雇用保険法等の一部を改正する法律(以下、「改正法」という)が令和4年3月30日に成立し、4月1日から施行されています(一部の施行日は別)。改正法については、雇用保険率の上昇や年度途中の料率変更が話題となりましたが、それ以外にもこれまでの法規制から大きく転換し、企業にとっても影響の大きい改正内容が含まれています。本稿では、従業員の生活や企業実務に関係する部分を中心に、改正法の内容を解説します。
(日本法令ビジネスガイドより)
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雇用保険法等の一部を改正する法律(以下、「改正法」という)が令和4年3月30日に成立し、4月1日から施行されています(一部の施行日は別)。改正法については、雇用保険率の上昇や年度途中の料率変更が話題となりましたが、それ以外にもこれまでの法規制から大きく転換し、企業にとっても影響の大きい改正内容が含まれています。本稿では、従業員の生活や企業実務に関係する部分を中心に、改正法の内容を解説します。
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雇用保険法等の一部を改正する法律(以下、「改正法」という)が令和4年3月30日に成立し、4月1日から施行されています(一部の施行日は別)。改正法については、雇用保険率の上昇や年度途中の料率変更が話題となりましたが、それ以外にもこれまでの法規制から大きく転換し、企業にとっても影響の大きい改正内容が含まれています。本稿では、従業員の生活や企業実務に関係する部分を中心に、改正法の内容を解説します。
令和4年度の雇用保険率は、令和4年4月1日から9月30日までの期間(令和4年度前期)と令和4年10月1日から令和5年3月31日までの期間(令和4年度後期)のそれぞれで上昇します(図表1)。年度途中の料率変更は平成14年度以来であり、当時は雇用情勢が想定以上に悪化したため急遽10月1日から引き上げた経緯があったのですが、年度当初から変更が予定されたのは初のケースとなります。雇用保険率の改正に伴い、毎月の賃金、賞与計算に影響が生じるため、具体的な実務上の留意点を解説します。
まず、利用している給与計算システムが年度途中での料率変更に対応しているか確認してください。クラウド型の給与計算システムを利用している場合は、一般的に、最新の雇用保険率の改正に自動的に対応されており、利用者側でアップデート等の作業をする必要はないはずですが、念のため利用しているソフトの公式ウェブサイトをご確認ください。
次に、PCにインストールするタイプの給与計算システムを利用している場合は、システムのアップデートを必ず行ってください。
また、従業員数が少なく、Excelで賃金計算を行っている場合は、参照している雇用保険率の箇所の変更が必要です。ただし、令和4年度前期の雇用保険率の変更は、事業主負担のみ(一般の事業の場合、6.5/1000)であり、令和4年度後期から事業主負担が再度上昇(一般の事業の場合:8.5/1000)し、労働者負担も変更(一般の事業の場合:5/1000)になります。過去のデータをコピー&ペーストする際には、変更箇所の違いがある点にご注意ください。また、令和4年4月以降、令和4年10月以降に支給する賞与についても雇用保険率が異なる点に併せてご注意ください。
(日本法令ビジネスガイドより)
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画像:photo-ac
旅費交通費とは、
役員や従業員(以下「社員等」)に支給する通勤費や社用車で必要となるガソリン代、出張時に必要となる宿泊費や日当などの費用
です。旅費交通費は事業を行う上で必要不可欠な費用であり、税務上も原則として損金になります。ただし、取引先を接待する際に使ったタクシー代は交際費とされたり、出張によって支給する日当が高額すぎる場合は給与にされたりするなど、独特な取り扱いをされることがあるので注意が必要です。
旅費交通費が損金になるかどうかのポイントは、
です。詳しく見ていきましょう。
取引先との商談のために必要な電車やタクシーなどの移動費用は、実費精算が原則です。その都度、精算するのは手間がかかるため、週1回や月2回などと精算日を決め、経費精算書を作成して精算する方法が多く取られます。経理担当者は、社員等から経費精算書と領収書の提出を受け、内容をチェックした上で精算を行い、経理処理をします。経費精算書には交通機関などの利用日や利用金額の他、交通手段や経路、目的、得意先の名称なども入れるとよいでしょう。
なお、目的が曖昧であったり、領収書の添付がなかったりする場合は、私的費用などとして交際費あるいは給与として取り扱われることがあるため注意しましょう。
出張では、交通費や宿泊費の他、現地で発生する通信費その他の雑費がかかります。これらの雑費についても実費精算が原則ですが、細かいものまで全て実費精算するのは手間です。出張期間が長い場合はなおさらです。そのため、実費精算に代えて、「日当」を支給することがあります。実費精算と異なり、日当は定額で支給するものなので、一定の要件を満たす「出張旅費規程」を作り、その規程に基づいて支給します。こうして支給された日当は損金になります。
気になるのは、出張旅費規程で満たす「一定要件」ですが、これは2つあります。
1.の要件のポイントは、出張する社員等の全てが日当の支給対象であることです。特定の社員等のみを支給対象にしたり、同じ役職なのに支給金額にばらつきがあったりすると、税務上の要件を満たさないことになるので注意しましょう。なお、役職によって必要となる雑費も異なりますので、役職に応じて支給金額に差をつけることは問題ありません。
2.の要件のポイントは、同業他社などと比較して金額が高額すぎないことです。もし、高額であると判断された場合は、給与として所得税の源泉徴収の対象とされます。特に役員に対するものについては損金にならないので注意しましょう。税務上の具体的な基準はありませんが、
の範囲で設定している会社が多いです。必要に応じて、税理士などの専門家に相談するようにしましょう。
通勤交通費は、原則として会社側では損金になり、社員等側においても所得税の対象にはなりません。ただし、一定の金額を超えて支給した場合、その超過した部分については社員等の所得として取り扱われ、所得税の源泉徴収の対象となります。
所得税の非課税とされる金額(範囲)は次の通りです。
支給する運賃相当の全額が非課税とされますが、1カ月当たり15万円が上限です。ここでいう運賃とは、「通勤のための運賃・時間・距離等の事情に照らして、最も経済的かつ合理的な経路及び方法で通勤した場合」をいいます。住宅事情に伴って新幹線通勤をする人もいると思いますが、新幹線通勤をせざるを得ない状況であれば、特急料金を含めて15万円までは非課税とされます。15万円を超える部分は非課税とはなりません。
マイカー通勤の場合は、実際の片道通勤距離に応じて下表の金額までが非課税です。
自宅から最寄り駅までマイカーを利用し、最寄り駅から勤務先までは交通機関を利用する場合、上記の1.と2.の合計金額が非課税とされますが、上限は15万円です。
単身赴任者が出張した場合、その出張先が自宅に近ければ自宅に帰ることもあるでしょう。この場合にも、出張の目的や行路から見て、あくまでも出張が主な目的であり、かつ業務を行う上で必要な出張である限り、往復の旅費交通費は損金になり、出張者側においても所得税の源泉徴収の対象とはなりません。
反対に、帰宅すること自体が主な目的と判断された場合は給与として取り扱われ、所得税の源泉徴収の対象となります。特に出張者が役員である場合、旅費交通費として処理していても、税務上は役員給与として損金にならないので注意しましょう。
旅費交通費として認められる場合と給与として取り扱われる場合の例は下記の通りです。
自社商品の展示会に得意先を招待し、その交通費や宿泊費を負担した場合の取り扱いです。これは、より多くの人に自社商品を知ってもらい、売上の増加・促進を図るために必要な費用であるため、旅費交通費として損金とすることが認められます。一方、展示会とは名ばかりで、得意先を招待して宴会を行うことを主目的としている場合は、交際費として取り扱われます。
従って、展示会を行う趣旨や期間その他が記載されている計画書や企画書などを証憑書類とともに保管しておき、税務調査で質問された場合においても、十分な説明ができるようにしておきましょう。
コロナ禍において、通勤手当を廃止した会社が多くあります。通勤手当を実費精算へ切り換えた場合も税務上の取り扱いは変わらず、旅費交通費として損金となります。なお、実費精算の場合は従業員ごとに出勤日や出勤経路の確認など詳細の確認を怠らないようにしましょう。
以上(2022年5月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)
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皆さんは何か、若い頃に「青春」をささげたものはありますか? スポーツ、研究、ボランティア、アルバイト……何か1つは熱中したものがあるはずです。もし「朝から暑苦しいな……」だとか「そんな昔のことは忘れた……」なんてドライな感想を持った人がいたら、そんな人にこそぜひ聞いてほしい話があります。今日お話しするのは、今から60年前の1962年に完成した、戦後初の国産旅客機「YS-11」のエピソードです。
この話の前提になるのは、当時の日本にとって「航空機産業」というのは、非常にハードルが高い分野だったということです。第二次世界大戦で敗戦国となった日本は、1945年以降、航空機の製造や開発など、航空に関するあらゆる活動を禁止されます。1952年に連合国による統治が終わったことで、これらの禁止は解かれるのですが、7年間のブランクによって、日本の航空機は世界に大きく後れを取ってしまったのです。
そんな状況を打開しようと立ち上がったのが、今でいう経済産業省の役人だった赤澤璋一(あかざわしょういち)氏でした。赤澤氏は「日本の空を日本の翼で」を合言葉に、民間機体メーカーの精鋭たちをかき集め、国産旅客機の開発に取り組みます。ジブリ映画の「風立ちぬ」で有名な航空技術者の堀越二郎(ほりこしじろう)氏もメンバーにいたそうです。そんな精鋭たちによって動き出したYS-11のプロジェクトですが、製造は難航しました。
旅客機は、何十もの座席を設置した上で乗り心地も確保しなければならないのに、当時の技術力では機体を安定させることさえ難しく、航空実験は何度も失敗しました。それでも開発チームは最後まで音を上げずに試行錯誤を続け、ついにYS-11は旅客機としての認可をクリアします。
なぜ、彼らは諦めなかったのか。理由はさまざまありますが、私が大きいと思う理由は「メンバーの多くが若い頃、航空機に青春をささげていたから」です。開発チームのメンバーには、「零戦(ぜろせん)」「飛燕(ひえん)」など、戦前戦中に日本で使用された航空機の開発に携わった人たちが多くいました。ただ、先ほどお話しした通り、敗戦で航空機に関する活動が禁止され、彼らはその仕事を続けることができなくなってしまいました。国産旅客機の開発は、彼らにとって失った青春をもう一度取り戻すための場所であり、その情熱がYS-11を完成へと押し上げたのです。
皆さんにもし、若い頃に青春をささげたけれど、今は遠ざかっているものがあれば、折を見て再び挑戦してみてはいかがでしょうか。大きな活力を得られるかもしれませんし、今の仕事につながる「気付き」を与えてくれるかもしれません。私自身も、皆さんが「もう一度の青春」に挑戦することで生まれる爆発力を見てみたいと思います。仮に爆発力までいかなくても、新たな人脈づくりや、社内外の人との会話の際の「話題づくり」に、大いに役立つはずです。
以上(2022年6月)
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画像:Mariko Mitsuda
皆さんは、上司や先輩から「プロとしての自覚を持て」とか「プロ意識を持て」と言われることがあるでしょう。プロとは、もちろんプロフェッショナルの略語であり、日本語でいうと「専門家」となります。また、プロ意識とは専門家としての自負心を持つということになるでしょう。しかしプロとは何なのか、プロとしての自覚を持つとはどういうことなのか、というのはなかなか分かりにくいものです。プロなんて、野球選手・音楽家・職人・研究者などの世界の言葉であって、自分たちには関係ないと思う人も多いでしょう。
ここで、プロとアマチュアの違いは何か考えてみましょう。両者の区別は、お金を基準に考えれば分かりやすいでしょう。それを行うことでお金がもらえる人はプロ、もらえない人はアマチュアです。そういう意味では皆さんは私も含め、この業界で働くことによってお金をもらっているわけですからプロであるということになります。実際、我が社のお客様は私たちのことを業界のプロとして見ています。ですから私たちはこの業種のプロであると自覚することはとても大切です。
さあ、皆さんはプロとして自覚を持ちました。プロである以上、もらうお金以上の仕事ができるようになりましょう。言われたことを言われた通りにできるだけでは十分ではありません。
プロの自覚があれば、言われたことはもちろん、それ以上の結果を残す、成果を挙げることが求められているのです。
例えば、何かサービスを受けたとき、お金を払ってサービスを受け、「こんなものかな」と思ったときと、「値段以上のもので、とても満足」と思ったときを考えればすぐに分かります。「もう一度このサービスを受けたい」と思うのは後者です。
もちろん、私だって最初から言われたこと以上の結果を残せたわけではありません。まずは、与えられた業務をこなし、組織の中での役割を実行し、その仕事にやりがいを感じられるようになることから始めました。それを、自分にしかできない仕事へ高めていくために、努力や創意工夫を重ねていったのです。
こうして積み重なっていったものが、いつしか周囲から実力として評価され、私の自信や誇りとなりました。周囲の評価や自らの自信はさらなる努力や創意工夫の源泉となりました。
プロは最初からプロであったのではなく、不断の努力と創意工夫、そして情熱で真のプロになっていくのです。今から「私はプロ」の自覚を持って業務に励んでください。
以上(2022年6月)
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画像:Mariko Mitsuda
中古車の流通経路のイメージは次の通りです。
中古車販売業の主なプレーヤーは次の通りです。
各自動車メーカーと特約店契約を結び、そのメーカーで展示用や試乗用として使用されていた車を仕入れたり、一般ユーザーから下取り(ユーザーが新しい車に乗り換えるために、今乗っている車をディーラーに買い取ってもらうこと)したりした車を販売する店舗です。
一般ユーザーからの買い取りや、オートオークションなどの業者間取引を通じて中古車を仕入れて販売する店舗です。
全国展開するチェーン店から、地域密着型で単独経営を行う販売店までさまざまな規模の店舗があります。また、特定の車種の取り扱いに特化した店舗や、高級車から軽自動車まで幅広く取り扱う店舗など、商品展開もいろいろです。
一般ユーザーからの買い取りを専業としている店舗です。仕入れた中古車はオークションなどを通じて、中古車販売店に転売する流れとなっています。
なお、企業によっては一般ユーザーからの買い取り、業者間取引だけでなく、一般ユーザーへの直接販売に注力するところもあります。
この他にも、自動車整備工場やガソリンスタンドが事業多角化の一環として中古車を取り扱ったり、実店舗を持たず、ネットオークション形式の販売や個人売買の仲介を手掛けたりするケースもあります。
自動車検査登録情報協会「自動車保有台数推移表」によると、2021年の自動車保有台数は約8208万台で、そのうち乗用車が約6192万台となっています。乗用車の多くはガソリンエンジン車ですが、ハイブリッド車(プラグインハイブリッド車を含む)が約1001万台、電気自動車が約12万台と、年々普及が進んでいます。
また、同協会が公表している「自動車の平均使用年数(軽自動車を除く)」によると、乗用車の平均使用年数は13.87年(注)となっています。
(注)1年前の自動車保有台数と比較し、減少した車両を1年間に抹消された車両とみなして、国内で新規(新車)登録されてから抹消登録するまでの平均年数を算出しています。ただし、減少台数には一時抹消(一時的に登録を抹消し、公道を走れなくする手続き)も含まれるため、自動車が完全にスクラップされるまでの期間とは若干異なります。
中古車販売業は日本標準産業分類上、「中古自動車小売業」に位置付けられます。直近の総務省「平成28年経済センサス活動調査」によると、2016年時点で中古自動車小売業の事業所数は2万1556です。
日本自動車販売協会連合会「中古車年別登録台数」によると、中古車登録台数の推移は次の通りです。
2021年度の普通乗用車と小型乗用車の合計台数は前年度比5.8%減の316万9492台となり、2019年度以降の前年度割れとなりました。この背景には、中古車需要が高まる一方で、半導体や部品不足により新車の販売が停滞し、中古車流通が減ったことが挙げられます。
全国軽自動車協会連合会「軽四輪車 中古車販売台数の年別推移」によると、軽四輪車のうち、軽乗用車の中古車販売台数の年別推移は次の通りです。
リクルート「中古車購入実態調査2021」によると、中古車の購入台数、市場規模(推計値)は次の通りです。
中古車市場規模(推計)は2020年に一度前年を下回りましたが、2021年には回復し、直近5年間の推移でも最大の数値となっています。また、若者の車離れといわれて久しい状況ですが、年齢別に見ると、中古車市場で購入台数が最も多いのは20歳代、次いで30歳代となっています。
日本中古車輸出業協同組合「中古車輸出台数」によると、中古車輸出の仕向け国上位10カ国の推移は次の通りです。
中古車の海外への輸出先は5カ年連続でロシア、アラブ首長国連邦、ニュージーランドが上位3カ国を占めており、ロシアは5年連続で輸出台数が増加しています。一方、図表には掲載されていませんが、2022年3月時点ではウクライナ侵攻に伴う経済制裁が影響し、ロシアへの輸出が滞ったことで、アラブ首長国連邦への輸出が首位となっています。
また、タイが2020年に入り仕向け国の上位10カ国に入っていますが、背景として、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、公共交通機関を避けて自動車を選ぶ傾向にあることや、経済的事情で新車の購入が難しく、中古車購入の需要が高まっていることが挙げられます。
各企業の決算短信資料によると、中古自動車小売業を手掛ける主な企業(大手5社)の売上高ランキングは次の通りです。
各企業とも、売上高が増加傾向にあります。各企業の動向を見ていきましょう。
IDOMは、中古車買い取り、販売店の「ガリバー」をはじめ、個人間売買の仲介を行う「ガリバーフリマ」や、中古車の査定をスマートフォンアプリで行う「ガリバーオート」などを手掛けています。2022年2月期の国内直営店における中古車小売台数が14万119台となり、創業以来過去最高となりました。
ネクステージは、地域密着型として中古車の販売だけでなく、車検、板金修理、自動車保険までトータルで手掛けています。スバル車だけを取り扱う専門店や輸入車専門店、買取専門店などを幅広く出店したことで、売上高の増加につなげています。
ケーユーホールディングスは、中古車販売店の「ケーユー」を手掛けつつ、もう1つの事業である輸入車ディーラーのほうで売上高を伸ばしています。2022年3月期の国産車販売事業の売上高が404億8800万円に対して、輸入車ディーラー事業の売上高はおよそ2倍の906億3100万円となっています。
ユー・エス・エスは、中古車オークションや中古自動車買取専門店「ラビット」を手掛けています。オートオークションでの中古車取り扱い台数の増加、成約率の上昇が売上高の増加につながったとしています。
グッドスピードは、SUVや4WDの取り扱いに強みを持ち、店舗にサービスファクトリーを併設してサポートを行っています。東海地方以外へのエリア拡大による専門店の出店を進めただけでなく、整備・板金・ガソリンスタンド、レンタカーサービス、保険代理店サービスを強化し、ワンストップでサービスを提供できる体制を整えることによって、売上高の増加につなげています。
ここではPEST分析を用いて、中古車販売業を取り巻く外部環境と成長要因について整理します。
中古車販売市場は新車販売の状況に大きく影響されます。新型コロナウイルスの感染拡大や、半導体の供給不足による自動車生産の停滞によって中古車も品薄になり、販売価格が上昇傾向にあります。
中古車の取引価格は年式、走行距離、整備状況や不具合の有無、オートオークションでの相場などを基に販売事業者が決めていますが、一般的に内燃機関(ガソリンやディーゼルエンジン)搭載の車両は、走行距離や整備、修理の履歴で価格の評価が可能とされている一方で、バッテリーを搭載する電気自動車は、バッテリーの性能を適正に評価することが難しく、中古車市場では取引価格が下がる、ユーザーからの人気が低いといわれています。
このことから、日本中古自動車販売協会連合会では、中古自動車のカーボンニュートラルを実現するために、補助金・減免税制を新車、中古車問わずに実施すること、電気自動車のバッテリーを適正に評価するための制度づくりを政府に要望しています。
中古車販売に関わるサービスでは、新型コロナウイルスの感染防止対策や業務効率化の観点から、これまでの対面による商談を避けて、オンライン商談に取り組む企業や、ウェブサイト上で車を購入する際のオートローンの手続きを行えるサービスなど、中古車販売店向けの業務支援ビジネスも登場しています(詳細は次章で後述)。
求人情報サイトや住宅リフォームサイトなどのライフサービスプラットフォーム事業を手掛ける同社では、中古車買取店や輸出事業社特化型の買取一括査定メディア「セルトレ」を運営しています。一般的に買い取りが難しいとされている水没車、事故車、走行距離が10万キロ以上の車でも、査定・買い取りが可能としています。
中古車の買い取りを依頼したいユーザーがウェブサイト上で車種や走行距離などの情報を入力すると、「国内小売向け」「海外輸出向け」「廃車」の区分で自動判定を行い、買い取りが可能な中古車の買取専門店や輸出事業者を紹介する仕組みとなっています。
欧州の中古車をメインに取り扱う同社では、取り扱う車に「チープアップ」という独自のカスタマイズをして提案しています。日本に輸入される欧州車は高級なイメージがありますが、例えば、アルミホイールをあえて質素なスチールホイールに取り換える、キャンプ用品などを積むためのキャリアを取り付ける、ステッカーを車体に貼るなどのカスタマイズを施すことで、より気軽に高級車を楽しんでもらうことをコンセプトにしています。
クルマ情報メディア「グーネット」の運営などを手掛ける同社では、専用アプリ等のインストールが不要のオンライン商談ツール「グーネットLive」を提供しています。ユーザーが「グーネット」に掲載している自動車販売会社から発行されるURLを開きパスコードを入力することで、音声とビデオ通話機能でクルマのオンライン商談が可能となります。
また、「グーネット」を利用する中古車販売会社の経営支援システム「MOTOR GATE(モーターゲート)」では、掲載する中古車の画像から、車種情報登録などをAIが自動で判別してデータ化する「MOTOR GATE AI」というサービスも提供しています。
輸入中古車の販売・買い取りを手掛ける同社では、リモート査定や動画による販売車の紹介に取り組んでいます。リモート査定は同社ウェブサイトの専用フォームへの入力やラインによる申し込みを受け付けており、最短10分で査定ができるとしています。
販売車を紹介するYouTube動画では、内外装の状態チェックをはじめ、スタッフが試乗して公道を走る様子やレビューも収めているため、顧客が気になった車の状態を詳細に知ることができます。
中古車情報サイト「カーセンサー」などを手掛ける同社では、アルファ・ゴリラ(兵庫県神戸市)が開発し、リクルートが中古車販売店向けに提供している「インスタントLIVE」(販売店と顧客がオンライン相談をしたり、商談情報を管理したりするシステム)と連携した「非対面WEBローンシステム」を提供しています。
自動車を購入する際のオートローンの審査申し込み、審査結果確認、契約締結までをオンラインでできるので、顧客の契約書記入・なつ印のための来店が不要になるだけでなく、店舗側の業務効率化にもつながります。
以上(2022年6月)
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特許権や意匠権など、新規で有用性の高いアイデアやデザインが知的財産権として保護されるのは、これまでにも説明してきた通りです。また、アイデアやデザインなどだけでなく、権利化していない技術上・営業上のノウハウなども知的財産であり、あらゆる無形資産が保護の対象となります。
今回は、社内で保有するさまざまな知的財産を活用することで、新ビジネスを生み出した製造業の事例を紹介します。
しのはらプレスサービスは、プレス加工機械の点検・保守などを行う会社です。プレス加工機械産業においては、従来、プレス加工機械メーカー(大手数社)と修理業者(全国500以上の小企業)の2種類だけで構成されていました。メーカーが新式装置を開発・販売し、修理業者が旧式装置を応急的に直すという構造が定着していたのです。しのはらプレスサービスの創業者である篠原氏も、メーカー側の従業員としてその中にいたそうです。
篠原氏は、プレス加工機械の生産性を向上するためには、故障した機械を修理する、いわば「マイナスからのスタート」よりも、壊れる前のメンテナンスの段階から関わる「マイナスではない状態でのスタート」のほうが優れていると考えました。そこで、
プレス加工機械の「メンテナンス」ビジネスに着目し、新式装置への交換と旧式装置の修理だけではない「第三の市場」を開拓すること
を目指しました。
従来の修理では、職人の勘と経験に頼らざるを得ない部分が多かった一方で、しのはらプレスサービスは、そのバックボーンとなる次の情報収集に取り組みました。
これらの情報をセンサーで収集して数値を管理することにより、故障前に不具合の兆候を察知して、予防保全を実現する「メンテナンス」ビジネスに行き着いたとのことです。
これによって、職人がいなくても、センサーによって収集された大量のデータから、高い精度で不具合の兆候を察知し、故障前に対応できるようになりました。実際に、故障後の対処では修理まで2週間以上要していたところ、このサービスであれば、故障前の不具合対応により、5日程度でできるようになったそうです。
しのはらプレスサービスは、この機械設備の点検情報システムについて2005年に特許出願しました。特許庁は特許登録を認めませんでしたが、しのはらプレスサービスは、従来にはなかった「第三の市場」を開拓して業界にも徐々に受け入れられ、ビジネスのバリエーションを拡大し続けています。
その要となったのは、収集された「データ」や、そのデータから、故障原因を予測することを可能とするメンテナンスの「ノウハウ」のシステム化といった、知的財産を活用する戦略があったといえるでしょう。
ナベルは、蛇腹を専門に取り扱うメーカーです。蛇腹とは、アコーディオンのように伸縮自在な部品で、従来はカメラのレンズ取り付け部とカメラ本体とをつなぐ遮光部材として取引されてきました。やがてカメラはデジタル化し、カメラ用途の蛇腹の需要は縮小していきました。
そこでナベルは、
蛇腹を「必要なときに伸び、不要なときに縮んで、何かを守るもの」と広く捉え直し、CT・MRI装置の昇降テーブル用の蛇腹フードなど、産業機械向けに応用分野を拡大させた蛇腹製品を製作
しました。
さらにナベルは、蛇腹の概念を「機能的なカバー」へと進化させて、レーザー加工機用蛇腹、測定機器の駆動部カバー、飛散する油や粉末でロボットが汚れるのを防ぐロボットのアームカバーなどを製作し、幅広い分野に進出しました。また、工作機械ロボットのカバーは交換需要が広く見込めることから、蛇腹の整備サービスもスタートさせ、「製造業のサービス化」にも乗り出しました。
この他、東日本大震災をきっかけに、災害時のスマートフォンの充電や小型家電の電源としての利用を想定し、三重大学との共同で、充電式バッテリーとともに、コンパクトに折り畳んで持ち運べるソーラーパネルを開発しました。
このように、一見すると縮小傾向にあると思われる市場でも、知的財産を見直し、自社が提供しようとする価値を再定義することで、新たな市場を切り開いていくことが可能な場合があります。
そして、ナベルのこのような挑戦を可能にした要素の一つに、
適切な特許権の取得と、これによる競争優位性の確保・維持
があります。「カメラの蛇腹」の技術を他の分野に応用するとき、そこには当然、工夫や発明が発生します。このような応用された技術を適切に権利化することで、それぞれの分野における優位性を確保し、かつ、これを固定化することに成功しているのです。
5Gの浸透によって、一般市民の生活だけでなく、あらゆる産業が大きく進化できる可能性があるといわれています。熟練者の勘と経験に頼る作業が多かった農業においても、ロボットや、情報通信技術(ICT)とセンシング(センサーによる計測)で得られる大規模データを活用する「スマート農業」が注目されています。スマート農業が実現すれば、農機の自動化・無人化とデータを活用した精密農業が軸となり、農家の負担軽減、新規就農者の確保、栽培技術力の継承などが実現します。
国内大手の農機メーカーであるクボタとヤンマーは、早くからスマート農業への取り組みを開始しました。GPSアンテナと通信端末を用いたシステムを構築して、各圃場の状況、施肥作業の状況、刈り取りと乾燥作業のバランス、農機の稼働状況、最適な収穫のタイミングなどに関する情報の提供、日報の簡易作成など、これまでの農家が抱えていたさまざまな問題を解消しています。
これらは、単に農業機械を高度化したということではなく、
自社の役割を、「豊かで安定的な食料の生産、安心な水の供給と再生、快適な生活環境の創造に貢献し、地球と人の未来を支え続け」る(クボタ)などの内容に再定義したこと
から始まりました。クボタとヤンマーは、「農業」「食料の供給」「環境」といった切り口から、技術の力で社会課題を解決しようとしているのです。
そして、
言うまでもなく独自に開発した関連技術については特許出願するなどして権利化していますし、「ノウハウ」や「データ」については営業秘密化
しています。そうすることで、自社の競争優位の確立と維持を図り、付加価値の高い事業を展開しようとしているのです。これらは、まさに知的財産を活用して事業の価値を増進させた事例といえるでしょう。
以上のように、プレス加工機械、カメラ用蛇腹、農業といった、いわば伝統的ともいえる産業分野においてさえ、新しい情報技術との融合により、これまでには想像もできなかったようなビジネスの形が日々生み出されています。
これらの企業は、その新しいビジネスや価値が持つ競争優位性を、知的財産権や営業秘密、ブランドイメージなどを通して確立、維持しています。このような企業の取り組みは、変化の時代に新しい挑戦を行おうとするあらゆる企業にとって、とても参考になるといえます。
以上(2022年5月)
(執筆 明倫国際法律事務所 弁護士 田中雅敏)
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画像:areebarbar-Adobe Stock
M&Aにおいて、上場会社等を中心に税務デューディリジェンス(以下「税務DD」といいます)は頻繁に実施されます。しかし、中小企業同士のM&Aにおいて税務DDを実施するケースは極めて少なく、税務DDというものを知らない中小企業の経営者も多くいらっしゃると思います。
DDの分野は幾つかありますが、この記事では「税務DD」を取り上げます。税務DDの目的は、
将来の税務調査における税務上のリスクを把握する
ことです。例えば買い手は、税務DDによって、買収後に対象会社に税務調査が入り、多額の追徴課税(追加の課税や延滞税・重加算税などの罰金課税)の指摘を受ける事態を事前に把握することができます。
なお、税務DDの目的として、税務上のリスクの把握以外にも、買収スキームの検討などがありますが、この記事では、税務上のリスクの把握に絞って説明します。
中小企業同士、特に小規模なオーナー企業同士のM&Aにおいては、税務DDを実施しているケースはほとんどありませんが、大切なのは、どういったM&Aにおいて税務DDが必要となるのかです。税務DDを実施したほうがよいM&Aとして、次の3つのケースがあります。
M&Aのスキームには、株式譲渡、事業譲渡、合併、会社分割などがあります。中小企業同士のM&Aでは、株式譲渡を選択することが多いです。株式譲渡とは、
売り手が保有する対象会社の株式を買い手に譲渡する方法(買い手は対象会社の株式を取得する方法)
です。
株式譲渡の場合、株式の取得を通じて会社自体を買収することになるので、
対象会社の税務上のリスクは対象会社が抱えたままであり、リスクを切り離すことはできない
という特徴があります。そのため、税務DDの実施を検討します。
なお、事業譲渡の場合、税務上のリスクを切り離すことが可能です。事業譲渡とは、
対象会社が運営している事業の一部を、買い手が買収する方法
です。会社自体を買収するわけではないので、税務上のリスクは承継されず、税務DDは実施しないことが多いです。当初は株式譲渡を考えていたものの、税務DDを実施した結果、リスクが高いと判断した場合、売り手と交渉して事業譲渡に変更することもあります。
対象会社が、次に挙げるような特殊な取引などを行っている場合、税務DDの実施を検討します。
上記の場合、多額の追徴課税が発生するなどの恐れがあります。また、一般的な取引ではないので、税務処理を間違えていることもあります。
それほど多くありませんが、対象会社に顧問税理士がいない場合や、長年税務調査を受けていない場合には、税務DDの実施を検討します。一般的に、法人に対する税務調査は3~5年ごとに実施されます。長年税務調査を受けていない場合、近い将来、税務調査が実施されて、税務上のリスクが顕在化する可能性は、他のリスク(法務、労務など)よりも高いと考えられます。
税務DDでは、主に次の3つのことが実施されます。
税務DDを実施する場合、仲介会社やフィナンシャル・アドバイザー(FA)を通じて、対象会社に税務DDの目的や理由を丁寧に説明します。何も説明がない、もしくは簡単な説明だけで税務DDを実施すると、対象会社としては、まるで税務調査を受けているような不愉快な気分となり、M&Aプロセスがスムーズに進まず、場合によっては中止になることもあります。
税務DDを担当するのは、税理士や税理士法人であり、買い手の専属アドバイザーとして実施します。買い手の顧問税理士が担当する場合もありますが、通常は、税務DDの経験豊富な税理士や税理士法人が実施します。税務DDは、単に対象会社の税務申告書の計算をチェックするのではなく、計算の前提となるさまざまな取引の内容、背景、理由、根拠などを調査し、それらは税務上問題がないのか、問題がある場合はどの程度のリスクなのかなどを総合的に検討するためです。また、M&Aに関する豊富な知識も必要です。
通常、税務DDの期間は2~3週間です。この期間内に、買い手と対象会社との間でやり取りし、情報開示が行われます。
インタビューは、経営者の他、必要に応じて経理等の実務担当者にも行うことがあります。ただ、M&Aは公にせずに実行されることが少なくないので、通常、情報共有の範囲は限定されます。実務担当者にもインタビューをする場合は、情報漏洩に十分留意しましょう。
税務DDでは、対象会社にある税務上の潜在的なリスクを調査し、その結果に応じて次のように対応を検討します。
では、具体的に税務DDの主な調査対象事項・目的を確認していきましょう。なお、税務の時効は原則5年であることや、税務調査は過去3年を対象とすることが多いことから、調査対象年は過去3~5年で実施することが一般的です。
税務DDの実施に当たって、よく見られる問題点を以降で紹介します。
対象会社が高級車、クルーザー、高級マンション、別荘などを購入している場合や、多額の接待交際費や旅費交通費を計上している場合があります。オーナー会社においては、個人的な費用と会社の費用を混同しやすい環境にあるため、資産の利用目的や支出した理由によっては、オーナーの個人的経費とみなされ、追徴課税のリスクがあります。
相続対策の一環で、売り手のオーナーが資産管理会社を保有している場合があります。対象会社が資産管理会社に不動産を売却していたり、資産管理会社から不動産を借りていたりする場合、その取引価格はオーナーの一存で決めることができます。そのため、一般的な水準と比較して著しく異なる場合が多くあります。このような場合、対象会社に対して追徴課税のリスクがあります。
また、対象会社が不動産を保有している場合、その不動産をオーナーが引き続き保有するために、M&Aプロセスの直前に不動産とM&A対象事業を分けることがよくあります。仮に対象会社が事前にオーナーに不動産を売却する場合、その売却価格が妥当かどうか、売却により対象会社で、どの程度の売却益および税金が発生するのかを調査する必要があります。多額の税金が発生すると見込まれる場合、それを考慮してM&Aの買収価格を検討します。
消費税の計算では、原則として、支払った消費税は預かった消費税から控除して納税額を算出します。さらに輸入に関しては、手続きが複雑です。対象会社が海外から物品を輸入している場合、輸入時に消費税を支払います。支払った消費税を証明するために、対象会社宛ての輸入許可書が必要となります。しかし、輸入代行業者を通じて輸入している場合、輸入許可書が対象会社宛てではなく、輸入代行業者宛てとなっていることがあり、それを知らずに消費税申告書を作成している場合(本来は控除できない支払った消費税を、誤って控除してしまっているケース)があります。
対象会社が、海外の会社や海外在住の個人に対して何らかの支払いをしている場合、一定の支払いについては、その支払いの際に源泉所得税を徴収して納付する義務があります。源泉所得税の納税義務があることを知らずに取引を続けている場合がよくあります。
過去に対象会社がM&Aを行っていた場合には要注意です。他の調査項目と比較して、金額面で税務上のリスクが高い可能性があります。そのM&Aが成立した際に仲介会社に手数料を支払うことが一般的ですが、株式譲渡スキームの場合、税務上は、その仲介手数料は経費として認められず、株式の取得価額に含めます。支払手数料等の費用として処理しているケースがよくあります。
以上(2022年5月)
(執筆 アクシアパートナーズ税理士法人 税理士 大塚行親)
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画像:Bits and Splits-Adobe Stock
小売業などでは、日々の売り上げにバラつきがあることが経営上の大きな課題です。これを解決する手法として注目されるのが「サブスクリプション」(以下「サブスク」)です。サブスクとは、
販売数量に関係なく、顧客と継続的に契約する方式の販売手法であり、簡単にいうと「継続購入」
です。サブスクを取り入れたサブスクビジネスには、新聞紙の定期購読などがあります。近年はサービス領域が広がっています。
サブスクビジネスのメリットには、
などがありますが、これらを享受するために、
新規顧客の獲得、解約率(チャーンレート)の低下、顧客単価の引き上げ
が必須となります。この記事では、サブスクビジネスで成功するためのポイントをご紹介します。
サブスクビジネスの最重要指標は、
LTV (Life Time Value):顧客生涯価値
です。LTVは、
顧客単価×購入頻度×継続購入期間
で求められます。ただ、サブスクビジネスでは購入頻度が一定なので、この要素は除外します。このLTVに顧客数を掛け合わせた数字が年間定期収益です。このため、サブスクビジネスで年間定期収益を増やすためには、冒頭で紹介したように次の3つの取り組みが大切になります。
「試しに利用してみよう」と思ってもらうために、一定期間の無料・お試しキャンペーンを展開する例があります。例えば、Amazon Primeは「お試し期間」として、30日間、無料で利用できます。気に入らない場合は期間内に解約すれば料金はかからないため、契約のハードルは低くなります。無料にするのが厳しい場合は、初回半額や最初の1カ月間は40%OFFといった特典が考えられます。
契約のハードルを下げるために、少ない項目で会員登録できるようにするなど、手続きを簡素化することが大切です。購入理由などたくさんのことを聞きたいところではありますが、手続き中の離脱のリスクが高まりますので、設問は2~3問程度にとどめる、回答方法は選択式だけにするなどの工夫をします。
ポイントや割引などの紹介特典を用意して、既存会員に家族や友人・知人を紹介してもらいます。紹介する側・される側の双方が得をするような設計が大切です。
顧客の行動履歴やニーズを分析します。注目すべきデータは、ウェブページへのアクセス数や滞在時間、商品・サービスの契約数、顧客ごとの購入金額、契約継続期間などです。これらを性別や年代といった属性ごとに分析することで、深掘りするのも有効です。データを分析していくと、休眠状態になりやすい顧客や、解約しやすい顧客の特徴も明らかになってきます。
データ分析の結果を活かして、顧客に合った商品・サービスを提供します。例えば、商品Aの利用者は商品Bも利用する傾向がある場合、商品Aだけの利用者に商品Bを提案するなどします。
サブスクビジネスの前提は継続的な契約ですが、逆に短期の解約や、利用の一時休止を認めることで、顧客満足度の向上につなげる例もあります。例えば、チョコレートのゴディバが毎月提供するスイーツの定額購入では、1カ月の配送を中止する「スキップ」ができます。また、Netflixではしばらく利用していない休眠会員に対して、契約の継続確認を促し、反応がなければ解約をする取り組みを導入しました。
複数のサービスプランや料金プランを設定すれば、顧客のニーズを満たすことができます。また、1つ上の料金プランに変更を促す「アップセル」も見込めます。例えば、3つの料金プランを設定し、「松竹梅の法則」が効力を発揮した場合、多くの顧客を真ん中の料金のプランに誘導することもできます。ただし、あまり複雑にすると顧客管理が大変になります。
いわゆる「ロイヤルティー・プログラム」を実施します。購入額の多さや、友人の紹介数などによってポイントを付与したり、顧客をランク分けしたりします。顧客をランク分けする場合、上位にランクされた顧客に対して、価格面や特典などで優遇することは、優良顧客を育成することにつながります。
通常、サブスクビジネスでは客単価は低く設定されるので、一定の顧客数を確保しなければ収益はプラスになりません。資金回収までの期間、利益が出せるようになるタイミングを試算しておきましょう。また、収益化するまで資金の手当てについても検討しておく必要があります。
既存サービスをサブスクビジネスに移行する場合、既存顧客はサブスクの単価となり、一時的に収益が減少する恐れがあります。このような場合、ヘビーユーザーだけにサブスクを提案するといった方法も考えられます。
顧客はサブスクを継続的な「固定費」と認識します。その固定費が多額になると大きな負担となるため、「動画や飲食などのサブスクの負担を毎月5000円以内に抑える」といったように、上限を設けることが考えられます。この場合、動画と飲食という異業種の競合が生じます。
サブスクビジネスは増えており、契約までのハードルも比較的低いため、顧客は気軽に別のサービスに乗り換えます。顧客離れを防止するには、競合の観察や自社データの利活用により、サービス内容を継続的に改善していくことが必要です。
以上(2022年5月)
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画像:unsplash
この記事は、「サブスクリプション(以下「サブスク」)ビジネスがどのようなものか、だいたい分かっているけど、具体的なイメージが湧かない」という方にお勧めです。具体的なサブスクビジネスの事例を紹介していますので、ビジネスのヒントが見つかると思います。
なお、サブスクビジネスが通常の物販と何が違うのか、どのようにすれば成功するのかについてお知りになりたい方は、次の記事をご覧ください。
近年、サブスクビジネスの領域はさまざまに広がっています。まずは、代表的なサブスクビジネスを、「縦軸:デジタルまたは非デジタル」と「横軸:提案型または定額制重視型」に分類して紹介します。
デジタルコンテンツを提供するビジネスの中で、顧客に合ったコンテンツを提案するレコメンド機能を備えたサービスです。サイト・アプリ内での顧客の行動をデータで分析し、最適な商品・サービスを提案します。
Amazonの即日配送やビデオ試聴を提供している、定額制の有料会員プログラムです。Amazonはデータ分析にも力を入れてきた背景があり、顧客に関するページビューやCV(コンバージョン)、年齢・性別といったデモグラフィックデータなどを分析し、パーソナライズでレコメンデーションをする機能を備えています。
世界最大級の映像配信サービスです。3種類の月額プランがあり、同時に視聴可能な画面数やダウンロードに使えるデバイスの数に違いがあります。パーソナライズされたレコメンド機能も特徴で、視聴履歴、時間帯、時間の長さ、ユーザーの趣味・嗜好、ジャンル・カテゴリーなどさまざまな切り口で分析しています。
デジタルマガジン・コミックの読み放題、ソフトウエアの使い放題などの定額サービスを提供するビジネスです。
NTTドコモが運営する、デジタル雑誌の読み放題サービスです。取り扱う雑誌は700誌以上で、月額440円という価格設定となっています。
マイクロソフトが展開する、Office製品を定額利用できるサービスです。主に法人向け・個人向けの2種類があり、法人向けは利用できるソフトウエアの種類によって、さらに複数の料金プランが用意されています。WordやExcelなどに加え、コミュニケーションツールのTeamsも含まれています。
ファッションや化粧品などのカテゴリーで、専門知識のあるプロ・専門家が、利用者に合うアイテムを選んで提供するサービスです。自分に合うアイテムが分からない利用者も、質問に回答したりすることで、最適な商品を提案してもらえます。
スタイリストが、利用者に合わせて選んだ洋服を届けるのが特徴のレンタルサービスです。自分に合う服がどれか分からない、気付けば同じような服ばかりでマンネリを感じるといった悩みを持つ女性が主な顧客です。
最初の利用時に50項目の質問に回答してもらい、回答内容やリクエストを基に厳選した3アイテムを毎月届ける仕組みです。担当するスタイリストはランダムに決まりますが、気に入ったスタイリストを指名できる制度もあります。
化粧水・乳液・美容などのサブスクサービスを提供しています。AIによる肌解析の機能により、利用者に合う製品やケア方法を判定することができます。希望すれば選任のコンシェルジュから、マンツーマンでスキンケアの指導を受けることも可能です。
最適なケア製品が見つからずに、さまざまなトライアル製品を繰り返し使ってしまう、間違った自己流ケアで肌トラブルが悪化するといった問題を、オンライン完結で解決するために開発されたサービスです。
飲食物の食べ・飲み放題、洋服の借り放題などを提供する定額制ビジネスです。一定程度以上利用すると割安になるので、お得感があります。
コーヒー・餃子・焼肉など、契約したさまざまな飲食店のサブスクサービスを提供しています。favyを導入した飲食店は、インターネット予約、オリジナルホームページの作成、見込み客に対するお知らせ配信といった機能を利用できるようになります。
利用者が選んだ新品の洋服を貸し出すサービスです。利用者は実際に着てみてから、気に入った洋服を割引で購入することも可能です。おしゃれを楽しみたい女性や、どんな洋服を選べばいいか分からないという女性が主な顧客です。ヤマト運輸との配送連携によって、運送コストを低くすると同時に、洋服の返却時の利便性も高めています。MECHAKARIで使用された服は、中古品として販売しています。
以上(2022年5月)
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