【朝礼】あなたのTipsを語ってください

今日は皆さんに、「自分の仕事を語る」ことを考えてもらいたいと思います。捉え方は人それぞれでしょうが、聞いてください。

さて、皆さんはこの1週間で、仕事を通じてどのような新しい気付きがありましたか? 何を学びましたか? あるいは、同僚や仲間に「これ知っている?」「こう進めるといいよ」と、伝えたくなった仕事関連のコツなどは何かありましたか? もし気付きや学びは何もないという人がいたら、それは、極端に言えば「この1週間、私は自分の仕事で語ることが何もない。何もしていない」ということです。

仕事時間は平均して1週間に約40時間。気付きも学びも、語ることが何もない。そんなことがあるでしょうか。よく思い出してください。分かりやすいところで言えば、オンラインセミナーで新しい知識を得たり、商談で新しいビジネスについて話したりしたかもしれません。

新しい出会いはなくても、インターネットで調べたら労務管理の効率を上げるやり方が分かった、経理処理を進める中で、新しいアライアンス先との企画が動きそうな気配を感じたなど、皆さん一人ひとりに、「その前の1週間にはなかった新しい何か」がきっとあるはずです。

皆さんには、そうした「それまではなかった気付きや学び」を、ぜひ意識するようになってほしいと思います。なぜなら、単純ですが、「そうすれば仕事時間がもっと楽しくなるから」です。

私が改めてそう思うようになったきっかけは、先日参加したSDGsに関するオンラインセミナーでした。話し手がとても素晴らしく、まず視点がユニークで、かつ他では聞けない濃い内容が盛りだくさんでした。その上、参加者が「自分も実践できそう」と思える具体的なビジネス上のTips(ティップス)、つまり助言も与えてくれました。

私は感動すると同時に、「SDGsに仕事として取り組んでいて、毎日、自ら頭と手を動かしている人だからこそできる話だな」と感じました。そして、演技も多少入っていたかもしれませんが、「この人はSDGsに携わる自分の仕事が心底楽しいのだな」ということが、心に伝わってきたのです。

この話は皆さんにも当てはまると私は思っています。皆さんが日々「自ら頭と手を動かして」実践している仕事について、一番詳しく、臨場感を持って語れるのは、皆さん自身です。そこにはきっと、実際に試行錯誤している皆さんにしか語れないTipsがあるはずです。

想像してみてください。「これ知っている?」と同僚や仲間、もしくは家族、あるいはクライアントなど社外の人に語っている自分の姿を。そうした気付きや学びがある中で、日々、仕事に向き合っていれば、皆さん一人ひとりの仕事時間はもっと楽しいものになるでしょう。ワクワクする、やりがいのある毎日を送れるかどうかは、皆さんの「心持ち」次第です。さあ、今日も何かTipsを発見していきましょう!

以上(2022年4月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】皆さん、当社の「不満足」を挙げてください

もうすぐゴールデンウイークがやってきます。今日はそれにちなみ、皆さんが休暇中に利用するかもしれない飛行機にまつわる話をしましょう。

皆さんは、米国の航空会社が行った「母の日のサプライズ」を聞いたことがあるでしょうか。これは、飛行機の中で子供が泣いた人数によって、搭乗していた人が、次回以降の航空券を割引してもらえるというサービスです。子供が1人泣けば25%オフ、2人で50%オフ、4人になれば100%オフ、つまり無料になるため、周囲の人は「子供が泣けば泣くほど」喜びます。子供連れの母親が、この日ばかりは周囲の目を気にすることなく飛行機を利用できるようにするための企画でした。

母親の「子供が泣いて周囲から白い目で見られるかもしれない」という「不安」と、搭乗している人の「飛行機の中で子供が泣きわめくのが嫌だ」という「不快」の両方を解消しようとしているのが、この企画のポイントといえるでしょう。皆の満足を実現できる素晴らしい企画です。

このように、「不安」「不快」「不便」「不満」「不足」などを解消するという視点に立って、商品やサービスを考える「不のマーケティング」は、以前からさまざまなところで実践されています。

私は、当社にも、この「不のマーケティング」の考え方を取り入れようと思っています。ただし、皆さんに考えてもらいたいのは、商品やサービスについてではありません。もっと根本的な、「当社で働くことについて」です。

皆さんには、まず、日ごろ、当社で働くことについて感じる「不」を挙げてもらいたいのです。内容はどのようなものでもかまいません。

例えば、「外出が多いのに外からメールが確認できない」という「不便」を感じている人もいるでしょう。「飲食店が周りにあまりなくてランチに困る」といった「不足」を挙げてもいいのです。もっと言えば、「仕事の割り振りが偏っていて休みたいときに休めない!」「上司(部下)と話す機会が少なくて何を考えているか分からない!」という「不満」があるかもしれません。

当社は今、大きく変わろうとしています。新しいビジネスを創造すると同時に、一人ひとりの働き方を根本から見直す「働き方改革」にも本格的にチャレンジしています。さまざまな部門で世代交代も進めています。いわば、「第二創業期」を迎えているといってもいいでしょう。

私は、皆さんに、「不」のことを挙げてもらうことで、「皆さん自身が働きたいと思う会社」を新しく創っていきたいのです。挙げてもらった内容は、一つ一つ解消すべきかどうか皆さんで議論していきましょう。中には、最終的に私が判断すべきことも出てくるかもしれませんが、それは最終手段として、できるだけ皆さんで話し合って決めていくことが大切です。

皆さんの会社は、皆さんが創るものです。働いていることが誇らしく、胸を張って自慢できる会社を、一緒に創っていきましょう!

以上(2022年4月)

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画像:Mariko Mitsuda

家事代行の枠を超えた「おせっかい」で「ほっこり」な【東京かあさん】。だから「家事代行」は、社内ではNGワード。“人が何歳になっても活躍できる場をつくりたい”おばあちゃん子の思いが、新しい文化を生む!/岡目八目リポート

年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、小日向えりさん(株式会社ぴんぴんころりの代表取締役)です。

小日向(こひなた)さんが語ってくださったのは「第2のおかあさんを持つ」という、一般的な家事代行の先を行く新しい文化。人と人とが出会い、ちょっとした「おせっかい」が「ほっこり」した気持ちを育む……。今だからこそ、こうした人のつながりがますます大事になっていると感じます。小日向さんがやっておられる【東京かあさん】は、利用者にだけやさしいのではありません。もともとは、「高齢になっても、人が働き活躍できる場をつくりたい」という思いから始めているものです。働き手と利用者の両方を「ほっこり」させる小日向さんのサービスと思いをご紹介します。

1 「小日向さん」と「東京かあさん」と「スタバ理論(仮)」

1)小日向さんの実現したい社会、そして小日向さんはどのような方か?

「株式会社ぴんぴんころり」。2017年7月創業のこの会社名にも、小日向さんの思いがたくさん込められています。「高齢者が寝たきりや病気にならず、人生の幕引き直前までぴんぴん元気でいること」、つまり、一人でも多くの人が生涯現役でいる社会をつくる。これが小日向さんの掲げるビジョンです。

株式会社ぴんぴんころりのビジョンの画像です

(出所:小日向さんからいただいた資料より抜粋)

2020年から、この株式会社ぴんぴんころりの経営一本に絞っている小日向さん、奈良県のご出身で横浜国立大学卒。以前は歴史アイドルでした(2022年現在は、すでに引退されています)。15歳のころから芸能活動をされていて、歴史好きが高じて「歴史アイドル・歴ドル」として書籍を発表したり、テレビやラジオなどでご活躍されていました。

一方で、インターネット大好き、かつご親族に有名な起業家さんやご自身の起業家精神も以前からかなりお持ちだった小日向さん。2012年には一社目の会社を立ち上げ、歴ドルと起業家を両立。行動力があり、地道に努力される頑張り屋さんな面もある、そしてとても素直で「世の中を良くしたい」という純粋な心持ち。加えて大のおばあちゃん子!(これが「ぴんぴんころり」の創業につながっています。詳細後述)これからますます成長が期待される起業家の方です。

小日向さんの経歴を示した画像です

(出所:小日向さんからいただいた資料より抜粋)

2)【東京かあさん】=「第2のおかあさん」とはどういうことか?

株式会社ぴんぴんころりのメーンサービス【東京かあさん】は、その名の通り、

「東京での『第2のおかあさん』を持つ」

がコンセプト。特に実家から離れて暮らしている人は、すぐにピンとくるネーミングではないでしょうか。よく、大家さんとか近所の定食屋のおかみさんとかが一人暮らしの学生さんに、「私のことを東京のおかあさんと思って、困ったことはなんでも相談してね!」と言うアレです。言ってもらったほうはとても心強いですし、何より嬉しくてグッときます。

【東京かあさん】は、家事代行やベビーシッターの枠を超えて、家事や育児のサポートをお願いしたり相談したりできるサブスク型のサービスです(月額平均は3万円くらい)。「おかあさんにちょっとヘルプをお願いする」「おかあさんが、ちょっとしたおせっかいでやってくれる」イメージのもので、小日向さんの言葉を借りれば【第2のおかあさんを持つという体験を提供している】サービス。難しいことはいっさい考える必要がありません。例えば、利用者は、LINEで「第2のおかあさん」に「いま仕事終わりました。保育園のお迎えと夕ご飯の準備をお願いします🙏」などを送ると、第2のおかあさんがやって来てくれて(事前のお顔合わせなどがあります)、家事や育児をサポートしてくれます。実に素晴らしいサービスです!

まさに「おかあさんヘルプ!」とお願いできるサービス。スマホ一つでやり取りできるこの簡単さ手軽さも、利用者と働き手(おかあさん)の両方にやさしいところ。「1分でわかる東京かあさん」動画はこちらです(出所:東京かあさんウェブサイトより)。

サブスクリプションの料金を示した画像です

(出所:小日向さんからいただいた資料より抜粋)

3)スタバ理論(仮)を家事代行にも当てはめてみる

とはいえ、小日向さんは、一般的な家事代行やベビーシッターを否定するわけではまったくありません。「大事なのはすみ分け、利用する人がサービス(家事代行など)に『何を期待するか』だと思うんです」と小日向さん。例として挙げてくださったのは「人はコーヒーを飲みに行くとき、どこを選ぶか」という話でした。とても分かりやすかったので、小日向さん流「家事代行に当てはめるスタバ理論(仮)」として、こちらにご紹介します。

「スタバに行きたい人はスタバに行くし、ドトールに行きたい人はドトールに行く。スタバを選ぶ人は店員さんとの交流などホスピタリティを期待しているのかもしれないですし、ドトールに行きたい人はドトールのコーヒーの香りや味に期待しているのかもしれません。そして、昭和の喫茶店の雰囲気が好きな人は、それを期待して昭和の喫茶店に行く。家事代行などのサービスも同じだと思います」

「例えば、とにかく家事をアウトソーシングしたいという方は、一般的な家事代行のサービスを活用するのがいいかもしれません。それだけではなく、『ほっこりしたぬくもり』を感じたい人、おかあさん世代の方々と交流したい人、知恵袋的に家事や子育ての色々を教えてほしい人とかには、【東京かあさん】で『第2のおかあさんを持つ』が合っているのではないかと思います」

『第2のおかあさんを持つ』のイメージ画像です

東京かあさんのサービス内容を示した画像です

(出所:小日向さんからいただいた資料、「東京かあさんウェブサイト」より抜粋)

2 創業のきっかけは、小日向さんご自身のおばあさん

高齢者支援をメーン事業と心に決めてブレない小日向さん。「高齢の方がいつまでも元気で働ける場、そういう社会をつくりたい」と語ります。きっかけとなったのは小日向さんご自身のおばあさんのことでした。

「もともと私はおばあちゃん子で、愛情をたっぷり注いでもらっています。祖母は30〜40代のころから何かしらのお仕事をしていて、そこからずっと働き者でした。70代になっても色々とお仕事をしていましたが80歳くらいになるとついにお仕事がなくなってしまいました。その後は家でずっとテレビを見ているという感じで、元気がなくなってしまったのです。心配していた矢先に怪我で入院してしまいました。そのころに、ハッと、『やはりお仕事をしていたことが、祖母の元気の源だったのではないか』と直感的に思ったのです」

こう語る小日向さん。おばあさんのことをきっかけに、高齢の方でもずっと元気でいられる何かをできないかと思っていた小日向さんは、あるベンチャー系イベントで、高齢者の知見を活かした就業支援の事例に出逢います。そして自分でも「高齢者の就業支援」をしたいと考えるようになり、シルバー人材センターのことを調べるなどしてその思いがどんどん膨らみ、ついには株式会社ぴんぴんころりの創業に至りました。やはり、ご自身が実感したおばあさんへの思いがあるので事業へのコミットの仕方が半端なく強い小日向さん。何より、「高齢になった方でもずっと元気でいられる何かをしたい」という考えを、考えるだけで終わらせず具体的に形にして会社を立ち上げ、そして今は会社で仲間も雇用している。この底力、根性、行動力、実現力。並々ならぬ内に秘めたパワーを感じます。

小日向さんが【東京かあさん】のサービスを具現化した裏側には、小日向さんご自身が「第2のおかあさん」に「おせっかい」をしてもらっているという話もあります。つまり、創業者自らが自分のサービスのユーザーでありファンでもある、実に理想的な形です。つい最近も掃除や洗濯をしてもらい、その後一緒にご飯を食べて映画を見に行ったそうです。本当に文字通り、「第2のおかあさん」ですね! なにしろ、小日向さんが引っ越しされるときも、「頼んでいないのに」第2のおかあさんが手伝いに来てくれて、荷解きしてくれたというのです。おかげで仮眠を取れたと感謝している小日向さん。この信頼関係、なかなかできることではないですね。【東京かあさん】の質の高さがうかがえるエピソードです。

3 こだわりの「言葉」と、第2のおかあさんやサービスを使ってみた方からの“声”

小日向さんご自身がユーザーでもある【東京かあさん】には、言葉の定義一つひとつにも、小日向さんのこだわり、意志が感じられます。例えば、働き手(ワーカー)のことは「おかあさん」。一方、利用者(ユーザー)のことは「お子さん」。「おかあさん」や「お子さん」という呼び方については、「【東京かあさん】のファミリーの一員として親しみを込めて、そのように呼ばせていただいている」と小日向さん。その他も併せてまとめると、下記などがあります。小日向さんの実現したい世界観がよく分かります。

  • おかあさん:働き手(ワーカー)
  • お子さん:利用者(ユーザー)
  • ◯◯ママ:おかあさんの呼び方
  • お見合い:事前のお顔合わせ
  • 親コンシェルジェ:スタッフのこと
  • 親子契約:事前の30分のお見合いの後、“親子”がお互いに継続希望の場合の契約
  • NGワードもいくつか(下記)
    ×お世話になっております(家族では普通言わない)
    ×引き続きよろしくお願いいたします(家族では普通言わない)
    ×家事代行(家族のおせっかいなサポートなので、家事代行ではない)

こうした世界観で実現しているので、「おかあさん」や「お子さん」からの働いてみての感想、サービスを利用してみての感想も、一般的な家事代行の感想とかなり違っています。下記にいくつかご紹介します。先に、「お子さん(ユーザー)の声」を、その後に「おかあさん(ワーカー)の声」を掲載します。グッとくる“声”ばかり、特に「おかあさん」のほうは、「高齢になっても活躍できる場」が実現できていることが本当によく分かります。必見です!(出所:小日向さんからご提供いただいた皆さまの声より)

【お子さん(ユーザー)からの声】

  • 保育園、学童、習い事の迎えのみならず、お買い物や、お料理、掃除や片付けなど、その日にお願いしたい事についてお伝えすると、その時々の状況に合わせて臨機応変にお手伝いいただき、在宅勤務の大きな支えになりました。
  • 東京かあさんを知りコンセプトがいいなと思い、詳細なリクエストを出しておかあさんを探してもらいました。マッチングに時間はかかりましたが、素敵なおかあさんを紹介してもらえました。
  • 水回りの掃除を徹底的にしてもらうので、自分はさっと掃除するだけで汚れず気持ちよく生活できます。掃除が苦手だったので、ストレスも減りました。
  • 家の整理の仕方、料理の工夫、衣類の畳み方から、家具の配置など、生活についての諸々を教えてもらえて、大変助かっています。実家もあまり片付いている方ではなく、どのように整理して生活すべきかを習う場もなかなかないので、一緒に考えてもらえたり、実際に片付けてもらえるというのは本当に助かります。
  • 登録されているおかあさんが沢山いらっしゃるお陰で、急に継続出来なくなった場合でも穴をあけずに次のおかあさんに来て頂けたのがありがたかったです。東京かあさんが用意して下さる交換ノートなど、お互いの距離を縮めたり、心を通わせやすくする工夫が随所に散りばめられている所が、温かくて良いなと思います。
  • 2人子供がいるので、今は「おかあさん」不在の生活は想像できません。洗濯物きれいに畳んでいただいたり、お料理の下ごしらえをしていただいたり、いつも細かことをしていただきありがたいと思っています。コロナで大変な時期ですが、これかもお願いしたいと思っております。

【おかあさん(ワーカー)からの声】

  • 何気ないことですが、幼稚園への送迎途中、園内の様子を楽しげに話してくれることに、日々お子さんの成長を感じながら楽しくサポートしております。
  • ○○ちゃん、○○くん(利用者さまのお子さま)が走りながら、外までお迎えに来てくれてすごく嬉しかったです。帰りも、外までバイバイをしてくれて家族になれた気持ちになります。
  • ○○ちゃん(利用者さまのお子さま)の小学校がリモート授業になったため、1人でお家にお留守番でしたが、私が訪問することで少し安心して貰えたようです。○○ちゃん(利用者さまのお子さま)も以前よりお話ししてくれるようになりました!
  • 風呂、洗面所、トイレ、キッチンと水周りや床の掃除中に洗面所の鏡が気になると言うので、ガラス用洗剤を使って掃除をしました。残った時間で、衣類を畳み直して収納して、鞄の整理をした時に、一緒に断捨離をして、スッキリしたと喜ばれました。
  • キッチンを清掃中に、○○さん(利用者さま)は「外出の予定があるため昼食をとりますね!」とお座りになり、お父様のお話しなどをして下さり、楽しく作業をしました。お掃除が終わり少し時間があったので、おせっかいですまし汁を作り大変喜んで頂きました。
  • 今日は、○○ちゃん(利用者さまのお子さま)の受験の合否をお聞きする事と思い、どきどきしながらお伺いしましたが、玄関で待っていらした○○ちゃん(利用者さまのお子さま)の笑顔を見て合格が分かりました。万が一を考えて、お好きなブルーの小さなブーケはバッグに隠してお伺いしたのですが、心配無用でした。
    春から着られる制服の写真を見せていただいたり、発表の時のご様子をお聞きしたりして、ばあば気分を満喫させて頂きました。
  • 子供さんがお料理を食べてくれない悩みを抱えての訪問でしたが、運営の皆様から応援、励まし、アドバイスをいただき感謝です。そんな気持ちが伝わったのかどうかはわかりませんが、○○くん(利用者さまのお子さま)に「○○ママ大好き〜!」とハグされちゃいました。嬉しかったです。こんな感じなので、気を張りすぎず、少しだけ頑張ってみますね。

読んでいると、何かぬくもり、ほっこり。おせっかいが大事で、それがほっこりにつながっている。感動します。

4 【東京かあさん】、そして小日向さんの今後について

ぴんぴんころり、そして【東京かあさん】のサービスは現在、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県といった関東地方で提供していますが、今後は全国展開もしていきたいと小日向さん。登録している「おかあさん」も、もうすぐ600名になるそうで、順調に伸びてきているようです。全国どの地域でも、「近所に第2のおかあさんを持つ」が実現できるようになれば、さらにニーズも増えるかもしれません。例えば、新しい土地に引っ越したばかりで近所に知り合いもいなくて子育てもあって、心細い……という人向けなど。そう考えると、「おかあさん」をどうやって集めるかが、ますます重要になってきます。例えば、生命保険会社や銀行、信用金庫、地元の大手企業の卒業生などが「おかあさん候補」になるかもしれません。

実際に、小日向さんの思い、やっておられることに共感して「一緒に何かできれば」と声をかけてくれる金融機関や大手企業などもあるようです。小日向さんご自身も「高齢者の健康ケア&保険料を抑えるという面で保険会社さんと連携などできるかも」と目を輝かせています。これからが楽しみです。

「今後、家事代行市場は6000億円規模、保育サービス市場は3兆3500億円規模と推計されます。それに対して、家事・育児サービスの市場では働き手不足が問題となっています。そうした中、ぴんぴんころり、東京かあさんはこれから増えていく働きたいシニアのために作った会社、サービスですので、こうした働き手不足を解決していけると思っています」

と将来に向けて自信をのぞかせる小日向さん。実際に高齢の方のうち約80%が「70歳以上まで働きたい」と回答しているそうで、【東京かあさん】はその場づくりとして大きな可能性があると感じます。小日向さんの語る、次の言葉が、何か今後の日本の明るい未来を予感させてくれます。

「『東京かあさんが生きがいだ』と言ってくださるおかあさんたちがどんどん増えています。『こんな私でもお役に立っていると思うと幸せです。東京かあさんに出会えて幸せです』『お子さんの日々の成長に関われてとても幸せです』『だんだん娘・孫のような存在になってしまいました』『今日は母の日ですね。我が家の東京かあさんになってくださって、ありがとうというメッセージをもらった』など、おかあさん方には、日々やりがいを持ってやっていただけているかなと思っています」

最後に、小日向さんの実現されたいことを改めてお聞きしてみたところ、次のように語ってくださいました。

「東京かあさんは、まだまだやりたいことの一つにすぎません。(高齢の方が)働いて収入を得て、その先はその収入を使って新しいことを学んだりとか、あと仲間と趣味を楽しんだり、高齢の方がずっと元気でいられることはどんどん手がけていけたらいいなと思っています」

「高齢の方がずっと元気でいられることはどんどん手がける」。2019年に、小日向さんご自身のお母さんも参加してクラウドファンディングで開催された平均年齢70歳の「めいど喫茶 ぴんころ」も、その一環なのだと思い至ります。改めて小日向さんのコミット力、アイデア、そして具現化する実行力、何より暖かいお人柄に感嘆しきりです。応援しています! ありがとうございます。

東京かあさんのサービス内容を示した画像です

(出所:以前開催のイベント告知ページより抜粋)

  • 東京かあさんウェブサイトはこちら
  • 東京かあさん発オウンドメディア「ミソシル」はこちら

以上(2022年4作成)

【損金】税理士が解説。損金になる福利厚生費、ならない福利厚生費

書いてあること

  • 主な読者:決算対策の一環などとして、福利厚生費を損金にしたい経営者
  • 課題:社員等のために使っているのだから、全額、福利厚生費にならないの?
  • 解決策:「平等」と「社会通念上(常識的に)妥当」の2つの原則を押さえる

1 福利厚生費とは

福利厚生費とは、

社食の提供やワクチンの予防接種、勤続記念品の購入など、さまざまなシーンで発生する費用

です。

福利厚生費について税務上の明確な定義はありません。一般的には、労働環境の向上のために、役員、社員、パート・アルバイト(以下「社員等」)に対する手当などであり、給料や交際費に該当しないものを指します。こうした事情から、会社としては福利厚生の目的で行ったつもりでも、税務上は、給料や交際費と判断される場合があります。

福利厚生費が損金になるかどうかのポイントは、

  • 全ての社員等に「公平」であるもの
  • 「社会通念上(常識的に)」妥当な金額のもの

です。詳しく見ていきましょう。

2 損金になる福利厚生費の2つのポイント

1)全ての社員等に「公平」であるもの

税務上の福利厚生費は、

社員等全員を対象とするもので、「役員だけ」などのように特定の人物を対象とするものではいけない

ことになっています。

ただし、これは全員参加が必須ということではありません。例えば、社員旅行や会社のイベントの場合、ポイントは、全員が実際に参加することではなく、

全員に参加の機会が与えられていること(全員に参加の有無を確認していることなど)

です。

もし、

  • 特定の社員等が利益を受けている
  • 一般的にみて高額過ぎると判断される

などの場合は、給与所得とみなされ(以下「みなし給与」)ます。源泉所得税が課されますので、会社はその支出に対して源泉徴収を行わなければなりません。

また、特定の利益を受けているのが役員の場合は、みなし給与相当額が、法人税の計算上損金とならない「役員賞与」となり、その分会社の所得が増えてしまい、法人税の納付も追加で発生することになります。

福利厚生費が公平であるかどうかの判断は、社内規定に基づいて一律に社員等に支給するものであるかがポイントになるため、規程の内容を確認してみましょう。

2)「社会通念上(常識的に)」妥当な金額のもの

税務上の福利厚生費は、「社会通念上」妥当な金額の範囲内でなければなりません。ただ、税務上の明確な定義はなく、

一般的に通用している社会常識に照らして違和感がないこと

とされています。より具体的には、社会通念は会社規模や業種、過去の慣行などさまざまな視点から判断されるものであるため、一般的には、基本通達に判定の目安が示されています。ただし、あくまで目安であり、判断に迷うケースがあります。

社会通念上妥当かどうかについては、税務調査でもよく論点となります。実際に判断する際は、事前に税理士などの専門家に相談するようにしましょう。

3 福利厚生費で迷いやすい実務Q&A

1)社員食堂や弁当委託は、福利厚生費で処理していいの?

社員食堂や弁当委託などを福利厚生費の一環として設置・実施している企業があります。これらの費用を、税務上、福利厚生費として処理するためには、次の2つの要件をどちらも満たす必要があります。

  • 社員等が食事の価額の半分以上を負担していること
  • 次の金額が1カ月当たり3500円(税抜き)以下であること

(食事の価額)-(社員等が負担している金額)

この要件を満たしていなければ、食事の価額から社員等の負担している金額を控除した残額が、みなし給与として給与課税されます。例えば、1カ月当たりの食事の価額が6000円で、社員等の負担している金額が1500円の場合、上記の条件を満たしません。従って、食事の価額(6000円)と社員等が負担している金額(1500円)との差額(4500円)が、みなし給与として給与課税の対象となります。

ここでいう食事の価額は、次の金額にて判定します。

  • 社員食堂で会社が作った食事を支給している場合は、食事の材料費や調味料などの食事を作るために直接かかった費用の合計額
  • 弁当委託の場合には、業者に支払う金額

なお、残業や宿日直をした社員等を対象に会社が支給する食事は、無料で支給した場合でも(上記の福利厚生費で処理するための2要件を満たさなくても)、給与課税されません。

2)お祝い金や香典などの慶弔費は、全て福利厚生費と判断していいの?

社員等やその親族の結婚・出産・入院などに際して、社内規程に基づいて支払われた慶弔費(結婚祝い、出産祝い、香典、病気見舞金など)で、かつ金額も社会通念上妥当なものについては、福利厚生費として損金になります。また、みなし給与として給与課税もされません。

一方、社内規程がなかったり、特定の社員等に対して高額な祝い金を支給したりした場合は、みなし給与として給与課税される恐れがあります。その特定の社員等が役員である場合は給与課税のみならず、みなし給与相当額が損金にならない「役員賞与」とされます。

なお、新型コロナウイルス感染症に関連して社員等へ支給する見舞金については、次の要件をすべて満たしていれば、福利厚生費として損金になります。また、みなし給与として給与課税もされません。

  • その見舞金が心身又は資産に加えられた損害につき支払を受けるものであること
  • その見舞金の支給額が社会通念上相当であること
  • その見舞金が役務の対価たる性質を有していないこと

3)インフルエンザ予防接種や、新型コロナウイルス感染症のPCR検査費用は、福利厚生費で処理していいの?

インフルエンザ予防接種費用や、新型コロナウイルス感染症のPCR検査費用を会社が負担した場合は、福利厚生費として損金になります。ただし、一部の人だけが対象であったり、検査費用などとして一般的な金額以上であったりする場合は、みなし給与として上記同様の取り扱いとなります。

4)社員旅行の費用は、福利厚生費で処理していいの?

新型コロナウィルス感染症拡大の影響もあり、社員旅行に慎重な会社は多いと思いますが。もし、社員旅行を行った場合、その費用が社会通念上妥当な金額内で、なおかつ次のいずれの要件も満たしていれば、原則、福利厚生費として損金になります。また、給与課税もされません。

  • 旅行の期間が4泊5日以内であること。なお、海外旅行の場合には、外国での滞在日数が4泊5日以内であること
  • 旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上であること

ただし、会社が慰安旅行に参加しなかった社員等に対し、その参加に代えて現金を渡した場合、みなし給与として給与課税される恐れがあるため注意が必要です。また、役員だけを対象とした社員旅行の費用は、みなし給与として給与課税されるのみならず、みなし給与相当額が損金にならない「役員賞与」とされます。

5)社員等の家賃を負担している場合は、福利厚生費か給与か?

会社が社員等の住宅家賃を負担している場合、会社と社員等の負担の割合によって取り扱いが異なります。

1.会社が家賃の全額を負担している場合(無償で社宅等を貸与している場合)

賃貸料相当額がみなし給与として給与課税されます。なお、賃貸料相当額の計算は、固定資産税の課税標準(課税の基礎となる金額)に一定の率を乗じた金額や、床面積などを基に計算した金額の合計額となります。また、役員の場合には、賃貸料相当額の計算式が異なるなど取り扱いが複雑です。算定する際は、税理士などの専門家に相談するようにしましょう。

2.社員等から受け取っている家賃が、賃貸料相当額の50%未満である場合

受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額が、みなし給与として給与課税されます。

3.社員等から受け取っている家賃が、賃貸料相当額の50%以上である場合

受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額は、福利厚生費として給与課税されません。

4.契約は法人名義としましょう

住宅の契約は必ず法人名義とするようにしましょう。個人名義の住宅家賃を会社が負担した場合は上記1.から3.の取り扱いに関係なく、会社が負担した金額の全部がみなし給与とされて源泉徴収をする必要が出てきます。

6)創業○○周年に社員等に配る記念品の代金は、福利厚生費で処理できる?

会社が創業○○周年などを記念し社員等に記念品を配った場合、記念品の代金が次のいずれの要件も満たしている場合には、原則、福利厚生費として損金になります。また、給与課税もされません。

  • 記念品が社会通念上記念品としてふさわしい物品であり、かつ、価額(処分見込価額により評価した価額)が10000円(税抜き)以下のものであること
  • 創業記念のように一定期間ごとに到来する記念に際し支給する記念品については、創業後相当な期間(おおむね5年以上の期間)ごとに配るものであること

ただし、記念品に代えて現金や商品券などを配る場合には、みなし給与として給与課税されるため注意が必要です。

以上(2022年4月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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画像:Mariko Mitsuda

オンライン採用でも優秀な人材を見極めるテクニック

1 コロナ禍で進んだ採用のオンライン化

コロナ禍をきっかけに、企業の採用活動のオンライン化が進んでいます。パーソルキャリア社が実施した「Web面接の実態調査」では、同社が2021年7月に取り扱った求人案件のうち「Web面接可」の求人案件は63.8%となっており、2020年8月の38.4%から直近1年間でその割合は約1.7倍に増加しています。

Web面接は「感染防止の効果」をはじめ、「交通費がかからない」「日程調整がしやすい」「多くの応募者を集めることができる」などのメリットが多い一方で、「雰囲気が伝わりにくい」といった課題があるのも事実です。「採用した人材が、思っていた人材と違った」というような問題も頻発しているそうです。

このような事態に陥らないために、企業側はどのようなことに注意すればよいのでしょうか。創業時の2015年から現在に至るまで、メンバー全員の採用をオンラインで行ってきた私たち株式会社ニットが、オンライン採用でも優秀な人材に出会うために企業がすべきこと、Web面接では応募者のどこを見るべきなのかのチェックポイントなどを詳しくお伝えします。

2 SNSを活用する ①企業情報の発信

私は、企業がオンライン採用を進めるにあたって、まずはSNSを効果的に活用するべきだと考えています。

優秀な人材を確保するためには、より多くの人に応募してもらえる状況を作っておくことが重要です。そのために企業にできることの一つが、SNSを活用した企業ブランディングの土台作りです。SNSには、LINEやFacebook、Instagramなど様々ありますが、なかでもTwitterは日本国内の月間アクティブアカウント数が4,500万人(2017年10月時点)と、LINEに次ぐユーザー規模を誇ります。つまり、Twitterで採用の募集をかけると、極端に言えば4,500万人に対してそのツイートが目に留まるチャンスがあるということです。また、顔見知りでない人ともつながりやすいという点からも、私はTwitterを活用したSNS採用が有効であると考えています。

ここで注意しなければいけないのは、SNSはあくまでも「情報収集」目的で利用する人が多く、就職・転職活動のためだけに利用している人は少ないということです。つまり、企業のSNS発信がすぐに採用につながるわけではないということです。重要なのは、SNSを通じて、会社の情報を日頃からこまめに発信し、フォロワーとコミュニケーションを図ることで、「会社のファン」になってもらうことです。これにより、いざ採用がスタートした際に、「もともと応募したいと思っていました!」と言ってもらえる状態を創出することができます。

現在、広報である私のTwitterには3万人近くのフォロワーがいます。ありがたいことに、Twitter経由での応募者は増加しています。最近では私が面接する4人に1人はTwitter経由といっても過言ではないほどになっており、直近3名の入社にもつながりました。

このようなことからも、広報と人事は一緒にSNSで情報発信をして、優秀な人材を確保するための土台を作ることが大切です。

(日本法令ビジネスガイドより)

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【朝礼】“料理上手”は仕事もデキる?

私はあまり料理をしない人間でしたが、ここ2カ月ほど、自宅で料理をしています。気分転換に始めてみたところ、料理は仕事に通じることが多いと感じ、今では自分を磨くために続けています。けさは、料理をすることで得た、仕事に役立つ気付きについてお話しします。

私が料理をして気付いたのは、「頭を使うこと」と、「食べる人、つまり顧客に気を使うこと」が重要だということです。もちろん、そうしなくても料理はできますが、頭や気を使うことで料理に掛ける費用や時間を削減でき、食べた人にとても喜んでもらえます。つまり、自分の努力や工夫次第でパフォーマンスが大きく変わるのです。

料理はメニューを考えることから始まります。いわば「生産計画の立案」です。食べる人のことを考え、栄養バランスや、飽きないための工夫が必要です。1週間分ほどの献立を考えておくと、買い物に行く回数が削減できます。

買い物、つまり「仕入れ」で重要なのは、コストと品質の見定めです。チラシなど収集した情報を基に買う店や食材を決めますが、経験と実績があれば、食材の鮮度や価格に応じてメニューを決められます。作れるメニューの数、つまり「自社商品のバリエーション」が大切です。買い物をする前に、冷蔵庫内の食材と消費期限を把握しておくことも欠かせません。これは「在庫管理」です。食材は安く購入することも大切ですが、全て使い切らないと、割高になってしまいます。

実際に料理をするときに重要なのは、「時間管理や工程管理」です。食事の開始時間から逆算し、温かいうちに食べてもらえるよう、作業の時間を考慮して手順を決めます。慣れてくれば、鍋でお湯を沸かしながら食材をカットし、レンジで食材を温めながら使った容器を洗うなど、複数の作業を同時に行うことで時間を短縮できます。「5S」も重要で、使う頻度に応じて調味料や調理器具の場所を決めておくと効率が上がります。

料理で大事なのは味ですが、食べる人の気持ちを考えると、皿のデザインや盛り付け方、雰囲気づくりなど、ある意味「プレゼン」も大切だと分かりました。

そして、「感謝の気持ちを伝えること」の重要さも実感しました。「おいしい」の一言は、モチベーションに相当影響します。私は今までどこか、「会社員は仕事をするのが当たり前」と考えており、社内で仕事を手伝ってもらったときの感謝や、仕事を遂行した後輩へのねぎらいの言葉を掛けるのがおろそかになっていたと気付きました。

最後は皿洗いです。皿洗いの難敵は油汚れです。下げ膳の際は油で汚れた皿を重ねない、油汚れの皿は最後に洗う、油の多い料理を保存するにはプラスチックでなくガラスの容器にするなど、「作業効率化のための工夫」の重要さも学びました。

日常の中に仕事に役立つ気付きがあることを、特に若手の皆さんには参考にしていただくと、毎日がとても新鮮になると思います。

以上(2022年4月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】「面倒くさい」が口癖のあなたが本当にやりたいこととは?

仕事の進め方や人事評価の在り方に至るまで、皆さんの働く環境はここ数年で大きく変わってきています。さて、このように環境が変化する際には、決まって2つのタイプの社員が現れます。1つは「変化が楽しい、もっと新しいことに挑戦したい」と思うタイプ、もう1つは「面倒臭い、今の働き方を変えたくない」と思うタイプです。もちろん、皆さんには前者であってほしいですが、今日はあえて後者の人に向けた話をします。

皆さんは、「葛飾北斎(かつしかほくさい)」をご存じでしょうか? 富士山をさまざまな地域、角度から描いた「富嶽三十六景(ふがくさんじゅうろっけい)」などの浮世絵で知られる江戸時代の絵師です。北斎の浮世絵は今も高く評価されていますが、彼にはとても怠惰な一面がありました。

例えば、彼は90年の生涯で93回の引っ越しを経験したそうですが、それは「苦労せず、きれいな部屋に住みたい」という理由からだったといわれています。北斎は家事をおろそかにする人で、外でご飯を買ってくればその包み紙を所構わず捨て、ろくに布団も洗濯しないありさまでした。そのため、部屋はいつも汚く、仕事に支障が出るほどになると、彼は都度住居を変えていたそうです。一方、彼は死の直前、「あと5年あれば真の画家になれたのに……」という趣旨の言葉を遺すなど、浮世絵に対してはとてもストイックでした。

真相は分かりませんが、引っ越しが必要になるほど家事をおろそかにし、長い生涯を振り返って、まだ時間が欲しいと言い残した北斎には、家事に割く時間が惜しい、もっと仕事に集中する時間が欲しいという思いがあったのかもしれません。

冒頭で述べた、環境の変化に対し「面倒臭い、今の働き方を変えたくない」と思ってしまうタイプの人に問います。そのように思う理由は何ですか。「日々の仕事をこなすだけでも大変なのに、これ以上余計なことに時間を割きたくない」からでしょうか。では、皆さんが本当に時間を割きたいこととは何ですか。

思い返してみてください。私が皆さんに初めてお会いしたとき、皆さんはこの会社で実現したい自分の夢を、目を輝かせながら語ってくれました。しかし、時がたつにつれ、与えられた仕事をこなすことが目的になってしまい、入社した頃の輝きを失ってしまっている人が多いように思います。

皆さん、「この仕事をやめて、別の仕事をやりたい」というものがあれば、ぜひ積極的に声を上げてください。これからの時代、仕事はただ与えられるものではなく、皆さんが選んでつかみ取るものへと変わっていきます。もちろん会社は組織ですから、ただ「やりたい」という気持ちだけで好きな仕事に就くことはできません。相応の努力が必要です。しかし、その努力の末に仕事をつかみ取ったとき、皆さんの目には入社したあの頃の輝きが必ずよみがえってくるはずです。

以上(2022年4月)

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画像:Mariko Mitsuda

社長の就任披露パーティーの担当者になったら読むリポート

書いてあること

  • 主な読者:社長交代の就任披露式典などの担当者となった人
  • 課題:社長交代はそうそうあるものではなく、就任披露式典の進め方の情報も少ない……
  • 解決策:リアルかオンラインかを決め、やるべきことをリストアップすることから始める

1 「就任披露」の準備で参考になる情報は少ない?

事業承継などで社長が交代する場合、株主総会の普通決議や登記が必要です。この他にも税務や社会保障に関係した手続きもあります。こうした手続きは、やり方は決まっていて、抜け漏れなく行うことが大事ですが、専門家や行政などいろいろと教えてくれる人がいます。

一方、社長の交代では、社内外に社長交代のお知らせをしたり、就任披露を行ったりします。就任披露では、新社長の所信表明を通じて会社の新たな方針を内外に伝える大切な場なので、ミスなくスムーズに進めたいものです。ただ、

就任披露のやり方は会社ごとに異なるので、就任披露の準備を担当することになった人は、参考にできる何らかの資料が欲しい

ことでしょう。そうした期待にお応えするのが、この記事です。就任披露式典を開催するケースを想定し、準備すべきことをまとめています。確認してみてください。

2 感染症に配慮してオンラインで開催する場合

新社長の就任披露は重要な行事になるので、総務部などを中心に明確な担当者を決めて進めることが大切です。最初に決めることは、

就任披露式典をリアルとオンラインのどちらで開催するか?

です。新型コロナウイルス感染症への配慮は欠かすことができず、その際の政府の方針にも従う必要があります。

仮にオンラインで行うことにした場合、ホテルの会場などの代わりにオンラインツールを準備する必要があります。ここでは詳細を割愛しますが、少なくとも以下のことは決めておく必要があります。

  • 利用するオンラインツールの決定
  • 万一に備え、サブのオンラインツールの確保
  • 参加者への通知(パスワードなどを分かりやすく通知する)
  • スピーチを依頼する人との事前打ち合わせとリハーサル
  • オンラインツールを操作する人の決定(社員、業務委託)
  • リハーサルと当日の接続テスト
  • 必要に応じた代替ツールの確保

オンラインではリアルと雰囲気が大きく異なります。進行がダラダラすると参加者が飽きてしまいますし、新社長の所信表明も響かなくなるので、短時間でテキパキと終えられるようにしましょう。また、この手のイベントでは、主催者側の担当者が不要な場面でビデオオンのまま画面に映り続け、しかも「しかめっ面」というハプニングがありますので、こうした点にも注意してください。

3 当日の式次第と開催決定の判断

リアルで開催するケースに話を戻していきます。一般的に、就任披露式典などの式次第は次のようになるので、この流れを意識するとよいでしょう。

  • 開会の辞
  • 前社長のあいさつ
  • 新社長のあいさつ
  • 来賓祝辞
  • 乾杯
  • パーティー、懇談、歓談
  • 祝電披露
  • 閉会の辞

また、感染症の状況をみて、

オンラインへの切り替えや中止・延期の判断基準と決定時期

についても明確にしておく必要があります。これは重要な決定事項なので、新社長などと確実に協議しておきましょう。

4 担当者が事前に決めておくべきこと

1)開催日時、場所の決定

就任披露式典などは、社長交代を決める株主総会終了後のできるだけ早い時期に開催します。また、新社長の就任あいさつ状を作成・印刷・郵送する作業も並行して進めます。

就任披露式典などは、新社長にとって最初の対外的な行事となるので、ホテルを利用するのが一般的です。就任披露式典などの実績が豊富なホテルなら、催し物や進行方法などについてアドバイスも受けられます。なお、会場によっては自社が幕などを用意しなければならないこともあるので、会場側と自社の役割分担をしっかりと確認しましょう。

2)出席者と祝辞を依頼する来賓の決定

社内の出席者や招待客を決定します。社内からは、一定以上の役職者(部長以上など)は全員が出席します。また、招待客の対応をするための社員も出席します。

招待客には、大株主、金融機関、主要取引先、関連会社、マスコミなどもいます。この中から祝辞を依頼する来賓を決定し、事前に連絡します。

3)招待状の発送時期の決定

招待客は多忙な人が多い上、就任披露式典なども一定期間に集中しやすいものです。招待状は、就任披露式典などの30日前に届くように投函します。

4)記念品の決定

記念品は企業イメージに合ったものがよく、かさばるものは避けましょう。自社で記念品になるような商品を取り扱っている場合は、なるべく自社扱い商品から選ぶようにすれば、PR効果も期待できます。

5)マスコミなどへの連絡

必要に応じて、マスコミなどにも連絡しておきます。また、自社の広報と連携し、ホームページやSNSなどでPRするのもよいでしょう。

5 当日の運営:係別のポイント

1)担当者

担当者は開式の2時間前には集合します。来賓などの欠席がないかを確認し、必要な対応をとります。また、役割分担を最終確認した上でリハーサルをします。

2)設備・設営係

自社で設営が必要な会場の場合、設備・設営係が手配します。事前に、前日からの設営ができないところを確認し、可能であれば事前に済ませておくとスムーズです。

3)受付係

受付係は、少なくとも30分前には招待客を迎えられるように準備します。受付係の主な仕事は、招待状のチェック・記帳、リボン付け、名刺や金品の受領、会場までの案内などです。招待客と面識のある社員が担当するとスムーズです。

4)手荷物係

ホテルの場合はクロークに一任できます。自社などで開催する場合は、あらかじめ番号を付した預かり札を用意しておき、これと引き換えに手荷物を預かり、番号順に保管します。帰りの際は混雑するので、人数を多めに配置しておきます。

5)迎賓

会場の入り口に金屏風を立て、その前で自社の役員が招待客を迎えます。

6)司会・進行係

全般の進行管理と雰囲気づくりを担当します。進行係は司会役と密接に連絡を取り合いながらスムーズな進行を心掛けます。具体的には、「片仮名の祝電は、読みやすいように漢字仮名交じり文にしておく」「祝辞を依頼した来賓の到着時間を確認し、スタンバイしてもらった上で、誘導する」などの細かい配慮が必要です。

また、スケジュール通りに進めるには機転を利かせた判断が必要で、特に高齢の招待客に対しては専属のスタッフを配置することも検討します。

7)記念品係

閉会後、出口付近で記念品を手渡します。あるいは、事前に出席者の座席の近くに用意しておきます。

8)車両係

ホテルの場合は、必要に応じて無料駐車券を配布します。会場付近の混雑が予想されるときは、交通整理や警察への連絡もしておきます。

9)広報・記録係

必要に応じて、会場にはカメラマン席を設けます。会社の役員と来賓との懇談風景などはスナップを撮り、マスコミ各社にリリースします。ビデオはホテル側でも撮影してくれます。

10)会計係

会場費、記念品代、その他諸経費など全ての予算と実行予算を管理します。これには、ご祝儀の記録やタクシー券の精算なども含まれます。

6 後日のフォローアップ

後日、出席者に礼状を送ります。欠席者についても、祝い品をもらった先や重要な先には、社長や役員が記念品などを持参して、お礼に伺います。これらのフォローアップは、式典から間が空くと効果が半減するので、速やかに実行できるように段取りを整えておきます。

お礼のあいさつ回りが一区切りついたら、撮影したビデオや写真類を記録・整理します。社内報やPR誌などで特集を組んだり、後日、社史を編さんする際にも利用したりします。

以上(2022年4月)

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元銀行員が仕掛ける個人向け「セールアンドリースバック」はまさに「デジタル質屋」。その思いは、「モノの買い方」や「お金の使い方」を変え、世界をも変えていく可能性を秘めている!/岡目八目リポート

年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、山本義仁さん(ガレージバンク株式会社のCo-Founder/CEO)です。

山本さんの事業を分かりやすく表現すると、まさに「デジタル質屋さん」といえます。お話を伺っているだけで、なにか消費に対する考え方がバージョンアップされ、「モノの持ち方」「お金の生み出し方、使い方」などの価値観が変わっていく感じがします。かつて銀行員だった山本さんならではの思い、アイデア、工夫が満載のお話をご紹介します。

1 「モノの価値を具現化してお金に変える」をオンライン完結で実現

スタートアップのエンジニアが、副業で自分のサービスを構築するために、MacBook(ノートPC)を「担保」に資金をつくり、マーケティングに投入する。しかもMacBookは、月々のリース料を支払って、手放さず使い続ける

こんなお金の生み出し方、使い方が山本さんのサービスで実現しています。実に手軽な資金調達方法ではないでしょうか。
 山本さんは、ミッション「モノの価値を、みんなの【できる】に。」(下記)を掲げ、主に「個人の動産資産の流動化」を手掛けています。

ガレージバンクのミッションを示した画像です

(出所:ガレージバンク株式会社のWebサイト)

個人が保有する動産資産の資産価値を具現化して、その価値を挑戦・やりたいことに使ってもらおうというのが我々のミッションの根底にある」

と語る山本さん。これを実際のプロダクトに落とし込んでいるのが個人向けのセールアンドリースバック「CASHARi(カシャリ)」です。スマホアプリで簡単にできるところが大きなポイントで、2022年1月、山本さんたちは「スマホアプリを用いたセールアンドリースバック」のシステムで特許を取得されています。

CASHARi(カシャリ)のイメージを示した画像です

CASHARi(カシャリ)のイメージを示した画像です

(出所:ガレージバンク株式会社のWebサイト)

 

山本さんの考えを形にしたスマホアプリ「CASHARi(カシャリ)」について、3つの点から特徴をご紹介します。山本さんの思いが詰まっています。

1)ワンストップのセールアンドリースバック

一般的に、セールアンドリースバックというと「法人向け」がメーンで、かつ、取り扱うのは不動産、自動車、機械などです。山本さんの「CASHARi」では、「個人」が自分のノートPCやカメラ、スマホ、ゲーム機などのモノ資産をお金に変えることができます。やり方はいたって簡単で、基本的にオンラインで完結します。スマホアプリを使ってアイテムをカメラで撮影し、査定(原則24時間以内)、利用申込みまでできます。お金はセブン銀行ATMで受け取れます。対象となったアイテムは、月々の利用料(リース料)をクレジットカードで支払えば、引き続き使い続けることが可能です。

CASHARi(カシャリ)のイメージを示した画像です

(出所:山本さんからいただいた資料より抜粋)

2)テクノロジーによる「高い画像査定技術」と「不正リスクを防ぐ仕組み」

山本さんたちのすごいと思うところの一つは、テクノロジーで「隙のないつくり」にしている点です。例えば、実物査定ではなく「画像での査定」を実現していて、この独自の画像査定技術があるので、オンライン完結が可能になっています。ポイントは、実家が質屋の共同創業者、磯田氏の持つ査定ノウハウがふんだんに生かされている点だという山本さん。また、「CASHARi」で査定した画像データをすべて教師データとしてモデル化も進めており、さらに精度に磨きをかけています。「これはブランド○○の本物、偽物」も検知できてしまうというから驚きです。

もう一つ、「CASHARi」を支えているテクノロジーは、不正リスクを防ぐ仕組みです。「銀行口座を開くのと同じ基準での本人確認」「画像撮影時の場所の確認」など多数面からの不正リスク防止策(下記資料ご参照)。このあたりは、山本さんの元銀行員というご経歴が大きくプラスになっていると感じます。利用状況をトラッキングし、資産背景なども見ているため、「この人、ちょっと使いすぎていておかしいな」などを検知できているそうです。

スマホで撮影した写真一つで簡単にお金を手に入れられるサービスだからこそ、支える技術やリスク管理には徹底的に手をかけている。良い意味で、とても堅い印象のサービスです。

CASHARi(カシャリ)の実装済対策を示した画像です

(出所:山本さんからいただいた資料より抜粋)

3)フリマともレンタルとも違う、そしてある意味“質屋さん以上”

「個人の持っているモノをお金に変える」というと、フリマアプリがまず思い浮かびます。フリマの場合、お金は手に入れられますが、アイテムを手放すことになります。それと違って、「CASHARi」はアイテムをアプリ上で預けてお金に変える、まさに「デジタル質屋さん」なのですが、厳密に言うと“質屋さん以上”の使い方ができます。なぜなら、リース料を支払えば、アイテムを預けることなくこれまでと変わらず使い続けられるからです! 「CASHARi」のサービスサイトでは、フリマなどとの違いが次のようにまとめられています。

CASHARi(カシャリ)と類似サービスの比較を示した画像です

(出所:ガレージバンク「CASHARi」のサービスサイト)

山本さんは、「CASHARi」を「モノの資産価値を可視化して手軽に管理でき、売却や流動化をワンストップで提供するサービス」と表現します。ポイントは「モノの資産価値の可視化」にあると山本さん。自分が持っているモノがどのくらいの資産価値があるか、そんなことは考えてみたこともない……という人が多いのではないでしょうか。

その点、山本さんのお話を聞いていると、「モノには資産価値があり、お金に変えられる」が実感できてきます。この考え方が定着すれば、自分の「モノ資産=日ごろ使っているPCやバッグなど」を見る目も変わってくるでしょう。分かりやすく言うと、「これだけの資産価値(◇万円に変えられる)なら大事に使おう!」と思います。もっと言えば、買う段階で「資産価値のある良いものを選ぼう」となります。

長く使える良いものを選び、「CASHARi」でリユースしてお金に変え、愛着があったら自分で買い戻すこともできる。山本さんのお話から、自然と無理なく「モノを大事にする」ようになっていく流れを感じます。SDGsを身近に感じている人、特に若い世代の人ほど、こうした価値観がすんなり浸透していくのではないかと思います。

2 なぜセールアンドリースバックをやっているのか

セールアンドリースバックを行っているのには、次の2つの思いがあると山本さんは語ります。

  • 個人に対する信用与信の補完、代替をしたい。低スコアの若年層はなすすべがないなど従来の信用与信モデルは限界があり、ライフスタイルにあった調達手段を提供したい。
  • サーキュラー・エコノミーを実現したい。モノの死蔵化を防ぎたい。

この思いに至る山本さんの軌跡を振り返ってみましょう。

1)銀行員時代、「個人」「スモールビジネス」向け金融サービスの少なさを実感

山本さんは、新卒で銀行員になりました。もともと起業に興味があったのですが、大学を卒業した2011年は就職そのものも大変なときで、リーマンショックの影響を受け多くの企業が倒産するのを目の当たりに。

「ビジネスを成り立たせるには金融のことをちゃんと知らなくてはいけない」

「世の中の仕組みを知るには多くの企業のことを知る必要がある、知ることができる環境にいなくてはいけない」

リーマンショックの影響などを見てこう考えた山本さん、まずは銀行に就職することを選択します。折しもIT系の企業が注目されていたころで、山本さん自身も大学時代はデジタルコンテンツ系のゼミに所属していました。しかし世の中に流されず、自分でじっくり考えて就職先を選んだ山本さん。

法人への金融商品の提供などを行っていた銀行員時代。大口融資などを経験する中で、山本さんは次のように「ハタと感じた」そうです。

「法人・大企業の方であればさまざまな金融サービスにアクセスできるが、小規模なビジネスや個人ではアクセスできないものが多い」

「その中の1つが、資産の流動化だった。今は皆さんが当たり前のようにモノを買ったり売ったりレンタルしたりというのが定着していますが、それを組み合わせるサービスは、小口でやることはほとんどないと分かったのです」

そこで、「個人の動産資産の可視化→流動化」を考えた山本さん。山本さんは、

個人のバランスシートの左側を最適化する

と表現します。「(山本さんたちが)ターゲットにしている20歳代の方々でも、モノ資産のほうが現預金より圧倒的に多い。これを流動化できれば、バランスシートとして健全な状態」と山本さんは言います。

20歳代の世帯別資産ポートフォリオを示した画像です

(出所:山本さんからいただいた資料より抜粋))

確かに、これらのモノ資産を流動化できれば、新しいことにチャレンジする機会を増やせそうです。

2)転職の後、ガレージバンクを創業。目指すは……

銀行でさまざまな業界のビジネスを学んだ山本さん、銀行を退職するとベンチャー企業に転職し、個人事業主向けのファクタリング事業などを担当します。そしてその後、2020年1月にガレージバンクを創業しました。共同創業者かつ「実家が質屋」の磯田氏(前出)は大学時代からのご友人とのこと。お二人の「リユースノウハウ」と「金融ノウハウ」を掛け合わせたサービスが、「今後の社会では必要になっていく」との思いもあって創業に至ったそうです。目指すは、

「リユース×金融」の複合型事業 ≒ 質屋DX

お二人それぞれが別々の世界でしっかり経験と実績を積まれている上に、それが掛け算されているので、地に足のついた会社、サービスが実現できているように思います。世の中にさまざまなスタートアップやテクノロジーを駆使したサービスが出ては消えしている昨今、「地に足のついた」というのは、非常に素晴らしく、重要なことではないでしょうか。穏やかで思慮深いお人柄が伝わってきて、なにか安心できる語り口の山本さんです。

3 若いユーザー世代が感じているであろう「持たざる豊かさ」

山本さんたちのメーン事業「CASHARi」は、2020年11月にスマホアプリβ版をリリースし、オーガニックで順調にユーザーを増やしています。2022年3月時点のユーザー数は1万5000人、査定件数は1万3500件ほど。SNSやネットの掲示板から流入してくるユーザーが多く、もともとターゲットとしている20歳〜30歳代の利用が約80%を占めています。

アイテム別でいうと、20歳〜30歳代が保有していて資産性が高いものは主にデジタルガジェットで、実に全体の77%を占めているそうです。山本さんのお話で面白かったことの一つが「年代によってアイテムが違っている」ということ。「20歳代は、ノートPCなどとにかくデジタルガジェット。いわゆる質屋さん的なブランド物の査定はほとんどなく、あっても財布くらいです。バッグなどの査定は来ません。ブランド物のバッグの査定依頼が多いのは40歳代以上の方々です」と山本さんから教えていただきました。

モノの持ち方、モノに対する考え方も世代によって大分違うのだなというのが分かります

所有からシェアへと変わってきている今、特に20歳〜30歳代の人たちは「持たざる生き方のほうが実は豊かである」「モノに固定されることのほうが豊かではない」ということに気付いているのかもしれません。

山本さんたちのサービスが20歳〜30歳代を捉えていること、そして、「モノ」「お金」にかかわる20歳〜30歳代の行動や価値観が想像できる実データが蓄積されていることも、大きなポイントです。さまざまな業界と、マーケティングや商品開発、営業などの面で相性がいいのではないでしょうか。そうした可能性も含め、次章からは山本さんの見据える今後の展開や理想などをご紹介します。

4 山本さんが考える今後、力を入れたい3つのこと

「現状、総務省のデータなどによると個別の動産資産は約30万円で、それにコアターゲット層を掛け合わせると大体1兆円程度の市場が取れるという想定」と語る山本さん。今後については次の3つを考えています。

  • 取り扱いアイテムの拡充
  • 金融サービスの融合
  • 海外展開

1)取り扱いアイテムの拡充

山本さん曰く、「取り扱いアイテムの拡充」は、かなり具体的に進んでいるそうです。例えば、直近では自動車です。大手中古車会社さんと提携しAPIをつなぐことによって、山本さんたちのサービスの中で自動価値算定ができる、さらにそのままセールアンドリースバックができる準備をしているとのこと。その他、不動産やホビー用品なども可能性がありそうです。

2)金融サービスの融合

「BaaSの内包による預金・決済・与信の取込」という点で金融機関とも提携していきたいと語る山本さん。「お金を入れる口座を山本さんたちのアプリ【CASHARi】に入れる。アプリ内の口座にお金をプールして、モノを買ったり、引き出したりできるようにする」ことが実現できるといいます。実際に、金融機関(銀行)とは既に何行かと話をしているそうで、可能性がかなり広がっていくように感じます。

3)海外展開

山本さんは、東南アジアを中心に展開を進めたいとも考えています。東南アジアには、「CASHARi」が浸透する素地があるようです。例えばフィリピンでは質屋文化が発達しており、銀行口座を持っているのは3割程度なのに対して多くの人が質屋を使っている状況。さらに、モノを質屋でお金に変え、そのお金を質屋ネットワークで送金している、つまり、質屋=銀行というわけです。

このほか、「CASHARi」では「どういう人が、何を、いつ、いくらのお金に変えたか」のデータがどんどん蓄積されるので、例えば消費トレンドが分かったり、どういう人がどういう物を買ったかの購買行動が分かったりします。これはマーケティングに活かせます。また、行動予測やモラルスコアリングなどにもつなげられるかもしれません。このあたりは人材採用やマッチングなどに活用できそうです。「モノ」「お金」の実データ、しかも20歳〜30歳代の実データを把握していると、本当に可能性は無限大です!

5 山本さんが実現したい理想の世界とは?

可能性の塊のような山本さんたちのセールアンドリースバックのサービス。最後に、こうしたサービスを通じて、山本さんが実現したい理想の世界を聞いてみました。山本さんは、次のようにご回答してくださっています。

    ●山本さんの理想の世界
    ミッションに「モノの価値を、みんなの『できる』に」と掲げている通り、誰もがお金がらみで躊躇したり、諦めたりすることをなくしたいのです。

    「できる・やれる・楽しめる」というもので溢れる社会にしていきたい。
    会社だと借金でも「資金調達」みたいな形でいいもののように言われる。一方、個人だとどうしてもかなりネガティブな「借金」というイメージがまだまだあります。

    個人のバランスシートの左側を最適化して、それを次の挑戦に使ったほうが、みんなが楽しい方向にいきますし、そうするとゆくゆく社会が前向きな方向に変わるはず。今のままだと保守的な生き方になって、(社会全体が)シュリンクしてしまう。そうではなく、社会を前向きにしていきたいです。

固定的なモノや何かに縛られない、持たざる自由で流動的な生き方。こうした生き方、考え方が浸透すれば、山本さんが言うように、誰もがチャレンジできる前向きな社会に変わっていけそうです。
そう考えると山本さんがつくっているのは単なるサービスにとどまらない、もはや、世界を変える「文化」をつくろうとされていると感じ、とても期待&応援しております! 有り難うございました。

以上(2022年4月作成)