【中小企業のためのM&A】税務デューディリジェンスの調査ポイント

書いてあること

  • 主な読者:対象会社(売り手)の税務上のリスクを把握したい買い手の経営者
  • 課題:対象会社の税務上のリスクを把握したいが、どのようにすればよいのか分からない
  • 解決策:税務デューディリジェンスで、対象会社の税務上のリスクを把握する

1 なぜ、税務デューディリジェンスが必要なのか

M&Aにおいて、上場会社等を中心に税務デューディリジェンス(以下「税務DD」といいます)は頻繁に実施されます。しかし、中小企業同士のM&Aにおいて税務DDを実施するケースは極めて少なく、税務DDというものを知らない中小企業の経営者も多くいらっしゃると思います。

DDの分野は幾つかありますが、この記事では「税務DD」を取り上げます。税務DDの目的は、

将来の税務調査における税務上のリスクを把握する

ことです。例えば買い手は、税務DDによって、買収後に対象会社に税務調査が入り、多額の追徴課税(追加の課税や延滞税・重加算税などの罰金課税)の指摘を受ける事態を事前に把握することができます。

なお、税務DDの目的として、税務上のリスクの把握以外にも、買収スキームの検討などがありますが、この記事では、税務上のリスクの把握に絞って説明します。

2 税務DDを実施したほうがよい3つのケース

中小企業同士、特に小規模なオーナー企業同士のM&Aにおいては、税務DDを実施しているケースはほとんどありませんが、大切なのは、どういったM&Aにおいて税務DDが必要となるのかです。税務DDを実施したほうがよいM&Aとして、次の3つのケースがあります。

1)株式譲渡によるM&Aを検討している

M&Aのスキームには、株式譲渡、事業譲渡、合併、会社分割などがあります。中小企業同士のM&Aでは、株式譲渡を選択することが多いです。株式譲渡とは、

売り手が保有する対象会社の株式を買い手に譲渡する方法(買い手は対象会社の株式を取得する方法)

です。

株式譲渡の場合、株式の取得を通じて会社自体を買収することになるので、

対象会社の税務上のリスクは対象会社が抱えたままであり、リスクを切り離すことはできない

という特徴があります。そのため、税務DDの実施を検討します。

なお、事業譲渡の場合、税務上のリスクを切り離すことが可能です。事業譲渡とは、

対象会社が運営している事業の一部を、買い手が買収する方法

です。会社自体を買収するわけではないので、税務上のリスクは承継されず、税務DDは実施しないことが多いです。当初は株式譲渡を考えていたものの、税務DDを実施した結果、リスクが高いと判断した場合、売り手と交渉して事業譲渡に変更することもあります。

2)対象会社が特殊な取引などを行っている

対象会社が、次に挙げるような特殊な取引などを行っている場合、税務DDの実施を検討します。

  • 過去にM&Aを行っている
  • 輸出入など海外取引を行っている
  • 多額の非経常的取引を行っている(例:土地や建物の売却などにより、多額の特別損益が計上されている場合など)
  • 売り手が対象会社を含めて複数のグループ会社を抱えている

上記の場合、多額の追徴課税が発生するなどの恐れがあります。また、一般的な取引ではないので、税務処理を間違えていることもあります。

3)対象会社に顧問税理士がいない、長年税務調査を受けていない

それほど多くありませんが、対象会社に顧問税理士がいない場合や、長年税務調査を受けていない場合には、税務DDの実施を検討します。一般的に、法人に対する税務調査は3~5年ごとに実施されます。長年税務調査を受けていない場合、近い将来、税務調査が実施されて、税務上のリスクが顕在化する可能性は、他のリスク(法務、労務など)よりも高いと考えられます。

3 税務DDの進め方

税務DDでは、主に次の3つのことが実施されます。

  • 資料の閲覧
  • 対象会社の経営者・実務担当者へのインタビュー
  • 上記1.と2.の情報の分析など

税務DDを実施する場合、仲介会社やフィナンシャル・アドバイザー(FA)を通じて、対象会社に税務DDの目的や理由を丁寧に説明します。何も説明がない、もしくは簡単な説明だけで税務DDを実施すると、対象会社としては、まるで税務調査を受けているような不愉快な気分となり、M&Aプロセスがスムーズに進まず、場合によっては中止になることもあります。

税務DDを担当するのは、税理士や税理士法人であり、買い手の専属アドバイザーとして実施します。買い手の顧問税理士が担当する場合もありますが、通常は、税務DDの経験豊富な税理士や税理士法人が実施します。税務DDは、単に対象会社の税務申告書の計算をチェックするのではなく、計算の前提となるさまざまな取引の内容、背景、理由、根拠などを調査し、それらは税務上問題がないのか、問題がある場合はどの程度のリスクなのかなどを総合的に検討するためです。また、M&Aに関する豊富な知識も必要です。

通常、税務DDの期間は2~3週間です。この期間内に、買い手と対象会社との間でやり取りし、情報開示が行われます。

インタビューは、経営者の他、必要に応じて経理等の実務担当者にも行うことがあります。ただ、M&Aは公にせずに実行されることが少なくないので、通常、情報共有の範囲は限定されます。実務担当者にもインタビューをする場合は、情報漏洩に十分留意しましょう。

4 税務DDで調査されること

税務DDでは、対象会社にある税務上の潜在的なリスクを調査し、その結果に応じて次のように対応を検討します。

  • 買収価格に反映:過去に対象会社が申告した税務申告書の計算に明らかな間違いが発見された場合、税務調査で指摘を受ける恐れが高いため、買収価格に反映する(買収前に修正申告する場合もある)
  • スキームの変更:多額の追徴課税などの恐れがある場合、株式譲渡から事業譲渡にスキームを変更する
  • 買収契約書または買収後の統合作業のプランニングなどに反映:買収後に税務調査が入って指摘を受けた場合、売り手に追徴課税相当を補填してもらう旨を契約書に反映する

では、具体的に税務DDの主な調査対象事項・目的を確認していきましょう。なお、税務の時効は原則5年であることや、税務調査は過去3年を対象とすることが多いことから、調査対象年は過去3~5年で実施することが一般的です。

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税務DDの実施に当たって、よく見られる問題点を以降で紹介します。

5 税務DDで注意すべきこと

1)オーナーの個人的費用の計上

対象会社が高級車、クルーザー、高級マンション、別荘などを購入している場合や、多額の接待交際費や旅費交通費を計上している場合があります。オーナー会社においては、個人的な費用と会社の費用を混同しやすい環境にあるため、資産の利用目的や支出した理由によっては、オーナーの個人的経費とみなされ、追徴課税のリスクがあります。

2)オーナーの資産管理会社との取引

相続対策の一環で、売り手のオーナーが資産管理会社を保有している場合があります。対象会社が資産管理会社に不動産を売却していたり、資産管理会社から不動産を借りていたりする場合、その取引価格はオーナーの一存で決めることができます。そのため、一般的な水準と比較して著しく異なる場合が多くあります。このような場合、対象会社に対して追徴課税のリスクがあります。

また、対象会社が不動産を保有している場合、その不動産をオーナーが引き続き保有するために、M&Aプロセスの直前に不動産とM&A対象事業を分けることがよくあります。仮に対象会社が事前にオーナーに不動産を売却する場合、その売却価格が妥当かどうか、売却により対象会社で、どの程度の売却益および税金が発生するのかを調査する必要があります。多額の税金が発生すると見込まれる場合、それを考慮してM&Aの買収価格を検討します。

3)輸入に係る消費税のリスク

消費税の計算では、原則として、支払った消費税は預かった消費税から控除して納税額を算出します。さらに輸入に関しては、手続きが複雑です。対象会社が海外から物品を輸入している場合、輸入時に消費税を支払います。支払った消費税を証明するために、対象会社宛ての輸入許可書が必要となります。しかし、輸入代行業者を通じて輸入している場合、輸入許可書が対象会社宛てではなく、輸入代行業者宛てとなっていることがあり、それを知らずに消費税申告書を作成している場合(本来は控除できない支払った消費税を、誤って控除してしまっているケース)があります。

4)源泉所得税の徴収漏れ(特に海外取引)

対象会社が、海外の会社や海外在住の個人に対して何らかの支払いをしている場合、一定の支払いについては、その支払いの際に源泉所得税を徴収して納付する義務があります。源泉所得税の納税義務があることを知らずに取引を続けている場合がよくあります。

5)過去のM&A

過去に対象会社がM&Aを行っていた場合には要注意です。他の調査項目と比較して、金額面で税務上のリスクが高い可能性があります。そのM&Aが成立した際に仲介会社に手数料を支払うことが一般的ですが、株式譲渡スキームの場合、税務上は、その仲介手数料は経費として認められず、株式の取得価額に含めます。支払手数料等の費用として処理しているケースがよくあります。

以上(2022年5月)

(執筆 アクシアパートナーズ税理士法人 税理士 大塚行親)

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画像:Bits and Splits-Adobe Stock

【サブスクビジネス】継続購入で安定した収益を上げるために欠かせない3つの成功ポイント

書いてあること

  • 主な読者:サブスクリプションを導入して収益を安定させたい経営者
  • 課題:サブスクリプションを成功させるポイントが分からない
  • 解決策:新規顧客の獲得、解約率(チャーンレート)の低下、顧客単価の引き上げが重要

1 サブスクで日々の売り上げに一喜一憂しない

小売業などでは、日々の売り上げにバラつきがあることが経営上の大きな課題です。これを解決する手法として注目されるのが「サブスクリプション」(以下「サブスク」)です。サブスクとは、

販売数量に関係なく、顧客と継続的に契約する方式の販売手法であり、簡単にいうと「継続購入」

です。サブスクを取り入れたサブスクビジネスには、新聞紙の定期購読などがあります。近年はサービス領域が広がっています。

サブスクビジネスのメリットには、

  • 商品・サービスを1つずつ販売する労力を大幅に軽減できる
  • 年度当初から年間の売上高が予測できる
  • いったん新規顧客を獲得すると、解約されない限り、安定的に売り上げを確保できる
  • 顧客データを活用し、提供サービスの精度を高められる

などがありますが、これらを享受するために、

新規顧客の獲得、解約率(チャーンレート)の低下、顧客単価の引き上げ

が必須となります。この記事では、サブスクビジネスで成功するためのポイントをご紹介します。

2 サブスクビジネス成功の第一歩はLTVを理解すること

サブスクビジネスの最重要指標は、

LTV (Life Time Value):顧客生涯価値

です。LTVは、

顧客単価×購入頻度×継続購入期間

で求められます。ただ、サブスクビジネスでは購入頻度が一定なので、この要素は除外します。このLTVに顧客数を掛け合わせた数字が年間定期収益です。このため、サブスクビジネスで年間定期収益を増やすためには、冒頭で紹介したように次の3つの取り組みが大切になります。

  • 新規顧客の獲得
  • 解約率(チャーンレート)の低下
  • 顧客単価の引き上げ

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3 新規顧客の獲得

1)無料・お試しキャンペーンを実施する

「試しに利用してみよう」と思ってもらうために、一定期間の無料・お試しキャンペーンを展開する例があります。例えば、Amazon Primeは「お試し期間」として、30日間、無料で利用できます。気に入らない場合は期間内に解約すれば料金はかからないため、契約のハードルは低くなります。無料にするのが厳しい場合は、初回半額や最初の1カ月間は40%OFFといった特典が考えられます。

2)契約手続きをシンプルにする

契約のハードルを下げるために、少ない項目で会員登録できるようにするなど、手続きを簡素化することが大切です。購入理由などたくさんのことを聞きたいところではありますが、手続き中の離脱のリスクが高まりますので、設問は2~3問程度にとどめる、回答方法は選択式だけにするなどの工夫をします。

3)家族や友人・知人の紹介特典を用意する

ポイントや割引などの紹介特典を用意して、既存会員に家族や友人・知人を紹介してもらいます。紹介する側・される側の双方が得をするような設計が大切です。

4 解約率(チャーンレート)の低下

1)顧客の行動履歴やニーズを分析する

顧客の行動履歴やニーズを分析します。注目すべきデータは、ウェブページへのアクセス数や滞在時間、商品・サービスの契約数、顧客ごとの購入金額、契約継続期間などです。これらを性別や年代といった属性ごとに分析することで、深掘りするのも有効です。データを分析していくと、休眠状態になりやすい顧客や、解約しやすい顧客の特徴も明らかになってきます。

2)顧客にマッチする商品やサービスを提案・提供する

データ分析の結果を活かして、顧客に合った商品・サービスを提供します。例えば、商品Aの利用者は商品Bも利用する傾向がある場合、商品Aだけの利用者に商品Bを提案するなどします。

3)契約の自由度を高めて縛りをなくす

サブスクビジネスの前提は継続的な契約ですが、逆に短期の解約や、利用の一時休止を認めることで、顧客満足度の向上につなげる例もあります。例えば、チョコレートのゴディバが毎月提供するスイーツの定額購入では、1カ月の配送を中止する「スキップ」ができます。また、Netflixではしばらく利用していない休眠会員に対して、契約の継続確認を促し、反応がなければ解約をする取り組みを導入しました。

5 顧客単価の引き上げ

1)サービスプランを多様にそろえる

複数のサービスプランや料金プランを設定すれば、顧客のニーズを満たすことができます。また、1つ上の料金プランに変更を促す「アップセル」も見込めます。例えば、3つの料金プランを設定し、「松竹梅の法則」が効力を発揮した場合、多くの顧客を真ん中の料金のプランに誘導することもできます。ただし、あまり複雑にすると顧客管理が大変になります。

2)優良顧客への特典を付与する

いわゆる「ロイヤルティー・プログラム」を実施します。購入額の多さや、友人の紹介数などによってポイントを付与したり、顧客をランク分けしたりします。顧客をランク分けする場合、上位にランクされた顧客に対して、価格面や特典などで優遇することは、優良顧客を育成することにつながります。

6 サブスクビジネスの4つの注意点

1)収益化するまで時間がかかる

通常、サブスクビジネスでは客単価は低く設定されるので、一定の顧客数を確保しなければ収益はプラスになりません。資金回収までの期間、利益が出せるようになるタイミングを試算しておきましょう。また、収益化するまで資金の手当てについても検討しておく必要があります。

2)都度購入者のサブスク移行で一時的に収益が減少する

既存サービスをサブスクビジネスに移行する場合、既存顧客はサブスクの単価となり、一時的に収益が減少する恐れがあります。このような場合、ヘビーユーザーだけにサブスクを提案するといった方法も考えられます。

3)幅広い業種の企業が競合になる

顧客はサブスクを継続的な「固定費」と認識します。その固定費が多額になると大きな負担となるため、「動画や飲食などのサブスクの負担を毎月5000円以内に抑える」といったように、上限を設けることが考えられます。この場合、動画と飲食という異業種の競合が生じます。

4)サービスの継続的な改善が必要

サブスクビジネスは増えており、契約までのハードルも比較的低いため、顧客は気軽に別のサービスに乗り換えます。顧客離れを防止するには、競合の観察や自社データの利活用により、サービス内容を継続的に改善していくことが必要です。

以上(2022年5月)

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画像:unsplash

【サブスクビジネス】8つの具体的な事例で把握する「サブスクビジネス」の仕組み

書いてあること

  • 主な読者:サブスクリプションを導入して収益を安定させたい経営者
  • 課題:具体的にどのようなビジネスがあり、その特徴が何であるのか知りたい
  • 解決策:プラットフォーマーなどのサブスクリプションビジネスを参考にする

1 サブスクビジネスがいまいちピンとこない人に

この記事は、「サブスクリプション(以下「サブスク」)ビジネスがどのようなものか、だいたい分かっているけど、具体的なイメージが湧かない」という方にお勧めです。具体的なサブスクビジネスの事例を紹介していますので、ビジネスのヒントが見つかると思います。

なお、サブスクビジネスが通常の物販と何が違うのか、どのようにすれば成功するのかについてお知りになりたい方は、次の記事をご覧ください。

2 サブスクビジネスってどんなものがあるの?

近年、サブスクビジネスの領域はさまざまに広がっています。まずは、代表的なサブスクビジネスを、「縦軸:デジタルまたは非デジタル」と「横軸:提案型または定額制重視型」に分類して紹介します。

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1)パーソナライズ・コンテンツ型

デジタルコンテンツを提供するビジネスの中で、顧客に合ったコンテンツを提案するレコメンド機能を備えたサービスです。サイト・アプリ内での顧客の行動をデータで分析し、最適な商品・サービスを提案します。

1.Amazon Prime

Amazonの即日配送やビデオ試聴を提供している、定額制の有料会員プログラムです。Amazonはデータ分析にも力を入れてきた背景があり、顧客に関するページビューやCV(コンバージョン)、年齢・性別といったデモグラフィックデータなどを分析し、パーソナライズでレコメンデーションをする機能を備えています。

2.Netflix

世界最大級の映像配信サービスです。3種類の月額プランがあり、同時に視聴可能な画面数やダウンロードに使えるデバイスの数に違いがあります。パーソナライズされたレコメンド機能も特徴で、視聴履歴、時間帯、時間の長さ、ユーザーの趣味・嗜好、ジャンル・カテゴリーなどさまざまな切り口で分析しています。

2)読み放題・使い放題型

デジタルマガジン・コミックの読み放題、ソフトウエアの使い放題などの定額サービスを提供するビジネスです。

1.dマガジン

NTTドコモが運営する、デジタル雑誌の読み放題サービスです。取り扱う雑誌は700誌以上で、月額440円という価格設定となっています。

2.Microsoft 365

マイクロソフトが展開する、Office製品を定額利用できるサービスです。主に法人向け・個人向けの2種類があり、法人向けは利用できるソフトウエアの種類によって、さらに複数の料金プランが用意されています。WordやExcelなどに加え、コミュニケーションツールのTeamsも含まれています。

3)プロ・専門家による提案型

ファッションや化粧品などのカテゴリーで、専門知識のあるプロ・専門家が、利用者に合うアイテムを選んで提供するサービスです。自分に合うアイテムが分からない利用者も、質問に回答したりすることで、最適な商品を提案してもらえます。

1.エアークローゼット

スタイリストが、利用者に合わせて選んだ洋服を届けるのが特徴のレンタルサービスです。自分に合う服がどれか分からない、気付けば同じような服ばかりでマンネリを感じるといった悩みを持つ女性が主な顧客です。

最初の利用時に50項目の質問に回答してもらい、回答内容やリクエストを基に厳選した3アイテムを毎月届ける仕組みです。担当するスタイリストはランダムに決まりますが、気に入ったスタイリストを指名できる制度もあります。

2.ビーグレン

化粧水・乳液・美容などのサブスクサービスを提供しています。AIによる肌解析の機能により、利用者に合う製品やケア方法を判定することができます。希望すれば選任のコンシェルジュから、マンツーマンでスキンケアの指導を受けることも可能です。

最適なケア製品が見つからずに、さまざまなトライアル製品を繰り返し使ってしまう、間違った自己流ケアで肌トラブルが悪化するといった問題を、オンライン完結で解決するために開発されたサービスです。

4)食べ放題・着放題型

飲食物の食べ・飲み放題、洋服の借り放題などを提供する定額制ビジネスです。一定程度以上利用すると割安になるので、お得感があります。

1.favy

コーヒー・餃子・焼肉など、契約したさまざまな飲食店のサブスクサービスを提供しています。favyを導入した飲食店は、インターネット予約、オリジナルホームページの作成、見込み客に対するお知らせ配信といった機能を利用できるようになります。

2.MECHAKARI

利用者が選んだ新品の洋服を貸し出すサービスです。利用者は実際に着てみてから、気に入った洋服を割引で購入することも可能です。おしゃれを楽しみたい女性や、どんな洋服を選べばいいか分からないという女性が主な顧客です。ヤマト運輸との配送連携によって、運送コストを低くすると同時に、洋服の返却時の利便性も高めています。MECHAKARIで使用された服は、中古品として販売しています。

以上(2022年5月)

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画像:Adobe Stock-JoyImage

【朝礼】自分に足りない部分を見つけたら胸を張って語れ

先日行った業務改善のための社内会議は、とても有意義でした。皆さん一人ひとりが、自分の業務に関して感じているさまざまな課題について話してくれました。私は皆さんが自分の業務について真剣に考えてくれていて、本当にうれしかったです。一方で、一つ気になったことがありました。それは、自分に足りない部分があることを、恥ずかしそうに語っていた人がいたことです。私はむしろ、胸を張って語るべきだと思っています。けさは、私がそう思う理由をお話しします。

まずお伝えしておきたいのは、皆さんの中には営業、生産、経理、総務など、さまざまな業務の人がいますが、どの業務にも「もうここまでで十分」という“動かぬゴール”は、永遠にないということです。

皆さんには、常に現状より望ましい「理想の形」を目指すことが求められます。この「理想の形」の追求に終わりはありません。人は、何かの理想を達成するために、努力を重ねます。すると、理想を達成する頃には、それまでの努力の積み重ねによって、かつては見えなかった別の理想が見えてきます。いわば“動くゴール”です。

私がうれしいのは、業務も経験も違う皆さん全員が、自分の業務についての課題や、自分に足りない部分を認識してくれていたことです。皆さんが自分の業務に関して、常に理想の形を思い描いているからこそ、そこに及ばない部分を挙げてくれたのだと思います。

次に皆さんにお伝えしたいのは、「ベストを尽くしたのに理想の形に届いていない」ことは、決して恥ずかしいことではなく、むしろ胸を張っていいということです。

自分に足りない部分を語れるということは、自分の中できちんとPDCAサイクルを回せているということです。すなわち、理想の形を描くという「計画」、それに向けてベストを尽くすという「実行」、自分に足りない部分を見つけるという「評価」、そして足りない部分を補うためにさらにベストを尽くす「改善」です。PDCAサイクルを回しながらベストを尽くしている人は、理想の形に向かって、常に「自己ベスト」を更新しているわけですから、何ら恥じることはありません。

もし恥ずかしそうに語る必要があるとすれば、自分に足りないと感じている部分についてではなく、ベストを尽くしていないことについてではないでしょうか。

ただし、私はベストを尽くすといっても、いたずらに業務時間を延ばすなどの無理をしろと言っているわけではありません。時間的、予算的な制約もあるでしょうし、ほとんどの業務は社内外の相手あってのものですので、自分の力だけではどうにもならないことも理解しています。自分に足りない部分を語ってくれた人は、その制約や不可抗力すら言い訳にせず、「もっと自分にできたことはなかったのか」と考えてくれているわけですから、やはり胸を張るべきです。

以上(2022年5月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】「管理職の朝礼」で分かる会社のレベル

今朝は管理職の皆さんに集まってもらいました。少々厳しい話となりますが、とても大切なことなので、しっかりと聞いてください。

皆さんは、今の私と同じように、部下の前に立ってお話をする立場です。朝礼などを利用して部下に会社が大切にしている理念や価値観を伝え、実践させることが皆さんの仕事です。しかし、私から見ると、皆さんは朝礼がうまくありません。声のトーンや話すスピードなどプレゼンテーションのテクニックがマズイと言っているわけではありません。皆さんがどこからか“拝借”してきたような表層的な内容を、格好をつけて話していることが問題なのです。

我が社のように、朝礼を習慣にしている会社の管理職は、次の朝礼で何を話そうかと考え、“朝礼のネタ探し”をします。そのためにウェブサイトを見たり、書籍を読んだりするでしょう。

情報のインプットは大切ですが、そこで得られるネタは、管理職が自分の思いを分かりやすく伝えるための“切り口”にすぎません。しかし、管理職の中には、ネタをそのままスピーチの内容にしてしまう人がいます。例えば、年始の朝礼ではえとを話材にすることが多いのですが、一般的にいわれているその干支の年生まれの特徴などを紹介し、最後に「今年も頑張りましょう」で締めくくるだけのパターンです。ウェブサイトの記事を、ほぼそのまま話してしまう管理職もいます。

なぜ、このようになってしまうのか。それは、管理職が部下に伝えたいことを持っていないからです。あるいは、伝えたいことはあるけれど、話す内容に自信が持てないので、借りてきた言葉ばかり並べて格好をつけているというケースもあります。

両方とも、管理職としての役割をもう一度考えてもらわなければなりません。「朝礼ができない管理職」の問題は我が社に限ったことではありませんが、これは皆さんが考えている以上に深刻な問題です。会社が長く続き、大きくなっていく過程で生じる問題の一つは、意図せずに起こってしまう“理念や価値観の希釈”です。起業したてであれば、会社が本当に大切にしている理念や価値観は数人で共有すればよく、それらは議論の中で濃くしていくことができます。

しかし、組織が大きくなると理念や価値観を隅々まで伝えることが難しくなってきます。本来、そうした“理念や価値観の希釈”を抑える役割の一部を担うのは管理職です。にもかかわらず、年始のとても大切な朝礼の場で借りてきた話しかできないようでは、我が社のレベルは低いと言わざるを得ないでしょう。

管理職の皆さん、我が社の理念や価値観をもう一度、確認してください。そして、何度もそしゃくし、皆さんの言葉で部下に伝える努力をしてください。ぎこちなくてもいいのです。大切なのは、スピーチに込められた皆さんの思いです。

以上(2022年5月)

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画像:Mariko Mitsuda

ネットショップはキラリと光る商品づくりが命/基礎から分かる ウェブの活用で売上アップ(1)

書いてあること

  • 主な読者:ウェブを活用して売上アップにつなげたい物販事業の経営者
  • 課題:ネットショップを開設し売上アップを図りたいが、どうすれば成功するか分からない
  • 解決策:キラリと光る商品づくりが重要で、ウェブの知識は専門家を使えば済む。「何を売るか」「誰に売るか」「どのように売るか」をしっかり設計すれば、商圏が広がる

1 町の布団屋さんに全国から注文が舞い込む「ウェブの力」

コロナ禍で減少した売り上げが戻らず、お悩みの経営者の皆さま。ここで劣勢を挽回するための一手を打たれてはいかがでしょうか? お薦めは、ウェブを活用した手法の導入です。自社ネットショップ、SNS、メールマーケティングなどのウェブツールを活用することで、「商圏」を確実に広げることができます。

このシリーズでは、ウェブを活用して売り上げをアップさせるための方法を、3回にわたってご紹介します。インターネットに不慣れな方でも分かりやすいように、基本的な仕組みやビジネスを行う上での考え方を中心にご説明いたします。

第1回目にご紹介するのは、店舗などで物販事業を行っている経営者の方にお薦めしたい、

自社ネットショップの開設

です。実際に、

町の布団屋さんに全国各地から注文が舞い込むようになった

酒屋さんの地ビールの品ぞろえが評判となり、遠方からの再購入が増えた

というケースもあります。

「そうはいっても、ウェブの知識がないので…」との心配はご無用。専門家との連携でカバーできます。それよりも重要なのは、従来の販売手法とは異なる、ネットショップならではの

売れる仕組みづくり

です。かく言う当社も、ネットショップではありませんが、コロナ禍に商圏を拡大することができました。コロナ前は本社のある新潟県とその隣県のお客さまへの個別支援が中心でしたが、コロナ後は全国のお客さまにオンラインでのセミナーやコンサルティングでご支援させていただいています。今回は、当社がアドバイスをさせていただいている、ネットショップを成功させるための手法をご紹介いたします。

2 「キラリと光る商品」がネットショップ成功のキーワード

1)ウェブの活用による販売機会の増大

今まで地域密着で商売をしてきた店舗・企業がウェブを活用することで、商圏を全国、全世界に広げることが可能となっています。

町の布団屋さんが自社ネットショップを開設した結果、全国に商圏を広げることに成功したのは冒頭の通りです。

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2)ウェブの活用による脅威

ウェブを活用することで商圏を広げられるということは、一方で脅威でもあります。逆に考えれば、既存の商圏内には、ネットショップを通じて、全国そして全世界から今まで以上に競合が攻めてくるということです。「うちは地域密着だから…」と油断していると、全国の競合からあっという間にお客さまを取られてしまう可能性もあります。

3)町の布団屋さんを全国クラスに押し上げた、オーダーメードのお昼寝布団

このような状況下で生き残り、売り上げを伸ばしていくためのキーワードは、ズバリ「キラリと光る商品・サービス」です。

ウェブの活用が進む世界では、競合は全国・全世界

です。そこで通用する「キラリと光る商品・サービス」があれば、それをウェブツールに乗せて、いくらでも売り上げを伸ばすことができるでしょう。

一方で、商品・サービスに魅力がなく、差異化要素がなければ、競争に負けて顧客を奪われてしまいます。

例えば、冒頭の布団屋さんの「キラリと光る商品・サービス」は、「オーダーメードのお昼寝布団」です。子育て経験のある方はご存じの通り、子供を保育園などに預ける際に、子供を寝かしつけるためのお昼寝布団を用意する必要があります。そのお昼寝布団を、オーダーメードで作るサービスが店舗で大人気でした。

そこに目を付け、店舗で人気のお昼寝布団という「キラリと光る商品・サービス」を自社のネットショップを開設して発信したところ、全国から注文が舞い込みました。そして、全国のお客さまからお喜びの声をたくさんいただきました。

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余談ですが、このお布団屋さんでは、商圏を広げたことでスタッフさんの士気が向上しました。「自分たちの商品・サービスは全国に通用することが分かった」「全国のお客さまとつながっている感じがしてうれしい」と、自店の商品・サービスに対して自信を深め、誇りを持てるようになったそうです。

3 ネットショップで商圏を拡大する3つのステップ

自社でもネットショップで商圏を広げて、全国に販路を開拓したいと思った方は、次の3つのステップで、具体的にご検討ください。

1)STEP1:キラリと光る商品を見つける

どこでも買える、どこにでもある商品であれば、ECモールと呼ばれる巨大なネットショップ群であるAmazonや楽天で、既に誰かが売っているでしょう。そうなると、価格勝負の世界になってしまいます。

まずは、自社や自店で既存のお客さまから喜んでいただいている、評判のよい商品・サービス、他社に負けない商品・サービスは何かを分析してみましょう。

ある酒屋さんは、珍しい「地ビールの品ぞろえ」が評判で、お客さまからよく「初めて出合う全国の地ビールがあって楽しい」との声をいただいていました。そこで、「出合ったことのない全国の地ビール」を売りにネットショップを展開することにしました。

2)STEP2:理想のお客さまを明確にする

「何を売るか」を考えた次は、「誰に売るか」、つまりターゲットを考えます。ターゲットというと難しそうですが、どんな方に買ってもらいたいか、「理想のお客さま像」を膨らませてください。

先ほどの酒屋さんは、理想のお客さまを、「遠方から店舗に来てくれたお客さま」に設定しました。このお店では、評判を聞いて店舗のある市内だけでなく、県内居住者や観光客など遠方からも店舗にお客さまがいらっしゃいます。遠方のお客さまは、どうしても来店頻度は下がってしまいます。観光客となれば、再度の来店は難しいかもしれません。しかし、ネットショップがあれば、遠方のお客さまでも来店せずに、ネットショップから再購入していただくことが可能です。

3)STEP3:アプローチ手法を設計する

「何を売るか」「誰に売るか」を考えたら、最後に「どのように売るか」というアプローチ手法を考えます。

最近では、特別な知識がなくてもネットショップを作って運営することができるようになりました。BASE(ベイス)、STORES(ストアーズ)など、簡単にネットショップを作れ、初期費用や月額費用が抑えられるネットショップ構築・運営サービスが多く出ています。お付き合いのあるホームページ制作会社に相談してみるのもよいでしょう。

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とはいえ、ただネットショップを作っただけでは、砂漠の真ん中にお店を出すのと同じことです。重要なのは、その

ネットショップをどうやって知ってもらい、どうやって訪れてもらうのかを設計すること

です。

事例でご紹介している酒屋さんは、理想のお客さまは「遠方から店舗に来てくれたお客さま」ですので、次のような施策を設計して、ネットショップに誘導することを考えました。

  • 来店時に顧客にショップカードを渡してネットショップを告知する
  • LINEへの登録を促し、LINEで定期的にネットショップ限定商品の案内を送る

4 重要なのは、ツールの知識よりも「売れる仕組みづくり」

お伝えした3つのステップ「何を売るか」「誰に売るか」「どのように売るか」という3要素を設計して、売れる仕組みをつくっていく活動を「マーケティング」といいます。

ウェブ活用で重要なことは、ネットショップやSNSなどウェブツールの使い方の前に、この「マーケティング=売れる仕組みづくり」を考えることです。いくら優れたウェブツールを使っても、商品・サービスに魅力がなかったり、お客さま像が不明確だったりすれば、売ることは難しいですよね。

ウェブやデジタルが苦手な方も多いかもしれませんが、そんな方でも大丈夫。ウェブツールの活用は専門家と連携して進めればよいでしょう。大切なのは、売れる仕組みの設計力です。まずは、今回お伝えした自社・自店の「キラリと光る商品・サービス」を探し、それを誰に、どのようにして届けていくか、その構想を練ってみてください。

以上(2022年5月)

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執筆者サイト:https://glocal-marketing.jp/

【中小企業のためのM&A】専門的な知識と経験でM&Aを支援してくれる「七人の専門家」

書いてあること

  • 主な読者:M&Aを検討しているが、誰に相談すればよいのか迷っている経営者
  • 課題:M&Aではさまざまな専門家が担当すると聞くが、具体的な分野が分からない
  • 解決策:全体のスケジュール管理を行う専門家、法務や財務の専門家が基本

1 M&Aでは専門家の支援が不可欠

M&Aの交渉では、次のような調査や検討が必要になるので、専門的な視点から支援してくれる専門家の存在が不可欠です。

  • M&Aの対象となる事業・会社の探索・選定
  • 法律、会計、税務等の専門的事項に関する整理
  • 買収資金の調達
  • 取得する資産の価値、不適合の有無 など

M&Aにおける専門家の役割は基本的に分業体制ですが、

全体のスケジュール管理を行う専門家、法務や財務の専門家が基本

になるといえるでしょう。この記事では、中小企業のM&Aでよく登場する主要な専門家とその役割を説明します。

なお、中小企業庁では、中小企業が安心してM&Aに取り組める基盤を構築するために、2021年8月からM&A支援機関に係る登録制度を開始しました。M&A支援機関には、これから紹介するフィナンシャル・アドバイザー(FA)やM&A仲介会社などが該当します。中小企業にとってのメリットは、

登録を受けたM&A支援機関を利用すると、必要な手数料の一部が補助され、金銭的な負担が軽減される

ことです。

■M&A支援機関に係る登録制度■
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2021/211007m_and_a.html

2 中小企業のM&Aを支援してくれる「七人の専門家」

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1)フィナンシャル・アドバイザー(FA)

フィナンシャル・アドバイザー(FA)は、M&Aの初期段階からクロージングまで案件全体のスケジュールを設定・管理する水先案内人のような役割を果たします。具体的には、

買い手か売り手の一方に対して、M&Aの対象事業や対象会社の探索に始まり、スキームの提案や契約交渉の助言・支援の他、M&Aに関する各種専門家の紹介、簡易な企業価値の算定など

を行います。ただし、FAの業務内容は会社の方針や個別ケースによって大きく違うので、個別に確認したほうが無難です。

中小企業のM&Aでは、銀行がFAを担当するケースが比較的多く、その他だと証券会社などとなります。また、顧問税理士を通じてM&Aが実現する場合だと、税理士がFAのような役割を果たすこともあります。

2)M&A仲介会社

M&A仲介会社は、M&Aの買い手と売り手をつなぐマッチングの役割を担います。具体的には、

買い手と売り手の間に立って、M&Aの初期段階からクロージングまで案件全体のスケジュールの設定・管理など

を行います。

支援内容はFAと似ていますが、利益が相反しがちな買い手と売り手の間に立って、中立的に業務を行うところに一方サイドに立つFAと大きく違う点があります。難しい立場でM&Aの実現を導くことになるため、双方が考える落としどころをうまく調整して話をまとめられるような経験と能力が必要です。

3)弁護士

弁護士は、M&Aを実現する際に必要な法的な問題点の洗い出し(法務デューディリジェンス)や、M&A全体の手続きのコーディネートなどを行います。具体的には、

M&Aの対象事業や対象会社についてのデューディリジェンス、実行するM&Aのスキームの検討、M&Aの条件交渉、それを取りまとめる基本合意書・最終契約書の作成など

を行います。

4)司法書士

司法書士は、買い手または売り手の登記やその関連業務などを行います。具体的には、

議事録の作成、会社分割等の組織再編スキームを用いてM&Aを行う場合やM&Aに伴って会社組織等を変更する場合の登記(取締役会設置会社を非設置会社にする、株券不発行会社にするなど)、現役員が退任する場合の登記、新役員の選任等の登記など

を行います。なお、これらの業務を社内で全て行う場合は、司法書士は担当しません。

5)弁理士

弁理士は、特に買い手側の立場から、M&Aの対象事業や対象会社の知的財産権に関する調査などを支援します。具体的には、

知的財産権の権利範囲、ライセンス契約や職務発明規程はどのように整備・管理されているかなどの知的財産権の価値評価や、登録されている知的財産権について必要な変更手続きなど

を行います。なお、知的財産権の価値評価については、弁護士が担当することもあります。

6)公認会計士

公認会計士は、特に買い手側の立場から、財務デューディリジェンスなどを行います。具体的には、

企業価値の算定、財務的観点からの問題点の洗い出し、M&A後の収益見込みなどをシミュレーションした上での事業計画の作成支援など

を行います。

7)税理士

税理士は、特に買い手側の立場から、M&Aによって懸念される税務リスクの洗い出しなどを行います。具体的には、

将来発生するものも含めて法人税等のタックスプランニングなど

を行います。M&Aの規模が大きくなればなるほど、取引金額も相応になりますので、税務上のインパクトを勘案しておく必要があります。

8)その他

前述した専門家の他に、次のような専門家の支援が必要になることもあります。

  • 社会保険労務士:人事労務問題への対応
  • 行政書士:行政上の許認可関係の手続き
  • 不動産鑑定士や汚染調査会社:不動産の価値・土壌汚染の有無の調査など
  • ITコンサルタント会社:対象事業・対象会社のシステムの情報漏洩や情報セキュリティー上の欠陥の有無、システム統合をする上での課題の洗い出しなど
  • 中小企業診断士:M&A後を見据えた経営課題全般の助言

以上(2022年5月)
(執筆 リアークト法律事務所 弁護士 松下翔)

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【朝礼】「お客さまのお客さま」を見よ

先日、ある優秀なマーケターだった方のお話を聞く機会がありました。その方は、お客さまのニーズを知るために、営業担当者以上にお客さまを訪問していたという、とても仕事熱心な人です。これだけでも素晴らしいことですが、私が特に感銘を受けたのは、その方がお客さまのお客さま、つまりお客さまの取引先にまで足を運び、話を聞くようにしていたという点です。これはとても重要なことであり、まさに私が理想としている姿勢なので、ぜひ皆さんにも参考にしてもらいたいと思います。

「お客さまがそう望まれたから」というのは、一面では正しいことなのですが、私には「お客さまの声に甘えている」ようにも思えます。なぜなら、それが本当にお客さまのためになっているのかどうかを、その人たちの声を通じてしか判断しようとしていないからです。

確かに、お客さまのご要望を満たすことは最も基本的なことですし、そのために声を聞くことは大切です。ですが、それだけで終わってしまうなら、競合他社と何も変わりません。そして何より、それではお客さまの想定内のサービスしかご提供することができません。つまり、どんなに頑張っても100%のサービスしかご提供できないということです。

「それではダメなの?」と思った人がいるかもしれません。ダメではないのですが、私は皆さんに、それ以上のことを期待したいのです。

もし、「お客さまのお客さま」のニーズを知ることができれば、お客さまに対して、「御社の取引先が望んでいるのはこれです。ですから、このようなサービスを始められてはいかがでしょうか? 弊社もお手伝いさせていただきます」といった提案ができるようになります。つまり、お客さまが望むことの120%、場合によっては150%のサービスをご提供できる可能性があるわけです。もし、これができるようになれば、我が社はお客さまにとって、競合他社とは全く違う存在になれるはずです。

「お客さまのお客さま」を見るというのは、社内の業務にも置き換えられます。「次工程はお客さま」という言葉がありますが、皆さんには、次工程の担当者が業務をしやすくなるよう、お客さまに対するのと同じくらい丁寧に業務を行ってもらいたいと思っています。そのために、「次工程の次工程」まで意識するように心掛けてみてください。

例えば経費を請求する場合、会計処理という工程だけでなく、その先にある決算資料の作成や、税務署への書類の提出のことまで意識してみてください。「経費請求書は迅速かつ正確に作成しよう」という気持ちが強くなるはずです。また、社内向けの企画書を作成する場合、それを基にした営業資料で営業をする人のことを考えてみてください。「社内向けだから、これでいいや」という気持ちにはならないはずです。

以上(2022年5月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】会社は舞台、管理職は役者

この朝礼もそうですが、私には皆さんの前でお話しする機会がたくさんあります。また、多いときは月に10回くらい、社外の方々の前でスピーチや講演をさせていただいています。

そのため皆さんの中には、私のことを「人前で話すのが得意で、根っからの出たがり」と思っている人も多いようですが、私は若い頃、全くそうではなかったのです。社内外を問わず人前で話すことにとてもプレッシャーを感じ、逃げ出したくなるほどでした。緊張のあまり頭が真っ白になり、しどろもどろになってプレゼンに失敗したことも一度や二度ではありません。

このことに悩んでいた私は、初めて管理職になったときに気持ちを切り替え、「人前で話すのがとても得意で、常に自信を持ち堂々と話す人」を「演じる」ことにしたのです。

演じることは、皆さんにもあてはまります。むしろそれは、皆さんの仕事でもあるのです。特にそれが求められるのは管理職です。日本電産の創業者である永守重信氏は、「経営者や管理職はどのような状況にあっても『アイ・アム・ファイン=私は元気です』と言えなければならない」という趣旨のことを言っていますが、これこそ管理職が実践すべき重要な「演技」ともいえるでしょう。

例えば、管理職は、組織が「元気がないな」と思ったときこそ率先して声を出し、前向きな管理職の姿を演じることで、組織をポジティブな方向に持っていかなければなりません。

また、トラブルが起きたときも同じです。たとえ心の中では激しく動揺したとしても、管理職は右往左往したり弱気な態度を見せたりしてはなりません。状況にもよりますが、そうしたときこそ冷静に指示を出し、組織を動かして対応する役割を演じる必要があります。

とはいえ、演じるのは簡単ではありません。また、どのように演じたらよいか分からない管理職も多いでしょう。そこで私がお勧めしたいのは、まず、手本となる人を見つけ、その人をまねるという演技をすることです。管理職の皆さんは社内外の多くの人と接し、ネットワークを広げ、手本を見つけてください。そしてどうしても見つからなければ、私を手本にしてください。私自身も大いに迷い悩みながら、諸先輩方を手本に、管理職、そして経営者を演じ続けてきているからです。

私は特に人前で話をすることが大の苦手でしたが、「得意な人を演じる」と決めてから、人前に出るときに「演じるスイッチ」が入るようになりました。自分の感情やモチベーションとは一切関係なく、「人前で堂々と自信を持って話す人」の演技ができるようになったのです。

それは、人の上に立つ者として、人前で堂々と話をする人であることが私の重要な仕事だと認識したからです。管理職も同じです。管理職という役を演じるのは皆さんの重要な仕事なのです。

会社は舞台、管理職の皆さんは役者です。私と一緒に素晴らしい舞台をつくりましょう。

以上(2022年5月)

op16886
画像:Mariko Mitsuda

日本人が最も使っているSNSは? ターゲット別に考える効果の高いSNSはこれだ!

書いてあること

  • 主な読者:SNSを利用して効果を上げたい中小企業・ベンチャー企業の経営者
  • 課題:SNSを利用して認知度を上げたいが、運用工数に制限もあり、どのSNSから取り掛かっていいのかが分からない
  • 解決策:商品やサービスに合うSNSがベストですが、自分が慣れているSNSからまずはやることをお勧めする

1 日本でユーザー数が一番多いSNSはLINE

各SNSの公式発表では、

日本で最もユーザー数が多いSNSは、LINEで9000万人

になります。各SNSのユーザー数ー数と利用率の比較は次の通りです。

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ユーザー数だけを見るとLINEをやるのがいいように思えますが、SNSによっては利用者数が多い世代があったり、手軽さが違っていたり、画像や動画などでアプローチするのに適していたりするものもあります。それぞれのSNSの特徴を把握して、自社の商品やサービスの特性と掛け合わせて、合うもので行うのが一番いいやり方です。

難しい場合は、

普段、皆さんが利用しているSNSから始めること

をお勧めしています。使い慣れていますので、あまり悩むことはなく発信できます。

この記事では、SNSの特徴やどのSNSが合っているかのヒントを解説していきます。最近は、FacebookやTwitterといったテキストが主体のSNSや、Instagramなど画像が主体のSNSでも、TikTokのような短い動画(ショート動画、ショートムービー)が投稿できるなど機能が似てきている面もありますが、向いているターゲット層が違うなどの特徴があります。ぜひご参考になれば幸いです。

2 SNSの特徴を押さえましょう

ご飯を食べに行くときに、

40代は食べログ、30代はGoogle検索、20代はTwitterやInstagramでお店を探す傾向が高い

です。このように検索をひとつとっても、世代によって調べ方が違います。実は、SNSも世代によって使用方法が変わってきます。ここでは、SNSの特徴を説明していきます。

1)Facebookは経営者アプローチやBtoBビジネスに向いています

Facebookはユーザー数が減少傾向ですが、世界最大のユーザー数は見逃せません。海外展開を狙っている商品は、Facebookでの発信をお勧めします。また、30代以上のユーザーは活発に投稿していますし、ビジネス目的で利用するユーザーも多いです。30~50代の利用方法としまして、経営者と名刺交換をした後に、よりつながりを持つためにFacebookで友達登録をしている人もよく見られます。そのため、

経営者にアプローチしたい場合やBtoBビジネスでの関係構築で有効に活用

できます。

実名登録が必須となっていますので、登録されている個人情報はしっかりしています。Facebookで属性を絞って広告を出す場合の効果は大きいです。なお、実名登録が影響しているせいか、Facebookでの炎上事例はあまり見当たりません。

デメリットは、10代や20代の若いユーザーのアクティブ率が低くなっています。そのため、

若年層をターゲットにした商品告知での利用は向かない

でしょう。また、Facebookページから発信された投稿のオーガニックリーチ(ユーザーに情報が届くこと)は大幅に減少しているので、広告の併用が必要となっています。

2)Twitterは即時性と拡散性が高く、イベント告知やキャンペーンに向いています

Twitterは最も即時性と拡散性に優れたSNSです。「こんなお得な情報を見つけた」「こんな面白い情報を見つけた」という感覚でリツイートされることで、どんどんと拡散されていきます。フォロワーが少なくても、リツイートによって大きな表示回数を獲得することもあります。そのため、

イベントの告知やキャンペーンをすることで認知を上げたい

場合は向いています。ユーザー層としては、10代後半から20代までの若年層が厚いですが、ユーザー数の母数も多いので、40代以上のユーザーも一定数存在しています。また、BtoB、BtoCの両方に向いています。さらに、ユーザーの本音が拾いやすいです。今までアンケートなどで行っていた商品の評判の収集を、エゴサーチすることもできます。

なお、企業がSNSに取り組む際に、最も懸念すべきことが「炎上」です。

Twitterは実名登録が必須ではないので、発信が自身の日常生活に影響がないこともあり、誹謗(ひぼう)中傷が発生しやすい

です。炎上は、思いもかけないところが発信となります。Twitterにアカウントを持っていると、炎上対策が講じられますが、アカウントを持っていないと対策もできません。そういう意味でもTwitterでアカウントを持つ必要はあるのではと考えます。

デメリットは、Twitterは利用者数が多いことも影響していて、発信が届かないことがあります。他のSNSと比べても投稿頻度を多く確保する(運用工数をかける)必要があります。

3)LINEは幅広い年代層で利用されています。高い世代への訴求にも適しています

LINEは9000万人のユーザーと日本で一番利用されています。幅広い層に利用されていて、40代から60代の利用率も高いです。メッセージを送るツールとして利用されていることもあり、アクティブ率も高く、

企業がビジネスシーンで活用するケース

も増えています。性別を問わず全ての世代に効果があります。また、台湾やタイ、インドネシアにもユーザーが多く、アジア圏において展開する商品がある場合は有効に活用できます。

企業で利用する場合、ビジネス利用に特化したLINE公式アカウントを開設します。以前は高額な予算が必要でしたが、現在は無料で開設が可能です。リアル店舗やECサイトの運営など用途はさまざまです。メッセージやクーポン、アンケートなどを送信できます。

デメリットは、友だちとしてつながったユーザーに対して発信できるクローズドなSNSですので、FacebookやTwitterのように、誰にでも見てもらうことができるオープンなSNSとは違います。まずは、友だちとしてつながらなければなりません。

4)Instagramは画像や動画などビジュアルでアプローチする商品・サービスに向いています

Instagramはユーザー数やアクティブ率が上昇過程にあるSNSのひとつです。画像や動画といったビジュアルでの訴求に適していますので、

コスメ系やファッション系の商品やサービスでの活用

をお勧めします。テキストでの訴求には向いていません。当初は、若い女性を中心に利用されていたメディアでしたが、今は幅広い層に利用されています。

デメリットは、Facebookにはシェアを拡散する機能、Twitterにはリツイート機能がありますが、Instagramにはありません。

5)YouTubeは動画で幅広い年代層に訴求できます

YouTubeは日本で6500万人、世界で20億人のユーザー数です。インターネットユーザーの3分の1が利用する巨大プラットフォームに成長しています。そのため、

動画素材をコンスタントに更新できるならば、幅広い層に対して、世界にもアプローチ

できます。チャンネル登録したユーザーに最新動画の更新を通知できたり、関連動画を表示することで、ユーザーの滞在時間を長くすることができたりします。

デメリットは、動画素材を用意しなければならないことです。内製化できればいいのですが、外注すると費用がかかります。更新頻度もある程度担保しなければなりません。お気に入りのチャンネルが1本か2本しか動画がなかったり、最新の更新が1カ月前だったりすると、熱が冷めてきてファン離れすることもあります。ただし、スマートフォンで撮影・投稿ができるショート動画機能もリリースされているので、それを上手に利用すれば更新負担を軽減できるかもしれません。

6)TikTokは若年層対象の商品・サービスに向いています

TikTokは日本では950万人ですが、若年層に爆発的な広がりを見せています。まだユーザーが増えている段階ですので、先行者メリットを得られます。そのため、

若年層を対象にしたエンターテインメント・教育・How Toなど生活に役に立つコンテンツの投稿

が増えています。最近ですと、不動産賃貸で成果を上げ始めているところもあります。

スマートフォンを利用して、簡単に自分自身で1分以内の短い映像を撮影・編集し、投稿することができます。BGMもあらかじめ用意されているリストから組み合わせることも可能です。全て感覚的に扱えるUIになっているので、難しい操作もありません。

デメリットは、「広告以外」の商業利用ができないことです。クーポンを送ってサイトや店舗に流入してもらうとか、商品の直接的な宣伝を投稿するなどはふさわしくありません。

7)LinkedInも経営者にアプローチするには有力なSNSです

LinkedInはビジネスで活用できるSNSです。ちょっと前までは転職や採用を促進するという使われ方をしていました。そのため、

SNSの中で一番経営層にアプローチしやすい

という特徴があります。

世界規模では8億1000万人のユーザーがおり、海外ではLinkedInのアカウントを名刺代わりに交換されています。海外展開も視野に入れている商品・サービスを展開するときには、絶好のSNSともいえます。

デメリットは、日本でのユーザー数が200万人以上と、やや物足りないことです。ただ、利用している人数が少ないがゆえに、経営者とつながりやすい利点があります。自社のビジネス情報を発信し、顧客やビジネスパートナーとつながっている事例もあります。

3 企業がSNS運用で失敗してしまう例

1)目標の設定を間違っている/SNSについて理解を得ていない

SNSはファンづくりですので時間がかかり、ちょっと投稿すれば、すぐに成果が出るものではありません。最終的には成果を目標にするべきですが、開始3カ月後に問い合わせ〇件などは非常に難しいです。1年後に成果が出るよう、段階的に目標を設定します。時間がかかってしまう状況を上長に理解してもらうようにしましょう。

また、SNSを始める前に、

「なんのためにSNSをやるのかという目的」はきちんと固めておく

ことが大切です。目的はその後修正してもいいのですが、目的からずれそうになったときには、振り返ることは重要です。

始めて1カ月後に成果が出ないと上長に詰められて、モチベーションが下がってしまうということがよくあります。成果が出ないと、きちんと組み立てて進めていた投稿内容にまで口を挟まれて、さらにモチベーションが下がってしまうこともよくあります。

広告はすぐに効果が出ますが、SNSは気長に育てるものです。結果は時間とともに付いてきます。

2)ただの告知だけになっている/更新頻度が担保できない

もし、気に入ったSNSがあっても“最新の更新は3週間前かぁ”と、更新が全然されていないことで、ユーザーの熱が冷めてくることがあります。興味を持ってもらったのに、チャンスを逃してしまう瞬間です。定期的に会社の思いや人となりを発信することで、興味を持ってもらうようにしましょう。更新頻度は、まずは週に3回(Twitterは1日5投稿)を目安にしてください。

コーポレートサイトのお知らせをそのままSNSに転載しているだけということがあります。更新はしていても、SNSを見に来る方は、企業のお知らせを見たいわけではありません。もちろん、告知も大事ですが、情報が多すぎてしまうのもいけません。

3)体制の不整備によるトラブル発生と悪化

炎上の事例です。フォロワー数も順調に伸びて、影響力が出始めた企業アカウントがあります。ある投稿をしたところ、表現が一定数のユーザーによって批判を浴びました。担当者は焦って、自分の独断で投稿を削除してしまいました。今度は、削除前にスクリーンショットを撮影していたユーザーが、その画像を上げました。結果的に、削除前とは比較にならないほど大規模な拡散が行われ、炎上案件になってしまいました。

この場合、削除をしないことが大切です。また、担当者以外に対応を判断する責任者を決めておきましょう。他にも、「批判的な書き込みにはどう対応するか」「炎上した場合のフロー」「災害時に投稿をどうするか」など、前もって決めておいたほうが安心できます。

以上(2022年5月)

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画像:Julien Eichinger-Adobe Stock
執筆者サイト:https://yoshikazunomori.com/