なお、市場調査の基本となる各国・地域の基礎データを無料で収集するための方法を、次のコンテンツで紹介しています。

国内での一定程度の調査を終え、海外展開の見通しが立つようであれば、現地に直接足を運び、生の情報を仕入れることも必要です。現地を直接見ることで事情を把握し、事前に調査した情報が正確なのか確認することができます。さまざまな国で開催されるメッセ(見本市)などに足を運ぶのもよいでしょう。

以上(2023年6月更新)

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画像:unsplash

現場の業務をDXで効率化!「ブルーカラー」の働き方改革を促す現場改善テック

書いてあること

  • 主な読者:現業職が多い職場(製造業の工場、小売業の実店舗など)の管理者
  • 課題:紙ベースでのやり取りが当たり前。業務が属人化しており、DXが進まない
  • 解決策:外部ツールの使用に限らず、自社開発も視野に入れてDXを進めていく

1 「現場」にこそDXによる業務効率化が必要

突然ですが、御社の現場では次のような課題はないでしょうか?

  • 紙によるアナログな管理で、情報の閲覧や検索が困難になっている
  • 社員各々の経験に業務を頼っていて、ノウハウが共有されていない
  • 社員が現場に1人で出ており、情報共有や社員間の連携がうまくいかない

こうした課題を解決できるのが、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。例えば、紙による資料管理をデジタル化するだけでも記録ミスの削減や社員の作業負担が軽減され、残業時間の削減が期待できます。ただ、DXを進めるために市販の外部システムを使おうとすると、中小企業の規模では必要のない機能が含まれていたり、コスト面の負担が大きかったりして、一歩を踏み出せないケースもあります。

そこで、この記事では、システムを自社開発することでDXを実現した企業の事例を中心に、具体的にDXを進めていく際の参考事例を紹介します。

2 自社開発による「現場改善テック」事例

1)作業日報をアプリで見える化:サンコー技研(大阪府東大阪市)

1.取り組み内容

プリント基板や光学部品、フィルム部材製作などを手掛ける同社では、日報・生産管理アプリの「スマファク!」を自社開発し、販売もしています。利用者は、個人別に作成されたQRコードをスマートフォンのアプリで撮影することで、その日の作業記録を入力できるだけでなく、1日の時間や案件ごとにグラフ形式で作業時間を確認できます。

2.取り組みのきっかけ

これまで同社では、生産実績やトラブルなどの記録を手書きの日報で作成しており、その作業自体に負担がかかることや、過去の情報を見直しづらいことが課題でした。そのため、作業日報のデジタル化を検討したものの、既存のシステムでは必要のない機能も含まれている上、ライセンスコストの負担が大きかったことから自社開発に至ったといいます。開発に当たっては、大阪府IoT推進ラボが運営する「IoTマッチング」を使ってサン・エンジニアリング(大阪府大阪市)と協働し、アプリ開発に取り組みました。

3.取り組みの成果など

日報が手書きからモバイル端末での入力に変わったことで、記録業務の手間や記録ミスの削減、工程ごとの正確な時間管理ができるようになったといいます。

また、2020年4月から「スマファク!」の外販を始め、中小規模の町工場に限らず、大手企業からの引き合いもあるといいます。

2)納期管理や進捗管理を見える化:日本ツクリダス(大阪府堺市)

1.取り組み内容

金属加工、システム開発・販売などを手掛ける同社では、納期管理・進捗管理システムの「エムネットくらうど」を自社開発し、販売もしています。仕事の優先順位や進み具合を知るための納期管理・進捗管理を重視したシステムで、紙の図面の情報をシステムに入力し、発行したバーコードを図面に貼り付け管理する仕組みとなっています。

2.取り組みのきっかけ

町工場での納期管理・進捗管理はホワイトボードや経営者の頭の中だけで把握していることが多く、情報共有が難しいという課題がありました。

また、既存の製造業向けの生産管理システムは、町工場で使うには複雑で必要のない機能も入っており、導入コストも高いことから、必要な機能だけをそろえたシステムを自社開発することに至ったといいます。

3.取り組みの成果など

工程の進捗状況が誰でも見られるようになったことで、クライアントからの進捗確認の問い合わせに対して、作業現場まで聞きに行かずとも素早く回答できるようになり、クライアントからの信頼度が向上したそうです。また、作業効率が上がったことで完全週休2日制も実現できたといいます。

なお、外販した「エムネットくらうど」は現在100社以上の導入実績があり、導入企業の約8割が従業員30人以下の町工場としています。

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3) 顧客管理ツール開発でDX化を実現:三和鍍金(群馬県高崎市)

1.取り組み内容

メッキ、塗装、研磨などの金属表面処理を手掛ける同社では、顧客管理ツールの「見積り案件管理表」を自社開発し、運用しています。

2.取り組みのきっかけ

紙ベースでの管理方法では、必要なデータをすぐに引き出せない、資料を保管するスペースが圧迫される、火災などが起きたときに紛失する危険があるなどの課題がありました。

一度は有料の販売管理システムを導入したものの、社員数などの会社全体の規模感が見合わなかったり、管理項目が難解だったりすることを理由に数カ月で利用を取りやめ、自社開発に至ったといいます。

3.取り組みの成果など

身の丈に合った丁度いいシステムになっているので、何よりも継続的に使用するにあたってストレスが限りなくゼロに近いというメリットがあります。これは自社開発だからこそ実現できたと考えています。

システムを導入することによって、月あたりおよそ40~50件の新規お問い合わせに対して営業2人で管理ができる体制が構築されました。案件の共有も即座にでき、また過去データ(図面・処理内容・見積り単価等)を確認することも容易であるため、営業と事務間のコミュニケーションが円滑化され、生産管理の効率が飛躍的に上昇したといいます。

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4)顧客管理などの業務プロセスをデジタル化:サーフエンジニアリング(神奈川県綾瀬市)

1.取り組み内容

旋盤による機械加工、ガス事業者向け特殊機械製造などを手掛ける同社では、町工場でも使える案件管理アプリを開発、導入したことで、見積もり作成、顧客管理、納期管理、図面管理などの業務プロセスのデジタル化を実現しています。

2.取り組みのきっかけ

同社では、これまで図面をアナログ管理しており、顧客から問い合わせが入ると、過去の類似案件を探したり、熟練者の記憶に頼ったりして見積もりを作成していたこと、納期も受注メールを遡って確認するといった手間が課題になっていました。

また、市販の業務管理ソフトを試したものの、自社のニーズと合わず、価格も高額になることから、同社のウェブサイトを作成したジェイネクスト(神奈川県横浜市)と共同での開発に至ったといいます。

3.取り組みの成果など

アプリの導入前と比較して、見積もり作成時間が45%、顧客への納期回答時間が90%短くなったほか、納期遅れが95%削減できたとしています。

5)社内向けポータルサイトでDXを実現:NISSYO(東京都羽村市)

1.取り組み内容

業務用トランス・リアクトル・制御盤の設計・製造などを手掛ける同社では、自社制作したクラウド型のポータルサイトの「アスヨクDX」を用いたデータドリブン経営(データを活用してビジネス上の意思決定を行う経営手法)に取り組んでいます。全社員にiPadを配布し、残業時間の確認、社内規定、Q&Aなどのデータを集め、Looker Studio(GoogleのBIサービス)でデータの見える化を図っています。

2.取り組みのきっかけ

2017年に発表した経営計画の社長コメントで、バックヤードをデジタル化で簡素化していくことを宣言したこと、売り上げの増加に伴い、業務量が増えたことで慢性的な人材不足になっていたことをきっかけに、iPadを正社員全員に配布し、ペーパーレス化やクラウド上に社内のデータを集める取り組みを始めました。

3.取り組みの成果など

クラウド上に図面データをアップロードし、各自が持っているiPadで見るという取り組みによって、年間約60万枚のペーパーレスを実現しているといいます。

また、同社はDX推進の準備が整っていることを国が認定する「DX認定事業者」に認定されている他、日本の中小企業の規範となるDX推進態勢を構築したとして、2022年のITコーディネータ協会表彰で優秀賞(独立行政法人情報処理推進機構理事長賞)を受賞した実績があります。

3 外部サービスの導入による「現場改善テック」事例

1)音声認識で安全な接客サービスの提供を実現:BONX(東京都渋谷区)

音声コミュニケーションプラットフォーム・ヒアラブルデバイスの企画開発などを手掛ける同社では、音声通信・音声認識ツールの「BONX WORK」を提供しています。スマートフォンアプリと専用のワイヤレスイヤホンを使うことで通信距離の制限や混線の心配がなく、ハンズフリーでの会話が可能です。

また、会話内容の文字起こしや、音声を認識し、データ化する機能もあります。導入事例として、松屋銀座では「音声採寸ソリューション」として、紳士服の採寸で「肩幅43センチ」などと声に出すと、そのまま顧客データベースに入力されるシステムが採用されています。

このシステムの導入によって、今まで2人1組でやっていた採寸を1人でできるようになり、フロア内の密を防いだり、スタッフの人数を減らしたりしつつも安全な接客サービスの提供につながったといいます。

このサービスは、接客・作業中でもハンズフリーで会話ができることや、事務所からフロアまで足を運ばずに情報共有ができることから、介護業、飲食業、宿泊業の現場でも導入実績があります。

2)デスクレスワーカーの情報共有を効率化:サイエンスアーツ(東京都新宿区)

同社では、ライブコミュニケーションプラットフォーム「Buddycom」を提供しています。スマートフォン、タブレット用のアプリと専用のイヤホン、ヘッドセットを使うことで、現場の状況をLIVE動画で共有しながらのグループ通話、通話内容の音声テキスト化などの機能を利用することができます。

導入事例として、GENDA GiGO Entertainment(東京都港区)が運営するゲームセンターでは、ワスド(東京都中野区)が提供するスタッフ呼び出しサービスの「デジちゃいむ」と機能を連携させ、接客業務の効率化を図っています。このシステムは、問い合わせをしたい利用客がゲームの筐体に設置された二次元コードをスマートフォンで読み取り、問い合わせ内容を送ると、問い合わせ内容がスタッフ全員に音声形式で通知され、そのままBuddycomを使ってスタッフ同士で会話をして、素早く対応方法を決められるという仕組みです。

この結果、利用客を待たせる時間が問い合わせ1件当たり10秒程度削減されたといいます。

3)社内文書をクラウド上で作成:クイックス(愛知県刈谷市)

マニュアル制作、システム・プログラム開発などを手掛ける同社では、業務手順書、社内規程書、業務マニュアルなどの社内文書作成を効率化できるツールの「i-ShareRDX」を提供しています。

社内文書の作成に必要なフォーマットがそろっており、クラウド上で文書が作成できます。そのため、人によって文書のレイアウトやデザインにバラツキが出ない、文章を見ているユーザーが文書の作成者や管理者にコメントを残してフィードバックできる、文書を管理する際のバージョンや改訂履歴が残るといった特徴があります。

また、パソコン、タブレット、スマートフォンから場所を選ばず社内文書を閲覧できるだけでなく、紙での出力も可能となっています。

4 参考:DX導入に役立つ情報

1)独立行政法人情報処理推進機構(IPA):DX SQUARE

DXに関する情報を発信するウェブサイトです。DXの基礎知識や用語集をはじめ、自社のDXレベルを測るための指標、業種ごとのDX推進事例などを紹介しています。

■DX SQUARE■

https://dx.ipa.go.jp/

2)IPA:マナビDX

デジタルスキルに関する学習コンテンツを紹介するウェブサイトです。DXの基礎的な講座をはじめ、社員のキャリアアップや企業研修に活用できる講座の情報をまとめています。

■マナビDX■

https://manabi-dx.ipa.go.jp/

3)中小企業基盤整備機構:ここからアプリ

中小企業がDX推進に関して、導入しやすい業務用アプリを紹介するウェブサイトです。アプリの概要だけでなく、実際の企業による導入事例なども紹介しています。

■ここからアプリ■

https://ittools.smrj.go.jp/

4)経済産業省:DXセレクション

中堅・中小企業などのモデルケースとなるような優良事例を「DXセレクション」として紹介する取り組みです。優良事例を選定・公表することで、地域内や業種内での横展開をはじめ、中堅・中小企業などにおけるDXの推進や取り組みの活性化につなげていくことを目的としています。

■DXセレクション■

https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-selection/dx-selection.html

以上(2023年6月作成)

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