お客さまの声を聞き、向き合い、「付加価値」を高めるために必要なポイントは「構造」。キーエンスからの10の学びをシェアします/岡目八目リポート

年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、田尻 望(たじり のぞむ)さん(株式会社カクシン代表取締役社長CEO)です。

企業にとって最も根源的で普遍的な経営課題「お客さまの声をどのように聞き、どのように向き合っていけばいいか」。今回は、この点について、田尻さんのお話をご紹介します。「お客さまの付加価値の最大化」を徹底的に追求し、多くの実績を積み重ねている田尻さんが教えてくださるのは、場当たり的にお客さまの声を聞いて終わりではない、「お客さまの声を聞く、向き合う、自社に取り込んでいく、形(商品やサービス)にする、お客さま自身が得る付加価値を最大化する」の流れを継続する【仕組み】づくりです。
今回、かなり深く厚いテーマですので、この記事でご紹介するのは「考え方の入り口部分」です。それを自社のことに落とし込んで考えてみると、より実践的なものになるでしょう(もっとご関心のある方は、田尻さんのご著書などがオススメです)。

1 田尻さんたちにとっての「利益」

田尻さんたち株式会社カクシンは徹底した「価値主義経営®」(詳細は後ほど)を追求し、お客さまの付加価値の最大化に取り組んでいます。
「うちの会社は【付加価値】に特化しています。それはつまり、うちのお客さまの利益が目的なわけではないんです」と田尻さん。見ているのは、田尻さんたちのお客さまにとってのお客さま。「うちのお客さまが、その先のお客さま(商品やサービスの受益者)に提供する価値がターゲット」で、それを最大化する仕組みを作り上げていくのが目的です。そういう意味では、
 「お客さまの喜びが私たちの利益」
と笑顔で語る田尻さんです。しかもそれを体現し成果事例も豊富です。なにかもう、ここの段階で「一番大事なことを、ちゃんと徹底・実践している」という骨太さを感じます。

田尻さんのプロフィール画像です

(出所:田尻さんご提供資料)

2 徹底的に「構造」にアプローチする

田尻さんたちカクシンが掲げているのは、
「構造が成果を創る®」
です。これは、「徹底的に構造にアプローチすることで、再現性のある仕組みで強い組織を持続する」ことを目指しています。分かりやすく表現すると「一件当たりの付加価値(単価や価格)もしっかり上げていった上でお客さまに喜んでもらいましょう」「これを仕組みでちゃんとやっていきましょう」ということで、田尻さんは次のように説明しています。

「仕組みが大事で、仕組みをつくる力=人の力を上げていき、組織の力を上げる。人は石垣と言いますが、それよりも【人が石垣をつくり、お城を築いていく】と考えています。ですので、その、人が石垣をつくり、お城を築いていく道筋をつくっていきたい」 「属人的なやり方、場当たり的なことを繰り返していても組織が層として積み上がっていかない」

会社概要画像です

(出所:田尻さんご提供資料)

田尻さんが「構造」を掲げるのは、以前勤めていたキーエンスでの学びからです。キーエンスに憧れ、モデリングしようとしている田尻さん。「構造が成果を創るという力を知らないと、キーエンスのようにはならない。あの会社に積み上がった仕組みの多さは臨機応変にパッとできるものでは絶対にない」と続けます。田尻さんが語るキーエンスからの学びは、改めて後ほどご紹介します。

3 田尻さんたちが進める「価値主義経営®」

ここで、田尻さんたちが進める「価値主義経営®」をご紹介します。この「価値主義経営®」については、従来経営型と比較した次の図が分かりやすいでしょう。

価値主義経営の画像です

(出所:田尻さんご提供資料)

  • コモディティ化でなく、マーケットイン型競合差別化戦略
  • 価格がシェアを決めるのではなく、「価値」によってシェアを獲る
  • 属人での価値から「仕組みでの価値」
  • お客様の御用聞きではなく「お客様の問題を解決し価値を与えるソリューション」

これらの項目や上図は、身につまされる方もいるのではないでしょうか。例えば価格のところで言うと「【値下げ】は経営者がサボっていなければ起こらない」とも言えます。経営者が常にマーケットを注視し、お客さまに向き合い、付加価値を伝え提供していれば、値下げする必要はない。「値下げ合戦」ではなく「付加価値ベースの価格決定」になるわけです。
こうしたことによる営業利益向上を、セールス面・販売促進面・商品企画面で実践しているのが田尻さんたちです。田尻さんたちは、上図の向かって左側の「従来型経営」でなかなか利益が上がらない企業を、右側の「価値主義経営®」にチェンジしていっています。

実際に大手コールセンターや法人向け人事管理システム販売部隊など、さまざまな実績を挙げており、カクシンの2021年度の「お客さまの付加価値向上額(お客さま企業に発生した付加価値の向上額)」は約50億円にも上ります。ただし、目標はまだまだ高く、まずは2024年度にお客さまの付加価値向上額1000億円を目指しています。追いかける数字が田尻さんたちは自分たちの売上よりも、この「お客さまの付加価値向上額」というのも、カクシンの大きな特徴です。

目標の画像です

(出所:田尻さんご提供資料)

●実績例

実績例の画像です

実績例2の画像です

(出所:田尻さんご提供資料)

4 キーエンスからの10の学び

ここからは、田尻さんが語ってくれたキーエンスからの学びをいくつかご紹介します。まず、田尻さんがなぜキーエンスに憧れ、モデリングしているかというと、理念として
「最少の資本と人で、最大の付加価値を上げるという教え」
があるからと言います。こうした理念は、キーエンスの新卒採用サイトに掲載されています。

考え方の画像です

(出所:キーエンスウェブサイト公開資料)

1)圧倒的な営業利益率

キーエンスの特徴がまず分かりやすいのは、圧倒的な営業利益率です。

営業利益率の画像です

(出所:田尻さんご提供資料)

キーエンスは産業機器メーカーとして他に類を見ない営業利益率55.4%(2021年度連結)ですが、これは、「ほぼ値引きをしないから」実現できているものです。競合他社と定価ベースではそれほど金額は変わりません。そこから値引きしないで売れるから営業利益が上がる。なぜ値引きしないでも売れるかというと、「お客さまが価値を理解しているから」です。この「お客さまが価値を理解しているから」の背景には、「付加価値戦略」と「差別化戦略」がある、と田尻さんは語ります。

2)“同時”が肝心。「付加価値戦略」と「差別化戦略」

この2つの戦略を、田尻さん流で噛み砕いて説明すると、次のようになります。

  • 付加価値戦略:「私たちはあなたの役に立ちますよ戦略」
  • 差別化戦略 :「私たちとは他社とは違いますよ戦略」

「この2つを同時に実践しないと価格がつきません。同時、が肝心なんです」と田尻さん。例えば、「私たちはあなたの役に立ちますよ(付加価値戦略)」だけだと、お客さまは「うん、でもそれは競合他社にもできるでしょ? 値下げしてくれる?」となります。
一方、「私たちは他社とは違いますよ(差別化戦略)」だけだと、今度は、お客さまは「うん、分かるけどその機能は今回いらないから値下げしてくれる?」となってしまう恐れがあります。つまり、「私たちはあなたの役に立ちますよ、しかも、他社とは違います(私たちにしかできないです)」となって初めてお客さまは「そうなの。で、いくら?」と価格(定価ベース)の話になるという仕組みです。
キーエンスが他社と大きく違うのは、この「付加価値戦略」と「差別化戦略」を同時に実践しなければならないということを、商品企画、販売促進、営業マーケティング、営業マネジャーから営業担当者一人ひとりまで「全員が一気通貫して実践している、仕組みになっている」点です。これは、他社の企業活動では見られないことではないでしょうか。

3)お客さまが困っているから商品をつくる

 そもそも、キーエンスでは「自分たちがこれをつくりたい」という、自分たち発信の商品づくりをしていないそうです。「お客さまの困りごと」発信で商品をつくっています。田尻さんはこう言います。

「売り上げに困ったからとか、もっと多角化しないといけないからってスタートする他社の新規事業立ち上げって、お客さまが困ってるわけじゃないんですよね。困ってるのは、自社(作り手側)なだけで。キーエンスはお客さまの困りごとからでないと商品をつくりません(お客様が気づいていない困り事:まだ作られていない付加価値=新想像価値、を含む)」

つまり、営業だけでなく、商品開発も含めて会社全体で「お客さまの困りごとからつくる。その価値を伝えて、理解してもらって買ってもらう」が「仕組み=構造」になっていることがキーエンスの強み、特徴といえるでしょう。

4)何より大事な「お客さまの困りごと」

こうしたキーエンスにとって何より大事なのはお客さまの困りごと。「お金よりも大事なのが、お客様の困りごとです。お客さまの困りごとを常に捉えられる位置にいることが重要」と田尻さんは続けます。キーエンスでは、営業担当者が実際にお客さまの現場に行き、直接お客さまから困りごとを聞きます。営業担当者がお客さまの困りごとを聞き、それを本社に定期的にアップする。そして、商品企画者まで含めて徹底してお客さまの困りごとを聞くということも仕組み化されているといいます。
 「お客さまへのヒアリング」的なことを実施している会社は他にも多数あると思いますが、陳腐化・形骸化している例も少なくありません。しかし、キーエンスでは、お客さまの困りごとを聞く、そしてそこから商品がつくられていくことが仕組み(構造)になっていて、全員が腹落ちして実践しているので、陳腐化・形骸化せず継続しているのでしょう。

5)日々、基本的なことをコツコツと

一方、お客さまの困りごとを聞いても、それを簡単に商品化するわけではないそうです。キーエンスには商品化するべきかを決めるさまざまな厳しい基準があり、しっかりと検討を重ねたのちに商品化するといいます。
ウェブサイトやプレスリリース、営業活動などを見ているとキーエンスの新商品開発・販売のサイクルは非常にスピード感があり早いと思いますが、それでも、「お客さまの困りごとを簡単に商品化しない」ことを考えると、どれだけ一人ひとりの営業担当者が数多くお客さまの困りごとを聞き集めているか、常にマーケットを注視しているかが伺えます。まさに日々怠らず、コツコツと、そして徹底的に、です。

6)「顕在ニーズ」はつくらない

さて、キーエンスでは、これまで「お客さまの困りごと発信で商品をつくる」とお伝えしていますが、その一方で、「お客さまが【欲しい】ものはつくらない」とも言っています。これは、お客さまの「顕在ニーズはつくらない」ということであり、キーエンスがソリューションニーズを徹底しているからにほかなりません。
キーエンスが大事にしているのは、より深い付加価値のある「潜在ニーズ、ニーズの裏のニーズ」です(下図ご参照)。

付加価値の画像です

(出所:田尻さんご提供資料)

顕在ニーズは顕在しているので、「検索」ができますが、「潜在ニーズ」はお客さま自身も気づいていないので、「検索」ができません。たとえ、検索ワードを知っていたとしても、その検索ワードが自分の問題解決につながることに気づいていないので、やはり「検索」はできないでしょう。

その潜在ニーズを引き出し、それを解決することを商品化する、提案するのがキーエンスのやり方です。これも、言うは易しでなかなか実践できるものではありません。つい、顕在ニーズどころか、上図の赤い「ムダ」のところ、つまり「お客さまのニーズの上」の商品化や提案をしがちです。そうした会社は利益率が低くなると田尻さんは言います。一見、お客さまのことを考えていそうですが、「ムダ」つまり、お客さまの顕在ニーズでも潜在ニーズでもない商品をつくって売ろうとしているからです。使われない多機能、高性能……。この図は、見るとちょっとドキっとさせられます。

7)考え抜かれた「構造」

田尻さんが教えてくれるキーエンスからの学びの根本には、考え抜かれた「構造」があります。田尻さんのカクシンでも「構造が成果を創る®」を掲げているわけですが、「キーエンスという会社がなぜあれほど利益が出ているのか。それは、キーエンスというストラクチャー(構造)があるからだと考えています」と田尻さん(下図ご参照)。

ストラクチャーの画像です

(出所:田尻さんご提供資料)

「構造が成果を創る®」の分かりやすい例として、田尻さんはいくつか例を挙げてくれました。そのうち、「Apple Storeの76°の例」は広く知られています。これは、Apple Storeでは商品が76°の角度で陳列されていることを指していますが、この角度には重要な理由があります。

「実は【76°】では商品が見づらい」のだそうです。そこでApple Storeを訪れたお客さまは、見づらいから商品を手に取ってみる、つまり触ることになります。これが、Appleの狙いです。「人は手に取ったものに愛着を持つ」そして、スティーブ・ジョブズ曰く「iPhoneの良さは触ってみないと分からない=触ると圧倒的に良いことが分かる」。構造(仕組み)が成果(価値)を創る例として分かりやすいのではないでしょうか。

8)会話の構造化

キーエンスでは「会話」も構造化されています。例えば下の2つを比べてみてください。

会話の構造化画像です

会話の構造化画像2です

(出所:田尻さんご提供資料)

これは、この問題の答えがどうこうというよりも、「答えを出すのにかかる時間」がポイントだと田尻さんは解説します。上の①のほうは、具体的な個数や時間がまったく分からず、とても曖昧です。これでは答えを出すのに時間がかかります。一方、下の②のほうは具体的な個数、時間が明らかになっているので秒で答えが出るでしょう。①の会話が多い会社と②が多い会社では、②が効率的で営業利益が高いのは分かりやすいのではないでしょうか。キーエンスは、②の会話がデフォルトだといいます。

9)価値の伝え方

世の中には「営業トーク」を用意している会社はたくさんあるでしょうが、キーエンスの場合は価値の伝え方も「構造」に基づいています。キーエンス流の「価値の伝え方の例」を田尻さんが示してくれましたので、2つご紹介します。

【お客さまの困りごとから価値提供につなげる例】

お客さまに困りごとを聞いたとき、「社内のコミュニケーションに悩んでいる」という回答。ここで営業担当者が「分かりました、では社内コミュニケーションに良いセミナー講師がいるのでご紹介しますね」となるのは、単なる御用聞き営業。お客さまのニーズに合わせているようで、「御用聞き」しかしていない。
ここで大事なのは、「ソリューションニーズ」として聞くためにもう一段深掘りすること。お客さまに「コミュニケーションでどんな問題が起こっているのですか?」(本当にセミナー講師の紹介などで問題の解決になっているのか)と質問をする。そうすると例えば「実は、人が辞めてしまって……。営業が今年もう5人辞めている」という回答だったとする。そうすると、「それは大変ですね。。営業の方が辞めている間は売り上げが落ちてしまっていますし、例えば年収500万円の営業の方を雇い直すとすると人材獲得に年収の35%かかりますので1人に175万円かかります。新しく雇った方が働いて成果を出すまでに半年かかったとしましょう。でもそれまでも給料は必要なので半年分の給料250万追加すると1人当たり425万かかります。それが5人となると、コミュニケーションの問題から、実に2000万円以上の損失が出ていますよね。これを解決するためのコミュニケーション研修をご紹介します」と伝えて価値を示すことができる。

【世界初・業界初・特許出願中といった価値の伝え方】

「工場にこの装置をつけるとこれだけの生産性が上がりますよね。この装置は業界初・特許出願中なんです」と言うと、お客さまは「比較=相見積もり」ができなくなる。業界初で特許出願中なので、「他社にはない」から。値引きされることもない。「生産性向上=付加価値戦略、付加価値トーク」であり、同時に「特許出願中=差別化戦略、差別化トーク」を実践しているので、価値を示して価格維持が実現できている。

上2つの例はどれも腹落ち感がありますが、特に、「世界初・業界初・特許出願中といった価値の伝え方」については、それこそ商品企画・販売促進・営業一人ひとりのクロージングトークまでが一気通貫して構造化されているので実現できる「キーエンスの構造化営業」と言えるのではないでしょうか。

10)「業界初」を叶える

 キーエンスの営業現場での話として、田尻さんは「業界の人は業界の情報に本当に詳しいか?」ということも語ってくれました。これは、企業の前向きなチャレンジを後押ししてくれる話ですので、最後にご紹介したいと思います。

特に法人営業の場合、営業されるほうは、「営業されること」よりも「成功につながるいい情報を教えてくれること」がうれしいものです。「いい情報とは、他社を含めた業界全体の最新の成功事例」であると田尻さんは言います。
 ところが、業界の人ほど、自社の競合他社の成功事例は、なかなか知りません。知ることができないのです。しかし、業界の複数社に営業し、困りごとも聞いているキーエンスの営業担当者はそれぞれの会社のことをよく知っています。
 要するに、「(お客さまは)自分の会社の成功事例は知っているが、他社も含めて業界全体の成功事例を一番知っているのはキーエンスの営業担当者」になるわけです。よく、法人営業の担当者は、営業先の人に対して「自分たちはお客さまより業界の情報に詳しくない」と“ヒヨってしまう”ことがありますが、「何もヒヨる必要はない。キーエンスのように、自分たち(お客さまの困りごとなどを聞いている営業している会社)のほうが詳しいという状態になればいい」と田尻さん。
お客さまよりも、成功事例などお客さまの業界に詳しくなる。そうすると、お客さまの潜在ニーズをさらに超えた「新創造価値=まだ作られていない付加価値」をも見つけることができると力強く背中を押してくれる田尻さんです。

「まだ作られていない付加価値、つまり、今までになかったニーズを初めて見つけて、それを初めて解決する。これは業界初です。つまり、業界初は、どの企業でも実現できるのです」

付加価値の画像です

(出所:田尻さんご提供資料)

こうしてみると、自分たちも、「業界初」が実現できそうに思えてきませんか? キーエンスからの学び、それを詳しく読み解き、多くの企業の「付加価値」を最大化している田尻さん。幾重にも積み上げた「構造」的なお話から、お客さまの声を聞き、向き合い、そして付加価値を上げていく明るい未来が具体的にイメージできる気がしました! 有り難うございます。

以上(2022年7月作成)

初めてのオフィス移転 必要な手続きとポイント

書いてあること

  • 主な読者:オフィスビルにテナントとして入居している企業の経営者、財務担当者
  • 課題:賃料(固定費)の負担は抑えたい。社員の満足度は高めたい
  • 解決策:実態に見合う適正なオフィススペースを再確認。必要に応じて移転の是非を判断

1 「働く場所」を選択する時代の「攻め」のオフィス戦略

皆さんは普段、どこで業務を行っているでしょうか? 時と場合によって異なるでしょうが、これからの時代、その答えは、必ずしも「オフィス」ではないのかもしれません。

「働く場所」が多様化していく将来を見据え、オフィス戦略をどうするか。大きく分けると2つの選択肢が考えられます。

  • 「働き方改革」などで在宅勤務やリモートワークが定着して出社する人数が減ったため、縮小移転する
  • ウェブ会議用の部屋の新設や雑談できるコミュニケーションスペース確保のため、より広いオフィスへ移転する

オフィス移転は、理想の環境を実現し、経営課題の解決を図るチャンスでもあります。この記事では、初めてオフィス移転を検討する際の、必要な手続きとポイントを整理します。

2 まずは、現状のオフィスを再確認

1)面積は自社の実態に照らして適正か?

まずは、「出勤しなければならない社員が何人いるのか」「どのようなケースで、オフィスでないと通常業務に支障を来すのか」を確認しましょう。

労働安全衛生規則では、「事業者は、労働者を常時就業させる屋内作業場の気積を、設備の占める容積及び床面から4メートルをこえる高さにある空間を除き、労働者1人について、10立方メートル以上としなければならない」(第600条 気積)とされています。

オフィスビルの天井高を2.5メートルとすると、1人当たりの面積は4平方メートルですが、ソーシャルディスタンスを保つため、1人当たりの面積をそれ以上広めに取ることも考慮しましょう。

2)足元のオフィス市況は?

賃料(固定費)を抑えるためにも、移転希望エリアの平均空室率や平均賃料などの市況を正確に把握することが重要です。

例えば、オフィス仲介大手の三鬼商事、三幸エステート、シービーアールイーなどは、主要都市のオフィス市況データを公表しています。また、不動産流通推進センターが運営するウェブサイト「不動産ジャパン」では、エリア・路線などの条件を入力して、事業用物件を検索できます。

3 移転計画を立てる

1)現オフィスの解約予告期間は?

現オフィスと移転後の新オフィスの賃料を両方とも負担する期間をなるべく短くするため、現オフィスの賃貸借契約で、契約解除のためにはいつまでに申し入れが必要なのかを確認します。この解約予告期間を基に移転の時期や条件を検討します。

2)オフィス移転に掛かる費用は?

オフィス移転に掛かる費用には、次のようなものがあります。

  • 新オフィスの敷金・保証金、礼金、仲介手数料
  • 前家賃、前共益費
  • 火災保険料
  • 内装工事費、電気工事費
  • 家具・備品購入代
  • 引っ越し代
  • 名刺や封筒などの印刷代
  • 現オフィスの原状回復工事費

移転に掛ける予算は、これら全ての金額を見積もる必要があります。

これらの費用の会計処理の方法は、一時に経費になるものや資産計上しなければいけないものなど、支出の内容によって異なります。詳しくは税理士などの専門家に確認しましょう。

3)移転先の物件探し、条件は?

移転先の物件探しについては、不動産会社へ依頼するのが一般的です。その際、立地条件、必要面積、賃料、移転時期に加え、建物の仕様(天井高、床荷重、OAフロアの有無、個別空調の有無、エレベーターの有無、男女別トイレの有無、駐車場・駐輪場の有無、新耐震基準など)の条件を設定する必要があります。

新耐震基準とは、1981年(昭和56年)6月1日以降の建築確認において適用されている基準です。それより前に建築確認を受けた建物(旧耐震基準)であれば、耐震診断を受け、必要に応じた耐震補強が実施されていることを確かめましょう。

4)自社だけで全て対応できる?

オフィス移転に関する業務は多岐にわたります。通常業務と並行してオフィス移転を進めるために、ノウハウ・実績を持つパートナーを選定するのが一般的です。

オフィス家具メーカー、建築デザイン事務所、プロパティマネジメント会社、通信系設備工事会社などさまざまなパートナー候補先から、ノウハウ・実績などを参考に数社に絞り、各社にプレゼンテーションを行ってもらい、提案の良しあしを見定めましょう。

4 物件選びから引っ越しまで

1)不動産会社へ紹介を依頼~現地内見

移転時期や希望条件が固まったら、不動産会社へ候補物件の紹介を依頼し、現地に赴いて内見をします。

内見では、あらかじめ設定した条件に加え、フロア形状、フロア内の柱の有無、眺望、採光、ブラインドの有無、入居している他のテナントの状況、エントランスの開閉時間、エレベーター・トイレなど共用部分の状況、携帯電話の電波受信状況などを確認します。

2)申し込みと条件交渉~審査書類提出

候補物件の中から気に入ったところが見つかれば、不動産会社へ申し込んで、その物件を押さえます。この段階で、不動産会社を通じて、物件の貸主と条件交渉を行います。

賃料・共益費の金額交渉とともに、フリーレント(賃料を無料とする期間)の交渉も行うとよいでしょう。共益費についても、交渉次第で、入居工事着工時から請求対象とするといった条件が得られることもあります。また、内装工事や電気工事は、借主負担で、貸主指定の工事業者に発注するように定められていることが多いですが、これも交渉の余地はあるでしょう。

その後、不動産会社を通じて審査書類を提出します。主な審査書類として次が挙げられます。

  • 法人の登記簿謄本(写し)
  • 法人の概要(会社のパンフレットなど)
  • 直近3期分の決算書類
  • 連帯保証人の身分証明書(写し)
  • 連帯保証人の収入証明(写し)

3)審査通過~重要事項の説明~預託金の支払い

審査を通過すると、賃貸借契約を締結するまでの間に、不動産会社の宅地建物取引主任者から重要事項(建物・設備・契約の内容、契約期間と更新・解除、法令による制限など)について説明を受けます。少しでも不明な点があれば納得のいくまで確認しましょう。

そして、契約締結日前日までに、敷金・保証金(預託金)を預け入れます。なお、契約締結から入居までの期間が長い場合は、契約時に預託金の一部を預け入れる場合もあります。

4)現オフィスの解約申し入れ

審査書類を提出後、審査を通過した段階で、現オフィスを管理している先に解約を申し入れます。解約の申し入れは、一般的に契約時に渡される解約通知書面を郵送またはFAXで送付します。

通常、解約の申し入れ後は、日割り計算で賃料を支払います。書面の送付日が解約を受け付けた日付となるため、早めに対応するとよいでしょう。

5)電話回線・インターネット回線の移転の手配、各種見積もり

電話回線・インターネット回線の移転の手配を行い、各種見積もりを取ります。

  • オフィスのレイアウト作成、内装工事の見積もり
  • 購入する家具・備品の見積もり
  • 通信機器・LAN設定工事の見積もり
  • 引っ越しの見積もり

6)新オフィスの賃貸借契約

不動産会社や貸主に対し、賃貸借契約に当たって必要な書類を事前に確認の上、契約日までに用意します。

賃貸借契約を締結した後に一方的に解約を申し出ても、それが認められるとは限らず、違約金などが発生する恐れもあります。事前に条件交渉の結果が正確に契約書に反映されているかを、しっかりと確認することが大切です。

7)現オフィスの原状回復工事の打ち合わせ

現オフィスを退去するに当たって、通常、壁や床、天井などを入居時の状態に戻す必要があります。この原状回復工事の範囲や期間、期限を貸主に確認します。なお、原状回復工事については、貸主指定の工事業者に発注するように定められていることが多いため、指定業者の有無も併せて確認しましょう。

原状回復工事が期限までに完了しない場合、契約の不履行と見られて工事の完了までの日数に賃料が発生することもあります。明け渡し日を期限とするのが一般的なため、その数日前には工事が完了するようにし、不測の事態にも対応できるようにしましょう。

8)新オフィスの内装工事

賃貸借契約完了後に、内装工事、家具・備品、通信機器・LAN設定工事、引っ越しの発注を行います。

内装工事に入る前には、レイアウトと工事内容が記載された図面、工程表を貸主に提出して許可を得ます。騒音が出る工事については、他のテナントの迷惑にならないように、土・日・祝日にしか作業ができない場合も多いため注意が必要です。

9)引っ越し

引っ越しでは、前日までに荷造りを済ませ、新オフィスで混乱が生じないようにしましょう。梱包した荷物と移転後のレイアウト図面に番号を振って引っ越し業者に渡し、新オフィスのどこに配置するのかが分かるようにしておくとよいでしょう。

粗大ごみが出る場合、各市区町村の窓口に問い合わせ、日時・場所など指示に従って出します。回収は基本的に有料なので(無料の市町村もあります)、問い合わせのときに料金や支払い方法について確認します。ビルで指定の業者がある場合には、ビルの管理会社から収集日や収集方法などの説明を受けましょう。

5 関係官庁への届け出

移転によって所在地が変更となるため、登記、税務、労務などについて関係官庁へ必要書類を提出し、手続きをしなければなりません。

ケースによって提出書類の様式や添付書類、提出期限が異なるため、実際には関係官庁に問い合わせて確認することが大切です。必要に応じて、司法書士、行政書士、税理士、社会保険労務士に手続きの代行を依頼することも検討しましょう。

以上(2022年7月)

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画像:Africa Studio-shutterstock

創造性とモチベーションの高い“人財”を育てるための働き方改革/「人を大切にする経営」で業績アップ(4)

書いてあること

  • 主な読者:業績は上がらないし、社員は生き生きと働いていない。会社の経営指針を根本的に見直したいと考えている経営者
  • 課題:社員の幸福や会社の社会的意義も大事だが、業績が悪ければそれどころではない
  • 解決策:会社に関係する全ての人の幸福を最優先する「人を大切にする経営」を実践する。休暇をプラスに捉え、会社全体を見通し創造性の高い業務を行う“人財”を育てる

1 「労働時間が減る=業績が悪くなる」という大きな勘違い

前回は「経営者の意識改革」をテーマに、実践事例を交えながら、どんな有事でも一喜一憂しないために経営者が持つべき視点や、勝ち残るための非価格競争の重要性について紹介しました。

第4回となる今回は、働き方改革や“人財”育成および活用といった観点から、人を大切にする経営を進めていくための方法について、実践事例を交えつつ紹介していきたいと思います。

1)残業しないと達成できない経営計画は不要

「働き方改革で社員の労働時間が減ったら、売り上げも減った」と嘆く人たちがいます。しかし、社員の残業時間が減り、休みが増えるようになると会社の業績が悪くなるという考え方には、大きな勘違いがあります。

そもそも、

残業や休日出勤をしないと、売り上げ・利益が計画通りに達成できないという状況は異常

なことであって、

そのような経営目標・経営計画を立てたことに、もともと無理があった

ということを認識することが大切です。

誰かの犠牲の上に成り立つ経営、誰かに負荷が掛かる経営は、いずれ崩壊を招く

ことになります。

低い目標を立てろとは言いませんが、ゆっくり、着実に成長・目標達成をする計画を立てること。「急がば回れ」を意識することが求められます。

2)長野県の寒天製造販売会社が進める数値目標を掲げない「年輪経営」

第2回でもご紹介した、長野県にある寒天の製造販売会社では、「年輪経営」という経営が行われています。樹木が1年で一つずつ年輪を増加させるように、会社は急成長・急拡大を目指すことなく、地道に少しずつ成長を続けるというものです。

年輪経営を貫く同社の成長についての考え方は、「年輪は、たとえ雨が少ない年であっても、寒くても、暑くても、毎年必ず一つ増えます。毎年の成長度合いは同じでなくてもよく、前の年よりも大きくなっていることが大切」というものです。そのため、「売り上げや利益は、年輪経営の結果である」と考え、成長の数値目標を掲げていません。

むしろ、急成長には懐疑的で、「好景気や一時のブームに乗って急激に成長してしまうことに気を付けなければいけません。確実で安定した成長が、自分たちだけでなく会社を取り巻く全ての人々の幸せにつながることを実感しています」と考えているのです。

長期間にわたり増収増益を継続した同社の実績は、年輪経営の正しさを証明してくれているといえます。

3)「残業は当然」という認識は改めるべき

かつては、勤勉で残業も休日出勤も厭わずに働くことが、日本人の美徳であると思われてきました。また、自分自身の業務が終わっていても、周りの社員の業務が終わらないうちは帰らず、業務を続けるということが組織の一体感を高めることだと思われていました。

確かに、そのような考え方が機能していた時代があったことは事実かもしれません。ですが、自分自身の業務が終わったのに業務を続けているのは、残業のための残業でしかありません。なぜ、日本人は何の疑問も持たずに残業を続けてきたのでしょうか。

「お客さまが困っているから、対応せざるを得ない」ということはあるでしょう。ですが、本来、顧客満足への対応について考えるのは、社員個人ではなく、会社全体、つまり経営判断であるべきです。困っているお客さまへの対応まで所定労働時間内でやりきるのが、通常の働き方であるはずです。

それができていない理由は、会社が社員のキャパシティを超えた業務を与えているのか、またはその社員の業務の仕方に問題があるのかだと思います。

2 社員の休暇は会社にとっての「損失」ではない

1)社員の一斉10連休に取り組んだ別府市のホテル

社員が残業をせず、休みを増やすことは、本当に会社にとってマイナスなことなのでしょうか。ここでは、ある宿泊業者のケースを例に見てみることにします。

宿泊業といえば、休日が少なく営業時間が長いことの代表的な業種と思われています。しかし、ここ数年で、その業界常識の改革に挑み、実際に成果を生んでいる旅館・ホテルが現れ始めてきています。

大分県別府市にあるホテルでは、2020年の正月明けの1月14日から23日まで全館休業とし、約1000人の社員を一斉休暇としました。この取り組みは、単年ではなく2018年から3年連続で行われました。

この取り組みについて、支配人は、「この業務形態をこのままにしていいのか。働いている本人はよくても、家族はどうだろうか…」「顧客満足度にひたすらこだわってきたが、社員満足度にも力を注がないといけない。従業員の連休拡大は避けては通れなかった」「企業が有給休暇取得を推進する時勢も受け、拡大に踏み切った」と話しています。

2)社員のモチベーション向上や採用活動に大きなメリット

10日間の全館休業によって、売り上げは数億円の減収になったといいますが、それをはるかに上回る価値も生まれたといいます。まずは、社員のモチベーションの向上です。いくら好んで働いているとはいえ、やはり少なからず「満たされていない」と感じながら働き続けていると、いつか限界が来ます。一斉休暇という取り組みによって、会社は社員たちに、「会社は皆さんのことを大事にしている」ことを伝えることができます。社員たちが満たされた気持ちになると、それが仕事へのモチベーションとなり、自然と接客サービスの質につながっていくものです。

次に、採用活動への効果です。旅館業は、どうしても「厳しい労働状況」というイメージが強く、なかなか応募者が集まらないといいます。ところが、一斉休暇を始めたところ、それまで地元の九州が中心だった新卒採用応募者が関東や北海道など全国に広がり、前年の1.5倍に増えたそうです。面接では、多くの応募者から一斉休暇に関する話が出たといいます。

3 “人財”を育て、活用するための働き方改革

1)有能な社員ばかり疲弊するのは、人に仕事を付けるから

政府も推進する「働き方改革」は、思うように進んでいないように見えます。その要因の1つは、人と仕事の関係にあります。日本では、どちらかといえば、仕事に人を付けるというよりも、人に仕事を付ける方法が取られてきました。本来は、

人に仕事を付けるのでなく、仕事に人を付ける

べきです。

人に仕事を付けてしまうと、どうしても「自分はその仕事だけを任されているから、他部門が困っていても関係ない」「自分がこの仕事を任されているのだから、他の人は勝手に入ってくるな」といった気持ちが生まれてしまいます。それゆえ、その人が病気などでしばらく欠勤することにでもなれば、最悪の場合、業務が止まってしまう危険性があります。

さらに、人に仕事を付けることで、能力の高い社員に業務が集中してしまい、その社員への負荷が掛かり、結果として残業時間が増え、疲弊してしまうという悪循環も発生してしまうのです。

それを回避するためには、各業務を細分化・標準化し、誰もが業務を行えるようにしておく必要があります。業務全体では能力の高い社員と同じような結果を出せない人であっても、細分化された一部の業務であれば、繰り返し行うことで慣れ、効率が上がっていくからです。

2)ダブルアサインメントとマルチタスク

業務の標準化と併せて行うことで働き方改革に有効な手段として、ダブルアサインメントとマルチタスクの推進が挙げられます。

ダブルアサインメントとは、

ある1つの業務に対して、あえて担当者を2人割り当てる

ことです。通常は1人を割り当てればいいところを、「2人担当制」にするという働き方です。これにより、担当者のどちらかが急な休みを取っても、お客さまに迷惑を掛けるリスクは低くなります。

マルチタスクとは、

1人で複数の業務を担当する

ことです。ダブルアサインメントを導入するだけでは、人件費の増加などの問題が生じるだけで終わってしまいます。その問題解決のために併せて導入するのが、マルチタスクという働き方です。

3)中小企業が大企業に勝つには部門横断的な“人財”の育成が重要

ダブルアサインメントとマルチタスクは、働き方改革に有効なだけでなく、中小企業の“人財”育成にも欠かせないものだといえます。

東京都墨田区にある石けんなどの製造販売会社は、自社の課題として、「研究開発・営業企画・製造という各部門の壁を取り払い、いかにして一体化させるか」を常に意識しています。それは、経営者自身の経験から、中小企業の社員の基本的な知識・経験・能力は、大企業の社員と比べて低いと感じているためだといいます。

自社と大手企業とが、研究開発・営業企画・製造という各部門の「単体」で闘っても、全く勝負にならない。小さな町工場でつくる自社ブランドが大手企業に勝負を挑み、お客さまから選んでもらうようになるためには、社員が

  • 製造もする営業担当
  • 販促コピーが書ける研究開発担当
  • セールスまでできる工場長

になってもらい、社員の「個」でなく会社の「総合力」で戦うことが必要だと考えたのです。

中小企業が一流の大手企業や海外企業と伍(ご)していくには、社員が自分の強みだけではなく、自社全体を見通せる力を備える必要があります。そのためには、社員に社内全体のオペレーションを一気通貫で経験させ、一人三役といった多能工のような“人財”を育むことが重要です。

4)機械でできることは機械に任せ、人には創造性の高い業務を任せる

社員のモチベーションと仕事の質を高める施策として、機械などでできるルーティン的な業務は機械に任せ、社員には努力が付加価値向上に直結する、創造性の高い業務に専念しやすい環境をつくることが挙げられます。これは働き方改革の成否を分ける取り組みともいえます。

京都府宇治市にある機械加工会社は、かつては大企業の下請けでしたが、機械化やDX(デジタルトランスフォーメーション)によって、働き方改革だけでなく、社員の能力が向上して高付加価値の製品が開発可能となり、飛躍的に収益力を高めることに成功しました。

同社がまず着手したのは、業務の標準化と職人的な製造技術のデータ化による、製造工程管理システムの構築でした。これにより、人力による製造工程はプログラマーがプログラムをセットするだけで、残りの業務は全て機械で行えるようになりました。

製造工程に費やす時間から解放されたことで、社員は創造性が必要な業務に専念できるようになりました。これによって社員のモチベーションは上がり、質量共に十分な人的資源が研究開発に投入されたことで高付加価値化が進んだ結果、米国のNASAなどからも発注が舞い込むまでになりました。

4 非正規社員は果たして「ローコスト」なのか

多くの会社は、人件費の削減を目的として契約社員やパート・アルバイトなどの非正規社員を活用しています。

ところが、この手法をある程度進めていくと、限界を知ることになります。社員をコストや雇用の調整弁としてしか見ない雇用形態では、社員は自分が大切にされているとは思いません。従って愛社精神や仕事に対するモチベーションが生まれるはずもなく、会社や仕事のために心底頑張ろうとは思わないのです。

愛社精神や仕事に対するモチベーションがない人は、どんなに有能であっても、会社全体を見通すことをしませんし、「こうしたら、私たちも会社もよくなる」「お客さまに対して、どのようなプラスαのサービスができるのか」という発想には至りません。指示された業務を指示された方法で処理するだけで終わってしまいます。

また、こうした人たちは自分の都合次第で、簡単に会社を辞めていきます。空いた人員はその都度補充せねばならず、新規採用者には一から教育を施す手間が掛かります。果たして、これがローコストといえるのでしょうか。

本当にローコストを目指すのであれば、原則、正社員化するべきです。少なくとも、頑張れば正社員になれるという門戸を広げておくべきでしょう。正社員化すると人件費が上がることを心配される方も多いと思いますが、正社員にすることで向上するモチベーションは、人件費以上の効果を発揮するものです。会社全体を見通して自発的に動き、計算できない価値を生み出すことができる「社員力」を人件費で割ってみると、相対的にローコストだということが分かるはずです。

次回の第5回は、経営戦略や財務戦略といった観点から、人を大切にする経営を進めていくための方法について、実践事例も交えながら解説していきます。お楽しみにしてください。

以上(2022年7月)
(執筆 人を大切にする経営学会事務局次長 坂本洋介、水沼啓幸)

【著者紹介】
坂本洋介(さかもと ようすけ)

1977年静岡県生まれ。東京経済大学大学院経営学研究科修了。株式会社アタックス「強くて愛される会社研究所」所長、コンサルタント。人を大切にする経営学会事務局次長。著者画像1
主な著書に「社員にもお客様にも価値ある会社」(かんき出版)、「小さな巨人企業を創りあげた 社長の『気づき』と『決断』」(かんき出版)「実践:ポストコロナを生き抜く術!強い会社の人を大切にする経営」(PHP研究所)他、連載、執筆多数。

水沼啓幸(みずぬま ひろゆき)
1977年栃木県生まれ。法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科修了(MBA)。株式会社サクシード代表取締役。人を大切にする経営学会事務局次長。作新学院大学客員教授。中小企業診断士。地域特化型M&Aプラットフォーム「ツグナラ」運営。著者画像2
主な著書に「地域一番コンサルタントになる方法」(同文舘出版)、「キャリアを活かす!地域一番コンサルタントの成長戦略」(同文舘出版)、「実践:ポストコロナを生き抜く術!強い会社の人を大切にする経営」(PHP研究所)他、「近代セールス」等連載、執筆多数。

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画像:fizkes-Adobe Stock

【朝礼】上司の皆さん、部下の心情を理解していますか

部下が仕事の報告を話し始めると、「それは分かった」と話をさえぎる上司がいます。しかし、こうした上司は、本当に部下の言わんとすることが分かっているのでしょうか。部下の心情を理解できているのでしょうか。

上司は、部下の仕事内容をだいたい把握しているものです。そのため、部下が仕事の報告を始めたら、その内容についてはほぼ見当がつくでしょう。しかし、ここで上司が分かるのは、だいたいのところにすぎません。

そこで、部下を持つ皆さんにお願いが二つあります。一つ目のお願いは、部下が報告を始めたら、話をすべて聞くことに注力してほしいのです。部下の話を「それは分かった」と途中でさえぎるのではなく、「なるほど、それでどうなりましたか」「概略は分かりました。もう少し、具体的に教えてください」「今後はどうなると思いますか」と問いかけてください。

もう一つのお願いは、このときに部下の心情を理解してもらいたいのです。仮に、部下の仕事が想定通りに順調に進捗(ちょく)しているとします。部下は、仕事が想定通りに進んでいることに対して「ほっとしている」と思っているかもしれません。本心では仕事が想定通りに進むことは困難だと考えていたため、「現状に満足だ」と思っているかもしれません。意欲の高い部下であれば、もっとできたはずとの思いから「残念だ」と考えているかもしれません。あるいは、関係者全員が喜んでいるので「自分もうれしい」という部下がいるかもしれません。

美しいと思う景色や大金と思う金額が個人によってまちまちなのと同様に、傍(はた)からは同じ状況下に見えていても、部下がそのときに考えることは同じではありません。

一人ひとりの心情を理解し、その上で部下をマネジメントしなければ、上司として十分な役割を果たしたとはいえません。今、部下の皆さんは「そうだ、そうだ。その通り」と心の中で叫んでいるのではないでしょうか。

上司の仕事は、部下の業務の割り振りをし、業務の進捗(ちょく)状況を管理するだけではありません。上司にとって、もっと重要な仕事は部下の心情を把握し、その時々に応じて、正しい助言をし、部下のやる気に火を付けることです。

壁を乗り越えられずに、「つらい」と感じている部下には、上司は自分が「つらい」と思った経験を話してあげてください。そうすることで互いの理解が少しでも深まります。心がてんぐになっている部下には、てんぐのときがあってもいいが、足元をしっかり見てみろ、そろそろ気を引き締めるときだと諭(さと)してください。

上司の皆さんは、自分が部下だったころを思い出し、部下の心情を理解する努力を続けてください。そうすることで、これまで以上に部下のマネジメントができるようになりますし、ひいては部下と本当の仲間になれます。

私も、皆さんの心情を理解する努力を続けますので、本心を打ち明けてください。

       

以上(2022年7月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】「自分には強みがない」と悩む人に聞いてほしい話

けさは、「自分には、これといった強みや特徴がない」と思い悩んでいる人にとって、ヒントになるような話をしたいと思います。

皆さんには何度も話していますが、自分の強みを持つことは、ビジネスパーソンとして非常に重要なことです。社内のみならず、社外でも強みになるようなスキルがあれば、会社にとっても本人にとっても存在価値を高めることにつながります。それと同時に、社外に対しても強みになるようなものをつくることは、簡単ではないのも事実です。

皆さんの中には、米国のプロ野球選手である加藤豪将(ごうすけ)さんをご存じの方もいると思います。米国生まれで主に米国で育ちましたが、ご両親とも日本人です。高校卒業後、日本のプロ野球を経ずに、米国でマイナー契約を結んでプロ野球選手になりました。そして2022年4月、プロ9年目にしてメジャーリーグで初ヒットを放ちました。

プロ選手になった後の加藤さんは、外国人選手と比べて体格やパワーで劣ることもあり、なかなかメジャーリーグに昇格できませんでした。下部のマイナーリーグは、バスで十何時間も移動し、粗末な食べ物しか食べられないような過酷な生活だったといいます。

それでも何とかメジャーリーグに昇格しようと、加藤さんが選んだ道が、何でもこなせるユーティリティープレーヤーになることでした。

そのために加藤さんは、内外野のあらゆるポジションを守り、チームの戦略や、控えも含めた全ての打順で求められるバッティングができるように努力しました。本人いわく、「カメレオンみたい」な選手を目指したのです。

このようなタイプは、監督にとって非常に使い勝手の良い選手です。例えば、けが人が出た場合など、その穴を埋めるのにはもってこいです。加藤さんはマイナー生活での経験から、いつ指名されても活躍できるよう、身体的、精神的に準備を整える術を学んだといいます。しかも加藤さんは、常に笑顔を絶やさず、そのような隙間を埋める作業を喜んで引き受けています。メジャー初のヒットを放った際にチームの皆が祝福したのは、そのような加藤さんのキャラクターも大きかったのだろうと思います。

会社にとっても、加藤さんのような、組織の隙間を埋めてくれるような人は貴重な存在です。営業で大きな取引を獲得したり、新たなプロジェクトを企画したりするだけで会社が回っているわけではありません。忙しい人をサポートしたり、急に休みが必要になった人の穴を埋めたり、といった作業も会社にとって不可欠です。オフィスの汚れた場所に気付いてすぐに掃除することも、組織の隙間を埋めるような作業といえるでしょう。そのような積み重ねによって、組織にとって欠かせない存在になれます。それは、もはやその人の強みや特長だといえるでしょう。

以上(2022年7月)

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画像:Mariko Mitsuda

【営業最強フレーズ集】プレゼン編1 「極端ですが、仮に、金額が今の半分だったらいかがですか?」

書いてあること

  • 主な読者:今よりレベルアップしたい営業担当者と、営業担当者を指導する営業管理職
  • 課題:現場ですぐに使えて顧客と信頼関係を築けるトークスクリプト的なものが欲しい
  • 解決策:シーンごとに「最強フレーズ」を、少なくとも1つは持っておく。あとは応用

極端な話ですが、もし、金額が今の半分だったらいかがですか?

「予算が無い」は引き下がらざるを得ない?

相手のニーズをしっかりとヒアリングしたはずなのに、提案すると相手の反応が芳しくないことがよくあります。

そういうとき、よく言われる断り文句は「今は予算が無いから」かもしれません。「予算が無い」と言われると、多くの営業担当者は仕方ないと思いがちです。リアクションできたとしても、「では次回の予算の検討時期に合わせますので、いつか教えてください」と尋ねるぐらいではないでしょうか。

本当に金額の問題なのか切り分ける

多くの営業担当者が引き下がってしまう「予算が無いから」という言葉は、“断るための常とう句”だったりします。単に相手が「プレゼンを聞いても本当に必要だと感じることができなかった」だけかもしれません。

そこで、冒頭で紹介した営業最強フレーズを使って、「本当に『予算が無い』という金額だけの問題なのか、それとも金額以外(提案内容など)に問題があるのか」を確認し、相手の不満点がどこにあるかを切り分けましょう。

不満点が金額(予算)ではなかったら?

相手が「うーん、半分ねえ……。それでも採用は難しいかな」という反応だったら、相手の不満点は、おそらく「金額(予算)」ではありません。

この場合は、「そうですか。それではプランをもっと○○様のニーズに合うものに見直したいと思うので教えてください。今回の提案の中で、一番引っかかるのはどこですか?」と尋ねてみましょう。こうすれば、相手の不満点を確認しつつ、改めてニーズを具体的にヒアリングすることができます。

不満点が金額(予算)だったら?

相手が「そりゃ半分だったら欲しいよ。できるの?」という反応だったら、相手の不満点は金額(予算)の可能性が高くなります。

この場合は、「半分というのはさすがに難しいですが、金額が問題なのであれば、調整してみたいと思います。どのくらいならご検討いただけますか?」と尋ねてみましょう。併せて、

「プランを見直す参考にしたいので教えてください。今回の提案の中で、これは必要だという機能やサービスはどれですか?」

と尋ねれば、金額を見直すにしても相手のニーズに応えた見直しができます。

ただし、これまでの話と逆説的になるかもしれませんが、安易に「単なる値下げ」に走るのは良いことではありません。仮に、予算オーバーなど金額が問題だったとしても、相手にとっての価値をしっかりと伝えることで相手が納得し、金額の問題を解消できる場合もあります。価値を伝えられているかどうか確認してみることも必要でしょう。

プレゼンは「ギャップを埋める」取り組み

プレゼンの目的の1つは、「買いたい」と思う相手の気持ちと、「売りたい」という営業担当者の思いの間にあるギャップを埋めることです。ただ商品やサービスのメリットや機能を伝えるだけでなく、相手のリアクションを見ながら不満点を明らかにし、それを除いていくトークが必要です。

なお、オンラインでプレゼンする際は、相手に了承を得た上で、レコーディングや録音をして「相手のリアクションを記録に残しておく」のがよいでしょう。プランの見直しや他社への営業の際などに非常に参考になります。

以上(2022年7月)

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画像:Mariko Mitsuda

視野の異常と安全運転(2022/07号)【交通安全ニュース】

活用する機会の例

  • 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
  • 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
  • マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など

自動車の運転においては、良好な視力だけでなく十分な視野も大切です。視力とは物の形状などを認識する力であり、視野は眼を動かさず見える範囲のことです。

運転中は、視野で信号機、他の車、歩行者などの存在や動きを察知して、適宜、眼を動かして対象物の詳細を確認しています。

もしも視野に異常があれば、周囲の交通状況を的確に把握できなくなり、誤った運転操作をしてしまうおそれがあります。

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1.視野に異常をきたす疾患

視野に異常をきたす疾患の例として、「緑内障」と「網膜色素変性症」があげられます。日本人の視覚障害の原因疾患のうち4割以上をこの2つの疾患が占めています。

<日本人における視覚障害の原因疾患>

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18才以上の視覚障害者手帳取得者12,505名

出典:(公財)国際交通安全学会.”緑内障と交通事故.” (公財)国際交通安全学会ビデオアーカイブ,https://www.iatss.or.jp/movie/,(2022.6.10閲覧)より当社作成

①緑内障

眼圧の上昇等により眼の奥の視神経が傷つき、視野欠損、視野狭窄 (しやきょうさく)などの症状が現れる疾患です。加齢に伴い患者数は増加し、40歳以上の日本人で約5%と言われています。傷んだ視神経は元に戻らないため、治療は症状の進行を抑えることが目的となります。

患者数が多いため、日本人の失明原因の第1位になっていますが、失明率はかなり低く、早期に発見し、適切な治療を継続すれば失明に至ることは殆どありません。

②網膜色素変性症

遺伝性の疾患で、夜盲(暗い場所で見えにくい)や視野狭窄などの症状が現れる疾患です。日本人の発症頻度は4,000~8,000人に1人と言われています。厚生労働省が指定する難病の一つで根本的な治療法がなく、治療は症状を和らげるなどの対症療法になります。症状の進行の速さには個人差がありますが、眼科疾患の中では症状の進行が遅い疾患です。

<視野に異常がある場合の見え方(イメージ)>

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2.緑内障と運転への影響

患者数が多いと言われる緑内障について、運転への影響を考えてみましょう。

緑内障の初期・中期の場合、視野欠損や視野狭窄の症状は自覚しにくいという傾向があります。

緑内障患者の約90%が無自覚・未治療であるという調査報告もあり、自覚しにくい主な要因として、以下があげられます。

  • 症状が時間をかけて徐々に進行するため、見え方の変化に気づきにくい。
  • 症状がかなり進行しても、中心視野は保たれている場合が多い。
  • 片眼の視野に欠損部分(見えていないところ)が生じても、他眼がその欠損部分を補ってしまう。

初期・中期では、視野欠損や視野狭窄の症状が運転に与える影響は小さいかもしれませんが、その症状を自覚しないまま運転していると、そのうち、症状が進行してしまい、下図のように赤信号や横断中の歩行者を見落としてしまうことがあるかもしれません。

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症状を自覚しにくいということは、症状の進行による運転リスクの高まりにも自覚しにくいということにつながります。このため、運転者は自分の眼の健康状態の把握に努め、もし視野に異常が見つかった場合は、視野の状態をきちんと理解して安全運転に徹することが大切です。

3.安全運転を続けるために

視野に異常が見つかったからといって、直ちに運転ができなくなるわけではありません。自分の弱点として捉えて安全運転を心がければ、むしろ交通事故を回避できる可能性が高まるかもしれません。

また、緑内障の場合、失った視野を元に戻すことは困難ですが、早期発見と治療継続により症状の進行を遅らせることができます。

年に一度は眼科検診を受診するなど、眼の健康状態にも注意を払い運転寿命を延伸させましょう。

【参考】

公益財団法人 国際交通安全学会のビデオアーカイブのサイト内の以下の動画をご紹介します。

  • 「緑内障運転絵巻」
  • 「緑内障と交通事故」

https://www.iatss.or.jp/movie/

以上(2022年7月)

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画像:amanaimages

【規程・文例集】従業員が安心して海外で働ける「海外駐在員規程」のひな型

書いてあること

  • 主な読者:従業員を長期間、海外に派遣するため、海外駐在員規程のひな型が欲しい経営者
  • 課題:具体的に何を定めればよいかが分からない
  • 解決策:駐在期間、家族の帯同、給与や休暇、費用の負担など、「自分が初めて海外で働くとしたら、何が不安か」を洗い出して規程に落とし込む

1 従業員が安心して海外で働けるようにするには?

調達・製造・販売など、今やグローバルチェーンを活用しないビジネスは皆無といえます。海外での折衝を外注先などに任せることも可能ですが、自社にとって重要な事業であれば、やはり自社の従業員を駐在させる必要があります。

とはいえ、海外は言葉をはじめ、文化・習慣、食事、子供の就学など、日本とは勝手の違うことばかり。従業員にとっては不安も大きいでしょう。そこで、従業員の不安を少しでも和らげるために活用したいのが、「海外駐在員規程」です。

海外駐在員規程は、海外赴任中の従業員の処遇、会社がフォローする範囲などについて定めた社内規程です。タイトルだけを聞くと何やら難しそうですが、作成の仕方は至ってシンプル。

「自分が初めて海外で働くとしたら、何が不安か」を1つ1つ洗い出していけば大丈夫

です。例えば、

  • 駐在期間はどの程度なのか
  • 家族は連れていけるのか
  • 給与や休暇のルールは国内で働く場合と違うのか
  • 赴任にかかる費用などは会社から負担してもらえるのか

などは、海外で働くなら誰でも気になるところでしょう。従業員からのヒアリングも交えつつ、こうした内容を1つ1つ規程に落とし込んでいけば、従業員も安心して海外で働けます。

次章で、海外駐在員規程のひな型を紹介しますので、参考にしてください。

2 海外駐在員規程のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【海外駐在員規程のひな型】

第1条(目的)
本規程は、海外関連会社への出向および会社が設置する海外連絡事務所に勤務する従業員など、会社の命令によって1年以上海外に駐在し勤務する従業員(以下「海外駐在員」)の取り扱いについて定めたものである。
なお、本規程に定めのない事項については、駐在責任者の助言を基に協議して定めることとする。

第2条(用語の定義)
1)海外駐在員とは、海外における現地法人に出向し、引き続いて1年を超える予定で勤務することを命じられた者をいう。
2)駐在期間とは、赴任のため、会社の所在地を出発した日より帰任による会社の所在地に到着した日までの期間をいう。
3)1年以内の出向については、会社の海外出張旅費規程(省略)による。

第3条(身分)
1)出向者については、出向期間中、原則として会社の総務部に籍を置き、引き続き当社に勤務したものとする。
2)会社は、出向者であることを理由に他従業員に比して不利益な取り扱いをしてはならない。

第4条(他規程の適用)
海外駐在員に対しては、本規程の他、会社の関係規程および海外の現地規程を適用する。

第5条(勤務時間、休憩および休日)
勤務時間、休憩および休日は現地規程を適用する。

第6条(駐在責任者)
1)現地法人には、駐在責任者を置く。
2)駐在責任者は、駐在員を統括、指導するとともに、相互の協調、親睦を図り、現地生活についての適切な助言、指導に努めなくてはならない。

第7条(海外駐在心得)
海外駐在員は、駐在に当たり、次の事項を遵守しなければならない。

  • 常に会社の従業員としての誇りを持ち、会社の信用や名誉を傷つけないような生活態度を保つこと。
  • 駐在する地域の法令を遵守し、地域の風俗・生活習慣を尊重すること。
  • 安全・衛生・健康管理に十分留意し、帯同する家族を含めて危険にさらすような行動は避けること。
  • 駐在責任者の指示に従い、現地採用の従業員などにも配慮し、協力して職務を誠実に遂行すること。

第8条(家族の帯同)
1)海外駐在員は、扶養家族の全員および一部の帯同または単身などの赴任形態に関して原則として海外勤務期間開始以前に選択し、会社へ申請するものとする。
2)海外駐在員は、海外勤務期間開始以降であっても、1カ月以前の事前申請により、会社が認めた場合は、赴任形態を変更できるものとする。

第9条(赴任および帰任)
1)赴任および帰任の発令は、辞令をもって行う。
2)発令を受けた者は、速やかに業務の引き継ぎを行い、1カ月以内に赴任または帰任するものとする。
3)駐在期間は、同一勤務先においては3年間を基準とし、業務の状況、本人の事情などにより、その期間を延長または短縮することがある。
4)帰任後の配属先は、赴任前の所属部門、海外駐在中の職務、業績、適性などを勘案して定める。
5)赴任先の住居については駐在責任者と、帰任時は人事担当部署と相談し、速やかに入居できるよう準備する。

第10条(赴任および帰任休暇)
海外駐在員は、次の場合、新旧任地において特別休暇を受けることができる。

  • 赴任時:移動日を除く3稼働日
  • 家族呼び寄せ時:家族の到着後3稼働日
  • 帰任時:移動日を除く3稼働日

第11条(赴任・帰任支度金)
海外駐在員の赴任時および帰任時に、会社は赴任支度金および帰任支度金として次の金額を支給する。

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第12条(荷造り、運送費用)
私用荷物は、現地の生活において必要不可欠なものに限り、その荷造り、運送費について、次の範囲内で実費を会社が支給する。ただし、動植物については、本人負担とする。

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第13条(赴任および帰任旅費)
1)海外駐在員が赴任のため日本を出発する日から任地に到着する日までの期間および帰任のため任地を出発する日から日本に到着する日までの期間に関する交通費および宿泊費については、別途定める「海外出張旅費規程」(省略)を適用する。
2)帯同する家族については、本人の職位に準じて交通費および宿泊費を支給する。
3)帯同する家族も含め、旅券交付手数料、旅券査証料、入出関税、予防注射料など渡航手続き上必要な諸経費は実費を会社が支給する。

第14条(給与の種類)
1)海外駐在員の給与の種類は国内給与・海外給与とし、国内給与は円建て、海外給与は現地通貨建てで支給する。
2)国内給与は、留守宅手当および賞与とする。
3)海外給与は、海外勤務給与・家族帯同手当とする。

第15条(給与の計算基準)
海外勤務給与の計算基準は次の通りとする。

  • 会社の計算基準に準じて現地法人が行うが、支給の対象となる期間は、赴任日(駐在地到着日)から帰任日(駐在地出発日)までとする。
  • 支給日は、現地法人の定めによる。
  • 月中にて、海外給与の開始、終了、変更がある場合は、歴日数にて日割計算をする。

第16条(控除額)
海外駐在員が現地法人から受け取る所得に対して駐在地において課される諸税および社会保険料は、現地法人が全額負担する。

第17条(国内の社会保険等)
1)原則として、国内の社会保険制度および雇用保険は、国内勤務時と同一基準で取り扱う。
2)国内における社会保険、諸税、財形、生命保険料などは、海外駐在員本人の申請により、本人に支給される国内給与から控除する。

第18条(教育費補助)
1)海外駐在員の子女が海外勤務地において学校に通学する場合は、入学金、授業料、スクールバスなど学校が提供する通学費用の50%を教育費として補助する。
2)補助対象となる学校は、原則、幼稚園から高等学校までとする。
3)教育費の補助を受けようとする場合は、入学金、授業料、通学費用の納付書またはこれに代わる証拠書類をもって申請しなければならない。

第19条(海外住宅費)
1)海外駐在員の住宅は、会社が無償貸与する施設に居住する場合を除き、現地事情、家族数などを考慮し、駐在員が選択し、駐在責任者の許可を得て決定する。ただし、住宅選択の許可の上限は別に定める。
2)駐在地における住宅費(以下「海外住宅費」)は、現地法人が支払う。ただし、個人負担分がある場合は、海外給与よりこれを控除する。
3)住宅の賃貸借契約は、原則として現地法人が行い、入居に当たって必要な敷金、保証金、手数料などは、現地法人が負担する。
4)帰任、転任に伴う借り上げ住宅の解約損失は現地法人が負担する。ただし、本人の責に帰すものは、本人が負担する。
5)海外住宅費は、次の費用の合計とする。

  • 賃貸借契約書に賃借料として記載されている家賃および車庫代。
  • 住居にかかる共益費。
  • 賃貸借契約書に借主負担と記載されている住居にかかる税金、火災保険料。
  • 家具の賃借料。

第20条(一時帰国)
海外駐在員が次の基準に該当し、かつ会社が必要と認めたときは、特別休暇を付与し、帯同した家族を同伴して一時帰国することができる。

  • 日本に居住する配偶者または一親等の血族および姻族が出産、危篤、または死亡した場合、10日の特別休暇を付与する。
  • 本人または一親等の血族が日本で結婚する場合、7日の特別休暇を付与する。
  • 赴任後、海外勤務が2年以上で引き続き相当期間の勤務が予定される場合、10日の特別休暇を付与する。
  • その他会社が認めるときは、会社が認めた日数について特別休暇を付与する。

第21条(一時帰国および家族の一時呼び寄せにかかる費用)
1)一時帰国の費用については、原則、第13条第1項および第2項に準じた金額を支給する。
2)家族を帯同していない海外駐在員が家族を一時的に呼び寄せるときは、年間に1回に限り、原則、第13条第1項および第2項に準じた金額を支給する。

第22条(健康診断等)
海外駐在員については、次の通り健康診断を行う。また、この取り扱いは希望により帯同する家族にも適用する。健康診断実施後、診断書の写しを速やかに会社に提出しなければならない。なお、健康診断に要する費用は全額会社負担とする。

  • 赴任前。
  • 赴任期間中は年1回。
  • 帰任後。

第23条(緊急事態への対処)
1)戦争、内乱、クーデター、暴動、誘拐、感染症の流行または大規模自然災害など、緊急事態が赴任地またはその周辺で発生した場合は、赴任先の責任者および総務部と連絡・連携をとりつつ、本人および帯同する家族がいるときはその家族も含めて、安全地域への避難または帰国その他の措置をとる。
2)緊急のため、第23条第1項に従うことが困難であると判断した場合は、安全の確保を優先し、海外駐在員自らの判断で迅速に安全の確保のための措置を講じるものとする。安全を確保した後に、速やかに駐在責任者および総務部に報告するものとする。

第24条(事故報告)
海外駐在員および帯同家族が事故を起こしたり、入院したりした場合には、駐在責任者は、速やかに総務部に報告しなければならない。

第25条(罰則)
従業員が故意または重大な過失により、本規程に違反した場合、就業規則に照らして処分を決定する。

第26条(改廃)
本規程の改廃は、取締役会において行うものとする。

附則
本規程は、○年○月○日より実施する。

以上(2022年7月)

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画像:ESB Professional-shutterstock

【防衛省課長に聞く】食料品から戦闘機の部品まで 防衛省が中小企業との取引を拡大したい6つの理由

書いてあること

  • 主な読者:信用力が高く、安定的に取引できる販路の開拓を急いでいる経営者
  • 課題:自社の製品はそのままに、今後の需要増が期待できる防衛産業に参入する
  • 解決策:取引先である防衛省の意向を把握し、取引を始めるための秘訣を知る

1 新たな販路開拓に「防衛産業」への参入はいかがでしょうか?

新規取引先の獲得は重要なテーマですが、この記事では、意外な開拓先として、

防衛産業への参入

をご提案します。

日本の周辺が「きな臭く」なる中、日本も防衛力を強化する方針で、防衛費の大幅な増額(国内総生産(GDP)比2%以上)計画も浮上しているようです。実行されると、4兆円以上の増額となる計算です。

「でも、防衛産業は機密情報も多いので、参入するのは無理でしょ」とお考えの方は、この記事を読んでいただくと、誤解が解けるかもしれません。防衛省の担当課長によると、防衛省には中小企業との取引を拡大したい、次のような切実な6つの理由があるのです。

  • 政府全体の方針として中小企業との取引拡大を促している
  • 国内の防衛産業の育成に取り組みたいと考えている
  • 経済安保が重視され、国内サプライチェーンへの依存度が高まっている
  • 自衛隊の基地周辺の経済活性化を目指している
  • 代替しにくい技術を持ちながら、高齢化などで廃業する取引先が現れている
  • 煩雑な入札手続きやイメージ悪化を懸念して、参入を敬遠する企業もある

この記事では、東京・市ヶ谷にある防衛省防衛装備庁装備政策課の松本恭典課長への取材から得られた、防衛産業に参入するヒントを紹介します。

2 防衛装備庁に聞く 中小企業の参入を期待する理由

1)政府全体の方針として中小企業との取引拡大を促している

令和2年(2020年)時点での防衛省の中小企業との契約実績額は下表の通り、物件(防衛装備、食料、事務用品など)、工事(基地での工事、メンテナンスなど)、役務(清掃などのサービス)の合計が3158億円となっています(赤字部分)。これは、中小企業が受注できる契約額(5778億円分)の54.7%を占めています。中小企業の受注割合は、10年ほど前は40%程度でしたが、それ以降、徐々に増加しています。

この他、戦闘機や艦船の納入などのような、防衛省がプライム企業(大手重工メーカーなど、防衛省と直接契約する企業)と契約するものがあり、その中にも数千の中小企業が部品や素材などの供給で関わっています。しかし、そうした件数は下表には反映されていません。

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中小企業との取引が増加している背景には、「官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律」があります。防衛省は同法に基づき、前年度の実績を上回るように努めています。2020年度は中小企業・小規模事業者との契約金額の比率60%を、2021年度は61%を目指しました。新規中小企業の取引についても、国の方針に従って3%を目指しています。

2)国内の防衛産業の育成に取り組みたいと考えている

防衛費の増額が報道されていますが、現時点では正式に決定したわけではないので、ここは仮定の話になります。

現在の防衛費は約5兆~6兆円ですが、このうちの約半分を人件費や糧食費が、残りの半分を防衛装備の調達が占めているイメージです。もし防衛費が2倍になったとしても、人件費や糧食費は今と大きく変わらないでしょう。そうすると、防衛装備の調達のための予算が、報道されている2倍以上を大きく上回ることになります。

防衛省としては、防衛産業に関わる企業の、防衛事業に関連する売り上げ比率を高めたいと考えています。売り上げ比率が高いほど、防衛産業へのコミットが高いと評価でき、積極的に支援していきたいと思います。

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米国を例にすると、売上の多くを防衛関連が占める企業がある一方、日本では、プライム企業などでも、防衛関連の売り上げ比率は10%以下です。各社の中で、防衛関連の存在感が低いともいえ、積極的な投資が行われない懸念があります。複数社による競争性の確保と両立させながら、国内の防衛産業の育成に取り組みたいと考えています。

3)経済安保が重視され、国内サプライチェーンへの依存度が高まっている

近年、防衛の分野でも「経済安保」の観点からサプライチェーン対策が各国で大きな課題となっており、防衛装備の調達は「国産回帰」の流れにシフトしつつあります。特に、AIや3Dプリンティング、ドローンなどの先進技術の分野では、諸外国に比べて日本は装備品への取り込みが遅れています。こうした技術を積極的に取り込み、装備の陳腐化を防ぎ、性能の向上を図っていきたいと考えています。具体的な取組として、防衛省からプライム企業に働きかけを行ったり、先進技術を持つ中小企業向けの展示会を年に複数回実施し、プライム企業や自衛隊とのマッチング支援を行ったりしています。

実際にマッチングした例としては、国産のドローンを製造するベンチャー企業が、防衛省と納入契約に至りました。現在は偵察や観測などの用途が主ですが、今後は無人機の時代となり、ドローンの活用シーンや投入するミッションが多様化すると予測され、調達が拡大すると思います。

特に防衛装備庁が注目しているのが、先に話したAI、3Dプリンティング、ドローンなどです。こうした分野は、既存の防衛産業がこれまで手を着けていないので、日々新しいベンチャーやスタートアップが登場しています。そうした企業を、外国製品に頼らず「防衛産業で活用できるか」という視点で、コンサルティング会社と協力して全国からピックアップし、プライム企業とのマッチングにつなげています。

機微な先進技術を扱う場合は、物的、人的、サイバー空間でのセキュリティーを高める必要があり、中小企業、ベンチャーやスタートアップではコスト面でハードルが高いケースもあります。防衛装備庁としても最大限支援していくつもりですが、セキュリティー面での整備が課題の一つといえます。

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4)自衛隊の基地周辺の経済活性化を目指している

防衛省としては、自衛隊の基地周辺の地域経済の活性化を重視しており、「地産地消」に努めています。購入する製品は自衛隊員の食事のための食材や日用品、工具や汎用的な部品など、一般的な製品も少なくありません。ですから、防衛産業とは無関係に見える製品であっても、防衛省と取引できる可能性があります。

なるべく発注を小分けにして中小企業でも対応可能にするように努めていますし、規模が小さい取引であれば随意契約も行っています。

防衛装備庁としては中小企業の皆様との取引は、常に門戸を開放していますので、まずは防衛省や防衛装備庁の調達情報および基地周辺の商工会の公示情報などを確認してみてください。不明な点などがあれば、情報提供先に問い合わせていただいても構いません。

5)代替しにくい技術を持ちながら、高齢化などで廃業する取引先が現れている

中小企業の中には、金型加工や特殊な塗料の製造など、「その企業でしかできない」技術を持った企業があります。こうした企業の技術は、高い品質レベルが要求される防衛装備に不可欠です。一方で、採算性や用途が非常に限定的ということもあり、多くの企業が廃業しているのも事実です。その結果、装備品の製造、部品のメンテナンスや交換に支障を来すことになります。

実際に、別の機体から使える部品を取り出して手当てする、「共食い」という事態が生じている戦闘機もあります。代わりの企業を見つけることも困難なため、防衛装備庁としても対策を取り始めました。

具体的には、中小企業の事業承継をスムーズに進めるための支援策です。2022年度の予算で計上したのですが、事業承継先を探す際にコスト面で苦労している場合は、その企業が保有する設計図や製造設備等を国が買い取り、事業承継先に譲渡又は貸与するような取り組みを考えています。その他にも、人材育成が必要な場合は、事業承継先の人材育成にかかる経費を負担することも想定しています。

こうした予算は、今後も拡大していく必要があると考えています。将来的には、金融機関の融資なども活用しながら、事業の継続が円滑にできればとは思いますが、まずは色々な枠組みづくりから取り組むことになります。

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6)煩雑な入札手続きやイメージ悪化を懸念して、参入を敬遠する企業もある

中小企業の参入の門戸は開かれています。防衛省を含む各省庁との入札に参加するためには資格(全省庁統一資格)を、取得する必要があります。

この資格は、企業の規模、経営状況などに応じてA~Dの格が付与され、入札する内容に応じて参加できる格付けが異なります。一定金額以上の大規模な案件の入札参加に必要な資格は、大企業が多く格付けされるA、Bが必要となりますが、中小企業が多く格付けされるC、Dでも参加可能なものは多数あります。全省庁統一資格の取得には提出書類が多く、中小企業には業務負荷が大きいかもしれません。

しかし、防衛省・自衛隊においては、街の文具屋さんのような企業が基地内の事務用品を納入するなどの規模の小さい取引の随意契約を行うケースで、法令上は資格は不要とされているものであっても、発注側としては、やはり客観的に信頼あると思われる企業を契約相手方としたいとの観点から、例えばC,Dの資格を保有することを条件としているような実態もあります。

全省庁統一資格は、防衛省に限らず各省庁で利用できるものですし、更新も3年毎となりますので、まずは、資格の取得にトライしてみるというのが、参入のための最初のステップと言えるかもしれません。

なお、防衛省・自衛隊との直接の契約締結ではなく、防衛省・自衛隊の契約相手方から業務の一部の再委託を受ける場合は、特に資格が必要ではありません。

その他、先進技術を用いたものや、プライム企業との納入などで機微な情報を扱う場合には、契約時に機密情報保持の特約条項を付けることがあります。この場合には、現地への立ち入り審査や、業務に携わる人や企業のリストアップなどが必要なケースもあります。

また、日本企業の中には、防衛装備を取り扱うことで、「武器商人」などのイメージによるレピュテーションリスクや、サイバー攻撃の対象になるリスクを懸念する声も聞かれています。こうした声にも真摯に向き合っていく必要があると考えています。

3 参考:防衛装備調達の動向

1)主要な防衛装備の調達状況:契約件数は一般競争契約、金額では随意契約が最多

防衛装備庁「中央調達の概況 令和3年度版」から、直近の中央調達(自衛隊の任務遂行に必要な主要装備品などで訓令が定めるものの調達)の実績を見てみましょう。

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契約方式で見ると、一般競争契約(入札情報を公示し、不特定多数の応札者の提示価格のうちで最も有利な条件と契約するもの)が4924件で84%を占めています。図表内のFMSとは、米国政府が、外国または国際機関に対し装備品などを有償で提供するものです。政府間での取引となるため、高性能な防衛装備を調達しやすいこと、資金の流れをつかみやすいことや、米軍との運用を効率的に行えるなどのメリットがあります。こうしたことから、FMSの調達額が増加傾向にあるようです。

次に、これらの契約を金額ベースでも見てみましょう。

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契約件数では一般競争契約が84%を占めていましたが、契約金額では27%にとどまっています。一方で、契約件数では3%にすぎないFMSが契約金額では24%を占めています。入札を行わずに契約する随意契約も契約金額では49%を占めています。

2)調達に関連する情報

最後に、防衛省が公表している中小企業向けの調達方針、防衛省および防衛装備庁の調達情報のページを掲載します。

■防衛省「中小企業者の受注機会増大」(中小企業向けの調達方針)■
https://www.mod.go.jp/j/procurement/release/juchukikai/index.html
■防衛省「調達情報」■
https://www.mod.go.jp/j/procurement/
■防衛装備庁「調達・公募情報」■
https://www.mod.go.jp/atla/choutatsu.html

以上(2022年7月)

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画像:aapsky-Adobe Stock

【朝礼】社員の家族を会社のファン第1号に

皆さんはスーパーマーケットで、その店の店員が総菜を買っているシーンを見たことがあるかと思います。そのとき、どのように感じましたか? 「店員が買い物をしているのはおかしい」「レジ待ちの列が延びて迷惑」と思う人もいるかもしれません。確かに店の制服やエプロンを着けたまま買い物をするのはどうかと思いますが、私はそれ以上に、その店に対して好感を抱きます。なぜなら、その店の総菜は、その店のことを一番よく知っている店員やその家族も食べたいと思うほど、信頼できる商品なのだと思えるからです。

私がこのような話をした理由は、皆さんのご家族に、当社のファンになってもらいたいと思っているからです。スーパーマーケットに限らず、これからの会社組織が今後も生き残っていくには、地域社会の方々など多くのステークホルダーに、「この会社があってよかった」「この会社に長く存続してほしい」と思われるような存在になる必要があります。当社もそのような存在になることを目指して、まずは会社の一番身近な存在である、皆さんのご家族にファンになっていただくことから取り組みたいと思うのです。

そこで皆さんにお願いしたいのは、当社に関する「ちょっと良い話」を、ぜひ皆さんのご家族に積極的に話してもらいたい、ということです。皆さんの口から、「こんな素晴らしい職場で働いている」ということを、ご家族に感じてもらうように努めてみてください。

そのためには、まず皆さん一人ひとりが、ご家族に話せるだけの、当社のいろいろな「ちょっと良い話」を持っていなければなりません。一番望ましいのは、「当社の商品・サービスが社会にどのように貢献しているのか」ですが、それに限らず、ささいなことでも結構です。

例えば、会社のイベントや社外活動の話でもいいですし、「会社のトイレが清潔」「会社にこんな活動ができるスペースがある」といった設備に関する話でも構いません。また、「こんな趣味を持った同僚がいる」「こんな素晴らしい同僚がいる」などの同僚自慢もいいでしょう。「きょうの職場の会話で、こんな面白い話があった」という報告もよいと思います。

ご家族に当社の「ちょっと良い話」をするためには、設備や社内の雰囲気なども含めて、職場環境全般にわたって改善していく必要があります。それから、業務を行う際に、「これは、家族に誇れることなのか」「これで、家族がこの会社のファンになってもらえるのか」と、家族の目を常に意識するようにしてください。そうすれば、いい加減な業務はできなくなるはずです。

皆さんのご家族に当社のファン第1号になっていただければ、口コミやSNSなどを通じて、その輪は地域社会の方々へと広がっていき、多くのファンが生まれていくはずです。そのための第一歩として、まずはご家族への宣伝活動を頑張ってみてください。

以上(2022年7月)

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画像:Mariko Mitsuda