【朝礼】会社は舞台、管理職は役者

この朝礼もそうですが、私には皆さんの前でお話しする機会がたくさんあります。また、多いときは月に10回くらい、社外の方々の前でスピーチや講演をさせていただいています。

そのため皆さんの中には、私のことを「人前で話すのが得意で、根っからの出たがり」と思っている人も多いようですが、私は若い頃、全くそうではなかったのです。社内外を問わず人前で話すことにとてもプレッシャーを感じ、逃げ出したくなるほどでした。緊張のあまり頭が真っ白になり、しどろもどろになってプレゼンに失敗したことも一度や二度ではありません。

このことに悩んでいた私は、初めて管理職になったときに気持ちを切り替え、「人前で話すのがとても得意で、常に自信を持ち堂々と話す人」を「演じる」ことにしたのです。

演じることは、皆さんにもあてはまります。むしろそれは、皆さんの仕事でもあるのです。特にそれが求められるのは管理職です。日本電産の創業者である永守重信氏は、「経営者や管理職はどのような状況にあっても『アイ・アム・ファイン=私は元気です』と言えなければならない」という趣旨のことを言っていますが、これこそ管理職が実践すべき重要な「演技」ともいえるでしょう。

例えば、管理職は、組織が「元気がないな」と思ったときこそ率先して声を出し、前向きな管理職の姿を演じることで、組織をポジティブな方向に持っていかなければなりません。

また、トラブルが起きたときも同じです。たとえ心の中では激しく動揺したとしても、管理職は右往左往したり弱気な態度を見せたりしてはなりません。状況にもよりますが、そうしたときこそ冷静に指示を出し、組織を動かして対応する役割を演じる必要があります。

とはいえ、演じるのは簡単ではありません。また、どのように演じたらよいか分からない管理職も多いでしょう。そこで私がお勧めしたいのは、まず、手本となる人を見つけ、その人をまねるという演技をすることです。管理職の皆さんは社内外の多くの人と接し、ネットワークを広げ、手本を見つけてください。そしてどうしても見つからなければ、私を手本にしてください。私自身も大いに迷い悩みながら、諸先輩方を手本に、管理職、そして経営者を演じ続けてきているからです。

私は特に人前で話をすることが大の苦手でしたが、「得意な人を演じる」と決めてから、人前に出るときに「演じるスイッチ」が入るようになりました。自分の感情やモチベーションとは一切関係なく、「人前で堂々と自信を持って話す人」の演技ができるようになったのです。

それは、人の上に立つ者として、人前で堂々と話をする人であることが私の重要な仕事だと認識したからです。管理職も同じです。管理職という役を演じるのは皆さんの重要な仕事なのです。

会社は舞台、管理職の皆さんは役者です。私と一緒に素晴らしい舞台をつくりましょう。

以上(2022年5月)

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画像:Mariko Mitsuda

日本人が最も使っているSNSは? ターゲット別に考える効果の高いSNSはこれだ!

書いてあること

  • 主な読者:SNSを利用して効果を上げたい中小企業・ベンチャー企業の経営者
  • 課題:SNSを利用して認知度を上げたいが、運用工数に制限もあり、どのSNSから取り掛かっていいのかが分からない
  • 解決策:商品やサービスに合うSNSがベストですが、自分が慣れているSNSからまずはやることをお勧めする

1 日本でユーザー数が一番多いSNSはLINE

各SNSの公式発表では、

日本で最もユーザー数が多いSNSは、LINEで9000万人

になります。各SNSのユーザー数ー数と利用率の比較は次の通りです。

画像1

ユーザー数だけを見るとLINEをやるのがいいように思えますが、SNSによっては利用者数が多い世代があったり、手軽さが違っていたり、画像や動画などでアプローチするのに適していたりするものもあります。それぞれのSNSの特徴を把握して、自社の商品やサービスの特性と掛け合わせて、合うもので行うのが一番いいやり方です。

難しい場合は、

普段、皆さんが利用しているSNSから始めること

をお勧めしています。使い慣れていますので、あまり悩むことはなく発信できます。

この記事では、SNSの特徴やどのSNSが合っているかのヒントを解説していきます。最近は、FacebookやTwitterといったテキストが主体のSNSや、Instagramなど画像が主体のSNSでも、TikTokのような短い動画(ショート動画、ショートムービー)が投稿できるなど機能が似てきている面もありますが、向いているターゲット層が違うなどの特徴があります。ぜひご参考になれば幸いです。

2 SNSの特徴を押さえましょう

ご飯を食べに行くときに、

40代は食べログ、30代はGoogle検索、20代はTwitterやInstagramでお店を探す傾向が高い

です。このように検索をひとつとっても、世代によって調べ方が違います。実は、SNSも世代によって使用方法が変わってきます。ここでは、SNSの特徴を説明していきます。

1)Facebookは経営者アプローチやBtoBビジネスに向いています

Facebookはユーザー数が減少傾向ですが、世界最大のユーザー数は見逃せません。海外展開を狙っている商品は、Facebookでの発信をお勧めします。また、30代以上のユーザーは活発に投稿していますし、ビジネス目的で利用するユーザーも多いです。30~50代の利用方法としまして、経営者と名刺交換をした後に、よりつながりを持つためにFacebookで友達登録をしている人もよく見られます。そのため、

経営者にアプローチしたい場合やBtoBビジネスでの関係構築で有効に活用

できます。

実名登録が必須となっていますので、登録されている個人情報はしっかりしています。Facebookで属性を絞って広告を出す場合の効果は大きいです。なお、実名登録が影響しているせいか、Facebookでの炎上事例はあまり見当たりません。

デメリットは、10代や20代の若いユーザーのアクティブ率が低くなっています。そのため、

若年層をターゲットにした商品告知での利用は向かない

でしょう。また、Facebookページから発信された投稿のオーガニックリーチ(ユーザーに情報が届くこと)は大幅に減少しているので、広告の併用が必要となっています。

2)Twitterは即時性と拡散性が高く、イベント告知やキャンペーンに向いています

Twitterは最も即時性と拡散性に優れたSNSです。「こんなお得な情報を見つけた」「こんな面白い情報を見つけた」という感覚でリツイートされることで、どんどんと拡散されていきます。フォロワーが少なくても、リツイートによって大きな表示回数を獲得することもあります。そのため、

イベントの告知やキャンペーンをすることで認知を上げたい

場合は向いています。ユーザー層としては、10代後半から20代までの若年層が厚いですが、ユーザー数の母数も多いので、40代以上のユーザーも一定数存在しています。また、BtoB、BtoCの両方に向いています。さらに、ユーザーの本音が拾いやすいです。今までアンケートなどで行っていた商品の評判の収集を、エゴサーチすることもできます。

なお、企業がSNSに取り組む際に、最も懸念すべきことが「炎上」です。

Twitterは実名登録が必須ではないので、発信が自身の日常生活に影響がないこともあり、誹謗(ひぼう)中傷が発生しやすい

です。炎上は、思いもかけないところが発信となります。Twitterにアカウントを持っていると、炎上対策が講じられますが、アカウントを持っていないと対策もできません。そういう意味でもTwitterでアカウントを持つ必要はあるのではと考えます。

デメリットは、Twitterは利用者数が多いことも影響していて、発信が届かないことがあります。他のSNSと比べても投稿頻度を多く確保する(運用工数をかける)必要があります。

3)LINEは幅広い年代層で利用されています。高い世代への訴求にも適しています

LINEは9000万人のユーザーと日本で一番利用されています。幅広い層に利用されていて、40代から60代の利用率も高いです。メッセージを送るツールとして利用されていることもあり、アクティブ率も高く、

企業がビジネスシーンで活用するケース

も増えています。性別を問わず全ての世代に効果があります。また、台湾やタイ、インドネシアにもユーザーが多く、アジア圏において展開する商品がある場合は有効に活用できます。

企業で利用する場合、ビジネス利用に特化したLINE公式アカウントを開設します。以前は高額な予算が必要でしたが、現在は無料で開設が可能です。リアル店舗やECサイトの運営など用途はさまざまです。メッセージやクーポン、アンケートなどを送信できます。

デメリットは、友だちとしてつながったユーザーに対して発信できるクローズドなSNSですので、FacebookやTwitterのように、誰にでも見てもらうことができるオープンなSNSとは違います。まずは、友だちとしてつながらなければなりません。

4)Instagramは画像や動画などビジュアルでアプローチする商品・サービスに向いています

Instagramはユーザー数やアクティブ率が上昇過程にあるSNSのひとつです。画像や動画といったビジュアルでの訴求に適していますので、

コスメ系やファッション系の商品やサービスでの活用

をお勧めします。テキストでの訴求には向いていません。当初は、若い女性を中心に利用されていたメディアでしたが、今は幅広い層に利用されています。

デメリットは、Facebookにはシェアを拡散する機能、Twitterにはリツイート機能がありますが、Instagramにはありません。

5)YouTubeは動画で幅広い年代層に訴求できます

YouTubeは日本で6500万人、世界で20億人のユーザー数です。インターネットユーザーの3分の1が利用する巨大プラットフォームに成長しています。そのため、

動画素材をコンスタントに更新できるならば、幅広い層に対して、世界にもアプローチ

できます。チャンネル登録したユーザーに最新動画の更新を通知できたり、関連動画を表示することで、ユーザーの滞在時間を長くすることができたりします。

デメリットは、動画素材を用意しなければならないことです。内製化できればいいのですが、外注すると費用がかかります。更新頻度もある程度担保しなければなりません。お気に入りのチャンネルが1本か2本しか動画がなかったり、最新の更新が1カ月前だったりすると、熱が冷めてきてファン離れすることもあります。ただし、スマートフォンで撮影・投稿ができるショート動画機能もリリースされているので、それを上手に利用すれば更新負担を軽減できるかもしれません。

6)TikTokは若年層対象の商品・サービスに向いています

TikTokは日本では950万人ですが、若年層に爆発的な広がりを見せています。まだユーザーが増えている段階ですので、先行者メリットを得られます。そのため、

若年層を対象にしたエンターテインメント・教育・How Toなど生活に役に立つコンテンツの投稿

が増えています。最近ですと、不動産賃貸で成果を上げ始めているところもあります。

スマートフォンを利用して、簡単に自分自身で1分以内の短い映像を撮影・編集し、投稿することができます。BGMもあらかじめ用意されているリストから組み合わせることも可能です。全て感覚的に扱えるUIになっているので、難しい操作もありません。

デメリットは、「広告以外」の商業利用ができないことです。クーポンを送ってサイトや店舗に流入してもらうとか、商品の直接的な宣伝を投稿するなどはふさわしくありません。

7)LinkedInも経営者にアプローチするには有力なSNSです

LinkedInはビジネスで活用できるSNSです。ちょっと前までは転職や採用を促進するという使われ方をしていました。そのため、

SNSの中で一番経営層にアプローチしやすい

という特徴があります。

世界規模では8億1000万人のユーザーがおり、海外ではLinkedInのアカウントを名刺代わりに交換されています。海外展開も視野に入れている商品・サービスを展開するときには、絶好のSNSともいえます。

デメリットは、日本でのユーザー数が200万人以上と、やや物足りないことです。ただ、利用している人数が少ないがゆえに、経営者とつながりやすい利点があります。自社のビジネス情報を発信し、顧客やビジネスパートナーとつながっている事例もあります。

3 企業がSNS運用で失敗してしまう例

1)目標の設定を間違っている/SNSについて理解を得ていない

SNSはファンづくりですので時間がかかり、ちょっと投稿すれば、すぐに成果が出るものではありません。最終的には成果を目標にするべきですが、開始3カ月後に問い合わせ〇件などは非常に難しいです。1年後に成果が出るよう、段階的に目標を設定します。時間がかかってしまう状況を上長に理解してもらうようにしましょう。

また、SNSを始める前に、

「なんのためにSNSをやるのかという目的」はきちんと固めておく

ことが大切です。目的はその後修正してもいいのですが、目的からずれそうになったときには、振り返ることは重要です。

始めて1カ月後に成果が出ないと上長に詰められて、モチベーションが下がってしまうということがよくあります。成果が出ないと、きちんと組み立てて進めていた投稿内容にまで口を挟まれて、さらにモチベーションが下がってしまうこともよくあります。

広告はすぐに効果が出ますが、SNSは気長に育てるものです。結果は時間とともに付いてきます。

2)ただの告知だけになっている/更新頻度が担保できない

もし、気に入ったSNSがあっても“最新の更新は3週間前かぁ”と、更新が全然されていないことで、ユーザーの熱が冷めてくることがあります。興味を持ってもらったのに、チャンスを逃してしまう瞬間です。定期的に会社の思いや人となりを発信することで、興味を持ってもらうようにしましょう。更新頻度は、まずは週に3回(Twitterは1日5投稿)を目安にしてください。

コーポレートサイトのお知らせをそのままSNSに転載しているだけということがあります。更新はしていても、SNSを見に来る方は、企業のお知らせを見たいわけではありません。もちろん、告知も大事ですが、情報が多すぎてしまうのもいけません。

3)体制の不整備によるトラブル発生と悪化

炎上の事例です。フォロワー数も順調に伸びて、影響力が出始めた企業アカウントがあります。ある投稿をしたところ、表現が一定数のユーザーによって批判を浴びました。担当者は焦って、自分の独断で投稿を削除してしまいました。今度は、削除前にスクリーンショットを撮影していたユーザーが、その画像を上げました。結果的に、削除前とは比較にならないほど大規模な拡散が行われ、炎上案件になってしまいました。

この場合、削除をしないことが大切です。また、担当者以外に対応を判断する責任者を決めておきましょう。他にも、「批判的な書き込みにはどう対応するか」「炎上した場合のフロー」「災害時に投稿をどうするか」など、前もって決めておいたほうが安心できます。

以上(2022年5月)

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画像:Julien Eichinger-Adobe Stock
執筆者サイト:https://yoshikazunomori.com/

組織のモチベーションを高めるために2つのセオリーを意識して実践しよう

書いてあること

  • 主な読者:部下のモチベーションを高めたい上司
  • 課題:各人によってモチベーションの要因が異なる
  • 解決策:2要因理論と欲求段階説を意識して意見を出させる環境づくりや、普段のコミュニケーションを充実させるなどを、いま一度見直す

1 モチベーションは人それぞれ。理論で考え多数派を取る

いつの時代も、社員のやる気を引き出すのは難しい問題です。一昔前なら臨時ボーナスやインセンティブの提供、新しいポストへの抜てきなどがモチベーションにつながりましたが、今は必ずしもそうではありません。「自身の成長」や「ワークライフバランスの重視」など、給与や昇進とはまた違うものをモチベーションにしている人も多いです。

問題は、価値観が多様化しすぎて、社員一人一人の異なる欲求を全部満たすことはできないという点です。だからこそ、この記事では、

人間の欲求を理論で考え、多数派の欲求を押さえること

をご提案します。具体的には、人間の欲求に関する理論として有名な、

  • 2要因理論:職場での特定の要素によって社員が不満や満足感を持つ
  • 欲求段階説:人間はより高い次元の欲求の達成に向けて行動する

の2つのセオリーと、これらのセオリーを実際の職場で活かしていくポイントをご紹介します。

2 給与は実はモチベーションにつながりにくい?

1)まずは2つのセオリーを押さえよう

1.ハーズバーグの「2要因理論」

心理学者フレデリック・ハーズバーグが提唱した、仕事に対する不満の要因となる「衛生要因」と、満足をもたらす「動機付け要因」に注目する理論です。

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衛生要因には、満たされないと不満につながるが、満たされても満足しにくいという特徴があり、動機付け要因には、満たされると満足しやすくなるが、満たされなくても不満にはつながりにくいという特徴があります。

2.マズローの「欲求段階説」

アブラハム・マズローが提唱した、人間の持つ内面的欲求を5段階に分けて考える理論です。

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第1段階「生理的欲求」が最も低位、第5段階「自己実現の欲求」が最も高位で、人間は低位の欲求が満たされると、より高位の欲求が生じるようになるという考え方に立っています。

2)給与を上げるだけでは限界がある

この2つのセオリーを通して、まず皆さんにお伝えしたいのは、

給与は、意外とモチベーションにつながりにくい

ということです。

2要因理論で考えると、給与は「衛生要因」に当たります。衛生要因には前述した通り、満たされないと不満につながるものの、満たされても満足しにくいという特徴があります。つまり、

不満が出ないレベルの給与は払わないといけないが、多く払ったからといって、モチベーションにつながるわけでもない

ということです。

また、欲求段階説に立った場合、給与は主に第1段階から第3段階までの欲求を満たすことはできますが、第4段階や第5段階の欲求とは直接の関わりを持ちません。

3)結論:達成感や承認欲求に着目する

給与がモチベーションにつながりにくい一方、

達成感や承認欲求が満たされる組織風土は、モチベーションにつながりやすい傾向

があります。2要因理論でいえば「動機付け要因」、欲求段階説でいえば第4段階「尊厳の欲求」や第5段階「自己実現の欲求」といった高位の欲求です。

動機付け要因は、前述した通り満たされると満足しやすくなるが、満たされなくても不満にはつながりにくいという特徴があります。また、欲求段階説で、高位の欲求が満たされる状態というのも満足感が高い状態です。

ですから、会社は、

  • 社員の人間的成長や満足の向上など、強い動機付け要因を満たすこと
  • より高位の欲求である第4段階「尊厳の欲求」や第5段階「自己実現の欲求」を、普段の仕事の中で満たす方策を考えること

です。以降で、そのための方策を紹介します。

3 達成感や承認欲求が満たされる組織にするには?

1)動機付けはまず「意見を出せる」環境づくりから

組織のモチベーションを高めるには、まず仕事に関する意見を自由に言える環境を整えましょう。「風通しの良い環境」は前向きになりやすく、一丸となって目標に向かおうという雰囲気が生まれます。管理者(経営者や管理職)に求められる役割は次の通りです。

1.普段のコミュニケーションを充実させる

管理者から元気にあいさつをするのはもちろん、毎日、社員に何気なく声を掛けるようにしましょう。話題は、堅苦しくないカジュアルなもので、社員が答えやすいものにします。コンサートに行った、飲み会があったなど前日の社員の予定を聞いておけば、「楽しかった?」というように気軽に声が掛けられます。

また、会話の“蚊帳の外”にいる社員に気を配るのも大切です。特定の社員同士がいつも盛り上がっていて、他の社員があまりよく思っていないようなときは、話を少し抑えます。また、できればよく思っていない社員も、話の輪に入れるように管理者が導くことも大切です。

2.社員に意見を出させる

管理者は、会議はもちろん、ちょっとした打ち合わせでも、できるだけ多くの社員に意見を出してもらうようにしましょう。ほとんど意見を出さない社員には、直接問い掛けます。その際は、次のような工夫をしましょう。

  • いきなり具体的な案を求めるのではなく、先に出ている意見をどう思うかなど、答えやすい質問から誘導する
  • 社員が出した意見は聞き流すことなく、まず肯定的に受け止める

2)挑戦しやすい環境をつくる

モチベーションが高い社員には、希望する仕事や新しい仕事にどんどん挑戦してもらいましょう。もちろん、投げっ放しではなく、必要に応じて管理者が仕事の方向性を示したり、相談に乗ったりします。

また、挑戦させた仕事が成功したら、きちんとその社員を褒め、その成功を喜び合いましょう。逆に失敗しても決して頭ごなしに怒鳴ったりせず、共に失敗した原因や対策を考えましょう。組織全体に仕事に対する挑戦意欲が広がれば、モチベーションも高まります。

3)組織の目標・行動指針の明確化と落とし込み

組織の雰囲気が良くなってきたら、組織の向かうべき方向性(組織の目標、目標達成のための行動指針)を提示して、全体の意識を統一していきます。これをはっきり提示しないと、社員が組織の方向性からずれた努力をしてしまう恐れがあります。せっかく組織のために頑張っても評価されなければ、達成感は満たされず、モチベーションの向上も見込めません。

ですから、管理者は組織の方向性をいかに分かりやすく伝えるかが重要です。目標や行動指針が抽象的な場合、具体的な数値を使って「見える化」するなどの工夫をしてみましょう。

4)組織の役割と責任範囲の明確化

前向きで積極的な組織には仕事が集まります。ただ、仕事が集まりすぎる状態が長く続くと、社員の間に、「なぜ私たちがここまでしなければならないんだ」という不満が広がります。

こうならないよう、管理者は組織の役割と責任範囲を明確にします。決められた範囲を超える仕事が他の組織から集まってきて負荷が掛かりすぎるようなら、他の管理者とも相談して、仕事の量を調整しましょう。

5)必要な権限の付与

組織の役割と責任範囲を決めたら、次は組織(実際は社員ベース)に対して権限を委譲します。権限の委譲は信頼と期待の証し、組織のモチベーションを高めるきっかけになります。

一方、権限の委譲はプレッシャーになることもあります。そのため、権限を委譲するのは、その職務を遂行する能力があり、それを任せても業務過多にならない社員ということになります。

6)組織間の良好な関係の構築によるモチベーション低下の防止

権限の範囲内の行動であっても、例えば一方の組織がもう一方の組織に無理をさせ続けると、無理をさせられた組織に不満がたまります。典型的なのは、営業と現場(製造あるいはサービス提供部門)の対立です。

営業担当者が顧客からの急な依頼を受け、現場に短い納期で製造を依頼することはよくありますが、現場にとっては負担です。モチベーションが高い現場でも、急な依頼が続く場合や、営業担当者が「顧客からの依頼なのだからやってもらわないと困る!」といった態度を取ると、組織間でギクシャクした雰囲気になります。

別の組織に負荷を掛ける場合は、無理をお願いしていることを忘れず、負荷を掛けることになった経緯と理由をしっかりと説明しなければなりません。さらに、組織間で普段から互いに労をねぎらう、コミュニケーションを取るなどして良好な関係を保っておくことが必要です。

このように、小さな配慮を積み重ね、関連する組織同士が良好な関係を保っておくことで、それぞれの組織は気持ち良く仕事ができます。管理者は、他の管理者と良い関係を築くのはもちろん、大きな仕事がひと山越えたときには、関連する組織の社員の労をねぎらったり、組織間で社員同士が交流する場を設けたりするとよいでしょう。

以上(2022年5月)

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画像:Studio Romantic-Adobe Stock

【管理会計】売上がどこまで減ったら、赤字になるか分かりますか?

書いてあること

  • 主な読者:感覚だけでなく、定量的な基準や根拠を持ってビジネスの判断をしたい人
  • 課題:売上がどこまでになったら、利益が0になるか分からない
  • 解決策:自社の利益体質を知りつつ、損益分岐点分析で利益が0になる売上高を確認する

1 質問:売上がどこまで減ったら、赤字になるか分かりますか?

業績の悪化が見込まれる際、対策を考える前に知らなければならないのが、利益を確保するためにはいくらの売上高が必要なのかということです。そのためには、利益が0になるときの売上高を計算します。

この利益が0になるときの売上高を「損益分岐点売上高」といい、この分析のことを損益分岐点分析(CVP分析)

といいます。「CVP分析」のCVPとは、それぞれC(コスト:Cost)、V(販売量:Volume)、P(利益:Profit)の頭文字であり、コスト・販売量に基づく利益を分析する手法です。

CVP分析は、

  • コストの構造を踏まえた自社の利益体質を理解することができる
  • 会社全体だけでなく、事業別・商品別などに細分化して集計することで、区分ごとの収益性が把握できる
  • 新規参入を検討している新規事業や、既存事業の評価に活用できる

など、経営管理上さまざまな使い道があります。まずは、基本的な計算方法と分析に必要な指標を押さえましょう。早速、次の簡易的な管理会計の損益計算書から損益分岐点売上高を計算してみましょう。

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2 損益分岐点売上高を計算しよう

損益分岐点売上高は、営業利益が0になる売上高です。営業利益の計算式から損益分岐点売上高の算式を考えます。

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算式に上記の事例の数値を当てはめると、

売上高=3500千円/(1-0.6)=8750千円

になります。

3 CVP分析に使う主な指標「安全余裕率」と「損益分岐点比率」

CVP分析では、上記で計算した損益分岐点売上高を使用して、

  • 安全余裕率:損益分岐点売上高に対する安全余裕額(実際の売上高と損益分岐点売上高の差)の割合
  • 損益分岐点比率:実際の売上高に対する損益分岐点売上高の割合

といった指標を使います。2つは表裏一体なので、いずれか1つで大丈夫なのですが、念のため、両方の計算式を紹介しておきます。

安全余裕率は、

(実際の売上高-損益分岐点売上高)/実際の売上高

で計算されます。今回の事例の数値を当てはめると、

安全余裕率=(9000千円-8750千円)/9000千円≒2.8%

になります。安全余裕率は、現在の売上高が何%減少すると、赤字になるかを示しており、高いほど業績が良いことを表しています。

安全余裕率と表裏一体となる損益分岐点比率は、

損益分岐点売上高/実際の売上高

で計算されます。今回の事例の数値を当てはめると、

損益分岐点比率=8750千円/9000千円≒97.2%

になります。損益分岐点比率は、低いほど業績が良いことを表しており、業種によって異なるものの、一般的に80%以下が好ましいといわれています。

CVP分析により、自社の利益体質がどのような状況なのかをチェックしてみましょう。そして、数値は推移で見るようにしてください。単年度の数値を見ただけでは、状況は分かりませんが、年度ごとの推移で見ることで、体質の変化が分かるようになってきます。

以上(2022年5月)
(執筆 管理会計ラボ株式会社 取締役・公認会計士 福原俊)

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画像:apinan-Adobe Stock

【経営者アンケート】経営者が部門長に求める素養を偉人で例えたら、人事部門のトップはあの「先生」だった!

書いてあること

  • 主な読者:各部門のトップにふさわしいのは、どのような人材なのかを検討している経営者
  • 課題:自分の考えはもちろん、他の経営者がどう考えているのかも知ってみたい
  • 解決策:歴史上の偉人に例えて、各部門のトップの素養についてイメージを固める

1 経営者が考える部門長の素養

各部門のトップにふさわしいのは、どのような人物なのか。他の経営者の意見を聞いてみたいと思いませんか?

経営者111人を対象に、2022年3月にインターネットを通じてアンケートをしてみました。「総務・労務、企画・開発、人事、法務、財務、営業、DX」の7部門のトップとしてふさわしいのは誰なのか。各部門5~6人の偉人を例示した上で、「その他」も含む1人を選んでもらいました。

アンケート結果を2本に分けて紹介します。

  • 00630 【経営者アンケート】経営者が部門長に求める素養を偉人で例えたら、人事部門のトップはあの「先生」だった! (この記事)

2 総務・労務部門は武田信玄

1)戦国最強軍団の陰に、トップの気使い・人使いあり(16人、14.4%)

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戦国最強軍団のトップに君臨した「甲斐の虎」ですが、「人は城、人は石垣、人は堀……」の言葉で知られるように、部下との信頼関係の構築に腐心し、多様な人材を上手に活用した“気使い・人使いの人”という側面もあります。

その人間力を評価する声が多く、トップでなくナンバー2としての活躍も期待できそうです。

  • 人使いが上手そう(60代男性)
  • 人の使い方を教わりたい(60代男性)
  • 旗振りが上手そう(50代男性)
  • 気配りができる(50代男性)
  • 戦略にたけ、部下からの信頼度が高い(60代男性)
  • 視野の広さ(50代男性)
  • 総務・労務は何でも屋(60代男性)
  • 情に厚い(70代男性)
  • 人材登用、人を見る目がある(40代男性)

2)第2位:豊臣秀長(15人、13.5%)、目立たず支えるナンバー2は若手層にも人気

  • Mr.ナンバー2(40代男性)
  • 陰の立役者(50代男性)
  • トップを目立たずに支える(50代男性)
  • 陰で支えるような人(50代男性)
  • 裏方に徹する(40代男性)
  • 上を立ててくれる(40代男性)
  • バランス感覚に優れる(70代男性)
  • 常におごることをしない(60代男性)

3)第2位:勝海舟(15人、13.5%)、上司でも部下でも結果を出せるオールラウンダー

  • 清濁併せのむことができそう(60代男性)
  • 森も木も見て最善の判断をしてくれそう(50代男性)
  • 人を動かす力がある(60代男性)
  • 組織をボトムアップに支えてくれそう(40代男性)
  • 強い相手にも対等に渡り合う交渉術が素晴らしい(60代男性)
  • 個々の能力を高め、適材適所に人を配置するようなきめ細かさ(70代男性)
  • 地味な役回りだが、人的な損害を最小限に抑えた手腕はすごい。人の間に立って、妥協点を見つけられる(60代男性)
  • いついかなるときにも冷静沈着に判断するとともに、江戸城無血開城のように、自身の功名よりも民の日常を守ろうとする意識は望ましい(60代男性)

4)第4位:直江兼続(8人、7.2%)、しっかりと筋を通す「愛」の人

  • 筋を通す人でないと務まらない(50代男性)
  • 自ら率先して陣頭に立つことができる行動力と、出金・入金の把握をした上で立つことができる(60代男性)
  • 真面目そう(50代男性)
  • 単純に人物が好き(40代男性)

5)第5位:北条義時(7人、6.3%)、「旬な人」の評価はさまざま

  • 気配り上手(80代男性)
  • 調整力(60代男性)
  • 頭が良い(50代男性)

6)第6位:春日局(4人、3.6%)、大奥を取り仕切った凄腕をマニアが評価

  • 仕切りのうまさが抜群(80代男性)
  • 上層部から部下(他部署の部下も)まで、しっかりとコントロールできる方かなと思います(50代男性)
  • 組織の裏も表も知り尽くした上で戦略的に組織運営してくれそう(60代男性)

3 企画・開発部門は黒田官兵衛

1)天下を取らなかった能力抜群の名軍師(34人、30.6%)

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「豊臣秀吉の軍功の陰にこの人あり」といわれ、秀吉の天下統一を支えた名軍師です。その一方で秀吉は官兵衛の能力を恐れて、広い領地を与えなかったともいわれています。

軍師としての能力に対する評価が圧倒的でしたが、中には「天下を取らなかった」ことを評価する声も聞かれました。

  • 縁の下の力持ち。表舞台に出ず、主君を支える。現在でもこのような方々によって繁栄している企業は多いと思う。ただしトップが聞く耳を持つか否かだが(70代男性)
  • 最も戦略と戦術を上手に使い分けることができる人のような気がする(50代男性)
  • 必要性を理解して、実行に移すことができる行動力(60代男性)
  • 自分にはない、「知」がありそう(60代男性)
  • 周りも見ながら新しい物事を進めていけそうに感じる(60代男性)
  • 広範囲な知識をもって、時節に合った的確な判断ができる(60代男性)
  • 自分がトップに立つことなく能力を発揮してくれそう(50代男性)
  • 下剋上は求めていない(50代男性)

2)第2位:織田信長(12人、10.8%)、とがったキャラの突破力に期待

  • 異常なくらい新しがり屋(80代男性)
  • マーケティングの能力が高そう(50代女性)
  • 戦略に優れているし、決断力もある(80代男性)
  • 発想が優れている(60代男性)
  • 固定観念にとらわれない提案がありそう(40代男性)
  • 未来を見て、切り開く能力にたけている(70代男性)
  • 元気そう(60代男性)

3)第2位:徳川家康(12人、10.8%)、信長と真逆の安定志向派が支持

  • 常に計算高く、ばくちなど冒険はせず、安定した精査が得意(60代男性)
  • 安定性(70代男性)
  • 企画開発は冒険も無理強いも要らない。鳴くまで待つ戦略(60代男性)
  • この人に、自社の経営戦略を聞いてみたい(60代男性)
  • 思考が柔軟(80代男性)
  • 頭脳的な戦略を持っていそう(50代男性)

4)第4位:西郷隆盛(10人、9.0%)、人望や人間性を評価

  • 人徳があり人脈を武器として部下も大事に戦い続けてくれそう(50代男性)
  • 人望と行動力のバランスが良いと感じる(40代男性)
  • 私利私欲より全体のことを考えている(80代男性)
  • 裏も表も知り尽くしている(60代男性)
  • 諦めない心(50代男性)

5)第5位:北条政子(2人、1.8%)、鎌倉幕府を支えた「尼将軍」の評価はイマイチ

  • 戦国の荒武者たちをまとめ上げる力がある(60代男性)

4 人事部門は吉田松陰

1)高杉晋作など多士済々の志士を輩出した情熱と感化力(28人、25.2%)

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わずか29年の生涯でしたが、主宰した松下村塾からは、高杉晋作、伊藤博文、山県有朋など維新・明治期に活躍した偉人を多数輩出しました。

ペリーの黒船に乗り込んで海外留学を試みる情熱と行動力に加え、獄中で罪人たちを学問に目覚めさせる「感化力」も持ち合わせた幕末の先駆的な思想家でした。

  • 抜群の人材育成の成果がある(40代男性)
  • 自分の後に続く人材を育てた(80代男性)
  • 部下の教育にたけている(60代男性)
  • 先を見据えた教育、必要な人材の育成ができると思える(60代男性)
  • 学問だけではなく、熱意も波及させたところ(40代男性)
  • この人の教育に対する思いを聞いてみたい(60代男性)
  • 改革の人だから(60代男性)
  • 最近、夢を持たない若者が多いから(50代男性)
  • 確固たる思想を持っている(40代男性)
  • 人を掌握する力を感じる(60代男性)
  • 俯瞰(ふかん)できる(80代男性)

2)第2位:津田梅子(15人、13.5%)、女子教育の発展に尽力した米国育ちの先駆者

  • 時代を大きく変える教育を行った(50代女性)
  • ジェンダーフリーに対応した教育をしてくれそう(60代男性)
  • 部下の教育にたけている(60代男性)
  • 人材を育ててくれそう(60代男性)
  • これから何が必要になるか先読みできる(60代男性)
  • 既成概念にとらわれない発想(60代男性)
  • 先進性(80代男性)
  • 困難に立ち向かう強さを感じる(50代男性)

3)第3位:島津斉彬(10人、9.0%)、進取の精神で西郷隆盛も発掘した幕末の名君

  • 人を見いだす目は一番ありそう。教育なら他の方かもしれないが、会社で(社会に出て)学び成長するのは本人の義務なので、社内教育の優先順位は低め(50代男性)
  • 人材発掘をやってくれそう(60代男性)
  • 自身の鍛錬を怠らず教育してくれそう(50代男性)
  • 先見性を持った采配ができそう(40代男性)
  • 地道に活躍する方は尊敬したい(70代男性)

4)第4位:山内一豊の妻(千代)(4人、3.6%)、「内助の功」も“今は昔”?

  • ワンマンにならないために必要な人(50代男性)

5)第5位:緒方洪庵(3人、2.7%)、適塾が輩出した偉人は多彩さでは松陰以上?

  • 福沢諭吉などを育てた(60代男性)
  • 多くの偉人を育てている(50代男性)

5 法務部門は大岡越前

1)「大岡裁き」に注目集まるも、実は有能な為政者としての実績あり(25人、22.5%)

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テレビドラマでおなじみの大岡忠相です。江戸中期に旗本の四男に生まれ、8代将軍徳川吉宗によって江戸の南町奉行に抜擢されました。伊勢に赴任時、隣国である吉宗の紀州藩におもねらない公平な裁き(いわゆる「大岡裁き」)を行ったことが評価されたともいわれています。

江戸では、消防団に近い「町火消」を編成した他、貧しい人などを無料で治療する医療施設「小石川養生所」を設置するなどの施策で吉宗の享保の改革を支え、1万石の大名にまで引き立てられました。

  • 真面目で、規律正しい(60代男性)
  • 素晴らしい裁きをする(50代男性)
  • 血の通った法律運用術(70代男性)
  • 情の深い、庶民目線の裁きが好き(60代男性)
  • 問題が起きたときに頼りになる(60代男性)
  • コンプラに関しては大岡裁きは要らないが(60代男性)
  • 数々のドラマ通りなら…(70代男性)
  • 人情(20代男性)

2)第2位:廐戸皇子(聖徳太子)(9人、8.1%)、十七条憲法でも知られる伝説的人物

  • 前例のない時代にあれだけのものを作った実績がある(40代男性)
  • 法の先駆者(60代男性)
  • ルール作りに向いてそう(60代男性)

3)第3位:遠山左衛門尉(遠山の金さん)(8人、7.2%)、桜吹雪はドラマだけ?

  • 平等に、人情もある(60代男性)
  • 名奉行(60代男性)
  • 法律に詳しい(60代男性)

4)第4位:板倉勝重(6人、5.4%)、江戸初期の名奉行は「三方一両損」のモデルとも

  • 法律に詳しいだけでなく、多くの人にいい形で運用できるのは、この方が一番。法を作るよりも、運用のほうが大事(50代男性)
  • 戦うことばかりが法務の仕事ではないが、機転を利かせて丸く収めることができる発想力を評価して(60代男性)
  • さまざまな立場の人たちをうまくまとめられそう(40代男性)

5)第5位:北条泰時(4人、3.6%)、北条義時の長男で御成敗式目を定めた第3代執権

  • 御成敗式目を作ったから(50代男性)
  • 法令遵守を実行してくれそう(60代男性)

いかがでしたか? 財務、営業、DXの結果もお楽しみください。

以上(2022年5月)

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画像:Mariko Mitsuda

【経営者アンケート】最強布陣が確定! DX部門のトップにスカウトしたい偉人はあの発明家だった!

書いてあること

  • 主な読者:各部門のトップにふさわしいのは、どのような人材なのかを検討している経営者
  • 課題:自分の考えはもちろん、他の経営者がどう考えているのかも知ってみたい
  • 解決策:歴史上の偉人に例えて、各部門のトップの素養についてイメージを固める

1 各部門のトップの人物像を固めておきたい経営者の方に

「総務・労務、企画・開発、人事、法務、財務、営業、DX」の7部門の長としてふさわしい自分を経営者に聞いたアンケート。いよいよ最強布陣が決定します!

なお、総務・労務、企画・開発、人事、法務の結果は以下のコンテンツで紹介しています。

2 財務部門は渋沢栄一

1)会社設立の豊富な経験と公共心(31人、27.9%)

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大河ドラマでも記憶に新しい、明治屈指の経済人です。「論語と算盤」の著作でも知られるように、電気や鉄道などのインフラ、銀行、保険、製紙など約500もの会社の設立に関わる一方で、福祉事業にも取り組みました。

多くの会社の立ち上げに関わった豊富な経験を望む声が多く、公共心を評価する人もいました。

  • 先見の明があり、新しいビジネスを精力的に生み出し、なおかつ成功させる力がある(60代男性)
  • たくさんの会社を起こしたとされるが、その分多くの失敗もあっただろうと思われる。そんな多くの失敗でもくじけない危機を切り抜ける精神力を味方に付けたい(50代男性)
  • 事業の立ち上げには決断力とパワー、運も要ると思うから(50代男性)
  • 多業種を起業しているので、多様な発想ができる(60代男性)
  • やりきる力がある(60代男性)
  • 新しい風を資金面から見据えて引き込む力(60代男性)
  • 小さな私個人の権益ではなく、もっと広い視野に立った見方ができそう(70代男性)

2)第2位:上杉鷹山(13人、11.7%)、再建を望む経営者からの熱烈なラブコール

  • 弱小藩を立て直した功績は大きい(80代男性)
  • 会社の再建には適任と思われたので(50代男性)
  • 状況を改善してくれそう(50代男性)
  • 少ないリソースを活用できそう(60代男性)
  • 質素倹約の体制で経理を務めてくれそう(60代男性)
  • 今と危機感が似ている(40代男性)
  • 自社の経営課題にぴったりの人物(60代男性)

3)第3位:石田三成(10人、9.0%)、信頼できる真面目で忠実な能吏

  • 忖度(そんたく)などせず数字で判断してくれそうだから(50代男性)
  • 全て安心して任せられそうだから(50代男性)
  • 生真面目できちょうめん(60代男性)
  • 全体の把握力と部分的な課題解決を手早く行うことができる判断力と実行力(60代男性)
  • その場の数字で評価ではなく、全体の数字がみえる。一部門ではなく会社全体を上げられそう(60代男性)

4)第4位:田沼意次(9人、8.1%)、変化への対応力を若手経営者らが支持

  • 経済構造の変化を把握していたところ(40代男性)
  • 当時としては発想や施策が先取的だったので(40代男性)
  • 全社的横断的に管理、運営できそうだから(60代男性)

5)第5位:二宮尊徳(金次郎)(6人、5.4%)、人間的な魅力も評価

  • 周りを守りながら責任を持った決定ができそうに感じた(60代男性)
  • 貧困の農民に、効率的な仕事の仕方を教えて、財を成す方法を教える指導力(70代男性)
  • 堅実に業務を遂行してくれそう(50代女性)

3 営業部門は坂本龍馬

1)日本初の商社や薩長同盟に携わった、志高きビジネスと交渉の達人(33人、29.7%)

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小説の中で形作られた魅力。持ち前の行動力と人脈を広げる才能によって、薩長同盟の仲介役や大政奉還の献策といった歴史を動かすキーマンの役割を果たすとともに、日本初の商社とされる「亀山社中(後の海援隊)」を結成するなど、商才も発揮しました。

日本初の海難審判事故とされる「いろは丸沈没事件」では、御三家である紀州藩を相手に、自作の歌をはやらせて世論を味方に付ける戦略も奏功して、見事に賠償金を獲得した交渉上手でもあります。

  • 商売に優れていて、人を納得させる話術もある(60代男性)
  • 商談をまとめるのがうまい(60代男性)
  • さまざまな関係者をうまくまとめられそう(40代男性)
  • 発想が大胆で、交渉力がある(60代男性)
  • 上下の隔てなく人付き合いができそう(40代男性)
  • 国民の未来を見据えてどんな相手も味方に付け前進する力がすごい(60代男性)
  • 行動力があって人望がある(60代男性)
  • 商売を作り、金借りがうまい(60代男性)
  • 過去、習慣にとらわれず新しい顧客を開拓してくれそう(50代男性)
  • 新しい仕事の開発を任せてみたい(60代男性)
  • 既存のことにとらわれず行動できる(50代男性)
  • 世界を相手にしようとした(50代男性)

2)第2位:豊臣秀吉(18人、16.2%)、天下人に上り詰めた「人たらし」の能力

  • 人たらしは営業力がある(60代男性)
  • 営業は人たらしが一番(50代男性)
  • 相手を味方にする力(80代男性)
  • 偉い人(決裁者)に取り入るのがうまそう(40代男性)
  • 戦国の「出世頭」感が強い。周りへの気配りや裏付けをしっかりしそう(40代男性)
  • 懐に飛び込むことができると考えたため。実子が誕生する前までの秀吉に限る(60代男性)
  • どんな相手にも打開策を見いだしてくれそう(40代男性)
  • アイデアも努力もそうだが、何よりも大勢で成し遂げなければならない課題に立ち向かうときに大事になるのは、人をまとめ上げる能力だから(50代男性)
  • 全幅の信頼はできないため、経営層には向かないが、営業の第一線ではカリスマ性を発揮しそう(60代男性)

3)第3位:源義経(4人、3.6%)、不可能と思われた平家打倒を実現した剛腕

  • 無理を成し得た男(50代男性)
  • とりあえず攻め(20代男性)
  • 戦うこと(50代男性)

4)第3位:藤堂高虎(4人、3.6%)、主君を7度替えて大名になった戦国の“世渡り上手”

  • 経歴(50代男性)
  • おせじがうまい(60代男性)
  • 人当りが良さそう(60代男性)

5)第3位:伊達政宗(4人、3.6%)、秀吉の怒りを機知と度胸でかわした東北の英雄

  • 営業の長は大胆不敵なところが欲しい(50代男性)
  • 窮地にあって人と和する能力(70代男性)
  • 戦略家(50代男性)

6)第3位:伊能忠敬(4人、3.6%)、日本地図の作成に55歳から歩くこと3.5万キロ

  • コツコツ努力(60代男性)
  • 足で稼ぐ営業を実践してくれそう(60代男性)
  • 努力と実行力(70代男性)

4 DX部門は平賀源内

1)江戸中期のスーパーマルチ人間(29人、26.1%)

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エレキテルの復元や「土用の丑の日」のキャッチコピーで知られる、江戸中期のスーパーマルチ人間です。歩数計、寒暖計、燃えない布などの発明家、薬品の博覧会(物産会)を開催したイベントプロデューサー、小説や浄瑠璃など戯作の作家、西洋画の画家、鉱山開発を指導した技術者など、多彩な才能を発揮しました。

天才といったストレートな評価だけでなく、発想の奇抜さや柔軟な考え方なども評価されているようです。

  • 新進気鋭の科学者(70代男性)
  • 発明家として天才的(40代男性)
  • 開発者(50代男性)
  • 機械に強い(40代男性)
  • 一意的なモノの見方にこだわらない発想力を持っていると思えるから。ないものは造ってしまえというところもまた魅力的(60代男性)
  • 攻めのIT戦略を立案してくれそう(60代男性)
  • 自身も学習鍛錬を怠らず、研究者として革新的なIT化を図ってくれそう(50代男性)
  • 日々進化するIT部門には柔軟な思考とアイデア力(60代男性)
  • 突飛な発想で突き進んでいく性格は、IT部門に向いていそう(60代男性)
  • アイデアの組み合わせがうまそう(60代男性)
  • 視点が色々とあるように見える(60代男性)
  • 面白いものを開発しそう(60代男性)
  • 推進力、実行力がある(40代男性)
  • 頭が良く、どんな事でもやり遂げる(60代男性)
  • 探究心(50代男性)

2)第2位:ジョン万次郎(9人、8.1%)、遭難後の渡米で幕末に貴重な欧米の情報通に

  • 新しいものを取り入れる感覚を持っていそう(50代男性)
  • アメリカの考え方を導入できそう(50代男性)
  • 国際的(50代男性)
  • 転んでもただでは起きない(80代男性)
  • 単純に人物が好き(40代男性)

3)第3位:田中久重(からくり儀右衛門)(7人、6.3%)、19世紀の「東洋のエジソン」

  • ITはただ電気に強いだけではなく、新しい発想に付いていき、自分の発想も組み込みつつ、極めて論理的に考えなければいけないので(50代男性)
  • 難解な課題も集中力と根気の良さで乗り越えていきそう(60代男性)
  • 独自のアイデアに優れている(80代男性)
  • 新しい事をしてくれそう(50代男性)
  • 細かい技術(60代男性)

4)第4位:種子島時尭(6人、5.4%)、16歳の時に西欧の漂着者から銃を購入し国産化

  • 新しいものを受け入れるだけでなく、施策として進める行動力(40代男性)
  • 先見の明(70代男性)

5)第5位:大友宗麟(2人、1.8%)、大砲を国産化した「南蛮」好きのキリシタン大名

  • 組織や社会のことを考えながら技術の導入を進めていってくれそう(40代男性)
  • 新しい技術の導入に優れている(50代女性)

5 決定! これが最強布陣だ!!

アンケートの結果は以上です。アンケートで分かった、経営者111人が考える各部門のトップの最強布陣は次の通りです。

  • 総務・労務部門:武田信玄
  • 企画・開発部門:黒田官兵衛
  • 人事部門:吉田松陰
  • 法務部門:大岡越前
  • 財務部門:渋沢栄一
  • 営業部門:坂本龍馬
  • DX部門:平賀源内

いかがでしたか? 総務・労務、企画・開発、人事、法務の結果を見逃した方は、以下のリンクからどうぞ。

以上(2022年5月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】“意図的”な判官びいきに踊らされるな

私は毎週、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を楽しみにしています。大河ドラマの中でも珍しい、鎌倉時代を扱った作品であり、幕府の礎を築いた源頼朝や北条義時たちによって繰り広げられる命がけの戦いに、毎回ハラハラしています。そんななかで、私が驚いたのは、頼朝の弟である源義経の描き方です。

義経といえば、優れた戦いの才能によって平家を倒すも、兄である頼朝に疎まれて滅ぼされた悲劇のヒーローというイメージがありますが、「鎌倉殿」の義経は、平時はいささか思慮に欠け、自分の感情のままに行動して周囲を振り回すなど、困った人物としての一面も強調されています。私は最初に見たとき、「なんか義経のイメージと違うな」と思ったのですが、調べてみると、どうやら史実でも、義経には武家のリーダーである頼朝の許可なく朝廷から平家討伐のほうびをもらってしまうなど、軽率な一面があったようです。

私たちが普段あまり義経の短所に目を向けず、悲劇的な結末に注目しがちなのは、私たちの中に不遇な人や立場の弱い人に同情してしまう気持ちがあるからです。こうした感情を、義経が朝廷からもらった官職にちなんで「判官びいき」というそうです。不遇な人や立場の弱い人を思いやる感情自体は決して悪いものではないですが、一方で私は、先日ある歴史書の現代語訳を読んで、「“意図的”な判官びいきに踊らされてはいけないな」と思うようになりました。

その歴史書とは、鎌倉幕府の始まりから6代将軍宗尊(むねたか)親王の時代までの出来事を記した「吾妻鏡(あづまかがみ)」です。この歴史書では、家臣からの讒言(ざんげん)を受けて義経を追い詰める頼朝と、頼朝に追われ東北に逃げる義経の様子が詳細に描かれていて、現代まで続く判官びいきの感情の形成に一役買っています。

ただ、実はこの歴史書、頼朝の死後に幕府の実権を握った北条家が、自分たちの政治を正当化するために作ったという説があり、世間の頼朝に対する評価が下がるような書き方を、意図的にしているのではないかと指摘する学者もいます。また、創作も多く入り交じっていて、例えば、義経が断崖絶壁を馬で駆け下りて平家に奇襲を掛けた、いわゆる「逆(さか)落とし」などは、実際にはなかったという説が有力です。

つまり、世間が頼朝に抱く冷酷な支配者のイメージや、義経に抱く悲劇のヒーローのイメージは、もしかしたら北条家が頼朝の評価を下げるために意図的に作り出したものかもしれないということです。仮にそうだとしたら、私はまんまと北条家の思惑に乗せられて「義経哀れ、頼朝憎し」の感情にとらわれていたことになります。

私たちも日々ニュースを見たり、ビジネスで情報収集をしたりしますが、流れてくる情報をただうのみにするのではなく、「これは本当か?」「発信者の思惑は何なのか?」とよくよく吟味しなければならないと思う今日このごろです。

以上(2022年5月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】聞いたことに答えなさい!

今日は、私の友人の笑い話を紹介します。その友人は、スカイダイビングをする予定を立てていましたが、何度も「いざとなったらおじ気づいて、飛ぶのをやめるかもしれない」と言っていました。

彼がスカイダイビングをする予定日が過ぎた頃、私は、はたして彼が飛んだのかどうかが気になって、「飛んだの?」とメールで尋ねてみました。すると、彼からの返信は、「空を飛んだ気持ちは、飛んだ者にしか分からない」という一文だったのです。

皆さんはこの一文から、私の友人がスカイダイビングを無事決行することができたのか、それともできなかったのか、分かるでしょうか? 「飛んだ者にしか気持ちは分からない」というのは、「自分は飛んだ。だからこそ空を飛ぶ素晴らしさが分かる」という感動を伝えているのか、それとも「飛べなかった。だから、自分には空を飛んだ者の気持ちは分からない」と嘆いているのか、どちらなのか分かりません。

メールを読んだ私は思わず、その場で「いったい、どっちなんだ? 聞いたことに答えていないじゃないか!」と笑ってしまいました。

結局、後から「飛んだ」ことが分かり、友人との間では笑い話になりましたが、これが仕事上の話だったらどうでしょうか。プライベートな会話であれば、たとえ「聞いたことに答えていない」としても笑い話で済むことがあるでしょう。しかし、ビジネスシーンではそうはいきません。

ビジネスにおいては、判断したり、次の行動に移したりするために質問をします。聞いたことに答えてもらえなければ、先に進むことができません。時間も無駄になります。

皆さんは、仕事の中で、「聞かれたこと」にしっかりと答えていますか。残念ながら、そうではない人が多いように見えます。特に、皆さんが聞いたことに答えていないのは、「確認したか?」「できたか?」など「はい」か「いいえ」で答えられる質問のときです。

例えば、私や上司が進捗状況を知るために「あの資料できた?」と尋ねると、皆さんは、「この部分は、思うに……」などあれこれと説明し始めます。これでは、聞いたほうは、知りたいことが分かりません。皆さんがまず答えるべきなのは、「できた」「できていない」のどちらかです。

また、仮にできていない場合には、「できていない」と答えるだけでは不十分です。聞いたほうは、どのくらい進んでいるのか、いつできるのかを確認したいのです。「できていません」と事実を答えた上で、「ただし、下調べは済んでおり、他に急ぎの仕事もないので、今日の11時までには完成する予定です」と現状と予定を必ず伝えるようにしてください。相手は、必要に応じてスケジュールなどを調整することができるでしょう。

ビジネスにおいて聞いたことに答えるには、まず、相手の立場に立つことが大切です。今日から、肝に銘じて実践してください。

以上(2022年5月)

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画像:Mariko Mitsuda

スマホで新しい販路を開拓する「ライブコマース」の成功ポイント

書いてあること

  • 主な読者:対面の接客・販売手法だけでなく、「ライブコマース」を取り入れたい経営者
  • 課題:具体的な「ライブコマース」の動向や事例、成功のポイントが分からない
  • 解決策:インターネットとはいえ、コミュニケーションを重視する。関連法令にも注意

1 新たな販路の開拓にライブコマースを!

ライブコマースとは、

ライブ(Live)+Eコマース(E-Commerce)の名の通り、インターネットで商品を紹介する動画をライブ配信し、リアルタイムでオンラインショップでの購入につなげる販売手法

です。日本では、2017年頃に登場し、新型コロナの影響が拡大した2020年以降、ユーチューバーやインスタグラマー、動画アプリのTiktokなどになじみがある、若者や外国人を中心に定着してきています。

売りたい商品を映像で紹介するスタイルは、従来のテレビショッピングと似ていますが、ライブコマースには次のような特徴があります。

  • ネットの動画配信による、視聴者との双方向のコミュニケーション
  • 顧客に対して購入ボタンのワンクリックのみで直感的な購入に導くことができる
  • モデルやインフルエンサーなどがPRすることで、効果的な宣伝が見込める

この記事では、ライブコマースのサービス内容や、企業の取り組み、利用者の動向などについて解説し、ライブコマースで新たな販路を開拓するためのヒントをご提供します。

2 スマホで簡単注文、テレビ通販と実演販売のいいとこ取り

ライブコマースは、スマートフォンなどのアプリを用いて提供するタイプや、自社のECサイトにライブコマース機能を持たせるタイプなどがあります。

配信者が商品を紹介する動画を撮りながら、その動画を見ている利用者の質問などに答えていくスタイルですが、リアルタイムで顧客とコミュニケーションを取るライブコマースは、スーパーで総菜などを目の前で調理してくれる実演販売のようなイメージかもしれません。

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3 多様化が進むライブコマースの活用方法

日本でも、さまざまな業界でライブコマースの導入が進んでいます。最近は、ライブコマースをデジタルな販売戦略の一環として組み込んだり、地方の企業向けにライブコマースのサービスを提供する取り組みも登場したりと、活用方法が多様化してきている印象を受けます。

1)三越伊勢丹HD:実店舗のイベント連動、チャットやビデオ通話で接客

新型コロナが出現する前からライブコマースに取り組んでいた三越伊勢丹ホールディングスは、自社のライブコマースの取り組みを進化させています。これまでは、実店舗でのイベントに連動したものや新商品を紹介する配信を行っていました。

現在では、自社の専用アプリ「三越伊勢丹リモートショッピングアプリ」を提供しています。このアプリは、販売員にチャットでの商品についての相談や、一部の店舗限定ですが、販売員にビデオ通話で商品を見ながら提案を受けたり相談したりすることもできます。

こうした取り組みもあり、同社はライブコマースを含むオンライン売上高を、2024年度には600億円超と計画しています。

2)ファンケル:中国での販売に活用、限定商品や先行情報も発信

化粧品メーカーのファンケルは、新型コロナの感染拡大を機にライブコマースのサービス「ファンケル ライブショッピング」を開始し、自社の強みである通販事業の強化に取り組んでいます。

PR担当者と商品部門の担当者がコンビで、紹介する商品とその使用方法を説明します。配信中は、利用者からの質問などに商品部門の担当者が回答したり、PR担当者が使い心地やメークのコツなどを引き出したりします。

また、ライブコマース限定商品の販売や、その配信でしか聞けない先行情報などもあり、コアなユーザーを引きつける効果的な取り組みといえます。

同社は日本の化粧品に対する評価、需要が高い中国の顧客向けのライブコマース活用にも注力しているようです。同社は2021年11月に中国・上海で行われた博覧会に出展し、SNS「WeChat」によるライブ配信を行ったところ、約8900万人が閲覧したといいます。

3)京都中央信用金庫など:海外向けに店舗や周辺の風景の動画も配信

京都中央信用金庫は、取引先企業の販路拡大を支援すべく、越境ECの事業を行うインタセクト・コミュニケーションズと共に越境ECモール「京都優品跨境商城」の提供をしています。

この越境ECモールは、「WeChat」の軽量アプリ「ミニプログラム」として展開し、京都中央信用金庫の取引先の商品に限定して販売しています。商品の掲載だけでなく、プロモーション動画の配信や、商品を掲載している企業の実店舗や周辺の風景をライブコマースで配信しました。

新型コロナの影響によりインバウンド観光客がほぼ途絶えている中、金融機関が取引先を越境EC、ライブコマースで支援する動きは、今後も要注目といえそうです。

4)クリップス:地場商品を全国に発信

クリップスは、地方創生に特化したライブコマースのプラットフォーム「Sharing Live(シェアリングライブ)」を運営しています。

シェアリングライブの特徴は、地方創生に特化したプラットフォームのため、これまでは地元で消費されることが多かった地場の商品を他の都道府県の視聴者に紹介し、全国に販路を広めることができる点です。その他の同社の強みとして、ライブコマースの動画配信だけにとどまらず、企画や配信者(ライバー)の育成やスタジオ、撮影機器の手配なども一気通貫して提供できることが挙げられます。

こうした特徴を活かし、地方の企業や金融機関と共同でのライブコマースの配信実績を積み重ねています。同社の取り組みは、自治体からも好評を得ているようで、2021年11月には、東京都が主催するスタートアップ支援事業「NEXs Tokyo(ネックス トウキョウ」のモデル事業創出プログラムとして採択されました。

5)楽天:巨大ECサイト「楽天市場」を活用したライブコマース

楽天は、自社が運営するECサイト「楽天市場」の出店企業向けにライブコマースの配信機能を追加しました。

この配信機能は、楽天市場の各店舗が、最大90分の動画配信を行えるものです。また、楽天市場で定期的に行われる「楽天スーパーセール」などのイベントと連動し、動画配信もできます。

直近の配信予定を見ると、アパレルや食品、健康器具を販売する店舗などが比較的多く配信を行っているようです。これらの店舗を見てみると、視聴者限定の10%オフのクーポン発行や、購入時に付与される楽天ポイントを10倍にするなどで、視聴者を引きつける試みを行っています。

4 ライブコマースを成功させるためのヒント

ライブコマースを導入し、ファンや潜在顧客を獲得し、収益につなげるためにはどのような対策が必要なのでしょうか。ライブコマースを取り入れている企業からは、次のようなヒントを聞くことができました。

ライブコマースに対するスタンス:

  • 単なる商品・サービス説明ではテレビショッピングと変わらず、利用者にも飽きられるため、「顧客とのコミュニケーション」に主眼を置くこと。自社や商品の認知度が高くない場合は、収益化を急がずに、まずは自社のファンを増やすような気持ちで取り組む

配信者の選定:

  • 自社内で選定する場合には、進行役の「しゃべりのうまい人」、利用者の質問に的確に回答する「商品知識の深い人」のコンビで行っている。他のライブコマースの配信や、ユーチューブで有名ユーチューバーの配信方法を参考にしている
  • インフルエンサーなどに依頼したことはないが、多数の利用者に商品をアピールする場合や、自社が狙う顧客層とインフルエンサーのフォロワー層が合致する場合には、配信効果が大きいと考える。ただし、依頼する際には、商品の特徴や、想定問答の準備などが必ず必要になる

配信中:

  • 配信中は、利用者からの質問コメントに丁寧に回答する。回答し忘れたり、曖昧な回答をしたりすると、コメント欄が「荒れ」、視聴者が離脱する恐れがある
  • 配信者だけが盛り上がり、利用者を置いてきぼりにさせないために、「スーパーマーケットの実演販売者」を意識してお客さんとのコミュニケーションを取る
  • 利用者からは、色味やイメージが違うとの声が寄せられることがある。これは、カメラの僅かな光の加減や、手ブレなどによることもあり、配信時には、さまざまな角度で商品を紹介することや、アップで撮るなどの工夫をしている

配信後:

  • ただ配信するのではなく、コメントや販売数などの分析や、配信時の改善点の洗い出しも行う。質問やコメントなどは、貴重な「お客様の声」となるので、今後の商品企画や配信のヒントになる

5 リスク面:利用者とのトラブルや法規制

ライブコマースの本格的な普及はこれからなので、ライブコマースの利用者と導入する企業との両者の間で、ノウハウなどの蓄積が不十分といえます。国民生活センターの調査によると、「イメージと異なる商品が届いた」「出品者に確認した内容と異なる品質の商品が届いた」などのトラブルが報告されているようです。

1)消費者庁の注意喚起

消費者庁は「インターネット消費者トラブルに関する調査研究 ライブコマースの動向整理」の中で、利用者が注意すべき事項として、以下のような注意喚起を行っています。

  • 商品情報・取引条件を確認する
  • 衝動的な購入を行わない
  • 販売者・配信者の信頼性について確認する

2)関連法規制

ライブコマースに関連する法規制としては、次のようなものがあります。

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これらの法規制に抵触する恐れがある場合には、消費者庁が調査を実施し、措置命令や課徴金の納付を命じたり、業務停止命令や罰金が科されたりすることもあります。

6 ライブコマースの利用者動向

ネオマーケティングが2022年1月に行った「全国の20歳~69歳の男女1000人に聞いた『ライブコマース成功のカギ』」によると、ライブコマースを視聴した理由について、以下のように回答しています。この回答結果を見ると、「すでに知っている商品」について、さらに詳しく知りたいというニーズがあるようです。また、「パッケージを開いて使ってみせる」などの一歩踏み込んだ商品解説が求められているともいえそうです。

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また、ライブコマース利用者に今後の利用意向については、68.6%が「購入したい・やや購入したい」と回答しており、配信を継続することで顧客を定着させることができる可能性もうかがえます。利用者のライブコマースでの消費行動(消費金額、売れ筋商品など)は公表されていませんが、ライブコマースのサービスを提供する企業などによると、アパレルやアクセサリー、家電などがよく売れる傾向にあり、消費金額は数千円~1万円前後がボリュームゾーンとなっているそうです。

新型コロナの拡大を受けた外出自粛や店舗の閉鎖などを背景に、巣ごもり需要を捉える方法の一つとして広まったライブコマースですが、現在では、目的を差異化したものや、顧客との新しいコミュニケーション手法として活用する事例も登場しています。

一方、スマホで手軽に情報発信や顧客とやり取りができるため、トラブルなども消費者庁にも寄せられています。ライブコマースを取り入れる際には、関連する法規制の確認はもちろん、動画配信時の表現やコメント対応にも配慮することが望ましいといえます。

以上(2022年5月)

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画像:Daxiao Productions-shutterstock

EVシフトで車のライトやミラーはどう変わる? 自動車部品産業の動向

書いてあること

  • 主な読者:自動車部品(ライト関連・ミラー機器)の製造を手掛ける企業の経営者
  • 課題:企業によっては電気自動車(EV)へのシフトで既存事業の継続が困難になりかねないため、EVで必要になる部品の新規開発や新事業への業態転換が求められる
  • 解決策:国による自動車部品産業への支援策や他企業の先進事例を参考に、自社で取り組める新技術の開発や業態転換を検討する

1 自動車部品産業にまつわるデータ

1)自動車部品の出荷金額の推移について

日本自動車部品工業会「自動車部品出荷動向調査結果」によると、自動車部品(ライト関連、ミラー機器)の出荷金額推移は次の通りです。

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自動車部品の出荷金額は、完成車メーカーの生産に影響されます。特に、2019年度から2020年度にかけての出荷金額の減少は、

  • 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う工場の稼働停止
  • 半導体不足に伴う自動車の生産台数の減少

などが要因として挙げられます。

2)事業所数などの推移について

1.自動車用のヘッドライトを製造する事業所

総務省の「日本標準産業分類」では、自動車用のヘッドライトを製造する事業所は、電気照明器具製造業に含まれます。経済産業省「工業統計調査 産業別統計表(各年)」によると、電気照明器具製造業の事業所数などの推移は次の通りです。

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2.自動車用のドアミラーを製造する事業所

総務省の「日本標準産業分類」では、自動車用のドアミラーを製造する事業所は、自動車部分品・附属品製造業に含まれます。経済産業省「工業統計調査 産業別統計表(各年)」によると、自動車部分品・附属品製造業の事業所数などの推移は次の通りです。

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2 自動車産業を取り巻く環境の分析、自動車部品産業に関わる規制について

1)自動車産業を取り巻く環境について

自動車部品産業は、完成車の生産やそれにまつわる規制の影響を大きく受けます。ここでは、自動車産業全般に焦点を当てて、PEST分析で外部環境と成長要因を整理します。なお、以降の説明で紹介する電気自動車(以下「EV」)は、自宅や充電スタンドなどで車載バッテリーに充電を行い、モーターを動力として走行する自動車を指します。

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地球温暖化や都市部の大気汚染対策として、世界的にガソリン車の販売を規制し、EVの普及を促進する動きが広がっています。また、地方自治体や企業単位でもEVのカーシェアリングや、蓄電池として活用する実証実験を通じて普及を推進しています。

ガソリン車からEVにシフトすることに伴い、必要になる自動車部品が大きく変わる他、既存の車体やタイヤなども軽量化などの改善が求められます。EVで不要となるエンジン部品を手掛けるメーカーなど、企業によっては事業の継続が困難になりかねないことにもなるので、EVで必要になる部品の新規開発や新事業への業態転換が喫緊の課題となっています。

そこで、政府では新しい経営戦略の立案のサポートや資金補助などを通じて、自動車部品産業を支援していくとしています。

2)EVシフトに伴う自動車部品産業への影響

一般的に、EVシフトに伴い、自動車の構造は次のように変わるといわれています。

  • ガソリン車に必要な部品が車両全体で約3万点必要なのに対し、EVはエンジンを中心に1万~2万点程度の部品が不要になる
  • 動力源の構造が簡素化されることで、部品がユニット化されて、工場における自動車の組み立て時間の短縮につながる
  • 完成車メーカーを頂点とする系列企業で構成する構造が変わり、車両の組み立て、新規参入の障壁が低くなる

EVシフトにより影響を受ける主な自動車部品は次の通りです。

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EV化に伴い、ヘッドライトは従来のハロゲンではなく、電力消費が少ない発光ダイオード(LED)の需要が伸びつつあります。EVの場合は動力に限らず、エアコン、照明なども全て1つのバッテリーで賄うため、電装品の省電力化が車の走行距離などの性能に影響を及ぼすからです。また、ヘッドライトだけでなく、自動運転に対応するためのセンサーに内蔵されるランプの需要も増えるとされています。

自動車ランプを製造する企業では、「LiDAR(ライダー)」の開発に注力しているところもあります。近赤外光や可視光、紫外線を使って対象物に光を照射し、その反射光をとらえて距離を測定する仕組みで、今後の自動運転車には欠かせない技術とされています。

自動車のドアミラーに関しては、2016年に国土交通省がバックミラー等に代わる「カメラモニタリングシステム」の基準を整備したことをきっかけに、バックミラーの代わりに、「カメラモニタリングシステム」(CMS)を備えた自動車の設計・製造が可能になりました。そのため、EVの一部の車種では、バックミラーやサイドミラーがカメラ式になったものがあります。

3)国による自動車部品産業への支援策の例

経済産業省では「自動車産業『ミカタ』プロジェクト」として、自動車部品のサプライヤーが業態転換を行う際の支援を、2022年度内に始めるとしています。

同プロジェクトでは、電気自動車で不要になるエンジン部品などを製造するサプライヤーが、電動車の部品製造や軽量化などの技術適応を図る場合に対して、相談を受け付けたり、専門家を派遣したりするなどの支援を行う計画です。また、業態転換に向けて必要となる設備を導入する場合には、設備導入費の補助も行います。補助率は中小企業が2分の1(上限は1億円)、中堅企業が3分の1(上限は1億5000万円)となっています。

事業期間は2022~2026年度の予定で、初年度となる2022年度は専門家派遣企業100社を含む約1000社を支援するとしています。

3 自動車部品(ライト関連、ミラー機器)製造企業の新技術・業態転換の事例

1)無動力歩行支援機を開発:今仙電機製作所(愛知県犬山市)

自動車用リアランプやシート用のアジャスターなどを手掛ける同社では、無動力歩行支援機の「aLQ by ACSIVE」(通称:aLQ(アルク))を名古屋工業大学と共同で開発しています。この製品は電気モーターなどを使わず、バネと振り子の動きによって歩く際の足の振り出しをサポートするものになります。同社では、この製品を通じて取得した知見を活かして、健康寿命の長期化を図るなどの自動車以外の新規事業を推進する計画です。

また、同社では、東海理化が開発した「フェンダー付けデジタルアウターミラー」(詳細は後述)に組み込むランプの製造も手掛けています。

■今仙電機製作所■
https://www.imasen.co.jp/

2)自動車電球の技術を活かしてきのこを栽培:大井川電機製作所(静岡県島田市)

フロントランプやルームランプなどの自動車用電球の製造を手掛ける同社では、電球製造の厳格な品質管理と生産体制のノウハウを活かして、「はなびらたけ」というきのこの栽培に取り組んでいます。

照明のLED化の影響を危惧していた同社では、新規事業への参入を検討し、2015年からはなびらたけの人工栽培の研究を始めました。はなびらたけは市場にほとんど出回らず、人工栽培が難しいきのこですが、育成環境や生育条件の試行錯誤を重ね、2018年には独自の栽培ノウハウを確立しました。

同社のはなびらたけは、2021年2月に「ホホホタケ」というブランド名に刷新し、2022年1月にはシンガポール、香港、マレーシアに「ホホホタケ」の輸出を開始しました。

■大井川電機製作所■
https://www.oigawa.com/

3)蓄電池の開発に着手:岐阜多田精機(岐阜県岐阜市)

自動車のドアハンドルやドアミラーの製造に使う金型製作を手掛ける同社では、蓄電池のバナジウムレドックスフロー電池(VRFB)システムの研究開発・事業化に取り組んでいます。この電池は安全性と充放電特性が高く、小規模蓄電システムの候補として有望視されています。また、電池の部品が樹脂で作られているため、同社の金型開発と親和性があるといいます。

同社の事業は岐阜県の「次世代エネルギー産業創出コンソーシアムの取組」内で、活動補助金を受けて進めています。

■岐阜多田精機(多田精機グループ)■
http://www.tada.co.jp/

4)世界初の次世代電子ミラーを開発:東海理化(愛知県大口町)

自動車用のスイッチやシートベルトなどを手掛ける同社では、ドアミラーに代わり、自動車のフェンダー(泥よけ)部分に設置する「フェンダー付けデジタルアウターミラー」を2021年5月に開発しました。フェンダー部にミラーを格納することでカメラの汚れを防止したり、多彩なイルミネーション機能により、さまざまなコミュニケーションが図れたりなど、世界初となる技術が盛り込まれています。

また、同製品は従来のドアミラーよりも前に設置されることで、広範囲に視界を確保し安全性を向上させる、小型化により空気抵抗を減らし、燃費を向上させるといったメリットがあるとされています。

他にも、同社では防犯電子錠や窓施錠モニターなどの住宅用品、除菌・脱臭ができるオゾン発生器などの自動車部品以外の製造も手掛けています。

■東海理化■
http://www.tokai-rika.co.jp/

5)トースター型殺菌器を開発:スタンレー電気(東京都目黒区)

ヘッドランプやドアミラーカメラ用センサーなどを手掛ける同社では、2020年12月に自治医科大学と共同でトースター型殺菌器を開発しました。除菌庫内で特殊な波長の紫外線を照射し、医療用マスク、ゴーグル、ペンなどに付着したウイルスを不活性化させるものです。

また、同社は、2020年12月に三菱電機と車載用ランプシステムの開発・設計・製造・販売で業務提携しました。次世代ランプ制御システムの共同開発においてスタンレー電気が光源、光学およびランプ本体部分を担当、三菱電機が灯火・配光制御ユニット部分を担当することで、車載用ランプシステム事業を拡大させるとともに、交通死亡事故ゼロを目指し、安全安心な社会の実現に貢献するとしています。

■スタンレー電気■
https://www.stanley.co.jp/

以上(2022年5月)

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画像:BLKstudio-Adobe Stock