【朝礼】“やる”と決めればスキルは後から付いてくる

皆さんは、新しいことにチャレンジできる機会がありながら、自分のスキル不足を理由に、挑戦を見送ってしまった経験はありませんか? 自分の能力を客観的に分析するのは大切なことですが、もし皆さんが、スキルがないとチャレンジは無理だと考えているのだとしたら、それは間違いです。今日はチャレンジが苦手という人に向けて、レオナルド・ダ・ヴィンチの話をします。

ダ・ヴィンチは、「モナ・リザ」「最後の晩餐(ばんさん)」などの名画で知られる画家ですが、絵の他にも彫刻、音楽、解剖、軍事、土木などさまざまな分野に精通し、なおかつ各分野で顕著な功績を残しました。ダ・ヴィンチがどうやって多様な分野で一流のスキルを身に付けていったのか。そのヒントとなるエピソードがあります。

ダ・ヴィンチは若い頃、イタリアのミラノで芸術活動をしようと考えました。しかし、当時のミラノの権力者は芸術よりも軍事に興味を持っていたため、ダ・ヴィンチはまず「兵器を作れる軍事家」として自分を売り込んだのです。すごいのが、このときダ・ヴィンチは、軍事の知識をほとんど持っていなかったということ。なんと彼は、ミラノに招かれることが決まってから軍事を一から勉強し、そこにもともと持っていた工学の知識を組み合わせることで、さまざまな兵器のアイデアを打ち出したのです。こうして権力者の信頼を勝ち取ったダ・ヴィンチの元には、本分である絵や彫刻の仕事も舞い込むようになりました。

ダ・ヴィンチが軍事をほとんど知らないレベルから、短期間で権力者を認めさせるレベルの軍事家にまで成長できた理由は何でしょうか。もちろん、彼が類いまれなる頭脳を持っていたのもあるでしょうが、皆さんに注目してほしいのは、彼がほぼ知識ゼロの状態で「自分は軍事家です」と権力者に宣言したことです。何が何でも勉強せざるを得ない状況を自分でつくり出したことで、自身にプレッシャーを与え、それをバネに成長していったのでしょう。

私がこの話を通じて皆さんに伝えたいのは、「スキル不足を理由にチャレンジを諦めるぐらいなら、まず“やる”と決めてしまってはどうか」ということです。火事場のばか力ではないですが、仮にスキルが不足していたとしても、チャレンジを成功させなければならない状況に自分を追い込めば、人間はその不足を補うために努力できるものです。“やる”という意志さえあれば、スキルは後から付いてきます。

チャレンジが苦手な人に足りないものがあるのだとしたら、それはスキルではなく勇気です。失敗するのが不安なら心配はいりません。仮に皆さんが何かにチャレンジして失敗したとしても、私はそれを責めたりはしません。なぜなら、チャレンジを成功させるためにスキル不足を埋めようとした皆さんの努力は、決して無駄ではなく、次のチャレンジを成功に導く大きな財産になるからです。

以上(2022年8月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】この一言であなたは成長できる

最近は人間同士、企業同士、どこを見ても競争、勝ち残りが話題になっています。確かに我々は厳しい環境を生き延びていくためには競争に勝ち残っていくしかありません。しかし、自分だけ、自社だけがよいと考えてしまうと、大切なことを見逃してしまうことがあります。そこで今日は皆さんに、自分以外の人に対する配慮の大切さを知ってほしいと思います。

皆さんは「情けは人のためならず」ということわざを知っているでしょう。情け、とは同情や愛情、言い換えれば「哀れみや慈しみの気持ち」という意味があります。この意味を「他人に情けをかけてやることは、甘やかすことになるので、その人のためにならない」と思っていたとしたら、それは間違いです。

このことわざの意味は、「他人に情けをかけることは、その人のためばかりではなくて、自分のためでもある」というものです。つまり、他人に対する行いは巡り巡っていずれ自分にも返ってくるのだから、日ごろから積極的に他人に対する思いやりや親切心を大切にしましょう、ということです。

昨今の日本人はやたらとせっかちです。私も含めて多くの人がそうですが、何事もすぐに結果が出なければ納得できません。「いつになるか分からないけど、そのうちいいことがあるだろう」なんて、そんな悠長なことには耐えられません。当てにならない「情け」なんてものにかかわっている暇はないのです。

しかし、他人への「情け」は、自分が成功のチャンスをつかんだり、成長したりするきっかけになることがあります。

私がお付き合いしている大学の先生は、友人や先輩から「大学では自分の研究だけやっていればよい」との忠告を受けたものの、他の教室から研究実験の依頼が多くありました。頼りにしてくる人々の顔を見ると、どうしてもやってあげたくなり、普通の人の何倍もの仕事をしていました。その結果、先生は依頼ごとに、それに必要となる専門知識を習得しました。先生は他の教室の研究に協力したことが、その後の自分自身の何百という研究成果につながったといいます。

このように、人が困っているときに手助けをしてあげれば、その恩恵が自分へと返ってきます。つまり、親身になって周りの人の相談にのったり、頼ってくるさまざまな人と交流したりするうちに、自分のビジネスに対する気付きとなったり、新しいアイデアや、新たな商談へつながったりするなど、結果として自分のためになるのです。

皆さんも、皆さん自身のために、今日から「情け」をかけてみてください。周囲から感謝される上、自分も成長できます。

難しく考える必要はありません。他人にとって難しくても、自分なら簡単にできることから始めてみるとよいでしょう。「私ができることであれば、お手伝いします」と言うだけでよいのです。

以上(2022年8月)

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画像:Mariko Mitsuda

【営業最強フレーズ集】プレゼン編3 「□□社のプレゼン内容で一番気に入っているのはどこですか?」

書いてあること

  • 主な読者:今よりレベルアップしたい営業担当者と、営業担当者を指導する営業管理職
  • 課題:現場ですぐに使えて顧客と信頼関係を築けるトークスクリプト的なものが欲しい
  • 解決策:シーンごとに「最強フレーズ」を、少なくとも1つは持っておく。あとは応用

□□社のプレゼン内容で一番気に入っているのはどこですか?

必ず確認したい競合他社の存在

法人営業の場合、通常、相手は複数社から話を聞き、その内容を比較検討しています。できればヒアリングの段階で「この件について当社以外からも話を聞いていますか?」と確認しておきましょう。

自社のプレゼンが終わった後に競合他社の提案内容を尋ね、自社との違いを明らかにします。また、競合他社が商品やサービスに関するウェビナーを多く開催している場合などは、一度実際に参加して聞いてみるのもよいでしょう。「□□社では、◆◆の機能に力を入れているような印象がありますが、御社向けプレゼンもそういう感じでしょうか?」など相手により具体的に質問できるようになります。

相手に本気度合いを示すことにも

相手との関係が良ければ、ダイレクトに「他社様のプレゼン内容を教えてください」とお願いしてみるのもよいでしょう。これが難しい場合は、冒頭で紹介した営業最強フレーズを使いましょう。相手が競合他社のプレゼン内容のどこを評価しているかを確認してみるのです。

そのときは、「(他社様のプレゼン内容の)お話を聞き、当社で足りない点があったら改めて調整しようと思っています。ぜひ御社のお役に立ちたいのです」と一言添えましょう。そうすれば、相手に本気度合いを示すことにもなります。

次の戦術を立てやすくなる

相手が競合他社のプレゼン内容のどこを評価しているかを確認すれば、次の戦術を組み立てやすくなります。

自社でも実現できることなのであれば、それを盛り込んで再度プレゼンさせてもらってもよいでしょう。反対に、自社では実現できないことであれば、対抗策として、「自社の価値を改めてお伝えする」という戦術を取るのがよいかもしれません。具体的な実績(できれば相手と同業他社)、他社での導入事例などを伝えるのが効果的です。

変化球を投げるのも有り

相手が競合他社のプレゼン内容のどこを評価しているかを確認したら、次の戦術として“変化球を投げる”のも有りでしょう。例えば、自社と競合他社との「ゼロサム」ではなく、「プラスサム」に視点を変えてみるのです。

「確かに□□社のそのサービスは、御社にとってメリットがあると思います。□□社と当社それぞれから御社にとって必要なサービスを“いいとこどり”して、御社オリジナルの一番良いパッケージをつくってみてはいかがでしょうか」といった具合です。

営業担当者はチャンスと新しいビジネスを創るのが大事

“いいとこどり”を提案すれば、全ては無理でも一部は成約ができて、売り上げにつながるかもしれません。また、その話が競合他社の耳に入れば、共同で新企画や営業ルートを創り出すチャンスになるかもしれません。

このように、競合他社のプレゼン内容を確認することは、チャンスを創り出すこと、もっと言えば「新しいビジネスが生み出せる」ことにもつながっていくのです。

以上(2022年8月)

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画像:Mariko Mitsuda

【管理会計】その投資、回収できる根拠はありますか?

書いてあること

  • 主な読者:感覚だけでなく、定量的な基準や根拠を持ってビジネスの判断をしたい人
  • 課題:多額の資金が必要になる投資の判断は難しく、数字での裏付けがほしい
  • 解決策:計算が簡単な回収期間法を用いる。初期投資額、投資後の見込みキャッシュ・フロー、目標となる投資回収期間の数値から、投資の要否判断を下す

1 質問:その投資、回収できる根拠はありますか?

工場の新設や機械の購入など大型の投資には、多額のお金が必要です。そのため、会社全体の資金繰りを考え、慎重に進めていかなければなりません。このような投資意思決定時に使われる管理会計上の手法のうち、最も簡単なものが「回収期間法」です。

回収期間法とは、

投資したお金が何年間で回収できるかを計算し、その年数で投資を行うかどうかで判断する方法

です。この手法には、

  • 設備の購入価額など初期投資額(見積書などから算出)
  • 投資後の見込みキャッシュ・フロー(投資後の収入と支出の増減を推測して将来計画を立てる)
  • 目標となる投資回収期間(何年間で投資額を回収したいか、自社で設定)

の3つの数字が必要になります。

2 回収期間法を使って、投資判断をしてみよう

では早速、次の事例を使って、回収期間法による投資判断がどのように行われるのかを見てみましょう。

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この計画によると、初期投資額(1000万円)のうち、3年目までに累計900万円(200万円+300万円+400万円)を回収し、4年目の途中で全額を回収する予定です。正確な回収期間は、投資額を回収する最後の年を次のように計算して算出します。

1000万円(初期投資額)-900万円(3年目までの回収金額)=100万円(残りの回収額)
100万円(残りの回収額)÷400万円(4年目のキャッシュ・フロー)=0.25年

結果として、

回収期間は3年+0.25年=3.25年

になります。回収期間が分かったら、投資をするかどうかを判断します。自社で決定した目標となる投資回収期間が、4年と3年の場合の判断は次の通りです。

  • 4年であれば、3.25年<4年であるため、この投資計画を実行
  • 3年であれば、3.25年>3年であるため、この投資計画は中止

目標となる投資回収期間は会社ごとの資金状況やビジネスの内容によって変わるもので、具体的に何年という正解はありません。このため、案件ごとに何年で投資が回収できそうな案件なのかを設定する必要があります。

3 将来計画を立てるときのポイント

投資後の見込みキャッシュ・フローを決めるために、収入と支出の両面から将来計画を立てます。

収入については、主に投資による増加が見込まれる売上となります。もし、売上が単価と数量などに分解できるのであれば、より細かく計画していきます(支出についても同様です)。これは投資後、計画に対する進捗状況の確認や修正を検討する際の要因分析に役立ってきます。また、その投資により、削減できる支出も収入に加算します。例えば、ペーパーレス化のためのシステム導入を行った場合は、今までにかかっていたコピー用紙代や複合機の台数削減によるリース料などが削減できる支出となってきます。

一方、支出については、どんな人・モノなどが関わってくるかを現場担当者からヒアリングし、見積もります。以前に同じような投資をしているのであれば、前回の支出内容を確認してみましょう。このように、過去の数字を使うことが多々ありますので、会計伝票に何の投資に関するものかを備考欄などに記入しておくとよいでしょう。

以上(2022年7月)
(執筆 管理会計ラボ株式会社 取締役・公認会計士 福原俊)

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画像:apinan-Adobe Stock

第35回 19歳のメタバース起業家が考える、Web 3.0の未来とメタバースの可能性/イノベーションフォレスト(イノベーションの森)

日本国内で注目されているものの、まだまだこれからの「Web 3.0」や「メタバース」。今回は、19歳にしてメタバースで新しいサービスを生み出そうとしている起業家(合同会社ARKLET 代表取締役 山下 青夏氏)に、Web 3.0がブームとなっている理由やメタバースの現状と今後などをどう考えているかまとめていただきました。

1 Web 3.0は“専門家”を定義しにくいかもしれない

まず前提として、Web 3.0というワードが意味する内容を整理してみましょう。これは、テクノロジーとしての側面と、思想的な側面に二分されると思っています。

テクノロジーとしての側面は、非金融分野での利活用を目指すブロックチェーン3.0の技術です。一方で、思想的なWeb 3.0は、これまでの中央集権的なプラットフォームビジネスを打破し、「新たな自律分散型の仮想世界」を創造し、仮想世界内のみでも生きられるようにDAO(ダオ、自律分散型組織)の仕組みを取り入れようとしているものです。そこに経済圏を作り様々な仕組みを導入することで、一定のビジョンや目的の基に集まるコミュニティ内で“生活”することを可能にするのがメタバースです。そして、play to earn(遊んで稼ぐ)という仕組みを活用して経済圏を確立させます。

ここで浮き彫りになるのは、このWeb 3.0というものについては、“専門家”を定義しにくいという点です。メタバースを創出するということは、新たな仮想世界での生活を可能にするべく、例えば対人コミュニケーションにおいて、眉毛の動きなどのノンバーバルな情報をいかに提供するか、また仮想通貨が本来の意味での通貨として機能させるために市場経済の動きをいかに調整するか、法や規制のない世界にいかに(そしてWeb 3.0の場合、誰が)秩序を生み出すかなど、様々な問題に直面します。

これらの問題に対峙するには、社会学や社会心理学、経済学、法学・政治学などの人文学に根差した知識が必要とされています。こうなっては、もはや真の意味での“専門家”はいないと考えた方が適切であるように思えます。そしてメタバースの定義が、ときに狭まり、ときに広がるその理由はここにあると言って良いでしょう。このように、メタバースは様々な点から論議することができます。

メタバースの画像です

(出所:筆者提供資料)

2 なぜWeb 3.0という“思想”がブームとなっているのか

ではなぜ、Web 3.0がこれほどまでに思想として勃興することになったのでしょうか。メタバースをはじめとする仮想世界は、本質的に言うと“新たな生活空間”です。そしてそこでは、ビジョンに則ったメンバー間でコミュニティが形成され、自身の価値観が受け入れられるまでコミュニティを行き来することができ、束縛も管理もありません。これがメタバースに与えられている使命であり、今に生きる人々の“幻想的なアナザーワールド”としての集合体です。

こうしたものが生まれた背景には様々な要因があります。1つは、政府やGAFAなどのビッグテック企業による“プライバシーの侵害”と“社会制度の崩壊”を食い止めようという動きがあります。2018年の序盤に、Facebook利用者およそ5000万人分(その後さらに人数は増加したとされる)のユーザー情報が選挙コンサルタント会社に流れ、その情報が米国の大統領選挙における政治的プロパガンダに使われたなどど報道され、日本を騒がせました。慶應義塾大学院教授の山本氏は、この問題に対して自らの著書で、【本質的な問題は、この“情報漏洩”にあるのではなく、権力者がAIや膨大なデータを使って人々の内面を分析して把握し、有権者1人ひとりの行動を意識されるまでもなく支配し、それによって民主主義が危険にさらされる可能性だった】といった趣旨を述べています(山本龍彦 2018「AIと憲法」日本経済新聞出版社)。

Web 3.0に関しては、ブロックチェーンやDAOを用いて匿名性を保持するなど、独自のプライバシー管理方法があることで注目が集まっています。このほかにも、行き過ぎた地域格差を、過疎地域と都市とを結ぶことで解決しようという動きも見られます。

しかし、Web 3.0がこれほどまでに思想としてブームとなった要因は、このようなマクロな視点からの動きだけではないと考えられます。むしろ個人単位のミクロな感情も要因となっているのではないでしょうか。
例えば、1つは“VUCAの時代”への焦りです。我々の生きる現実社会は、「ムーアの法則」のような指数関数的に発展するテクノロジーを基盤としています。そのため、技術の進行とともに社会の発展も進行し、VUCAのような不安定な時代が到来します。そのような時代では、「Web 3.0」「メタバース」などのバズワードに対して、常にキャッチアップしていないと置いていかれるという危機感が個人個人の中に存在し、よりバズワードへの注目が高まります。

また、もう1つここで着目したいのは、現実社会からの(個人単位での)“逃避”という要因です。まず、前提として、Web 2.0は“発信の民主化”の時代であると言われています。
ICT総研の調べによると、SNSを利用する理由についてのアンケート結果は次のグラフのようになっています(回答者 n=275)。

SNSを利用する理由の画像です

(出所:ICT総研「2022年度SNS利用動向に関する調査」)

アンケート結果には様々な目的が羅列されていますが、ここでは

「知人同士の近況報告」
「自分の行動記録を残しておきたい」
「写真や動画などの投稿を見てもらいたい」
「『いいね』などのリアクションがほしい」

といった回答項目に注目してみます。これらの回答項目は、情報を“発信”することに基づいており、それも“自己”に関する情報発信です。

各人がそれぞれの趣味を生き、人々に共通する大きな価値観が消失してしまったように感じるポストモダン的な現代において、発信することの意義は、「自分像の創造」にあります。記名での発信の場合は、リアルとバーチャルが融合し結合しているため、他者が認識する「自己像」を操作しようとします。
一方で、匿名での場合は、現実世界とは全く異なる新たな生きる場所で同じように他者に認識される「自己像」を操作します。あるいは、例えば匿名のアカウントを使い「バイトテロ」に対し攻撃をして歪んだ正義感に浸るなど、自己が認識する「自己像」を操作する場合もあります。

このように考えると、Web 3.0も、“新たな生きる場”“桃源郷”の創造、自己像の操作という点でWeb 2.0と共通する側面があることが分かります。Web 3.0に対して人々が真に求めるものは、よりビジョンべースで関係性を構築し維持できるより生きやすい空間の創造であり、今後は現在のSNSのような使い方がされてくる領域であると考えられます。

Web 3.0の画像です

(出所:筆者提供資料)

3 Web 3.0における未来予測

これまで見てきたように、Web 3.0とはまさしく人々にとっての新たな桃源郷であり、その世界の実現においては様々な問題に直面することになります。社会を創造するということは、カオスな世界に警察機能・司法機能・政治機能が自然発生的に生まれて秩序が発生するという、人類がこれまで歩んできた歴史を再度、DAOという概念とシステムで縛られた空間内で実現するという試みです。

メタバースの市場規模は今後ますます拡大していくと考えられており、2024年までに7830億ドルを超えると予測されています(Bloomberg「メタバース、次世代技術プラットフォームの市場規模は8000億ドルに達する可能性」(2021年12月1日))。

また、VRのHMD(ヘッドマウントディスプレイ)の販売台数は、次世代「マイクロOLED」技術の採用により格段に伸びると言われています。

現在HMDに用いられているのは、一定以上の解像度があるフラットディスプレイを接眼部の近くに配置し、その映像をレンズで視野全体に拡大する構造です。映像の周辺部の歪みを解消するために、映像側の周辺部を加工して出力し、レンズを通すと歪みが少なくなるように見せています。

一方、次世代のVR/ARデバイスを支えるマイクロOLED技術を使ったデバイスは、この構造をとっていません。OLEDとは「有機EL」のことで、レンズで拡大して見たり、プロジェクターに搭載して投射用に使ったりします。これにより、解像度の高いディスプレイをコスト効率の良い「半導体製造プロセス」を使って作ることが可能になります。パナソニック子会社のShiftallによって発売された「MeganeX」も、3月に発売されたスマートグラス「Nreal Air」も、マイクロOLEDを採用しています。

仮想空間の市場が「キャズム」を超えるためには、ソフト側におけるキラーコンテンツの登場と、ハード側における「価格、サイズ、重さの観点での購入障壁」の解消が必要不可欠と考えられています。実際、マイクロOLED技術は、このハード側の課題を解消するのに役立つとされ、いま注目を集めています。また、今後マシンのパワーが上がり「左目4K・右目4K」が実現すればさらに没入感が増し、マジョリティの購入動機につながるでしょう。

さらに、Appleの参入が取締役会で発表される(と言われている)など、続々とHMDの開発が進行している印象があります。現在のVRデバイスは、まだまだ改良の余地があると感じています。パソコンでメタバースに入ろうとするのはメタバース自体に意味がなくなるので、VRデバイスが必須ですが、今よりももっと軽くて充電が長持ちし、装着感が良いものが必要です。現状では、まだVRデバイスの装着感が良いとはいえない面もあるので、メタバースの事業を行うにはスマートフォン・PC対応が必要だと思います。

4 日本におけるメタバースのビジネスチャンスは?

現状では、メタバース自体は、日本でのビジネスチャンスはそれほど多くないのが実情です。これにはいくつかの要因がありますが、例えば日本では仮想通貨取引での障壁となる法律が多数存在することなど、まずは法規制の壁があります。

しかし、「エンタメの市場」という観点で見れば、日本のコンテンツ市場規模は10兆円ほどであり、世界の約8%を占めています(経済産業省 令和2年2月「コンテンツの世界市場・日本市場の概観」)。メタバースやNFTでの制作においてエンタメ観点では、大きなビジネスチャンスがあるといえるかもしれません。

コンテンツの世界市場の画像です

(出所:経済産業省 令和2年2月「コンテンツの世界市場・日本市場の概観」)

例えば、NFT自体もカードゲームなどと連携させれば一気に市場価値が上がりますし、国(などの環境)が変わればメタバースで1位になることは十分にありうると思っています。その条件としては、

  • 日本での法律自体が変わること
  • メタバース自体のプラットフォームが自動翻訳になり、世界がつながること
  • 仮想通貨ではない新たな通貨によって世界の通貨が統一されること

などだと考えています。

5 メタバースの世界観が広がっていくまでの時間軸と今後

もしかしたら、想像以上にメタバースの世界観が日本国内で広がっていくスピード感は早いかもしれません。例えば、この2~3年以内に、円とドルの中間を取るような新しいステーブルコインが出てくる可能性があります。その後、デバイスが進歩し、メタバースの中で実際に対面して話しているような状況さえできれば、世の中に一気に広まるかもしれません。例えば、実際にショッピングしているような光景が目の前に広がるとなれば、ある程度リテラシーのある層には流行っていくのではないでしょうか。そうすると、どんどん広まっていくと思います。

私たち合同会社ARKLETも、メタバースの認知を拡げる活動を今後も続けていく予定です。ゆくゆくは、誰でもメタバース空間を作れるようにしたいと考えています。そして、メタバース空間に実際の街を作り、たまたま入ったお店で衝動買いができる空間、また、そこで稼ぐことができる空間にしたいと思っています。

【参考文献、参考資料】
山本龍彦(2018)「AIと憲法」日本経済新聞出版社
ICT総研「2022年度SNS利用動向に関する調査」
Bloomberg「メタバース、次世代技術プラットフォームの市場規模は8000億ドルに達する可能性」(2021年12月1日)
Mogura VR news「次世代のVR/ARデバイスを支える『マイクロOLED』技術に注目せよ」
経済産業 令和2年2月「コンテンツの世界市場・日本市場の概観」

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2022年7月29日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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周囲に迷惑をかけない、美しい会社のたたみ方

書いてあること

  • 主な読者:後継者がいない等の理由で、会社をたたもうと考えている経営者
  • 課題:関係者にできるだけ迷惑をかけたくないが、どうしたらよいか分からない
  • 解決策:自社の財務を確認したうえで法的手続きを決める。事前に金融機関等に相談する

1 会社を“美しく”たたむ前提は良好な財務

後継者がいない等の理由で、会社をたたまざるを得ないことがあります。経営者にとってはつらい選択ですが、そうと決めたなら、

顧客や取引先、従業員、金融機関等の利害関係者に迷惑をかけずに、できるだけ会社を“美しく”たたみたい

ものです。

個人の場合も同様ですが、やはり周囲に迷惑をかけずに会社をたたむには、健全な財務が前提となります。財務というと分かりにくいかもしれませんが、要するに、

  • 自分の資産は目減りしていないか
  • 誰にどれだけ借金をしているか
  • 保証人になっていないか

等を確認するということです。そして、この結果を踏まえて会社をたたむ手続きを検討する流れとなります。なお、会社をたたむ手続きとして、この記事では、いわゆる「通常清算」に注目します。

2 自社の「財務」の健全性を確認する

1)資産を時価で再評価する

古くから所有している不動産等は、簿価と時価とが乖離(かいり)していることが多いので、不動産鑑定士に依頼する等して時価で再評価します。

また、設備や器具備品は、資産管理台帳で減価償却後の価額を把握しているでしょうが、これらも時価評価します。例えば、資産管理台帳上は残存価値があっても、実際には売却できない(=現金化できない)資産は、「評価額ゼロ」とする等します。

2)債権者を把握する

買掛金、未払金、借入金等の負債について、誰に対して、いくらの債務があり、いつまでに支払い(返済)しなければならないのかを整理します。また、借入金については、保証人がいる場合はその旨も記載します。

3)担保資産を整理する

不動産等に設定されている担保および担保を設定した借り入れに関する借入先・借入残高を整理します。担保が設定されている資産は、借入金を返済して抵当権等を解除しなければ処分が難しいので、不動産の処分の可否を検討する際に必要になります。

4)従業員の給与・退職金を見積もる

従業員を解雇する場合、少なくとも30日前にその旨を予告します。あるいは、30日分以上の解雇予告手当を支払います。

また、退職金規程がある場合、それに基づいて退職金を支払う必要があります。なお、退職金は法的に使用者がその支給条件を明確にして支払約束をした場合に初めて発生するので、そうでなければ退職金を支払わなくてよいと考えられます。従業員に退職金を支払う想定の場合、原則として、賃借対照表上に退職給付引当金が計上されますが、中小企業では退職給付引当金を計上していないことも少なくありません。また、計上していても、同時期に全従業員が会社都合により退職することを想定した金額までは計上されていないでしょう。そのため、退職金の支払いの要否を確認しつつ、支払いが必要な場合には、それを前提とした準備をします。

5)個人資産の評価

中小企業の経営者の場合は、会社の債務に対して個人保証しているケースが多くなります。そのため、経営者個人の資産状況についても整理しておきます。

6)会社をたたむための費用を把握する

会社をたたむためには、次のような費用が掛かるので事前に想定しておきましょう。

  • 登記等、法令上の手続きに関する費用
  • 弁護士等の専門家への報酬
  • 売却できない設備や器具・備品の廃棄費用
  • 店舗や工場の原状回復費用
  • 各種契約に基づく解約金や違約金

3 会社をたたむための法的手続き

会社をたたむための法的手続きは、解散と清算があります。

  • 解散:法人格を消滅させる原因となる事実のこと。原則、会社が解散するだけでは法人格は消滅しない。清算の手続きが必要
  • 清算:解散した会社の資産や負債の処理のための法的な手続きのこと。解散した会社が残った債務を全額支払うことができる場合は通常清算となり、解散した会社が債務超過で裁判所の監督のもと行われる清算の場合は特別清算となる

ここでは、通常清算に注目してみましょう。通常清算の場合、裁判所は関与しないのが普通です。清算人の下、債権・債務等の会社の権利義務の一切を整理し、残余財産を株主に分配する等します。清算人とは、

清算株式会社(清算手続きに入った株式会社)の清算職務を行い、業務を執行する者のことで、一般的に取締役全員が清算人に、代表取締役が代表清算人になる

ことになります(それ以外の者がなることもできます)。

4 通常清算の手続きとスケジュール

「通常清算」の手続きとスケジュールイメージは次の通りです。

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1)取締役会の決議

会社を株主総会の決議によって解散するときは、株主総会の招集の決定が必要です。取締役会設置会社の場合、株主総会招集の決定に係る決議をします。

2)株主総会における解散の決議

株主総会で解散の決議をします。株主総会の招集は、公開会社でない株式会社の場合、原則、株主総会の1週間前までに通知します。解散決議の株主総会は臨時で行われることも多く、その場合は議決権を行使するための株主を確定するには基準日を定めます。基準日を定めるには、定款に定めがない限り、基準日の2週間前までに基準日等を公告します。

また、解散の決議は特別決議となります。特別決議は議決権を行使できる株主の議決権の過半数が出席し、かつ出席した当該株主の議決権の3分の2以上で決する決議です。ただし、定款で別途要件(出席割合等)を定めている場合は、その規定に従います。

3)解散の登記、清算人の選出、清算人の登記

1.解散の登記

清算人(代表清算人)は、会社の解散の日から2週間以内に、その本店の所在地において、解散の登記をします。

2.清算人の選出

会社が解散したときは、原則、取締役全員がそのまま清算人に就任します。これを「法定清算人」といい、この場合は清算人の選任決議は不要です。また、定款に会社清算時の清算人が定められている場合は、その定めに従って清算人が選任されます。

この他、解散決議をする株主総会において、清算人を選任することができます。解散前の取締役以外の者を清算人にする場合や、解散前の取締役のうちの一部を清算人にする場合等は、この方法によって選任されます。

3.清算人の登記

清算株式会社(清算中の株式会社)の清算人となったときは、解散の日から2週間以内に、その本店の所在地において、定められた事項の登記をします。

4)債権者への公告・催告

清算株式会社は、解散した場合、遅滞なく債権者に対して債権を申し出るべき旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者には各別に催告しなければなりません。この公告・催告の期間は2カ月以上でなければなりません。

公告には、当該期間内に申し出がなければ、清算から除斥される旨を付記する必要があります。なお、債権者に対する催告の方法や回数については特に会社法上の規定はありませんが、一般的に書面で1回実施することが多いでしょう。

5)財産目録等の作成、株主総会への提出・承認決議

清算人は、就任後遅滞なく、清算株式会社の財産の現況を調査し、法務省令で定めるところにより、会社の解散等、清算の開始原因が発生した日における財産目録および貸借対照表(以下「財産目録等」)を作成しなければなりません。また、清算人は、財産目録等を株主総会に提出し、その承認を受ける必要があります。

6)財産の処分や債権・債務の整理

債権者等の利害関係者との合意に基づいて、財産の処分や債権・債務の整理をします。ただし、利害関係者間の公平を欠いたり、任意整理に応じない債権者がいたりする等の場合は、破産管財人の下で強制力をもって手続きを進めることのできる破産手続き等に移行します。

7)貸借対照表等の作成

清算株式会社は、法務省令で定めるところにより、清算事務の遂行状況等を株主に知らせるため、解散した日の翌日から始まる各1年の期間を「清算事務年度」として、各清算事務年度に係る貸借対照表および事務報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければなりません。

8)残余財産の確定・分配

清算会社は、会社債務の弁済が完了した後、残った残余財産の分配をしようとするときは、清算人の決定によって、残余財産の種類、株主に対する残余財産の割当に関する事項を定めなければなりません。なお、残余財産の分配を実施するための株主総会の決議は不要です。

9)清算事務の終了、株主総会における決算報告の承認

清算株式会社は清算事務が終了したときは、遅滞なく決算報告を作成しなければなりません。清算人は決算報告を株主総会に提出し、または提供し、その承認を受けなければなりません。

10)清算結了の登記

清算事務に係る決算報告を株主総会で承認を受けた日から2週間以内に、清算結了の登記をしなければなりません。

5 さまざまな選択肢

この記事では、会社を“美しく”たたむための法的手続きとして、通常清算を紹介しましたが、その他にもさまざまな選択肢があります。事業売却等を含め、何らかの形で事業承継をする選択肢もあります。金融機関では、後継者候補や事業売却先等を紹介してくれることもあるので、一度相談してみてはいかがでしょうか。

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以上(2022年7月)
(監修 みらい総合法律事務所 弁護士 田畠宏一)

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画像:photo-ac

【営業最強フレーズ集】プレゼン編2 「品質重視ならA案、価格重視ならB案、バランスが取れているのはC案です」

書いてあること

  • 主な読者:今よりレベルアップしたい営業担当者と、営業担当者を指導する営業管理職
  • 課題:現場ですぐに使えて顧客と信頼関係を築けるトークスクリプト的なものが欲しい
  • 解決策:シーンごとに「最強フレーズ」を、少なくとも1つは持っておく。あとは応用

品質重視ならA案、価格重視ならB案、バランスが取れているのはC案です

選択権を相手に委ねる

大抵の人は営業されるのが大嫌いです。その理由の1つは、「押し付けられている」ように感じるからです。そこでプレゼンでは、相手が「押し付けられた」と感じることのないように注意しましょう。プレゼン内容が相手にとって価値あるものなのはもちろん、複数のプランを用意することが大切です。

いくつかのプランの中から「自分で選ぶ」ことで、相手からすると「押し付けられた」という印象が薄れることが期待できます。

用意するプランの種類は多過ぎないように

複数のプランを用意するときは、種類が多くなり過ぎないほうがよいでし。あまり選択肢が多いと、相手は「迷って選べない」「これらのプランを全部理解した上でどれかを選ぶのは手間だ」と感じます。

ケースバイケースですが、「プランは3つ用意せよ」といいます。人は、選択肢が2つでは選ぶのに迷いますが、3つあると真ん中のプランを選びやすいからといわれています。

また、複数プランを用意するときは、それぞれの違いやプラン名が分かりやすい・覚えやすいのがベストです。特にオンラインでプレゼンするときは、一度聞いて(見て)、相手がすぐに理解できそうなプラン内容・プラン名がよいでしょう。

“お勧めポイント”を案内する

プランを複数用意して相手にプレゼンするときは、より相手が選びやすいようにトークすることが大切です。そこで、冒頭で紹介した営業最強フレーズを使って、それぞれのプランの“お勧めポイント”を案内し、相手に具体的なイメージを持ってもらいましょう。

居酒屋でいえば、店員が「お腹にたまるものを食べたいならご飯ものの◇◇、ご注文いただいた日本酒に合うものならおつまみ系の××がお勧めです」と案内してくれるのと同じです。

事例を加える

さらに相手の背中を押すために、事例を加えてみましょう。「品質重視ならA案です。例えば実際にA案をご採用いただいた他社様では、このような効果があったと聞いています」と伝えれば、相手は、自社(自分)が採用した後のことをイメージしやすくなります。

「A案ですと、確かに金額は高いと言われることがありますが、メンテナンスがしっかりしているので費用対効果が一番高いという評価を頂いています」というように、懸念点→メリットの順番で事例を伝えるのも一策です。誠実さをアピールしつつ、「相手が感じるかもしれない懸念点やデメリット」を先回りして解消できるでしょう。

以上(2022年7月)

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画像:Mariko Mitsuda

お客さまの声を聞き、向き合い、「付加価値」を高めるために必要なポイントは「構造」。キーエンスからの10の学びをシェアします/岡目八目リポート

年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、田尻 望(たじり のぞむ)さん(株式会社カクシン代表取締役社長CEO)です。

企業にとって最も根源的で普遍的な経営課題「お客さまの声をどのように聞き、どのように向き合っていけばいいか」。今回は、この点について、田尻さんのお話をご紹介します。「お客さまの付加価値の最大化」を徹底的に追求し、多くの実績を積み重ねている田尻さんが教えてくださるのは、場当たり的にお客さまの声を聞いて終わりではない、「お客さまの声を聞く、向き合う、自社に取り込んでいく、形(商品やサービス)にする、お客さま自身が得る付加価値を最大化する」の流れを継続する【仕組み】づくりです。
今回、かなり深く厚いテーマですので、この記事でご紹介するのは「考え方の入り口部分」です。それを自社のことに落とし込んで考えてみると、より実践的なものになるでしょう(もっとご関心のある方は、田尻さんのご著書などがオススメです)。

1 田尻さんたちにとっての「利益」

田尻さんたち株式会社カクシンは徹底した「価値主義経営®」(詳細は後ほど)を追求し、お客さまの付加価値の最大化に取り組んでいます。
「うちの会社は【付加価値】に特化しています。それはつまり、うちのお客さまの利益が目的なわけではないんです」と田尻さん。見ているのは、田尻さんたちのお客さまにとってのお客さま。「うちのお客さまが、その先のお客さま(商品やサービスの受益者)に提供する価値がターゲット」で、それを最大化する仕組みを作り上げていくのが目的です。そういう意味では、
 「お客さまの喜びが私たちの利益」
と笑顔で語る田尻さんです。しかもそれを体現し成果事例も豊富です。なにかもう、ここの段階で「一番大事なことを、ちゃんと徹底・実践している」という骨太さを感じます。

田尻さんのプロフィール画像です

(出所:田尻さんご提供資料)

2 徹底的に「構造」にアプローチする

田尻さんたちカクシンが掲げているのは、
「構造が成果を創る®」
です。これは、「徹底的に構造にアプローチすることで、再現性のある仕組みで強い組織を持続する」ことを目指しています。分かりやすく表現すると「一件当たりの付加価値(単価や価格)もしっかり上げていった上でお客さまに喜んでもらいましょう」「これを仕組みでちゃんとやっていきましょう」ということで、田尻さんは次のように説明しています。

「仕組みが大事で、仕組みをつくる力=人の力を上げていき、組織の力を上げる。人は石垣と言いますが、それよりも【人が石垣をつくり、お城を築いていく】と考えています。ですので、その、人が石垣をつくり、お城を築いていく道筋をつくっていきたい」 「属人的なやり方、場当たり的なことを繰り返していても組織が層として積み上がっていかない」

会社概要画像です

(出所:田尻さんご提供資料)

田尻さんが「構造」を掲げるのは、以前勤めていたキーエンスでの学びからです。キーエンスに憧れ、モデリングしようとしている田尻さん。「構造が成果を創るという力を知らないと、キーエンスのようにはならない。あの会社に積み上がった仕組みの多さは臨機応変にパッとできるものでは絶対にない」と続けます。田尻さんが語るキーエンスからの学びは、改めて後ほどご紹介します。

3 田尻さんたちが進める「価値主義経営®」

ここで、田尻さんたちが進める「価値主義経営®」をご紹介します。この「価値主義経営®」については、従来経営型と比較した次の図が分かりやすいでしょう。

価値主義経営の画像です

(出所:田尻さんご提供資料)

  • コモディティ化でなく、マーケットイン型競合差別化戦略
  • 価格がシェアを決めるのではなく、「価値」によってシェアを獲る
  • 属人での価値から「仕組みでの価値」
  • お客様の御用聞きではなく「お客様の問題を解決し価値を与えるソリューション」

これらの項目や上図は、身につまされる方もいるのではないでしょうか。例えば価格のところで言うと「【値下げ】は経営者がサボっていなければ起こらない」とも言えます。経営者が常にマーケットを注視し、お客さまに向き合い、付加価値を伝え提供していれば、値下げする必要はない。「値下げ合戦」ではなく「付加価値ベースの価格決定」になるわけです。
こうしたことによる営業利益向上を、セールス面・販売促進面・商品企画面で実践しているのが田尻さんたちです。田尻さんたちは、上図の向かって左側の「従来型経営」でなかなか利益が上がらない企業を、右側の「価値主義経営®」にチェンジしていっています。

実際に大手コールセンターや法人向け人事管理システム販売部隊など、さまざまな実績を挙げており、カクシンの2021年度の「お客さまの付加価値向上額(お客さま企業に発生した付加価値の向上額)」は約50億円にも上ります。ただし、目標はまだまだ高く、まずは2024年度にお客さまの付加価値向上額1000億円を目指しています。追いかける数字が田尻さんたちは自分たちの売上よりも、この「お客さまの付加価値向上額」というのも、カクシンの大きな特徴です。

目標の画像です

(出所:田尻さんご提供資料)

●実績例

実績例の画像です

実績例2の画像です

(出所:田尻さんご提供資料)

4 キーエンスからの10の学び

ここからは、田尻さんが語ってくれたキーエンスからの学びをいくつかご紹介します。まず、田尻さんがなぜキーエンスに憧れ、モデリングしているかというと、理念として
「最少の資本と人で、最大の付加価値を上げるという教え」
があるからと言います。こうした理念は、キーエンスの新卒採用サイトに掲載されています。

考え方の画像です

(出所:キーエンスウェブサイト公開資料)

1)圧倒的な営業利益率

キーエンスの特徴がまず分かりやすいのは、圧倒的な営業利益率です。

営業利益率の画像です

(出所:田尻さんご提供資料)

キーエンスは産業機器メーカーとして他に類を見ない営業利益率55.4%(2021年度連結)ですが、これは、「ほぼ値引きをしないから」実現できているものです。競合他社と定価ベースではそれほど金額は変わりません。そこから値引きしないで売れるから営業利益が上がる。なぜ値引きしないでも売れるかというと、「お客さまが価値を理解しているから」です。この「お客さまが価値を理解しているから」の背景には、「付加価値戦略」と「差別化戦略」がある、と田尻さんは語ります。

2)“同時”が肝心。「付加価値戦略」と「差別化戦略」

この2つの戦略を、田尻さん流で噛み砕いて説明すると、次のようになります。

  • 付加価値戦略:「私たちはあなたの役に立ちますよ戦略」
  • 差別化戦略 :「私たちとは他社とは違いますよ戦略」

「この2つを同時に実践しないと価格がつきません。同時、が肝心なんです」と田尻さん。例えば、「私たちはあなたの役に立ちますよ(付加価値戦略)」だけだと、お客さまは「うん、でもそれは競合他社にもできるでしょ? 値下げしてくれる?」となります。
一方、「私たちは他社とは違いますよ(差別化戦略)」だけだと、今度は、お客さまは「うん、分かるけどその機能は今回いらないから値下げしてくれる?」となってしまう恐れがあります。つまり、「私たちはあなたの役に立ちますよ、しかも、他社とは違います(私たちにしかできないです)」となって初めてお客さまは「そうなの。で、いくら?」と価格(定価ベース)の話になるという仕組みです。
キーエンスが他社と大きく違うのは、この「付加価値戦略」と「差別化戦略」を同時に実践しなければならないということを、商品企画、販売促進、営業マーケティング、営業マネジャーから営業担当者一人ひとりまで「全員が一気通貫して実践している、仕組みになっている」点です。これは、他社の企業活動では見られないことではないでしょうか。

3)お客さまが困っているから商品をつくる

 そもそも、キーエンスでは「自分たちがこれをつくりたい」という、自分たち発信の商品づくりをしていないそうです。「お客さまの困りごと」発信で商品をつくっています。田尻さんはこう言います。

「売り上げに困ったからとか、もっと多角化しないといけないからってスタートする他社の新規事業立ち上げって、お客さまが困ってるわけじゃないんですよね。困ってるのは、自社(作り手側)なだけで。キーエンスはお客さまの困りごとからでないと商品をつくりません(お客様が気づいていない困り事:まだ作られていない付加価値=新想像価値、を含む)」

つまり、営業だけでなく、商品開発も含めて会社全体で「お客さまの困りごとからつくる。その価値を伝えて、理解してもらって買ってもらう」が「仕組み=構造」になっていることがキーエンスの強み、特徴といえるでしょう。

4)何より大事な「お客さまの困りごと」

こうしたキーエンスにとって何より大事なのはお客さまの困りごと。「お金よりも大事なのが、お客様の困りごとです。お客さまの困りごとを常に捉えられる位置にいることが重要」と田尻さんは続けます。キーエンスでは、営業担当者が実際にお客さまの現場に行き、直接お客さまから困りごとを聞きます。営業担当者がお客さまの困りごとを聞き、それを本社に定期的にアップする。そして、商品企画者まで含めて徹底してお客さまの困りごとを聞くということも仕組み化されているといいます。
 「お客さまへのヒアリング」的なことを実施している会社は他にも多数あると思いますが、陳腐化・形骸化している例も少なくありません。しかし、キーエンスでは、お客さまの困りごとを聞く、そしてそこから商品がつくられていくことが仕組み(構造)になっていて、全員が腹落ちして実践しているので、陳腐化・形骸化せず継続しているのでしょう。

5)日々、基本的なことをコツコツと

一方、お客さまの困りごとを聞いても、それを簡単に商品化するわけではないそうです。キーエンスには商品化するべきかを決めるさまざまな厳しい基準があり、しっかりと検討を重ねたのちに商品化するといいます。
ウェブサイトやプレスリリース、営業活動などを見ているとキーエンスの新商品開発・販売のサイクルは非常にスピード感があり早いと思いますが、それでも、「お客さまの困りごとを簡単に商品化しない」ことを考えると、どれだけ一人ひとりの営業担当者が数多くお客さまの困りごとを聞き集めているか、常にマーケットを注視しているかが伺えます。まさに日々怠らず、コツコツと、そして徹底的に、です。

6)「顕在ニーズ」はつくらない

さて、キーエンスでは、これまで「お客さまの困りごと発信で商品をつくる」とお伝えしていますが、その一方で、「お客さまが【欲しい】ものはつくらない」とも言っています。これは、お客さまの「顕在ニーズはつくらない」ということであり、キーエンスがソリューションニーズを徹底しているからにほかなりません。
キーエンスが大事にしているのは、より深い付加価値のある「潜在ニーズ、ニーズの裏のニーズ」です(下図ご参照)。

付加価値の画像です

(出所:田尻さんご提供資料)

顕在ニーズは顕在しているので、「検索」ができますが、「潜在ニーズ」はお客さま自身も気づいていないので、「検索」ができません。たとえ、検索ワードを知っていたとしても、その検索ワードが自分の問題解決につながることに気づいていないので、やはり「検索」はできないでしょう。

その潜在ニーズを引き出し、それを解決することを商品化する、提案するのがキーエンスのやり方です。これも、言うは易しでなかなか実践できるものではありません。つい、顕在ニーズどころか、上図の赤い「ムダ」のところ、つまり「お客さまのニーズの上」の商品化や提案をしがちです。そうした会社は利益率が低くなると田尻さんは言います。一見、お客さまのことを考えていそうですが、「ムダ」つまり、お客さまの顕在ニーズでも潜在ニーズでもない商品をつくって売ろうとしているからです。使われない多機能、高性能……。この図は、見るとちょっとドキっとさせられます。

7)考え抜かれた「構造」

田尻さんが教えてくれるキーエンスからの学びの根本には、考え抜かれた「構造」があります。田尻さんのカクシンでも「構造が成果を創る®」を掲げているわけですが、「キーエンスという会社がなぜあれほど利益が出ているのか。それは、キーエンスというストラクチャー(構造)があるからだと考えています」と田尻さん(下図ご参照)。

ストラクチャーの画像です

(出所:田尻さんご提供資料)

「構造が成果を創る®」の分かりやすい例として、田尻さんはいくつか例を挙げてくれました。そのうち、「Apple Storeの76°の例」は広く知られています。これは、Apple Storeでは商品が76°の角度で陳列されていることを指していますが、この角度には重要な理由があります。

「実は【76°】では商品が見づらい」のだそうです。そこでApple Storeを訪れたお客さまは、見づらいから商品を手に取ってみる、つまり触ることになります。これが、Appleの狙いです。「人は手に取ったものに愛着を持つ」そして、スティーブ・ジョブズ曰く「iPhoneの良さは触ってみないと分からない=触ると圧倒的に良いことが分かる」。構造(仕組み)が成果(価値)を創る例として分かりやすいのではないでしょうか。

8)会話の構造化

キーエンスでは「会話」も構造化されています。例えば下の2つを比べてみてください。

会話の構造化画像です

会話の構造化画像2です

(出所:田尻さんご提供資料)

これは、この問題の答えがどうこうというよりも、「答えを出すのにかかる時間」がポイントだと田尻さんは解説します。上の①のほうは、具体的な個数や時間がまったく分からず、とても曖昧です。これでは答えを出すのに時間がかかります。一方、下の②のほうは具体的な個数、時間が明らかになっているので秒で答えが出るでしょう。①の会話が多い会社と②が多い会社では、②が効率的で営業利益が高いのは分かりやすいのではないでしょうか。キーエンスは、②の会話がデフォルトだといいます。

9)価値の伝え方

世の中には「営業トーク」を用意している会社はたくさんあるでしょうが、キーエンスの場合は価値の伝え方も「構造」に基づいています。キーエンス流の「価値の伝え方の例」を田尻さんが示してくれましたので、2つご紹介します。

【お客さまの困りごとから価値提供につなげる例】

お客さまに困りごとを聞いたとき、「社内のコミュニケーションに悩んでいる」という回答。ここで営業担当者が「分かりました、では社内コミュニケーションに良いセミナー講師がいるのでご紹介しますね」となるのは、単なる御用聞き営業。お客さまのニーズに合わせているようで、「御用聞き」しかしていない。
ここで大事なのは、「ソリューションニーズ」として聞くためにもう一段深掘りすること。お客さまに「コミュニケーションでどんな問題が起こっているのですか?」(本当にセミナー講師の紹介などで問題の解決になっているのか)と質問をする。そうすると例えば「実は、人が辞めてしまって……。営業が今年もう5人辞めている」という回答だったとする。そうすると、「それは大変ですね。。営業の方が辞めている間は売り上げが落ちてしまっていますし、例えば年収500万円の営業の方を雇い直すとすると人材獲得に年収の35%かかりますので1人に175万円かかります。新しく雇った方が働いて成果を出すまでに半年かかったとしましょう。でもそれまでも給料は必要なので半年分の給料250万追加すると1人当たり425万かかります。それが5人となると、コミュニケーションの問題から、実に2000万円以上の損失が出ていますよね。これを解決するためのコミュニケーション研修をご紹介します」と伝えて価値を示すことができる。

【世界初・業界初・特許出願中といった価値の伝え方】

「工場にこの装置をつけるとこれだけの生産性が上がりますよね。この装置は業界初・特許出願中なんです」と言うと、お客さまは「比較=相見積もり」ができなくなる。業界初で特許出願中なので、「他社にはない」から。値引きされることもない。「生産性向上=付加価値戦略、付加価値トーク」であり、同時に「特許出願中=差別化戦略、差別化トーク」を実践しているので、価値を示して価格維持が実現できている。

上2つの例はどれも腹落ち感がありますが、特に、「世界初・業界初・特許出願中といった価値の伝え方」については、それこそ商品企画・販売促進・営業一人ひとりのクロージングトークまでが一気通貫して構造化されているので実現できる「キーエンスの構造化営業」と言えるのではないでしょうか。

10)「業界初」を叶える

 キーエンスの営業現場での話として、田尻さんは「業界の人は業界の情報に本当に詳しいか?」ということも語ってくれました。これは、企業の前向きなチャレンジを後押ししてくれる話ですので、最後にご紹介したいと思います。

特に法人営業の場合、営業されるほうは、「営業されること」よりも「成功につながるいい情報を教えてくれること」がうれしいものです。「いい情報とは、他社を含めた業界全体の最新の成功事例」であると田尻さんは言います。
 ところが、業界の人ほど、自社の競合他社の成功事例は、なかなか知りません。知ることができないのです。しかし、業界の複数社に営業し、困りごとも聞いているキーエンスの営業担当者はそれぞれの会社のことをよく知っています。
 要するに、「(お客さまは)自分の会社の成功事例は知っているが、他社も含めて業界全体の成功事例を一番知っているのはキーエンスの営業担当者」になるわけです。よく、法人営業の担当者は、営業先の人に対して「自分たちはお客さまより業界の情報に詳しくない」と“ヒヨってしまう”ことがありますが、「何もヒヨる必要はない。キーエンスのように、自分たち(お客さまの困りごとなどを聞いている営業している会社)のほうが詳しいという状態になればいい」と田尻さん。
お客さまよりも、成功事例などお客さまの業界に詳しくなる。そうすると、お客さまの潜在ニーズをさらに超えた「新創造価値=まだ作られていない付加価値」をも見つけることができると力強く背中を押してくれる田尻さんです。

「まだ作られていない付加価値、つまり、今までになかったニーズを初めて見つけて、それを初めて解決する。これは業界初です。つまり、業界初は、どの企業でも実現できるのです」

付加価値の画像です

(出所:田尻さんご提供資料)

こうしてみると、自分たちも、「業界初」が実現できそうに思えてきませんか? キーエンスからの学び、それを詳しく読み解き、多くの企業の「付加価値」を最大化している田尻さん。幾重にも積み上げた「構造」的なお話から、お客さまの声を聞き、向き合い、そして付加価値を上げていく明るい未来が具体的にイメージできる気がしました! 有り難うございます。

以上(2022年7月作成)

初めてのオフィス移転 必要な手続きとポイント

書いてあること

  • 主な読者:オフィスビルにテナントとして入居している企業の経営者、財務担当者
  • 課題:賃料(固定費)の負担は抑えたい。社員の満足度は高めたい
  • 解決策:実態に見合う適正なオフィススペースを再確認。必要に応じて移転の是非を判断

1 「働く場所」を選択する時代の「攻め」のオフィス戦略

皆さんは普段、どこで業務を行っているでしょうか? 時と場合によって異なるでしょうが、これからの時代、その答えは、必ずしも「オフィス」ではないのかもしれません。

「働く場所」が多様化していく将来を見据え、オフィス戦略をどうするか。大きく分けると2つの選択肢が考えられます。

  • 「働き方改革」などで在宅勤務やリモートワークが定着して出社する人数が減ったため、縮小移転する
  • ウェブ会議用の部屋の新設や雑談できるコミュニケーションスペース確保のため、より広いオフィスへ移転する

オフィス移転は、理想の環境を実現し、経営課題の解決を図るチャンスでもあります。この記事では、初めてオフィス移転を検討する際の、必要な手続きとポイントを整理します。

2 まずは、現状のオフィスを再確認

1)面積は自社の実態に照らして適正か?

まずは、「出勤しなければならない社員が何人いるのか」「どのようなケースで、オフィスでないと通常業務に支障を来すのか」を確認しましょう。

労働安全衛生規則では、「事業者は、労働者を常時就業させる屋内作業場の気積を、設備の占める容積及び床面から4メートルをこえる高さにある空間を除き、労働者1人について、10立方メートル以上としなければならない」(第600条 気積)とされています。

オフィスビルの天井高を2.5メートルとすると、1人当たりの面積は4平方メートルですが、ソーシャルディスタンスを保つため、1人当たりの面積をそれ以上広めに取ることも考慮しましょう。

2)足元のオフィス市況は?

賃料(固定費)を抑えるためにも、移転希望エリアの平均空室率や平均賃料などの市況を正確に把握することが重要です。

例えば、オフィス仲介大手の三鬼商事、三幸エステート、シービーアールイーなどは、主要都市のオフィス市況データを公表しています。また、不動産流通推進センターが運営するウェブサイト「不動産ジャパン」では、エリア・路線などの条件を入力して、事業用物件を検索できます。

3 移転計画を立てる

1)現オフィスの解約予告期間は?

現オフィスと移転後の新オフィスの賃料を両方とも負担する期間をなるべく短くするため、現オフィスの賃貸借契約で、契約解除のためにはいつまでに申し入れが必要なのかを確認します。この解約予告期間を基に移転の時期や条件を検討します。

2)オフィス移転に掛かる費用は?

オフィス移転に掛かる費用には、次のようなものがあります。

  • 新オフィスの敷金・保証金、礼金、仲介手数料
  • 前家賃、前共益費
  • 火災保険料
  • 内装工事費、電気工事費
  • 家具・備品購入代
  • 引っ越し代
  • 名刺や封筒などの印刷代
  • 現オフィスの原状回復工事費

移転に掛ける予算は、これら全ての金額を見積もる必要があります。

これらの費用の会計処理の方法は、一時に経費になるものや資産計上しなければいけないものなど、支出の内容によって異なります。詳しくは税理士などの専門家に確認しましょう。

3)移転先の物件探し、条件は?

移転先の物件探しについては、不動産会社へ依頼するのが一般的です。その際、立地条件、必要面積、賃料、移転時期に加え、建物の仕様(天井高、床荷重、OAフロアの有無、個別空調の有無、エレベーターの有無、男女別トイレの有無、駐車場・駐輪場の有無、新耐震基準など)の条件を設定する必要があります。

新耐震基準とは、1981年(昭和56年)6月1日以降の建築確認において適用されている基準です。それより前に建築確認を受けた建物(旧耐震基準)であれば、耐震診断を受け、必要に応じた耐震補強が実施されていることを確かめましょう。

4)自社だけで全て対応できる?

オフィス移転に関する業務は多岐にわたります。通常業務と並行してオフィス移転を進めるために、ノウハウ・実績を持つパートナーを選定するのが一般的です。

オフィス家具メーカー、建築デザイン事務所、プロパティマネジメント会社、通信系設備工事会社などさまざまなパートナー候補先から、ノウハウ・実績などを参考に数社に絞り、各社にプレゼンテーションを行ってもらい、提案の良しあしを見定めましょう。

4 物件選びから引っ越しまで

1)不動産会社へ紹介を依頼~現地内見

移転時期や希望条件が固まったら、不動産会社へ候補物件の紹介を依頼し、現地に赴いて内見をします。

内見では、あらかじめ設定した条件に加え、フロア形状、フロア内の柱の有無、眺望、採光、ブラインドの有無、入居している他のテナントの状況、エントランスの開閉時間、エレベーター・トイレなど共用部分の状況、携帯電話の電波受信状況などを確認します。

2)申し込みと条件交渉~審査書類提出

候補物件の中から気に入ったところが見つかれば、不動産会社へ申し込んで、その物件を押さえます。この段階で、不動産会社を通じて、物件の貸主と条件交渉を行います。

賃料・共益費の金額交渉とともに、フリーレント(賃料を無料とする期間)の交渉も行うとよいでしょう。共益費についても、交渉次第で、入居工事着工時から請求対象とするといった条件が得られることもあります。また、内装工事や電気工事は、借主負担で、貸主指定の工事業者に発注するように定められていることが多いですが、これも交渉の余地はあるでしょう。

その後、不動産会社を通じて審査書類を提出します。主な審査書類として次が挙げられます。

  • 法人の登記簿謄本(写し)
  • 法人の概要(会社のパンフレットなど)
  • 直近3期分の決算書類
  • 連帯保証人の身分証明書(写し)
  • 連帯保証人の収入証明(写し)

3)審査通過~重要事項の説明~預託金の支払い

審査を通過すると、賃貸借契約を締結するまでの間に、不動産会社の宅地建物取引主任者から重要事項(建物・設備・契約の内容、契約期間と更新・解除、法令による制限など)について説明を受けます。少しでも不明な点があれば納得のいくまで確認しましょう。

そして、契約締結日前日までに、敷金・保証金(預託金)を預け入れます。なお、契約締結から入居までの期間が長い場合は、契約時に預託金の一部を預け入れる場合もあります。

4)現オフィスの解約申し入れ

審査書類を提出後、審査を通過した段階で、現オフィスを管理している先に解約を申し入れます。解約の申し入れは、一般的に契約時に渡される解約通知書面を郵送またはFAXで送付します。

通常、解約の申し入れ後は、日割り計算で賃料を支払います。書面の送付日が解約を受け付けた日付となるため、早めに対応するとよいでしょう。

5)電話回線・インターネット回線の移転の手配、各種見積もり

電話回線・インターネット回線の移転の手配を行い、各種見積もりを取ります。

  • オフィスのレイアウト作成、内装工事の見積もり
  • 購入する家具・備品の見積もり
  • 通信機器・LAN設定工事の見積もり
  • 引っ越しの見積もり

6)新オフィスの賃貸借契約

不動産会社や貸主に対し、賃貸借契約に当たって必要な書類を事前に確認の上、契約日までに用意します。

賃貸借契約を締結した後に一方的に解約を申し出ても、それが認められるとは限らず、違約金などが発生する恐れもあります。事前に条件交渉の結果が正確に契約書に反映されているかを、しっかりと確認することが大切です。

7)現オフィスの原状回復工事の打ち合わせ

現オフィスを退去するに当たって、通常、壁や床、天井などを入居時の状態に戻す必要があります。この原状回復工事の範囲や期間、期限を貸主に確認します。なお、原状回復工事については、貸主指定の工事業者に発注するように定められていることが多いため、指定業者の有無も併せて確認しましょう。

原状回復工事が期限までに完了しない場合、契約の不履行と見られて工事の完了までの日数に賃料が発生することもあります。明け渡し日を期限とするのが一般的なため、その数日前には工事が完了するようにし、不測の事態にも対応できるようにしましょう。

8)新オフィスの内装工事

賃貸借契約完了後に、内装工事、家具・備品、通信機器・LAN設定工事、引っ越しの発注を行います。

内装工事に入る前には、レイアウトと工事内容が記載された図面、工程表を貸主に提出して許可を得ます。騒音が出る工事については、他のテナントの迷惑にならないように、土・日・祝日にしか作業ができない場合も多いため注意が必要です。

9)引っ越し

引っ越しでは、前日までに荷造りを済ませ、新オフィスで混乱が生じないようにしましょう。梱包した荷物と移転後のレイアウト図面に番号を振って引っ越し業者に渡し、新オフィスのどこに配置するのかが分かるようにしておくとよいでしょう。

粗大ごみが出る場合、各市区町村の窓口に問い合わせ、日時・場所など指示に従って出します。回収は基本的に有料なので(無料の市町村もあります)、問い合わせのときに料金や支払い方法について確認します。ビルで指定の業者がある場合には、ビルの管理会社から収集日や収集方法などの説明を受けましょう。

5 関係官庁への届け出

移転によって所在地が変更となるため、登記、税務、労務などについて関係官庁へ必要書類を提出し、手続きをしなければなりません。

ケースによって提出書類の様式や添付書類、提出期限が異なるため、実際には関係官庁に問い合わせて確認することが大切です。必要に応じて、司法書士、行政書士、税理士、社会保険労務士に手続きの代行を依頼することも検討しましょう。

以上(2022年7月)

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画像:Africa Studio-shutterstock

創造性とモチベーションの高い“人財”を育てるための働き方改革/「人を大切にする経営」で業績アップ(4)

書いてあること

  • 主な読者:業績は上がらないし、社員は生き生きと働いていない。会社の経営指針を根本的に見直したいと考えている経営者
  • 課題:社員の幸福や会社の社会的意義も大事だが、業績が悪ければそれどころではない
  • 解決策:会社に関係する全ての人の幸福を最優先する「人を大切にする経営」を実践する。休暇をプラスに捉え、会社全体を見通し創造性の高い業務を行う“人財”を育てる

1 「労働時間が減る=業績が悪くなる」という大きな勘違い

前回は「経営者の意識改革」をテーマに、実践事例を交えながら、どんな有事でも一喜一憂しないために経営者が持つべき視点や、勝ち残るための非価格競争の重要性について紹介しました。

第4回となる今回は、働き方改革や“人財”育成および活用といった観点から、人を大切にする経営を進めていくための方法について、実践事例を交えつつ紹介していきたいと思います。

1)残業しないと達成できない経営計画は不要

「働き方改革で社員の労働時間が減ったら、売り上げも減った」と嘆く人たちがいます。しかし、社員の残業時間が減り、休みが増えるようになると会社の業績が悪くなるという考え方には、大きな勘違いがあります。

そもそも、

残業や休日出勤をしないと、売り上げ・利益が計画通りに達成できないという状況は異常

なことであって、

そのような経営目標・経営計画を立てたことに、もともと無理があった

ということを認識することが大切です。

誰かの犠牲の上に成り立つ経営、誰かに負荷が掛かる経営は、いずれ崩壊を招く

ことになります。

低い目標を立てろとは言いませんが、ゆっくり、着実に成長・目標達成をする計画を立てること。「急がば回れ」を意識することが求められます。

2)長野県の寒天製造販売会社が進める数値目標を掲げない「年輪経営」

第2回でもご紹介した、長野県にある寒天の製造販売会社では、「年輪経営」という経営が行われています。樹木が1年で一つずつ年輪を増加させるように、会社は急成長・急拡大を目指すことなく、地道に少しずつ成長を続けるというものです。

年輪経営を貫く同社の成長についての考え方は、「年輪は、たとえ雨が少ない年であっても、寒くても、暑くても、毎年必ず一つ増えます。毎年の成長度合いは同じでなくてもよく、前の年よりも大きくなっていることが大切」というものです。そのため、「売り上げや利益は、年輪経営の結果である」と考え、成長の数値目標を掲げていません。

むしろ、急成長には懐疑的で、「好景気や一時のブームに乗って急激に成長してしまうことに気を付けなければいけません。確実で安定した成長が、自分たちだけでなく会社を取り巻く全ての人々の幸せにつながることを実感しています」と考えているのです。

長期間にわたり増収増益を継続した同社の実績は、年輪経営の正しさを証明してくれているといえます。

3)「残業は当然」という認識は改めるべき

かつては、勤勉で残業も休日出勤も厭わずに働くことが、日本人の美徳であると思われてきました。また、自分自身の業務が終わっていても、周りの社員の業務が終わらないうちは帰らず、業務を続けるということが組織の一体感を高めることだと思われていました。

確かに、そのような考え方が機能していた時代があったことは事実かもしれません。ですが、自分自身の業務が終わったのに業務を続けているのは、残業のための残業でしかありません。なぜ、日本人は何の疑問も持たずに残業を続けてきたのでしょうか。

「お客さまが困っているから、対応せざるを得ない」ということはあるでしょう。ですが、本来、顧客満足への対応について考えるのは、社員個人ではなく、会社全体、つまり経営判断であるべきです。困っているお客さまへの対応まで所定労働時間内でやりきるのが、通常の働き方であるはずです。

それができていない理由は、会社が社員のキャパシティを超えた業務を与えているのか、またはその社員の業務の仕方に問題があるのかだと思います。

2 社員の休暇は会社にとっての「損失」ではない

1)社員の一斉10連休に取り組んだ別府市のホテル

社員が残業をせず、休みを増やすことは、本当に会社にとってマイナスなことなのでしょうか。ここでは、ある宿泊業者のケースを例に見てみることにします。

宿泊業といえば、休日が少なく営業時間が長いことの代表的な業種と思われています。しかし、ここ数年で、その業界常識の改革に挑み、実際に成果を生んでいる旅館・ホテルが現れ始めてきています。

大分県別府市にあるホテルでは、2020年の正月明けの1月14日から23日まで全館休業とし、約1000人の社員を一斉休暇としました。この取り組みは、単年ではなく2018年から3年連続で行われました。

この取り組みについて、支配人は、「この業務形態をこのままにしていいのか。働いている本人はよくても、家族はどうだろうか…」「顧客満足度にひたすらこだわってきたが、社員満足度にも力を注がないといけない。従業員の連休拡大は避けては通れなかった」「企業が有給休暇取得を推進する時勢も受け、拡大に踏み切った」と話しています。

2)社員のモチベーション向上や採用活動に大きなメリット

10日間の全館休業によって、売り上げは数億円の減収になったといいますが、それをはるかに上回る価値も生まれたといいます。まずは、社員のモチベーションの向上です。いくら好んで働いているとはいえ、やはり少なからず「満たされていない」と感じながら働き続けていると、いつか限界が来ます。一斉休暇という取り組みによって、会社は社員たちに、「会社は皆さんのことを大事にしている」ことを伝えることができます。社員たちが満たされた気持ちになると、それが仕事へのモチベーションとなり、自然と接客サービスの質につながっていくものです。

次に、採用活動への効果です。旅館業は、どうしても「厳しい労働状況」というイメージが強く、なかなか応募者が集まらないといいます。ところが、一斉休暇を始めたところ、それまで地元の九州が中心だった新卒採用応募者が関東や北海道など全国に広がり、前年の1.5倍に増えたそうです。面接では、多くの応募者から一斉休暇に関する話が出たといいます。

3 “人財”を育て、活用するための働き方改革

1)有能な社員ばかり疲弊するのは、人に仕事を付けるから

政府も推進する「働き方改革」は、思うように進んでいないように見えます。その要因の1つは、人と仕事の関係にあります。日本では、どちらかといえば、仕事に人を付けるというよりも、人に仕事を付ける方法が取られてきました。本来は、

人に仕事を付けるのでなく、仕事に人を付ける

べきです。

人に仕事を付けてしまうと、どうしても「自分はその仕事だけを任されているから、他部門が困っていても関係ない」「自分がこの仕事を任されているのだから、他の人は勝手に入ってくるな」といった気持ちが生まれてしまいます。それゆえ、その人が病気などでしばらく欠勤することにでもなれば、最悪の場合、業務が止まってしまう危険性があります。

さらに、人に仕事を付けることで、能力の高い社員に業務が集中してしまい、その社員への負荷が掛かり、結果として残業時間が増え、疲弊してしまうという悪循環も発生してしまうのです。

それを回避するためには、各業務を細分化・標準化し、誰もが業務を行えるようにしておく必要があります。業務全体では能力の高い社員と同じような結果を出せない人であっても、細分化された一部の業務であれば、繰り返し行うことで慣れ、効率が上がっていくからです。

2)ダブルアサインメントとマルチタスク

業務の標準化と併せて行うことで働き方改革に有効な手段として、ダブルアサインメントとマルチタスクの推進が挙げられます。

ダブルアサインメントとは、

ある1つの業務に対して、あえて担当者を2人割り当てる

ことです。通常は1人を割り当てればいいところを、「2人担当制」にするという働き方です。これにより、担当者のどちらかが急な休みを取っても、お客さまに迷惑を掛けるリスクは低くなります。

マルチタスクとは、

1人で複数の業務を担当する

ことです。ダブルアサインメントを導入するだけでは、人件費の増加などの問題が生じるだけで終わってしまいます。その問題解決のために併せて導入するのが、マルチタスクという働き方です。

3)中小企業が大企業に勝つには部門横断的な“人財”の育成が重要

ダブルアサインメントとマルチタスクは、働き方改革に有効なだけでなく、中小企業の“人財”育成にも欠かせないものだといえます。

東京都墨田区にある石けんなどの製造販売会社は、自社の課題として、「研究開発・営業企画・製造という各部門の壁を取り払い、いかにして一体化させるか」を常に意識しています。それは、経営者自身の経験から、中小企業の社員の基本的な知識・経験・能力は、大企業の社員と比べて低いと感じているためだといいます。

自社と大手企業とが、研究開発・営業企画・製造という各部門の「単体」で闘っても、全く勝負にならない。小さな町工場でつくる自社ブランドが大手企業に勝負を挑み、お客さまから選んでもらうようになるためには、社員が

  • 製造もする営業担当
  • 販促コピーが書ける研究開発担当
  • セールスまでできる工場長

になってもらい、社員の「個」でなく会社の「総合力」で戦うことが必要だと考えたのです。

中小企業が一流の大手企業や海外企業と伍(ご)していくには、社員が自分の強みだけではなく、自社全体を見通せる力を備える必要があります。そのためには、社員に社内全体のオペレーションを一気通貫で経験させ、一人三役といった多能工のような“人財”を育むことが重要です。

4)機械でできることは機械に任せ、人には創造性の高い業務を任せる

社員のモチベーションと仕事の質を高める施策として、機械などでできるルーティン的な業務は機械に任せ、社員には努力が付加価値向上に直結する、創造性の高い業務に専念しやすい環境をつくることが挙げられます。これは働き方改革の成否を分ける取り組みともいえます。

京都府宇治市にある機械加工会社は、かつては大企業の下請けでしたが、機械化やDX(デジタルトランスフォーメーション)によって、働き方改革だけでなく、社員の能力が向上して高付加価値の製品が開発可能となり、飛躍的に収益力を高めることに成功しました。

同社がまず着手したのは、業務の標準化と職人的な製造技術のデータ化による、製造工程管理システムの構築でした。これにより、人力による製造工程はプログラマーがプログラムをセットするだけで、残りの業務は全て機械で行えるようになりました。

製造工程に費やす時間から解放されたことで、社員は創造性が必要な業務に専念できるようになりました。これによって社員のモチベーションは上がり、質量共に十分な人的資源が研究開発に投入されたことで高付加価値化が進んだ結果、米国のNASAなどからも発注が舞い込むまでになりました。

4 非正規社員は果たして「ローコスト」なのか

多くの会社は、人件費の削減を目的として契約社員やパート・アルバイトなどの非正規社員を活用しています。

ところが、この手法をある程度進めていくと、限界を知ることになります。社員をコストや雇用の調整弁としてしか見ない雇用形態では、社員は自分が大切にされているとは思いません。従って愛社精神や仕事に対するモチベーションが生まれるはずもなく、会社や仕事のために心底頑張ろうとは思わないのです。

愛社精神や仕事に対するモチベーションがない人は、どんなに有能であっても、会社全体を見通すことをしませんし、「こうしたら、私たちも会社もよくなる」「お客さまに対して、どのようなプラスαのサービスができるのか」という発想には至りません。指示された業務を指示された方法で処理するだけで終わってしまいます。

また、こうした人たちは自分の都合次第で、簡単に会社を辞めていきます。空いた人員はその都度補充せねばならず、新規採用者には一から教育を施す手間が掛かります。果たして、これがローコストといえるのでしょうか。

本当にローコストを目指すのであれば、原則、正社員化するべきです。少なくとも、頑張れば正社員になれるという門戸を広げておくべきでしょう。正社員化すると人件費が上がることを心配される方も多いと思いますが、正社員にすることで向上するモチベーションは、人件費以上の効果を発揮するものです。会社全体を見通して自発的に動き、計算できない価値を生み出すことができる「社員力」を人件費で割ってみると、相対的にローコストだということが分かるはずです。

次回の第5回は、経営戦略や財務戦略といった観点から、人を大切にする経営を進めていくための方法について、実践事例も交えながら解説していきます。お楽しみにしてください。

以上(2022年7月)
(執筆 人を大切にする経営学会事務局次長 坂本洋介、水沼啓幸)

【著者紹介】
坂本洋介(さかもと ようすけ)

1977年静岡県生まれ。東京経済大学大学院経営学研究科修了。株式会社アタックス「強くて愛される会社研究所」所長、コンサルタント。人を大切にする経営学会事務局次長。著者画像1
主な著書に「社員にもお客様にも価値ある会社」(かんき出版)、「小さな巨人企業を創りあげた 社長の『気づき』と『決断』」(かんき出版)「実践:ポストコロナを生き抜く術!強い会社の人を大切にする経営」(PHP研究所)他、連載、執筆多数。

水沼啓幸(みずぬま ひろゆき)
1977年栃木県生まれ。法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科修了(MBA)。株式会社サクシード代表取締役。人を大切にする経営学会事務局次長。作新学院大学客員教授。中小企業診断士。地域特化型M&Aプラットフォーム「ツグナラ」運営。著者画像2
主な著書に「地域一番コンサルタントになる方法」(同文舘出版)、「キャリアを活かす!地域一番コンサルタントの成長戦略」(同文舘出版)、「実践:ポストコロナを生き抜く術!強い会社の人を大切にする経営」(PHP研究所)他、「近代セールス」等連載、執筆多数。

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