オンライン採用でも優秀な人材を見極めるテクニック

1 コロナ禍で進んだ採用のオンライン化

コロナ禍をきっかけに、企業の採用活動のオンライン化が進んでいます。パーソルキャリア社が実施した「Web面接の実態調査」では、同社が2021年7月に取り扱った求人案件のうち「Web面接可」の求人案件は63.8%となっており、2020年8月の38.4%から直近1年間でその割合は約1.7倍に増加しています。

Web面接は「感染防止の効果」をはじめ、「交通費がかからない」「日程調整がしやすい」「多くの応募者を集めることができる」などのメリットが多い一方で、「雰囲気が伝わりにくい」といった課題があるのも事実です。「採用した人材が、思っていた人材と違った」というような問題も頻発しているそうです。

このような事態に陥らないために、企業側はどのようなことに注意すればよいのでしょうか。創業時の2015年から現在に至るまで、メンバー全員の採用をオンラインで行ってきた私たち株式会社ニットが、オンライン採用でも優秀な人材に出会うために企業がすべきこと、Web面接では応募者のどこを見るべきなのかのチェックポイントなどを詳しくお伝えします。

2 SNSを活用する ①企業情報の発信

私は、企業がオンライン採用を進めるにあたって、まずはSNSを効果的に活用するべきだと考えています。

優秀な人材を確保するためには、より多くの人に応募してもらえる状況を作っておくことが重要です。そのために企業にできることの一つが、SNSを活用した企業ブランディングの土台作りです。SNSには、LINEやFacebook、Instagramなど様々ありますが、なかでもTwitterは日本国内の月間アクティブアカウント数が4,500万人(2017年10月時点)と、LINEに次ぐユーザー規模を誇ります。つまり、Twitterで採用の募集をかけると、極端に言えば4,500万人に対してそのツイートが目に留まるチャンスがあるということです。また、顔見知りでない人ともつながりやすいという点からも、私はTwitterを活用したSNS採用が有効であると考えています。

ここで注意しなければいけないのは、SNSはあくまでも「情報収集」目的で利用する人が多く、就職・転職活動のためだけに利用している人は少ないということです。つまり、企業のSNS発信がすぐに採用につながるわけではないということです。重要なのは、SNSを通じて、会社の情報を日頃からこまめに発信し、フォロワーとコミュニケーションを図ることで、「会社のファン」になってもらうことです。これにより、いざ採用がスタートした際に、「もともと応募したいと思っていました!」と言ってもらえる状態を創出することができます。

現在、広報である私のTwitterには3万人近くのフォロワーがいます。ありがたいことに、Twitter経由での応募者は増加しています。最近では私が面接する4人に1人はTwitter経由といっても過言ではないほどになっており、直近3名の入社にもつながりました。

このようなことからも、広報と人事は一緒にSNSで情報発信をして、優秀な人材を確保するための土台を作ることが大切です。

(日本法令ビジネスガイドより)

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画像:photo-ac

【朝礼】“料理上手”は仕事もデキる?

私はあまり料理をしない人間でしたが、ここ2カ月ほど、自宅で料理をしています。気分転換に始めてみたところ、料理は仕事に通じることが多いと感じ、今では自分を磨くために続けています。けさは、料理をすることで得た、仕事に役立つ気付きについてお話しします。

私が料理をして気付いたのは、「頭を使うこと」と、「食べる人、つまり顧客に気を使うこと」が重要だということです。もちろん、そうしなくても料理はできますが、頭や気を使うことで料理に掛ける費用や時間を削減でき、食べた人にとても喜んでもらえます。つまり、自分の努力や工夫次第でパフォーマンスが大きく変わるのです。

料理はメニューを考えることから始まります。いわば「生産計画の立案」です。食べる人のことを考え、栄養バランスや、飽きないための工夫が必要です。1週間分ほどの献立を考えておくと、買い物に行く回数が削減できます。

買い物、つまり「仕入れ」で重要なのは、コストと品質の見定めです。チラシなど収集した情報を基に買う店や食材を決めますが、経験と実績があれば、食材の鮮度や価格に応じてメニューを決められます。作れるメニューの数、つまり「自社商品のバリエーション」が大切です。買い物をする前に、冷蔵庫内の食材と消費期限を把握しておくことも欠かせません。これは「在庫管理」です。食材は安く購入することも大切ですが、全て使い切らないと、割高になってしまいます。

実際に料理をするときに重要なのは、「時間管理や工程管理」です。食事の開始時間から逆算し、温かいうちに食べてもらえるよう、作業の時間を考慮して手順を決めます。慣れてくれば、鍋でお湯を沸かしながら食材をカットし、レンジで食材を温めながら使った容器を洗うなど、複数の作業を同時に行うことで時間を短縮できます。「5S」も重要で、使う頻度に応じて調味料や調理器具の場所を決めておくと効率が上がります。

料理で大事なのは味ですが、食べる人の気持ちを考えると、皿のデザインや盛り付け方、雰囲気づくりなど、ある意味「プレゼン」も大切だと分かりました。

そして、「感謝の気持ちを伝えること」の重要さも実感しました。「おいしい」の一言は、モチベーションに相当影響します。私は今までどこか、「会社員は仕事をするのが当たり前」と考えており、社内で仕事を手伝ってもらったときの感謝や、仕事を遂行した後輩へのねぎらいの言葉を掛けるのがおろそかになっていたと気付きました。

最後は皿洗いです。皿洗いの難敵は油汚れです。下げ膳の際は油で汚れた皿を重ねない、油汚れの皿は最後に洗う、油の多い料理を保存するにはプラスチックでなくガラスの容器にするなど、「作業効率化のための工夫」の重要さも学びました。

日常の中に仕事に役立つ気付きがあることを、特に若手の皆さんには参考にしていただくと、毎日がとても新鮮になると思います。

以上(2022年4月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】「面倒くさい」が口癖のあなたが本当にやりたいこととは?

仕事の進め方や人事評価の在り方に至るまで、皆さんの働く環境はここ数年で大きく変わってきています。さて、このように環境が変化する際には、決まって2つのタイプの社員が現れます。1つは「変化が楽しい、もっと新しいことに挑戦したい」と思うタイプ、もう1つは「面倒臭い、今の働き方を変えたくない」と思うタイプです。もちろん、皆さんには前者であってほしいですが、今日はあえて後者の人に向けた話をします。

皆さんは、「葛飾北斎(かつしかほくさい)」をご存じでしょうか? 富士山をさまざまな地域、角度から描いた「富嶽三十六景(ふがくさんじゅうろっけい)」などの浮世絵で知られる江戸時代の絵師です。北斎の浮世絵は今も高く評価されていますが、彼にはとても怠惰な一面がありました。

例えば、彼は90年の生涯で93回の引っ越しを経験したそうですが、それは「苦労せず、きれいな部屋に住みたい」という理由からだったといわれています。北斎は家事をおろそかにする人で、外でご飯を買ってくればその包み紙を所構わず捨て、ろくに布団も洗濯しないありさまでした。そのため、部屋はいつも汚く、仕事に支障が出るほどになると、彼は都度住居を変えていたそうです。一方、彼は死の直前、「あと5年あれば真の画家になれたのに……」という趣旨の言葉を遺すなど、浮世絵に対してはとてもストイックでした。

真相は分かりませんが、引っ越しが必要になるほど家事をおろそかにし、長い生涯を振り返って、まだ時間が欲しいと言い残した北斎には、家事に割く時間が惜しい、もっと仕事に集中する時間が欲しいという思いがあったのかもしれません。

冒頭で述べた、環境の変化に対し「面倒臭い、今の働き方を変えたくない」と思ってしまうタイプの人に問います。そのように思う理由は何ですか。「日々の仕事をこなすだけでも大変なのに、これ以上余計なことに時間を割きたくない」からでしょうか。では、皆さんが本当に時間を割きたいこととは何ですか。

思い返してみてください。私が皆さんに初めてお会いしたとき、皆さんはこの会社で実現したい自分の夢を、目を輝かせながら語ってくれました。しかし、時がたつにつれ、与えられた仕事をこなすことが目的になってしまい、入社した頃の輝きを失ってしまっている人が多いように思います。

皆さん、「この仕事をやめて、別の仕事をやりたい」というものがあれば、ぜひ積極的に声を上げてください。これからの時代、仕事はただ与えられるものではなく、皆さんが選んでつかみ取るものへと変わっていきます。もちろん会社は組織ですから、ただ「やりたい」という気持ちだけで好きな仕事に就くことはできません。相応の努力が必要です。しかし、その努力の末に仕事をつかみ取ったとき、皆さんの目には入社したあの頃の輝きが必ずよみがえってくるはずです。

以上(2022年4月)

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画像:Mariko Mitsuda

社長の就任披露パーティーの担当者になったら読むリポート

書いてあること

  • 主な読者:社長交代の就任披露式典などの担当者となった人
  • 課題:社長交代はそうそうあるものではなく、就任披露式典の進め方の情報も少ない……
  • 解決策:リアルかオンラインかを決め、やるべきことをリストアップすることから始める

1 「就任披露」の準備で参考になる情報は少ない?

事業承継などで社長が交代する場合、株主総会の普通決議や登記が必要です。この他にも税務や社会保障に関係した手続きもあります。こうした手続きは、やり方は決まっていて、抜け漏れなく行うことが大事ですが、専門家や行政などいろいろと教えてくれる人がいます。

一方、社長の交代では、社内外に社長交代のお知らせをしたり、就任披露を行ったりします。就任披露では、新社長の所信表明を通じて会社の新たな方針を内外に伝える大切な場なので、ミスなくスムーズに進めたいものです。ただ、

就任披露のやり方は会社ごとに異なるので、就任披露の準備を担当することになった人は、参考にできる何らかの資料が欲しい

ことでしょう。そうした期待にお応えするのが、この記事です。就任披露式典を開催するケースを想定し、準備すべきことをまとめています。確認してみてください。

2 感染症に配慮してオンラインで開催する場合

新社長の就任披露は重要な行事になるので、総務部などを中心に明確な担当者を決めて進めることが大切です。最初に決めることは、

就任披露式典をリアルとオンラインのどちらで開催するか?

です。新型コロナウイルス感染症への配慮は欠かすことができず、その際の政府の方針にも従う必要があります。

仮にオンラインで行うことにした場合、ホテルの会場などの代わりにオンラインツールを準備する必要があります。ここでは詳細を割愛しますが、少なくとも以下のことは決めておく必要があります。

  • 利用するオンラインツールの決定
  • 万一に備え、サブのオンラインツールの確保
  • 参加者への通知(パスワードなどを分かりやすく通知する)
  • スピーチを依頼する人との事前打ち合わせとリハーサル
  • オンラインツールを操作する人の決定(社員、業務委託)
  • リハーサルと当日の接続テスト
  • 必要に応じた代替ツールの確保

オンラインではリアルと雰囲気が大きく異なります。進行がダラダラすると参加者が飽きてしまいますし、新社長の所信表明も響かなくなるので、短時間でテキパキと終えられるようにしましょう。また、この手のイベントでは、主催者側の担当者が不要な場面でビデオオンのまま画面に映り続け、しかも「しかめっ面」というハプニングがありますので、こうした点にも注意してください。

3 当日の式次第と開催決定の判断

リアルで開催するケースに話を戻していきます。一般的に、就任披露式典などの式次第は次のようになるので、この流れを意識するとよいでしょう。

  • 開会の辞
  • 前社長のあいさつ
  • 新社長のあいさつ
  • 来賓祝辞
  • 乾杯
  • パーティー、懇談、歓談
  • 祝電披露
  • 閉会の辞

また、感染症の状況をみて、

オンラインへの切り替えや中止・延期の判断基準と決定時期

についても明確にしておく必要があります。これは重要な決定事項なので、新社長などと確実に協議しておきましょう。

4 担当者が事前に決めておくべきこと

1)開催日時、場所の決定

就任披露式典などは、社長交代を決める株主総会終了後のできるだけ早い時期に開催します。また、新社長の就任あいさつ状を作成・印刷・郵送する作業も並行して進めます。

就任披露式典などは、新社長にとって最初の対外的な行事となるので、ホテルを利用するのが一般的です。就任披露式典などの実績が豊富なホテルなら、催し物や進行方法などについてアドバイスも受けられます。なお、会場によっては自社が幕などを用意しなければならないこともあるので、会場側と自社の役割分担をしっかりと確認しましょう。

2)出席者と祝辞を依頼する来賓の決定

社内の出席者や招待客を決定します。社内からは、一定以上の役職者(部長以上など)は全員が出席します。また、招待客の対応をするための社員も出席します。

招待客には、大株主、金融機関、主要取引先、関連会社、マスコミなどもいます。この中から祝辞を依頼する来賓を決定し、事前に連絡します。

3)招待状の発送時期の決定

招待客は多忙な人が多い上、就任披露式典なども一定期間に集中しやすいものです。招待状は、就任披露式典などの30日前に届くように投函します。

4)記念品の決定

記念品は企業イメージに合ったものがよく、かさばるものは避けましょう。自社で記念品になるような商品を取り扱っている場合は、なるべく自社扱い商品から選ぶようにすれば、PR効果も期待できます。

5)マスコミなどへの連絡

必要に応じて、マスコミなどにも連絡しておきます。また、自社の広報と連携し、ホームページやSNSなどでPRするのもよいでしょう。

5 当日の運営:係別のポイント

1)担当者

担当者は開式の2時間前には集合します。来賓などの欠席がないかを確認し、必要な対応をとります。また、役割分担を最終確認した上でリハーサルをします。

2)設備・設営係

自社で設営が必要な会場の場合、設備・設営係が手配します。事前に、前日からの設営ができないところを確認し、可能であれば事前に済ませておくとスムーズです。

3)受付係

受付係は、少なくとも30分前には招待客を迎えられるように準備します。受付係の主な仕事は、招待状のチェック・記帳、リボン付け、名刺や金品の受領、会場までの案内などです。招待客と面識のある社員が担当するとスムーズです。

4)手荷物係

ホテルの場合はクロークに一任できます。自社などで開催する場合は、あらかじめ番号を付した預かり札を用意しておき、これと引き換えに手荷物を預かり、番号順に保管します。帰りの際は混雑するので、人数を多めに配置しておきます。

5)迎賓

会場の入り口に金屏風を立て、その前で自社の役員が招待客を迎えます。

6)司会・進行係

全般の進行管理と雰囲気づくりを担当します。進行係は司会役と密接に連絡を取り合いながらスムーズな進行を心掛けます。具体的には、「片仮名の祝電は、読みやすいように漢字仮名交じり文にしておく」「祝辞を依頼した来賓の到着時間を確認し、スタンバイしてもらった上で、誘導する」などの細かい配慮が必要です。

また、スケジュール通りに進めるには機転を利かせた判断が必要で、特に高齢の招待客に対しては専属のスタッフを配置することも検討します。

7)記念品係

閉会後、出口付近で記念品を手渡します。あるいは、事前に出席者の座席の近くに用意しておきます。

8)車両係

ホテルの場合は、必要に応じて無料駐車券を配布します。会場付近の混雑が予想されるときは、交通整理や警察への連絡もしておきます。

9)広報・記録係

必要に応じて、会場にはカメラマン席を設けます。会社の役員と来賓との懇談風景などはスナップを撮り、マスコミ各社にリリースします。ビデオはホテル側でも撮影してくれます。

10)会計係

会場費、記念品代、その他諸経費など全ての予算と実行予算を管理します。これには、ご祝儀の記録やタクシー券の精算なども含まれます。

6 後日のフォローアップ

後日、出席者に礼状を送ります。欠席者についても、祝い品をもらった先や重要な先には、社長や役員が記念品などを持参して、お礼に伺います。これらのフォローアップは、式典から間が空くと効果が半減するので、速やかに実行できるように段取りを整えておきます。

お礼のあいさつ回りが一区切りついたら、撮影したビデオや写真類を記録・整理します。社内報やPR誌などで特集を組んだり、後日、社史を編さんする際にも利用したりします。

以上(2022年4月)

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画像:photo-ac

元銀行員が仕掛ける個人向け「セールアンドリースバック」はまさに「デジタル質屋」。その思いは、「モノの買い方」や「お金の使い方」を変え、世界をも変えていく可能性を秘めている!/岡目八目リポート

年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、山本義仁さん(ガレージバンク株式会社のCo-Founder/CEO)です。

山本さんの事業を分かりやすく表現すると、まさに「デジタル質屋さん」といえます。お話を伺っているだけで、なにか消費に対する考え方がバージョンアップされ、「モノの持ち方」「お金の生み出し方、使い方」などの価値観が変わっていく感じがします。かつて銀行員だった山本さんならではの思い、アイデア、工夫が満載のお話をご紹介します。

1 「モノの価値を具現化してお金に変える」をオンライン完結で実現

スタートアップのエンジニアが、副業で自分のサービスを構築するために、MacBook(ノートPC)を「担保」に資金をつくり、マーケティングに投入する。しかもMacBookは、月々のリース料を支払って、手放さず使い続ける

こんなお金の生み出し方、使い方が山本さんのサービスで実現しています。実に手軽な資金調達方法ではないでしょうか。
 山本さんは、ミッション「モノの価値を、みんなの【できる】に。」(下記)を掲げ、主に「個人の動産資産の流動化」を手掛けています。

ガレージバンクのミッションを示した画像です

(出所:ガレージバンク株式会社のWebサイト)

個人が保有する動産資産の資産価値を具現化して、その価値を挑戦・やりたいことに使ってもらおうというのが我々のミッションの根底にある」

と語る山本さん。これを実際のプロダクトに落とし込んでいるのが個人向けのセールアンドリースバック「CASHARi(カシャリ)」です。スマホアプリで簡単にできるところが大きなポイントで、2022年1月、山本さんたちは「スマホアプリを用いたセールアンドリースバック」のシステムで特許を取得されています。

CASHARi(カシャリ)のイメージを示した画像です

CASHARi(カシャリ)のイメージを示した画像です

(出所:ガレージバンク株式会社のWebサイト)

 

山本さんの考えを形にしたスマホアプリ「CASHARi(カシャリ)」について、3つの点から特徴をご紹介します。山本さんの思いが詰まっています。

1)ワンストップのセールアンドリースバック

一般的に、セールアンドリースバックというと「法人向け」がメーンで、かつ、取り扱うのは不動産、自動車、機械などです。山本さんの「CASHARi」では、「個人」が自分のノートPCやカメラ、スマホ、ゲーム機などのモノ資産をお金に変えることができます。やり方はいたって簡単で、基本的にオンラインで完結します。スマホアプリを使ってアイテムをカメラで撮影し、査定(原則24時間以内)、利用申込みまでできます。お金はセブン銀行ATMで受け取れます。対象となったアイテムは、月々の利用料(リース料)をクレジットカードで支払えば、引き続き使い続けることが可能です。

CASHARi(カシャリ)のイメージを示した画像です

(出所:山本さんからいただいた資料より抜粋)

2)テクノロジーによる「高い画像査定技術」と「不正リスクを防ぐ仕組み」

山本さんたちのすごいと思うところの一つは、テクノロジーで「隙のないつくり」にしている点です。例えば、実物査定ではなく「画像での査定」を実現していて、この独自の画像査定技術があるので、オンライン完結が可能になっています。ポイントは、実家が質屋の共同創業者、磯田氏の持つ査定ノウハウがふんだんに生かされている点だという山本さん。また、「CASHARi」で査定した画像データをすべて教師データとしてモデル化も進めており、さらに精度に磨きをかけています。「これはブランド○○の本物、偽物」も検知できてしまうというから驚きです。

もう一つ、「CASHARi」を支えているテクノロジーは、不正リスクを防ぐ仕組みです。「銀行口座を開くのと同じ基準での本人確認」「画像撮影時の場所の確認」など多数面からの不正リスク防止策(下記資料ご参照)。このあたりは、山本さんの元銀行員というご経歴が大きくプラスになっていると感じます。利用状況をトラッキングし、資産背景なども見ているため、「この人、ちょっと使いすぎていておかしいな」などを検知できているそうです。

スマホで撮影した写真一つで簡単にお金を手に入れられるサービスだからこそ、支える技術やリスク管理には徹底的に手をかけている。良い意味で、とても堅い印象のサービスです。

CASHARi(カシャリ)の実装済対策を示した画像です

(出所:山本さんからいただいた資料より抜粋)

3)フリマともレンタルとも違う、そしてある意味“質屋さん以上”

「個人の持っているモノをお金に変える」というと、フリマアプリがまず思い浮かびます。フリマの場合、お金は手に入れられますが、アイテムを手放すことになります。それと違って、「CASHARi」はアイテムをアプリ上で預けてお金に変える、まさに「デジタル質屋さん」なのですが、厳密に言うと“質屋さん以上”の使い方ができます。なぜなら、リース料を支払えば、アイテムを預けることなくこれまでと変わらず使い続けられるからです! 「CASHARi」のサービスサイトでは、フリマなどとの違いが次のようにまとめられています。

CASHARi(カシャリ)と類似サービスの比較を示した画像です

(出所:ガレージバンク「CASHARi」のサービスサイト)

山本さんは、「CASHARi」を「モノの資産価値を可視化して手軽に管理でき、売却や流動化をワンストップで提供するサービス」と表現します。ポイントは「モノの資産価値の可視化」にあると山本さん。自分が持っているモノがどのくらいの資産価値があるか、そんなことは考えてみたこともない……という人が多いのではないでしょうか。

その点、山本さんのお話を聞いていると、「モノには資産価値があり、お金に変えられる」が実感できてきます。この考え方が定着すれば、自分の「モノ資産=日ごろ使っているPCやバッグなど」を見る目も変わってくるでしょう。分かりやすく言うと、「これだけの資産価値(◇万円に変えられる)なら大事に使おう!」と思います。もっと言えば、買う段階で「資産価値のある良いものを選ぼう」となります。

長く使える良いものを選び、「CASHARi」でリユースしてお金に変え、愛着があったら自分で買い戻すこともできる。山本さんのお話から、自然と無理なく「モノを大事にする」ようになっていく流れを感じます。SDGsを身近に感じている人、特に若い世代の人ほど、こうした価値観がすんなり浸透していくのではないかと思います。

2 なぜセールアンドリースバックをやっているのか

セールアンドリースバックを行っているのには、次の2つの思いがあると山本さんは語ります。

  • 個人に対する信用与信の補完、代替をしたい。低スコアの若年層はなすすべがないなど従来の信用与信モデルは限界があり、ライフスタイルにあった調達手段を提供したい。
  • サーキュラー・エコノミーを実現したい。モノの死蔵化を防ぎたい。

この思いに至る山本さんの軌跡を振り返ってみましょう。

1)銀行員時代、「個人」「スモールビジネス」向け金融サービスの少なさを実感

山本さんは、新卒で銀行員になりました。もともと起業に興味があったのですが、大学を卒業した2011年は就職そのものも大変なときで、リーマンショックの影響を受け多くの企業が倒産するのを目の当たりに。

「ビジネスを成り立たせるには金融のことをちゃんと知らなくてはいけない」

「世の中の仕組みを知るには多くの企業のことを知る必要がある、知ることができる環境にいなくてはいけない」

リーマンショックの影響などを見てこう考えた山本さん、まずは銀行に就職することを選択します。折しもIT系の企業が注目されていたころで、山本さん自身も大学時代はデジタルコンテンツ系のゼミに所属していました。しかし世の中に流されず、自分でじっくり考えて就職先を選んだ山本さん。

法人への金融商品の提供などを行っていた銀行員時代。大口融資などを経験する中で、山本さんは次のように「ハタと感じた」そうです。

「法人・大企業の方であればさまざまな金融サービスにアクセスできるが、小規模なビジネスや個人ではアクセスできないものが多い」

「その中の1つが、資産の流動化だった。今は皆さんが当たり前のようにモノを買ったり売ったりレンタルしたりというのが定着していますが、それを組み合わせるサービスは、小口でやることはほとんどないと分かったのです」

そこで、「個人の動産資産の可視化→流動化」を考えた山本さん。山本さんは、

個人のバランスシートの左側を最適化する

と表現します。「(山本さんたちが)ターゲットにしている20歳代の方々でも、モノ資産のほうが現預金より圧倒的に多い。これを流動化できれば、バランスシートとして健全な状態」と山本さんは言います。

20歳代の世帯別資産ポートフォリオを示した画像です

(出所:山本さんからいただいた資料より抜粋))

確かに、これらのモノ資産を流動化できれば、新しいことにチャレンジする機会を増やせそうです。

2)転職の後、ガレージバンクを創業。目指すは……

銀行でさまざまな業界のビジネスを学んだ山本さん、銀行を退職するとベンチャー企業に転職し、個人事業主向けのファクタリング事業などを担当します。そしてその後、2020年1月にガレージバンクを創業しました。共同創業者かつ「実家が質屋」の磯田氏(前出)は大学時代からのご友人とのこと。お二人の「リユースノウハウ」と「金融ノウハウ」を掛け合わせたサービスが、「今後の社会では必要になっていく」との思いもあって創業に至ったそうです。目指すは、

「リユース×金融」の複合型事業 ≒ 質屋DX

お二人それぞれが別々の世界でしっかり経験と実績を積まれている上に、それが掛け算されているので、地に足のついた会社、サービスが実現できているように思います。世の中にさまざまなスタートアップやテクノロジーを駆使したサービスが出ては消えしている昨今、「地に足のついた」というのは、非常に素晴らしく、重要なことではないでしょうか。穏やかで思慮深いお人柄が伝わってきて、なにか安心できる語り口の山本さんです。

3 若いユーザー世代が感じているであろう「持たざる豊かさ」

山本さんたちのメーン事業「CASHARi」は、2020年11月にスマホアプリβ版をリリースし、オーガニックで順調にユーザーを増やしています。2022年3月時点のユーザー数は1万5000人、査定件数は1万3500件ほど。SNSやネットの掲示板から流入してくるユーザーが多く、もともとターゲットとしている20歳〜30歳代の利用が約80%を占めています。

アイテム別でいうと、20歳〜30歳代が保有していて資産性が高いものは主にデジタルガジェットで、実に全体の77%を占めているそうです。山本さんのお話で面白かったことの一つが「年代によってアイテムが違っている」ということ。「20歳代は、ノートPCなどとにかくデジタルガジェット。いわゆる質屋さん的なブランド物の査定はほとんどなく、あっても財布くらいです。バッグなどの査定は来ません。ブランド物のバッグの査定依頼が多いのは40歳代以上の方々です」と山本さんから教えていただきました。

モノの持ち方、モノに対する考え方も世代によって大分違うのだなというのが分かります

所有からシェアへと変わってきている今、特に20歳〜30歳代の人たちは「持たざる生き方のほうが実は豊かである」「モノに固定されることのほうが豊かではない」ということに気付いているのかもしれません。

山本さんたちのサービスが20歳〜30歳代を捉えていること、そして、「モノ」「お金」にかかわる20歳〜30歳代の行動や価値観が想像できる実データが蓄積されていることも、大きなポイントです。さまざまな業界と、マーケティングや商品開発、営業などの面で相性がいいのではないでしょうか。そうした可能性も含め、次章からは山本さんの見据える今後の展開や理想などをご紹介します。

4 山本さんが考える今後、力を入れたい3つのこと

「現状、総務省のデータなどによると個別の動産資産は約30万円で、それにコアターゲット層を掛け合わせると大体1兆円程度の市場が取れるという想定」と語る山本さん。今後については次の3つを考えています。

  • 取り扱いアイテムの拡充
  • 金融サービスの融合
  • 海外展開

1)取り扱いアイテムの拡充

山本さん曰く、「取り扱いアイテムの拡充」は、かなり具体的に進んでいるそうです。例えば、直近では自動車です。大手中古車会社さんと提携しAPIをつなぐことによって、山本さんたちのサービスの中で自動価値算定ができる、さらにそのままセールアンドリースバックができる準備をしているとのこと。その他、不動産やホビー用品なども可能性がありそうです。

2)金融サービスの融合

「BaaSの内包による預金・決済・与信の取込」という点で金融機関とも提携していきたいと語る山本さん。「お金を入れる口座を山本さんたちのアプリ【CASHARi】に入れる。アプリ内の口座にお金をプールして、モノを買ったり、引き出したりできるようにする」ことが実現できるといいます。実際に、金融機関(銀行)とは既に何行かと話をしているそうで、可能性がかなり広がっていくように感じます。

3)海外展開

山本さんは、東南アジアを中心に展開を進めたいとも考えています。東南アジアには、「CASHARi」が浸透する素地があるようです。例えばフィリピンでは質屋文化が発達しており、銀行口座を持っているのは3割程度なのに対して多くの人が質屋を使っている状況。さらに、モノを質屋でお金に変え、そのお金を質屋ネットワークで送金している、つまり、質屋=銀行というわけです。

このほか、「CASHARi」では「どういう人が、何を、いつ、いくらのお金に変えたか」のデータがどんどん蓄積されるので、例えば消費トレンドが分かったり、どういう人がどういう物を買ったかの購買行動が分かったりします。これはマーケティングに活かせます。また、行動予測やモラルスコアリングなどにもつなげられるかもしれません。このあたりは人材採用やマッチングなどに活用できそうです。「モノ」「お金」の実データ、しかも20歳〜30歳代の実データを把握していると、本当に可能性は無限大です!

5 山本さんが実現したい理想の世界とは?

可能性の塊のような山本さんたちのセールアンドリースバックのサービス。最後に、こうしたサービスを通じて、山本さんが実現したい理想の世界を聞いてみました。山本さんは、次のようにご回答してくださっています。

    ●山本さんの理想の世界
    ミッションに「モノの価値を、みんなの『できる』に」と掲げている通り、誰もがお金がらみで躊躇したり、諦めたりすることをなくしたいのです。

    「できる・やれる・楽しめる」というもので溢れる社会にしていきたい。
    会社だと借金でも「資金調達」みたいな形でいいもののように言われる。一方、個人だとどうしてもかなりネガティブな「借金」というイメージがまだまだあります。

    個人のバランスシートの左側を最適化して、それを次の挑戦に使ったほうが、みんなが楽しい方向にいきますし、そうするとゆくゆく社会が前向きな方向に変わるはず。今のままだと保守的な生き方になって、(社会全体が)シュリンクしてしまう。そうではなく、社会を前向きにしていきたいです。

固定的なモノや何かに縛られない、持たざる自由で流動的な生き方。こうした生き方、考え方が浸透すれば、山本さんが言うように、誰もがチャレンジできる前向きな社会に変わっていけそうです。
そう考えると山本さんがつくっているのは単なるサービスにとどまらない、もはや、世界を変える「文化」をつくろうとされていると感じ、とても期待&応援しております! 有り難うございました。

以上(2022年4月作成)

4月1日より義務化される「中小企業のパワハラ防止措置」

令和2年6月1日に施行された改正労働施策総合推進法の「パワーハラスメント(以下、パワハラ)防止措置」が、今年の4月1日から、中小企業にも義務化されます。
本稿では、パワハラ防止に関する厚生労働省発出の中小企業向けリーフレットを概説し、パワハラを事由とする安全配慮義務(職場環境配慮義務)について、訴訟に発展した事例をご紹介します。

1 パワハラ防止のために講ずべき措置

同法が定めるパワハラの定義は、職場で行われる以下①~③の要素全てを満たす行為とされています。

① 優越的な関係を背景とした言動
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
③ 労働者の就業環境が害されるもの

その行為は、「身体的な攻撃」「精神的な攻撃」「人間関係からの切り離し」「過大な要求」「過小な要求」「個の侵害」の6つに類型され、個別の事案は経緯や状況等、様々な要素を総合的に考慮して判断することになります。

そして、上記に該当するパワハラを防止するために、今後すべての事業主は、次の措置を講じなければなりません。

<職場におけるパワハラを防止するために講ずべき措置>

職場におけるパワハラを防止するために講ずべき措置

上記に加え、セクハラやマタハラなどのハラスメントを一元的に相談できる体制整備パワハラの原因や背景となる要因を解消するための取り組みなども、望まれる取り組みとして提示されています。

2 パワハラを事由とする安全配慮義務違反の責任

パワハラが生じたときに問われる法的責任には、①加害者の不法行為責任、②企業の使用者責任(加害者の雇い主としての責任)、③企業の安全配慮義務違反(債務不履行責任)の3つがあります。

パワハラに関しては、①の不法行為責任が成立することを前提に②の企業の責任を問われるケースが多くなっていますが、今回の法改正が求めることのように企業の対応について③の安全配慮義務違反が争われる事例もあります。

例えば、有名進学塾の事件(高裁判決)では、団体交渉での対応が悪く、倫理委員会の開催が遅れたことについて、職場環境整備義務違反が問われ、このことにより20万円の慰謝料が認められました。

他方、大手家電量販店の事件(地裁判決)では、配置換えの違法性が認められた一方、パワハラ防止についての研修の実施などの啓蒙活動、相談体制が整備されていたことなどを理由に、職場環境配慮義務違反の責任は免れました。

安全配慮義務違反が認められれば、他社との取引関係の悪化、また採用活動にも不利に働くことでしょう。企業のコンプライアンス意識を問われることのないよう、今回義務化された措置の実施は、最低限必要といえそうです。

3 さいごに

パワハラは、起こらないようにする予防策を講じることが先決ですが、起こっても適切に対処できる体制の整備や相談窓口の設置なども、実際の訴訟では評価されています。パワハラの問題は労使にとどまらず、企業外活動にまで影響を及ぼしかねませんので、従業員と企業を守る取組・施策を積極的に講じていきましょう。

※本内容は2022年3月10日時点での内容です

(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)

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画像:photo-ac

【情報セキュリティ】委託先を信用する「具体的な根拠」と万一の備えはありますか?

書いてあること

  • 主な読者:業務委託先からの情報漏洩リスクに備えたい経営者
  • 課題:委託先の選定基準がなく、具体的な管理方法も分からない
  • 解決策:委託先に自社と同等の情報セキュリティ対策を求め、業務委託契約書に盛り込む。また、少なくとも年1回のチェックで緊張感を保つ

1 その委託先は信じて大丈夫な相手か?

業務委託の活用は日常的に行われていることですが、ついて回るのが情報セキュリティの問題です。業務委託先が情報漏洩をしてしまった場合、「委託先に任せきりで、知りませんでした」では通用しません。そこで、

IPA(情報処理推進機構)「委託先情報セキュリティ対策状況確認リスト(サンプル)」を使って審査し、実際に契約を交わす際は自社と同等の情報セキュリティ対策を求める

ようにしましょう。

また、情報セキュリティについては「ISMS適合性評価制度」、個人情報保護については「プライバシーマーク制度」という第三者機関による認証制度があります。機密情報や個人情報を取り扱う業務を委託する際は、これらの認証取得を条件としてもよいでしょう。

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2 委託契約書に盛り込むべき事項

委託契約を交わす前に、委託先に情報セキュリティに関する要求を伝えて合意を得ます。また、委託契約書には次のような事項を盛り込む必要があります。 クラウドサービスを利用する場合、サービス提供会社と業務委託契約を交わさないことも多いです。こうしたときも、サービス約款や利用規約などで下記の事項を確認しましょう。

  • 委託業務に係る情報等の秘密保持義務
  • 再委託についての事項(原則として禁止が好ましい)
  • 情報漏洩などが発生した場合の責任分担についての事項
  • 委託契約終了後の情報等の返却または廃棄、消去についての事項
  • 情報セキュリティ対策の実施状況に関する監査の方法とその権限
  • 契約内容が遵守されない場合の措置
  • 事故発生時の報告方法

また、委託業務の中で、機密情報や個人情報等を取り扱う場合は、次の事項も委託契約書に盛り込むことが望ましいです。

  • 委託先において委託業務に係る情報等を取り扱う従業員の明確化
  • 委託元が委託先に対して立ち入り監査を行うことができる旨

3 少なくとも年1回のチェックで緊張感を保つ

委託契約を交わす際は、確認リストへの回答を求めたり、ヒアリングをしたりするなどして、委託先が自社の要求レベルを満たしているかチェックします。しかし、その有効性がいつまでも続くわけではありません。時間の経過や環境の変化によって、

委託先が自社の要求レベルを満たさなくなってしまったり、本来実施すべきことが行われなくなってしまったりする

ことは珍しくありません。

そこで、少なくとも年に1回はアンケートやヒアリングを行い、委託業務で情報漏洩などが発生していないか、情報セキュリティ対策上で変わった点がないかなどをチェックしましょう。

4 サイバー保険で備えるのも一策

サイバー保険は、サイバー事故により企業に生じた第三者に対する「損害賠償責任」の他、事故時に必要となる「費用」や自社の「喪失利益」を包括的に補償する保険です。日本損害保険協会では、サイバー保険の特設サイトを開設し、さまざまな情報を発信しています。

委託先での情報漏洩などにより、加入者(委託元)が被った経済的損害に対して保険金が支払われるものもあるので、加入を検討してみるのもよいでしょう。

■日本損害保険協会「サイバー保険」■
https://www.sonpo.or.jp/cyber-hoken/

以上(2022年4月)

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【従業員が交通事故!】責任割合はどうなる? ⑥路上駐車中のドア開放

書いてあること

  • 主な読者:社有車の事故防止に力を入れたい経営者や運行管理責任者ならびに運転者
  • 課題:交通事故の基本的な責任割合や未然防止策を知りたい
  • 解決策:過去の裁判例に基づく基本的な責任割合と場所や状況に応じた事故防止策を理解する

1 事故事例と状況を把握します。

今回の事故状況はこちらです。A(自社の青い車)が、道路左側に停車しドアを開けたところ、後方より直進してきたB(相手方の赤いバイク)と接触してしまいました。

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【A車:自社車両 B車:相手方バイク】

今回のポイントは「予見可能性」と「Aの危険回避措置の有無」です。

①夜間や雨天等で見えにくい状況だったかどうか
②ハザードランプ等の合図があったかどうか
③直前のドア開放だったかどうか

などを確認します。

もしドライブレコーダーが搭載されている場合は、事故を録画したデータの保全をしておく事が重要です。ドライブレコーダーの映像は責任割合を決定するうえで非常に有効ですが、機種によっては、時間経過するとデータが自動消去されるものや、走行すると上書きされてしまうものもありますので注意しましょう。

2 今回の事故事例の基本的な責任割合(過失割合)を見てみましょう。

1)責任割合の決まり方は?

双方に責任が生じる事故の場合、それぞれの保険会社を窓口として交渉することが一般的です。過去の裁判例の責任割合を参考に、実際の事故状況を踏まえて話し合い、決定していきます。

2)今回の責任割合は?

過去の裁判例より、A(自社の青い車)90%:B(相手方の赤いバイク)10% が基本の責任割合となります。

また、下記の場合は責任割合が修正されます。

①夜間の場合・・A 95%:B 5%
前方が見えづらく、日中より更にAに注意義務が発生するため5%修正

②ハザードランプが無い場合・・A 95%:B 5%
左折の方向指示器を出して停車している場合は合図ありとなり、責任割合の修正はされません。

③ドア開放を予測させる状況の場合・・A 80%:B 20%
例えばAがタクシーであり、合図を出して停止した直後かどうか、トランクが開いているかなど、降車・乗車の予測が可能か、がポイントになります。

※実際は、それぞれの事故状況に応じて個別に決定されます。そのため、記載の内容とは異なる結果になる場合もあります。

3 今回の事故事例を未然に防ぐポイントは?

今回のA側の注意点としては、

  • 後方の安全確認をしてからドアを開ける
  • 停車する際はハザードランプ等を出す
  • カーブの道など見通しが悪い場所や、夜間はできるだけ停車しない

ことで、事故のリスクを軽減することができます。

バイクのスピードが出ている状態で車のドアを開けて接触してしまった場合、バイク側に甚大な怪我や被害が発生することが想定されます。急いでいても、落ち着いて安全確認するように心掛けましょう。

その他、ドライブレコーダーを活用した安全運転指導や教育サービス、無料の安全運転セミナーを提供している機関もありますので、それらを利用して自動車事故防止活動をしていくのも良いでしょう。

以上(2022年4月)

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本記事で紹介している責任割合は、過去の裁判例を参考にした基本的な割合です。実際は、それぞれの事故状況に応じて個別に決定されます。そのため、記載の内容と異なる結果になる場合もあります。

【朝礼】桃太郎は正義か? 悪か?

おはようございます。突然ですが、今日は「正義と悪」というテーマについてお話ししたいと思います。といっても、決して壮大な話ではありません。今日のテーマの題材は、日本人なら誰でも知っている昔話「桃太郎」。この桃太郎が正義なのか、悪なのかについて、皆さんと一緒に考えてみたいのです。

「いきなり何を言い出すんだ」と思った人がほとんどでしょう。皆さんがご存じの桃太郎は、桃から生まれた男の子が、悪さを繰り返す鬼を退治するため、鬼ヶ島に乗り込む物語。誰もが桃太郎を正義のヒーローだと信じて疑わないでしょう。

しかし、この一般的に知られるイメージと全く違う桃太郎を書いた人がいます。それが、「羅生門」や「蜘蛛の糸」などで有名な小説家、芥川龍之介氏です。芥川氏が書いた桃太郎は、一言で言うとかなりの悪党です。

芥川氏の物語では、鬼ヶ島の鬼たちは平和を愛する優しい種族で、人間たちに対して何も悪さをしていません。にもかかわらず、桃太郎は犬、猿、きじを引き連れて鬼ヶ島に乗り込み、鬼たちに乱暴をした揚げ句、彼らの財宝を奪い取ってしまうのです。しかも、鬼退治に出発した理由も彼なりの主義や正義感によるものではなく、ただおじいさんやおばあさんの仕事を手伝うのが嫌で、故郷から逃げ出したかったからというネガティブなもの。昔話のほうの桃太郎と比べると、あまりに救いようがなく、がっかりしてしまいます。

芥川氏がこの物語を通じて伝えたかったメッセージ、それは恐らく「私たちが正義と信じているものが、もしかしたら実は悪かもしれない」という警告ではないかと思います。皆さんもビジネスで、自分が正しいと信じてやったことで、かえって周囲に迷惑を掛けてしまった経験はないでしょうか。どのような局面でも、常に「本当にこれは正しいことなのか?」と疑う癖を付けておかないと、独善的な人間になってしまいます。

一方で、私はもう1つ皆さんにお伝えしたいメッセージがあります。それは、「何が正しくて、何が良いことなのかは、結局、自分で決めるしかない」ということです。芥川氏の桃太郎は、昔話の桃太郎に対する「実はこうだったかもしれない」というアンチテーゼではありますが、結局のところ本当の桃太郎が正義だったのか悪だったのかは、昔話を通してしか判断できません。ビジネスも同じで、限られた情報の中で、自分の責任で正しいと思うことを選択するしかないのです。

「本当にこれは正しいのか?」と、一歩立ち止まって考える視点を持ちつつ、その上で「自分はこれが正しい」と思う道を突き進む。皆さんにはそんなビジネスパーソンであってほしいと思います。私は、芥川氏の書いた悪党の桃太郎も1つの解釈としては面白いと思いますが、やはり昔話のほうを支持します。いつの時代も、桃太郎には子どもたちに夢を与える正義のヒーローであってほしいからです。

以上(2022年4月)

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画像:Mariko Mitsuda