【事業承継】後継者に読んでほしい。自信を持って理想を追求しよう

1 先代からの授かり物ではなく、未来からの預かり物

後継者は望むと望まざるとに関係なく、先代が築いたさまざまな経営の資産を引き継ぎます。収益や負債、それ以外にも会社の雰囲気のような無形のものまで引き継ぎます。先代が抜群のカリスマ性で組織を率いていたら、後継者は自分にもカリスマ性があるか悩みますし、周囲も先代と後継者を比較します。

そのようなとき、後継者の選択は、

  • 先代のまねをする
  • 自分を出す
  • 最初だけ先代のまねをする

といったものです。例えば、「自分を出す」であれば、

「私は先代のようなカリスマ性はありませんので、全員で知恵を出し合いながら経営をしたいと思います。どうか力を貸してください」

などと宣言します。後継者は後継者であり、自由なのです。

ただし、一つだけ決して忘れてはならないことがあります。それは、

その経営の資産は、先代からの授かり物ではなく、未来からの預かり物である

ことです。先代が残してくれたものは、会社をさらに発展させて未来にバトンをつなぐために使うものなのです。

2 とはいえ、さまざまなプレッシャーが……

1)失敗をしてはいけない?

「自分は自分」と思っていても、会社が積み重ねてきた歴史はやはり重たいものです。老舗のブランド、積み上げてきた利益など、後継者はそれらを守らなければならないというプレッシャーを感じるでしょう。

厳しいようですが、これは後継者の宿命として受け入れるしかありません。また、新しいことにチャレンジしなければ老舗であっても潰れる時代ですから、「ブランドを守りつつ、新しいことにチャレンジする」という難しいかじ取りも求められます。これを実行した結果、一時、収益は落ち込むかもしれませんが、将来の飛躍のための通過点と割り切るくらいのハートの強さを持ってください。

2)この雰囲気を壊してはいけない?

特に中小企業の場合、社長の意向やキャラクターによって会社の雰囲気が決まります。今、先代の雰囲気で会社がうまく回っているとしたら、後継者はそれを壊したくないとプレッシャーを感じるでしょう。事業承継をきっかけに辞める社員が出ているようなら、なおさらです。

しかし、これは一過性のものなので安心してください。後継者は意識しなくても、後継者がそこにいるだけで、自然に後継者の雰囲気が会社になじんでいきます。また、ほんの一部の社員を除けば、社員は後継者が考えているほど過去の雰囲気に固執していませんし、深く考えてもいません。

3)取引を守らなければいけない?

当然ながら、これまでの取引を守らなければならないというプレッシャーを感じるでしょう。しかし、残念なことに、自社との取引を見直したいと考えていた先は、事業承継をきっかけに取引解消や値下げを申し出てくるかもしれません。いきなりタフな交渉となりますが、結果はどうあれ、やられっ放しは駄目なので、つらくても踏ん張って自身の存在感を示してください。

見方によっては、事業承継をしてすぐにタフな交渉に臨むことで、経営者としての胆力も鍛えられるでしょう。それに、事業承継を利用したいのはこちらも同じです。例えば、

先代の時代は人が手作業でやっていたことを、生成AIで代行できないか検討してもらう

など、取引慣習を見直す絶好のチャンスです。

いずれにしても、最初のうちは取引先と交渉する内容について先代に相談するようにしましょう。どういった経緯で現在の取引になっているのかが分かれば交渉を有利に進められます。

3 後継者が自分のために取り組んだほうがよいこと

1)メンターや仲間を持つ

困ったことがあったときに限らず、定期的に話を聞いてくれるメンターを持ちたいものです。全く別の視点からのアドバイスは、後継者にとって厳しくもあり、優しくもあります。メンターはさまざまな出会いの中で見つけます。「この人だ!」という人がいたらメンターになってほしいとお願いすればよいですし、経営者仲間から紹介してもらうこともできるでしょう。

また、よくいわれることですが、経営者は孤独です。それは、経営者の気持ちは経営者しか分からないところがあるからです。そこで、ぜひとも、利害関係のない経営者仲間を持ちたいものです。後継者教育の一環として大学院に通ったのなら、その同窓生は仲間になりやすいです。異業種交流会に参加して、気の合う経営者と仲良くなることもできます。相手も経営者仲間を探しているので、ハードルは高くないです。

2)サボらず勉強する

経営者は多忙ですが、勉強しない人はいません。「本を読む」「人から話を聞く」など、どのような方法でもよいので、ぜひ、最新で多様な情報に触れる機会を必ず持ってください。これを怠ると、本当にあっという間に時代に取り残され、周囲の話についていけなくなります。

なお、勉強するというと専門家のような知識を身に付けることを考えるかもしれませんが、そこまでの必要はありません。肝となる部分さえ押さえておけば大丈夫です。ただし、念のためにお伝えしますと、

本業については他を寄せ付けないほどの専門家

でなければなりません。

以上(2025年8月更新)

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画像:Mariko Mitsuda

【賃金データ集】 賃金体系・形態管理と支給額の検討

【賃金データ集】シリーズとは?

【賃金データ集】シリーズは、基本給や諸手当など賃金の主要な構成要素ごとの近年のトレンドを、モデル支給額を中心とした関連データとともに紹介します。経営者や実務家の方々が賃金支給水準の決定や改定を行う際の参考としてご活用ください。なお、モデル支給額などのデータを紹介する際は、基本的に出所に記載されている用語を使用するものとします。また、データは公表後に修正されることがあります。

この記事で取り上げるのは「賃金体系・形態管理と支給額の検討」です。

なお、以降で紹介する図表データのExcelファイルは、全てこちらからダウンロードできます。

こちらからダウンロード

1 所定内給与額の推移と賃金マネジメントの重要性

 2024年の男性の所定内給与額は36万3100円です。一方、2024年の女性の所定内給与額は27万5300円で、男性の所定内給与の75.8%の水準です。同じ計算をすると、1980年の女性の所定内給与は男性の58.9%の水準だったので、約40年間で16.9ポイント上昇したことが分かります。

所定内給与額の推移

2 賃金体系の管理

1)賃金体系の一例

賃金をマネジメントする上で、最初に知っておきたいのが「賃金体系」です。賃金体系とは、賃金の要素である基本給や諸手当の組み合わせのことです。賃金体系を理解することで賃金の全体像が把握できるようになります。

賃金体系の一例

2)基準内賃金

現金給与の「毎月きまって支給する給与」の中心は「基準内賃金」で、概要は次の通りです。

通常の労働に対して支払われる基本給や諸手当のことで、基準外賃金の算定基礎になるもの

なお、諸手当のうち、家族手当、住宅手当、通勤手当などは基準外賃金の計算の基礎から除外できるため、基準内賃金に含めないケースがあります。

また、基準内賃金と似た言葉に「所定内給与(賃金)」があります。基準内賃金と所定内給与はほぼ同義ですが、所定内給与は企業が就業規則などに定めた所定労働時間の労働に対する賃金で、家族手当、住宅手当、通勤手当などが含まれます。

1.属人給、仕事給、総合(決定)給

基準内賃金の中心は「基本給」です。基本給は次のように大別されますが、一般的なのは属人給と仕事給です。

  • 属人給:年齢など労働者の属人的な要素によって決定される賃金
  • 仕事給:業績・成果や保有能力など仕事に関係する要素によって決定される賃金
  • 総合(決定)給:勤続年数と担当職務を評価する賃金

基本給の要素を属人給と仕事給に振り分けることが難しい場合、「本給」などの名目で設定されるのが典型ですが、運用しやすい一方、評価基準が曖昧になりがちという問題があります。

基本給の区分

2.基本給の体系

基本給の体系は、属人給や仕事給などをどのように組み合わせるかによって次のように大別されます。

  • 単一型体系:1つの基本給の要素によって構築された体系
  • 併存型体系:複数の基本給の要素によって構築された体系

単一型体系の場合、「研究職は100%職務給」「営業職は100%成果給」といった運用ができますが、配置転換で職務が変更された場合、労働者がケガなどをした場合などに問題が生じるため、これを導入する企業と対象となる労働者は限られます。このような事情から、多くの企業は併存型体系を導入しており、属人給と仕事給の割合を調整することで賃金制度をマネジメントしています。

3)基準外賃金

現金給与の「毎月きまって支給する給与」のもう1つの要素が「基準外賃金」で、概要は次の通りです。

通常の労働以外に対して支払われる賃金で、時間外労働手当(いわゆる「残業手当」)など

基準外賃金は、通常よりも割り増しした金額を支払わなければならず、その割増率は労働基準法で定められています。いわゆる「残業」が慢性化している企業では、基準外賃金が大きな負担になります。特に、2023年4月1日からは、中小企業に対する割増賃金率の猶予措置が廃止され、従業員の残業(時間外労働)が1カ月で60時間を超える場合、その時間については50%以上の割増賃金の支払いが必要になったため、注意が必要です。

また、基準外賃金と似た言葉に「所定外給与(賃金)」がありますが、これは基準外賃金と同じ意味です。

3 賃金形態の管理

1)賃金形態の種類と賃金支払いの5原則

賃金は労働の単位(時間や出来高)に応じて支払うという考え方があり、それを類型化したものが「賃金形態」です。具体的には、次のようなパターンがあります。

  • 時間給、日給、月給など時間によって計算されるパターン
  • 出来高給のように販売個数などによって計算されるパターン

賃金形態を管理することで、雇用形態(正社員やパートなど)、職務の難易度、成果を上げるまでの期間などに応じて賃金をマネジメントしやすくなります。

注意が必要なのは、労働基準法の「賃金支払いの5原則」です。賃金支払いの5原則は次の通りで、一部、例外があるものの、順守しなければなりません。そのため、年俸制を導入した場合でも、年俸を12等分して毎月支払うことになります(賞与を支払う場合はさらに細かく分けて賞与相当分を確保します)。

  1. 通貨払いの原則
  2. 直接払いの原則
  3. 全額払いの原則
  4. 毎月1回以上払いの原則
  5. 一定期日払いの原則

2)賃金形態の状況

厚生労働省「平成26年就労条件総合調査」によると、主な賃金形態で最も割合が高いのは「月給」の80.9%です。

賃金形態の状況

4 賃金支給額を決定する際の視点とこれまでの変遷

1)賃金支給額を決定する際の視点

労働者が労働力を提供し、企業がその対償として賃金を支払うことは労働契約の基本です。賃金支給額はこの点を前提としつつ、次の視点を考慮して決定されます。

1.企業の賃金支給能力(コスト)

労働者の労働力を購入するという「人件費」の視点です。他のコストと賃金(人件費)を全く同様に捉えることはできませんが、賃金が販売費・一般管理費(製造業などでは売上原価)の多くを占めているのは事実であり、これを適正水準に保つ必要があります。

2.労働力の市場価値

賃金には、労働力の需給状況に応じて変化する市場性があります。具体的には、労働者数全体、特定の業界の就業者、特定の技能の習得者などが変化の要因になります。現在のような「売り手市場」だと、一般的に賃金は上昇します。

3.他社の支給額

賃金は企業規模、業種、地域によって支給水準が異なります。この水準を下回ると労働者の不満足につながり、他社に転職してしまうこともあります。企業は、モデル賃金に関する情報を収集し、自社との違いを確認しておく必要があります。

4.雇用を巡るトレンド

景気動向、雇用環境、人事制度の変化などによって賃金のトレンドが生じます。分かりやすいのは、人手不足への対策として賃上げを検討するケースです。

5.労働者の生活保障

賃金は労働者にとって「生活の糧」であり、労働者の年齢、家族構成、居住地域などを考慮する必要があります。

6.労働者の貢献度

企業への貢献度は、労働者の職務遂行能力、担当職務の難易度、具体的に達成した成果(売り上げや研究成果など)などによって変わるため、これを加味して賃金を決定します。

7.利益分配

企業業績に連動し、利益分配の意味合いで支給する賃金です。毎月きまって支給される「業績給」と、臨時的に支払われる「賞与・期末一時金」の場合があります。

2)日本企業における賃金制度の変遷とこれからの動き

賃金支給額は前述した視点を考慮した上で決定され、それを実現するための仕組みが賃金制度として構築されます。これまでの日本企業の賃金制度は、その時々の状況に応じて年功主義から能力主義・成果主義へと変化してきました。主な流れを、基本給の構成要素の変化を中心に確認してみましょう。

1.年功主義(年齢給、勤続給)

戦後の日本の賃金体系に大きな影響を与えたのが、1946年に電力関係企業の労働組合が提案した、いわゆる「電産型賃金体系」です。これには、労働者の年齢、家族構成、勤続年数などに重きを置いた、生活防衛的・安定的な賃金制度であるといった特徴があり、基本給の中心は「年齢給」「勤続給」でした。

電産型賃金体系には、「職能給」などといった能力給も組み込まれてはいるものの、その割合はそれほど高くありませんでした。

2.能力主義(職能給、職務給)

家族構成や勤続年数などによって賃金の大部分が決定される電産型賃金体系への不満が高まり、1950年代後半から1980年代にかけて、基本給に「職能給」「職務給」が取り入れられるようになりました。

中でも職能給は、いわゆる「職能資格制度」として多くの日本企業に定着しました。しかし、職能資格制度が年功的に運用されるようになり、能力主義がほぼ有名無実化し、問題となりました。

3.成果主義(成果給、業績給)

1990年代に入ると、脱年功主義がより鮮明なものとなり、成果主義が注目されるようになりました。ここで基本給の要素として注目されたのが、「成果給」「業績給」です。

成果主義では、従業員が個人(あるいはチーム)で目標を達成するために取ったプロセスとその結果を評価するのが基本です。しかし、1990年代当時は、結果を必要以上に重視する企業が多く、「過酷な目標設定による従業員のストレス過多」「自分の成績につながらない仕事を嫌う従業員の発生」「確実に達成できそうな低い目標を掲げる従業員の発生」などの問題が生じ、多くの企業で成果主義の導入は失敗に終わりました。

もっとも、近年は業務管理ツールの発達に伴い、評価の中心を結果に置きつつ、プロセスについてもある程度評価する、バランスの取れた成果主義を導入している企業もあります。

5 賃金支給額を決定する際の考え方

賃金支給額を検討する際は「適正人件費」に注目します。適正人件費の算出方式はいくつかありますが、例えば、「売上高×付加価値率×労働分配率」によって求めます。付加価値は売上高から原価(製造業は材料費や外注加工費、小売業は売上原価)を差し引いたもので(業種によって異なります)、その割合が付加価値率です。また、労働分配率とは、付加価値に占める人件費の割合です。自社の過去3年分のデータと将来の利益目標を参考に付加価値率などを設定すれば、適正人件費の目安を把握することができます。

付加価値率

また、世間相場を確認するためには、自社の「適正人件費」だけではなく、他社の賃金支給状況も確認します。世間相場と大きな違いがある場合は、必要に応じて見直しを検討します。

1)売上高労務費比率、売上高人件費比率

中小企業庁「令和5年中小企業実態基本調査(令和4年度決算実績)」によると、合計の売上高労務費比率は6.43%、売上高人件費比率は9.67%です。

合計の売上高労務費比率

売上高人件費比率

2)賃金支給額

厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、企業規模計、産業計の「きまって支給する現金給与額」は35万9600円で、そのうちの33万400円が所定内給与額です。差額の2万9200円は時間外労働手当などです。また、「年間賞与その他特別給与額」は95万4700円です。

賃金支給額<

6 情報インデックス(この記事で紹介したデータの出所)

この記事で紹介した統計資料は以下の通りです。調査内容は個別のURLからご確認ください。なお、内容はここ数年の公表実績に基づくものであり、調査年(度)によって異なることがあります。

■賃金構造基本統計調査■
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html

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■就労条件総合調査■
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/11-23.html

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■企業活動基本調査■
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kikatu/

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■中小企業実態基本調査■
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/chousa/kihon/

画像12

以上(2025年8月更新)

pj17901
画像:ChatGPT

企業の未来図「中期経営計画」を立ててみよう

1 中期経営計画とは何か

中期経営計画とは、企業が3~5年後にどのような姿になっていたいのかを描き、その実現に向けて現状を整理し、必要な施策を決める計画です。変化が激しい時代には、企業の進むべき方向を社内外に共有し、目線を合わせる役割があります。

中期経営計画で示される3~5年の活動は、単年度の事業計画にも落とし込まれます。年度ごとの売上目標・製品販売個数などに反映することで、「将来あるべき姿」の達成に向け、具体的にどのような行動を起こせばいいかが定まってきます。

企業によりますが、中期経営計画は、基本的には以下の図のような手順で策定します。

中期経営計画の策定手順

この記事では、中期事業計画の事前準備から策定、運用に至るまでの一般的な流れと、そのポイントをご紹介します。

2 フレームワークを活用して、現状分析をしてみよう

1)現状分析で活用できるフレームワークとは

中期経営計画を策定するには、まず自社の現状を確認し分析することが必要です。ここでは

  • 外部環境を分析する「PEST分析」
  • 顧客(市場)・競合・自社の現状を洗い出す「3C分析」

の2つのフレームワークを紹介します。自社を取り巻く環境について確認することが、中期経営計画策定に向けた第一歩です。

他にも外部環境・内部環境の分析に使えるフレームワークとして、自社の強み・弱みを確認する「SWOT分析」、業界の競争環境を分析する「ファイブフォース分析」などがあります。

2)PEST分析

PEST分析は、自社を取り巻く外部環境のうち、政治や経済といった世の中の大きな流れを整理し、確認するフレームワークです。「PEST」(ペスト)は、分析する4つの項目の頭文字を表しています。

  • 政治(Politics):政府の方針、法改正などの動向
  • 経済(Economy):景気、価格変動などの動向
  • 社会(Society):社会的な背景、世論などの動向
  • 技術(Technology):技術革新、代替技術などの動向

項目ごとに現状を洗い出し、それが自社にとってプラス(↑)なのかマイナス(↓)なのかをまとめます。分析を重ねていけば、単に現状を理解するだけでなく、これからの時代の変化を予測するのにも役立ちます。

PEST分析

3)3C分析

3C分析は、顧客(市場)・競合・自社の現状を洗い出すフレームワークです。顧客(市場)のニーズや、競合に対する自社の優位性といった現状を把握するための基本となるものです。それぞれ確認する主な指標や項目などは次の通りです。

  • 顧客(市場)(Customer):市場規模、成長性、購買動向、ニーズの変化など
  • 競合(Competitor):販売実績、販売価格、新製品開発、営業戦略など
  • 自社(Company):市場シェア、技術力、営業力、収益性、安全性、生産性など

3C分析では、市場規模・販売実績・市場シェアなどの定量面と、顧客(市場)のニーズの変化・競合の営業戦略といった定性面の両方を洗い出します。特に難しいのは定性面ですが、現場の営業担当者が持っている情報や、顧客アンケートなどを活用すると理解が深まります。

3C分析

PEST分析や3C分析などを活用して現状を把握する際は、財務省「貿易統計」、内閣府「景気動向指数」、総務省「国勢調査」などの公的データに加え、新聞、インターネット、関係各所へのヒアリングなどが必要です。

3 戦略策定の要は「事業ドメイン」

1)事業ドメインを検討する

現状分析で自社の立ち位置を把握したら、自社が勝負する事業領域である「事業ドメイン」を決めます。創業時などを除けば、既に事業ドメインは決まっていることが多いでしょう。そのため中期経営計画を策定する際には、現状分析に基づいて、「事業ドメインを見直すかどうか」を検討します。

事業ドメインの決定や見直しは、企業が今後成長していくための“要”です。何もかも経営者1人で決めず、日々現場でビジネスを進めている社員の、自社に対する意見をよく聞くことも大切です。

2)アンゾフの成長マトリクスで戦略を策定

今後の成長戦略を考える際には、「アンゾフの成長マトリクス」が有効です。市場(既存・新規)と製品(既存・新規)の組み合わせによって、次の4つの戦略が考えられます。

アンゾフの成長マトリクス

「既存市場×既存製品=市場浸透」は、これまでの自社のノウハウを活かしやすいこともあり、成功率が高い戦略といわれています。具体策としては、新しい提案方法で使用量を増やすなどが考えられるでしょう。

「新規市場×既存製品=新市場開拓」は、例えばターゲットの拡大です。既存製品を使って他の顧客(市場)を開拓するので、既存製品に対するニーズがありそうな顧客(市場)を見極める力や、営業力の強化が必要になるでしょう。

「既存市場×新規製品=新製品開発」は、既存顧客の潜在ニーズの掘り起こしが求められるでしょう。

「新規市場×新規製品=多角化」では、思い切った新規事業開発が必要になるかもしれません。

こうして全体的な方向性が決定した後は、それを実現するためのマーケティング戦略や人材戦略などを個別に決めていくことになります。個別の戦略策定では、どこに経営資源を集中させるかという点を重視するとよいでしょう。

4 計画立案は「課題」と「数値」がポイント

1)盛り込むべき内容

戦略策定の後、いよいよ具体的な計画を立案します。まずは、ビジョンの実現に向けて解決すべき課題を、時間軸とともに盛り込んでいくのが分かりやすいでしょう。次のような項目などで資料に落とし込むイメージです。

盛り込むべき内容

具体的な計画立案では、活動計画に落とし込んでいくのが大変です。そこで、「理由:なぜこの課題を改善するのか」「手段:改善するために必要なことは何か」などを整理していきます。

例えば、「理由:新規市場開拓に注力するためには営業面の人材確保・育成が課題」「手段:既存の営業担当者の社外研修、新しい営業担当者の採用枠拡大」といったことが考えられるでしょう。

改善する課題は企業によって違いますが、課題となりやすいのは売上増大や管理者層の育成、資金繰りなどです。現状分析に基づく自社の課題に加え、日本政策金融公庫「事業計画書」などを参考にすると、抜け漏れがなく課題を考えられるでしょう。

課題の例

2)数値計画を踏まえた経営計画

計画立案では、これからの活動を具体的な数値に落とし込みます。企業の状況にもよりますが、「営業利益」がポイントの1つです。3~5年先には「本業でどれだけもうけられるようになっていたいか」を念頭に、数値計画を立てていきます。

数値計画

ただし、数値が一人歩きするようではいけません。3~5年先のビジョンを達成するため、「いつ、どのような課題を解決するか」「どのように営業利益を伸ばしていくか」といった活動計画と連動させると、具体的な経営計画となります。

5 中期経営計画を運用していくための4つのポイント

1)経営者が自ら全社員に伝える

まず、中期経営計画の内容を、経営者が全社員に伝えることが大切です。外部環境・内部環境から自社の置かれている現状を説明し、「なぜこのような中期経営計画が必要なのか」というところから話します。

このとき、ビジョンをしっかりと伝えましょう。例えば、「今から10年後の203X年に、我が社は○○のような姿になっている」と理想を語り、社員に夢を持たせるのもよいでしょう。

2)責任者を明確にする

活動計画に含まれるプロジェクトやタスクには、それぞれ責任者を割り当てます。責任者はそれらを進行し、経営者に進捗状況を報告します。経営者は責任者と話し合い、「いつまでに」「何をするか」を決め、ガントチャートを作成しておくとよいでしょう。こうして責任者を明確にしておけば、「計画は立てたものの、誰も何も動いていなかった」という事態を防げます。

また、細かな確認のためにプロジェクトなどの進行が止まらないように、責任者にはある程度の権限を与えることも必要です。

3)進捗を確認できる仕組みをつくる

進捗を確認できる仕組みをつくります。例えば、毎月1回、責任者を集めて報告会を行うようにします。オンラインミーティングが定着した今、地理的に離れた場所にいる責任者ともコミュニケーションが取りやすくなりました。事前に動画や資料で状況を報告してもらうことで、責任者が順番に話す単なる報告会ではなく、その場で議論ができるようになります。

4)月次決算を行って予実管理をする

月次決算は、中期経営計画の達成度合いを把握するのに有効です。とはいえ、年度末の決算書のようなルールがないので、数値計画と照らし合わせやすいように、売上や利益であれば取引先別・製品群別に管理するなどの工夫が必要です。いわゆる「管理会計」の分野です。

ただし、管理会計は凝り過ぎると実務負担が大きくなるので注意しましょう。売上原価を管理する場合はあまり科目を細かくせずに、固定費と変動費の内訳がおおよそ分かるくらいのレベルでよいでしょう。

6 中期経営計画にとって本当に必要なもの

中期経営計画は策定して終わりではなく、実行、つまり具体的な行動が伴わなければ意味がありません。また、行動の内容は外部環境・内部環境の変化などに応じて柔軟に見直す必要があります。その時々の状況によって優先すべきことは変わってくるからです。

また、市場環境が大きく変化した場合は「将来あるべき姿」そのものを見直さざるを得ないこともあります。企業にとって、「将来あるべき姿」はとても重要ですが、企業経営では、多角化によって事業ドメインそのものを変えなければならないこともあります。こうした大きな方向転換は大変なことです。

とはいえ、「事業ドメインそのものを変えるべき」なのに、その変化に気付かず進んでしまうことのほうが問題です。「将来あるべき姿」を決めたからといって、必ずそのゴールにたどり着かなければならないわけではないのです。

中期経営計画を策定した後は、常に「本当にこれが自社にとって正しいのか」を客観視する目を持ち、変化を捉え続ける努力が求められます。こうした努力こそが、中期経営計画を支え、企業の未来をつくっていくのです。

以上(2025年9月更新)

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画像:takasu-Adobe Stock

【朝礼】ナイチンゲールは「統計」の力で医療を変えた

【ポイント】

  • ナイチンゲールは、戦争における病院の劣悪な環境を訴えるため、統計学の知識を使った
  • 彼女は「死亡者数という客観的な根拠」を「グラフという分かりやすい形」で示した
  • 正しいだけでは人は動かない。「相手に納得してもらうための工夫」が不可欠

おはようございます。今日は、フローレンス・ナイチンゲールの話をしたいと思います。ナイチンゲールと聞くと、多くの方は「看護の母」というイメージを持たれるかもしれません。実際、彼女は19世紀のイギリスで、看護という仕事を人々に尊敬される職業へと変えた先駆者です。

しかし、彼女のすごさは、それだけではありません。実は彼女は、「統計」の力で多くの兵士を救った人物でもあるのです。ナイチンゲールが活躍したクリミア戦争では、多くのイギリス軍兵士が命を落としましたが、その主な原因は戦傷ではなく、病院の劣悪な環境下で発生する感染症でした。上流階級の家庭に生まれ、統計学の知識があったナイチンゲールは、戦死者・傷病者に関する多くのデータを分析し、「病院の衛生状態の改善」が必須であることを本国に訴えたのです。

なかでも画期的だったのが、本国への報告の際、当時としては珍しかった「グラフ」を用いたことです。ナイチンゲール自身は統計に強くても、国会議員や役人はそうではありません。だから、彼女は初心者にも分かりやすいよう、1カ月ごとの死亡者数をその原因ごとに色分けして円グラフにしたのです。その結果、多くの人が「病院の衛生状態の改善」が必須であることを認識し、抜本的な感染症対策が実施されました。そして、40%以上あった兵士の死亡率は数%台まで下がったのです。

ナイチンゲールは、看護という仕事において、自分が兵士を救うために何をできるのかを真剣に考え、行動しました。それだけでも尊いことですが、1人の力でできることには限界があります。彼女が病院の在り方を根本から変えるには、多くの人々の協力が必要でした。だから、彼女は「死亡者数という客観的な根拠」を、「グラフという分かりやすい形」で示すことで人々を納得させ、協力を取り付けたのです。

皆さんも社内外で話をする際、「こうするのが正しいのに、なんで伝わらないんだ」とモヤモヤすることがあるかもしれませんが、仮に皆さんの意見が正しいとしても、それだけでは人は動きません。大切なのは「相手に納得してもらうための工夫」です。ナイチンゲールのように常に人に寄り添う姿勢を忘れず、頑張っていきましょう。

以上(2025年10月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

【オーナー企業の事業承継(9)】 MBO・ファンド・M&Aを活用した事業承継対策

1 親族内に後継者がいない場合はどうするのか

オーナーの事業承継を検討するに当たって、親族内に後継者として適当な人材がいない、あるいは、いても当人の承諾が得られないケースも見受けられます。

また、親族内での承継にこだわり過ぎて強引に事業承継を行い、かえって後継者にも会社にも悪影響を与えてしまうこともあります。

親族内に適当な後継者がいない場合に考える選択肢として、MBO、ファンド、M&Aの手法を用いた対策があります。それぞれの効果や留意点を認識し、自社に合った対策案として検討してみてください。

2 MBOを活用した事業承継対策

1)MBOとは

MBOとは、

Management Buyoutの略称で、経営陣(役員)が事業の継続性を前提に自社株式を買い取り、オーナー経営者などとして独立する行為

をいいます。

また、従業員が自社株式を買い取る場合はEBO(Employee Buyout)といいます。なお、この記事では一般的に用いられているMBOについて説明します。

MBOは、親族内に適当な後継者はいないけれど、社内に有能な役員がいる場合などの事業承継対策として活用することができます。

MBOを活用した事業承継の流れ(一般的なスキーム例)は次の通りです。

MBOを活用した事業承継の流れ

2)対策のポイント

通常は自社株式購入のための自己資金が不足するため、金融機関などから不足資金を調達する必要があります。しかし、後継役員などの個人では借り入れの返済原資が乏しいことから、新たに設立する受け皿会社が金融機関などから借り入れを受けて、株式を取得するケースが多く見られます。

MBOでは、後継役員自身が株式購入資金の準備手続きを行わなければなりません。特に金融機関などからの借り入れで資金を賄う場合は、事業の継続や成長の源泉となる商品、技術、販売力、人材などに関して十二分に説明し、借り入れ条件などを綿密に調整・確認することが重要となります。

また、子会社化される事業会社と受け皿会社との資本関係を100%とするなど一定の要件を満たすことで、受け皿会社が事業会社から受け取る配当金には課税されません。そのため、配当を生み出す事業会社の事業収益を借入金の返済原資として有効に利用することができます。

3)対策のメリット

MBOを活用した事業承継対策のメリットは次の通りです。

  • 親族内に後継者がいない場合でも、第三者によるM&A(詳細は後述)の手法を用いることなく、事業を承継することができる
  • 事業の承継者が会社の事業実態を熟知している現経営陣(役員など)であることから、円滑に事業を承継することができる
  • 現経営陣(役員など)がオーナー経営者となることで、一層の責任感を持って会社の経営に取り組むこととなり、また、従業員の雇用も確保され、経営陣と従業員の一体感や企業風土といった会社の独自性も維持していくことができる
  • 現オーナーにとっては換金性の乏しい非上場株式を換金することができ、オーナーの親族は、その現金を将来の相続における相続税の納税資金に充当することができる

4)対策のデメリットと留意点

MBOを活用した事業承継対策のデメリットと留意点は次の通りです。

  • 受け皿会社が金融機関などからの借り入れで資金調達をする場合、事業性の評価次第では、後継役員などが個人の連帯保証や担保提供を要求されることある
  • 承継する事業会社は多くの場合、既に金融機関からの借り入れがあり、通常はオーナーがその債務を連帯保証しているため、後継役員などはその債務についても承継しなければならないことがある。そのため、後継役員などの理解を得たり、金融機関との調整で、多くの時間を費やしたりすることともある
  • 後継者候補が複数いる場合に誰を後継者に選択するかによって、その後の経営幹部内での争いのもととなる恐れがある

3 事業承継を目的としたファンドを活用した対策

1)ファンドとは

ファンドとは、

投資家から資金を集めて株式などに投資して運用を行う仕組み

をいいます。

ファンドにはさまざまなタイプがありますが、その投資スタンスの決め手となるのが資金の出し手となる投資家です。

一般に地域の金融機関や国内の年金基金などから資金を集めているような場合は、中長期的に経営者と二人三脚で企業の成長を支援するというスタンスのファンドが多いようです。

ファンドを活用した株式承継の流れ(一般的なスキーム例)は次の通りです。

ファンドを活用した株式承継の流れ

なお、「普通株」とは一般的に通常売買、保有されるような株式で議決権があり、また、配当がもらえる権利があるような株式をいいます。これに対して

「優先株」は普通株よりも配当を優先的に受けることができたり、倒産などの際に残余財産を優先的に受け取ることができたりする一方で、議決権がないような株式

をいいます。

現在、株式の内容は配当、議決権、償還、普通株への転換、残余財産分配に関して自由に設計することができるため、名称は同じ「優先株」であっても全く内容が異なっている場合もあるので、活用においては株式の内容をよく確認する必要があります。

なお、種類株式の詳細については、下記のリポートをご参照ください。

2)対策のポイント

株式を譲渡する際の株価は、後継者が中心となって策定する事業計画を根拠としてDCF(ディスカウント・キャッシュフロー)法などにより算定されます。DCF法とは、会社が将来生み出すフリー・キャッシュフロー(純現金収支)を、一定の割引率で割り引いた現在価値に基づき株式の価値を評価する方法です。従って、調達した資金について、一定期間で無理なく返済ができるような事業計画を策定することが重要です。

また、一口に「ファンド」といっても、事業承継をサポートするファンドは世の中に多く存在します。これらのファンドの性格はファンドマネジャーやその出資者の属性によって大きく異なっており、どのようなファンドと付き合うのかは対策を行う上での重要なポイントです。

そのため、入り口の段階において、高い価格で株式を買い取ってもらえたとしても、その後、後継者には不本意な形で経営権を取られてしまったということがないように、次のポイントなどを確認し、ファンドの性格を理解する必要があります。

  • 投資に対する方針
  • ファンドマネジャーの信頼性
  • 出資者の属性

3)対策のメリット

事業承継を目的としたファンドの活用による対策のメリットは次の通りです。

  • 換金性の乏しい非上場株式を換金することで、オーナーの自由に使える資金が増え、将来の相続税などの納税資金としての活用も可能となる
  • 買収目的会社を設立する際の普通株への出資は少額でも可能なため、会社の将来を担う人材を中心に、新しい世代へと株式保有者を再構成することができる

4)対策のデメリットと留意点

事業承継を目的としたファンドの活用による対策のデメリットと留意点は次の通りです。

  • 通常は、事業計画の達成状況についてファンド運営者によるモニタリング(定期的な事業計画の実行状況の確認)が行われる。実際のモニタリングの内容は会社の状況によって異なるが、モニタリングを通して、経営管理面の強化と成長企業への脱皮を求められる
  • 事業計画を下回るような状況が継続するような場合には、後継者による経営に一定の制限が加えられることがある。そのため、事前に作成する事業計画は、後継者が確実に遂行できる内容にする必要がある

4 M&Aを活用した事業承継対策

1)M&Aとは

M&Aとは、

Mergers and Acquisitionsの略称で、企業の合併・買収を総称し、事業承継においては、外部資本(第三者)がおおむねの株式を買い取り、事業を継続する行為

をいいます。M&Aを活用した事業承継対策の流れ(一般的なスキーム例)は次の通りです。

M&Aを活用した事業承継対策の流れ

2)対策のポイント

M&Aにより会社を売却する場合、次のような状況にある会社が売却しやすい(売却しにくい)とされています。売却しやすい会社と売却しにくい会社は次の通りです。

売却しやすい会社と売却しにくい会社

なお、業績が好調な時期に譲渡する経営者が意外に多いようです。事業で成功している経営者は決断力があるといえるのかもしれません。

中には、いざとなって最後の決断ができず自ら交渉を破談にしながら、後々になって業績が悪化し、再度、売却を検討したが当初の条件からは大きく後退してしまい、悔やむオーナーもいます。そのため、M&Aの決断には経営者の資質が問われるのです。

3)対策のメリット

M&Aを活用した事業承継対策のメリットは次の通りです。

  • 廃業や会社清算と比べると税金の面で有利で(後述)、従業員の雇用、顧客を守ることができる
  • オーナーは会社の借り入れに対する連帯保証や担保提供が必要なくなる
  • 一般的には株式の売却や退職金の受領、会社に対する貸付金の回収といった形で、株主や役員は大きな現金収入を得ることができる

4)対策のデメリットと留意点

M&Aを活用した事業承継対策のデメリットと留意点は次の通りです。

  • 情報の漏洩など、不適切な形でM&Aに関する情報が開示されると、従業員の不安感の増大と、退社のリスクや経営不安などの噂の流布による営業面でのリスクなどに直面する可能性がある
  • M&Aの前後において、売却先との企業文化の相違により、社内のモチベーションが低下してしまうリスクがある

5)M&Aと清算の比較

M&Aは、会社を清算した場合と比べて税金面などで有利になります。M&Aの場合と清算の場合の株主の手取り額の比較は次の通りです。

M&Aと清算の比較

M&Aの場合は清算の場合と比べると、株式の譲渡益に対する20.315%の課税だけで済むため、税金面では有利といえます。清算の場合は法人の含み益に対して法人税が課税され、さらに個人の手取り金に対して配当所得として他の所得と合算して総合課税されるため、金額が大きい場合は49%程度の高税率で課税されることが多くなります。

また、清算の場合には、実際の資産処分価額はM&Aの場合の評価額を大きく下回ります。清算手続きに入り、資産を実際に処分する際には機械装置などの移設ができないものはスクラップ価格となってしまいます。

逆に業績の良い非上場企業のM&Aの場合は営業権が資産額に加算されるため、通常は、

時価純資産評価額+営業権

で株価が評価され、清算の場合よりも圧倒的に有利となります。時価純資産評価額と営業権は次のように計算します。

  • 時価純資産評価額=会社の資産(時価評価)-負債(時価評価)
  • 営業権=税引き後利益(過去3~5年の平均)×年数(目安:3~5年)

以上(2025年8月更新)
(監修 辻・本郷税理士法人 税理士 安積健)

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画像:soo hee kim-shutterstock

【9月12日】公益社団法人徳島県産業国際化支援機構主催! 第1回 商品開発実践セミナー


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徳島県産業国際化支援機構(以下「機構」)が、第1回商品開発実践セミナーを開催します。本セミナーでは、「商品開発」×「人財開発」×「デザイン」の視点から唯一無二の売れる商品を生み出すためのポイントを、2人の講師から学びます。

売れる商品づくりに本気で取り組みたい方にとって、絶好の機会です。ご興味のある方はぜひご参加ください。


【開催概要】

問合わせ先
公益社団法人徳島県産業国際化支援機構 販路開拓・海外進出課
TEL:088-676-3001
FAX:088-676-3040
E-mail:yamamotog@tokushima-bussan.com

地域商社の関連記事はこちら!

以上(2025年8月作成)

労災保険だけでは足りない? 労災の「法定外補償」の最新相場!

1 法定補償と法定外補償の「二段構え」で労災に備える!

転倒・転落、交通事故、化学物質、過重労働、ハラスメントなど……社員がけがや病気になるリスクはさまざまです。そして、社員の事故等が労働災害(労災)として認定されると、社員や遺族は労災保険から給付を受けられます。いわゆる労災の「法定補償」です。

ただ、法定補償(労災保険給付)だけでは、被害の大きさによっては治療費や生活費を賄いきれない場合があります。こうしたケースに備えるのであれば、

民間の保険会社が提供する、労災の「法定外補償」(私的な保険など)に加入

するのも1つの手です。例えば、製造業・建設業・運輸業など労災が発生しやすい業種の会社は、法定補償を基本としつつ、法定外補償にも加入して、手厚い補償体制を実現しています。

法定外補償に加入するかどうかはさておき、「労災に対する備えはどの程度必要か?」を知っておくことは重要です。そこで、この記事では労務研究所「旬刊 福利厚生」のデータを基に

労災の障害補償と遺族補償について「法定外補償の相場」を紹介

します。また、労災の法定補償(労災保険給付)の内容についても第4章で紹介しているので、気になる人はぜひご確認ください。

2 障害補償(法定外)の相場

1)業務災害の障害補償

業務災害(業務に関連して発生する労災)によって社員の体に障害が残った場合、その社員は障害等級に応じた障害補償が受けられます。

2024年の障害補償の給付額(業務災害、法定外)を見てみると、障害等級1級の給付額は、

  • 退職の場合:平均2899万円(製造業は3025万円、非製造業は2604万円)
  • 継続雇用の場合:平均2226万円(製造業は2252万円、非製造業は2176万円)

となっています。

2024年の障害補償の給付額(業務災害、法定外)

また、障害補償の給付額(業務災害、法定外)の推移は次の通りです(障害1級から障害3級の継続雇用の場合については非掲載)。給付額は減少傾向にあります。

障害補償の給付額(業務災害、法定外)の推移

2)通勤災害の障害補償

通勤災害(通勤に関連して発生する労災)によって社員の体に障害が残った場合も、障害等級に応じた障害補償が受けられます。

2024年の障害補償の給付額(通勤災害、法定外)を見てみると、障害等級1級の給付額は、

  • 退職の場合:平均1784万円(製造業は1719万円、非製造業は1916万円)

となっています(障害1級から障害3級の継続雇用の場合については非掲載)。

2024年の障害補償の給付額(通勤災害、法定外)

また、障害補償の給付額(業務災害、法定外)の推移は次の通りです(障害1級から障害3級の継続雇用の場合については非掲載)。こちらも給付額は減少傾向にあります。

2024年の障害補償の給付額(通勤災害、法定外)

3)参考:休業4日以上の死傷者数の推移

参考までに、労災における休業4日以上の死傷者数の推移も紹介します。休業4日以上の死傷者数は、2021年までは増加傾向にありましたが、それ以降は減少し、2024年時点で13万5718人となっています。

休業4日以上の死傷者数の推移

3 遺族補償(法定外)の相場

1)業務災害の遺族補償

業務災害によって社員が死亡した場合、その遺族は遺族補償を受けられます。

2024年の遺族補償の給付額(業務災害、法定外)を見てみると、金額は

  • 死亡の場合:平均2812万円(製造業は3105万円、非製造業は2314万円)

となっています。給付額自体は、障害補償と同様、減少傾向にあります。

遺族補償の給付額(業務災害、法定外)の推移

2)通勤災害の遺族補償

通勤災害によって社員が死亡した場合も、遺族は遺族補償を受けられます。

2024年の遺族補償の給付額(通勤災害、法定外)を見てみると、金額は

  • 死亡の場合:平均1630万円(製造業は1554万円、非製造業は1814万円)

となっています。給付額自体は減少傾向にあります。

遺族補償の給付額(通勤災害、法定外)の推移

3)参考:死亡者数の推移

参考までに、労災における死亡者数の推移も紹介します。死亡者数は減少傾向にあり、2024年時点で746人となっています。

死亡者数の推移

4 労災の法定補償(労災保険給付)

1)労災の法定補償

労災の法定補償では、業務災害、通勤災害に対して保険給付を行います。保険給付には、定額支給のものや、「給付基礎日額の○○日分」などの形で支給額を計算するものがあります。なお、給付基礎日額は原則として次の方法で計算します。

給付基礎日額=労災発生以前3カ月間の賃金総額(3カ月を超える期間ごとに支払われる賞与等を除く)÷その期間の総日数

2)主な保険給付

労災の法定補償の主な保険給付は次の通りです。なお、業務災害の場合、保険給付の名称に「補償」という文言が付きます。例えば、業務災害によって療養が必要な場合は療養補償給付と呼ばれます。ただし、葬祭に要した費用については、業務災害では葬祭料、通勤災害では葬祭給付と呼ばれます。

1.療養(補償)給付

労災による傷病のため、労災指定病院等で療養を受けるときに、必要な療養の給付(現物給付)が受けられます。労災指定病院等以外で療養を受けたときは、必要な療養の費用が支給されます。

2.休業(補償)給付

労災による傷病の療養のため労働することができず、賃金を受けられないときに、休業4日目から、休業1日につき給付基礎日額の60%相当額が支給されます。休業(補償)給付の支給期間に制限はありませんが、社員が療養を開始してから1年6カ月が経過し、傷病(補償)年金の支給を受けるようになると支給されなくなります。

3.傷病(補償)年金

労災による傷病が療養開始後1年6カ月を経過した日または同日後において、「傷病が治っていないこと」「傷病による障害の程度が厚生労働省令で定める傷病等級に該当すること」のいずれも満たしたときに、傷病の程度に応じ、給付基礎日額の313日~245日分の年金が支給されます。

4.障害(補償)年金

労災による傷病が治った後に「障害等級第1級~第7級」に該当する障害が残ったときに、障害の程度に応じ、給付基礎日額の313日~131日分の年金が支給されます。

5.障害(補償)一時金

労災による傷病が治った後に「障害等級第8級~第14級」に該当する障害が残ったときに、障害の程度に応じ、給付基礎日額の503日~56日分の一時金が支給されます。

6.介護(補償)給付

傷病(補償)年金か障害(補償)年金の受給者のうち、第1級の者または第2級の「精神神経・胸腹部臓器の障害」を有している者であって、現に介護を受けているときに支給されます。常時介護を要する状態か、随時介護を要する状態かなどによって支給額が異なります(最大で18万6050円)

7.遺族(補償)年金

労災により死亡したときに、受給権者および受給権者と生計を同じくしている遺族の人数等に応じ、給付基礎日額の245日~153日分の年金が支給されます。

8.遺族(補償)一時金

労災により死亡した当時、遺族(補償)年金を受け得る遺族がいないときに、給付基礎日額の1000日分の一時金が受給権者に支給されます。

また、遺族(補償)年金を受けている者が失権し、かつ、他にこれを受け得る者がいない場合であって、既に支給された合計額が給付基礎日額の1000日分に満たないときに、給付基礎日額の1000日分から既に支給した年金の合計額を差し引いた額が受給権者に支給されます。

9.葬祭料(葬祭給付)

労災により死亡した者の葬祭を行うときに、31万5000円に給付基礎日額の30日分を加えた額が支給されます。その額が給付基礎日額の60日分に満たない場合は、給付基礎日額の60日分が葬祭を行う者に対して支給されます。

以上(2025年8月更新)

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画像:Mono-Adobe Stock

投資とは何か、正確に把握しよう/設備投資の成果チェック(1)

1 設備などの投資は、超・固定費

「コロナ前にした設備投資がなかったら、(今の経営が)どんなに楽だっただろう」。こんな声を経営者から聞くことがあります。なぜ、設備などへの投資が大きな負担になるのか、投資する際には、どのようなことに気を付ければよいのか。一緒に考えていきたいと思います。

費用をかけるときは、その費用が売上とどのような関係にあるのかを把握し、利益への影響を想定しなくてはなりません。そのためには、その費用が変動費か固定費かを、理解しておく必要があります。

  • 変動費 … 売上や仕事の量によって増減する費用(例:材料費、仕入代など)
  • 固定費 … 売上の増減に関係なく一定額発生する費用(例:家賃、人件費など)

実は、

設備などへの投資は、「固定費の中の固定費」ともいえる費用

なのです。なぜなら、設備や新規事業などで多額のお金がいっぺんに出ていってしまい、支払ったら最後、もう取り返すことができないからです。この特徴が、通常の固定費(基本的に将来にわたって発生が続く費用)以上にやっかいなのです。

例えば、海外からのインバウンド増加に合わせてホテルを建設していた会社が、建設途中でコロナ禍に直面したとします。すでに発生した建設費は、たとえ工事をやめても戻ってきません。仮にホテルはなんとか開業できたとしても、コロナ禍で人の動きが制限され、宿泊客が激減している状況では、建設にかけたお金を短期間で回収することは難しくなります。

このように、一度支払ってしまった投資のお金は過去のものとなり、後からどうにかしようとしても手の打ちようがないのです。投資のために金融機関からお金を借りる場合も、基本的な考え方は同じです。自社から実際にお金が出ていくタイミングは、借り入れによって後ろ倒しにできますが、最終的には元本と利息の支払いは、自社で負担することになります。

2 収益を伸ばすことだけが投資ではない

投資というと、機械の導入による増産など、収入を増やす案件の意思決定を想像しがちですが、実際には費用を削減するための投資案件もあります。むしろ、IT化が進んだ昨今では、管理部門を中心に、コストパフォーマンスの改善を目指す投資案件も増えてきたと感じます。

例えば、契約書や請求書の電子化、電子署名の導入などがそうです。契約書などを電子化すれば紙や印刷代の削減につながりますし、メールなどで送付すれば郵送料も抑えることができますよね。そこにかかる人件費も考えると大きなコスト削減効果が期待できます。

経営では、業績改善を目指します。つまり、会社のもうけを増やすことを大事にします。このもうけ、つまり利益は「収入-費用=利益」ですから、収入と費用に分けて考えることができます。投資案件も、利益は「収入を増やす」「費用を減らす」という2つの側面に分けて考えましょう。

私の専門とする管理会計では、このように何かを「細分化」することが好まれます。「年度の決算を月次に分ける」「損益計算書を部門に分ける」といったようにです。いろいろ交ざったものを細かく分けることで、中身が見えてくるというわけです。

3 実務では、さらに広い意味での投資が問題となる

実務では、投資という言葉をさらに広い意味で捉えます。例えば、仕入先を見直すことも投資の一つです。現在の仕入先だけで取引を継続するのか、新しい仕入先も一定割合増やしてみるのか。短期的には取引先が増えて管理が大変になったり、効率が落ちたりするかもしれません。ですが、将来的に品質や取引の安全性を考えれば、その試み自体が先を見据えた投資になるのです。このように最初は損をしても、将来のために行うことを「先行投資」と呼びます。

その他にも、コストは割高で作業の手間がかかるものの、近年の人手不足を補うための投資というものもあります。

例えば、経理業務を担当する従業員が1人辞めてしまい、仕訳の入力作業などの業務を担当する人がいなくなったとします。もちろん、次の従業員を採用するまで、なんとか残された人材で乗り切るという考えもありますが、いつまで経っても採用の応募が来ないことも、現実的に起こり得ます。

そのような際、記帳代行サービスを利用することも考えられます。コストは割高であることと、証憑(しょうひょう)のやり取りに手間もかかりますが、人手不足を補うための投資であり、事業を継続するために避けられない投資と捉えるのが、今どきと思います。

このように投資と一言で言っても、その内容は様々なのです。投資をタイプ別にまとめると、おおむね次のような類型になります。

投資の類型

なお、最近、サブスクリプション(商品やサービスを一定期間利用できる権利に対して、料金を支払う定額制のビジネスモデル)が広く使われるようになっています。このタイプは、一度に多額の支払いが必要ないので、新しい設備やサービスなどを比較的簡単に導入することができます。ぱっと見では投資と思えないかもしれませんが、経営における選択肢の一つである以上、投資案件として判断する必要があります。

4 投資評価の必要性

投資を検討する際には「投資評価」が必要です。なぜかというと、

会社の資金には限りがある

からです。会社の経営資源はヒト、モノ、カネ(資金)、情報といわれます。これらはいずれも制約があり、会社はそれらを使って最大限の成果を出せるよう事業に取り組みます。資金として使えるのは、株主からの資本、過去からの利益の累積による貯蓄、銀行借入などの負債に限られます。そして、たとえ良い投資案件でも、全てに投資することはできません。だから、複数ある選択肢の中から、どれが効率的か、どれが安全かを比較し、限りある資金を効果的に使うための判断基準が必要になるのです。

また、投資評価のような定量的な判断基準をしていないと、どの収支で、いつ回収する予定であったかさえ分からなくなり、経営が不安定になります。先代経営者が行ってきた設備などへの投資が気付かないうちに多額になり、2代目経営者がそれらの負債を、これからの事業で取り返さないといけなくなる(マイナスのスタートになる)というのは、よくある話です。

特に、金利の上昇が見込まれている昨今ほど、資金の制約は大きくなり、投資評価の必要性は重要度を増しています。

1990年前半には6%であった金利が、バブルの崩壊した1990年代後半以降は低い水準で推移しています。私たちは、30年間にわたって金利のない世界しか知らない世代であるが故に、金利の上昇が資金に与える影響を真剣に考える機会がほとんどありませんでした。しかし、今後は、今までと同様の考えではいけません。

もし、1000万円を6%の金利で5年間借りると、返済に必要な資金は元本の約1.34倍になります。

計算式

ここでは説明を簡略化するため、1000万円に(1+金利)を年数分掛けていますが、実際は、毎月利息を払うので月単位の計算となり、さらに支払いは増えます。このように、金利が上昇するということは、今まで以上に資金の悩みが増えるのです。

皆さんの会社ではどのような投資を考えられているでしょうか。その評価の仕組みはできていますでしょうか。このシリーズを通して次回から、投資評価のための数字の集め方、具体的な手法について解説をしていきたいと思います。

以上(2025年9月作成)

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なぜか社員が辞めてしまう…… 社労士が教える「10の落とし穴」

会社では、社員が突然辞めてしまうことは珍しくありません。ですが、「真面目で不満なんて言ってなかったのに……」「何となく空気が合わなかったのかも」「転職は時代の流れだし、仕方ないよね」などと、社員の離職を運の悪い出来事として片付けていませんか?

実は辞めた社員本人に聞くと、「だいぶ前から限界だった」というケースが非常に多いんです。また、実際に退職はしていないものの、「静かな退職」といって、仕事へのモチベーションを失い、最低限の業務しかこなさなくなる社員が増えているという問題も指摘されています。

経営者や上司には悪気がない。けれど、どこかに小さなボタンの掛け違いがあり、それが積み重なると、気が付いた時には社員が去ってしまう、あるいは心ここにあらずの状態になってしまうのです。

この記事では、社労士の視点から、あなたの会社に潜む「無自覚の落とし穴」となりがちな10のポイントと、具体的な解決策をご紹介します。

(落とし穴1)賃金が新人の「後追い」になっている

「最低賃金が上がったから、それに合わせて新卒の基本給を引き上げた。でも、ベテラン勢は据え置きなんだよね……」。こうした声は、多くの会社で聞かれます。いつの間にか新入社員に基本給が抜かれていると気づいたら、頑張って会社を支えてきた既存社員から「私は頑張っても結局、報われないんですか?」と、不満の声が上がるかもしれません。

特に昨今の物価高騰は、社員の生活に大きな影響を与えています。厚生労働省の統計調査でも、実質賃金がマイナスで推移している傾向が見られ、社員の「もっと評価されたい」「もっと金銭的に報われたい」という欲求は高まる一方です。

既存社員の賃金が世間の相場から乖離していると、転職サイトなどで他社の求人情報に触れた際に、自身の待遇への不満が募り、離職に繋がりやすくなります。

【解決策】

まずは、勤続年数などに対応した「賃金テーブル(賃金表)」を整備しましょう。近年は最低賃金の大幅な引き上げが続いているので、例えば、時給ベースで

  • 勤続5年以上:最低賃金+50円
  • 勤続10年以上:最低賃金+100円
  • 勤続15年以上:最低賃金+150円

といった加給方式にすると、トラブルが起きにくくなります。

「役割」や「成果」に応じた昇給ルートを明確にすることも大切です。特に、会社への貢献度が高いにもかかわらず、給与が伸び悩んでいる中堅層には「成長の見える化」と「報酬の納得感」が必要です。

定期的な昇給レビューに加え、業績連動型のインセンティブや、個人のスキルアップに応じた手当の導入も有効です。透明性の高い評価と、それに基づいた報酬体系を構築することで、社員は自身の努力が正当に評価され、報われると感じることができます。

(落とし穴2)長時間労働が当たり前になっている

「ウチは皆、体力勝負だから!」「繁忙期なんだから、多少の無理は当たり前だろ?」など、体育会系の意識が根強く、無自覚な長時間労働が蔓延している会社は少なくありません。加えて、そうした雰囲気のせいで、定時で退勤打刻をした後、サービス残業が当たり前になってしまっている会社もちらほら……。

周囲に着いていけず、身体と心をすり減らした社員は、我慢の限界を迎えると静かに去っていきます。厚生労働省の「過労死等防止対策白書」でも、長時間労働などが心身の健康を損ない、離職や休職に繋がる深刻な問題であることが示されています。

【解決策】

まずは「長時間労働が当たり前」という雰囲気を社内から取り除く必要があります。社長から全社員に対し、「過去はなあなあでやっていたかもしれないが、もうサービス残業はさせないし、無駄な残業は削減していく」と宣言しましょう。特に上司が残業削減に消極的だと、その部下も早く帰れないので、上司の意識から変えていきましょう。部署の残業削減の成果を上司の評価にプラスすることなどが考えられます。

DX化などで残業削減を図っていくことも大切です。今やメール文面や提案書、ウェブページの作成などは、生成AIを使えば簡単にできるようになっていますし、ブルーカラーの業務でも、例えば「測量や土量算出をドローンで行う(建設業)」「ロボットを活用した自動点呼を行う(物流業)」などの形でDX化が進んでいます。

(落とし穴3)ルールが曖昧すぎる

「あの部署は年次有給休暇を申請すれば認められるのに、ウチの部署は閑散期しか認めてもらえない」「あの人は時短勤務ができるのに、私は認めてもらえない」など、休暇や働き方の自由度が人によってまちまちで、不公平感が広がっていることがあります。

原因はさまざまですが、「就業規則に制度の内容が明記されていない」「制度はあるが、対象者や利用方法が明確でない」など、社内ルールの曖昧さがこうした状況を生み出しているケースが少なくありません。

【解決策】

就業規則で「制度の内容・対象者・利用方法」が明確になっているかを確認しましょう。就業規則の内容が社員に伝わりにくい場合、誰が読んでも分かるように「社内マニュアル」も作成しておくと安心です。例えば、年次有給休暇の取得ルールや、テレワーク時の勤怠管理方法、残業代の計算方法や申請フローなどを明確にすることで、社員は安心して働けるようになります。

「ルール通りに休暇を申請しているのに、上司が認めてくれない」など、上司の匙加減で恣意的な運用がされているケースもあります。上司としての裁量権の範囲を勘違いしている人もいるでしょうから、管理職研修などを通じて、正しい運用を徹底させることが大切です。

(落とし穴4)社内コミュニケーションが偏っている

「ウチの会社のコミュニケーションはバッチリ!」と思っていても、よく見ると特定の部署やグループ間だけコミュニケーションが活発で、他の社員は蚊帳の外……。「ここにいても自分は大事にされていない」と感じて、離職の引き金になることも多々あります。

部署や役職、雇用形態によって話す相手が固定化され、他の社員との交流が少ない状態が続くと、孤独を感じる社員が出てきてしまいます。

【解決策】

最近は、いわゆる「飲みニケーション」を敬遠する社員も少なくなく、多くの会社がどのように社員とコミュニケーションを取ればいいか、困っていると思います。「業務時間外」のイベントで拘束されることを嫌う社員もいるので、例えば「社員が多く集まる社内会議の際に、全員で昼食を摂る」などハードルの低いところから始めてみましょう。

社員が一同に介する形が難しければ、スマホなどを使ったゲームイベントを実施するのもよいでしょう。例えば、歩数計のスマホアプリを使った社内イベントを実施している会社などがあります。通勤時などの毎日の歩数を集計してチームで競わせるイベントなので、社員が同じ場に集まる必要がありません。「社員が集まらなきゃ意味がないのでは?」と思うかもしれませんが、共通の話題を作ればそれがコミュニケーションのきっかけになります。

(落とし穴5)マネジメントが昭和のまま

上司の皆さん、「若いヤツは黙って俺たちのやり方を覚えろ!」「昔はこうだったんだ!」なんて、ついつい言っていませんか? 悪気はないと思いますが、これでは今の若手社員の心は動きません。今の若手社員は一方的な指示には反発を感じやすい傾向にあります。上意下達の一方的なマネジメントでは、「自分の意見が尊重されない」と感じてしまいます。

それに、今は多様な働き方が浸透しつつある時代。小さい子どもを育てる社員や、闘病中の人、家族の介護中の人など。個々人の状況に配慮せず、「ウチの会社は昔からこうだから!」と一方的に押し付けると、脱落してしまう社員も出てくるでしょう。

【解決策】

月並みですが、まずは相手(若手社員)の話によく耳を傾ける、「傾聴」を心がけましょう。昔ながらの文化や風習を大事にしたい気持ちも分かりますが、相手の話に「一理あるかもしれない」と思ったら、それを取り入れていくという意識が大切です。ただし、若手の言うことが何でもかんでも正しいわけではありません。大切なのは「道理」があるかどうかですから、明らかなワガママや間違いがあれば、毅然と指導します。

昨今の法改正の流れにも敏感になりましょう。例えば、改正育児・介護休業法の施行に伴い、

  • 介護休業などの支援制度について、会社が社員に個別に周知し、意向を確認することが義務化(2025年4月から)
  • 3歳以上小学校就学前の子を育てる社員に対し、「短時間勤務」「テレワーク」などの措置を講じることが義務化(2025年10月から)

など、社員の働き方はさらに柔軟になってきています。人手不足の会社では対応に苦慮する部分もあるでしょうが、「法律で定められたら、その働き方が社会のスタンダードになる」ということを認識しておきましょう。「ウチの会社はこうやっている!」はいつまでも通用しません。

(落とし穴6)人事評価が「社長や上司の匙加減」

「〇〇さんは、いつも頑張っているし、来年は昇給させようかな」「あの子は気が利くから、ちょっと評価を上げてあげよう」。こんな風に、人事評価が特定の担当者の主観や感覚で決まっている会社、心当たりありませんか? この状況だと、頑張りが見えにくい部署の社員やアピールが苦手な社員は、「どうせ頑張っても報われない」と静かに心を閉ざしてしまいます。なかには今、話題の「静かな退職(最低限の仕事しかやらない)」状態に陥る人も……。

評価基準が曖昧で、プロセスも不透明だと、社員は自分の努力が正しく評価されていないと感じ、会社への不信感を募らせてしまうんです。

【解決策】

評価基準を「見える化」して、誰もが納得できる仕組みを作りましょう。単一の評価者に頼るのではなく、複数の視点で確認する制度設計が重要です。例えば、社員一人ひとりが達成すべき具体的な行動目標や成果目標を設定し、その達成度で評価する「目標管理制度(MBO)」の導入を検討してみてください。

さらに、上司だけでなく同僚や部下も評価に参加する「360度評価」や、社員自身が自分の実績や貢献を申告する「自己申告制度」なども効果的です。客観的で透明性の高い評価は、社員のモチベーションを維持する上で不可欠であり、会社全体のパフォーマンス向上にも直結します。

(落とし穴7)フィードバックがない

評価面談が年に1回きり、普段の仕事ぶりには何も言わない。これは、多くの中小企業でありがちです。評価者になる社長や上司の立場からすると、「忙しいし、褒めるのは照れくさい。特別問題も起こしてないから、指摘しなくても大丈夫だろう……」というところなのでしょう。

ただ、この状況では、社員は「自分がどう見られているのか」「自分の仕事がどう評価されているのか」が分からず、不安になり、やがて成長意欲を失っていきます。特に新入社員や若手社員は要注意。日本能率協会マネジメントセンターの調査でも、若手社員は「自分の行動や言動に自信が持てず、前向きな1歩を踏み出しきれない」という傾向が顕著に現れています。

日本能率協会マネジメントセンター「最新調査から見えるイマドキ新入社員が示す『働き方』の新潮流」(2025年1月30日)
https://www.jmam.co.jp/topics/1289756_1893.html

【解決策】

年に1度だけでなく、日常的に「小さなフィードバック」を意識してください。業務の進捗や結果について、タイムリーに良い点や改善点を伝えることが重要です。できれば1on1ミーティングを月1回導入すると効果的です。定期的に行うことで、社員は自身の業務に対する客観的な評価を得られ、安心して業務に取り組めることでしょう。

また、フィードバックでは社長や上司が一方的に話をするだけでなく、社員との「対話」を意識しましょう。社員が疑問に思っていること、不満に思っていることなどを吸い上げる努力も忘れないようにしましょう。

(落とし穴8)「相談しても無駄」と思わせている

相談している部下に向かって、上司が「そんなことで悩むなよ、甘えるな!」「今忙しいから後にして!」と言ってしまう。それによって、部下の心がシャットダウンしてしまうこと、ありませんか?

こうした状況が繰り返されると、社員は問題を抱え込み、「相談しても無駄」と離職してしまうこともあります。特に怖いのは、部下が「ハラスメントを受けている」など深刻な悩みを抱えているにもかかわらず、上司が相談を受けてくれない場合です。こうした場合、上司が社員を守らなかったとして、「安全配慮義務違反」で訴えられるリスクもあります。

【解決策】

繰り返しになりますが、上司の「傾聴」する技術が大切です。忙しくても話の腰を折らず、「うんうん、それで?」「他には何かある?」と促すだけでも、社員の感じる印象は激変します。忙しくて話を聞く時間がない場合も、「忙しいから後にして!」で終わらせず、いつなら話を聞けるのか、具体的な時間を提示しましょう。あるいは毎日、上司と部下で業務の報告や相談事について話をする時間を決めておくのでもかまいません。

ハラスメントなどについては、上司に直接相談しにくいケースもあるので、相談窓口の存在を改めて周知しておきましょう。中小企業の場合、社内の相談窓口だと社員が相談しにくいケースもあるので、弁護士事務所やコンサルタントなどに委託して外部相談窓口を設けることも検討するとよいでしょう。

(落とし穴9)仕事の意味が見えない

毎日ひたすらルーティン作業を繰り返すだけだと、社員は「この仕事、一体誰の役に立っているんだろう?」と疑問に思うかもしれません。多くの会社で、目の前の業務に追われて、仕事の全体像やお客様への貢献が見えにくいことがあります。

「なぜ、この仕事をするのか」が明確でなく、自分の仕事が単なる作業の繰り返しで終わってしまう状態だと、社員は働く意味を見失い、モチベーションを低下させてしまいます。

【解決策】

例えば、期首に「針路説明会」を開催するなどしてみましょう。社長が全社員に対し、会社の事業や製品・サービスが社会にどのような影響を与えていて、今後どのような方向に向かっていくのかを具体的に伝える機会を設けるのです。上司はその内容を噛み砕いて、部下1人1人の仕事が会社の事業や製品・サービスを形作っているのかを説明します。

あとは、部下との1on1などで、お客様からの感謝の声や、社員の仕事が具体的にどのような成果に結びついたのかを定期的にフィードバックしましょう。加えて、プロジェクトの「成果の可視化」を工夫したりすることで、社員は自分の仕事が社会や会社にどう貢献しているかを実感できます。

(落とし穴10)ホワイトすぎてやりがいがない

残業はほとんどないし、ノルマもゆるやか。一見「ホワイト企業」に見えるけれど、実は社員からは「毎日同じことの繰り返しで、成長を感じられない」「もっとチャレンジしたいけど機会がない」という声が上がっていませんか?

安定志向の社員には良いかもしれませんが、自律性や成長意欲の高い社員は物足りなさを感じ、結果的にモチベーションを失ってしまうことがあります。これは、社員のエンゲージメント低下に繋がる大きな要因の一つです。

【解決策】

まずは1on1などで認識のすり合わせをすることが大切です。上司は、今の仕事をあとどのぐらいの期間若手に任せるつもりなのか、次に何の仕事を任せる用意があるのかなどを明らかにしつつ、若手にも今の仕事に対する不満などを聞いてみます。若手が「新しい仕事に挑戦したい」と考えているなら、その仕事について何を勉強しているのか、今任せている仕事に支障が出ないかなどを確認した上で挑戦させてみるのも1つの手です。

また、別の問題として、上司が部下から「パワハラ」と言われるのを恐れて、簡単な仕事しか振っていないケースがあります。部下を指導し、成長させるのが上司の役目であること、「業務上必要かつ相当な指導」はパワハラにならないことを、研修などを通して上司に教育することも大切です。

以上(2025年8月作成)

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画像:ChatGPT

【事業承継】後継者を信じて教育し、見込みがなければ厳しくても引導を渡す

1 信じて教育する

事業承継で大切なのは後継者選びですが、その教育は大変です。なぜなら、後継者教育には、

  • 長い取り組みとなる(3年以上かかるケースが多く、10年以上を要する会社もある)
  • 後継者の覚えが悪くても、信じて教育し続けなければならない
  • それでも見込みがなければ、後継者候補を変えなければならない
  • 自身の経営哲学を押し付けるわけにはいかない

といった特徴があるからです。長期の取り組みの中で経営者と後継者が衝突することは避けられないでしょうし、後継者が経営者には不向きであることが分かれば、そのことを後継者に伝えて引導を渡さなければなりません。相手が自身の子供であっても例外はありません。

後継者教育は覚悟を決めた経営者でなければできない最後の人材育成です。それも、

後継者は「もう私には無理です」と辞退することができます。しかし、経営者に代わりはおらず、逃げることができない

ということです。実際、半数近い会社では経営者(社長)が直接教育をしています。

後継者教育の実施

教育方針は経営者の考え方次第であり、それが尊重されるべきです。この記事では、後継者教育をする経営者のお手伝いとして、重要となるポイントを紹介しています。「それはやめたほうがいいですよ」と、経営者には耳の痛いこともあるかもしれませんがお付き合いください。

2 経営者は、まずこの3つを理解する

1)経営感覚は少しずつ養われる

経営者の皆さんが若手だった頃は、「石にかじりついてでも3年」と、どんなにつらくても自分のためになると踏ん張ってきたことでしょう。今でこそ「あのときの経験があるから今がある」と迷わずに言えるでしょうが、若かった頃は「何でこんなに苦労しなければならないんだ」と思っていませんでしたか。経営者が長い時間をかけて培ってきた考え方は、やはり一定の時間をかけてゆっくりと伝えていかないと後継者がついてこられません。

2)主役は後継者である

後継者教育の主役はあくまでも後継者です。よく指摘されるポイントですが、多くの経営者は「取引先に後継者を連れて行ったときは、後継者にしゃべらせているから大丈夫」などと言います。これはこれでよいのですが、もっと大切なのは、目に見える言動というよりも、後継者の「考え方」を尊重することなのです。日ごろ「君の考えは甘い」と後継者を認めていないのに、訪問先に行ったときだけ引き立てられたら、後継者は余計に嫌になります。

3)つらさよりも楽しさを

経営者は幾多の困難を乗り越えてきており、そうした話をすることが後継者のためになると考えます。しかし、経営の厳しさやリスク、そして経営者の孤独などつらさばかり伝えられたらどうでしょうか。もともと「経営者になりたい!」と志していた後継者ならいざ知らず、迷いがある後継者にとっては、「やっぱり自分には無理かも……」となってしまいます。経営の楽しさや、やりがいを伝えなければなりません。

3 経営者にしかできない地ならし

1)事業承継の告知と反対者への対応

前章の3つをご理解いただいた上で後継者教育を進めていくのですが、まずは社内の地ならしをしましょう。事業承継や後継者のことを理解してもらうには長い時間がかかります。そのため、経営者は後継者と事業承継の時期を早い段階で告知したほうがよいでしょう。できれば、事業承継の2年ほど前に告知するのがよいと考えられます。

そうすると、残念なことに「退職する社員」が出てきます。また、特に幹部社員の中には、「若い後継者を下に見る者」「自分が後継者になれなかったことを妬む者」がいるかもしれません。そうした幹部社員は経営者が直接説得しますが、改善しないようなら処遇を考えざるを得ません。事業承継後に後継者に反旗を翻すようなことがあっては困るからです。ただし、処遇をする際は、その幹部社員がそれまで会社を支えてくれたことを忘れてはなりません。

2)社外の関係者に後継者をアピール

社内と同様に、社外の地ならしもします。金融機関などについては、事業承継計画書を提出しながら説明します。また、取引先や顧客については、できれば訪問して挨拶したいところですが、時節柄、オンラインでもよいでしょう。

こちらも残念なことに、相手から見ると、事業承継は取引終了や値下げを申し入れる絶好のタイミングになります。これを防ぐためには、挨拶などの際に後継者が頑張らなければなりません。経営者の横に置物のように座っているだけでは駄目で、後継者にきちんと自己主張をさせましょう。

3)後継者のための経営チームを組成

後継者と同年代などの社員も交えた経営チームを組成します。最初、後継者は自分だけで物事を決めることが難しいので、経営チームで議論し、最後は後継者が決めるようにして訓練していきます。経営チームの人選は後継者に一任しますが、経営者もサポートします。また、後継者を十分にサポートできる人材がいない状況はつらいので、後継者と同年代の社員の教育も行う必要があります。

また、経営者も経営チームに参加しますが、あくまでも主役は後継者です。後継者が筋の悪い意見を言うこともあるでしょうが、その場できつく指摘せず、肯定的に接します。そして、会議が終わった後に1on1で意見を擦り合わせるようにします。後継者が自分の子供であれば、一緒にお酒でも飲みながら話をすることも大事な教育です。

4 どこで育成・修業させるか

具体的な後継者教育の方法には、

  • 他社に勤務させる(社外教育)
  • 自社内の最前線で「現場の仕事」を経験させる(社内教育)
  • 各部門の管理職や新規部門の立ち上げなどを経験させる(社内教育)
  • 経営者の側近として傍らに置き、経営者としての「帝王学」を学ばせる(社内教育)
  • 経営大学院や研修機関など外部の機関で学ばせる(社外教育)

があります。社外教育については、「他社で修業する機会」を提供するサービスが数多くあるので、そうしたものを利用するのもよいでしょう。社内ではどうしても甘やかされてしまうので、先に外に出て、ビジネスの厳しさを知った上で自社に戻ってくれば、後継者の姿勢も違ってくるはずです。

また、国内外の大学院で学ばせ、経営の知識を一通り身に付けさせることも有効です。一定期間、業務と離れて勉強すれば集中できますし、通常の業務では得られない人脈も築けます。それに経営の知識を身に付ければ、幹部社員と同じ言語で話せるようになります。

5 アウトプットは中期経営計画の策定と実行

後継者教育の方法はさまざまあるわけですが、より実践的な方法は、

中期経営計画の策定と実行

です。中期経営計画には、「収益、予算、人員」などさまざまな要素が含まれます。当然、事業承継計画もその中に含まれるわけで、そうした計画を経営者と後継者が一緒に策定し、実行していくことほど、現場に根付いたアウトプットはありません。

後継者が社外で修業した経験があるのであれば、自社と他社の違いを踏まえつつ考え抜いた中期経営計画になりますし、自身が考えた新規事業を実行することで、経験しなければ分からない事業推進から多くを学ぶことができます。

以上(2025年8月更新)

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画像:Mariko Mitsuda