相続税対策を行うには、まず相続税がどれぐらいかかるかを把握しておくことが必要です。また、相続税対策をするには、その計算をどのようにするかも知っておかなくてはなりません。そこで、経営者にありがちな具体的な問題点をもとに、基本的な相続税計算と、相続税対策のポイントをご紹介させていただきます。
【朝礼】“効率的じゃない”行動が皆さんを成長させる
今朝は「余白」というテーマで話をします。余白といってもページの余り部分ではありません。仕事の「余白」です。これだけ言われてもピンとこないと思いますから、まずは聞いてください。
今、世の中は「効率化の時代」を迎えています。働き方改革やコロナを背景に広がったリモートワーク、ChatGPTのような生成AIの登場によって、効率化を求める動きはこれまでとは全く違ったレベルで進んでいることを日々実感します。タイムパフォーマンスを略した「タイパ」という言葉が出てくるほどです。
皆さんも日ごろから「効率的に仕事をする」ということを意識しているはずです。効率化とは「無駄」をそぎ落とすことですから、できるだけ直線的に、なおかつ最短距離でゴールに向かうイメージです。ここで問題なのは、「何を『無駄』と定義するか」です。効率的に仕事をすることだけを考え、自分の感情を考慮せずにひたすら仕事をした場合、それは作業に近くなっていくでしょう。確かに早く仕事が終わるかもしれませんが、果たしてそれで皆さんは楽しいでしょうか? あるいは、そんな仕事をしている皆さんは、周囲の人から見て魅力的に映るでしょうか?
私の経営者仲間に、とても魅力的な人がいます。その人は頭が良く、それこそ効率的に仕事をするのですが、「効率化」や「タイパ」などと言っているのを聞いたことがありません。常に「余裕」を持って、本当に楽しそうに仕事をするのです。
この「余裕」が、いうなれば仕事の「余白」なのですが、もう少し掘り下げていきましょう。私の考える余白には、「内側の余白」「外側の余白」の2種類があります。
内側の余白とは、自由な時間や、おおらかな気持ちです。忙しい中でも、自分の趣味に没頭したり、考え事をしたりする時間を確保していれば、定期的に自分と向き合うことができます。そうすると、「私が進むべき道はこれでいいのか?」と考えては足元を固めていくので、めったなことではぐらつかないのです。
外側の余白とは、仕事や家族とは違う人とのコミュニケーションと、そこから得られる気づきです。人間関係にまで効率化を持ち込めば、それは損得感情での付き合いになってしまいます。気遣いをすることもなく、関係も深まりません。しかし、外側に余白があり、異業種の人や自分とは違う年代の人と積極的に交わっていけば、皆さんの、人としての厚みが増していくのです。
「余白は余裕」と言いましたが、余白には無駄なものもあります。しかし、無駄を経験したからこそ気づくこと、得られることがあるのも事実です。常に時間に追われ、ろくに会話もせずに仕事をする人を、誰も魅力的とは思いません。魅力的でなければ周りも本気で話しかけてはきませんから、皆さんの可能性を引き出してくれる人はいなくなります。効率化の時代だからこそ、余白を大切にすることで広がる世界もあるのです。
以上(2023年9月)
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画像:Mariko Mitsuda
関東大震災から100年の節目に考える 現代の地震リスクの特徴と対策について【PR】
1 関東大震災と現代の地震の想定について
10万人を超える死者が出た関東大震災から9月1日で100年になります。この震災は火災による焼死が犠牲者の9割を占めたことで知られますが、大きな余震の連続による建物の倒壊や津波、土砂災害による死者も多数に及んだ記録もあり、地震が様々な災害に波及したことが分かります。今後、高い確率で起こる可能性がある大地震としては、「南海トラフ地震」、「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震」、「首都直下地震」、「中部圏・近畿圏直下地震」の4つと言われていますが、首都直下地震は南関東で30年以内にM7クラスの地震が発生する確率が70パーセントと予想されており、地震が発生した場合、首都中枢機能の被災が懸念されます。2022年に都が公表した首都直下地震の被害想定では、都心南部を震源に起きると死者最大約6200人のうち、焼死が約2500人を占めると予測しており、延焼の原因になる木造住宅密集地の解消や、漏電火災を防ぐ「感震ブレーカー」の普及など、火災対策を減災の柱に掲げています。しかし、複数回の地震動を考慮していない現在の建物や構造物の耐震基準の問題や、地震時に崖崩れや地滑りの恐れがある多数の土砂災害警戒区域の問題、地盤の液状化が懸念される河川や沼を埋め立てた数多くの「大規模盛土造成地」の問題等への対応も求められます。

出典:内閣府ホームページ「関東大震災100年」 特設ページ
(https://www.bousai.go.jp/kantou100/)
2 地震リスクの特徴について
日本は世界の0.25%の国土面積でありながら、世界で発生するマグニチュード6以上の地震の約20%が発生しており、全国どこでも地震発生の可能性があると言えます。地震がいつ・どこで起こるかを正確に予測することはできませんが、ある一定期間内に、強い揺れに見舞われる可能性を示した地図(確率論的地震動予測地図)により、地震の発生確率を確認することが可能です。なお、地震の発生確率と、自然災害や事故などの発生確率とを比較してみると、日本の太平洋側の地域は26%以上の確率となっていますが、これは交通事故で負傷する確率(24%)を上回っています。0.1%未満~3%といった確率の低い地域もありますが、それでも火災や大雨で被災する確率に近い値であるため、地震は避けられない自然災害であり、身近なリスクと捉える姿勢が必要です。

【確率論的地震動予測地図】
今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率の分布図
出典:内閣府「広報ぼうさい51号」
また、地震による影響も企業の規模特性に応じて様々であり、建物の倒壊や焼失、土砂災害や液状化等による財産損失や事業中断に加えて、大切なデータや従業員等を失う可能性も考えられます。また、従業員や第三者の死傷に伴って、施設賠償責任や安全配慮義務違反による使用者責任を問われる可能性もありますし、取引先の倒産や事業中断による貸倒れや取引中断の影響を受けることも想定されます。実際に、東京商工リサーチによる2023年のデータでも震災関連倒産2019件のうち、東京の企業が587件と約1/3を占め、2021年のデータでは直接的に被害を受けていない企業の倒産が90%を占める結果が出ており、サプライチェーンの分断による影響の大きさが伺えます。

出典:株式会社東京商工リサーチ「「東日本大震災」関連倒産」より
3 平時のリスクコントロール対策について
リスク対策は想定する地震発生の場所・時間・規模や、企業の規模特性によって異なりますが、平時においては、キャビネットやパソコンの固定、データのバックアップ等の対策を行うと共に、有事に備えてハザードマップを見て避難場所や避難経路を確認し、安否確認の連絡方法や緊急時の主要連絡先一覧、消化設備や防護安全設備、非常用物品の備蓄や持ち出し品リスト等を作成しておく事が重要です。また、防災訓練を普段から実施して消化設備の使用方法や応急処置方法等を自社内で共有すると共に、地震は広範囲に被害が広がる可能性があるため、日頃から地域の防災訓練にも参加するなど、自社だけではなく、周辺企業や地域住民と協力する共助の体制構築が重要です。それらの有事に備えた全社的な活動は危機管理規程やBCPに落とし込み、教育・訓練を通して現場に周知することが重要であり、中小企業の場合は事業継続力強化計画(ジギョケイ)の認定を受ける事で、リスク対策を目的とした設備投資に対する低利融資や税務面での優遇措置、保険の割引等が適用される可能性があるため、積極的な利用が求められます。
4 有事のリスクコントロール対策
有事に損失を最小化するには、予め有事の対応方針を明確化し、必要な準備を行うと共に、BCPや危機管理規程等に基づいた適切かつ迅速な対応が求められます。基本的に最優先されるのは安全であり、業務中の場合は、自分の身の安全を確保した上で、自衛消防対応として初期消火・ケガ人の救助・被害の拡大防止や避難誘導を行う必要があります。自衛消防対応後は、役割を分担して初動対応を行います。初動対応は、安否確認、被災状況確認、事業所状況確認等の「状況把握」、職員等の支援、設備の復旧手配、地域周辺対応等の「安全確保」、お客様への報告、業務関連情報の収集、災害広報、復旧対応等の「特別対応」の3つに分けられます。初動対応後は日常業務への復旧が必要ですが、ヒト・モノ・システムなどの経営資源が満足に揃わない可能性があるため、業務に優先順位をつけて優先度の高い業務に経営資源を集中する対応が求められます。

※事業継続力強化計画×保険パンフレット https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/antei/bousai/download/pamflet/hoken.pdf
(出典:中小企業庁ウェブサイトより https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/antei/bousai/keizokuryoku.htm)
5 地震リスクのファイナンス対策について
地震は多くの企業に致命的なダメージをもたらすリスクであり、財務対策としての保険の必要性は非常に高いと考えられます。しかし、地震に伴う財産損失や賠償責任、事業中断に関わるリスク等を全て保険に移転するのは難しい場合があります。理由としては、そもそも保険会社の引き受けの制限や、引き受けても保険料が非常に高額になることが想定されるからです。そのため、まずは積極的なリスクコントロールで損失を最小化し、出来る限り財務力を高めて保険の効率化を図ることが重要ですが、必要に応じて、保険以外の資金調達方法も検討することが求められます。具体的には、有事の際の融資予約や有事の際に返済が免除される金融商品の活用、実損額を支払う保険ではなく、一定の地域で一定の震度の地震が発生した場合に、予め設定した金額を支払うデリバティブ商品の活用等が考えられます。何れにしても、地震大国である日本では、企業は地震による巨額の損失に備えた何らかの財務対策が求められるでしょう。
【損保ジャパン BCP地震補償保険】
https://www.sompo-japan.co.jp/hinsurance/risk/benefit/speq/

出典:中小企業庁 2019年版「中小企業白書」
以上(2023年9月)
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画像:photo-ac
提供:ARICEホールディングスグループ( HP:https://www.ariceservice.co.jp/ )
ARICEホールディングス株式会社(グループ会社の管理・マーケティング・戦略立案等)
株式会社A.I.P(損保13社、生保15社、少額短期3社を扱う全国展開型乗合代理店)
株式会社日本リスク総研(リスクマネジメントコンサルティング、教育・研修等)
トラスト社会保険労務士法人(社会保険労務士業、人事労務リスクマネジメント等)
株式会社アリスヘルプライン(内部通報制度構築支援・ガバナンス態勢の構築支援等)
日本の植物分類学の父・牧野富太郎。植物愛に満ちた彼の、対人間関係にも通じる一言とは?
世の中に”雑草”という草は無い
牧野富太郎氏は「日本の植物分類学の父」ともいわれる、世界的な植物学者です。自らを「草木の精かも知れん」と言うほど、子供の頃から植物が好きで、一生を植物の採集・分類・図鑑作成に費やしました。1862年から1957年までの94年の生涯で、牧野氏が命名した新種や新品種などの植物は、1500種以上とも、2500種以上ともいわれています。NHKの連続テレビ小説「らんまん」(2023年度前期放送)の主人公のモデルとしても有名です。
冒頭の言葉は、「樅ノ木は残った」や「赤ひげ診療譚」などの著作で知られる小説家の山本周五郎氏が雑誌の編集記者だった時代に、対談した牧野氏から言われたとされています。まだ20代の山本氏が対談中に「雑草」という言葉を口走ると、牧野氏はなじるように冒頭の言葉を述べ、「どんな草にだって、ちゃんと名前がついている」と指摘。さらに、「世の中の多くのひとびとが“雑草”だの“雑木林”だのと無神経な呼び方をする。もしきみが、“雑兵”と呼ばれたら、いい気がするか」ととがめられ、山本氏は「これにはおれも、一発ガクンとやられたような気がした」と振り返ったエピソードが残っています。
牧野氏が山本氏をとがめた理由は、自分が愛する植物に対する無神経さに憤っただけではないはずです。なぜなら、牧野氏は講演などで、しばしば「草木でさえ思いやるようにすれば、人間同士は必然的になおさら深く思いやり厚く同情する」と語り、人間愛、博愛心を養うために、草木に対して愛情を持つことを勧めていたからです。
そもそも、“雑草”という言葉は、「人為的ではなく自然に生えた草」「名前が分からない雑多な草」「目的の栽培植物以外に生える草」などを指しますが、どれも自分にとって有用かどうか、邪魔かどうかといった“人間都合の目線”を含んでいます。人間が大切に栽培している農作物と同様か、それ以上に必死に生きている草の立場は、全く考慮されていません。また、薬草などのように、“雑草”扱いしていたものが、後になって人間にとって有用だと分かることもあるものです。
人間にとって有用かどうか、という観点は、結果が求められるビジネスの世界においては、ごく当たり前の評価軸です。社員が会社に対する貢献度で評価されるのも当然のことです。ですが、現時点で社員としての評価が低いからといって、その人を“雑兵”のように見なし、態度や扱いにも露骨に表すことは、それとは全く別の次元の話です。むしろ、同じ組織の仲間である以上、上役は評価の低い社員ほど愛情を注いで、会社に貢献できるように導いていくべきではないでしょうか。
草木は水やりをすれば大きく育ちます。人が世話をしない“雑草”だって必死に伸びようとします。会社に貢献できない社員に対して、イライラするときこそ、社員の未来に思いをはせ、愛情をもって接してみてはいかがでしょうか。
出典:「周五郎に生き方を学ぶ」(木村久邇典、実業之日本社、1995年11月)、
「牧野富太郎自叙伝」(牧野富太郎、講談社、2004年4月)
以上(2023年8月作成)
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賃金未払企業への国の対応
厚生労働省は、令和4年(令和4年1月から令和4年12月まで)に賃金不払が疑われる事業場に対して労働基準監督署が実施した監督指導の結果を取りまとめました。
この公表は、従来、支払額が1企業当たり100万円以上の割増賃金不払事案のみを集計していましたが、今回から、それ以外の事案を含め賃金不払事案全体を集計しています。
本稿では、厚生労働省が公表した結果をご紹介するとともに、「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化の取組について」に基づき、労働基準監督機関が賃金未払企業に対して徹底するとしている主な取組などをご紹介して参ります。
賃金未払企業への国の対応
厚生労働省は、令和4年(令和4年1月から令和4年12月まで)に賃金不払が疑われる事業場に対して労働基準監督署が実施した監督指導の結果を取りまとめました。
この公表は、従来、支払額が1企業当たり100万円以上の割増賃金不払事案のみを集計していましたが、今回から、それ以外の事案を含め賃金不払事案全体を集計しています。
本稿では、厚生労働省が公表した結果をご紹介するとともに、「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化の取組について」に基づき、労働基準監督機関が賃金未払企業に対して徹底するとしている主な取組などをご紹介して参ります。
1 労働基準監督署の指導結果
①令和4年に全国の労働基準監督署で取り扱った賃金不払事案の件数、対象労働者数及び金額は次のとおりです。

②労働基準監督署が取り扱った賃金不払事案(上表)のうち、令和4年中に、労働基準監督署の指導により使用者が賃金を支払い、解決されたものの状況は次のとおりです。

※令和4年中に解決せず、事案が翌年に繰り越しになったものも含まれます。
※倒産、事業主の行方不明により賃金が支払われなかったものも含まれます。
※不払賃金額の一部のみを支払ったものも含まれます。
(厚生労働省「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和4年)」)
2 労働基準監督機関における対応
厚生労働省では、「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化の取組について」(令和3年12月27日閣議了解)などに基づき労働基準監督機関による次のような取組を徹底するとしています。また、倒産、事業主の行方不明により解決が困難な事案については、「賃金の支払の確保等に関する法律」(昭和51年法律第34号)に基づく未払賃金立替払制度の迅速かつ適正な運営に努めていくとしています。
- ① 最低賃金違反や賃金・残業代の不払が疑われる事業場に対して、監督指導を実施し、是正を図る
- ② 毎年1月から3月までの「集中取組期間」において、最低賃金の遵守徹底を図り、賃金の引上げについて検討がなされるよう、賃金引上げや転嫁対策関連の施策の紹介を行う。
- ③ 賃金不払をはじめとした基本的な労働条件の履行確保を図るため、定期監督(年間10万事業場以上実施)において、賃金引上げの意向や労働条件の改善状況を確認する。
- ④ 労使において賃金の引上げを行うとの取決めを行ったにもかかわらず、賃金支払が履行されず、労働基準監督機関による度重なる指導でも是正しない事業場や、定期賃金や割増賃金を適切に支払わず、同様の法違反が繰り返される事業場については、司法処分を含め厳正に対応する。
3 さいごに
2020年の改正民法施行に伴う労働基準法改正により、賃金の消滅時効期間が原則5年(旧法では2年)、当分の間は経過措置として3年に変更されました。既に改正法施行から3年が経過し、2023年度以降は丸々3年分の未払賃金請求が生じ得ることとなります。
つまり、残業手当などの未払いが生じ、請求が行われた場合は、請求対象期間が1年分増えることになります。
また、2023年4月1日からは、中小企業でも月60時間超の時間外労働に係る割増賃金率が50%以上へと引き上げられており、未払賃金の請求金額が多額になる恐れもあります。会社としては、これまで以上に未払賃金対策に取り組み、リスク回避を図っていく必要があります。
※本内容は2023年8月10日時点での内容です
(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)
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職場で盗難事件が発生したら、すぐ警察に通報すべきですか?
書いてあること
- 主な読者:職場で盗難が起きた場合の対応を知っておきたい経営者、労務担当者
- 課題:盗難は許せないし、被害者には真摯に向き合いたい。でも、大ごとにはしたくない
- 解決策:被害者と足並みをそろえ、情報が拡散しないようにする。警察への届け出などについては、被害者の意向を尊重して決める
1 職場で盗難! しかも、犯人は社員……!
職場のロッカーに入れていた財布が社員の誰かに盗まれた……。こうした職場の盗難は本来あってはならないことですが、万が一のときに素早く、冷静に対応できますか? 対応が遅れると、被害者が「財布を盗まれた!」と大声で騒ぎ立てて社内が混乱し、SNSに「ウチの職場で盗難が起きた」と書き込む社員も出てくるかもしれません。
「盗難は許せないし、被害者には真摯に向き合いたい。でも、大ごとにはしたくない」というのが経営者や労務担当者の本音ではないでしょうか。この記事では、職場で盗難が起きた場合の基本的な対応を紹介していますので、万一の備えとしてご活用ください。
- 盗難が起きにくい状況を作る
- 相談窓口を事前に決めて情報を一元管理する
- 被害者などへの聞き取り調査は焦らずに行う
- 警察への届け出は被害者の意向を尊重して決める
- 捜査には協力するが、他の社員への配慮も忘れない
- 処分後の情報開示は最低限にし、再発防止に努める
2 盗難が起きにくい状況を作る
職場で財布などの盗難が起きやすい場所はロッカールーム(更衣室)です。作業服や制服に着替える必要があって、なおかつロッカールームを使用する時間が社員によってバラバラだと、盗難は起きやすくなります。
ロッカールームでの盗難防止策として有効なのが「防犯カメラ」の設置です。ロッカールームにカメラを設置するのは、プライバシーの問題もあってハードルが高いですが、入口付近に設置するだけでも、「誰が、いつ出入りしたのか」が証拠として残ります。カメラの設置が難しければ、最低でもロッカーを鍵付きにしましょう。
また、この他にも、例えば、ジャケットを脱いで椅子にかけたまま離席し、ジャケットのポケットに入れていた財布を盗まれるといったケースがあります。貴重品は常に身に着けておくことを社員に周知徹底しましょう。
3 相談窓口を事前に決めて情報を一元管理する
万が一盗難が起きた場合、大切なのは「盗難に関する情報がむやみに拡散されないようにする」ことです。盗難に関する情報がむやみに拡散されてしまうと、被害者のプライバシーを害するだけでなく、犯行発覚を恐れた加害者が証拠隠滅を図ったり、被害者を脅迫したりするリスクが生じるためです。
そのために、盗難が起きた際に被害者が最初に連絡する相談窓口を決めておきます。例えば、
社内の不正行為全般に関する相談を受け付ける「内部通報窓口」
などがその役割を果たします。内部通報窓口は、公益通報者保護法で社員数301人以上の会社に設置が義務付けられている窓口ですが、設置義務のない中小企業でも、いわゆる「ハラスメント相談窓口」の対応範囲を拡大して、幅広い相談を受け付けるようにしているケースがあります。
なお、窓口の存在を社員が知らなければ意味がないので、就業規則等で窓口について定めた上で、担当者の連絡先や連絡方法を社内ポスターで掲示するなどしましょう。
また、いざ盗難が起きると、気が動転した被害者が、相談窓口を介さず自分の上司や同僚などに直接相談するケースもありますが、こうした場合は同僚などから相談窓口に報告させるなどして、情報を一元管理できるようにします。
4 被害者などへの聞き取り調査は焦らずに行う
盗難の相談があったら、まず相談してきた被害者に聞き取り調査をします。具体的には、
- いつ、何を、どういう状況で盗まれたのか(できるだけ具体的に)
- 加害者の心当たりはあるか(ある場合、その根拠は何か)
- 盗難に関することを誰かに相談したか(相談した場合は誰にしたか)
などを確認します。同時に、被害者には「会社が対応するので、許可があるまで盗難に関する情報を周囲に漏らさないように」と伝えます。すでに事情を知っている社員がいる場合はその人についても同じことを伝えます。
加害者について根拠となる証拠(防犯カメラの映像や、目撃者の証言など)があるならば、加害者と思われる社員に事情を聞きます。ただし、最初から加害者扱いしたり、語気を荒らげたりせず、相手にも弁明の機会を与えながら話を聞きます。特に、弁明の機会を与える手続きをおろそかにすると、後述する懲戒処分などが無効になる恐れがあります。
5 警察への届け出は被害者の意向を尊重して決める
社員への聞き取り調査によって加害者が分かっていても、そうでなくても、盗難の疑いがあれば警察に被害届や告訴状を出すことができます。単に被害を受けたことを届け出るのが「被害届」、犯行者の刑事処罰まで前提として届け出るのが「告訴状」です。
警察に届け出るか否か、被害届と告訴状のどちらを選択するのかは、
- 被害者の意向
- 盗難の悪質性
を基に判断します。
優先すべきは「1.被害者の意向」です。仮に被害者が「大ごとにしたくないから、警察に届け出ないでほしい」と言ってきたら、その意向を尊重するのが基本です。逆の場合もしかりです。ただし、「2.盗難の悪質性」によっては、被害者の意向に反してでも、届け出るべきケースがあります。具体的には、「被害者が過去にも職場で盗難の被害に遭っている」「他にも被害に遭っている社員が複数いる」など、放置すれば企業秩序を危うくするケースがそうです。
こうした場合、
「窃盗」ではなく、「建造物侵入」として警察に届け出る
という方法があります。「建造物侵入」とは正当な理由なく建造物に侵入することで、社員が会社の建造物内で盗みを働くことも、「正当な理由のない建造物への侵入」とみなされます。建造物侵入の場合、被害者は会社になるので、警察に届け出るか否かは会社が決められます。
なお、警察に届け出ない選択をした場合も、加害者が分かっているならば、その者には毅然とした態度で臨みます。具体的には、
「今回は被害者の意思を尊重するが、次に同じ犯行をした場合は警察に届け出るし、会社としても重い処分を下す用意がある」
といった旨を伝えます。
6 捜査には協力するが、他の社員への配慮も忘れない
警察への届け出が受理された場合、
- その時点で加害者が分かっていれば、加害者は警察に出頭して取り調べを受ける
- その時点で加害者が分かっていなければ、警察が会社を訪問して現場検証を行う
ことになります。後者の場合、当事者以外の盗難の事情を知らない社員に、必要以上に不安を与えないように配慮します。
具体的には、警察が届け出を受理して、現場検証を行う前に、社員に一定の説明を行って協力を要請します。現時点で会社として把握していることを伝えますが、開示する情報は「社内で盗難が発生したこと」など必要最小限にとどめましょう。「誰が被害者か」「盗難物が何か」などの情報が拡散してしまうと、被害者のプライバシーに関わりますし、「犯行者しか知り得ぬ情報」が漏れると捜査に支障を来す恐れもあります。警察が捜査を開始した後は、事件への対応は基本的に警察の手に委ねる形になります。
7 処分後の情報開示は最低限にし、再発防止に努める
警察の捜査が終わったら、会社側でも加害者に対する懲戒処分を検討します。警察への届け出と同様、「1.被害者の意向」「2.犯罪の悪質性」が検討のポイントになります。被害者が処分を望んでいない場合、その意向を尊重して厳重注意だけで済ませることもできますが、悪質性の高いものについてはこの限りではない、という意味です。
ただし、懲戒処分を与えるにしても、犯行の内容に対して重すぎる処分は無効になるので、「盗んだ額はどの程度か」「反省は見られるか」などを考慮して慎重に処分内容を検討する必要があります。なお、就業規則等に懲戒事由に関する規定があることが大前提です。
処分に関する手続きが終わったら、最後に、二度と同じような事案が起きないよう再発防止に努める必要があります。基本は、
- 発生した盗難事件に関する情報開示
- 会社として「盗難を許さない」旨の再周知
です。
1.については、犯行者が特定され、犯行者に対する処分が確定した後に行います。ただし、社員に開示する情報は「社内で盗難が発生したこと」など必要最小限にとどめましょう。「加害者や被害者の氏名」「盗難物の具体的な内容」「加害者の処分内容」などはプライバシーに関わるので、基本的に開示は避けるべきです。
2.については、会社の就業規則等の懲戒事由について改めて全社員に説明し、犯罪行為をした場合、ことと次第によっては「懲戒解雇」のような重い処分を下す可能性があることを周知します。
以上(2023年9月作成)
(監修 弁護士 八幡優里)
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画像:Andrey Popov-Adobe Stock
【SDGs】脱炭素だけじゃない。「生物多様性」で中小企業が取り組める活動事例
書いてあること
- 主な読者:生物多様性の保全、脱炭素化の次のステップに関心のある経営者
- 課題:自社の活動と生物多様性の保全の関係が見えないため、どのようなことに取り組めば良いのかが分からない
- 解決策:部門ごとなどの活動に落とし込んで、生物多様性の保全に貢献できそうなものを見つけて取り組んでいく
1 脱炭素の次は「生物多様性の保全」が目標です
環境に配慮した取り組みとして、脱炭素はある程度できたので、次に注目されるテーマにも目を向けたい……
そんな先進的な中小企業に対して、次のステップとしてご提案するのが、
生物多様性の保全
です。気候変動対策と生物多様性の保全は密接に結びついていて、気候変動対策を進めていく上でも、生物多様性の保全・回復が大きな支えになります。
国内でも、一部の自治体では、独自の認証制度や助成金を設けて生物多様性の保全に取り組む企業を評価する動きもあります。そのため、先んじて対応できれば、他社との差異化を図ることができます。
この記事では、生物多様性の保全が必要な背景を踏まえて、具体的な取り組み事例や国が発行しているガイドライン、自治体による制度の紹介など、企業がこれから生物多様性の保全に取り組む際のヒントを紹介します。
2 なぜ、「生物多様性の保全」が注目されるのか?
1)世界的な動き
生物多様性の保全に向けて、2021年6月に開催されたG7サミットでは「30by30(サーティ・バイ・サーティ)」という目標が約束されました。この目標は、生物多様性の損失を食い止め、回復させるために、2030年までに各国で陸と海の30%以上を自然環境エリアとして保全しようとするものです。
また、世界経済フォーラムでは2020年に、世界のGDP(国内総生産)の50%以上(44兆米ドル)は、全ての自然環境、そして生物多様性に高く依存していると報告されています。
2022年12月には、52カ国330以上の企業と金融機関(総収入で1.5兆米ドル以上)が各国の政治リーダーに対し、全ての大企業および金融機関は2030年までに生物多様性への影響と依存度を評価し、開示することを義務付けるよう要請しました。
前述の通り、気候変動対策と生物多様性の保全は密接に結びついており、生物多様性の損失は気候変動に次ぐ深刻な危機であると受け止められています。世界経済フォーラム「グローバルリスクレポート 2023」によると、今後10年間でリスクと考えられる上位10位の項目の中で、生物多様性の損失や生態系の崩壊が4位、天然資源危機が6位に位置づけられています。

2)日本国内での動き
環境省では、前述の「30by30」達成に向けて、企業、民間団体・個人、地方公共団体などの取り組みで生物多様性の保全が図られている地域を国が認定する制度の「自然共生サイト」を立ち上げました。
認定区は、OECM(国立公園以外などの保護地域以外で生物多様性の保全が図られている地域)として、国際データベースに登録される計画です。
認定そのものは企業の利益には直接影響しないとされていますが、企業が行う生物多様性の保全への貢献などは投資家の判断材料にもなりつつあります。また、自社では土地を持っていなくても、他の地域の自然共生サイトの保全活動に協力する企業・団体などには国が「貢献証書」の発行を検討するとしています。
■環境省「自然共生サイト」■
https://policies.env.go.jp/nature/biodiversity/30by30alliance/kyousei/
現状は生物多様性の保全に取り組まないからといって何かしらの罰則があるわけではありませんが、将来的に、生物多様性の保全に取り組まない企業は市場から取り残されるリスクもあり得ます。
では、具体的にどのような取り組みで生物多様性の保全に貢献できるのかを、次章で紹介していきます。
3 生物多様性の保全の取り組み例
1)製品の購入で生物多様性の保全に貢献:木になる紙ネットワーク
環境に配慮した製品を使うことは、業種や業態を問わず、生物多様性の保全に貢献する分かりやすい取り組みです。例えば、一般社団法人の木になる紙ネットワーク(東京都文京区)では、紙製品に関わる調査、認証などを手掛けており、同法人が認証した「木になる紙」シリーズの製品の利用促進を後押ししています。「木になる紙」製品は間伐材が原料となっておりコピー用紙をはじめ、名刺用の台紙やファイル、封筒などがあります。
製品の売上高の一部が原料となった森林の所有者に還元され、森林整備を支援できる仕組みです。例えば、A4サイズのコピー用紙を一箱購入した場合で、約52円が森林所有者に還元され、約20平方メートルの間伐や約9キロの二酸化炭素の吸収に貢献できるとしています。
この製品は中小企業に限らず、官公庁や小中学校にも購入されており、森林所有者への累計還元金額は2億円に上るそうです。
紙製品はどの企業にとっても身近ですし、生き物や自然資源と直接関わりがない企業でも比較的取り組みやすい事例と言えるでしょう。
2)ミツバチ専用の水飲み場で生物多様性の保全に貢献:一言主神社
海外の都市では、建物の外壁に鳥の巣箱や、ハチが住むための穴を作り、生き物が住みやすい環境づくりを進めているところがあるといいます。
国内での類似した事例として、例えば、一言主神社(茨城県常総市)では、ミツバチ専用の水飲み場を設置することで、ミツバチとの共存に取り組んでいます。
参拝客から「ハチが多くて怖い」などの相談を受けたことをきっかけに、ミツバチ用の水飲み場を設置したことで、参拝客とハチの共存を実現しています。水飲み場は長さ30センチほどの竹の空洞にこけと小石を敷き詰め、こけが湿る程度の水を細い竹を使って引き込む仕組みとなっています。
植物の受粉を担い、生態系の維持に貢献するミツバチをこのような形で保護することは生物多様性を守る1つの取り組みと言えるでしょう。
3)取引先の選定で生物多様性の保全に貢献:ボンタイン珈琲
生物多様性の保全は、自社だけの問題に限らず、原材料の調達先といった取引先がどのような活動をしているか把握することも大切です。
例えば、ボンタイン珈琲(愛知県名古屋市)では、持続可能な栽培に配慮した(サステナブル)コーヒーの提供に注力しています。
コーヒー農園と取引する際のポリシーにトレーサビリティー(食品の生産・加工・流通販売までの過程を記録し、製品からさかのぼって確認できるようにすること)だけでなく、その農園が自然環境の維持・保全に配慮しているかどうかを基準にしているといいます。
また、栽培地の自然環境保全について説明するなどの環境教育をブラジルの子ども向けに行い、現地の自然環境を守ることにつなげているそうです。
4)原材料の還元で生物多様性の保全に貢献:ニッシンイクス
植樹などの緑化活動も、生物多様性の保全に関わる大切な取り組みです。
例えば、ニッシンイクス(山口県周南市)では、「森からいただいた広葉樹を、いただいた量だけ森にお返しする」ことを掲げて、広葉樹の持続可能な活用を行う「ikumoriプロジェクト」に取り組んでいます。
このプロジェクトは、北海道産の広葉樹をできるだけ無駄なく効率よく使用したフローリングや壁材を製造販売し、使用した資源量に見合う苗木を北海道の地に再び植樹するものです。
第1期となる2021年12月から2022年6月までの期間では、製品に使用した量に見合う170本分を植樹したとしています。
このプロジェクト以外でも、同社では国産材の活用に取り組んでおり、国産材を有効利用することは健全な森林整備だけでなく、土砂災害の防止や生物多様性の保全など、森林が持つ多面的機能の維持にも貢献できるとしています。
5)地産地消で生物多様性の保全に貢献:日本料理小伴天
地元の食材をその地元で消費する地産地消も、地域の食材を守るという意味合いで生物多様性の保全に貢献できる取り組みです。
例えば、日本料理店の小伴天(愛知県碧南市)では、食材の地産地消にこだわった料理づくりに取り組んでいます。
創業当時と比べて輸送手段が発達したことで、いっときは全国から食材を取り寄せていましたが、顧客からの声をきっかけに、改めて地産地消にこだわった料理づくりを再開したといいます。
地産地消は、消費者にとっては身近な場所から新鮮な食材を得ることができる、生産者にとっては耕作放棄などを防いで地域の食材を継承できるメリットがあります。また、生産地から消費地までの輸送距離が短いため、輸送に伴い発生する温室効果ガスの排出量が削減できるため、環境への負荷を軽減できることも大きなメリットです。
6)中小企業の連携で生物多様性の保全に貢献:湖南 企業いきもの応援団
中小企業が単体で生物多様性の保全に取り組むとなるとハードルが高くなりがちです。そのようなときは、地域の中小企業同士で連携することも一策です。
例えば、湖南 企業いきもの応援団(滋賀県草津市)では、滋賀県湖南地方の中小企業が行政や研究機関と連携し、地元河川である狼川の水質や生物の調査に取り組んでいます。
この調査によって、在来種や外来種の動向を取りまとめて報告することで、県の自然保護施策への貢献や、社員の環境教育につなげているといいます。
地域の中小企業同士で行政や研究機関と連携する形であれば、コストやマンパワーなどの取り組みのハードルを下げ、異業種、同業他社との交流も図れるため、より大きな活動を展開できる事例と言えるでしょう。
4 生物多様性の保全に関する認証制度・助成金
国や自治体の中には、企業のイメージアップにつながる認証制度や助成金など、生物多様性の保全を推進するための支援策を設けているところがあります。皆さんの地域にも支援策があるかもしれませんので、自治体や金融機関に相談してみるとよいでしょう。
1)愛知県「あいち生物多様性企業認証制度」
愛知県内に本社または事業所を置いており、生物多様性に関して優れた取り組みを実践している企業を県が認証する制度です。
生物多様性の保全に貢献する取り組みを行っている企業への認証と、地域への広がりや継続性があるなど、特に優れた取り組みを行っている企業への優良認証の2つの認証区分があります。
認証を受けることで、認証企業マークを自社のPRに利用できたり、企業名が愛知県自然環境課のウェブサイトで公表されたりするといったメリットがあります。
■あいち生物多様性企業認証制度■
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/shizen/biodiversity-certification.html
2)滋賀県「しが生物多様性取組認証制度」
生物多様性の保全と自然資源の持続的な利活用に取り組む企業を認証することで、企業の取り組みを見える化し、生物多様性の保全の普及啓発を図るための制度です。認証を受けた企業は認証マークを利用できるだけでなく、企業名が認証事業者として滋賀県のウェブサイトや自然環境に関するイベントなどで紹介されることで、企業のPRやイメージアップにつながるとしています。認証事業者数は、2018年度から2022年度までの期間で企業やNPO法人などの団体を合わせて75者となっています。
■しが生物多様性取組認証制度■
https://www.pref.shiga.lg.jp/ippan/kankyoshizen/shizen/14003.html
3)長崎県「緑といきもの賑わい事業」
希少野生動植物の保護増殖や生物の生息・生育空間の創出といった生物多様性の保全に関係する事業に対して、工事請負費や資材購入費などの経費を補助するものです。中小企業の場合は、上限が30万円、下限が10万円の補助金額となっています。
■長崎県「緑といきもの賑わい事業」■
https://www.pref.nagasaki.jp/bunrui/kurashi-kankyo/shizenkankyo-doshokubutsu/midoriikimono/
5 生物多様性の保全に関する参考資料・関連団体
1)環境省「生物多様性民間参画ガイドライン(第3版)」
企業の活動と生物多様性の保全がどのように関わるかを業種や部門ごとに示した上で、企業が生物多様性の保全に取り組む際の手順や、実務担当者向けのQ&A集(例:生物多様性の保全に取り組まないとどのようなリスクがあるのか)などが掲載されています。
■環境省「生物多様性民間参画ガイドライン(第3版)」■
https://www.env.go.jp/press/press_01452.html
2)JBIB(企業と生物多様性イニシアティブ)
味の素(東京都中央区)や花王(東京都中央区)、鹿島建設(東京都港区)などの大手企業40社が中心となって構成されている団体です。企業と生物多様性に関する研究・実践、生物多様性保全の取り組みを促進するための提言・啓発などに取り組んでいます。
ウェブサイトでは、会員企業による生物多様性の保全に関する取り組み例の紹介をはじめ、企業がこれから生物多様性の保全に取り組もうとする際のヒント集や、「生物多様性に配慮した企業の水管理ガイド」などを掲載しています。
■JBIB■
以上(2023年8月作成)
pj80165
画像:VectorMine-Adobe Stock
【朝礼】仕事で判断に迷ったら、自分の原点に立ち返ろう
おはようございます。8月は英語でAugustですが、その語源は古代ローマ帝国の初代皇帝アウグストゥスであることを知っていますか。彼は暗殺された養父で大伯父のユリウス・カエサルの跡を継いで古代ローマを共和制から帝政に切り替えた人物です。なお、紀元前27年から始まった古代ローマ帝国は、後に西ローマ帝国と東ローマ帝国に分かれ、西は476年まで、東は1453年までの長きにわたって続きました。
カエサルの跡を継いだとき、アウグストゥスはわずか18歳でしたが、彼はその時点で「大きな領土の平和を維持するには、共和制ではなく、指揮命令系統が一本化された政治をすべきだ」という養父の信念を受け継いでいました。当時、ローマの領土は、地中海一帯から北は現在のフランス、イギリスにまで広がり、多くの民族が住むようになったため、政治的判断に時間のかかる共和制では、統治がしにくい状況だったのです。
一方で、アウグストゥスは、性急な変革を行って暗殺されたカエサルの二の舞にならないよう、慎重に事を進めました。彼は数々の政敵を倒して確固たる地位を築くも、独裁者として糾弾されないよう、「共和制の復活」と称して与えられていた特権を一度返上します。こうして民衆の支持を集めつつ、一方で自分が政治的影響力を失わない重要なポジションに就き、周囲から反発を受けない形で共和制を指揮命令系統が一本化した体制へと移し替えました。これが帝政の始まりです。
アウグストゥスのやり方を「ずるい」と見るか「したたか」と見るかはさておき、大切なのは、彼が「国の指揮命令系統を一本化して平和を守る」という原点を忘れなかったことです。18歳という若さで政治の世界に飛び込んだ彼がのし上がる上で、この原点への思いが支えになったことは想像に難くありませんし、国の将来的なビジョンが見えていたからこそ、それを成し遂げる確実な方法として、一度特権を返上するなどというからめ手を思い付けたのでしょう。
私にも経営者として仕事をする上での信念がいくつかありますが、その1つに「経営理念を守り抜く」というものがあります。何か判断に迷うことがあったら、「今やろうとしていることは経営理念に沿っているのか」と自問自答するようにしています。経営理念は、代々当社の経営者が受け継いできた志であり、何かあったときに私が立ち返るべき原点なのです。
皆さんにもそれぞれの原点があるはずです。当社に入ったときに、「この会社でこういう仕事をしたい」という志を抱いていませんでしたか。その原点を忘れず、「自分は何のために今の仕事をしているのか」「かつて抱いた志から外れた仕事をしていないか」ということを考えれば、芯がぶれることはありません。変化の激しい時代だからこそ、それぞれの原点を忘れず仕事に取り組んでいけば、アウグストゥスのようにいつか大きなことを成し遂げられるかもしれません。
以上(2023年8月)
pj17152
画像:Mariko Mitsuda
地域商社の成功事例 強さの最大の源泉は「地元愛」
書いてあること
- 主な読者:地域商社との取引がある、あるいは取引開始を検討中の経営者
- 課題:取引すべき地域商社を知るために、どのような地域商社が成功しているのか知りたい
- 解決策:成功している地域商社の事例を参考に、成功している地域商社の特徴を押さえる。最後に重視すべきは「地元愛」の強さ
1 取引したい、取引すべき地域商社とは?
近年、数を増やしている地域商社。この記事では、地域商社の成功事例を紹介します。成功している地域商社の事例から、自社の発展の強い味方になってくれる地域商社にはどのような特徴があるのかを知るための参考にしてください。
なお、ここ数年の地域商社の動向と分類に関しては以下のコンテンツで紹介していますのでご参照ください。
2 地域の課題解決のためにビジネスの視点からアプローチ
1)地域商社の概要
社名:karch(カーチ、北海道上士幌町)
事業領域:プロデュース、地域内調整(観光事業が中心)
設立母体:上士幌町(50%超出資)、旅行業・観光事業者、ガス会社、新聞社、地域金融機関
2)町内の観光資源のマネタイズが使命
karchは、上士幌町が50%超を出資する第3セクターの地域商社です。大雪山国立公園の麓の十勝平野北端に位置する同町の主な産業は、5000人弱の人口に対して約4万7000頭の牛を飼育する酪農業と、「日本一広い公共牧場」であるナイタイ高原牧場や旧国鉄士幌線コンクリートアーチ橋梁群などの資源を活用した観光業です。
karchは2018年5月、強風で倒壊したナイタイ高原牧場レストハウスの再整備(ナイタイテラス、2019年6月オープン)と、町内への道の駅の開設(道の駅かみしほろ、2020年6月オープン)という、町の2つの大きな構想の運営主体の受け皿として設立されました。社名は、「上士幌の価値(カーチ)を見出す、伝える」ことを目指して名付けられました。現在のkarchの事業統括で、設立時は町役場の商工観光課の職員として設立に関わった石井竜也さんは、「2つの観光施設の運営だけでなく、町内の魅力的な観光資源を観光ビジネスという観点からマネタイズし、地域に経済効果をもたらすために、DMO(観光地域づくり法人)のような株式会社の組織が好ましいということになった」といいます。

3)コロナ禍の逆風に早期に対応
2つの観光施設は、オープン早々にコロナ禍の影響を受けました。特に道の駅は、コロナ禍によってオープン自体が1カ月遅れるなど、初年度から当初計画を下回っています。逆風下でのスタートでしたが、karchは早期に対策を打つことで、損害を最小限に食い止めました。
売り上げを補うのに最も貢献したのは、ふるさと納税業務でした。2021年度に全体の売上高の2割以上に当たる1億700万円の売り上げを叩き出し、飲食部門のマイナスを補いました。石井さんは、「主力商品の乳製品の知名度が高いこともあり、もともと町のふるさと納税のポータルサイトは、都市部の多くの方に見てもらっていました。そこで、町の担当者からのアドバイスをもらいながら、人気商品のラインアップを増やすなどの変更を行った」といいます。
道の駅については、オープンからこれまでの3年間、常にショップや品ぞろえの見直しを図っています。3つのテナントショップのうち、直営店舗だった1店も委託に切り替え、自社のリスクを軽減しました。その一方で、物販店での自社開発商品のラインアップについては、当初の10種類弱から約40種類へ増やしました。また、レストランのメニューをコース料理からプレートメニューに変更して価格帯を下げるとともに、開店時間を早めて車中泊の観光客向けのモーニングを開始。石井さんは、「コロナ禍で観光客の動向が変わっている。リスクマネジメントは行いつつ、やれることはできるだけ早く手を打っていかないと取り残されてしまう」と話します。
4)地域の課題を解決するための起点になれる商社
karchの強みは、過半を出資する町と連携しながら、地域の課題解決に向けた町全体の合意形成の起点になる「課題解決型の地域商社」であることです。町内で合意形成を図る際には、採算性や費用対効果などの視点に立った地域商社ならではの強みも発揮できるといいます。
その1つが、電力小売り事業への参画です。町の課題の1つに、牛などの家畜のふん尿処理の問題がありました。この課題を解決するため、町役場や地元農協が主体となって処理施設を設置する一方で、処理の際に発生するバイオガスで発電した電力を販売する役割を、karchが請け負うことにしたのです。「一定の要件であれば大手の電力会社より安く提供できている」(石井さん)といい、2019年2月の事業開始から順調に利用者を増やし、今では柱の事業の1つとして安定収益を生み出すようになっています。
また、2021年12月と2023年3月に町内で開催した、約300機のドローンが夜空に絵を描く「ドローンショー」でも、karchは存在感を示しました。1974年に日本で初めて熱気球大会を開催して以来、毎年バルーンフェスティバルを開催している上士幌町は、同じ「空のコンテンツ」であるドローンを、物流、観光、遭難救助などに活用する取り組みに力を入れています。初回は、まだ他地域での開催も少なかった時期でしたが、ドローンショーによる誘客と町内の経済効果や、町のPRで期待される関係人口の増加など、町の活性化につながるメリットを示すことで、開催のための合意形成につながったといいます。実際に、2021年の第1回開催時は9日間で約1万2000人を集め、メディアにも取り上げられるなどの成果につながったそうです。

石井さんは、「町と当社は運命共同体。町の発展がなければ当社の発展もなく、町が衰退すれば当社の経営も成り立たない。その一方で、当社の経営状態が悪くては町の発展に貢献できない。町の課題解決のために、どのように解決するのか、誰と解決するのかを決め、実行していくことが、町と当社の発展につながる」と話しています。
3 地元の強みを活かして地元産りんごの輸出を拡大
1)地域商社の概要
社名:ファーストインターナショナル(青森県八戸市)
事業領域:流通(海外、農水産物が中心)
設立母体:商工会議所青年部の有志
2)地元産のりんごを世界に!
ファーストインターナショナルは、地元の特産品であるりんごなど、青森県や岩手県北部の農水産品の輸出などを手掛ける、貿易業を中心とした地域商社です。
同社は1994年9月、地元の八戸商工会議所青年部の有志たちが出資して設立しました。設立のきっかけは、1994年に八戸港に国際コンテナ定期航路が開設されたことでした。常務取締役の桜庭雅紀さんは、「当時の商工会議所青年部のメンバーが、地元に商社がなければ地域として国際航路が開設されたメリットにつながりにくいと考え、当社が設立された。八戸港を利用してりんごなどの地元特産品を自分たちの手で海外に届けたいという気持ちもあった」といいます。
設立に際して、海外との貿易に関する知見や実務経験がなかったので、大手商社出身の経験者を招いてノウハウやコネクションを取り入れました。
こうして設立されたファーストインターナショナルですが、知名度も規模もないため、販路の開拓は簡単ではなかったといいます。
3)地元企業のニーズを聞く
こうした状況を打破したのは、地域密着ならではの、「ニーズを聞く力」でした。最初の取引となった玉ねぎの輸入は、地元の青果卸問屋から玉ねぎを輸入したいという相談を受け、独自に輸入ルートを開拓したことで実現しました。
桜庭さんは、「地元の企業と情報交換を頻繁に行うようにしている。地元にいる利点を活かして、企業1社1社に対して、細かい対応をするように心がけている。輸出先からのニーズや要望があれば、それらを正確に伝えるようにしている」といいます。
同社では海外にも社員を派遣し、ニーズを探るようにしています。例えば、主に地元で水揚げされたサバなどの輸出先である中国やベトナムには、社員が毎年訪問し(2020年から2022年はコロナ禍により海外出張が中断)、取引先から何か商品や取引に問題がないか、新しい引き合いがないかなどを聞き、地元の企業に伝えているそうです。

りんごの輸出の拡大は、台湾へのルートの開拓からでした。「台湾はフルーツの消費大国なので、輸出先として一番のターゲットに考えていた」(桜庭さん)といい、地道にコンタクトを続ける中で、取引先を広げていくことに成功しました。当時、青森県産りんごは関西地方など他県の商社が多く取り扱っていたそうですが、ファーストインターナショナルは「生産地と距離が近い利点を活かし、青森県産りんごの魅力を伝えた」(桜庭さん)ことで、取引先からの信頼を得ていったといいます。今では青森県産りんごの輸出が、ファーストインターナショナルの主力ビジネスになっています。

4)地元愛の共有が自社の強みに
こうしてファーストインターナショナルは、設立して約30年が経過した現在、海外の取引先が18カ国に広がっています。
桜庭さんは自社の強みについて、「距離的にも、心理的にも地元に近いこと。1社1社にきめ細かい対応ができるだけでなく、地元の企業の方々に、なるべく地元の企業と取引したいという気持ちを持ってもらっていることが強みになっている」と話します。取引先との「地元愛」という思いを共有することが、地域商社の存在を高めているといえそうです。
以上(2023年8月作成)
pj50527
画像:ipopba-Adobe Stock