【朝礼】家に諌(いさ)むる子あればその家必ず正し

皆さん、日々の仕事は順調ですか。仕事を順調に進めるためには、上司や同僚・部下との協力が必要不可欠です。もし、何かうまくいかないことがあれば、そういう人たちからアドバイスを受けることです。具体的な解決策を教えてくれるかもしれませんし、叱咤(しった)激励されるかもしれません。

本日は皆さんに、「家に諌(いさ)むる子あればその家必ず正し」という言葉を紹介します。

これは、中国の思想家・孔子(こうし)の教えに基づいた「孝経(こうきょう)」という書物にある故事成語です。読んで字のごとく、家に過ちを指摘する子供がいればその家は正しい方向に向かう、という意味です。

ここで、「家」を「会社」、「子」を「社員」と読み替えてみましょう。「会社に諌(いさ)むる社員あればその会社必ず正し」となります。この言葉はビジネスの場においても、大きな意味を持っています。

仕事をする上で、怠慢による失敗、社会的な倫理規範に反する行為、明らかな不正な行為があれば、会社の信用は失墜し、お客様、お取引先、また、ほかの社員に大きな迷惑を掛けてしまいます。また、皆さんが、自らが意図的に行わなくても、知らず知らずのうちに、不正や過ちを犯してしまうことがあるかもしれません。不正や過ちではなくても、仕事を進める上での手順や方法が明らかに間違っていることもあるでしょう。

このような場合、間違いに気付かないままでいると、業務に混乱が生じ、ひいては大きな損失につながる恐れがあります。

同僚や部下からの諌言(かんげん)は耳が痛いかもしれません。しかし、一人で「自己流」のやり方だけで仕事をしていると、どこかで知らず知らずのうちに過ちを犯してしまう可能性があります。

もう一つ、忘れないでもらいたいことがあります。ここで言う諌(いさ)むる社員は皆さん全員ですし、その対象となる社員も皆さん全員です。

皆さんは同僚や部下に対して諫言(かんげん)をすることは容易にできるでしょう。しかし、上司に対して諌言(かんげん)するのはとても勇気がいることですが、それでもお願いします。

ただし、部下の皆さんが上司に諌言(かんげん)するときは、言い方に注意を払い丁寧な言葉で意見を述べてください。そうしないと、上司が機嫌を損ねて、部下の皆さんの意見を聞く耳すら持たなくなるかもしれません。こうなると、部下の皆さんの勇気が無駄になります。

私としては、上司の皆さんには大きな度量で、諌言(かんげん)してくれる部下の心情と意見をしっかりと受け止めてほしいと思っています。それが会社のためになるのです。

互いに諌(いさ)め合い、そして人の諌言(かんげん)には真摯に耳を傾ける姿勢を持ちましょう。私にも諌言(かんげん)でかまいませんので、遠慮なく意見してください。

以上(2023年5月)

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画像:Mariko Mitsuda

【経理人材の育成(1)】経理管理職の最優先課題。経理負債の解消を考える

書いてあること

  • 主な読者:経理人材の育成や、経理部全体の効率化に悩む中小企業のマネジメント職
  • 課題:時間がない、具体的な改善策が思いつかないことを理由に、現状維持になってしまう。その結果、ミスの繰り返しや、現場のモチベーション低下が生じ、経理負債が蓄積される
  • 解決策:コト(経理業務自体)とヒト(一緒に働くメンバー)の両面から課題を捉える

1 経理負債の解消こそが、経理管理職の最優先課題

経理に課題を抱える会社には共通点があります。それは、「経理負債」を抱えていることです。「経理負債」とは、

経理部門が通常通り業務を行うことを妨害する蓄積された課題

のことです。例えば、月次決算で手間がかかると思いながらも、毎月、同じやり方で作業を続けていませんか。変えなければと頭では分かっていても、時間がない、または具体的な方法が思いつかないなどの理由から足踏みし続けてしまう。その結果、複雑な手順から生じるミスが減らず、経理負債が蓄積されていくのです。

経理負債は、以前話題になった「睡眠負債」によく似ています。毎日の不足分が少しずつたまった結果、健康を害するほどの影響が出てしまう。私たちの健康も、会社の経理業務も、ため込まないことが重要です。

では、いったんたまってしまった経理負債をどうしたらいいのでしょうか。解決に必要なのは、気合と根性ではありません。

時間と方法の具体的なアイデアこそが必要

です。日ごろ、会社の経理の人と接していると、「非効率なやり方をしているので、時間がない」とよく言われます。しかし、私は逆だと考えています。多くの場合、時間がないから非効率なままなのです。もちろん、大きく変えるための取り組みにはたくさんの時間が必要なため、始めは小さな改善しかできないものです。それでも、とにかく小さな改善を積み重ねて時間を捻出し続けることで、大きな改善に取り組めるようになるのです。

経理管理職にとっての最優先課題は経理負債の解消だと私は強く感じます。

2 コトとヒトの2面から課題を捉えよう

経理負債があると、ミスしたり時間がかかったりという経理にとってはよくない事態を招きます。これでは、「決算の早期化」や「正確性の向上」といった経理部門でよく挙げられる目標を達成することはできません。

さらに、長時間労働になりがちで、体調不良になったり、成長実感が得られない作業に追い立てられてモチベーションが下がったりするメンバーも出てきます。

経理業務自体に関する前者は「コト」のはなしであり、一緒に働くメンバーに関する後者は「ヒト」のはなしです。経理負債は、このように、「コト」と「ヒト」の両面に悪影響を及ぼす、諸悪の根源といえるでしょう。

従来、経理の課題は、「コト」に関する問題が注目されてきました。しかし、最近では、在宅勤務など新しい働き方の普及や、人的資本に関する情報開示の広がりから大手企業を中心に人材育成に熱心に取り組むようになっています。もちろん、この話は経理に限ることではありません。

ましてや人手不足が深刻化する中、従業員が会社を選べる時代に変わったことを心に留めておく必要があります。特に経理職は、他の職種に比べて、ポータブルスキル(会社を問わず活用できるスキルのこと)の色合いが濃いため、今いるメンバーが来年も一緒に働いてくれる保証はどこにもありません。

3 ヒトを重視した管理職の取り組み例

脅かすような話をしてしまいましたが、ヒトの側面での取り組みを少しだけ紹介しておきます。私の印象では、経理人材は「職人気質」の人が多く、これまであまり人材育成に注力する人が多くなかったように思います。まずは気負わず簡単なことから始めましょう。

例えば、経理管理職は、経営者や役員に呼ばれて、緊急の打ち合わせが入り、当初予定していたメンバーとの打ち合わせに出られなくなった場合どうしますか。

このようなときは、役員との打ち合わせが終わったらすぐにメンバーとの打ち合わせを再設定するようにしてください。近年流行りの1 on 1など、少人数で行う個人的な内容の場合には特にです。このようなメンバーとのやり取りは、緊急ではないものの、現場レベルでの重要な事案が多く、後から気付いたときには手遅れになりかねません。また、小さな行動でも、「大事にされている」という印象を確実に与えることができます。

また、メンバーからは、管理職の皆さんに質問や相談したいのに、「話しかけづらい」という声をよく聞きます。これは私が管理職だった頃もそうで、メンバーから言われて反省したこともありました。言い訳ではありませんが、経理部門は自分でも会計処理を検討するようなプレイングマネージャーが多く、デスクに居るときは作業に時間がとられがちです。また、在宅勤務の場合は、相手の状況が分かりづらいことも拍車を掛けているのかもしれません。そこで、デスクにいる際はなるべく暇な雰囲気を出したり、自分の作業はメンバーが出社する前の朝の時間帯に行ったりすることも手です。さらに、共有カレンダーに作業予定も入れている場合には、作業とイベント(会議)を区分して表示し、メンバーには作業の時間帯はいつでも話しかけていいなど、ルールを明確にして伝えておくのも役に立ちます。

これらは近年話題の「心理的安全性」、つまり従業員が自分は受け入れられていると感じ、安心して発言したり業務を行えたりする状態を生み出すことにもつながります。実際に私が見聞きする中では、残念ながらこの程度のことができていない経理部が大半の印象です。忙しいから仕方がない側面もありますが、前述のとおりメンバーが辞めてしまい生産性が下がっては、経理負債が解消されるどころか、さらに積み上がってしまいます。悪循環に陥らないためには、負担が少ない方法で、ヒトの側面をカバーすることが必須なのです。

4 管理職だからこそ経理部を変えられる

このような理由から、本連載では、コトとヒトの両面を扱います。これまで、ヒトの側面というのは、経理の分野ではあまり注目されなかったため、違和感を覚える人もいるかもしれません。

でも、考えてみてください。もし皆さんが、メンバーのひとりから明日突然辞めると言われたら、業務への影響を真っ先に心配するのではないでしょうか。いくらAI時代の到来といっても、コトとヒトは切っても切り離せないのです。

ここまでの話で、管理職の仕事がとても広範囲であることを改めて実感したと思います。しかし、経理管理職にはおおきなやりがいがあります。実際に、私は管理職になったときに、スタッフ時代と比べて色々なことが容易に進むようになり、感動したことを覚えています。

例えば、業務の削減や改善を行うことは、管理職であれば難しくありません。やり方を変えた場合のリスクがとれるのは管理職だからこそですし、そもそも経験と立場があるからこそ事前に十分な検討ができます。また、他部門の調整も管理職の力が生かしやすい場面です。肩書などの属性によって対応を変えるタイプの人もいます。そういう相手と対峙するときに、管理職という肩書は、経理部を代表して他部門を動かすことができる力の源泉にもなるのです。

これらの力があるからこそ、管理職は、経理負債の解消の主役として機能でき、ひいては経理部を変えることができるのです。「経理の仕事はAIにとって変わられる」といわれて久しいですが、主にスタッフクラスが行っている業務の話です。日々高度な判断やコミュニケーション、人材育成を担っている経理管理職ご自身については、直接の脅威ではないはずです。

本連載が、やりがいあるこの経理管理職という仕事を体系立てて整理したり、実務に生かせるヒントを得たりする機会になれば幸いです。

以上(2023年5月)
(執筆 管理会計ラボ株式会社 代表取締役・公認会計士 梅澤真由美)

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画像:Kittiphan-shutterstock

【交渉術】主張が入り乱れる「製販調整会議」から学ぶ交渉に強い組織

書いてあること

  • 主な読者:同じ会社なのに製造部と販売部など、部門間が協力せずに困っている経営者
  • 課題:部門の力関係や妥協によって方針が決められていて、建設的な議論にならない
  • 解決策:相手が本当に望んでくることを把握して交渉し、最善策を検討するようにする

1 なれ合いでもけんかでもない。交渉術を身に付ける

ビジネスは利害の異なる人が意見調整しながら進めるものですが、これは社外に限ったことではありません。例えば、製造業が生産/販売計画のズレを補正する「製販調整会議」(以下「会議」)では、社内の関係者の利害が次のように衝突します。

  • 生産部門:増産よりも製造ラインの安定稼働
  • 販売部門:製造ラインの安定稼働よりも増産による収益の確保

このようなとき、単純なパワーバランスで決まったり、なれ合い(交互に主張を通す)で決まったりするようでは駄目でしょう。かといって、調整が子供のけんかのように対決になるのも論外です。経営者は、

社員がきちんと交渉術を身に付け、会社にとって好ましいと信じる方向に進むために議論してほしい

と考えるでしょう。

そこでこの記事では、鉄鋼メーカーA社の会議を例に、交渉術を使って組織を同じ方向に導く方法を紹介します。社員教育の一環としてご活用ください。

2 鉄鋼メーカーA社の会議

鉄鋼メーカーA社は、国内外に鋼材を販売しています。国内向けが中心ですが、ここ数年は低迷しており、海外市場のさらなる開拓が必須となっています。ただし、海外市場は大量受注が見込めるものの単価は安く、生産ラインの安定稼働によるコストコントロールが課題です。

そのような折、販売部門が海外の顧客から新規受注を獲得しようとしています。なにやら、「海外のコンテナメーカーが、ステンレス製コンテナの製造工場を新設するため、ステンレスの取引量をこれまでの2万トンから3万トンに引き上げたい」というのです。

今回、販売部門が持ち込んだのは計画外の1万トンです。販売部門にとっては大手柄になる可能性があるビッグディール。一方、生産部門は計画外の生産によるリスクを何とか回避しようとします。すると、次のように両部門の主張は衝突します。

  • 販売部門長:「3カ月後の納品予定で、ステンレスを1万トン増産してほしい。国内市場が低迷する昨今、海外市場の開拓は経営目標でもある。これは千載一遇のチャンスなのだ!」
  • 生産部門長:「おいおい、いきなり1万トンの増産はむちゃだ。そんなことしたら他のラインに影響が出かねない。それに、そもそも採算は合うのか。海外向けは利益率が低いから無理する必要はない」
  • 販売部門長:「“いつもの”慎重すぎて『石橋をたたいて渡らない』って考えか。多くのコンテナはさびやすい鉄製だが、ステンレスならさびにくい。このビジネスで成功すれば海外展開の可能性が広がると思わないのか?」
  • 生産部門長:「生産体制を見直すのはリスクだと言っている。既存顧客に悪影響が及べば本末転倒だ! それに、今後の需要は“いつもの”『捕らぬ狸(たぬき)の皮算用』ってやつか? 需要予測はデータで示してほしい」

3 心理的バイアスの軽減

同じ事象に遭遇しても、個人の心理的な状態によって捉え方は異なります。例えば、次のようなシーンの場合、瞬時にどのような印象を抱きますか?

  • アラスカの住民に冷蔵庫を営業する → 売れる/売れない
  • コップに水が半分入っている → まだ半分もある/もう半分しかない
  • 計画外でステンレスを1万トン生産する → チャンス/リスク

例えば、「アラスカの住民に冷蔵庫が売れるわけがない」と瞬時に判断することを、心理学では「フレーミング」(枠付け)と呼びます。フレーミングには、所属する組織の文化や個人の経験が強く影響しており、これを完全に排除することはできません。先の鉄鋼メーカーA社の会議で、販売部門長と生産部門長が双方とも「いつもの」という言葉を使っていたことに気付きましたでしょうか。これが典型的なフレーミングで、お互いが相手に対して固定化されたイメージを持っている証拠です。

フレーミングは誰にでもあります。相手が「こちらの考えを理解しない」と腹を立てるのではなく、少しでも多く売りたい販売部門と、常に生産ラインを安定稼働させたい生産部門とでは、常識が違うことを認識する努力が必要です。

その上で、フレーミングから抜け出す「リフレーミング」(再枠付け)を試みます。その方法には「人や場所を変える」「第三者に同席してもらう」などがあります。「相手が知らない情報を提供し、気付きを与える」こともビジネスでは有効です。

先のアラスカの例では、「アラスカの住民は、食品を解凍する時間と手間を嫌っている。冷凍のニーズはないが、『食品を適温に保つ箱』のニーズは高い」といった情報を提供し、冷蔵庫の売り方の気付きを与えるのです。

フレーミングの他にも心理的バイアスは数多くあるので、一覧にまとめます。フレーミングと同様にこれらを完全に排除することはできませんが、少なくとも「双方に心理的なバイアスがある」ことを知るだけでも効果があります。

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4 論点の整理

交渉を「駆け引き」だと思っている人がいます。駆け引きとは、もともと「戦争における兵隊の押し引き」という意味ですから、交渉は相手との勝負ということになります。しかし、これでは片方が得をすると、もう一方は損をすることになります。例えば、販売部門が担当役員などを巻き込んで、無理やり1万トンの増産を生産部門に受けさせれば、生産ラインは混乱しますし、遺恨となります。

そうならないように心理的バイアスを軽減し、人と問題を切り離した上で状況を整理します。そうすると、表面的な主張は激しく対立しても、根本的なところで大切にしていることは一致しているケースがよくあります。例えば、次のようにです。

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上図のような整理ができると、交渉の突破口が見えてきます。販売部門は「海外市場の開拓」、生産部門は「生産ラインの安定」を重視しており、このポイントを満たす合意案を考えることが、「Win-Win(ウィンウィン)」の関係構築です。

相手が本当に望んでいることは、相手が譲れないことともいえます。これを知らないままでWin-Winを目指せば、表面的な妥協を繰り返すことになりかねません。この辺りの違いを次章で確認していきましょう。

5 交渉で必ず押さえたい3つのこと

1)留保価値

交渉は駆け引きではありませんが、良い人同士の譲り合いでもありません。合意のために自分の要求レベルを下げ続ける人もいますが、これでは交渉をする意味がありません。そこで登場するのが、交渉で必ず押さえることの1つ目、「留保価値」です。

留保価値とは、

「それ以下の条件では合意しない」という交渉の最低ライン

です。例えば、販売部門が1万トンにこだわれば、1万トンが留保価値となります。一方、生産部門はどんなに頑張っても7000トンしか増産できなければ、これが留保価値となります。

2)ZOPA

交渉で必ず押さえることの2つ目が、「ZOPA(ゾーパ:Zone of Possible Agreement)」です。

ZOPAとは、

双方の留保価値の間、つまり交渉余地

です。「交渉の余地はあるのか?」とのフレーズをよく聞きますが、これは「双方の留保価値はクロスしているのか」と同義です。

先の例で言えば、販売部門の留保価値が1万トン、生産部門の留保価値が7000トンの場合、次のような関係になります。「絶対に1万トンが必要だ」と販売部門が主張したとしても、「ない袖は振れない」と生産部門が主張する状態では、ZOPAがつくれません。

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これが、相手が本当に望んでいることを知らずに、表面的な妥協を繰り返すというありがちなパターンです。しかし、双方が本当に望んでいることは、販売部門は「海外市場の開拓」、生産部門は「生産ラインの安定」です。これを図にすると次のようになります。

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販売部門が持ち込んだ案件で、顧客が「3カ月後に3万トン(もともとの2万トンと新たな1万トン)を納品できないなら他社に切り替える」と要求してきているとしたら、何とか1万トンを確保しないと「海外市場の開拓」が達成できません。

一方、生産部門は7000トンならば確保できると言っているので、残りの3000トンをどのように調達するのかを双方で検討することになります。その際に大切なことは、生産ラインの安定を損ねないことです。

3)BATNA

交渉で必ず押さえることの3つ目が、「BATNA(バトナ:Best Alternative to Negotiated Agreement)」です。

BATNAとは、

足元の交渉が決裂した場合、次に取るべき最も好ましい代替案

です。

当初、販売部門が想定していたのは1万トンの「増産」です。しかし、生産部門が増産できるのは7000トンまでなので、増産以外の方法で3000トンを確保するBATNA(最善の代替案)を検討する必要があります。

どのような代替案が考えられるでしょうか。例えば、顧客にお願いして納期を延ばしてもらう、協力会社の生産ラインを借りる、別の既存顧客にお願いして納期を遅らせ、その分の生産能力を割り当てるなどの方法が考えられます。これらの中で最善のもの、つまりBATNAを決定します。対外的な交渉だと当事者がそれぞれのBATNAを持ちますが、社内の会議では、双方が本当に望んでいることの共有を前提に、協力して1つのBATNAを決められる強みがあります。

仮に、別の既存顧客にお願いして納期を遅らせ、その分の生産能力を割り当てる方法を選択した場合のイメージは次の通りです。表面的に妥協しただけではほぼ導き出せないZOPAがつくられたことが分かります。

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BATNAについて1つ補足をします。BATNAとは、事前に具体的に想定するものです。「A社が駄目なら“別の会社”に売る」の別の会社は、BATNAではありません。「A社が駄目なら“B社”に売る。ニーズもリサーチ済み」といったレベルのB社がBATNAです。

6 社内交渉で強い企業になる

なぜ、社内では事業部門や役職者同士の意地の張り合いのような衝突が起きるのか。その理由の1つは、当事者が表面的なやり取りに終始してしまうからです。改善するには、本当に望んでいることを知るための訓練をしなければなりません。

会議は、そうした訓練をするための貴重な場です。会議では必要な資料が全てそろい、双方の本音も知ることができます。対外的な交渉ではあり得ません。そこで「衝突、確認、合意」のプロセスを繰り返すことで、社員の交渉力は確実に高まるでしょう。

以上(2023年5月)

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画像:pexels

【健康経営】 ストレスチェック制度をやりっ放しにせず、職場改善に活かすには?

書いてあること

  • 主な読者:ストレスチェックの集団分析を実施して、職場改善につなげたい経営者
  • 課題:具体的にどうやって分析すればいいのか分からない。何だか手間がかかりそう……
  • 解決策:厚生労働省のツールなどを使えば、分析は簡単。また、外部のストレスチェックサービスを利用すれば、自社で実施するより詳細な分析ができる

1 ストレスチェックの結果を活かせていますか?

ストレスチェック制度とは、

社員がストレスに関する所定の質問に答える「ストレスチェック」、高ストレス者(ストレスの高い社員)に対する「医師による面接指導」などの一連の取り組み

です。社員数が常時50人以上の会社は、労働安全衛生法に基づいて、このストレスチェック制度を年1回以上実施する義務があります(未実施は50万円以下の罰金)。

問題は、ストレスチェック制度自体は実施しているものの、

ストレスチェックの結果から職場のストレス傾向を把握し改善に役立てる「集団分析」

をおろそかにしている会社が少なくないことです。集団分析の実施は努力義務で、未実施でも罰則はないのですが、「ストレスチェック制度を実施して終わり」にしてしまうと、「職場にどのような問題があって、社員がストレスを感じているのか」があいまいになってしまいます。「分析は何だか手間がかかりそう……」と思う人もいるでしょうが、ご安心ください。実は

集団分析は、特定のツールを使えば誰でも簡単に実施できる

のです。この記事では、ストレスチェック制度が法制化された当初から、各社の制度実施のサポートや職場改善コンサルティングに取り組んできた産業医が、集団分析の方法や、集団分析を踏まえた職場改善のポイントを紹介します。

2 そもそもストレスチェックの結果から何が分かる?

1)「社員が何に、どの程度ストレスを感じているのか」が分かる

ストレスチェックは通常、厚生労働省推奨の「職業性ストレス簡易調査票(57項目版)」で実施します。この57項目版では、「心身のストレス反応」「仕事のストレス要因」「周囲のサポート」の3つのカテゴリの質問に答えることで、「社員が何に、どの程度ストレスを感じているのか」が分かります。

紙の調査票を社員に配って回答させてもよいですが、時間や手間を考えるのであれば、

社員が「高ストレス者か否か」を自動で判定してくれるストレスチェックシステムを使って、PCやスマホ上でストレスチェックを受検させる

のがよいでしょう。外部のストレスチェック委託業者に依頼すれば、ストレスチェックの実施に加え、集団分析などもワンストップで行えます。また、厚生労働省でも無料で使える実施プログラムを提供しています(下記URLからダウンロード可能)。

■「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」ダウンロードサイト■
https://stresscheck.mhlw.go.jp/

ストレスチェックシステムによって細かい仕様は異なりますが、例えば、図表1は、57項目版で高ストレス者と判定される場合のイメージです。レーダーが小さく中心に近いほど、ストレスの状況が悪いことを表します。

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図表1の場合、A:「職場環境によるストレス」が特に高く、B:「活気がない、イライラする」などのストレス反応があり、C:「同僚からのサポート」が不十分であることが分かります。

2)80項目版なら「社員の会社に対する満足度」も分かる

ストレスチェックは57項目版の調査票で実施するのが基本ですが、実は厚生労働省から、より詳細な「80項目版」が公表されています。80項目版では、

社員が感じる自身の役割の明確さ、成長の機会、職場の一体感などのポジティブな側面に関する質問(23項目)

が追加されていて、社員のストレスだけでなく、会社に対する満足度も知ることができます。つまり、会社が改善すべき課題だけでなく、伸ばすべき強みも分かるということです。

なお、厚生労働省の実施プログラムでは、80項目版のストレスチェックは実施できないので、興味がある場合、ストレスチェック委託業者を活用するのがよいでしょう。

3 実は簡単! 集団分析の方法

ストレスチェックの結果は社員個人ごとに作成されますが、集団分析では個人の結果を部や課など一定の集団ごとに分析して、職場のストレス傾向をつかみます。

1)分析は自動化できる! 職場のストレス傾向をつかもう

通常、集団分析では厚生労働省推奨の「仕事のストレス判定図」を使用します。これは、ストレスチェックの個人結果を集団ごとに測定し、その集団の社員がメンタルヘルス不調などになるリスク(健康リスク)を判定する分析ツールです。判定図は男女別に用意されています。

集団分析の流れは、次の通りです。

  • 男女別に仕事のストレス判定図を用意する(集団が少人数の場合、全員男性用を使う)
  • 個人のストレスチェックの結果(57項目版、80項目版の回答)を集団ごとに集計する
  • 集計結果を「仕事の量的負担」「仕事のコントロール」「上司支援」「同僚支援」の4つのカテゴリに分けて、集団の平均点を算出する
  • 集団の平均点を判定図上にプロットする
  • 全国平均と比較し、健康リスクを算出する

一見複雑そうですが、前述した実施プログラムを使えば、1.から5.のプロセスは全て、プログラムが自動でやってくれます。なお、集団の人数が10人を下回ると個人が特定される恐れがあるため、その場合は集団の分け方などを工夫しましょう。

図表2は、集団の平均点を判定図上にプロットする場合のイメージです。集団が全国平均(◇)から遠く色の濃いエリアに近いほど、ストレスの状況が良くないことを表します。

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例えば、図表2の赤丸で囲んだ部署(I部)は、仕事の量的負担が大きい上に、仕事のコントロールも利きにくい状況にあり、健康リスクが他の部署よりも高いため、優先的に職場改善に取り組む必要があります。

なお、多くのストレスチェックシステムは、図表3のように判定図の内容を表形式でも示してくれるので、「判定図は何だか分かりにくい」という場合はそちらを確認しましょう。

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2)外部に依頼して、より詳細な分析をすることもできる

ストレスチェック委託業者によっては、分析結果の算出方法を独自に工夫しているケースもあります。例えば、フェアワーク(東京都中央区)では、ストレスチェックの結果を性別・年代別に集計し、全国平均と比較した「ウェルネス偏差値」を算出しています。

図表4は、57項目版でウェルネス偏差値を算出する場合のイメージです。青は全国平均と比較して良好、赤は注意が必要という意味です。

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例えば、性別に注目した場合、女性は「身体的負担度」は良好ですが、「仕事の適性」や「仕事の意義」に関するストレスが高く、「活気がない」ことが分かります。もしかしたら、会社が働き方改革で時短などを図ったものの、それが行き過ぎて「もっとバリバリ働きたい」という女性がやりがいを失ってしまっているのかもしれません。

また、年代に注目した場合、20代は「仕事の適性」に関するストレスが高く、「抑うつ感」があるようです。同僚や家族友人のサポートもあまり受けられず、1人で「今の仕事は自分に合っているのだろうか」と悩んでいる人が多いのかもしれません。

4 集団分析の結果に表れる職場のストレス傾向と改善策

集団分析の結果が得られたら、その結果をもとに職場改善に取り組みましょう。ここでは、厚生労働省が運営するウェブサイト「こころの耳」を基に、集団分析でよく見られるストレス傾向のタイプを3つ取り上げ、改善策などを紹介します。

■厚生労働省 こころの耳「職場のメンタルヘルス対策の取組事例」■
https://kokoro.mhlw.go.jp/case/company-search/

1)孤軍奮闘タイプ(業務量が多い、裁量が高い、上司や同僚の支援が少ない)

1人での作業が多いため、個人の裁量は高い半面、業務量が多くなってしまっているタイプの職場です。上司や同僚は、お互いの仕事内容や量を把握できていません。

【改善策】

  • 各人の業務量、業務内容を洗い出し、割り振りを見直す
  • 作業ミス防止のため、チームを作って相互チェックを実施する
  • 部署内で情報共有のための定例ミーティングを実施する など

【改善事例】(運輸業、社員数80人)

この会社では、長距離の運送業務が入ると、社員が休憩を取得しそびれることがあり、解決のため、休憩の取得が困難な場合に理由書の提出を求める仕組みを作りました。理由書の提出を義務付けることで、かえって社員の「休憩を取得しよう」という意識が高まり、逆に業務上どうしても休憩の取得が難しい社員を洗い出すことができるようになりました。

2)コントロール制限タイプ(裁量が低い、上司や同僚の支援が少ない)

上司の決裁を得てからでないと次の仕事に移れない、チームで動いていて個人で意思決定しにくいなどで、仕事のコントロールがしにくいタイプの職場です。上司や同僚も主張が強い場合、ますます仕事が進みにくくなり、ストレスがたまります。

【改善策】

  • 中間の管理層を少なくする
  • 部下に裁量を持たせ、細かい点は逐一指摘しない
  • 何か指示する際には、複数の選択肢を持たせ、部下に選んでもらう など

【改善事例】(消防設備業、社員数90人)

この会社では、多くの社員がチームメンバーと24時間共に過ごすストレスと、災害現場の過酷な状況で業務を行うストレスの両方を抱えており、解決のため、社内の相談窓口として総務課人事係を置きました。総務課人事係では、社員全員に対して定期的な面談を行うようにしており、メンタルヘルス不調のリスクがある社員などを早期に発見できるようになりました。

3)モチベーション低下タイプ(上司の支援が少ない)

業務量、裁量は問題ないものの、上司からのフィードバックなどがあまり受けられないため、承認欲求が満たされず、業務を続けていくモチベーションが低下しているタイプの職場です。

【改善策】

  • 昇進、昇格、資格取得の機会を明確にし、チャンスを公平に確保する
  • 上司を積極的に部下と関わらせる、話を傾聴する姿勢を身に付けさせる など

【改善事例】(金融業、社員数90人)

この会社では、社員の仕事に対するフィードバックが十分でなく、解決のため、新サービスや業務改善に関する「提案制度」を設けました。提案は記名式で、社内に設置されたポストに投函する仕組みです。提案された内容は月に1回、役員会で検討され、提案の内容が採用でも不採用でも必ず回答を付けて社内に公開し、現場の声が社内全体に届く環境を整えています。

5 まとめ

集団分析はツールを活用することで、簡単に実施することができます。しかも、その分析結果には、職場改善のための貴重なヒントが隠されています。職場改善は一朝一夕で達成されるものではありませんが、まずは「課題を明確にし、改善に着手する」ということが最初の一歩です。ストレスチェックと集団分析を活用し、社員がいきいきと働ける会社を目指しましょう。

以上(2023年5月)
(執筆 株式会社フェアワーク 吉田健一)

https://fairwork.jp/fair-lead/

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画像:琢也 栂-Adobe Stock

領収書をなくしたら精算できない? ~経費精算で知っておきたい基本情報

書いてあること

  • 主な読者:経費精算に慣れていない新入社員や若手社員
  • 課題:経費精算に必要な領収書を無くしたり、締め切りの後に領収書が見つかったりすると困ってしまう
  • 解決策:経費精算に領収書は必須だが、必要事項を記載し、かつ社内ルールに沿った手続きを踏めば経費精算できるなど、さまざまな取り扱いやルールを事前に知っておく

1 なぜ、経費精算はしないといけないのか?

経費精算は仕事で立て替えたお金を請求する行為ですが、この他にも、会社の利益を正しく計算するための手続きという側面があります。

会社の利益は、売上から費用を差し引いて計算します。つまり、経費精算によって費用を把握して利益を求めているのです。また、経費精算は期限内に行わないといけません。法人税の申告は、原則として、決算日から2カ月以内に行うので、それに間に合うように経費精算をする必要があるのです。

いかがでしょうか。経費精算の役割が理解できたと思います。経費精算という行為はシンプルですが、領収書を無くしてしまったり、締切後に未精算の請求書が見つかったりと判断に迷うこともあります。そこで、この記事でよくある請求書の迷いポイントと対応を紹介します。

大切なポイントは、

会社のルールを確認すること

です。効率性やシステム上の作業工程の違いなどから、会社独自のルールを定めていることも多くあります。

2 領収書を無くしたら請求できる?

領収書を無くしたら、まず領収書の発行先に再発行をお願いします。それに応じてくれない場合は、会社に確認をしてから、支払ったことが確認できる書類で代替します。例えば、

  • クレジットカードの利用明細書
  • IC乗車券の利用履歴
  • 振込の場合は通帳のコピー
  • などがあります。支払ったことが確認できる書類もない場合は、

    • 支払いをした日付
    • 支払いをした相手先
    • 支払った金額
    • 支払いの内容(支払いの目的や、購入した商品名など)
    • 請求書が添付できない理由

を書いた書類を作成して経費精算することができます。まずは領収書を失くさないことが重要で、万が一失くしてしまった場合は、会社のルールに沿って精算するようにしましょう。

3 締め切りが過ぎた未精算の領収書は請求できる?

経費精算の締め切り後に領収書が見つかったら、すぐに経理担当に報告しましょう。その後は、経理担当の指示に従って、精算手続きをします。ただし、

決算期をまたぐ精算は難しくなることが多い

です。また、どんなことがあっても、領収書の日付を修正するなどして、ごまかしてはいけません。税務調査(税務署などが会社の税金の申告内容をチェックしにくること)などでは、日付は金額同様、厳重にチェックされます。

4 電子データの請求書しか発行されない場合はどうする?

電子データの請求書しか発行されない場合の対応は、会社が領収書を電子化するための経費精算システムを導入しているか、していないかによって対応が違います。

1)経費精算システムを導入している場合

経費精算システムを導入している会社では、請求書を電子データで入手して、システムの手順に従ってクラウドなどにアップロードします。そのため、システムの使用方法についてしっかり理解するようにしましょう。

2)経費精算システムを導入していない場合(紙の経費精算書で精算する場合)

法律により、電子データによる請求書は、電子データの状態で保存することが原則です(システムなどの準備ができていない企業については、2024年1月1日以降義務化)。そのため、電子データを印刷した紙の請求書だけでは不十分です。

電子データによる請求書は、会社に提出して保存する方法や、従業員のパソコンで保存する方法などがあります。紙による経費精算書を提出したあとでも、電子データによる請求書は削除せず、会社のルールに沿って必ず保存するようにしましょう。

5 仕事の本を自分のスマホにダウンロードしたら請求できる?

経費精算できる「経費」とは、

事業に必要で、かつ会社の所有物となるものに限られる

ため、私的な目的で発生した経費は精算できません。

これを本のケースで考えると、経費精算の対象となるのは、会社が所有する業務用の電子書籍デバイスやアカウントで業務に関連する本を購入した場合に限られます。たとえ、仕事に必要な本であっても、自分のスマホなどにダウンロードしたら、原則として、経費精算の対象とはなりません。ただし、会社によって別のルールが定められている場合もあるので、確認してみましょう。

6 外出中に私用で寄り道をした交通費は請求できる?

外出先から自宅に直帰する場合、外出先から通常のルート(最短・最安のルートで検索されたものなど)で帰宅をした部分が精算の対象となります。私用で寄り道をして帰宅した場合には、寄り道分を含めて請求してはいけません。ただし、会社によって別のルールが定められている場合もあるので、確認してみましょう。

7 激混みの新幹線でグリーン車に乗ったら請求できる?

多くの会社は、役員や一定以上の役職者に限ってグリーン車に乗ることを認めています。それ以外の従業員がグリーン車に乗ったら、普通車料金しか精算できません。しかし、「普通席が満席でグリーン車しか空いていない」など特別な事情がある場合は、経費精算が認められる場合があるので、会社のルールを確認してみましょう。

8 インボイス制度が始まったら経費精算で何に注意する?

2023年10月1日にインボイス制度が始まった後は、法律で決まっている事項が請求書(インボイス)に記載されているかどうかを確認しましょう。再発行に手間がかかることから、請求書(インボイス)を受け取る従業員自身も、受取時に要件を満たしたインボイスかどうかをチェックするよう気をつけなければなりません。

インボイス制度の導入により、新たに記載が必要になる項目は、

  • 軽減税率の対象品目である旨
  • 税率ごとに区分して合計した対価の額
  • 税率ごとに区分して合計した消費税額等
  • 請求書発行者の登録番号

の4項目(下図表の赤字部分)です。

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また、請求書受領者の宛名欄には、「従業員の氏名」や「上様」といった表記ではなく、できる限り会社名で記載してもらうようにしてください。

その他に、少額であることや取引の特徴からインボイスの受領が必要ないケースがあります。一般的な経費精算として出てくる項目でインボイスが不要となるものには次のようなものがありますので、チェックしておきましょう。

●3万円未満の公共交通料金

 例:鉄道、バス、船舶に限る(航空機やタクシーはインボイスが必要)

●3万円以上の公共交通料金で乗車券が回収されてしまうもの

 例:特急料金込みだと3万円以上となるが、切符がJR等に回収されてしまうケース

●3万円未満の自動販売機および自動サービス機からの商品の購入等

 例:自動販売機でのジュースの購入、コインロッカーの使用等

以上(2023年5月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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画像:Andrey Popov
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徳川四天王の一人・榊原康政。国の最善を優先し行動し続けた彼の一言に学ぶ、不毛な争いを避ける経営とは?

大臣権を争ふは、国家の利にあらず

榊原康政は、幼少の頃から徳川家康に仕えた戦国武将で、江戸幕府260年の礎を築いた人物の一人です。数々の戦場で活躍し、「徳川四天王」にも数えられただけでなく、行政面でも手腕を発揮し、江戸幕府の老中として2代将軍徳川秀忠の補佐役にもなりました。

康政の生き方は、戦場で掲げる旗印に選んだ「無」の一文字が象徴しているといえます。康政は、徳川家や国のためであれば、自ら正しいと思ったことは、たとえ自分が犠牲になるかもしれないことであっても、躊躇(ちゅうちょ)せずに実行し続ける硬骨漢でした。

例えば、家康の長男である松平信康に対しては、粗暴な言動があるたびにこれをいさめました。あるとき、諫言(かんげん)に激怒した信康が康政を弓で射る構えを見せましたが、康政は「あなたのためなのです」と平然としており、信康のほうが折れざるを得なくなったそうです。また、三男の秀忠が関ヶ原の戦いに遅参した際は、怒りで秀忠に会おうとしない家康に対し、自らの監督責任を謝罪した上で、涙を流しながら秀忠に会うよう諫言しました。この行為は、徳川四天王の井伊直政からも、国家のためだけでなく、天下(世の中)のためにもなったと高く評価されました。

秀忠政権となり、幕府が安定したと考えた康政は、冒頭の言葉を語り、領地である群馬県・館林で隠棲(いんせい)したといいます。国家や天下の安定のためには、功臣であっても自らが退くことが最善だと考えた結果なのでしょう。

幹部が争って組織を機能不全にしてしまうことの危険は、会社組織にも当てはまることです。例えば、製造業が生産・販売計画のズレを補正する「製販調整会議」では、生産部門と販売部門の部門長などが、利害の不一致から激しく衝突することがあります。建設的な議論なら歓迎すべきですが、会社の成長を考えず、ただ自分の利のためにけんかするだけなら意味がありませんし、そのような幹部同士の争いが続く会社に明るい未来はやってこないでしょう。

幹部が不毛な争いをしないためには、まず経営者が康政のような硬骨漢を高く評価し、耳の痛い意見であっても、正しいと思えば受け入れることが大切です。康政のような人物がどう扱われるかは、他の幹部の行動指針にも影響するからです。

一方、幹部は、「自分にとって、何が一番大切なのか」をしっかりと認識することが大切です。社内で他の幹部と争うことが、本当に自分のためになるのか、考えてみましょう。同じ会社に属する人間は、運命共同体です。不毛な争いをして会社が傾くようなことになれば、自分や闘争相手はもちろん、取引先や顧客を含めた会社の関係者全員にとって不幸なことです。

一歩下がって、視野を広げてみれば、康政のような「無」の境地までには至らないまでも、私心を少し抑えられそうではありませんか?

出典:「定本名将言行録 下」(岡谷繁実、新人物往来社、1978年7月)

以上(2023年8月)

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【朝礼】人に頼れ、上司に頼れ

「人に頼る」と聞くと、自分が本来やるべきことをやらず、人に甘えているという印象を受けるかもしれません。しかし、人が自分ひとりだけの力でできることは限られています。もし、自分ひとりで問題を抱え込んでいる人がいたら、誰かに助けを求めてください。時には人に頼ることも必要です。

かつて、私は自分の力だけで物事を進めようとして、大きな失敗をしたことがあります。それは、私が初めて管理職になったときの話です。管理職ですから、部下の指導を任されることとなりました。しかし、部下の指導は初めてだったため自分自身が手探り状態で、しかも、手取り足取りで教えるため多くの時間を取られました。さらに、自分自身が担当する案件も多く、その一つ一つが複雑なものでした。こうして、いつの間にか、私の仕事量は増えていきました。

しかし、仕事量が増えたにもかかわらず、私は上司や同僚に頼ることができず、「ちょっと手伝ってもらえませんか」という一言がいえませんでした。そうしているうちに、仕事量は自分ひとりでは抱えきれないくらいまで増えていき、その結果、体調を崩してしまいました。

治療のために会社を休んでいる間は、顧客に迷惑をかけないように、上司、同僚、部下が私の代わりに対応してくれました。その後、病気が治って出社したとき、上司からは「なぜ会社のみんなを頼って、仕事を手伝ってもらうようにしなかったのだ」と注意されました。私が「自分の仕事は自分自身で処理しないと不安だった」と答えると、「自分ひとりで抱え込んで、周りに迷惑をかけるのは有能な人のやることではない。時には人に頼るのも大切なことだ」と言われました。

「自分は有能だ」と思っている人ほど、人に頼るのに抵抗があるものです。また、「仕事ができないと思われるのが嫌だ」とか、「人にやってもらうのは申し訳ない」など、見栄や遠慮の気持ちもあるはずです。

しかし、仕事によっては、何人かで行ったほうが効率が上がったり、よい成果が得られたりするものがあります。例えば、単純作業を延々と1人で行うのと、2人で行うのでは、作業時間は半分になるでしょう。また新商品の企画で斬新なアイデアが必要になるとき、自分ひとりで考えていても、煮詰まってうまくいかないものです。しかし、このようなとき、誰かと話し合ったり、アイデアを出し合ったりすると、よい着想が生まれることが少なくありません。

人に頼ることのメリットは、これだけではありません。同じ仕事にかかわる人が増えれば、自然とチェック機能が働き、失敗を防ぐことができます。

仕事で成長するためには、自分ひとりで難題を解決するだけではなく、時には人に頼ることも必要です。人に頼ることで、ほかの人たちの仕事の進め方も分かり、自分に足りない点も見えてくるでしょう。

ここで、皆さんにお願いがあります。誰かに頼るときは、できれば直属の上司に相談をしてもらいたいのです。上司は皆さんが考えている以上に部下のことを分かっています。上司は、部下から頼られるのも仕事の一つですから、皆さんにとって必ずよいアドバイスや具体的な解決方法を教えてくれます。

私は皆さんを心から頼りにしています。特に、多くの部下に頼られる上司の皆さん、部下の指導をよろしくお願いします。

以上(2023年5月)

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画像:Mariko Mitsuda

増大する雇用関連リスクと対応について

1 雇用関連リスクの増加

毎年4月は新たな新入社員を迎え入れる企業が多いかと思いますが、今回は雇用に際してのリスクについて解説させて頂きます。コロナ禍が終焉を迎える中、事業の発展に水を差している一つの理由に雇用の問題が挙げられます。実際に人手不足倒産は毎年増え続けており、東京商工リサーチによると、今年1-2月の「人手不足」関連倒産は合計21件(前年同期比162.5%増)で、前年同期の2.6倍に急増しています。内訳は、「求人難」が10件(同100.0%増)、「従業員退職」が6件(同100.0%増)で、この2要因で全体の76.1%と8割近くに達し、人件費高騰も5件(前年同期ゼロ)発生しています。優秀な人材の採用・確保・育成が企業の発展のカギになるのは明らかですが、そのためにも今後は柔軟な働き方を受け入れる必要があり、働き方改革への対応のみならず、コロナ禍で一般化したテレワークや副業、人権問題への配慮やジョブ型雇用への移行等の新たな雇用体制の確立などが求められます。そして、仮に人材の採用・確保ができたとしても、人材は企業にとって最も重要な経営資源である一方で、実は最大のリスク要因であることも忘れてはいけません。雇用関連リスクというと、多くの方が労働災害をイメージするかもしれませんが、実は雇用に関連するリスクは非常に幅広く、しかも雇用環境の変化の中で増大しつつあります。今回は採用に伴って生じる義務や人事労務管理に基づく3つの雇用関連リスクについて考えたいと思います。

2 採用に伴うリスクについて

先ず1つ目は、人を採用するという事自体が先行投資であり、そもそもリスクを抱える事だという事です。特に新卒採用の場合は実績もなく、能力も未知数な人材に対して賃金を約束して雇用する訳であり、働きが悪くても一旦雇い入れると簡単に解雇が出来ないため、継続的にお金を払い続ける必要があります。また、中小企業では賃金を決定する際に、賃金以外の必要な費用について正しく理解していないため、結果的に人件費の増大につながり、生産性を落とすケースも多いと考えられます。具体的には、労働社会保険の会社負担分(概ね賃金の15%)や残業が発生する場合は残業代、退職金や福利厚生制度がある場合はその積み立てや費用増加も考えられます。法改正によって、現状ではパート・アルバイトを採用する場合でも企業規模が100名超の場合は社会保険を適用する必要がありますし、年次有給休暇の5日間の取得が義務付けられましたが、100%の消化を前提にすると6か月間で8割以上の日数勤務した場合は10日の年次有給休暇が付与され、勤続年数が6.5年を超えると20日まで増えるため、ほぼ1カ月間が有給に充てられる計算になります。それらの費用や時間を含んで賃金額を決定しなければ、費用対効果が合わなくなります。そのため、採用時の人の見極めも非常に大切ですが、適切な賃金の設定も非常に重要となります。

3 雇用に伴う義務に関するリスク

また、人を採用すると、事業主は必然的に様々な義務を負うことになります。具体的には、人を雇うと労働基準法等の雇用に関する法令を順守すると共に、勤務時間等に応じて労働保険や社会保険、厚生年金保険への加入が求められます。仮に法令違反で社会保険等に入っていない場合、2年前まで遡って保険料の支払いを求められ、会社側に徴収義務があるため従業員負担分まで会社側が負担し、従業員から回収が出来ない可能性も考えられます。また、労働契約法には安全配慮義務が課せられており、安全配慮を怠ったことによって従業員が労災事故に遭った場合には安全配慮義務違反を問われて、巨額の賠償責任を負うケースが考えられます。更に、労働安全衛生法違反等があった場合は民事上の問題だけで終わらず、業務上過失致死傷罪として禁固刑となる可能性もあるので、注意が必要です。つまり、人を雇うことによって生じる様々な義務や責任を果たさなければ、大きな損失に繋がる可能性があるという事です。

4 人事労務管理に関するリスク(ハラスメント等)

しかし、優秀な人材を採用し、労務コンプライアンスを徹底し、安全配慮義務等を果たしていたとしても、企業としての理念やビジョンを共有し、必要な教育・研修を行い、成果に対して適切な評価が出来なければ、従業員は継続的に高いモチベーションを維持し、成長することでレベルの高い仕事を行い、生産性を高める事は出来ません。

逆に言うと、適切な人事労務管理が出来ていなければ、モラルやモチベーションが低下して品質や生産性が低下し、会社への不平不満が高まることで雇用トラブルの増加や定着率の低下等をもたらします。また、会社に対する批判や誹謗中傷、悪意を持った行動が行われるようになると、手抜きや不正、ハラスメントの横行に発展し、メンタルヘルス問題につながる可能性もあります。つまり、適切な人事労務管理を怠ると、品質や生産性の低下のみならず、不正やハラスメント等の様々な雇用トラブルを生み出し、会社に対する損害賠償や風評による売上減少等の様々なリスクの増大につながります。

5 雇用関連リスクへの対応について

様々な雇用関連リスクに対応するためには、先ずは自社の問題点をしっかり把握することが、人材を採用する上でも、雇用リスク対策を実施する上でも非常に重要です。その上で役に立つのが、全国社会保険労務士会連合会が行っている「社労士診断認証制度」です。この認証制度は3段階に分かれていますが、認証を受ける過程で自社の問題点が明確になり、認証取得を目指すことで労務コンプライアンスが徹底され、認証取得によって求職者や取引先への信用力の向上をもたらします。しかし、どれだけ対策を行っても雇用トラブルは発生するため、従業員から不当解雇やパワハラ、セクハラ等を理由に損害賠償請求されたときに備える雇用慣行賠償責任保険や、労働災害による損害賠償請求に備えた使用者賠償責任保険等に入っておくことも非常に重要です。

※人手不足倒産の増加

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20230307_03.html

東京商工リサーチ調べ

※社労士診断認証制度

・経営労務診断のひろば
https://www.sr-shindan.jp/

・説明動画
https://www.sr-shindan.jp/assets/img/top/shindan_movie_full_20200907.mp4

社労士診断認証制度

以上(2023年5月)

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画像:TarikVision-Adobe Stock


提供:ARICEホールディングスグループ( HP:https://www.ariceservice.co.jp/
ARICEホールディングス株式会社(グループ会社の管理・マーケティング・戦略立案等)
株式会社A.I.P(損保13社、生保15社、少額短期3社を扱う全国展開型乗合代理店)
株式会社日本リスク総研(リスクマネジメントコンサルティング、教育・研修等)
トラスト社会保険労務士法人(社会保険労務士業、人事労務リスクマネジメント等)
株式会社アリスヘルプライン(内部通報制度構築支援・ガバナンス態勢の構築支援等)

【財務分析】はじめての財務分析でも安心。基本的な流れを解説

書いてあること

  • 主な読者:はじめて財務分析をする社員、あるいは新人を教育したい担当者
  • 課題:財務分析をするといっても、具体的に何から始めるのか分からない
  • 解決策:収益性・安全性・生産性の順に分析。他社との比較、時系列での比較も忘れずに

1 財務分析は意思決定の手助けとなる

ビジネスは意思決定の連続です。定性的な分析や主観的な思いも必要ですが、そこに定量的な分析も加えれば、意思決定の精度が上がります。そのために必要なのが「財務分析」です。財務分析とは、

「上がっている、下がっている」「良くなっている、悪くなっている」など、会社に対する仮説を財務諸表の数値を使って検証する

ことです。自社を分析して問題点を発見することもありますし、他社を分析して今後の取引の参考にすることもあります。「財務分析といっても、何から始めたらよいか分からない」という人も安心してください。基本的には、

収益性・安全性・生産性の順に分析

となるので、この記事でポイントを紹介します。

また、具体的な分析指標や計算式を確認したい人は、こちらのコンテンツをご覧ください。

2 収益性分析:十分な収益を獲得しているか

収益性分析では、最初に総合的な指標である「総資本経常利益率」を確認します。次に利益率と回転率に分解して、それぞれの指標を確認します。

利益率では、売上高総利益率・売上高営業利益率・売上高経常利益率を比較します。その際、例えば売上高営業利益率が低いことが分かれば、給料などの販売費及び一般管理費が膨らんでいないかを確認します。また、売上高経常利益率が低いことが分かれば、支払利息など営業外費用が膨らんでいないかを確認します。

回転率では、まずは総資本回転率を確認します。次に、売上債権回転率・棚卸資産回転率・有形固定資産回転率などで資産の効率性を確認します。例えば、棚卸資産回転率が低いことが分かれば、商品が販売されずに自社が過剰在庫を抱えていないかを確認します。

3 安全性分析:安全に経営を継続していけるか

安全性分析では、最初に流動比率・当座比率を比較します。流動比率・当座比率は1年以内の短期安全性を見る指標です。流動比率が高いにもかかわらず当座比率が低い場合、在庫などの棚卸資産が過剰となっている恐れがあるので確認してみます。また、手元流動性比率を見ることで、より現状に即した短期安全性が確認できます。

次に、固定比率・固定長期適合率を比較してみます。固定比率・固定長期適合率は、1年超の長期安全性を見る指標です。また、自己資本比率か負債比率を見て、負債に依存していないかを確認してみます。

4 生産性分析:効率良く生産できているか

生産性分析では、労働生産性・設備生産性・労働分配率の各指標から、それぞれの経営資源を効率的に利用できているか確認します。生産性とは、経営資源(インプット)に対する付加価値(アウトプット)の比率です。

付加価値を算出する方法はさまざまなものがありますが、中小企業庁方式が代表的です。この方式では、付加価値は売上高から商品仕入れ・原材料仕入れ・外注加工費などの外部購入費用を差し引いて算出します。

5 他社との比較、時系列での比較が大事

財務分析では、自社と他社とを比較してみることも大事です。自社の収益が10%伸びていることだけに注目すれば、自社の収益は好調といえますが、もし、同時期に他社が30%伸びているとしたら、自社の生産性は低いという仮説が立てられます。その仮説を検証するために、日本政策金融公庫「小企業の経営指標」や帝国データバンク、東京商工リサーチの企業調査などを活用してみましょう。

また、単年ではなく最低でも3年程度は時系列で確認しましょう。その結果、例えば、直近1~2年の間に指標が悪化していることが分かれば、最近変更した経営方法に問題がある恐れがあります。また、以前から指標が悪い状態にあることが分かれば、経営方法に問題があったことになります。

以上(2023年5月)
(監修 税理士 谷澤佳彦)

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画像:pixabay

【取締役】 取締役を選任・離任する際のルール

書いてあること

  • 主な読者:取締役や監査役の選任・離任などの予定がある経営者
  • 課題:取締役や監査役の選任・離任などの手続きは複雑でよく分からない
  • 解決策:基本は株主総会や取締役会の決議によって決まる

1 中小企業でも経営陣の見直しが進む?

中小企業で取締役や監査役が変更されるケースは少なく、

  • 事業承継に向けた世代交代
  • コロナ禍で勝ち残るための体制整備

などに限られます。ただ、会社の経営陣の交代は重要なできごとであり、抜け漏れなく手続きを行いたいものです。

この記事で想定するのは、中小企業に多く見られる「非公開会社」で、機関設計は「取締役会・監査役設置会社」です。非公開会社とは、

全ての株式の譲渡について、会社の承認が必要となる旨を定款に定めている会社

のことです。

2 取締役の選任

1)取締役の選任

取締役は、株主総会の普通決議で選任されます。普通決議とは、

議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席(定足数)し、出席した株主の議決権の過半数の賛成(決議要件)による決議

です。定足数については、定款に定めることで議決権の1/3以上の割合に変更することができます。決議要件については定款に定めることで過半数を超える割合に変更することができます。

決議の後、

会社が「取締役委任契約」を申込み、選任された者が承諾すれば正式に取締役に就任

となります。

2)取締役の任期

取締役の任期は2年です。より正確には、

選任後2年以内に終了する事業年度のうち、最終のものに関する株主総会の終結のときまで

となります。ただし、定款に定めれば10年まで伸長できます。また、定款または株主総会の普通決議によって短縮することもできます。

3)取締役の登記

取締役が就任を承諾した日から2週間以内に登記する必要があります。登記申請書の書き方や添付する本人確認証明書などは法務省のウェブサイトで確認できます。再任の場合も改めて登記が必要となります。

■法務省「商業・法人登記の申請書様式」■
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html

4)取締役の欠格事由

会社法上の欠格事由は次の通りです。

  • 法人
  • 会社法、一般社団法人法、および会社法331条1項3号が定める金融商品取引法等の各種法令に定める罪を犯し、刑に処せられ、刑の執行を終え、または、刑の執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
  • 2.に挙げた法律以外の法令に違反し、禁固以上の刑(禁固、懲役、死刑)に処せられ、その執行を終わるまで、または、その執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者は除く)

欠格事由に該当する場合、株主総会の選任決議は無効となります。また、在任中に欠格事由が生じたときは、直ちに取締役の地位を失います。

5)取締役の資格の加重

定款で定めれば、取締役の資格を加重できます。例えば、次のように取締役が株主でなければならない旨を定めることができます。

第●条(取締役の資格)
取締役は、当会社の株主の中から選任する。ただし、必要があるときは、株主以外の者から選任することを妨げない。

資格の加重は、各社の具体的事情に応じ、不合理なものでない限り認められると考えられています。なお、公開会社の場合は取締役が株主でなければならない旨を定款で定めることはできません。

6)取締役の選任権限の特定

「種類株式」を発行している場合、特定の株主だけが取締役の選任決議に出席できるようにすることができます。種類株式とは、権利の内容が異なる2種類の株式のことです。具体的には、

「取締役選任権付種類株式」を種類発行している場合、取締役は、その種類株式を保有する種類株主が出席する種類株主総会の普通決議で選任

されます。つまり、一定の株主だけが取締役の選任に関わることができるということです。

3 取締役の離任

1)会社に承諾のない辞任

会社と取締役とは委任の関係にあり、

取締役は、いつでも委任契約を解除し、辞任する

ことができます。辞任について会社の承諾は不要で、意思表示が会社に到達したときに効力が発生します。

会社としては、承諾していない辞任を防ぎたいので、

他の取締役の合意や事前告知(6カ月前までの意思表示など)など、辞任を制限する旨の合意をさせる

ことがあります。とはいえ、こうした合意の効力については考えが分かれます。実際、「取締役を辞任するには取締役で構成される会の承認が必要」という特約を無効とした事例もあります。

なお、やむを得ない事由がある場合を除き、会社に不利な時期に辞任した取締役は、会社に対して損害賠償義務を負います。

2)取締役の解任

会社は、株主総会の普通決議で、いつでも取締役を解任できます。また、決議要件については、定款に定めて加重できます。例えば次のようにです。

第●条(取締役の解任)
取締役の解任決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、その議決権の3分の2以上をもって行う。

1.解任の訴え

取締役が職務執行に関して、不正行為または法令や定款に違反する重大な事実があるのに、株主総会で取締役解任議案が否決されてしまった場合、解任の訴えができます。具体的には、

総株主の議決権の100分の3以上を6カ月前から引き続き有する株主、または発行済み株式の総数の100分の3以上を6カ月前から引き続き有する株主が、株主総会の日より30日以内に、問題のある取締役の解任を裁判所に請求

します。裁判所が取締役の問題を認定すれば、解任の判決を言い渡します。

2.職務執行停止・職務代行者選任の仮処分

解任の訴えに対する裁判所の判決を待っていては、会社に重大な損害が生ずる恐れがある場合、職務執行停止・職務代行者選任の仮処分ができます。これは、現に会社の経営等に携わっている取締役につき、その職務執行を停止して、職務代行者を選任する仮の処分を申し立てることです。

3)取締役を解任した場合のリスク

正当な理由なく解任された取締役は、会社に損害賠償請求ができます。ここでいう「正当な理由」とは、職務遂行上の法令・定款違反行為、心身の故障、職務の著しい不適任といったものです。

また、取締役が会社に請求する損害賠償の「損害」とは、取締役を解任されなければ任期期間中に得られた利益の額です。分かりやすくいうと、任期満了日までの報酬相当額や役員退職金です。

4)補欠取締役で取締役の欠員に備える

取締役に欠員が生じた場合、会社は新しい取締役を選任しなければなりません。これをしないと、会社の現在の取締役は100万円以下の過料に処せられることがあります。

こうした事態に備える方法に、補欠取締役の選任があります。補欠取締役の選任決議の有効期間は、定款に別段の定めがある場合を除き、その決議の後に最初に開催する株主総会の開始までです。

また、民法の委任終了事由(取締役の死亡、破産手続開始決定、成年後見開始の審判)の発生、欠格事由の発生または解任により欠員が生じた場合、裁判所は、利害関係人の請求により、一時取締役の職務を行う者(「一時取締役」)を選任することができます。任期満了または辞任により退任した取締役に権利義務を認めるのが不適切な場合も同様です。

5)会社や取締役が破産した場合の地位

会社が破産しても取締役の地位は継続します。

一方、取締役が破産した場合、いったん辞任したと解されます。破産手続開始決定は、民法上の委任終了事由に該当するためです。ただし、すぐに株主総会の普通決議で同じ人を取締役として選任することができます。

4 代表取締役の選任・離任

1)代表取締役の選任

代表取締役の選任手続きは、取締役会の設置の有無によって異なります。取締役会設置会社の場合、

取締役会の決議によって1名以上の代表取締役を選定

しなければなりません。この場合、取締役が自らを代表取締役に推すことはできますが、これは問題ないとされています。業務執行決定への参加なので、特別利害関係には当たらないとされているからです。

なお、取締役会非設置会社の場合、別途、代表取締役を定める必要はありません。これは、各取締役が会社を代表するためです。ただ、任意に代表取締役を定めることは可能で、定款の定めに基づく取締役の互選か株主総会の普通決議等で決めることが一般的です。

2)代表取締役の離任

代表取締役の離任には、解任と解職があります。

  • 解任:代表権と取締役の地位を失わせること。会社との委任関係は終了する
  • 解職:代表権のみを失わせ、平取締役とすること。引き続き取締役の権限はある

解任の手続きは、前述した取締役の場合と同じです。

一方、解職の手続きは取締役会が設置されているか否かによって異なります。取締役会設置会社では、取締役会の決議によって解職します。この取締役会では、解職請求されている代表取締役は特別利害関係を有する取締役に該当するので、議長になったり、議決に加わったりすることはできないとされています。前述した選定の場合とは違う考え方です。

なお、取締役会非設置会社は、選任の際と同じ方法によって解職します。

3)代表取締役に欠員が生じた場合

代表取締役に欠員が生じた場合、任期満了または辞任により退任した代表取締役は、新たに選定された代表取締役が就任するまで代表取締役としての権利義務を有します。

また、死亡などにより代表取締役に欠員が生じ、新たに代表取締役を選任する間に仮の代表取締役を置く場合など、裁判所は必要があると認めるときは、利害関係人の申し立てにより、一時代表取締役を選任することができます。

5 監査役の選任・離任

1)監査役の選任

監査役とは、

取締役および会計参与の職務執行を監査する機関

であり、株主総会の普通決議で選任されます。

監査役がいる場合、取締役が株主総会に監査役選任議案を提出するには、監査役の同意が必要です。これは、監査役の地位を強化して、監査の公正を確保する趣旨です。監査役には株主総会における意見陳述権も認められています。

非公開会社は、監査役を株主に限定する旨を定款で定めることができます。監査役の欠格事由は取締役の欠格事由と同じです。注意が必要なのは、

監査役は、その会社や子会社の取締役・支配人その他の使用人、または、その子会社の会計参与・執行役を兼任できない

ことです。

2)監査役の任期

監査役の任期は4年です。より正確には、

選任後4年以内に終了する事業年度のうち、最終のものに関する株主総会の終結の時まで

となります。ただし、定款に定めれば10年まで伸長できます。

なお、監査役を置く旨の定款の定めを廃止するなどといった特定の定款変更がされると、その効力が発生した時点で監査役の任期が満了します。

3)監査役の離任

監査役の離任は取締役と同じですが、解任は株主総会の特別決議によります。特別決議とは、

議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席(定足数)し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成(決議要件)による決議

です。

なお、監査役が正当な理由なく解任された場合の損害賠償請求は、取締役とおおむね同じです。また、監査役はいつでも辞任できますが、後任が決まらないまま欠員が生じた場合、辞任した監査役は、後任者が就任するまで監査役の権利を有し、義務を負います。

以上(2023年4月)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 小出雄輝)

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