「費用」って何?/社会人に必要な会計の基本(5)

書いてあること

  • 主な読者:会計の基礎を勉強したい人で、損益計算書の「費用」について知りたい人
  • 課題:費用の種類がいくつもあって紛らわしい
  • 解決策:売上に直結するか否か、臨時的か否かで考えると整理しやすい

1 費用とは

費用とは、

事業活動上のコストで、商品の仕入れや人件費の支払いなど

が該当します。損益計算書では、利益計算上のマイナス項目として記載されます。費用はそれぞれの性質や対応する収益の違いをもとに5つに区分されています。損益計算書を見る際、それぞれの利益の意味を知ることはとても重要です。利益は収益から費用を差し引いて計算されるので、費用項目の性質を知ることで、各段階利益の意味も理解できます。

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2 費用項目に書かれていること

損益計算書の費用の項目は次の通りです。なお、全ての会社の損益計算書に次の全項目が記載されているわけではありません。

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1)売上原価

売上原価は販売した商品の原価で、次の算式で計算されます。

売上原価=期首棚卸資産+当期仕入高-期末棚卸資産

期首に手許にある在庫商品に当期に仕入れた商品を加え、期末に手許にある在庫商品を差し引いた金額が売上原価です。

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期末棚卸資産の金額は、決算日に行う実地棚卸で決定します。もし、帳簿価額と差額がある場合は、商品減耗損(売上原価の内訳科目)を計上します。

また、期末の在庫の時価が著しく下落し、回復の見込みがない場合は、商品評価損を計上します。基本的には、売上原価の内訳科目ですが、時価の下落事由(災害により損傷した場合など)により、後述する営業外費用や特別損失となることもあります。

2)販売費及び一般管理費

販売費及び一般管理費(以下「販管費」)は、広告費や従業員の人件費、旅費交通費など商品を販売するためにかかった費用や、オフィス賃借料や消耗品費、福利厚生費など会社の運営に必要な一般管理費です。また、一般的には減価償却費も販管費に含まれますが、製品の製作に関連する固定資産の減価償却費は売上原価に計上されることになり、社宅のような非事業用資産の減価償却費は営業外費用となる点に注意が必要です。

3)営業外費用

営業外費用は、借入金の支払利息や雑損失など本業とは関係のない活動から生じた費用です。なお、雑損失は既存の費用項目になく、売上原価・販管費・特別損失に含まれない項目を処理する場合に使用されます。

4)特別損失

特別損失は、固定資産売却損などその期だけ臨時的に生じる損失(費用)です。災害により生じた損失も特別損失に含まれます。

5)法人税、住民税及び事業税

法人税、住民税及び事業税は、会社の利益に応じて負担する税金(厳密には一部会社の規模などに応じて負担するものもあります)で、法人税等と略されることもあります。この3つの税金以外の税金(固定資産税や印紙税など)は、租税公課(販管費)として処理されます。

3 まずは損益分岐点(損益分岐点売上高)を押さえる

1)損益分岐点とは

費用を用いた代表的な財務指標は、損益分岐点比率と安全余裕率です。まず、損益分岐点を解説した上で、それぞれの財務指標を紹介します。

損益分岐点とは、事業の採算が合うか合わないか(黒字か赤字か)の分岐点です。損益分岐点(イメージ)は次の通りです。

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売上高線と費用線が交わる点(売上高=費用)が損益分岐点です。売上高が損益分岐点を超えれば採算が合う事業と判断できます。損益分岐点を金額ベースで表現するときは損益分岐点売上高といい、販売数量ベースで表現するときは損益分岐点販売数量といいます。

2)損益分岐点売上高の計算方法

損益分岐点売上高を求めるために、費用を「変動費」と「固定費」とに分類します。

変動費は売上高に応じて発生する費用であり、売上高が0のときは発生しません。小売業であれば商品の売上原価が変動費、製造業であれば原材料費や外注加工費が変動費です。

固定費は売上高の有無や増減に関係なく発生する一定の費用であり、人件費や減価償却費、オフィスの賃借料などが該当します。

損益分岐点売上高は次の算式で計算されます。

損益分岐点売上高=固定費÷(1-変動費÷売上高)

4 費用を使用する主な財務指標から分かること

1)損益分岐点比率

損益分岐点比率とは、実際の売上高と損益分岐点売上高の比率を表す割合です。計算式で示すと次の通りです。

損益分岐点比率(%)=損益分岐点売上高÷実際の売上高×100

損益分岐点比率は、現在の売上高と損益分岐点の乖離を示すので、この指標が低ければ低いほど経営の安全性が高いと見られます。

2)安全余裕率

安全余裕率は、実際の売上高と損益分岐点売上高の差額を割合で示したものです。計算式で示すと次の通りです。

安全余裕率(%)=(実際の売上高-損益分岐点売上高)÷実際の売上高×100

安全余裕率は、売上高がどの程度減少(または増加)したら赤字(または黒字)になるかを示すので、この指標が高ければ高いほど経営の安全性が高い(余裕がある)と見られます。

以上(2022年1月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 公認会計士 鬼丸真史)

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画像:pixta

【文例付き】2022年の朝礼やスピーチで使える記念日・行事を題材にしたテーマ例

書いてあること

  • 主な読者:朝礼などでスピーチする際のテーマを探している経営者
  • 課題:スピーチにふさわしいタイムリーなテーマが見つからない
  • 解決策:2022年の記念日や行事を題材にしたスピーチを行う

1 記念日や行事を題材に、タイムリーかつ練ったスピーチを

朝礼などでのスピーチで取り上げやすい題材として、次のようなものがあります。

  • 記念日や行事
  • 時事ニュース
  • 偉人や著名人の名言・格言

この中でも「記念日や行事」は、時事ニュースと同様にタイムリーでありながら、偉人の名言などと同様に事前に準備しておくことができる、という2つのメリットを備えています。

そこでこの記事では、2022年1月~12月の記念日や行事の例と、それを盛り込んだスピーチ例を紹介します。ぜひご活用ください。

2 2022年のスピーチで使える記念日や行事

2022年1月~12月の記念日・行事とスピーチのテーマ例は、次の通りです。

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3 記念日や行事を活用したスピーチ例

1)1月の例:「八甲田山の日」を活用した例

新しい年を迎えて心機一転、明るく前向きな気持ちになっている時期ですが、今日はあえて、今から120年前に起きた厳しい出来事のお話をしたいと思います。今年1年間、「地に足をつけてしっかりと歩んでいこう」というメッセージを皆さんにお伝えしたいからです。

今から120年前の1月23日、青森県の八甲田山で、雪中の行軍訓練に参加した陸軍の部隊の将兵210人のうち199人が亡くなるという大変な事故が発生しました。

一説には、八甲田山の行軍訓練では、防寒のための装備や補給体制などが十分でなかったといわれています。予行演習のときには晴天で順調に行軍できたため、安易に考えてしまったようです。また、天候の悪化を懸念した地元住民からの中止を勧める声を聞かず、道案内も断るなど、情報収集などの点でも問題があったとされています。

ビジネスでも同様に、物事が順調に進んでいるときこそ、その先にどのようなリスクがあるのかを意識することが大切です。特に現代は先行きが不透明で、想定外の事態が起きることも少なくありません。可能な限り、事前にさまざまな角度から調査をしておき、最悪の事態も想定した備えを怠らないようにしましょう。十分な準備ができているという安心感があると、思い切ったチャレンジもしやすくなります。

2)3月の例:「世界気象デー」を活用した例

今日は、世界気象機関が制定した「世界気象デー」です。

昨今、地球環境の悪化を原因とする気候変動のリスクが盛んに論じられています。企業にとっても、気候変動リスクを開示する動きが広がってきており、「対岸の火事」では済まされない問題です。

私たちは、ビジネスパーソンとしても、地球上に住む一人の人間としても、気候変動の問題に関心を持ち、問題の改善のために行動しなければなりません。今や、自分や一社の企業の都合だけで物事を考えていては、立ち行かない時代になってきているのです。

これは、会社経営についても当てはまることです。「我が社の商品が売れるにはどうすればいいか」という発想を抜け出し、「世の中に必要な商品を、我が社はどのようにすれば便利かつ手ごろな価格で供給できるのか」という視点で考えるようになりましょう。そうすれば、結果的に我が社は世の中にとって必要不可欠な存在として認められ、一人ひとりが誇りを持って仕事ができるようになります。それが経営の安定にもつながるのです。

3)5月の例:「東京スカイツリー10周年」を活用した例

皆さんもご存じの東京スカイツリーは、今日で開業10周年を迎えました。東京スカイツリーの高さは634メートルで、2012年に完成したときには、自立式の電波塔としては世界一の高さを実現したことでも話題となりました。

建設に当たっては、地震の多い日本で高さ634メートルのタワーの安全性を確保するために、当時の最先端の技術を駆使し、上空の風の動きや、地下約3キロメートルまでの地層構造の調査をしたといいます。また、五重塔の制振システムなど、日本古来の技術も活かされているそうです。世界一の高さを実現した背景には、建設に携わった人たちの努力があるのです。

実は当初のプロジェクトでは、東京スカイツリーの高さは約610メートルにする予定だったそうです。ところが、中国でも610メートル程度の電波塔を建設する計画が浮上したため、高さ世界一を確実にするために当初の予定を変更したといいます。

皆さんの中には、「2番でもいいじゃない?」と思う人がいるかもしれません。ですが、「世界一」であることによって、今でも東京スカイツリーの高い価値は保たれ、建設に携わった人たちの誇りにもなっているのです。

私たちの会社も、世界一を目指しましょう。もちろん、規模や売り上げでは遠く及びませんが、「社員が幸せを感じている強さ」や「お客さま満足度」などでは「世界一」を目指せます。

4)8月の例:「即席ラーメン記念日」を活用した例

皆さんの中には、即席ラーメンが好きな人も多いでしょう。私も小腹が減ったときについつい食べてしまいますし、非常食としても保管しています。

8月25日は「即席ラーメン記念日」で、日清食品創業者の安藤百福(あんどうももふく)さんが発明した、世界初の即席ラーメンが発売されたことを記念しています。1958年のことですので、今から60年以上前のことです。

安藤さんが即席ラーメンの開発を始めるヒントになったのは、戦後の闇市のラーメン屋台に長蛇の列ができていたのを目にしたことでした。安藤さんは、「人の集まるところには、需要が暗示されている」と考えたそうです。

これは、ビジネスの基本だと思います。今はリアルな世界だけではありませんが、人々の関心があるところには、必ずビジネスチャンスが埋もれているものです。仕事に直接関係のないところでも、仕事に役立つヒントは得られるものです。常に周囲の人たちの関心に興味を持ち、仕事に役立つヒントがないかを探るアンテナを張るように心掛けてみてください。

5)10月の例:「鉄道開業150周年」を活用した例

1872年10月14日に新橋・横浜間(29キロメートル)で、日本初の鉄道が開通しました。まだ明治5年のことで、鉄道の計画自体は明治2年の段階から決定されていたといいます。

廃藩置県が明治4年、廃刀令が明治9年のことですから、「明治維新」の中でも鉄道の開通は非常に早かったといえます。まだ財政的にも安定していない中で、薩摩藩や軍部なども時期尚早と反対して土地を売却しなかったため、海中に堤を築いて線路を敷いたという経緯があります。沿線の住民も、事故への懸念などから反対する声が多かったといいます。

それでも明治政府が鉄道の早期開通を急いだ理由の一つは、多くの人に、目に見える形で新時代の到来を象徴するものを示したかったからだともいわれています。東京から京都まで結んでから開業するという選択肢もあった中で、まずは横浜までを優先して開通させたのも、そうした背景があったようです。幕末の黒船到来で人々が大きな衝撃を受けたように、鉄道の開通で新たな衝撃を与えたかったのかもしれません。結果として、鉄道は日本の近代化の象徴的な存在になりましたし、その後も民間も含めた新線の開設が相次ぎ、産業の発展に大きく貢献することとなりました。

何事も、新しいことに取り組むときには、反対がつきものです。ですが、まずは小さなところからでもいいので、とにかく始めてみましょう。私はそうした取り組みを全面的に応援します。成功事例を目の当たりにすれば、それまで反対していた人の意識も変わってくるはずです。

6)12月の例:「シーラカンスの日」を活用した例

今から70年前の12月20日、アフリカのマダガスカル島沖でシーラカンスが捕獲されました。それ以前にシーラカンスは発見されていたのですが、初めて学術調査が行われたことにちなんで、この日がシーラカンスの日とされています。今日はシーラカンスのことについてお話しします。

シーラカンスは、3億5000万年前の化石とほとんど姿が変わっていないため、「生きた化石」と呼ばれています。6500万年前に絶滅したと思われていましたが、現在でもアフリカやインドネシアなどで生存しています。シーラカンスが絶滅しなかった理由は、深海という安定した環境に生息していたからといわれています。シーラカンスの仲間は深海以外の川などでも生息していたそうですが、そうした種は絶滅してしまいました。

私たちの会社を永続させるということを考えると、安定して生命をつなげられる環境を見つけたシーラカンスには、見習うべき点もあります。しかし、逆の見方をすると、現存するシーラカンスは、他の種に進化しなかった、むしろ「進化できなかった種」だともいえます。

我が社の環境は、景気の影響を受けやすく、競争も激しいので、環境が安定しているとは言えません。シーラカンスのように、深海というブルー・オーシャンを見つけることも大事ですが、レッド・オーシャンで生き残るための進化も重要だと思っています。来年は、今までの我が社のやり方に固執せず、柔軟に変化していく気概を持っていきましょう。

以上(2021年12月)

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画像:photo-ac

人事の超スペシャリストにお聞きする【中小企業の人事のあるべき姿:7つの重要なこと】〜今日から会社の「しわ」を伸ばしましょう!/岡目八目リポート

年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、安田雅彦さん(株式会社 We Are The Peopleの代表取締役)です。

グッチグループジャパン(現ケリングジャパン)やジョンソン・エンド・ジョンソン、ラッシュジャパンなど外資系企業で人事責任者などを歴任されてきた安田さん。人事のスペシャリストとして、メディアでも広くご活躍されています。
安田さんは2021年7月末でラッシュジャパン人事責任者を辞職、株式会社We Are The Peopleを起業され、中小企業の人事などをサポートされています。今回の岡目八目は、そうした安田さんに「中小企業の人事のあるべき姿」についてお伺いした、大変光栄で貴重な内容となりました。中小企業の経営者の皆さまにとって、組織を改革していくご参考になれば幸いです。

1 「中小企業の人事をサポートする」という思い

2021年夏に起業し、中小企業の人事をサポートされている安田さん。安田さんの掲げる人事は、日本企業にありがちな「人を管理する人事」とは根本的に違うもので、ずばり「人事=経営戦略」です。

We Are The People社のWebサイトに掲載されている事業への考え方と想いを示した画像です

(出所:株式会社 We Are The PeopleのWebサイト)

安田さんは起業の理由を次のように教えてくれました。

    今の時代、中小企業にもエンゲージメント、多様性・ダイバーシティ、パーパス経営といった、「いかに企業としての存在意義・存在価値をセットするか」が求められています。こう伝えると、「それは大企業の話ですよね」「安田さん外資系だし」と言われることがよくあります。しかし、規模や外資かどうかは関係ない。要は、「(その企業が)やるかやらないか」であって、これまでの経験や見識は中小企業でも通用すると思っています。

    日本企業はほとんど中小企業で、その中小企業の活性化こそが日本経済の明日につながります。これまでの経験や見識、ノウハウを中小企業の人事サポートに役立てたいという気持ちで起業しました。

安田さんは、起業への思いを、noteにも詳しく記載しておられます。

Hello! 社名は「株式会社 We Are The People」といいます。

安田さんのサポートは、人事制度づくりに留まるものではなく、もっと根本的なものです。後ほどご紹介しますが、「この会社は何のために存在するのか」といったことを、一日がかりで社内会議したりもします。
安田さんに、「中小企業が人事面で心がけること」として、7つの本当に重要なことを教えていただきました。次章から、ご紹介していきます。経営者にとっては耳の痛い内容かもしれませんが、組織を良くするヒントとしてお読みいただければと思います。

2 これまでの歴史に向き合う

安田さんのご支援先には2代目経営者もいます。多くの2代目経営者が抱える悩みは、「自分(経営者)が新しいことをやっていこうとしても、メンバーが付いてきてくれない」というもの。

これに関して安田さんは、「メンバーが付いてきてくれないのには理由がある」と言います。その理由はさまざまですが、特に、

    これまでの成長の歴史に向き合わず、自分(2代目経営者)のつくりたい未来の話ばかりしてしまっている

ことが多いのだそうです。今、企業が存在しているのは、これまでの成長の歴史があるからです。こうした成功のDNAを探し、寄り添うことをおろそかにしてはいけないということです。

3 トップがロールモデルになる

メンバーが付いてこないことに関しては、もう一つ、

    トップがロールモデルになっていない

ことも原因だと指摘する安田さん。「うちは人材育成をもっとしなきゃいけないのに、部長たちは面談やフィードバックを全然やらない」と言う経営者がいるそうですが、逆に「では、社長は部長に面談やフィードバックをしているのですか?」と尋ねると、「いや、そこまでやっていない」と答えるのだそうです。

    「社長がしなかったら部長が課長に面談やフィードバックをするわけがないし、課長が担当者にするわけがない」

当然のことですが、経営者が率先してやることが大事。メンバーが付いてこないときほど、経営者は自身の言動を振り返る必要があるのでしょう。

4 フィードバックは「オン・ザ・ジョブ」が鉄則

人材の成長にはフィードバックが大事で、

    フィードバックは「オン・ザ・ジョブ」、つまり仕事の中で行うこと

がポイントだそうです。
「経営塾のような座学も大事ですが、それだけだと人はなかなか成長できない。
仕事の中で【できているか、できていないか】を伝えて、できていなければ何がどうできていないのかフィードバックして、できていれば褒める。これを愚直に伝え続けていく。シンプルですがとても大事なことです」と安田さん。

5 【OS】は他社でつくらせるものではない

安田さんは、「人事制度は、会社にとっての【OS】です」と面白い表現をしてくださいました。人事制度はOSであり、メンバーに対するメッセージです。

    自分たちの会社のOSを他人がつくれるわけがない。つまり、人事制度をつくるときに人事コンサルに任せきりにしてはいけない。それではメンバーにトップの意図が伝わりません

と安田さんは警鐘を鳴らします。
ただし、人事の専門知識が不足しているなど、経営者だけでは難しい場合は人事コンサルに相談してもいいそうです。ただそうした場合でも、「経営者が経営者自身の言葉で分かるまで、コンサルに何回も説明してもらい、腹に落ちるまで徹底的に話すべき。だって、経営者が分からないのに、メンバーは分かりませんから。絶対に」と安田さんは続けます。

6 メンバー皆で考える。【事例】安田さん流「一日がかりの社内会議」

安田さんのご支援の一環として行われるのが、「一日がかりの社内会議」です。安田さんが重視するのは、

    「この会社って何」という本質を、経営者ではなく、メンバーが話すこと

です。お教えいただいた事例は、下記のような内容でした。

【事例】「一日がかりの社内会議:目的は人事制度をつくること」

安田さんがメンバーに投げかけたのは、次のことです。

  • 人事制度はOS。そもそも、何のためにこの会社があり、どのような価値を提供していきたいのか。そこから考える必要がある
  • 「5年後に10億、10年後に20億つくります」はあくまで数字の結果でしかない。そのときに世の中をどうしていたいか、周りに何と言われたいか

こうしたことをメンバーが自ら発言するだけでも画期的ですが、安田さんの方法はさらに工夫されたものでした。上記のような話をするには信頼関係が大事なので、それを築くところから始めました。その方法は2つで、1つ目は「ハイポイントインタビュー」、2つ目は「年表づくり」です。

1)ハイポイントインタビュー

これは、ペアになったメンバーが、互いに「今の自分に最も影響を与えた幼少期の出来事」を話し、話を聞いた側が相手のその出来事を発表します。一緒に働く仲間のことをもっと知ることが狙いです。

話を聞いた側は、「ああ、こういう人なのだな」と分かりますし、話を聞いてもらった側は、「あ、自分にはこういうことがあったな」と改めて気づきを得ます。
安田さん曰く、このインタビューでは、必ず「だから、あのような発言をしていたのか!」ということがあり、それが大事なのだそうです。

2)年表づくり

これは、大きな模造紙に3つの枠を作り、「社会の歴史」「この会社の歴史」「皆さんの歴史」を書き入れていきます。創業年か経営者が生まれた年から年表を始め、「未来」もつくります。
年表づくりの趣旨は、この会社がどうやって今日まで発展を遂げてきたかということに想いを馳せ、そのとき自分が何をしていたかという「自分の歴史」や「社会の歴史」を重ね合わせていくというものです。

    「歴史的瞬間を皆で語り合うことで、皆の歴史、皆の時間軸が合ってきます。そして、思い入れも強くなっていきます。今まで全く別の時間軸で生きてきたメンバーが、【今日】という同じスタートラインに立つ。そして、【そこから、一緒に未来を考えていこう】となるわけです」

ハイポイントインタビューと年表づくりを午前中に行い、午後から「自分たちの存在意義、価値はなんだろう」を考えます。
信頼関係を築き、企業の存在意義をメンバーで共有する「一日がかりの社内会議」。本当に素晴らしいですね! 実際にこの会議をされた企業さんは「とてもよかった」とのことで、次のような感想が寄せられています。

【参加された方からのご感想(要約)】

  • 実はメンバーが会社のことをどう思っているか不安だったが、セッションを通して、メンバー一人ひとりが成長したいと思っていること、お互いのために何ができるかをすごく考えていることが分かった。
  • 自社のカルチャーや価値観を今どれくらい体現できているかを考える時間があり、そこでメンバー共通で出た課題があった。これから入ってくる人もエネルギー高く働けるように、働き方や組織の仕組みの改善すべきポイントを認識できた。
  • セッションをきっかけに視座が上がった。自分個人としてのパフォーマンスはもちろん、メンバー一人ひとりの成長、会社としてのクオリティ向上のために、チームのために時間を使おうと思うようになった。
  • このセッションを通じて大きな心理変容があった。メンバーを、会社の未来を一緒に作る仲間だと思えるようになった。
  • 他者理解が進んだことで、会社に安心感が生まれたように感じる。この会議の後、実際に全社会議なども雰囲気が明るくなった気がする。
  • 小さなことでもいいから仲間と話したり、仲間のことを知ったりする機会を作ろうと思った。仲間やこれから入ってくるメンバーが、幸せに安心して仕事ができるよう組織としての仕組みや交流が図れる場づくりをしていきたい。
  • 自分自身が、仲間と一緒にこの会社の未来を作っていく当事者なのだと自覚することができた。

ご感想を読んでいると、メンバーの方々がもう何か成長されているように感じます。安田さんが次のように言っておられたのがよく分かります。

    「経営者はすぐ人事制度から入りたがる傾向がありますが、やはりパーパスや価値、存在意義、認識の共有そういったものが根底にあって、それから人事制度を作るべきなのです。その順番は間違えてはいけない」

7 すべての部門がハッピーである

安田さんは「すべての部門がハッピーであることが大事。でも、このことをちゃんと分かっている経営者の方は少ないかもしれません」と言います。

よくあるのは「営業部門は花形」という考え方です。特に営業系(販売会社など)の企業に多いのですが、「とりあえず営業の意見が最優先」「営業が走り回れるようにサポートせよ」「お金を稼ぐ営業が1番大変」という考え方では、

    必ずどこか他の部門(例えばカスタマーサービス、商品管理、営業事務、経理、総務など)にしわ寄せがいってしまう

と言う安田さん。

    「虐げられている部門があっていいわけがない。それを是としている限り、組織全体のエンゲージメントやモチベーションは決して上がりません」

この安田さんの言葉にはドキっとしてしまいます。
「こういう状態だと、あの部門にはしわが寄っているからかわいそう、申し訳ないという観点になってしまい、意外と仕事のクオリティを問わなくなってしまう。罪滅ぼしで良い評価をつけたりするから、今度は次第にその部門に問題があっても誰も指摘できない【モンスター部門】になってしまうのです」と続ける安田さん。こうした組織では、エンゲージメントが上がるはずがありません。「しわ」が寄るのは本当に良くない、今日からでも「しわ」を伸ばす意識が大切です。

8 2種類の1on1を分けて考える

「しわ」を発見する、あるいは伸ばすためにも「1on1」が大事です。そして、1on1についても、安田さんから貴重なアドバイスをいただきました。それは、

    1on1に詰め込みすぎないほうがいい

ということです。

1on1には、

  • 普段の1on1
  • 半期ごとなどに行う業務のパフォーマンスに対する評価や能力開発、キャリアについての1on1

の2種類があると説く安田さん。
「普段」のほうは、文字通り、日ごろ行うもので、いわば「今どんな感じ?」を聞くイメージです。モチベーションやエンゲージメントの確認、信頼関係のメンテナンス、ちょっとした業務の確認などです。一方、「半期ごと」のほうは、評価やキャリアの話といった特別感がある内容です。
内容も意味合いも違う2種類の1on1は分けて考えたほうがよく、両方の要素を詰め込もうとするとうまくいきません。

例えば、「普段は全く1対1の会話がないのに、半期に一度、急に1on1をして、今幸せか? と聞かれても聞かれたほうは困惑しますよね。普段から仕事以外の会話をきちんとする、日ごろの人間関係・信頼関係をどう作るかがパフォーマンスやエンゲージメントに影響していくのです」と安田さんは言います。

9 まとめ:安田さんが語る「中小企業が進化するための条件」

中小企業には、「部長・課長といった管理職が育たないから、直接、経営者がメンバーに指示やフィードバックする」といった課題があります。この点について安田さんにお聞きしてみました。

    「直属の上司がいるのに、その人を飛び越えてフィードバックしないほうがいい。たまに、経営者が思いつきで全メンバーと1on1するというのも、直属の上司がいるのであればやめたほうがいいと思います。はがゆくても直属の上司にやらせる。そうしないと結局、管理職が育ちません」

そして安田さんは最後に、「経営者は、中間管理職にしっかりと権限を与え、責任も取らせる。それが大事」ということも教えてくれました。

    「中小企業だとしても、その部門の人に採用の責任を負わせる。あなたが責任を持つなら採用していいですよ、と。財務部門なら財務部門の部長が採用責任者になる。日本の会社では、人事が良いと思う人材を採用して、中間管理職に教育せよと言って押し付ける。直属の上司(中間管理職)からしてみれば、自分の責任のない知らないところで人事が採用してきた人を、本気で育てる気になんかならないと思います」

中小企業が進化することが、日本経済の明日につながる。安田さん、大変勉強になりました、有り難うございます!

以上(2022年1月作成)

2022年度税制改正大綱のポイント整理 ~住宅ローン減税と賃上げ税制の改正が目玉~

(要旨)

  • 2022年度の税制改正大綱が与党から示された。大所は①住宅ローン減税の見直しと②賃上げ減税の見直しだ。
  • 住宅ローン減税の見直しでは、控除率引き下げ・対象となるローン残高上限の引き下げが家計負担増要因となる一方で、控除期間の延長、優遇対象となる住宅の種類の拡大が行われている。新たに優遇対象となる「省エネ基準適合住宅」は戸建てで9割、共同住宅で7割(新築分)が基準を満たしており、多くの住宅が優遇を受けられるとみられる。また、ローン残高が少ない、支払い税額が少ない世帯では減税メリットをフルに受けられないため、控除率引き下げのデメリットよりも控除期間延長のメリットが大きくなる。改正後のほうが減税額が多くなる世帯も相応にいるだろう。
  • 賃上げ減税は大企業では給与増額分の最大30%、中小企業では最大40%の税額控除を受けることができるよう拡充される。ただ、一時的な減税が企業にとっては固定費にあたる賃金上昇をどこまで促すのかは不透明。
  • 今後の課題として、働き方の中立化のための所得控除制度の見直し、資産移転時期の中立化のための資産課税の見直しのほか、金融所得課税における「1億円の壁」の見直しなどが挙げられている。筆者の注目は資産課税の見直し。若年層への資産移転・生前贈与促進と格差固定化防止という2つの論点について、バランスの取れた議論が求められている。

2022年度税制改正大綱が示される、大所は住宅ローン減税改正&賃上げ減税拡充

12月24日に令和4年度税制改正大綱が閣議決定された。今回の税制改正の大所は①住宅ローン減税の見直しと②賃上げ税制の拡充である。①は昨年度大綱で改正の方向が示されていたもので、金利低下のもとで住宅ローンの金利負担分を減税額が上回る、いわゆる「逆ざや」が会計検査院に問題視されたことを発端とするものだ。減税額の上限を金利負担分とするキャップ制の導入も議論されたが、事務の煩雑さ等の観点から一律で控除率を引き下げる形に落ち着いた。キャップ制は上限額の範囲内で高めのローン金利を選択する誘因にもなってしまう点も問題含みであった1。②は賃上げ税制の拡充だ。要件を満たすことで、大企業で給与増額分の最大30%、中小企業で40%の税額控除を受けられるようにし、企業の従業員への賃金還元を後押しする。

このほか、企業によるスタートアップ出資を促すオープンイノベーション税制の延長、住宅資金の贈与税非課税制度の縮小・延長等の改正が示されている。富裕層に保有資産の報告を求める財産債務調書制度は、所得が少ない場合でも資産要件のみで提出を求め、提出義務者の範囲が広げられる。2023年10月から開始される予定のインボイス制度の円滑な移行に向けた対応等も大綱で示されている。

2022年度税制改正大綱の主な内容


1 例えば、キャップ制を設けると変動金利:0.5%、固定金利:1.0%の場合、控除率が▲0.5%、▲1.0%となり、実質負担は0.0%、0.0%で同等となる。金利上昇のリスクを抑えられる固定金利を選択する、といったようにインセンティブにゆがみが発生しうる。

住宅ローン減税改正はプラスになる世帯も、ポイントは控除期間延長と省エネ住宅基準

今回の住宅ローン減税の改正によって控除額算定にあたってローン残高に乗じる控除率が引き下げられる(1%→0.7%)ほか、対象となるローン残高の上限が引き下げられている。また、減税を受けるための所得要件が3000万円→2000万円に引き下げられており、これらの点は増税(減税縮小)要因だ。一方で、ローン控除の期間は10年→13年に延長されているほか、残高上限の優遇が受けられる住宅の種類が増えている。従来は優遇を受けられる長期認定優良住宅とその他の一般住宅の括りのみであったが、ZEH(ネットゼロエネルギーハウス)と省エネ住宅の2つが追加される。認定基準の厳しい順に長期認定優良住宅>ZEH>省エネ住宅となり、控除上限もこの順に大きい。

資料2では改正内容を踏まえて通算の最大控除額を計算、その変化をまとめた。これらの認定基準に該当しない一般住宅については最大減税額が縮小されるなど基本的に増税(減税縮小)方向での改正となる一方、環境配慮型住宅に大きめの控除が導入されている。このうち、省エネ住宅はカバー範囲が広く、2019年度の新築住宅に占める割合は戸建てで9割弱、共同住宅で7割程度に上る(資料3)。新築でみると現行制度の一般住宅の最大控除額は400万円だが、新制度の省エネ基準を満たした場合の最大控除額は364万円と減税額の縮小度合いはさほどドラスティックなものではない。また、①ローン残高が少ない、②対象となる所得・住民税が控除率1%分に満たない、ために最大控除額まで恩恵をフルに受けられていない世帯にとっては、控除率が引き下げのマイナス影響は小さい一方、控除期間延長の恩恵が大きくなる。今回の改正がプラスになる世帯も相応にいるものと考えられる。

ただし、2024・25年は新築住宅についてはいずれも縮小方向での改正が予定されており、こちらは明らかな負担増の要因だ。基本的には住宅ローン減税制度は縮小方向が志向されていることは確かであろう。将来的には再改正を加えたうえで延長されることも想定されるが、その際には省エネ・脱炭素基準の厳格化等を通じて、より環境性能の高い住宅の取得を促すような形が考えられる2。同様のスキームは自動車におけるエコカー減税でも用いられており、住宅ローン減税も似た形になる可能性があろう。


2 なお、今回の改正では既に、2024年以降に建築確認をした新築住宅については、省エネ基準適合が住宅ローン減税適用の要件とすることが示されている。

今後の住宅ローン減税制度 控除率・控除期間・所得要件

今後の住宅ローン減税制度 制度適用年・住宅種類ごとの最大控除額

新築住宅に占める環境基準等の認定を受けた住宅の割合

賃上げ減税を拡充、どこまで利用が広がるかは不透明

賃上げ減税は給与増額率などを要件に、より多くの従業員還元をした場合には減税額が追加される仕組みとなっていたが、今回の改正でこの追加減税部分が拡充されることになった。より大幅な賃上げに対してインセンティブを効かせた形だ。内容を以下でまとめた。要件を満たせば大企業では給与増額分の30%、中小企業では40%の税額控除を受けることができる。また、大企業の要件を「新規雇用者支給額の増加」から「継続雇用者支給額の増加」に切り替える。コロナ禍による経済環境の悪化を受けて「新規雇用」を重視した内容としていたが、継続雇用者支給額=賃金引上げに重心を移す。

ただ効果は不透明だ。基本的にこれまでの賃上げ減税が目に見えた効果をあげられていない理由は、一時的な減税と固定費である賃金の引き上げは時間軸が異なっているからだと考えられる。目先は減税メリットを受けることができても、将来減税がなくなった際に賃金を引き下げることは難しい。政府・与党の議論でもなされている通り、税制のみで賃上げを促進することには限界もあろう。

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積み上がる宿題

今後の検討事項は山積みである。大綱には今後の課題として働き方の中立化を目指した所得控除制度の見直し、相続税と贈与税の資産課税の中立化のほか、昨今岸田首相の発言も多かった金融所得課税への対応などが明記されている(資料5)。

筆者が注目しているのは資産課税の資産移転時期の中立化に関する議論だ。長年検討課題として挙げられ、議論が続けられている。高齢化に伴った老老相続の増加、高い贈与税のために若年層への資産移転が進まない問題が念頭に置かれているが、昨今の税制調査会の議事録等からは資産課税の強化や生前贈与制度の非課税枠縮小など「格差固定化防止」により比重が置かれている印象を受ける。日本の相続税の最高税率はすでに海外と比べても高い水準にあるほか、国際比較では日本の資産格差は小さい部類に入る(資料6)。資産課税の強化は節税のためのアパート投資などにつながり、それが空き家問題に拍車をかけるといった非効率な支出も招いている。格差固定化防止は重要な課題ではあるが、それぞれがもたらす影響を幅広くとらえた丁寧な議論が必要だろう。

大綱で明示された今後の課題

上位10%の人が持つ資産シェア

以上(2022年1月)
(執筆 第一生命経済研究所 経済調査部)

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「ゾーン30」「ゾーン30プラス」(2022/01号)【交通安全ニュース】

活用する機会の例

  • 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
  • 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
  • マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など

警察庁の統計によると、交通事故における歩行者や自転車の死者数の約半数は、自宅付近で発生した事故によるものです。また歩行者と車両の事故では、時速30kmを超えると歩行者の致死率が高くなります。

このため生活道路の交通安全対策として「ゾーン30」「ゾーン30プラス」が進められています。これら生活道路の交通安全対策を理解し、歩行者や自転車を保護する運転を心がけましょう!

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※出典:国土交通省ウェブサイト、「ゾーン30プラス」に関する2021年8月26日報道発表の別添資料を当社加工
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001419903.pdf

1.「ゾーン30」とは

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  • 「ゾーン30」とは、生活道路における歩行者や自転車の安全な通行を確保するため、生活道路を含む定められたエリアで最高速度が30km/hの速度規制を実施するエリアです。
  • エリア内では走行速度を規制するだけでなく、抜け道としての通行を抑制・排除する交通安全対策が行われています。
  • スクールゾーン(時間通行禁止)と組み合わせることもあります。

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2.「ゾーン30プラス」とは

「ゾーン30プラス」とは、交通規制(ゾーン30)に物理的デバイスを加え、歩行者や自転車を守ろうとしているエリアです。

警察と道路管理者が緊密に連携し、地域住民等の合意形成を図りながら、生活道路における人優先の安全・安心な通行空間の整備・拡充を順次進めています。

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※出典:国土交通省ウェブサイト、「ゾーン30プラス」に関する2021年8月26日報道発表の別添資料を当社加工(https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001419903.pdf

「ゾーン30」や「ゾーン30プラス」は、歩行者や自転車にとって危険があり、運転者から見ても、子供の飛び出しなど予測できないような行動により、重大な交通事故につながりやすい場所に設けられています。

ドライバーの皆さんは、「ゾーン30」や「ゾーン30プラス」の交通安全対策を理解し、歩行者や自転車の安全に配慮した思いやりの運転を心がけましょう。

以上(2022年1月)

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【朝礼】2022年、皆さんにやってほしいたった一つのこと

あけましておめでとうございます! さて、迎えた2022年に、私は皆さん一人ひとりに、ぜひやってほしいことがあります。それは、

「私はこれを一年間続けた」と言えるものをつくる

ことです。分かりやすい例えで言うと、毎朝ジョギングをする、週に1度は本を読む、月に1度は異業種の人と交流するなどです。あれもこれもと欲張らず、何か一つでいいのですが、1点だけ条件があります。「続けることが、自分のこれからにとってプラスになる」と、皆さん自身がワクワクできるものにしてください。

私が皆さんに、この「一年間続けたプラスになるもの」をつくることをお願いするのには、2つ理由があります。まず1つ目は、よく「継続は力なり」と言いますが、「継続は自信になる」からです。2022年を振り返ったとき、一年間続けたものがあれば、それは皆さん一人ひとりに自信や誇りをもたらしてくれるでしょう。何かあったときに、よりどころになるかもしれません。

2つ目の理由は、「自分の未来を考える」という視点を持ってほしいからです。この一年間で続けるプラスのことは、例えば健康に良いかもしれませんし、新しい知識や気付きを与えてくれるかもしれません。きっと、皆さんのこれからの人生をより豊かにしてくれます。つまり、費やした一年間の時間と労力は、未来の自分に向けての投資、贈り物ともいえるでしょう。

忙しいときというのは、どうしても目の前の仕事に追われて近視眼的になりがちです。皆さんも恐らくそうだと思います。ですので、「プラスになるものを一年間続ける」ことを通じて、少しでも未来を考える機会をつくってほしいのです。「物事を長期スパンで考えろ」なんて難しいことは言いません。「自分の未来にとってプラスになりそうなことを、取りあえず一年間やってみる」。これなら実践できそうな気がしませんか?

もし既に何か続けていることがある人は、それを変わらず続けてもいいですし、内容をバージョンアップしてもいいでしょう。

ちなみに私は、週に1度は、自分と違う若い世代かつ社外の人の話を聞き、学ばせていただくことを続けると決めています。私は50代ですので、20代で起業している人などを想定しています。刺激になり、私自身をバージョンアップできそうだからです。ただし、そういう人たちと話すには、まずその機会を自分でつくりにいかなければなりませんし、知識や柔軟な発想、年齢などの属性にとらわれないフラットな思考も求められます。

さて、皆さんは何を一年間続けるでしょうか。イタリアでは、「100年先ではまだ短い。300年先においしいワインにすることを考えてワインづくりをしている」と聞いたことがあります。これはなかなか持てない視点です。300年とは言わないまでも、今年は皆さんも、未来を考える視点を持って前に進みましょう!

以上(2022年1月)

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【朝礼】今年は「応援される人」になろう

新しい年に入り、皆さんは気持ちも新たに仕事をしていることでしょう。これから先、皆さんがさらに成長していくために、私から一つ課題を出します。それは、皆さんが「応援される人」になることです。今でも家族や友人、同僚は皆さんを応援しているでしょう。私が求めるのは、社外の人、それも自分よりも年上や年下の人から応援される人になるということです。なぜなら、応援される人には、それだけの魅力があり、それこそがビジネスパーソンとして成長するための大切な要素だといえるからです。

私には、50歳になってから畑違いの部門に異動になった知人がいます。そこはテクノロジーを使った新規事業の開発部門で、それまで彼が所属していた管理部門とは業務の性質が全く違います。右も左も分からずに困り果てた彼は、30歳近くも年が離れた若手に頭を下げて教えを請い、一生懸命に勉強しました。

それだけではなく、誰よりも積極的に社内外の人と交流し、勉強会にも参加しました。そうした活動を継続すると、知識が少しずつ蓄えられていき、人脈も広がっていきます。そして、ついに合同プロジェクトを立ち上げ、成功させることができたのです。異動から7年目の出来事でした。私が成功の要因を尋ねると、彼は笑顔で言いました。「社内外を問わず、たくさんの人が私に力を貸してくれたからこそ成功することができた。私一人では何もできなかった。周囲に恵まれたのだ」

皆さんは、どのような人なら応援したいと思うでしょうか。私は、応援される人には4つの要素があると考えています。

1つ目は、自分が成し遂げるべきことを知り、実際にそれを成し遂げるという強い信念を持っていることです。私の知人は畑違いの部門に異動になっても“腐る”ことはありませんでした。新規事業を立ち上げることを目標とし、それを成し遂げるために困難に立ち向かったのです。

2つ目は、継続した努力ができることです。彼は新規事業を成功させるまでに、7年もの間、諦めずに取り組み続けました。これは「私はこの仕事をしている」と胸を張って他人に言えるレベルであり、その人を象徴する魅力となります。

3つ目は、年齢に関係なく、他人の言葉に素直に耳を傾けられる柔軟さです。50歳ともなればそれなりに経験があるものですが、彼はそれに固執せず、若手の意見も十分に聞きました。

4つ目は、成功してもおごらず、他人への感謝の気持ちを忘れないことです。一番苦労したのは彼でしょう。しかし彼は、つらいときでも笑顔を絶やさず感謝の気持ちを伝え、むしろ率先して周囲の人を応援していたのです。

どうでしょう。応援される人に共通する4つの要素のうち、皆さんは幾つ当てはまりましたか。応援される立場になれば、大きな力と可能性を手に入れることができます。皆さん、今日から応援される人を目指して活動してください。

以上(2022年1月)

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画像:Mariko Mitsuda

伊藤博文/経営のヒントとなる言葉

「人は人に使われることを知って、而(しか)して後に人を使うようにならなければならぬ」(*)

出所:「伊藤博文直話 暗殺直前まで語り下ろした幕末明治回顧録」(新人物往来社)

冒頭の言葉は、

  • 「たとえ誰かの下でどのような仕事を行っているときであっても、常に全力を尽くさなくてはならない。そうすれば、いつか自分が人の上に立ったときに、その経験が必ず役に立つ」

ということを表しています。

1853年、米国から黒船が来航し、幕府に開国を迫りました。これに対する幕府の弱腰の対応によって国内では攘夷(外国人や外国文化を排斥すること)運動が盛んになり、幕府に対する反発が強まりました。

こうした中、伊藤氏は、吉田松陰(よしだしょういん)が教える松下村塾(しょうかそんじゅく)で勉学に励み、後に高杉晋作(たかすぎしんさく)をはじめとする塾生たちとともに攘夷運動に加わることとなります。しかし、伊藤氏は単純な攘夷主義者ではなく、「西洋の技術を取り入れて日本の軍事力を強化し、日本の独立を守る」という考えを持っていました。そのため、1863年に同志の井上馨(いのうえかおる)氏たちとともに、海外の情勢を探り、技術を学ぶために英国へ留学しました。そして、産業や工業、軍事などの西洋文明を目の当たりにして、「日本は開国して商工業を発展させ、国力を高めなくてはならない」という考えを強めました。

その後、長州藩は1864年に禁門の変(蛤御門(はまぐりごもん)の変)で敗北して朝敵となり、第一次長州征討を受けて幕府に降伏しました。しかし、幕府への降伏に反対する高杉晋作がわずかな人数で決起し、たちどころに藩内の保守勢力を一掃して倒幕を目指す政権を立ち上げました。この際、伊藤氏は高杉晋作の命を受け、藩内の各方面に対して粘り強く交渉を重ねました。

その後、1866年の第二次長州征討では、幕府軍は長州軍に大敗を喫しました。このことにより、幕府の権威は大きく失墜し、1867年の大政奉還によって江戸幕府は終焉(しゅうえん)を迎えました。そして、王政復古の大号令によって明治政府が成立し、以降、日本は近代国家としての道を歩み始めることとなります。

伊藤氏は、明治新政府において大久保利通(おおくぼとしみち)氏や木戸孝允(きどたかよし)氏などの薩長閥の長を支えて活躍しました。その後、「明治十四年の政変」で大隈重信(おおくましげのぶ)氏が失脚した後は、政府において中心的な役割を担うこととなり、1885年に内閣制度が設置されると、初代内閣総理大臣に就任しました。

こうして、伊藤氏は、最終的には内閣総理大臣という、多くの人の上に立つ立場となりました。伊藤氏は、仕事ということについて次のように述べています。

「およそ人は、その従事するところのことに忠実ならざるべからず」(*)
(人間は、自分が就く仕事を忠実に行わなくてはならない)

伊藤氏は、自身が人の下で働く際には、忠実にそれを行い、ときには命がけで取り組みました。こうした経験が、後に人の上に立つ立場になった際に十分に生きることとなりました。どのような仕事であっても、必ず後の自分自身にとって役に立ちます。そうした仕事の中にやりがいを見つけ出すことこそが、人の上に立つことを志す上で重要となるのです。

【参考文献】
本稿は、注記の各種参考文献などを参考に作成しています。本稿で記載している内容は作成および更新時点で明らかになっている情報を基にしており、将来にわたって内容の不変性や妥当性を担保するものではありません。また、本文中では内容に即した肩書を使用しています。加えて、経歴についても、代表的と思われるもののみを記載し、全てを網羅したものではありません。

【経歴】
いとうひろぶみ(1841〜1909)。周防国(現山口県)生まれ。吉田松陰の松下村塾で学ぶ。高杉晋作や久坂玄瑞(くさかげんずい)などとともに倒幕運動に参加するなど、明治維新の立役者として大きな役割を果たす。1885年、初代内閣総理大臣就任。

【参考文献】
(*)「伊藤博文直話 暗殺直前まで語り下ろした幕末明治回顧録」
(新人物往来社(編)、新人物往来社、2010年4月)

以上(2021年10月)

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【朝礼】来年は「任され、任せる人」になります

早いもので、今年もあとわずかで終わりです。せっかくなので、けさはこの場を借りて、私の1年間の仕事を振り返ってみたいと思います。

いきなりネガティブな出だしで申し訳ないのですが、私が今年を振り返って最初に出てくる感想は「しんどかった」です。私たちのチームにとってこの1年間は、昨年から始まったリモートワークにも慣れ、いよいよ新しいサービスに本腰を入れていこうというタイミングでした。しかし、同じタイミングでメンバーの離職が続き、少ない人数で仕事を回すことを余儀なくされました。

「この難局を乗り越えるには、今まで以上にチームが結束しなければならない」。そう思って私が意識的に行ったことは、仕事が多そうなメンバーに自分から声を掛け、細かい業務を引き取ることでした。積極的にサポートに入ることでチーム内の仕事はスムーズに回り、サポートに入った相手からは感謝され、距離感も一層近くなりました。

しかし、やがて問題が起きました。私自身の本来の仕事が、今までよりも高いレベルを求められるようになってきたのです。上司から求められるレベルをなかなかクリアできず、しかも他のメンバーへのサポートは継続して行っていたので、私が仕事に割く時間は増え、反対にプライベートに割ける時間は少なくなっていきました。そのため、イライラすることが増え、せっかく距離感が近くなった他のメンバーに対しても、話しかけにくい雰囲気をつくってしまうようになりました。

しかし先日、見かねた上司が、私を食事に誘って話を聞いてくれました。私がイライラしている理由を聞いた上司は、こう言いました。「他のメンバーの仕事を積極的に手伝ってくれることには感謝している。だが、君はもう新入社員ではなく中堅社員だ。仕事を任されるだけでなく、任せることもできるようにならなければいけないよ」

私はハッとしました。私はこれまで「チームの人数が少ないから、きっと同僚や後輩も忙しいに違いない」と、彼らに仕事を振ることをせず、自分1人でこなすことばかりを考えていました。しかし、上司との会話の中でそれが誤りであることを知りました。同僚や後輩は忙しいものの、チームのサポートに入れないほどの仕事量ではありませんでした。それどころか、私が1人で仕事を引き取ることで、私自身の本来の仕事が遅れ、それを確認する上司に迷惑が掛かっていたのです。私はチームを気遣っているようで、実はチームのことが全く見えていませんでした。

ですから、来年は、仕事が多くて困っているメンバーがいたら、単に自分が引き取るのではなく、同僚や後輩も含め、誰がサポート役として適任なのかを考えられる社員になります。それには、メンバーが抱えている仕事の内容や量を正確に把握することが大前提になります。私は来年、皆さんの仕事を注意深く観察していきます。そして、中堅社員としてレベルを1段階上げ、仕事を「任され、任せる人」になります。

以上(2021年12月)

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18分で社員のアイデアが108も集まるすごい会議法! 全員が当事者になる「BBHメソッド」

書いてあること

  • 主な読者:現状の手詰まりの状態を打破したい経営者
  • 課題:現状を打破できるすごいアイデアが思いつかない
  • 解決策:発想・収束・評価までを60分で実施できるBBHメソッドでアイデアを生み出す

1 使えるアイデアは「300分の1」。だからこそスピード重視を

現代のビジネスではスピードが重視され、短時間で大量のアイデアを出すことが求められます。私は「300分の1法則」と呼んでいますが、

アイデアを300出しても、そのうちのせいぜい1つくらいしか世の中では通じない

ということです。ですから、本当にすごいアイデアを出したいのなら、衆知を集めて大量のアイデアを出さなければなりません。

そこで、この記事で紹介するのが、「BBHメソッド」です。BBHメソッドは、

アイデアの発想・収束・評価を、わずか60分で実施する方法

です。具体的には、次の3つの技法を活用します。

  • 発想:アイデアを出す「ブレインライティング(BW)」
  • 収束:発想をまとめる「ブロック法(BL)」
  • 評価:優秀なアイデアを選ぶ「持ち点法(Holding Point Method、HP)」

BBHメソッドは、3つの技法の頭文字をとって私がネーミングした方法です。わずか60分で実施できる優れものですので、ぜひあなたの会社でもご活用ください。

2 ブレインライティング(BW)は沈黙のスピード発想法

ここでは、私がブレインライティングを改良した「カードブレインライティング法(以下「BW」)」を紹介します。従来のブレインライティングでは、アイデアを整理し分類する際に、アイデアをカードに再度転記しなければなりませんでした。そこで、図表1のようなBWシートを考えました。アイデアをカードに記入すれば自由に動かせるので、再度転記する必要がありません。

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1)事前の準備

1.テーマを決める

まずテーマを決めます。テーマは、できるだけ具体的なものにします。

2.メンバーを選ぶ

テーマに関連のない人でも、解決力のある人は積極的にメンバーに加えましょう。メンバー数は6人が原則ですが、BWは何百人でも実施できます。

3.リーダーを決める

リーダーを1人選びます。リーダーの役割は、進行と時間チェックです。

4.机を四角型にする

机を2卓付けて四角型にし、全員がお互いの顔が見えるように座ります。

5.各メンバーにBWシートの材料を渡す

A4用紙1枚と、黄色の付箋紙(2.5㎝×7.5㎝、以下「カード」)を20枚渡します。各メンバーは、図表1のように配られたA4用紙を横長にし、最上部にテーマを書き、下にカードを貼ります。これがBWシートです。

2)リーダーの説明

ここで紹介している内容ですので、省略します。

3)会議の本番(各ラウンドを3分で実施する例)

1.リーダーがタイマーを3分にセットする

各メンバーはBWシート(図表1)を用意します。

2.第1ラウンド

各メンバーはBWシートの1列目に3つアイデアを記入します。基本的には文章にして記入し、主語・述語を入れるようにします。

3.BWシートを渡す

3分たったら各メンバーはBWシートを左隣の人に渡します。3つ書けなくても、時間になったら渡さなければなりません。

4.第2ラウンド

第2ラウンドも3分です。渡されたBWシートの2列目に自分のアイデアを記入します。1列目のアイデアと無関係なものでも、1列目をヒントに考えても構いません。ただし、1列目のアイデアと全く同じものはいけません。

5.BWシートを渡す

第2ラウンドが終了したら、速やかにシートを左隣の人に渡します。

6.第3ラウンドから第6ラウンドまで

第3ラウンド以降は、同様の作業を繰り返します。もし、時間内に3つアイデアを記入し、手元シートで上のほうに空欄があれば、そこにもアイデアを記入します。

BWはこのように進めていきます。1ラウンドが3分で6ラウンドですから、計18分。こんな短時間でも全員が全欄を記入すれば、6人×3アイデア×6ラウンド=108アイデア。たった18分で108ものアイデアが出る技法です。

3 BWのカードを一挙にまとめるブロック法(BL)

次は、BWをスピーディーにまとめる技法である「ブロック法(以下「BL」)」を活用します。これは、「KJ法」からヒントを得て私が考案した方法です。

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1)事前の準備

1.メンバーとリーダーを決める

メンバーとリーダーは、BWを実施したときと同じにします。

2.項目名を記入するカードを用意する

机はBWのときと同様に四角型にし、中央にA3用紙5枚を重ならないように敷きます。続いて項目名を記入するためのピンク色のカードを30枚用意します。

3.BWシートを配布する

各メンバーに、本人がアイデアを記載していないBWシートと、B4用紙1枚を渡します。

2)リーダーの説明

ここで紹介している内容ですので、省略します。

3)会議の本番

1.内容が似たアイデアを集めてカード群をつくる

各メンバーは、手元のBWシートに貼られたカードの中から、内容が似たもの同士を集めてカード群を幾つかつくり、手持ちのB4用紙に貼ります。ただし、1つのカード群のカードは5枚以内とします。

2.カード群の1つを中央のA3用紙に貼る

リーダーの右隣の人が、自分がまとめたカード群の中から1つを選んで読み上げ、机上の中央に敷いたA3用紙に貼ります。

3.他のメンバーが似た内容のカードを加える

出されたカード群に内容が似たカードを持っているメンバーは、そのカードを机上の中央のA3用紙に貼ったカード群に加えます。

4.カード群の項目名を付ける

メンバー全員でカード群の項目名(グループ名)を考え、ピンク色のカードに書いて貼ります。

5.次のメンバーがカード群の1つを中央のA3用紙に貼る

2番目の人が手持ちカード群の中から1つ選んで読み上げ、机上の中央に敷いたA3用紙に貼ります。以降、1回目と同様に他のメンバーが内容の似たカードを加え、項目名を考えます。

その後も同じ手順を繰り返し、全てカードを出しきるまで続けます。その際の注意点は、次の3点です。

  • まとめきれないカードは、「その他」としてまとめます。
  • 新たに思いついたアイデアがあれば、黄色のカードに記入して出します。
  • カード群のカードが多すぎるとまとまりがなくなるので、基本的に1群のカード数は10枚以内とします。

4 優秀なアイデアを一挙に評価する持ち点法(HP)

最後は、アイデアを評価する技法である「持ち点法(以下「HP」)」を活用します。通常、評価は話し合いで行うことが多いのですが、評価対象が何百もあると、とても時間がかかってしまいます。そこで私は、評価者全員が同じ持ち点を持ち、平等に評価するHPを考えました。HPなら、全員が同じ持ち点を一斉に配分するので、全員が平等に評価でき、ムダな討議時間が減ります。

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1)事前の準備

特にありません。BLから引き続いて行います。

2)リーダーの説明

ここで紹介している内容ですので、省略します。

3)会議の本番

1.評価するカードに点数を記入する

各メンバーがそれぞれ3つのアイデアに投票する場合、各メンバーは全カードの中からカードを選び、カードに1位なら3(3点)、2位なら2(2点)と数字を記入します。

2.カードに合計得点を記入する

全員の記入が終了したら、各カードに赤字でそのカードの合計得点を記入します。

3.得点が入ったカードだけ貼り出す

得点が入ったカードだけ、他の用紙に貼り出します。

4.話し合いで優秀なアイデアを選ぶ

合計得点の高いアイデアを中心に、全メンバーで話し合って優秀なアイデアを選びます。

5 BBHメソッドは簡単でスピーディー。ぜひご活用ください

アイデア会議をこのBBHメソッドで実施すれば、60分(BWに20分、BLに20分、HPに10分、アイデア選択に10分)で完了することが可能です。

私が代表を務める株式会社創造開発研究所では、ネーミングや商品企画の会議でこのBBHメソッドをよく使います。ネーミングの発想では500ものアイデアを出すことも珍しくありません。200くらいの発想数なら、BBHメソッドを活用し、3時間程度で実施することも可能です。

BW自体は、ドイツのホリゲル(Holiger)氏が開発したアイデア会議の技法です。ホリゲル氏はドイツの形態分析法の研究者で、経営コンサルタントでもあります。アイデア会議の代表技法である「ブレインストーミング」の欠点である、発言する人と発言しない人とが極端に分かれ、沈黙して考えることができないことを改良して、BWを考案しました。日本人には、「人前で積極的に意見を言うのが得意ではない」という人が多いので、このBWはとても日本人に向いた会議法だと思います。

まとめにはKJ法がよく使われますが、KJ法はメンバー全員の話し合いによって全カードをまとめる作業を行うので、大変時間がかかります。しかし、BLならまとめる作業を分担して行うので、大幅に時間が短縮されます。そしてHPも時間短縮が可能な評価法です。

ぜひ、皆さまの会社でも、さまざまな場面でこのBBHメソッドを活用してみてください。

以上(2021年12月)
(執筆 株式会社創造開発研究所代表 高橋誠)

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