【相続】弁護士が解説する「遺言書」の種類と書き方

1 「争続」防止のために遺言書を作成しよう!

遺言書は、

いわゆる「争続 (相続時の紛争) 」を防ぎ、親族の円満な関係を維持する

ために重要です。遺言書がない状態で相続が発生すると、残された親族が遺産を把握しにくいことがあります。また、遺産を確認できても、非上場会社の株式や不動産など価値が高額で分割できない資産があると、公平な遺産分割ができず、争続が発生する恐れがあります。こうした問題を回避するために、しっかりと遺言書を作成しておきましょう。

2 3種類ある遺言書の特徴

1)公正証書遺言

公正証書遺言とは、

公証役場で作成する遺言書

で、最も多く利用されています。過去、裁判官や検察官を務めた法律専門家である公証人が遺言の内容を公正証書にしてくれるので、法的に問題のない遺言書を作成できます。さらに、公証役場が作成した公正証書遺言を数十年間保管してくれるため、紛失、変造の危険がありません。

公正証書遺言の場合、

  • 作成時、遺言書の内容について2人の証人(顧問弁護士、顧問税理士などが比較的多い)に確認してもらう
  • 公証役場に財産の価額ごとに定められた手数料を支払う

必要があります。証人には推定相続人(配偶者や子など相続人になることが推定される人)や未成年者など一定の人は選ぶことはできません。

2)自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、

自筆で作成する遺言書

です。具体的には、遺言書の本文、日付、署名を自筆で作成し、押印する必要があります。財産目録は自筆ではなく、WordやExcelなどパソコンで作成することもできます。

自筆証書遺言は、公証人の手を借りず、自分だけで遺言書を作成したい場合に利用されることが多いです。例えば、生前に自身の財産状況を他者に知られたくない場合などに適しています。公正証書遺言と異なり証人も不要ですし、作成費用もかかりません。しかし、専門家が内容を確認していないため、法的に無効となる遺言書もあるので注意が必要です。

また、自筆証書遺言に関しては、2020年7月から法務局で自筆証書遺言を保管することができるようになっており、紛失や遺言内容の改変を防止できるようになりました。

3)秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、

遺言の内容を誰にも公開せず、秘密にしたまま公証人に遺言の存在のみを証明してもらう遺言書

です。遺言の内容を秘密にしたい場合に利用されます。

3 遺言書を作成するまでに必要な4つの作業

1)保有する財産(資産・負債)の状況を確認する

まず、財産(資産・負債)の状況を確認して、財産目録を作成します。財産目録とは、相続の対象となる財産の種類と内容、それぞれの評価額や所在地などをまとめた一覧表です。

資産は主に金融資産(現預金、株式、保険など)と不動産とに分けて、次のことを確認します。

  • 金融資産:金融機関名、支店名、口座番号、残高
  • 不動産:不動産登記簿謄本で不動産の所在地など

不動産の概算評価額を確認するため、不動産の固定資産税課税明細書(毎年4~6月ごろに郵送される)で評価額を確認し、財産目録に記載します。また、絵画や骨董品がある場合には、金融資産と不動産以外の資産になりますので財産目録に追加します。

負債は、借入金や買掛金などの債務を記載します。また、葬儀費用(見積額)も負債として記載します。

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2)遺産分割の内容を検討する

財産目録を作成した後は、それぞれの遺産(資産・負債)を誰に相続させるか、遺産分割の内容を検討します。現在の居住状況や非上場会社の株式がある場合は、会社の後継者が誰であるかを前提に検討します。

3)相続税額の試算・遺留分侵害の有無を確認する

遺産分割の内容が決まったら、その条件で遺産の相続がなされた場合に納付すべき相続税額を確認します。相続税の計算は、配偶者の税額軽減、小規模宅地の特例など、相続税の算出に大きな影響を与える制度があるので、これらの制度を有効活用しつつ試算します。その上で、遺産を相続する親族に納税資金を支払うだけの現預金の相続ができているかを確認します。

また、遺産分割の内容が決まったら、その分割案で遺留分侵害(法定相続人に対して最低限保証されている相続割合を下回っていること)を起こすことがないかを確認します。仮に、遺留分侵害を起こす場合は、事前に当事者である相続人が遺留分を放棄するなどの対策を取る必要があります。

なお、相続税の試算や遺留分に関しては細かな取り扱いもあるため、弁護士や税理士などの専門家に相談するようにしましょう。

4)遺産分割案を遺言書の案文として書き起こす

検討した遺産分割案で相続税の支払いに問題がなく、遺留分侵害も起こさないことが確認できたら、その遺産分割案に関する税務および法務の問題はひとまずクリアです。次に、その内容を遺言書の案文に書き起こし、必要な手続きを経て完成させます。

4 遺言書の内容(文例)

記載事項1:現状の遺産内容を漏れなく記載

記載事項2:遺産(負債を含む)を誰に相続するか記載

遺言者は、遺言者の有する下記の財産を遺言者の妻 ○田○子(1952年○月○日生)に相続させる。
1.土地
所在地:東京都●●区〇〇1丁目
地番:2番地3
地目:宅地
地積:○○平方メートル
2.建物

記載事項3:遺言執行者を指定

遺言執行者とは、遺言書の内容に従って遺産の名義変更などを行う責任者です。遺言執行者には顧問弁護士や顧問税理士、あるいは長男が指定されることが比較的多いです。

遺言執行者として、下記の者を指定する。
東京都中央区〇〇1丁目2番地
弁護士 ○藤○夫(1965年○月○日生)

記載事項4:祭祀(さいし)承継者を指定

祭祀承継者とは、祭具や墳墓といった祭祀財産や遺骨を管理し、祖先の祭祀を主催すべき者です。祭祀承継者には長男が指定されることが比較的多いです。

祭祀承継者として、長男 ○田○彦(1976年○月○日生)を指定する。

記載事項5:付言事項を記載

付言事項とは、遺言書で自由な記載が許される事項です。一般的には相続財産にならない生命保険金の受取人について記載したり、親族への感謝の気持ちなどを記載したりします。

5 遺言書を作成する

1)公正証書遺言の場合

公正証書遺言の場合は、事前に最寄りの公証役場に連絡し、作成した遺言書ドラフトをメールなどで送信します。公証人が内容を確認した上で、公証役場において公正証書遺言を作成します(体調不良などで直接訪問できない場合は、公証人の出張依頼もできる)。なお、公正証書遺言作成時には、証人2人の立ち会いが必要です。

公正証書遺言作成時に必要な主な書類は次の通りです。なお、相続財産によっては、下記以外の書類も必要になりますので、事前に確認しておきましょう。

  • 本人と相続人の戸籍謄本(発行から3カ月以内のもの)
  • 本人の印鑑証明書(発行から3カ月以内のもの)
  • 不動産登記簿謄本(相続財産に土地・建物がある場合)
  • 固定資産評価証明書または固定資産税納税通知書(相続財産に土地・建物がある場合)
  • 口座の銀行名・証券会社名、口座番号・証券番号(預貯金や株式がある場合)
  • 証人2人の氏名、住所、生年月日、職業などが分かる身分証明書

2)自筆証書遺言の場合

自筆証書遺言の場合は、遺言書を自分で書き、押印(実印を用いることが多い)して完成させます。その後は封筒に入れ、封印をして保管します。また繰り返しますが、2020年7月から自筆証書遺言を法務局で保管してもらえるようになりました。

3)秘密証書遺言の場合

秘密証書遺言の場合は、遺言書ドラフトを自分で作成し、署名押印(実印を用いることが多い)します。それを封筒に入れて封印し、公証役場に持参すると、公証人が遺言書を提出した日時、遺言書の申述(これが自分の遺言書である旨)を記載し、公証人と証人2人が署名します。これで完成です。

以上(2023年7月更新)
(執筆 日比谷タックス&ロー弁護士法人 代表弁護士 福崎剛志)

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画像:Burdun Iliya-shutterstock

【朝礼】コツコツと努力を積み重ねる3つのコツ

けさは皆さんに、忙しくてもコツコツと日々の努力を積み重ねていくための、「3つのコツ」についてお話しします。

1つ目のコツは、「継続は大切であると、日ごろから自分に言い聞かせること」です。例えば、「千里の道も一歩から」「ローマは一日にして成らず」など、コツコツと努力を続けることの大切さを表すことわざを、毎朝声に出してみるのです。

とはいえ、ただ声に出すだけでは意味がなく、どのような思いを込めて言葉にするかが大切です。例えば、私の座右の銘は「塵(ちり)も積もれば山となる」ですが、塵というものは、努力の有無によってプラスにもマイナスにも作用する、怖いものです。努力を続ければ目標に近づくための「プラスの塵」が積もっていきますが、努力を怠ると、何事も先延ばしにしがちな怠惰な自分を形成する「マイナスの塵」が積もっていきます。だから、私はこのことわざを声に出すときは、「プラスの塵」をためようという意気込みと、「マイナスの塵」をためてはいけないという自分への戒め、両方の思いを込めるようにしているのです。

2つ目のコツは、「忙しさの度合いによって、努力の量を柔軟に変えること」です。皆さんも、仕事が忙しいときにデスクの片付けや、後輩からの相談事を後回しにしたり、仕事で疲れているときに食事をインスタント食品や外食で済ませたり、普段やっているトレーニングや自己啓発をやめてしまったりした経験があると思います。

そのようなときは、「やるか、やらないか」という二択にせず、努力の量を柔軟に変えるのです。先程の例であれば、デスクに物を置く数は3個まで認めて、それ以上に増えそうなときだけ片付ける、後輩から相談されたら5分と決めて話を聞くといった具合です。忙しいときの食事は栄養補助食品を併用する、勉強は1日1問解く、トレーニングは5分で終わらせるなど、時間や回数など最低限の範囲を決めておくのもよいでしょう。たとえ努力の量を変えたとしても、続けている限り目標には確実に近づいていきます。

3つ目のコツは、「努力で成功を勝ち取ったという実績を作ること」です。1つ目と2つ目のコツを押さえ努力を積み重ねていても、それがなかなか結果に結びつかないと、焦りや不安を感じるものです。そんなときに自分を支えてくれるのは、「努力で成功を勝ち取った過去の自分」です。

忙しいときでも積み重ねていった「プラスの塵」は、自信や信頼を生み出します。「あんなに忙しかったときでも継続できた」「難しい課題であっても乗り越えられた」という自信は、努力の継続を後押ししてくれるはずです。

面白いことに、この3つのコツを押さえると、仮に怠けてみても、どこか落ち着かない気分になり、自然と努力する自分に立ち戻れるのです。忙しさはいっときですが、努力の積み重ねは一生の財産になります。忙しさを理由に、その財産を蓄えることを諦めないでください。

以上(2023年7月)

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画像:Mariko Mitsuda

【簿記の基礎(3)】棚卸資産

1 売上原価と棚卸資産

売上原価とは、実際に売れた商品の仕入金額のことで、次のように計算します。

  • 売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高

では、次のケースで仕訳例を確認していきましょう。

  • 期首商品棚卸高:20万円
  • 当期商品仕入高:100万円(掛仕入)
  • 期末商品棚卸高:10万円

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この場合の当期売上原価は次のようになります。

  • 当期売上原価=20万円+100万円-10万円=110万円

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製造業の場合、商品仕入高の代わりに当期製品製造原価を用いて売上原価を算出します。また、棚卸資産は、材料棚卸高・仕掛品棚卸高・製品棚卸高で構成されます。実際の原価計算は非常に複雑ですが、簡単にまとめると次のようになります。

  • 当期製品売上原価=期首製品棚卸高+当期製品製造原価-期末製品棚卸高
  • 当期製品製造原価=期首仕掛品棚卸高+当期総製造費用-期末仕掛品棚卸高
  • 当期総製造費用=材料費+労務費+製造経費
  • 当期材料費=期首材料棚卸高+当期材料仕入高-期末材料棚卸高

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2 原価法による評価

期末商品棚卸高(次期繰越商品)は、次のいずれかの方法で取得価額を算出します。そして、算出した取得価額が期末商品、棚卸資産の評価額となります。

1)先入先出法

先に仕入れた商品から順に売上原価に入れていく方式です。期末商品は、最も新しく仕入れた商品になります。

2)総平均法

期首商品並びに当期仕入商品を全て平均する方法です。売上原価と期末商品の単価は同じになります。

3)移動平均法

商品を仕入れた都度、商品の平均値を求めます。期末商品も同様に求めます。

4)売価還元法

多品種多品目の商品を扱う小売業では、商品を売価でしか管理できない場合があります。この場合、商品の平均売上原価率を求め、これを商品棚卸売価に乗じて算出します。売価還元法では、期末商品棚卸価額は次のように計算します。

  • 期末商品棚卸価額=期末棚卸資産(商品)の通常の販売額×原価率

この原価率の計算方法は、税法では次のようになります。

  • 原価率=(期首棚卸価額+当期仕入高)/(当期売上高+期末棚卸資産の通常の販売価額)

例えば、原価率算出の条件は次の通りです。

  • 期首棚卸価額:200万円
  • 当期仕入高:1000万円
  • 当期売上高:1400万円
  • 期末棚卸資産の通常の販売価額:200万円

この場合、原価率と期末商品棚卸価額を次のように算出することができます。

  • 原価率=(200万円+1000万円)÷(1400万円+200万円)=75%
  • 期末商品棚卸価額=200万円×75%=150万円

3 減耗損と評価損

1)減耗損とは

減耗損とは、帳簿上の数量と実地棚卸数量との差異で、低価主義を適用する場合に生ずる評価損は、商品価値の劣化、市場価格の下落によるものです。低価主義とは、帳簿価額と時価のいずれか低い金額をもって、その後の帳簿価額とすることです。

原価性があるものは、売上原価に含め、そうでない場合は営業費用に含めます。また、経常的でない損失は営業外費用か特別損失に含めます。

2)評価損に関する規定

企業会計原則の注解10で、棚卸資産の低価主義などの評価基準の適用に基づく評価損について、次のように規定しています。

1.低価主義の適用に基づく評価損

売上原価の内訳科目または営業外費用として計上します。

2.棚卸資産の時価が著しく下落した場合の評価損

時価まで価額を引き下げ、評価損は営業外費用または特別損失として計上します。

3.棚卸資産に関する品質低下、陳腐化などの原因によって生じる評価損

原価性を有するものは製造原価、売上原価の内訳科目または販売費に計上し、原価性を有しないものは、営業外費用または特別損失に計上します。

4 仕訳例

1)前提条件

甲商品は次の通りでした。

  • 単価:100円
  • 期末時価:90円
  • 期末帳簿棚卸高:1000個
  • 期末実地棚卸高:900個
  • 品質の低下:100個(見積額:40円)

2)減耗損

減耗損は帳簿上の資産数量と実地棚卸数量の差異(帳簿数量>実地棚卸数量)によって生じます。

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3)品質低下評価損

品質低下評価損は、棚卸資産の劣化や陳腐化などの品質低下による評価損です。

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4)低価法評価損

低価法評価損は、取得価額と時価を比較し、時価のほうが低い場合に生じる評価損です。

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減耗損と評価損を図示すると次の通りです。

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以上(2023年7月更新)
(監修 税理士 谷澤佳彦)

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画像:pixabay

【簿記の基礎(2)】債権・債務

1 費用・収益と経過勘定

1)損益計算書と貸借対照表

損益計算書とは、

企業がもうかったか損をしたかを示すもので、会計期間の売上、費用、利益の状況を示した財務諸表

です。

貸借対照表とは、

企業がどのようにお金を調達し、それを何に使っているかを示すもので、ある時点(通常は決算日)の会社の「財政状態」を示した財務諸表

です。

企業は資金を調達し、それを運用して利益を得ます。そうした企業活動は1年で終了しないため、期末日における債権・債務を貸借対照表に表示し、翌期首に繰り越します。

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2)発生主義・実現主義の原則

全ての費用と収益は、発生した期間に正しく割り当てられるように処理します。継続的な取引では、先に費用を払ったり、収益を得たりすることがありますが、これを「経過勘定」と呼ばれる、以下の科目で処理をします。

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3)費用・収益対応の原則

費用と収益とは、発生源泉によって明瞭に分類し、各収益項目とそれに関連する費用項目とを損益計算書に対応表示します。

  • 売上高と売上原価は密接な対応関係
  • 営業収益と営業費用、営業外収益と営業外費用、特別利益と特別損失は取引の同質性により対応

ここで1つ用語の説明をしておきます。収益に対応するのが費用、収入に対応するのが支出です。収入・支出は現金の出入りを伴いますが、収益・費用は損益が発生(厳密には収益は実現主義)した時点で計上され、必ずしも現金の出入りを伴うわけではありません。

2 売掛金と買掛金

1)売掛金(債権)

一般的に、商品の販売の多くは、掛売りという後日代金を受け取る形で行われます。現金で販売した場合と、売掛金で販売した場合とを比較してみましょう。

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2)買掛金(債務)

商品の仕入も、掛仕入という後日代金を支払う形で行われることが一般的です。現金で仕入れた場合と、買掛金で仕入れた場合とを比較してみましょう。借方(左側)は「債権の発生」と「債務の消滅」、貸方(右側)は「債務の発生」と「債権の消滅」を表します。

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3 前渡金と前受金

1)前渡金(債権)

前渡金は、商品や原材料などの仕入の際、代金の一部または全部を物品の受け入れ前に支払うものです。前渡金は金銭債権というよりも、物品やサービスの給付請求権となります。

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2)前受金(債務)

前受金は、商品の販売の際、代金の一部または全部を物品の納品前に受け取るものです。前受金は、金銭債務というよりも物品やサービスの給付債務となります。

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4 前払費用と前受収益

1)前払費用(債権)

前払費用は、一定の契約によるサービスの提供はまだ受けていませんが、先に支払った対価です。未経過の支払利息、保険料、賃借料などが該当します。

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2)前受収益(債務)

前受収益は、一定の契約によるサービスの提供はまだしていませんが、先にもらった対価です。未経過の受取利息、保険料、賃借料などが該当します。

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5 未収収益と未払費用

1)未収収益(債権)

未収収益は、一定の契約に従ってサービスの提供はしましたが、まだもらっていない対価です。未収の受取利息、保険料、賃貸料などが該当します。

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2)未払費用(債務)

未払費用は、一定の契約に従ってサービスの提供を受けましたが、まだ支払っていない対価です。未払いの支払利息、保険料、賃借料などが該当します。

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6 貸付金と借入金

1)貸付金(債権)

貸付金は、金銭消費貸借契約により金銭を貸し付けた場合の債権です。貸付金は、貸付期間によって、次のように分けられます。

  • 短期貸付金:決算日の翌日から1年以内に返済期限の到来するもの
  • 長期貸付金:決算日の翌日から1年を超える時点に返済期限の到来するもの

短期貸付金、長期貸付金は、さらに、「役員に対するもの」「従業員に対するもの」「子会社に対するもの」とに分けられることもあります。

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2)借入金(債務)

借入金は、金銭消費貸借契約により金銭を借り入れた場合に生じる債務です。借入金は、借入期間によって、次のように分けられます。

  • 短期借入金:決算日の翌日から1年以内に返済期限の到来するもの
  • 長期借入金:決算日の翌日から1年を超える時点に返済期限の到来するもの

短期借入金、長期借入金は、さらに、「役員からのもの」「親会社からのもの」とに分けられることもあります。

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7 未収入金と未払金

1)未収入金(債権)

未収入金は、売掛金以外の固定資産、有価証券売却代金など、本来の事業目的以外の財貨やサービスを提供した場合の代価の未収額です。未収収益と科目名が似ていますが、未収収益は一定の契約に従い、継続して役務の提供を行う場合に発生し、決算時に決算整理仕訳として処理されます。

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2)未払金(債務)

未払金は、買掛金以外の固定資産、有価証券購入代金など、本来の事業目的以外の財貨やサービスの提供を受けた場合の代価の未払額です。未払費用と科目名が似ていますが、未払費用は一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合に発生し、決算時に決算整理仕訳として処理されます。

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8 仮払金と仮受金

1)仮払金(債権)

仮払金は、使用目的や使用金額が未定のまま出金し、実際に使用した後で精算報告をし、本来の科目に振り替えるものです。

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2)仮受金(債務)

仮受金は、現金などを受け入れましたが、科目が不明なものを一時的に処理するものです。

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以上(2023年7月更新)
(監修 税理士 谷澤佳彦)

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【簿記の基礎(1)】借方・貸方と簿記の全体像

1 借方・貸方の考え方

このシリーズでは複式簿記の基礎知識をご紹介します。この記事で取り上げるのは、簿記の基本的な考え方である借方と貸方です。複式簿記では、

  • 左側が借方:「かりかた」の「り」は左を向いているので左側
  • 右側が貸方:「かしかた」の「し」は右を向いているので右側

と覚えるとよいでしょう。そして、

  • 借方:資産調達部門
  • 貸方:資金調達部門

も大切なことです。このことさえ覚えておけば、だいぶ理解しやすくなります。

さて、借方・貸方に記帳するのは「資産、負債、資本、収益、費用」の増減なのですが、これらは貸借対照表と損益計算書に登場します。

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まず、貸借対照表から見てみましょう。貸借対照表では、

「資産の部」が借方、「負債の部」と「純資産の部」が貸方

となります。「借入金は貸しているのではなく、借りているのでは?」と思いますが、

  • 負債・純資産の部は、資金を調達して資産の部に貸している
  • 資産の部は、負債・純資産の部から資金を借りて運用している

と考えれば、ご理解いただけると思います。

次に損益計算書では、

「収益」が貸方、「費用」が借方

となります。貸借対照表と同じように、

収益を元手に、費用を使って収益を生み出す

と考えれば、理解しやすいでしょう。

以上を踏まえてまとめると、「資産、負債、資本、収益、費用」の増減は次のように記帳することになります。ややこしいですが、これが最も基本的なルールとなります。

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2 記帳の例

1)複式簿記のルール

物事に原因と結果があるように、複式簿記では、

  • 借方の増加に対しては、貸方の増加または借方の減少
  • 借方の減少に対しては、貸方の減少または借方の増加

を記帳します。例えば、1000円を借り入れて当座預金に入金したら、当座預金(借方)の増加、借入金(貸方)の増加となり、次のように記帳します。

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2)当座預金の場合

当座預金は資産なので、増加は借方、減少は貸方に記帳します。例えば、当座預金口座に入金が1000円あったら、次のように記帳します。

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当座預金口座からの支払いが500円あった場合、残高が減少するので、貸方に記帳します。

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この状態で決算を迎えた場合、当座預金勘定の残高は次の通りです。

  • 借方500円(借方1000円-貸方500円=借方500円)

3)借入金の場合

借入金は負債なので、増加は貸方、減少は借方に記帳します。例えば、2000円を借り入れた場合、次のように記帳します。補足すると、借入金は社外から資金を調達し、資産の部(借方)に貸すので貸方になります。

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借入金を1000円返済した場合、借入金残高は減少するので、借方に記帳します。

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この状態で決算を迎えた場合、借入金勘定の残高は次の通りです。

  • 貸方1000円(貸方2000円-借方1000円=貸方1000円)

3 簿記の全体像

1)期中の取引例

年間を通した次の取引例を基に、簿記の全体像を説明します。

  • 4月15日
    4000円を借り入れ、4000円が当座預金口座に振り込まれました。
  • 5月21日
    備品1000円を購入し、小切手1000円で支払いました。
  • 7月12日
    商品2000円を掛けで仕入れました。
  • 9月13日
    商品4000円を掛けで売りました。
  • 11月5日
    売掛金のうち3000円が当座預金口座に入金されました。
  • 1月25日
    買掛金2000円を当座預金口座から振り込んで支払いました。
  • 3月15日
    借入金4000円のうち1000円を支払利息200円とともに当座預金より返済しました。
  • 3月31日
    期末商品棚卸高は500円でした。なお、期首商品棚卸高はありません。

2)仕訳

期中の取引例を仕訳したものが次の表です。

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3)各勘定元帳

上記の仕訳により、各勘定元帳には次の通り記帳されます。

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各勘定の下段の数字は取引総額です。当座預金の場合、借方総額と貸方総額は次の通りです。

  • 借方総額=4000円+3000円=7000円
  • 貸方総額=1000円+2000円+1000円+200円=4200円
  • 借方残:2800円(7000円-4200円=2800円)

なお、当座預金の貸方に、「(残高)2800」となっていますが、これは借方残2800円を「残高勘定」へ振り替えることを意味します。同様に、売上勘定の借方に「(損益)4000円」と表示していますが、売上勘定の貸方残:4000円を「損益勘定」へ振り替えることを意味します。

各勘定元帳から損益勘定と残高勘定への振替仕訳を示すと次のようになります。損益勘定は損益計算書、残高勘定は貸借対照表と同じ内容となります。

4)損益勘定への振替仕訳

損益勘定への振替仕訳は次の通りです。

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5)残高勘定への振替仕訳

残高勘定への振替仕訳は次の通りです。

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6)損益勘定と残高勘定

上記の損益勘定への振替仕訳と残高勘定への振替仕訳により、損益勘定と残高勘定には次の通り記帳されます。

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実際の手順は、損益勘定の当期利益を残高勘定に振り替えることで、残高勘定の貸借を一致させますが、説明は便宜上省略しています。

以上(2023年7月更新)
(監修 税理士 谷澤佳彦)

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画像:pixabay

【伝わる文章の書き方】書き始める前に準備しよう

1 書く前の下ごしらえ

文章を書いていて、何度書き直してもうまくいかなかった経験はありませんか? 誤字脱字や文法などをチェックするのは、自分が言いたいことを読者に分かりやすく伝えるために大切です。しかし、何度書き直しても、何を言いたいのか伝わらず、納得できる文章にならないとしたら、それは書き始める前の準備が足りていなかったのかもしれません。

文章(書き言葉)は、一般的に話し言葉より論理的なつながりが重視されます。詩歌や小説など文学的な作品でないなら、何をどのような順番で書くかという事前の計画、構成案が不可欠です。

書く前の下ごしらえ

構成案なしに書き始めることは、レシピなしで料理を始めるのと似ています。慣れていない人が、使う食材の種類や分量、入れる順番などを決めずに始めると、食材が生煮えだったり、味のバランスがおかしかったりします。気付いてもう一度加熱したり、調味料を足したりしても、なかなか挽回できません。

書くのも同じです。構成があやふやであれば、情報が分散してまとまりがなく、何度も読み返さないと理解できない文章になりがちです。
そのため、文章を書くときは、事前の準備が欠かせないのです。

2 書くためのプロセス

文章を書く全体の流れを把握すると、いつ何をすればよいかがイメージできるはずです。書くためのプロセスは、文章の長さや内容、形式によっても異なりますが、本稿では数百字から2000字程度の短い文章を書く場合のプロセスを想定しています。

文章を書くときの全体的な流れは次の通りです。

<全体的な流れ>

●文章を書く前の準備・書き始める

  • 1.持っている事実を整理する
  • 2.問いを立てて、書きたい結論(主張)を決める
  • 3.構成案を作り、それに従って書く

●書いた文章を直す

  • 4.読み返して直す(文法中心)
  • 5.読み返して直す(表現中心)

このプロセスはいつも絶対的に変わらないものではなく、書く目的や内容、文章の長さによっては省略することもあります。
以降では、この文章を書くときの全体的な流れのうち、「文章を書く前の準備・書き始める」について詳しく紹介していきます。

3 持っている事実を整理する

前述した、話し言葉と書き言葉の大きな違いである論理(ロジック)とは、どんなものなのでしょうか。ビジネス書で多くのベストセラーを生み出したライターの古賀史健氏は、『取材・執筆・推敲――書く人の教科書』で、「言葉における論理は、絵画における遠近法」 というような表現をしています。

今ある情報を見える化して、書きたい内容をイメージし、またそれが本当に書けそうかどうかを判断する準備をします。

具体的なステップは次の通りです。

  • ステップ1:持っている事実を全て書き出す
  • ステップ2:欠けている事実を探す
  • ステップ3:事実を分類する

1)ステップ1:持っている事実を全て書き出す

事実とは情報のことです。この後で決める自分の結論(主張)の前提となります。

今分かっている事実を箇条書きで全て書き出します。頭の中にある状態で構成を考えたら、後できっと足りない情報が出てきます。何が分かっていて何が分からないかを整理するのです。

なお、この段階ではきちんとした書き言葉(文語体)で表現する必要はありません。ただし、口語的な副詞や形容詞(「やっぱり」や「いい」など)、ら抜き言葉などは使わないほうが後で修正が少なくて済みます。

取引先に資料の催促メールを送るために分かっている事実を書き出してみると、次のようになります。

  • 〇日の会議で、資料を▲日までに送ってもらうように頼んだ
  • 明日の社内会議でその資料を基に話すことになっている
  • ▲日を過ぎたが、担当者から送られてきていないのを確認した
  • ただし、絶対に見落としていないとはいえない

2)ステップ2:欠けている事実を探す

全て書き出したつもりでも、見落としている部分はあるものです。ステップ1で挙げた中に、欠けている事実がないか確認します。

見えていない情報に気付くのは容易ではありませんが、5W1H(Who(誰が)、What(何を)、When(いつ)、Where(どこで)、Why(なぜ)、How(どうやって))に当てはめて確認するクセをつけるとよいでしょう。上の例では、Howの情報が抜けています。資料は郵送で届くはずなら、メールを確認する意味はありません。

相手が知っている情報であればあえて書く必要はありませんが、足りない情報に自分で気付けるようになると、相手とのトラブルの可能性を下げられます。

なお、事実は正しいことが大前提です。書き並べた情報が本当に正しいのかどうか、情報源となる資料を確認しましょう。

3)ステップ3:事実を分類する

集めた事実を意味ごとに分類します。同じ内容をグループ化し、小見出しを付けるイメージです。

催促メールの例で考えると次のようになるでしょう。

●これまでの経緯

  • 〇日の会議で、資料を▲日までにメールで送ってもらうように頼んだ
  • ▲日を過ぎたが、担当者から送られてきていないのを確認した
  • ただし、絶対に見落としていないとはいえない

●これからに向けたお願い

  • 明日の社内会議でその資料を基に話すことになっている
    →そのために、すぐに送ってもらいたい。また、できればいつまでに送ってもらえるか確認したい

このように分類することで、自分が言いたいことが前よりも明らかになってきます。

4 問いを立てて、書きたい結論(主張)を決める

続いて集めた事実を基に、伝えたい自分なりの結論(主張)を明らかにします。

具体的なステップは次の通りです。

  • ステップ4:読み手の目線を入れ、結論(主張)を整理しタイトルを付ける
  • ステップ5:結論の根拠となる推論(理由)を確かめる

1)ステップ4:読み手の目線を入れ、結論(主張)を整理しタイトルを付ける

まずは自分がこの文章で何を伝えたいか、読み手にどんな反応をしてほしいかをイメージします。上の例では、「担当者に資料を送ってほしい」という目的がはっきりしているので、一見答えは出ているように見えます。

しかし、このステップで大切なのは読み手の視点を入れることです。もしタイトル(件名)に「お約束していた資料の督促」と入れたら、読み手は責められたと感じるはずです。

それが本意ではないなら、この文章の目的は「担当者との関係を良好に保ったまま、今日中に資料を送ってもらいたい」となります。タイトルはシンプルに「資料送付のお願い」くらいがよいでしょう。

2)ステップ5:結論の根拠となる推論(理由)を確かめる

ステップ4と同様、読み手に自分の主張を伝えるための準備です。読み手の視点に立って、事実と結論が納得できるものか確認します。内容が複雑なら、ステップ3で分類した事実のグループ単位などで、結論(主張)、推論(理由)、前提(事実)に分けてみるとよいでしょう。

5 構成案を作り、それに従って書く

いよいよ構成案を作って実際に書くステップです。書き始める前に、どの事実を載せて何を省くかを決めておきます。

具体的なステップは次の通りです。

  • ステップ6:事実を並べる順番を決める
  • ステップ7:どれくらいの分量にするか決める
  • ステップ8:完成した構成案に従って書く

1)ステップ6:事実を並べる順番を決める

ステップ4、5で相手目線を取り入れた事実を基に、一番伝えたい結論を表現するのにふさわしい順番を考えます。

催促メールの場合、次の順番はいかがでしょうか。箇条書きの頭に付けた数字が書く順番です(この順番が唯一の正解ではありません)。

●これまでの経緯の確認

  • 1.〇日の会議で、資料を▲日までにメールで送ってもらうように頼んだ
  • 2.▲日を過ぎても、担当者から送られてきていない
  • 3.ただし、絶対に見落としていないとはいえない

●これからに向けたお願い

  • 4.明日の社内会議でその資料を基に話すことになっている
  • 5.すぐに送ってもらいたい
  • 6.忙しい中で対応してもらうが申し訳ない
  • 7.これからも良好な関係を保ちたい
    (できればいつまでに送ってもらえるか確認したいが、それは必要に応じて電話する)

なお、適切な順番は、文章を載せる場所、媒体によって異なります。ビジネスのメールは基本的に最後まで読んでもらえますが、ネット記事のように途中で読者の離脱が想定される場合は、冒頭に結論を持ってきて読み手の興味を引いたほうが、読んでもらいやすくなります。

2)ステップ7:どれくらいの分量にするか決める

事実を書く順番が決まったら、その事実をどれくらい肉付けして表現するか決めます。強調したいところは長めに語り、分かりづらいところには例え話を入れます。テンポを良くするために、重要でないところは大胆に削ってみてもよいでしょう。

3)ステップ8:完成した構成案に従って書く

最後に、完成した構成案に合わせて原稿を書きます。

【参考文献】

  • 『伝わる・揺さぶる! 文章を書く』(山田ズーニー、PHP新書、2001年10月)
  • 『哲学思考トレーニング』(伊勢田哲治、ちくま新書、2005年7月)
  • 『新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング できるビジネスシリーズ』(唐木元、インプレス、2015年8月)
  • 『【新版】日本語の作文技術』(本多勝一、朝日文庫、2015年12月)
  • 『取材・執筆・推敲――書く人の教科書』(古賀史健、ダイヤモンド社、2021年4月)

以上(2023年7月更新)

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【伝わる文章の書き方】文章を書くのは難しい?

1 話すよりも書くほうが大変?

わたしたちはメールなどで毎日何かしらの文章を書いています。普段のメモやメールであればほとんどストレスなしに書けますが、普段と少し違う内容になったとたん、予定した時間の何倍もかかってしまうことがあります。

話すよりも書くほうが大変?

例えば、メールで人に何かを催促しなければならないとき、何と書きますか。対面や電話であれば、声のトーンなどで気遣っている気持ちを表現できますが、メールではそれができません。伝えたい内容はそれほど複雑でなくても、自分の意図を相手に正しく伝えるにはよく考えて文章を作る必要があります。

例えば、取引先に約束していた資料を催促する場合、こういうメールになるでしょうか。

先日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

その際にご依頼した資料の件でご連絡致しました。
わたしがメールを紛失してしまったのかもしれませんが、ご依頼した資料に関するメールが確認できない状態でございます。
大変お手数をおかけしますが、メールを再送していただけないでしょうか。

いただいたメールを基に、明日、社内で会議を開くことになっています。
お忙しい中大変恐縮ですが、ご対応のほど、何卒よろしくお願い致します。

このメールは、敬語をしっかり使い、丁寧な印象になるよう工夫しています。また、「明日社内の会議で使う」という理由も添えたのは、相手に納得して対処してもらうためです。

普段は当たり前にできているからこそ、意識的に相手に伝わる文章を書こうとすると、どうしてよいか分からなくなってしまいます。書きやすい手順、注意すべきポイントを押さえて自分のやり方を見直してみてはいかがでしょうか。

2 意外に違う“話し言葉”と“書き言葉”

映像や音楽の迫力を伝えるとき、話して説明するのと書くのでは、どちらが伝えやすいですか? 口では説明できるのに、文字ではなかなか表現しにくいことがあります。

話し言葉と書き言葉、両方とも言葉を使うことは同じですが、話すときの言葉は音声、書くときの言葉は文字で表されるのが大きな違いです。話し言葉は音声なので、声のトーン、大きさで情感を込められます。また、身ぶり、視線、表情などで情報をさらに付与できます。

一方、書き言葉は、音声や身ぶりなどで表現される話し言葉の非言語的な情報を、主に「論理(ロジック)」で補っているといわれています。文章を読むとき、話し言葉なら気にならない細かな矛盾が気になってしまうのは、書き言葉にとって論理がとても重要だからです。

また、普段はあまり意識されていませんが、話し言葉と書き言葉の言い回しの違いも文章を書くときの悩みのタネになるでしょう。文章を一旦話し言葉で書いてから書き言葉に直してみると、直す箇所の多さに驚くはずです。例えば、ビジネス文書などでは、語尾が「●●なんです」となっていると、基本的に「●●なのです」「●●となっています」などに修正しなければなりません。

3 論理(ロジック)とは何か

前述した、話し言葉と書き言葉の大きな違いである論理(ロジック)とは、どんなものなのでしょうか。ビジネス書で多くのベストセラーを生み出したライターの古賀史健氏は、『取材・執筆・推敲――書く人の教科書』で、「言葉における論理は、絵画における遠近法」 というような表現をしています。

絵画は三次元の現実を二次元の世界で表現するため、遠近法で空間的関係性を損なわないようにしています。

言葉の論理は、“結論(主張)” “前提(事実)” “推論(理由)”の3つで成り立っています。わたしたちが頭の中だけで考えているとき、自分ではその考えにはそれなりに理由があると思っていますが、それはただの主観にすぎません。他人から見れば、ほとんど理由になっていない場合があります。

例えば、ある人が映画を見てとても感動し、思わず「この映画は世界一だ」と言ったとします。本人にとっては自分が感動したことほど、映画を称賛する根拠は必要ありませんが、「わたしが感動したから、この映画は世界一だ」という文章は、論理的に正しく、多くの人を納得させるとは言い難いでしょう。文章を書く際の論理とは、自分の考えを客観によって裏打ちするための技術のようなものです。

では、論理の組み立て方について、哲学の分野などで使われるクリティカルシンキングの手法を使って考えてみましょう。

そもそもクリティカルシンキングとは、ある意見をうのみにせずに吟味する、批判的思考のことです。クリティカルシンキングはある意見を検証するとき、結論、推論、前提の3つの要素にわけて考えます。先ほどの例を分解すると、次のようになります。

  • 結論:この映画は世界一の作品だ
  • 前提:わたしはこの映画に感動した
  • 推論:わたしを感動させた映画が世界一の作品である

わたしたちが「論理的に妥当だと認めてもいい」と思うのは、前提と推論が共に妥当だったときです。

この例の場合、「わたしは感動した」という前提には嘘はないでしょう。しかし、その前提から「この映画を世界一だ」とする推論は明らかに間違っています。他人に正しい推論と納得してもらうには、世界一の映画作品を評価する方法を明らかにして、それを満たしているという前提がなければ難しいのです。

このように論理的な正しさは結論、前提、推論の関係の中で判断され、文章を書くときはそうした論理的な正しさに留意しなければなりません。

ただし、一口に文章といっても、私的な手紙、メール、ビジネス文書、エッセイ、論文、公文書など、その形式によって、求められる論理の厳密さは変化します。先ほどの文章を書いた「わたし」が、カンヌ映画祭の審査員を務めるような人物で、その記事がエッセイとして美容雑誌などに載っていたら、多くの読者は違和感なく読み進めるでしょう。

文章を書くときには、そうした臨機応変さも含めて、論理をうまく使いこなすことが必要なのです。

【参考文献】

  • 『伝わる・揺さぶる! 文章を書く』(山田ズーニー、PHP新書、2001年10月)
  • 『哲学思考トレーニング』(伊勢田哲治、ちくま新書、2005年7月)
  • 『新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング できるビジネスシリーズ』(唐木元、インプレス、2015年8月)
  • 『【新版】日本語の作文技術』(本多勝一、朝日文庫、2015年12月)
  • 『取材・執筆・推敲――書く人の教科書』(古賀史健、ダイヤモンド社、2021年4月)

以上(2023年7月更新)

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【伝わる文章の書き方】書いた文章を直す

1 書くためのプロセス

文章を書く全体の流れを把握すると、いつ何をすればよいかがイメージできるようになります。書くためのプロセスは、文章の長さや内容、形式などによっても異なりますが、この記事では数百字から2000字程度の短い文章を書く場合のプロセスを想定しています。

文章を書くときの全体的な流れは次の通りです。

<全体的な流れ>

●文章を書く前の準備・書き始める

  • 1.持っている事実を整理する
  • 2.問いを立てて、書きたい結論(主張)を決める
  • 3.構成案を作り、それに従って書く

●書いた文章を直す

  • 4.読み返して直す(文法中心)
  • 5.読み返して直す(表現中心)

このプロセスはいつも変わらないものではなく、書く目的や内容、文章の長さによっては省略することもあります。

この記事では、この文章を書くときの全体的な流れのうち、「書いた文章を直す」について紹介します。ただし、本稿では概要だけの紹介にとどめ、より詳しい方法に関心がある方は、記載する参考文献をご確認ください。

2 読み返して直す(文法中心)

読み返して直す

結論、前提、推論を整理してから書き始めれば、単なる自分の主観だけではなく、客観的な論理で裏打ちされた文章になります。

そこから文章をさらに磨かなければならないのはなぜでしょうか。一つは、純粋に読者のためです。せっかく自分の文章を読んでもらえるなら、喜んでほしいと思うのは自然なことです。

また、取引先に送った見積もり金額など、誤ってはいけないミスもあります。ミスを防ぎ、文章を読みやすくするため、文法をチェックする具体的なステップは次のようになります。

  • ステップ9:表現の重複をなくす
  • ステップ10:文章の構造をチェックする
  • ステップ11:句読点で意味をとりやすくし、リズムをつくる
  • ステップ12:改行や漢字ひらがなで視覚的なバランスを整える
  • ステップ13:もう一度事実確認をする
  • ステップ14:全文を読み直す

これらのステップは、概念的にルールを理解するよりも、実際の文章から問題のある箇所に気付き自分で直す練習が必要です。

参考となる書籍は次の通りです。関心のある人はぜひご覧ください。

【参考文献】

  • 『新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング できるビジネスシリーズ』(唐木元、インプレス、2015年8月)
  • 『【新版】日本語の作文技術』(本多勝一、朝日文庫、2015年12月)

3 読み返して直す(表現中心)

ここでの表現とは、読者を引きつけて楽しませるものです。ただし、詩や小説などの文学的な作品に書かれているような「名文」や「うまい文章」である必要はありません。読者に分かりやすくするためのステップは、次の通りです。

  • ステップ15:この文章でしか読めないエピソードを入れる/活かす
  • ステップ16:伝えたい話を的確に表現する例え話を作る

自分の表現力でオリジナリティーを出すには、普通根気強く訓練する必要があります。しかし、テーマに合ったエピソード(インタビュー、独自コメントなど)を調べるのは、やる気があれば技術はさほど関係ありません。

また、扱う話題が抽象的だと、読者はなかなかイメージできず理解できません。例え話は、その分かりづらさを補い、読者の理解を高めてくれる方法です。

例え話を作る技術、文章力を磨く考え方などが書かれた参考文献は次の通りです。

【参考文献】

  • 『伝わる・揺さぶる! 文章を書く』(山田ズーニー、PHP新書、2001年10月)
  • 『哲学思考トレーニング』(伊勢田哲治、ちくま新書、2005年7月)
  • 『新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング できるビジネスシリーズ』(唐木元、インプレス、2015年8月)
  • 『【新版】日本語の作文技術』(本多勝一、朝日文庫、2015年12月)
  • 『取材・執筆・推敲――書く人の教科書』(古賀史健、ダイヤモンド社、2021年4月)

以上(2023年7月更新)

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【朝礼】たまには「面倒」な三河武士になってください

突然ですが、皆さんの周りに「この人、面倒だな」と感じる人はいますか? 「面倒」の意味はいろいろありますが、私がイメージしているのは「人に何かを言われても、簡単には自分の意見を曲げない頑固な人」です。例えば、リーダーがチームの行動方針を提案したとき、1人だけ反対するような人です。リーダーや他のメンバーからすれば、反対する人を説得するのには手間も時間もかかるので、面倒だと思う気持ちも分かります。

ただ、私はこうした面倒な人こそ、会社に必要な人材だと思っています。ちょうど大河ドラマで「どうする家康」が放映中ですので、けさは徳川家康の家臣を例に、この話をしたいと思います。

家康の家臣の多くは、家康の一族に代々仕えた譜代の武士で、本拠地にちなみ「三河武士」と呼ばれます。三河武士は戦場では勇敢な一方で、冒頭で話した「面倒な人」が多いことでも有名です。

例えば、三河武士の中でも随一の猛将として知られる本多忠勝(ほんだただかつ)です。彼は、娘婿の真田信之(さなだのぶゆき)が、家康の敵となった父・昌幸(まさゆき)と弟・幸村(ゆきむら)の助命を嘆願した際に、「真田親子を助けなければ、自分は徳川の兵と戦って死ぬ」とまで言って後押ししました。忠勝以外にも似たようなことをした家臣はいます。家康の立場からすれば、面倒なことこの上ないでしょうが、彼は多くの場面でこうした家臣の振る舞いを許し、少なからずその意見を聞き入れています。なぜでしょうか?

私は、家康がこの三河武士の面倒さを、逆に頼もしく感じていたからではないかと思います。誰かとの衝突を恐れず、そこに自分の命を懸けられる家臣は、他国と戦いになったときに頼りになるからです。しかも、家康に異を唱えた三河武士の多くは、自分の損得だけではなく、徳川家や家康のことまで考えていました。信之の嘆願を後押しした忠勝は、信之に恩を売ることによって、信之と真田家の家臣や旧領の民を徳川家がしっかり掌握できるメリットまで考えていたはずです。

家康の三河武士への信頼感は、豊臣秀吉に「あなたの宝物は何か」と聞かれた際、「私のために命を懸けてくれる家臣が500人います。それが宝物です」と答えたという逸話からも分かります。

私たちの仕事の話に戻ります。この会社では、残念ながら経営者である私が決めることに、異を唱える人がほとんどいません。スピーディーに物事を進められるのは良い面もありますが、一方で「皆さんは、ただトップに従うだけでいいのか」「自分の本気をトップにぶつけてでも成し遂げたいことはないのか」と不安にもなります。

私の考えが全部正しいなんてことは、あり得ません。ですから、皆さんの中に、会社の方針に少しでも疑問を抱いている人がいるのなら、それを私にぶつけてきてください。衝突を恐れず、そこに本気で挑める人が、これからの会社を支えます。ここぞというときには、面倒な三河武士になることも大切なのです。

以上(2023年7月)

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流通王・鈴木敏文。コンビニを生活に欠かせないインフラにまで育てた彼の、経営指針がよく分かる一言とは?

他の企業がどうであろうと、自分のお客様のニーズを満たせば自分たちの存在意義はある

鈴木敏文氏は、1970年代から2016年に名誉顧問に退くまで、現在のセブン&アイ・ホールディングスを率いて、日本を代表する流通グループに成長させました。その優れた経営手腕と実績から、「流通王」などとも称されています。

数ある鈴木氏の功績の中でも最大のものは、今から50年前の1973年に、日本のコンビニエンスストア(以下「コンビニ」)の草分けであるセブン-イレブン・ジャパンを創設したことでしょう。

鈴木氏はコンビニを創設した後、精緻な商品管理システムの開発、独自の商品開発や物流体制の構築、公共料金の収納代行など公共サービスの提供、新銀行の設立を通じたコンビニ内へのATM設置など、常にコンビニを進化させ続けていきました。その結果、今やコンビニは、災害時に優先的な復旧が望まれるほど、私たちの生活に欠かせないインフラ基盤になっています。

冒頭の言葉は、鈴木氏がなぜコンビニを日本に導入し、本家の米国とは違う「日本式」のコンビニスタイルを発展させていったかを理解する上で、象徴的な言葉といえます。鈴木氏は冒頭の言葉の前後に、自らの経営指針に関して、「(同業)他社さんとの競争における勝者と敗者というのではなく、お客様のニーズをどうつかめるかだけが勝負」「お客様を喜ばせなければならないというより、そうしないと自分たちの存在価値がない」と語っています。

自社の存在意義を重視する鈴木氏の言葉は、決して人ごとではないはずです。

足元の経営環境が厳しく、目先の業績改善と会社の生き残りに汲々(きゅうきゅう)とするあまり、ついつい同業他社との勝ち負けに目がいってしまうことは、どの会社も陥りがちな“わな”といえます。それは経営者のみならず、現場の社員にも当てはまります。会社のためには、自社の商品・サービスを、同業他社のものより多く売り込むことこそ最重要だと考えてしまうものです。

本来、会社の存在意義と、顧客のニーズをつかむこと、同業他社との競争に勝つことは、三位一体のものです。ただ、同業他社を意識しすぎて、同じフィールドでの競争に一喜一憂するだけになってしまえば、その会社は「同業他社でも代わりがきく会社」ということになってしまいます。顧客が喜ぶ商品・サービスを生み出そうという気概を失えば、やがては顧客のニーズをつかめなくなり、結局は同業他社に負けてしまうでしょう。

社員にとっても、「同業他社に勝ちたいだけの会社」と、「顧客が喜ぶ商品・サービスを生み出そうとしている会社」とでは、仕事のやりがい、会社に対する思い入れが違ってくるはずです。こうした会社の姿勢は、採用活動などで求職者に「この会社に入りたい」と思ってもらえる分かれ目になる可能性もあります。進化し続ける「50歳」のコンビニを参考に、もう一度、自社の存在意義を問い直してみるのはいかがでしょうか。

出典:「鈴木敏文経営を語る」(鈴木敏文述、江口克彦著、PHP研究所、2003年4月)

以上(2023年7月)

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