海外販路開拓の秘訣 ~成功を目指す3ステップ~

書いてあること

  • 主な読者:海外で販路開拓をしたい経営者
  • 課題:低いリスクと少ないリソースで、海外での収益を安定させたい
  • 解決策:頼れる代理店・販売店を獲得し、海外進出のステップごとに戦術を変える

1 たった1回の取引で満足してはいけない

筆者は、これまでに300社ほどの中小企業の海外進出を支援し、2万回ほどの商談をアレンジしてきました。また、筆者自身も海外でバイヤーを多数開拓してきました。その経験から申しますと、「単発の取引ができた」だけで、海外進出に成功したと満足している経営者が少なくありませんが、これはもったいないことです。

海外進出をするのであれば、海外販売で継続的に収益が増える状態、つまり「実現性、再現性、継続性、拡張性」の4点をカバーしたいものです。具体的には、

年間に十数回の取引を行い、年間売上で合計5000万~1億円

を目標として掲げ、実際にこの規模のビジネスを回すための資金や仕入れルートの確保、生産や物流体制の整備も進めることが重要になります。

この記事では、海外で販路開拓をしたい中小企業のために、

低いリスクと少ないリソースでも海外での収益を安定、成長させるためのステップ

を解説します。皆さまが海外進出する際の参考になれば幸いです。

2 ニーズが全て! マッチし続ける国・地域を探す

海外進出を成功させるには、何といってもニーズが継続的にあるマーケットを見つけることです。そのためには、以下のいずれか、または両方をするしかありません。

  • マーケットマッチしている市場を見つける
  • マーケットマッチするために変化・順応する

1.は、あらゆる国・地域に営業し、ニーズがマッチする市場を探すことです。2.は、例えば商品や商品の売り方、売る値段を変えて、販売先のニーズに合わせて自社が対応することです。イメージは下の図の通りです。

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3 ポイントは生産・物流体制、展開手法、進出形態の選択

海外進出を成功させるために重要なのが、

生産・物流体制、展開手法、進出形態

の検討と整備です。海外進出の過程ごとに、これらの組み合わせを変えていくことがポイントです。

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1)生産・物流体制

生産・物流体制とは、「どこから」「どこに送るのか」「誰が送るのか」ということです。大きく分けると、次の3つのチャネルがあります。

  • 直接貿易:メーカー(もしくは母国で仕入れた企業)が直接的に輸出する方法
  • 消費地生産:メーカーが販売先で生産して販売する方法
  • 三国間貿易:母国ではない国で生産したものを仕入れて輸出する方法

理想的なのは、関税やコストを圧迫する物流費が少ない消費地生産です。

2)展開手法

展開手法とは、「誰が誰に販売するのか」ということです。大きく分けると、次の3つのチャネルがあります。

  • 多くの企業が行っている「BtoB」といわれる代理店・販売店取引
  • 越境EC
  • 消費地で運営する自社のEC

最初からマーケティング費用の全てを負担することになる自社のECは、なかなか難しいというのが実情です。

3)進出形態

進出形態とは、「誰が役務提供者になるか」ということです。大きく分けると、次の3つのチャネルがあります。

  • 駐在員事務所・支店
  • 現地法人
  • 日本法人

主な違いは、駐在員事務所・支店は法人口座を持たず、現地法人は法人口座を持つことです。

4 海外で売上を伸ばしていくまでのステップ

海外進出を拡張させていくための過程で、各項目のチャネルを組み合わせていく理想的なステップについて、具体的にお伝えしていきます。

1)ステップ1:少ないリソースから始める(代理店・販売店の活用)

日本企業が海外進出を行う際の大きな課題は、さまざまなリソースが限られていることです。この課題の解決は困難ですので、少ないリソースから始め、失敗した場合の影響を最小限にする必要があります。

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最もリソースが必要となるのはマーケティングです。これについては、自社で全て行おうとせず、一部の販売役務を海外企業に担ってもらいます。展開手法は現地の代理店や販売店に任せるとよいでしょう。

日本企業が海外の消費者に販売するには多くの広告費がかかりますが、広告費自体は、一定の期間と情報があれば最適化され、より低価格になっていくと思います。ですが、情報の収集も自社で対応しようとすると、相当なリソースを割かなければならず、現実的ではありません。

2)ステップ2:ターゲット国・地域に対する最適化を進める(販売を自社でフォロー)

ステップ1を複数国で展開すると、どこの国・地域で販売できるかが、ある程度分かってきます。また、海外の販売代理店からも、「なぜ売れる?」「なぜ売れない?」という情報が入ってきます。ステップ1である程度満足できる売れ行きだった国・地域に注目し、次のステップに進みます。

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理想は現地法人を設立し、現地に生産体制を確立して生産および販売やフォローを行うことですが、これには多くの費用や工数がかかります。製造プロセスを大きく変更することもリスクです。このリスクを踏まえ、筆者がお勧めするのが上のステップ2なのです。

生産・物流体制では、ターゲット国・地域の近隣に位置し、輸出入の関税が削減できそうで、日本での販売のための生産も可能そうなエリアで生産を委託します。また、進出形態では、駐在員事務所・支店を開設して、販売をフォローします。この方法だと、情報が把握でき、ある程度売れると分かっている対象国に向けて、適切に最適化していくことができます。

3)ステップ3:ターゲット国・地域に対する最適化の最終形態(事業活動の現地化)

ステップ2まで進むと、販売を増やすには「どういう消費者に」「どのようなアプローチで」「どの程度のコストをかけるべきか」が分かってきます。その上で、生産を消費地に移して物流費用を最小化させ、消費地で自社ECを展開して、オンライン上からも的確なアプローチを行えるようにします。

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ステップ1、ステップ2を通過して自社ECを展開すると、情報の質・量が格段に上がってきますので、優位にビジネスを進めることができるでしょう。また、現地法人を持つことで経営の自由度が高くなります。まさに、「海外進出が成功した」状態になったといえます。

5 まとめ:「海外の代理店・販売店探し」のための商談を

リソースが限られた中小企業が海外進出を成功させる術は、ステップごとに進化させ、リスクを管理しながら進めていくことです。

この記事を読まれた方には、まずは海外企業と多く商談し、現地で販売を担ってもらう代理店・販売店の契約を獲得していくことを強くお勧めします。海外企業と商談する方法は、多岐にわたって存在します。

弊社でも、2万回以上の商談機会を設けた「セカイコネクト」というツールを運営しておりますが、今後はインターネット上で海外企業と商談することが、より当たり前になっていくと思います。

以上(2022年7月)
(執筆 COUXU株式会社 代表取締役 大村晶彦)

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画像:Travel mania-shutterstock

男性の育児休業取得に関する各種制度のご案内

育児・介護休業法の改正により、今年の10月から、育児休業の2回までの分割取得と、産後パパ育休(出生時育児休業)の制度が施行されます。そこで本稿では、法改正に伴い変更される育児休業期間中の保険料免除制度などを概説し、併せて活用が期待される両立支援等助成金について、ご案内します。

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男性の育児休業取得に関する各種制度のご案内

育児・介護休業法の改正により、今年の10月から、育児休業の2回までの分割取得と、産後パパ育休(出生時育児休業)の制度が施行されます。そこで本稿では、法改正に伴い変更される育児休業期間中の保険料免除制度などを概説し、併せて活用が期待される両立支援等助成金について、ご案内します。

1 育児休業期間中の保険料免除制度など(赤線部令和4年10月1日施行)

◇社会保険料の免除【社会保険】

社会保険料の免除【社会保険】

◇育児休業給付金【雇用保険】

育児休業給付金【雇用保険】

2 両立支援等助成金(子育てパパ支援助成金)の概要

◇男性労働者が育児休業を取得した場合(第1種)

男性労働者が育児休業を取得した場合(第1種)

◇男性労働者の育児休業取得率が上昇した場合(第2種)

男性労働者の育児休業取得率が上昇した場合(第2種)

3 さいごに

大手ハウスメーカーが実施した調査によれば、就職活動中の20代男性の過半数が、男性の育児休業制度や取り組みの有無は「就職活動に影響する」と回答しているようです。このことからも男性の育児休業推進は、企業イメージの向上や人材確保にも寄与するものと期待されています。法改正への対応を契機に、助成金を活用しながら、男性従業員が育児休業を取得しやすい環境整備・風土醸成に取り組んでみてはいかがでしょうか。

※本内容は2022年6月13日時点での内容です

(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)

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画像:photo-ac

事業承継で何を引き継ぐのか 中小企業の経営者が知っておくべきこと

近年、中小企業・小規模事業者の経営者の高齢化がすすむなかで、事業承継は重要な経営課題になっているが、どのように準備をしたらよいのか、漠然としている部分もあるだろう。ここでは、事業承継とは何か、何を誰に引き継ぐのか等、中小企業の経営者が知っておきたい事業承継について全3回で解説していく。

(日本法令ビジネスガイドより)
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【朝礼】お客さまの数だけ“ニーズ”がある

先日、連休を使って実家に帰った際、父と母と3人で東京都八王子市にある高尾山にハイキングに行きました。今日は、その高尾山で感じたことを皆さんにお話ししたいと思います。

私が普段あまりハイキングをしないということもあるのでしょうが、高尾山の麓に到着したとき、私はまず人の多さに驚きました。最寄り駅からすでに人だかりができて、山に入るのも一苦労。登山者も、父や母よりはるかに年上の方、子連れの外国人の方、ベビーカーを押す赤ちゃん連れの夫婦などさまざまでした。

後から調べてみると、高尾山の登山者数は年間約300万人で、登山者数が世界一の山といわれているそうです。なぜ、それだけ人気があるのか。理由は色々と考えられるでしょうが、私は「人によってさまざまな楽しみ方ができる山だからではないか」と思いました。

例えば、山の麓から中腹までは、大人数乗りのケーブルカーと2人乗りのリフトが通っています。どちらも山の景色をゆっくり楽しめますが、ケーブルカーは急勾配の斜面に敷かれた線路がまるでジェットコースターのようで、小学生ぐらいの子どもが大はしゃぎしていました。一方、リフトのほうは帰りに乗りましたが、2人乗りでゆったりとくつろげるため、夫婦やカップルの人たちが多く利用していました。また、からだ全体で風を受けるのがとても心地よく、汗をかいた後で乗ったときの気分は爽快でした。

高尾山は、緑がきれいな山ですが、一方で、修験道(しゅげんどう)の山としても知られています。登山道の途中には修験道となじみの深いてんぐの像があり、外国人の方などが興味深く見ていました。また、高尾山の山頂付近には名物のとろろそばが食べられるお店があり、登頂の達成感と一緒にそばを味わうこともできました。

つまり、一言で「ハイキング」といっても、その中に景色、乗り物、歴史、グルメなどさまざまな楽しみがありました。そこで、ふと思ったのは、「私たちは、日ごろ商品やサービスを提供する際、お客さまの“ニーズ”を勝手に決めつけていないか」ということです。

通常、商品やサービスには、象徴的なユーザーである「ペルソナ」がいて、私たちはそのペルソナに商品やサービスを使ってもらえるよう工夫します。これはマーケティングの基本ですが、一方で私は最近、会社から提示されたペルソナにとらわれすぎて、自分でお客さまそれぞれのニーズを推し量ることをしていないように思います。

高尾山にさまざまな楽しみ方があるように、お客さまが商品やサービスに求めるニーズは、細かく見ていけば一人ひとり異なります。ペルソナを押さえるのは大事ですが、「この商品・サービスは○○のために使うものだ」と決めつけず、お客さまのさまざまなニーズを推量し、「あんなケースでも、こんなケースでも使える」と提案できるようになりたいと思った今日このごろです。

以上(2022年7月)

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画像:Mariko Mitsuda

AI、ドローン、売買マッチングなど「林業テック」最前線/新技術で変わる農林水産業(2)

書いてあること

  • 主な読者:業務の効率化や人手不足の解消を図りたい林業経営者
  • 課題:業務の効率化、人手不足などを解消するための新規事業を行いたい
  • 解決策:事例を参考に、AIやドローンなどを業務に取り入れる

1 テクノロジーで林業の課題を解決「林業テック」

近年、農林水産業を営む企業で、人工知能(AI)やドローンなどのテクノロジーを取り入れる動きが出てきています。体力勝負のこまめな管理や、自然環境の影響を大きく受けるこれらの業界では、次のような課題が挙げられています。

  • 高齢化による人手不足、ノウハウの継承
  • 変化する自然環境への対応
  • 効率的、持続的な生産・収穫・漁獲体制の確立

このシリーズでは、農林水産業を営む企業が直面する課題を解決するための最新テクノロジーの動向と、その活用事例を紹介します。

第2回の今回のテーマは、林業が直面する課題を解決するための「林業テック」です。具体的には、

  • ドローンを使った森林の資源量調査
  • 地理情報システムを基にAIが分析する、森林の成長予測
  • VR(仮想現実)を取り入れた労働災害シミュレーション
  • 製材所とユーザー間で木材の売買を行うプラットフォームの運営

といった取り組みを紹介します。

2 「林業テック」取り組み事例

今回登場するのは、ドローンや地理情報システムを用いて森林の調査や成長を予測するもの、伐採時に木材を自動計測してより分けるものなどです。

これまでは、山深い森林に人が立ち入り、人力で伐採や運搬などの重労働をしていましたが、こうしたテクノロジーを導入することで、次のような変化を起こすことができます。

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1)ドローン×森林調査

従来の森林調査では、調査対象の山に人が入って、樹木の本数や大きさなどを計測していました。この方法では、労働力や時間がかかるだけでなく、整備されていない斜面を移動することで滑落や遭難などのリスクもあります。また、調査員や山の所有者の高齢化に伴い、調査が行えずに山が荒れ放題になるという課題もあります。ドローンを飛ばすことで、こうした労力、時間、リスクなどを低下させることができます。

位置情報などを利用したITサービスを提供するジオサーフ(東京都)は、林業関連の商社の竹谷商事(大阪府)と共に、AIによって自律飛行が可能なドローンを用いた森林調査(境界線、樹種、大きさなどを計測する調査)のサービスを提供しています。

空間認識能力に優れ、狭い箇所での点検などに適したドローン「SkydioJ2」を用いることで、樹木が密集した山中でも、障害物を自動で回避し、画像による森林調査を行うことができます。調査で得られた画像データは、三次元モデルとして出力でき、計測誤差も公共測量の規定内に収まったといいます。

2)地理情報システム(GIS)×AIで森林を予測

「森林大国」ともいわれ、森林が国土の70%以上を占めるフィンランドでは、AIを用いて森林の成長予測を行うサービスが登場しています。CollectiveCrunch(コレクティブ・クランチ、フィンランド)は、地理情報システム(コンピュータ上でさまざまな地理空間情報を重ね合わせて表示するためのシステム)を基に、長期的に蓄積され日々更新している衛星画像や地形データ、気象データなどを取得。それをAIが解析し、対象エリアの森林資源の質や量を予測します。

この「Linda Forest(リンダフォレスト)」というサービスは、対象の森林がどのくらいの二酸化炭素(CO2)を吸収しているかも測定できるため、排出権取引にも効果的なサービスとされています。さらに、高解像度の画像から土壌の水分量や温度などを分析することで、潜在的な災害リスクを把握することもできます。

現時点で、同社のサービスは日本では提供されていませんが、他のヨーロッパ諸国との取引もあるようです。フィンランドと同様に国土の多くを森林が占める日本でも、同様のサービスの登場が期待されます。

3)ドローン×木材の運搬

ドローンの活用は、木材(苗木)の運搬でも導入が始まっています。これまでは重い苗木を担いで山に登っていた造林作業の効率化や、運搬者が腰を痛めるなどのリスクを抑えることができます。

住友林業(東京都)は、産業用ドローンの製造・販売などを行うマゼックス(大阪府)と共同で、林業に特化した苗木の運搬ドローン「森飛(morito)」を開発しました。15キログラムまでの重量を持ち上げ、目的地まで最短で飛行できるため、従来の人力で運ぶ場合と比べた作業効率は8倍になるといいます。視界の悪い山中で飛行させるため、高精度のGPSを搭載。飛行ルートの設定や、ルートに沿った自動飛行も可能です。

同様の実証実験を林野庁も行っており、1万1920本の苗木の運搬から植栽までにかかった工数は、ドローンの場合が58.5人日、人力の場合が74.5人日と、16人日程度の省力化が実証されました。

今後の課題としては、運搬できる重量の増加や、重い苗木を持ち上げたまま機体を制御する技術の向上などが挙げられます。

4)高性能林業機械×木材データの見える化

建設機械メーカーは、伐採した木材の品質や寸歩などを自動的にデータ化し、業務の効率化につなげる性能を持たせたハーベスタ(伐採から集積まで行う機械)などの「高性能林業機械」を販売しています。こうしたデータをサプライ・チェーン全体で共有することで、森林資源の調査から需給のマッチングの円滑化などが期待できます。

小松製作所(東京都)が開発した造材用のハーベスタ「C93」は、造材時の木材のデータ(長さ、グレードなど)を集計。データはクラウドサービスLandlog(ランドログ)を利用して「見える化」しています。日々の造材データを収集することで、作業の進捗確認や、従来は現地で人力で行っていた木材の検木が省力化されます。

住友建機(東京都)が提携するKESLA社(フィンランド)のハーベスタにも、ICT機能が搭載されています。このハーベスタでは、あらかじめ切断する長さや直径、価格も設定できます。造材後は、樹種や寸法、用途などまでデータ保存できます。

5)VR×木材運搬

従来、木材を積み込むクレーン操作は、クレーンに外付けされているシート(トップシート)で作業していました。野外での長時間の作業となることや、クレーンと運搬車両の移動時に転落するなどの事故が課題となっています。

この課題を解決するのが、フィンランドのHIAB(ヒアブ)が開発したVR(仮想現実)ゴーグルを導入した木材運搬用のクレーン「HiVision」です。木材輸送用のトラックに乗ったまま、周囲270度の視界を持つVRゴーグルで周囲を確認しながら、手元の操作スティックでクレーンを操作して木材の積み込みができます。

6)ウェブサイト×売買マッチング

木材を販売する分野にも林業テックは広まり始めています。国産の木材を用いた製品の製造販売などを行うフロンティアジャパン(東京都)は、製材会社と買い手をマッチングさせるウェブサイト「KIBA.com(キバドットコム)」を運営しています。

同社は、林業事業者の課題の一つに、売り手と買い手の情報不足があると考えました。売買双方が情報交換でき、開かれた取引を実現できる業界初といわれるプラットフォームを作ることで、業界の活性化を狙っています。

ウェブサイトでは、全国の製材会社が原木や板材、内装材などを販売し、個人を除く木材のユーザーが購入できます。また、購入後、希望の寸法に製材や乾燥などの処理を依頼することも可能です。

7)VR×安全教育

自然環境に関するコンサルティングを行う森林環境リアライズ(北海道)は、VRを使って、林業で発生する労働災害をシミュレーションし、安全教習に役立てる「林業労働災害VR体験シミュレーター」を提供しています。

林業に従事する際の、伐倒方向未確認、幹割れなど代表的な8つの労働災害の事例をVR映像で体験することができます。また、トレーニングモードも収録されているため、安全な作業手順を確認しながら安全教習を行うことができます。

3 林業テック関連のデータ:ニーズと課題、需給など

これまで見てきたように、さまざまなシーンで「林業テック」導入の動きが始まっています。林野庁の資料から、求められているニーズや課題、需給などの状況を見てみましょう。

1)林業テックのニーズと課題

林野庁では、最新技術を導入した林業「スマート林業」を進めるため、全国の森林事業者などに対してマッチミーティングを行っています。そのマッチミーティングの参加者に対して行ったアンケートによると、スマート林業で今後取り組みたい分野や、スマート林業を実施する際の課題には次のようなものが挙げられています。

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この調査によると、今後取り組みたい分野として、「森林情報の高度化・共有化」が32%、「施業集約化の効率化・省力化」が26%と回答の上位を占めています。これは、ドローンやレーザーを利用して資源量を調査し、それの共有や、森林の性質や目的ごとに区分けするゾーニングなどに活用したいという意向がうかがえます。

また、実施する際の課題として、「関係者間の合意形成」が79%、「関係者の連携体制の構築」が71%、「人材育成」が63%と過半数を超えています。自社以外に関係する企業、機関と共にスマート林業を進めながら、自社内でも最新技術を使いこなせる人材の育成が課題と考えているといえそうです。

2)令和2年木材需給表

農林水産省「令和2年木材需給表」によると、木材需給の推移は次の通りです。

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この統計によると、2020年は国内消費(需要)が約7143万立方メートル、輸出(需要)が約301万立方メートルで推移しています。一方、国内生産(供給)は約3115万立方メートル、輸入(供給)は4329万立方メートルとなっています。

国内消費が約7000万立方メートル前後で推移している一方、輸入していた外国産の木材が減少しています。その減少分を埋めるように国内生産がここ10年で約1.6倍に増加しています。

また、供給量は少ないものの、輸出の需要が約1.9倍に増加しており、国内外で日本産の木材のニーズが高まっているといえそうです。

3)森林・林業統計要覧2021

林野庁「森林・林業統計要覧2021」によると、林業機械の所有状況および高性能林業機械の普及状況は次の通りです。

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この統計によると、林業機械は、9年の間にほぼ半減しています。一方、高性能林業機械の所有台数は、ハーベスタやフォワーダなどが右肩上がりで増加していますが、タワーヤーダ、スキッダは横ばいや減少しています。

これまでの主流だった人力による林業機械が徐々に減少し、より効率的に作業を行うことができる高性能林業機械へのシフトが進んでいるといえそうです。

以上(2022年7月)

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画像:Milan-Adobe Stock

時代に合わせ、三度の業種・業態変更で成長。ミモザ藤田社長に聞く、変化を生み出しチャレンジし続ける秘訣。

藤田淳一(ふじた じゅんいち)

プロフィール
株式会社ミモザホールディングス代表取締役社長。インターネットショップ運営などを手がける株式会社ミモザ情報システム、株式会社ベクルックスの代表も務める。

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常に次を見据えて事業を拡大

―― 本日はよろしくお願いします。はじめに改めて事業内容を教えてください。

インターネットを使ったビジネスをしています。ホールディングス化していて、ミモザ情報システムでは対企業、ベクルックスでは対個人と、お客様によって会社を分けています。

事業としてはインターネットショップの運営が中心です。ソフトウェア系と事務系に分けて、13ショップを運営しています。特徴は、「1メーカー1ショップ」にしていること。運営側としては、さまざまなメーカーの商品と取り扱う総合ショップの方が運営しやすいのですが、お客様からすると分かりにくい。そのためショップを分けて、お客様の使いやすさにこだわっています。加えて強みをつくるために、大手ネットショップではなかなか手が届かない、商品知識や業務知識など、専門性の高い発信を強化しています。

加えて、対企業においてはネットショップをご利用いただいている全国のお客様から、システム案件も受注しています。商材である財務会計や給与計算のソフトの導入や、バージョンアップのお手伝いなどです。顧客リストは全国14万社。中小企業を中心に、多業種にサービスを展開しています。

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―― 今の事業に到るまで、業種や業態を変えてきたと伺っています。創業からこれまでの沿革を教えてください。

創業は29年前、ちょうどWindows95が出た頃のことです。データ入力とパソコンの訪問販売の事業から始まりました。私は大学卒業後企業に入社し、データ入力などの仕事をしていましたが、自分でやりたいという思いがあり独立したのです。

しかし、しばらくやってみると、データ入力とパソコンの訪問販売は人海戦術となる上に単価が安く、継続が厳しいと感じました。
目をつけたのは財務会計や給与計算などの業務ソフト。業務ソフトであればさまざまなジャンルがあり、導入する際に業務知識も必要なので、サポートが必要とされるだろうと考えたのです。これが当たって、売り上げが伸びました。その段階で社員を採用し、徐々に組織ができました。

ただ業界が伸びると競合他社も爆増。次の事業を作る必要を感じていました。さまざまな事業を試してみる中で、現在のネットショップ事業にたどり着いたのです。ミモザは常に変化してきた会社と言えるのではないかと思います。

現状維持=右肩下がり。ルールの範囲で常にチャレンジを

―― ミモザグループでも、「変化する社会の動きを的確に捉え、求められるサービスを創造する」ことを経営理念に置かれていますよね。積極的にチャレンジし変化することに対して、どんな思いをお持ちですか?

現状維持=右肩下がりでしかないという怖さがあります。もっと会社を大きくしたいと考えているので、現状に満足していません。

例えば同時期に起業した人が成功しているのを見れば、「なんで彼にできて俺にできないんだろう」と思う。負けん気ですよね。上には上がいますし、相手は勝負している気なんてないでしょう。自分で勝手に勝負をしているだけですが、常に上を目指しています。

―― チャレンジに対する怖さはありませんか?

チャレンジのほとんどは失敗しますよ。ただ怖さはありません。今も昔も変わらず、失敗しても元に戻れるならやろうと考えているのです。例えば、1,000万投資して売り上げがゼロでも、始める前のかたちに戻れるならやろう、と。

―― チャレンジのルールを決めていらっしゃるのですね。

そうです。思いついたらある程度検討して、まずやってみます。他に大事にしているのは撤退ラインを決めることです。始める前に、いつまでにどれくらいの成果が出なかったらやめる、と決めています。

それから、思いつけばなんでもいいというわけではなく、これまで成功してきた「インターネット」「中小企業」というキーワードの中で事業をすることにしています。今の事業に全く関係のない飛び地での事業はリスクが大きい。今後を見据え、地続きの領域で事業を展開したいと考えています。

ビジネス・リポートONLINEで事業検討と社員教育

―― 日経トップリーダー経営者クラブでは、サービスの一環として豊富なビジネス情報を蓄積した「ビジネス・リポートONLINE」をご提供しています。藤田さんは「ビジネス・リポートONLINE」のヘビーユーザーのようですが、どのようにご活用いただいていますか?

まず、自分自身の勉強のために見ています。例えば、税制や社会保険制度の改正などがあった際、ビジネス・リポートONLINEにはポイントをまとめた記事がアップされます。それを読んで、自分が得ている情報に漏れがないか確認するようにしています。新聞の見出しのように記事のタイトルを見て情報を把握し、漏れがあった場合は記事を詳しく読み、自分でも追加で調べるようにしています。新しいことを常に考えているので、新規事業のタネになるかなど、さまざまな視点で幅広い分野の記事を読みますね。

あとは、記事をダウンロードして社員に毎日配信しています。例えば、会計・税務分野の記事を経理担当の社員に「この部分を詳しく理解してほしい」と個別に伝えることもあります。社員も読んでくれているようで、前後編に分かれている記事が出た際は、社員から「後編の配信はまだですか?」と聞かれることもありました。経営者仲間にも勧めています。

新入社員向けの記事はよくありますが、中堅、役員などそれ以外の年代や、担当業務別の情報があるとさらに嬉しいです。

社員の想いから変化が生まれる組織に

―― ありがとうございます。営業など業務別の記事の配信を増やしていく予定なので、ぜひご確認ください。最後に、今後の展望について教えてください。

今後は、事業拡大が目標ですね。今はありがたいことに経営が安定し、チャレンジできる幅が広がりました。大きく売上を上げられるような新規事業を作りたいと考えています。ただ、ホームランは狙って打てるものではありません。ヒットをコツコツ積み重ねる中から、ホームランが生まれればいいと思っています。

課題は、ヒト・モノ・カネとそれぞれありますが、中でも特に人です。20代〜40代まで多様な年代の社員がいる中で、一人ひとりの考え方はもちろん違いますし、ジェネレーションギャップもあります。それをどう乗り越えて会社を運営していくかが難しいところです。自分の根底にある、変化を好む、チャレンジをしていく想いは変えるつもりはありません。でも、変化量やチャレンジ幅は人に合わせて調整しなければならないと感じています。

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今は全てトップダウンで決定しており、それも悪くないとは思っています。ただ、もっといろいろな部署からさまざまな想いが上がってきて、新しい変化を生み出せるようになるとより良いですね。今は、社員が一生懸命やっていることが褒められるのが一番嬉しいです。仕事とプライベートの区別はつけながら、透明性を保って会社としてチャレンジしていきたいです。

以上(2022年6月)

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時代に合わせ、三度の業種・業態変更で成長。ミモザ藤田社長に聞く、変化を生み出しチャレンジし続ける秘訣。

藤田淳一(ふじた じゅんいち)

プロフィール
株式会社ミモザホールディングス代表取締役社長。インターネットショップ運営などを手がける株式会社ミモザ情報システム、株式会社ベクルックスの代表も務める。

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常に次を見据えて事業を拡大

―― 本日はよろしくお願いします。はじめに改めて事業内容を教えてください。

インターネットを使ったビジネスをしています。ホールディングス化していて、ミモザ情報システムでは対企業、ベクルックスでは対個人と、お客様によって会社を分けています。

事業としてはインターネットショップの運営が中心です。ソフトウェア系と事務系に分けて、13ショップを運営しています。特徴は、「1メーカー1ショップ」にしていること。運営側としては、さまざまなメーカーの商品と取り扱う総合ショップの方が運営しやすいのですが、お客様からすると分かりにくい。そのためショップを分けて、お客様の使いやすさにこだわっています。加えて強みをつくるために、大手ネットショップではなかなか手が届かない、商品知識や業務知識など、専門性の高い発信を強化しています。

加えて、対企業においてはネットショップをご利用いただいている全国のお客様から、システム案件も受注しています。商材である財務会計や給与計算のソフトの導入や、バージョンアップのお手伝いなどです。顧客リストは全国14万社。中小企業を中心に、多業種にサービスを展開しています。

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―― 今の事業に到るまで、業種や業態を変えてきたと伺っています。創業からこれまでの沿革を教えてください。

創業は29年前、ちょうどWindows95が出た頃のことです。データ入力とパソコンの訪問販売の事業から始まりました。私は大学卒業後企業に入社し、データ入力などの仕事をしていましたが、自分でやりたいという思いがあり独立したのです。

しかし、しばらくやってみると、データ入力とパソコンの訪問販売は人海戦術となる上に単価が安く、継続が厳しいと感じました。
目をつけたのは財務会計や給与計算などの業務ソフト。業務ソフトであればさまざまなジャンルがあり、導入する際に業務知識も必要なので、サポートが必要とされるだろうと考えたのです。これが当たって、売り上げが伸びました。その段階で社員を採用し、徐々に組織ができました。

ただ業界が伸びると競合他社も爆増。次の事業を作る必要を感じていました。さまざまな事業を試してみる中で、現在のネットショップ事業にたどり着いたのです。ミモザは常に変化してきた会社と言えるのではないかと思います。

現状維持=右肩下がり。ルールの範囲で常にチャレンジを

―― ミモザグループでも、「変化する社会の動きを的確に捉え、求められるサービスを創造する」ことを経営理念に置かれていますよね。積極的にチャレンジし変化することに対して、どんな思いをお持ちですか?

現状維持=右肩下がりでしかないという怖さがあります。もっと会社を大きくしたいと考えているので、現状に満足していません。

例えば同時期に起業した人が成功しているのを見れば、「なんで彼にできて俺にできないんだろう」と思う。負けん気ですよね。上には上がいますし、相手は勝負している気なんてないでしょう。自分で勝手に勝負をしているだけですが、常に上を目指しています。

―― チャレンジに対する怖さはありませんか?

チャレンジのほとんどは失敗しますよ。ただ怖さはありません。今も昔も変わらず、失敗しても元に戻れるならやろうと考えているのです。例えば、1,000万投資して売り上げがゼロでも、始める前のかたちに戻れるならやろう、と。

―― チャレンジのルールを決めていらっしゃるのですね。

そうです。思いついたらある程度検討して、まずやってみます。他に大事にしているのは撤退ラインを決めることです。始める前に、いつまでにどれくらいの成果が出なかったらやめる、と決めています。

それから、思いつけばなんでもいいというわけではなく、これまで成功してきた「インターネット」「中小企業」というキーワードの中で事業をすることにしています。今の事業に全く関係のない飛び地での事業はリスクが大きい。今後を見据え、地続きの領域で事業を展開したいと考えています。

ビジネス・リポートONLINEで事業検討と社員教育

―― 日経トップリーダー経営者クラブでは、サービスの一環として豊富なビジネス情報を蓄積した「ビジネス・リポートONLINE」をご提供しています。藤田さんは「ビジネス・リポートONLINE」のヘビーユーザーのようですが、どのようにご活用いただいていますか?

まず、自分自身の勉強のために見ています。例えば、税制や社会保険制度の改正などがあった際、ビジネス・リポートONLINEにはポイントをまとめた記事がアップされます。それを読んで、自分が得ている情報に漏れがないか確認するようにしています。新聞の見出しのように記事のタイトルを見て情報を把握し、漏れがあった場合は記事を詳しく読み、自分でも追加で調べるようにしています。新しいことを常に考えているので、新規事業のタネになるかなど、さまざまな視点で幅広い分野の記事を読みますね。

あとは、記事をダウンロードして社員に毎日配信しています。例えば、会計・税務分野の記事を経理担当の社員に「この部分を詳しく理解してほしい」と個別に伝えることもあります。社員も読んでくれているようで、前後編に分かれている記事が出た際は、社員から「後編の配信はまだですか?」と聞かれることもありました。経営者仲間にも勧めています。

新入社員向けの記事はよくありますが、中堅、役員などそれ以外の年代や、担当業務別の情報があるとさらに嬉しいです。

社員の想いから変化が生まれる組織に

―― ありがとうございます。営業など業務別の記事の配信を増やしていく予定なので、ぜひご確認ください。最後に、今後の展望について教えてください。

今後は、事業拡大が目標ですね。今はありがたいことに経営が安定し、チャレンジできる幅が広がりました。大きく売上を上げられるような新規事業を作りたいと考えています。ただ、ホームランは狙って打てるものではありません。ヒットをコツコツ積み重ねる中から、ホームランが生まれればいいと思っています。

課題は、ヒト・モノ・カネとそれぞれありますが、中でも特に人です。20代〜40代まで多様な年代の社員がいる中で、一人ひとりの考え方はもちろん違いますし、ジェネレーションギャップもあります。それをどう乗り越えて会社を運営していくかが難しいところです。自分の根底にある、変化を好む、チャレンジをしていく想いは変えるつもりはありません。でも、変化量やチャレンジ幅は人に合わせて調整しなければならないと感じています。

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今は全てトップダウンで決定しており、それも悪くないとは思っています。ただ、もっといろいろな部署からさまざまな想いが上がってきて、新しい変化を生み出せるようになるとより良いですね。今は、社員が一生懸命やっていることが褒められるのが一番嬉しいです。仕事とプライベートの区別はつけながら、透明性を保って会社としてチャレンジしていきたいです。

以上(2022年6月)

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【カンタン経済講座】世界情勢が日本経済に影響を及ぼす3つの最悪のシナリオ

書いてあること

  • 主な読者:ヒト・モノ・カネに関して直接的、間接的に海外と関係している企業の経営者
  • 課題:激動する世界情勢が日本経済に悪影響を及ぼすリスクについて考える材料が欲しい
  • 解決策:対中関係の急激な悪化や中国経済の失速等のリスク、エネルギー不足、大災害などの最悪のリスクシナリオを想定しておく

1 最悪のシナリオを想定しておけば、リスクに備えておける

世界で発生するさまざまな問題は、日本経済にも大きな影響を及ぼす可能性を秘めています。今回は、「起きる可能性は非常に低いことを願っているけれど、起きると日本経済が甚大な被害を受けそうな最悪のリスクシナリオ」と、その対策について考えてみましょう。

例えば、現時点で想定される最悪のリスクシナリオは、次の3つが挙げられるでしょう。

  • 中国の軍事・外交・経済問題
  • エネルギーの輸入が困難になる
  • 核戦争・巨大地震・巨大隕石(いんせき)落下などの大災害

未然に防ぐことも、いつ発生するか予見することも不可能なことばかりですが、「備えあれば憂いなし」です。リスクに見合ったコストの範囲内で、できる限りの対策をしてみてはいかがでしょうか。

なお、国際紛争・環境問題への対応・感染症のまん延といった、既に顕在化している世界情勢が日本経済に影響するメカニズムについては、次の記事をご覧ください。

2 中国による台湾侵攻は日本経済に大打撃

・具体的な事象

中国による台湾侵攻やロシア支援などに伴う経済関係の悪化、中国経済の失速

・想定される日本経済への影響

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・リスクへの可能な対策

中国への依存度の引き下げ(中国以外の国への展開や国内回帰、調達先の多角化、半導体の在庫を多めにする、など)

1)中国経済が失速する3つのシナリオ

中国経済が失速する要因には、3つの可能性があると思います。

第1の可能性は、不動産バブルの崩壊です。不動産開発事業者の中に資金繰りが詰まっているところが多いようなので、不動産の投げ売りが始まるかもしれません。一時期は大規模事業者の倒産が懸念されていましたが、中国政府が軟着陸を目指しているようなので、大規模倒産による金融恐慌のような懸念は薄らいでいると思います。

しかし、不動産開発は中国の主要産業ですので、新しい不動産開発が行われなくなることで、経済が失速する可能性は懸念されます。

第2の可能性は、中国共産党政権の安定を、経済発展よりも優先することです。中国政府では最近、皆で豊かになろうという言葉、「共同富裕」がよく使われているようです。

共同富裕政策が、「金持ちに課税して困っている人たちに分け与えよう」ということならば、弊害は少ないかもしれません。起業家たちは、「重税を課されても十分残るくらい巨額に稼ごう」と考えるでしょう。

ですが、「共産党に都合の悪い事業者を取り締まろう」といった動きになると厄介です。起業家たちが怖くなって起業しなくなり、経済活動に大きなブレーキがかかる可能性もあるからです。

第3の可能性は、新型コロナウイルス感染症(コロナ)のまん延です。中国政府は、コロナを完全に抑え込もうという方針のようですから、少数の感染者が見つかっただけで街全体をロックダウンしています。流行初期に徹底した対策で封じ込めに成功した体験があるので、それを今回も採用しているようですが、もしかしたら危険なことかもしれません。世界で流行しているのは、感染力が強い変異株に移行しているので、これを完全に抑え込もうとすると、中国全体をロックダウンしなければならない可能性もあるわけです。

そうなると、中国国内の景気が悪化するのみならず、生産活動や物流などが滞り、中国製品の輸出が激減するかもしれません。こうなると、日本から中国への輸出の減少に加えて、中国製品が買えないという状況にもなり得るわけです。感染初期に、「家は建ったのに、中国からトイレが納品されないから完成できない」といった話を耳にしましたが、それがもっと広い範囲で起きるかもしれないのです。

中国経済の失速による日本経済への影響は、少なくありません。日本からの輸出の減少によって景気は悪化しますし、中国製品の輸入の減少はインフレを招きます。中国製部品の調達難になれば、インフレと失業を同時に招きかねません。株価も下がるでしょう。

2)西側諸国との制裁合戦で世界経済が縮小

ロシアがウクライナを侵攻する前から、中国と西側諸国は人権問題などを巡って対立し、一部で禁輸措置なども取られていました。中国が覇権国の地位を目指して「戦狼(せんろう)外交」を繰り広げることで、対立が激化する局面もあったわけです。

2022年に入ってからは、人々の関心がロシアによるウクライナ侵攻に集中して、米中対立はあまり話題に上っていませんでした。ですが、ウクライナ問題が米中対立をより深刻にしかねない状況になってきました。中国とロシアは比較的親密なので、中国がロシアを支援するのではないか、という見方が強まってきたためです。

中国にしてみれば、ロシアに対して武器を売ったり、天然ガスなどを安値で買ったりしてもうけられる上に、ロシアに恩を売るとともに米国を困らせることができるわけです。中国がロシアを支援するインセンティブは決して小さくないでしょう。

もちろん、表立ってロシアを支援して西側諸国と全面的に対立することは、中国も望まないでしょう。ですが、こっそり支援したつもりが西側諸国に証拠を握られ、制裁を受けるという可能性は否定できません。西側諸国が中国に対しても強い制裁を科し、中国側も対抗措置を取るようなことになれば、世界経済に与える影響は計り知れません。

日本経済への直接的な影響としては、輸出の減少による景気悪化、中国製品の入手困難による物価上昇、中国製部品の調達困難によるインフレと不況が深刻化するでしょう。中国製部品が来ないと生産が滞るので、物不足によるインフレと生産量減少による失業増が同時に発生しかねません。

最も困難なのは、インフレと失業が同時に襲ってくる状況に陥ることです。金融・財政政策としては、インフレ抑制のために引き締めるか、失業対策のために緩めるか、対応が非常に難しくなります。このような状況が世界的に生じてしまうと、先進各国はインフレ抑制を優先する可能性が高く、世界の景気は大幅に落ち込むかもしれません。

日本の金融政策は先進各国と比べると相対的に緩和的であることから、ドル高円安圧力が生じています。今後も同様の傾向が続くと、一層の円安と、海外のインフレが国内に波及する「輸入インフレ」が襲ってくる可能性も覚悟しておいたほうがよいかもしれません。

また、世界的に金融が引き締められ、それに伴って景気が大幅に悪化すれば、世界の株価には強い下落圧力が加わるはずです。日本株もその影響を免れることはできないでしょう。

3)最悪のシナリオは中国による台湾侵攻

ないと思いたいですが、万が一にも中国が台湾に侵攻するようなことが起きれば、単にロシアを支援したというのとはレベルが異なる厳しい制裁が科されることでしょう。筆者は外交や軍事に詳しくないので、中国が台湾に侵攻する可能性や、侵攻した場合の日本の立場については記せませんが、外交・軍事面でも何らかの実害を受けるかもしれません。

少なくとも経済面では、中国との関係が一気に悪化し、貿易が事実上できなくなることも想定されます。中国は日本にとって巨大な輸出市場ですから、それが一気に失われることの衝撃は、想像を絶するものがあるでしょう。

輸出企業がもうからなくなるだけならまだいいのですが、中国に依存している物が輸入できなくなったら、日本経済や世界経済は回りません。前述した中国経済の失速リスクが短期間に極端な形で顕在化するということですから、日本経済への影響もはるかに激しく、かつ急激に襲ってくるということになるはずです。

例えば、中国にある日本企業の工場は、急いで閉鎖する必要も出てくるでしょう。そうなると、まだ使える設備機械をスクラップ業者に安価で売り、顧客リストなどを全て放棄して日本に戻らなければならないわけです。これは日本企業にとって大きなダメージとなるため、株価への悪影響は大きなものとなるでしょう。

実は筆者が大変心配しているのが、世界の半導体生産に占める台湾のシェアが高いということです。万が一、台湾が武力攻撃を受けて、台湾の半導体が輸入できなくなったら、世界のコンピューター産業や自動車産業などが止まってしまうかもしれないわけです。そうならないことを祈るのみです。

このリスク抑制策としては、中国に進出している企業であれば他国への展開や国内回帰といったことが考えられますし、中国からの輸入に頼っている企業の場合には調達先の多角化も要検討でしょう。半導体については、国際情勢を見ながら多めに在庫を持っておくということも一策です。

3 エネルギーが輸入困難になると猛烈なインフレに

・具体的な事象

中国・ロシアと西側諸国の対立の本格化によりエネルギーの輸入が困難になる

・想定される日本経済への影響

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・リスクへの可能な対策

在庫を積み増す

通常であればエネルギーが輸入できないことは考えにくいのですが、中国とロシアが西側諸国と本格的に対立するようになると、エネルギーの輸送ルートを中国軍やロシア軍に押さえられてしまうリスクがありそうです。軍艦が輸送ルートを邪魔するだけではなく、サイバー攻撃でタンカーが動かなくなるなど、あらゆる可能性が起こり得ます。

エネルギー価格が高騰するだけであれば、物価が上がるだけですから何とかなりますが、エネルギーが輸入できなくなると本当に困ります。

エネルギーの大半を海外の化石燃料に依存している日本にとって、エネルギーの輸入が困難になってしまうと、工場や自動車を動かす燃料がない、トラクターが動かないので農業生産ができないなどの問題が生じかねません。

日本経済への影響は、猛烈なインフレでしょう。エネルギーの輸入が困難になれば、エネルギー価格が高騰するのみならず、生産活動が滞り、物不足になるはずです。生産減は失業を増加させるでしょうが、そんなことは気にならないほど物不足とインフレが深刻になると覚悟しておく必要がありそうです。

石油などのエネルギーが輸入できないという事態は、個々の企業では到底防ぎ得ません。国際情勢などに注意を払いつつ、リスクを感じたら早めに在庫を積み増すといったことは要検討かもしれません。

4 巨大地震などの大災害は米ドルの急騰を誘発

・具体的な事象

核戦争・巨大地震・巨大隕石落下などの大災害

・想定される日本経済への影響

復興資材の輸入が急増し、米ドルが急騰する

・リスクへの可能な対策

ドル資産を保有する、巨大地震対策としては耐震補強や地震保険に加入する

核戦争・巨大地震・巨大隕石落下といった大災害は、たとえ日本以外の国で発生しても日本経済に影響を及ぼすでしょう。ですが、何といっても国内で発生したとき、日本経済は甚大な被害を受けることになります。

これは避けようがありませんし、被害を予測することも容易ではありません。核シェルターは現実的か否か分かりませんし、巨大隕石はどうしようもありません。

しかし、巨大地震に対しては耐震補強、地震保険加入などの他、米ドルを持つという選択肢もあります。巨大地震で大都会が被害を受ければ、復興資材の輸入が急増し、そのためのドル買い注文が殺到するでしょう。

そうなれば、ドルが高騰して輸入品全てが大幅に値上がりすることになります。そんなときに円の預金を持っていても仕方ありません。ドル(具体的には米国株の投資信託など)を持っていれば、それが(円換算すると)値上がりするので、円だけで資産を持っているよりも、はるかにマシなはずです。

ちなみに、円の急落(いわゆる通貨危機)は、大災害の発生以外でも起こる可能性があります。例えば財政が行き詰まって日本国債の利払いがストップ(デフォルト)した場合や、米国を中心とする海外と日本の金利差が圧倒的に開いた場合などです。

円が急落すると、日本経済は猛烈なインフレに悩むことになります。日銀はインフレ対策と通貨防衛の両方を目指して、厳しい金融引き締めに走る可能性があります。これは景気にとっては非常にマイナスになります。

ただ、大災害で工場などが被害を受けて生産能力が落ちているときには、需要を抑えることが優先されるのは仕方のないことでしょう。

以上(2022年7月)
(執筆 前久留米大学商学部教授 塚崎公義)

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画像:bakhtiarzein-Adobe Stock

【営業最強フレーズ集】ヒアリング編1「同業他社から○○という課題を聞きます。御社はいかがですか?」

書いてあること

  • 主な読者:今よりレベルアップしたい営業担当者と、営業担当者を指導する営業管理職
  • 課題:現場ですぐに使えて顧客と信頼関係を築けるトークスクリプト的なものが欲しい
  • 解決策:シーンごとに「最強フレーズ」を、少なくとも1つは持っておく。あとは応用

同業他社から○○という課題を聞きます。御社はいかがですか?

相手のニーズは、相手も分からない

営業活動で最も大切で、最も難しいのは「相手のニーズを知る」ことです。そもそも相手が自身のニーズに気付いていないことも多く、特に営業の初回では、相手は警戒もしています。そこで初回のヒアリングでどのように質問するかがとても重要になってきます。

相手が初めての営業を受ける目的は、大きく分けて次の4つになります。

  • 本当に導入を検討している
  • 情報を収集しておきたい
  • つながりだけを持っておきたい
  • 時間潰し

相手の目的が1.であれば、アプローチの段階である程度提案の道筋が見えているため、問題ありませんが、こうしたケースはまれです。営業担当としては、上の2.~4.を目的としている相手と信頼関係を築く必要があり、ここが腕の見せ所です。

「相談される人」を目指す

初回は、相手にとってのあなたは、「飛び込み営業に来たうちの1人」にすぎません。そこから、「何かあったときに相談したい特別な人」にレベルアップすることで、ニーズが顕在化したときに、「あの営業担当者に頼んでみよう」となる可能性があります。

そうした関係構築に効果的なのが、今回の営業最強フレーズです。

「同業他社から最近こういう課題を聞いた」など、相手にとっての競合や顧客など「ビジネスにつながる情報」を提供することで、相手に「この営業担当者は業界全体や同業他社、顧客の動向に明るい『事情通』だ。つながっておく価値がある」と認識してもらうのです。

「もしかしたら感」を感じてもらう

今回の営業フレーズには、「相手にニーズを気付かせる」という意味もあります。

最初は、相手はそもそも自身のニーズに気付いていないことがほとんどです。同業他社や相手にとっての顧客の事例がヒントとなって、「うちも何かしたほうがよいのでは?」と感じてもらえれば、そこからニーズが顕在化していくことも珍しくありません。

相手がヒントと感じやすいテーマは、「競合他社との差異化・同質化」「相手にとっての顧客のニーズや変化」「売り上げ増、利益増」「リスク回避」「コスト削減、効率化」などとなるので、事例として話せるように常に情報収集し、整理するなど準備をしておきましょう。

アイスブレイクも忘れず、初回は素直に。

ヒアリングで同業他社や顧客の事例を出すときは、「この事例が御社の今後の参考になる。なぜなら……」という理由もきちんと説明しましょう。

ただし、こうした話をしたところで、相手がすぐにあなたのことを信頼し、ニーズを教えてくれるわけではありません。初回は「入り口」です。「売り上げ! 成約!」とがっつかず、アイスブレイクや笑顔も交えて和やかな雰囲気をつくり、腰を据えて相手との関係を構築することを心掛けましょう。

また、こちらが準備した「同業他社や相手にとっての顧客の事例(課題)」が、的外れな場合もあります。相手がピンと来ていなさそうだったら、

「勉強不足で申し訳ありません、後学のため、どのあたりがズレていたか教えていただけますでしょうか?」

と素直に質問し、正しい情報を教えてもらいましょう。知ったかぶりや独りよがりは厳禁。相手の反応をよく見ながら話を進めるのが大事です。これはオンラインの際も同じで、相手がカメラオフになっていた場合は、こまめに「いかがでしょうか?」と質問を投げ掛けるのも一策です。

以上(2022年7月)

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画像:Mariko Mitsuda