経済産業省が策定した「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」(CGSガイドライン)に示されている、後継者計画の考え方や後継者選定の視点、選定・育成に当たっての有効な取り組みを紹介する。
(日本法令ビジネスガイドより)
この記事は、こちらからお読みいただけます。
Just another WordPress site
経済産業省が策定した「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」(CGSガイドライン)に示されている、後継者計画の考え方や後継者選定の視点、選定・育成に当たっての有効な取り組みを紹介する。
(日本法令ビジネスガイドより)
この記事は、こちらからお読みいただけます。
近年、農林水産業を営む企業で、人工知能(AI)やドローンなどのテクノロジーを取り入れる動きが出てきています。体力勝負のこまめな管理や、自然環境の影響を大きく受けるこれらの業界では、次のような課題が挙げられています。
このシリーズでは、農林水産業を営む企業が直面する課題を解決するための最新テクノロジーの動向と、その活用事例を紹介します。第4回の今回のテーマは、農業が直面する課題を解決するための「農業テック」です。具体的には、
といった取り組みを紹介します。
かねてから農業はトラクタによる耕地やコンバインでの脱穀、ベルトコンベアーでの搬送など、作業の省力化・自動化が進められてきました。しかしそれでも、手作業で作業進捗をまとめなければならない、自分で運転した分しか耕せないなどの問題がありました。
それがテクノロジーの進化により、農作業の進捗状況を自動的にまとめる生産管理ツールや、ビッグデータを解析して市場予測や生産・出荷を予測するAI、設定された農地を無人で自動運転するトラクタなどが登場し、さらなる省力化・自動化が達成できるようになってきました。
今回登場するのは、無人で動くトラクタや自動で草刈りをするロボット、車両に取り付けた端末がスマホやPCと連動し、農地の作業進捗を自動で記録・蓄積する生産管理ツールなどです。こうしたテクノロジーを導入することで、次のようなことが実現できます。

ヤンマーアグリジャパン(大阪市北区)の無人のロボット農機「ロボットトラクタ」は、熟練者と同程度の精度で農地内を自動走行します。1人で2台の操作が可能(1台は有人)なので、無人機で耕うん・整地を行うのと同時に、有人機で肥料やり・種まきなどの作業ができます。また、作業中のハンドル操作がなくなるので、作業状況の確認に集中でき、運転による疲労が軽減されます。
同社は従来の人が運転するタイプのトラクタ・田植機・コンバインなどに、後付けで使用できる自動操舵(そうだ)システム「ジョンディア」や、登録した農地データを基にした作業経路の作成と農地データに基づいた適正量を肥料散布でき、田植えを自動で行うスマート施肥田植機「直進アシスト田植機 可変施肥仕様」など、さまざまな自動化農機を展開しています。
和同産業(岩手県花巻市)のロボット草刈機「ロボモア」は、地面のさまざまな凹凸や勾配を走破し、超音波センサーで障害物を探知しながら、草の状況に応じた草刈りを自動で行い、充電ステーションまで帰還します。スマホと連動するため、離れたところにいても草刈りの状況が確認でき、一部の操作ができます。
クボタ(大阪市浪速区)の穂先だけ選別・脱穀するコンバイン「DIONITH」は、収穫時に農地単位で収穫物の収量・食味(水分およびタンパク含有率)を測定できるセンサー機能を搭載しています。さらに、同社の営農支援システム「クボタスマートアグリシステム(KSAS)」と無線で連携することで、自動的に作業日誌の作成や栽培履歴の管理もできます。
こうしたデータを活用することで、農地ごとの品質の偏りの解消につなげられます。
ダイドー(大阪府河内長野市)の上向き作業用アシストスーツ「TASK AR」は、上向き作業に特化しています。1分ほどで装着できる簡便さに加え、動力がガススプリングなので電力いらずで、摘果・摘花・収穫などの上向き作業の負担軽減になります。
ドローンは操作が簡単で、さまざまな用途に拡張できる小型の飛行プラットフォームとして、農業分野での活用も行われています。
中国のメーカーで、農業用ドローンでは国内でも最大のシェアを持つDJI(日本法人は東京都港区)の「P4 MULTISPECTRAL」は、6つのセンサーを搭載したセンシングドローンです。センチメートル単位の測定値が得られるので、より詳細に作物の生育状態を把握できます。また、同社のiOSアプリ「GS PRO」と連動させることで、あらかじめ計画した飛行計画に沿って、自動飛行およびデータ収集を行うことが可能になります。
サイトテック(山梨県身延町)は、ユニット交換により輸送・測量・検査・散布などさまざまな作業ができるユニット型ドローン「YOROI」や、大型で大量の薬剤散布や資機材、農作物を運搬できる重量物運搬ドローン(最大搭載荷重は80キログラム)「KATANA」を発売しています。
また、オプティム(東京都港区)の農場管理システム「Agri Field Manager」は、ドローンが撮影した農地の画像をAI分析します。病害虫や雑草を検知すると、ドローンが対象となる地点のみをピンポイントで農薬散布します。同社のオペレーターがドローンを操縦するサービスもあり、必要なときだけ利用ができます。
Farmo(栃木県宇都宮市)の「水田ファーモ」は、太陽光で発電する水位センサーと給水ゲート(自動給水装置)、スマホで給水・止水ができる給水バルブを連携させて、自動測定した農地の水位・水温に異常があった場合に、スマホやタブレット端末などに連絡します。アプリに水田に入れたい水位を設定しておけば、給水ゲートが自動で開閉し、水田の水位を保ち続けます。
エゾウィン(北海道標津町)の「レポサク」は、GPS端末を利用した車両と農地の管理ツールです。GPS端末を農作業用車両のシガーソケットに差し込むと、運転者が車両を走らせた位置情報から、リアルタイムにスマホやPCに作業状況を送信し、日報を自動的に作成します。
広い農地では、トラクタなどの作業状況を無線でしか確認できず、全体の状況を把握するのが難しいですが、スマホやPCで常に現場の進捗状況が分かるので、作業内容の整理や手順の検討、情報共有が容易になります。
農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構、茨城県つくば市)が運営主体である「WAGRI」は、72(2022年6月末現在)の民間事業者などが利用している農業データプラットフォームです。官公庁や農機メーカー、民間企業などが持つ気象や農地、収量予測などの農業データを、統一した規格で集積しているので、さまざまなツールを開発・提供するための基盤になっています。
例えば、26日先まで局地的に天気の予測ができる「1キロメートルメッシュ気象情報」や、スマホで撮った異常のある葉の部位から、どのような病害虫か分かる「病虫害画像判定プログラム」、農薬データを組み込んだ「栽培支援サービス」などが開発されています。この他、WAGRIの「育成・収量予測」「青果物市況情報」「青果物卸売市場調査情報」などの支援サービスを利用することで、将来を見通した生産管理体制を作ることができます。
また、さまざまな農業データを一元化することで、農業に関わる情報や熟練を要する作業、勘が「見える化」され、新規参入者がいち早く生産活動に入ることを可能にしています。
これまで見てきたように、さまざまなシーンで「農業テック」導入の動きが始まっています。農林水産省などの資料から、求められているニーズや課題などの状況を見てみましょう。
流通経済研究所が行った農業者の「経営課題ごとの重要さ」によると、一番関心の高いものは「作業の効率化」です。

農業経営者が実際にどのような技術に関心があるのかに関しては、「全国的な公表データはありません」(農林水産省大臣官房政策課技術政策室)ということですが、中国地方に限定した調査データがありますので、1つの指標として参考になります。

農林水産省「農林業センサス」によると、国内の基幹的農業従事者の推移と年齢構成は次の通りです。担い手の減少・高齢化は年々深刻さを増してきており、これまで以上の作業の省力化・自動化は喫緊の課題といえます。

農林水産省は、2019年度から「スマート農業実証プロジェクト」を全国各地(19地区=畜産除く)で実施し、農作業の自動化や各種データの活用などによる効果の分析を行っています。その結果、品目ごとの各作業の労働時間削減率の単純平均は、38~47%でした。

人手不足や高齢化、業務の効率化を図りたい農業従事者にとって、農業テックは有効なツールといえるのではないでしょうか。
以上(2022年9月)
pj50513
画像:Andrey Popov-Adobe Stock
打ち上げ花火の玉の大きさは昔ながらの単位である「寸」を用いて表示されます(1寸は約3センチメートル)。2.5号玉から40号玉まであり(実際は打ち上げ用の筒の大きさに合わせ、少し小さめに作られます)、3寸の大きさのものは3号玉と呼ばれます。
花火の玉の大きさが増すと、打ち上げたときの直径も大きくなります。一般的な花火大会で打ち上げられる花火玉は2.5~5号玉で、空中で開いたときの直径は約50~150メートルです。それでも十分迫力がありますが、40号玉の場合は約750メートルと、桁違いのスケールになります。

花火を打ち上げるには安全を確保する必要があるため、花火大会で使用される花火の最大の大きさは「保安距離」によって決まります。保安距離とは、玉の大きさに合わせて、花火の打ち上げ場所から観客や付近の建物まで最低限確保すべき距離で、都道府県により規定が違っています。
都市部では建物が多くたくさんの人が集まるため、小規模な花火大会が多くなります。
花火の打ち上げ方は、1発ずつ打ち上げるものからたくさんの花火を一気に打ち上げるものまでさまざまです。
単発打ち
単発打ちは、その名の通り、1発ずつ打ち上げる方法です。7寸以上の大玉などによく採用されます。
早打ち
早打ちは、1つの筒で数十玉を連続で打ち上げる方法です。
スターマイン
スターマインは連射連発とも呼ばれる数多くの玉を一気に打ち上げる方法で、観客にもよく知られたプログラムです。見た目が華やかで、花火大会の目玉となっています。

かつては打ち上げ筒の間近に人間が作業して点火するのが当たり前でした。しかし、近年では安全性などの観点から、電気・コンピューターを使った、遠隔操作による点火が多く見られるようになり、広範囲の演出が可能になりました。
特にコンピューターを使用した点火器では、音楽とシンクロさせたタイミングで打ち上げられるようになり、花火の表現の幅を広げていくことが期待されています。
どんな花火が良い花火かという基本を覚えておけば、花火見物はもっと楽しくなるでしょう。ここでは良い花火の見分け方を紹介します。
玉の座り
玉の座りとは、打ち上げられた花火の玉が上空の最高点に達したところをいいます。玉の座りに達したところで割火薬に点火されて玉が破裂するのが良い花火とされており、これを「玉の座りが良い」といいます。最高点まで玉が上がったかどうか、玉が最高点まで昇りつめたところで破裂しているかどうかに注意してみましょう。
盆
玉が開いた形を盆といい、「菊」などの花火では円(丸)形が良いとされています。楕円(だえん)や形がゆがんだものは「盆が欠ける」といい、評価されません。開いたときの輪郭がはっきりしているかどうか、玉の号数に合わせた大きさに開いたかどうかを見ます。
星の飛び方
玉から飛び出した星が放射状にまっすぐ飛ぶのがよく、これを「肩の張りが良い」といいます。星は全てに火が付いて飛んでいくのが良いとされ、一部に火が付かなかったり、まだらに飛んでいってしまったりするものは評価が下がります。また、飛ぶはずの星が飛ばなかったり、放射線状に飛ばず、ふらふら飛んでいったりするのも評価を下げてしまいます。
消え口
全ての星が同時に開き、同時に色が変化し、さらに飛び散った星が同時に消えることを「消え口がそろう」といいます。
配色
最近の花火はさまざまな色が用いられていますが、たくさんの色を使用すればよいというものでもありません。特に小さな玉は目まぐるしく色が変化すると、開いたとき色がそろわないことが多くなります。
また、星の色合いや色の組み合わせ、変化にも注目してみましょう。色が濃くかつ明るいかどうか、色の変化が多いかどうかを見ていると、技術的な難しさや手間の入れ具合が読み取れるかもしれません。
以上(2022年9月)
pj96805
画像:totojang1977-Adobe Stock
画像:pixabay
法定休日、年次有給休暇、育児休業など、会社にはさまざまな休み(仕事をしない日)があります。正直種類が多すぎて、「何日休みを与えればいいのか」「社員が休んでいる間、賃金を支払う必要はあるのか」など、実務に不安がある人もいるでしょう。
そこで、この記事では会社の休みを次の4つに区分し、「対象者」「申請時期」「日数」「賃金の支払い」について一覧表にまとめました。さっそく見ていきましょう。
なお、一覧表のご利用に当たっては次の点にご注意ください。

私傷病、労働災害、出産、育児、介護などの事情で休業する場合、社員は一定の要件を満たせば、社会保険や労働保険から休業中の生活を補償するための保険給付を受給できます。図表1では名称のみの記載だったので、こちらの図表2で補足します。

なお、社員が保険給付の受給を開始した後で、業務の引き継ぎやリハビリなどで出勤して賃金が支払われると、保険給付を受給できなくなることがあるので、注意が必要です。
例えば、傷病手当金(健康保険)の場合、保険給付を受給中に社員が出勤すると、原則として実労働時間に関係なく、その日については傷病手当金を受給できません。仮に社員が半日だけ出勤した場合、その日の賃金が傷病手当金の受給額より少なくなってしまうことがあります。
一方、休業(補償)給付(労災保険)の場合、保険給付を受給中に社員が出勤しても、1日の中で賃金を受けない時間があれば、その時間については休業(補償)給付を受給できます。
以上(2022年9月)
(監修 社会保険労務士 志賀碧)
pj00358
画像:pixabay
花火は火薬を使い危険が伴うため、日本では現在でもほとんどが機械化されていません。手作業で一つひとつ打ち上げ花火が作られていきます。
必要な薬品や金属粉などを配合します。配合する薬品の種類や量によって光の色が変わるため、慎重に作業を行います。
花火には、「割火薬」と「星」の2種類の火薬が使われています。割火薬は、花火を爆発させて、星を遠くに飛ばすための火薬です。星は、光りながら、放物線状の軌跡を描いて飛び出し、色を出しながら燃える火薬です。
火薬の配合によって花火の見え方が異なるため、熟練の職人が慎重に作業を行います。
特に星は、花火を構成する部品の中で最も重要とされ、花火作家が最も力を注ぐパーツといえます。

各部品ができたら、次は組み立てを行います。玉皮(玉殻)というボール紙で作った半球体に、完成した星をすき間なく詰めていきます。中心部に薄い和紙(間断紙・はさみがみ)を引き、中に割火薬を詰めます。詰め終わったら、2つの半球を手に持ち、打ち上げたときにきれいな絵になるよう、左右をしっかり合わせてテープなどでとじます。
玉貼りは、左右合わせた花火の外側にクラフト紙を貼り付ける作業です。貼り方の強さは、花火が開いたときの「盆(ぼん)」の大きさや星が広がるスピードに影響します。
玉貼りは紙を均一に、何重にも貼り付けて何度も乾燥させるため、時間のかかる作業でもあります。
花火には何種類かありますが、その中でも打ち上げ花火は大きく分けて4つの種類があります。
割物は日本で独自の発展を遂げた花火です。特徴は、整然と並べた星を中央にある大量の火薬で四方八方に飛ばすことです。割物の中で代表的なものは菊と牡丹です。
菊
菊は、丸く開く花火でおなじみです。特徴は、「引(ひき)」と呼ばれる光跡を残しながら外側へ開いていくことです。
牡丹(ぼたん)
牡丹は菊と同様に丸く開く花火ですが、大きな違いは引が見られないことです。そのため、いくつもの花火を同時に打ち上げるときによく用いられます。
型物(かたもの)
型物は、丸い形ではなくさまざまな形に変形する花火です。ハートや土星、ネコなど数多くの種類があります。トンボや蝶(ちょう)などを立体的に表現する「立体的型物」というものもあります。
ポカ物は上空に達した後、合わせ目に沿って玉が2つに割れ、中に入っている星や細工物などが落ちてくるものです。
柳
柳は、上空で玉が軽く破裂し、中の星が柳のように垂れ下がりながら落ちていくものです。
蜂
蜂は、ブルルンという音を発しながら、中の星が不規則に回転するものです。
花雷(はならい)
花雷は、音花火が白い花のようにさく裂するものです。
半割物は、割物とポカ物の中間に当たるもので、割火薬が割物より少なくポカ物より多いのが特徴です。特徴は、花火玉の中にさらに小さな花火玉がたくさん入っているもので、小さな花火玉の種類を変えることで多彩な表現を見せることができます。代表的なものに、千輪菊、小割などがあります。

以上(2022年9月)
pj96804
画像:sunftaka77-Adobe Stock
画像:pixabay
少し前ですが、私の父が長年勤めた職場を定年退職し、家族そろってお祝いをすることになりました。少し奮発して、あるホテルでお祝いをしたのですが、そのホテルの対応にとても感動したので、皆さんにもお話ししたいと思います。
私はお祝いの当日、父と母とホテルで待ち合わせをすることになっていました。しかし、当日に両親から少し遅れて到着するとの連絡があったため、私は先にチェックインを済ませ、スタッフの方に部屋まで案内していただきました。私の荷物の中に父に渡すプレゼントがあったからか、スタッフの方が、「今日は何かお祝いでいらっしゃったんですか?」と私に尋ねました。私は「えぇ、父の定年退職の祝いです」と答えましたが、間もなく両親が到着したので、スタッフの方との会話はそこで一旦終わりとなりました。
驚いたのは、その日の夕食でした。ホテルで父と母と食事を楽しんでいたのですが、最後のほうになって、先ほどとは別のスタッフの方がテーブルに小さなケーキを運んできました。そこには、チョコクリームで「ご退職おめでとうございます」の文字が。父が驚いて「これはどういうことですか?」と尋ねると、スタッフの方は笑顔で「お客さまの退職祝いと息子さまから伺いましたので、ささやかですが私たちからもお祝いさせてください」と答えました。私がホテル側に頼んだわけでもないのに、わざわざ気を利かせて、父のためにケーキを用意してくれたのです。
私が感動したのは、このホテルが、スタッフの方と私とのちょっとした会話の中で出てきた「父の退職祝い」というワードを、「家族での夕食」という最高のタイミングでサービスにつなげてくれたことです。私がホテルに到着したのは夕方ごろで、夕食までさほど時間もなかったのですが、そのわずかな時間を使ってホテル内で連携を取り、本来の夕食のメニューとは別に、できる限りのサプライズを用意してくれたのです。
私はこのホテルの対応に今でも感謝していますし、スタッフの方々を心から尊敬しています。恥ずかしながら、もし私がこのホテルのスタッフだったとしたら、チェックイン後のわずかな時間の会話は、「軽い世間話」ぐらいの感覚で流してしまったでしょう。「父の退職祝い」などのキーワードに気付けたとしても、その日のうちにサプライズを用意するほどの行動力があるか、というと正直自信はありません。
私たちは、日ごろから「お客さまに愛を持って接する」を合言葉にしていますが、愛というものは相手に伝わって初めて意味があります。ささいな会話にも気を配る「アンテナ」、それをサービスに昇華させる「スピード感」、私はそこにホテルのスタッフの方々の大きな愛を見ました。私自身も、自分のお客さまに愛を届けられるよう、アンテナとスピード感をもって業務に励んでいきたいと思います。
以上(2022年9月)
pj17118
画像:Mariko Mitsuda
皆さんは何かをやり始めて三日坊主で終わったことはありませんか? 正直に申し上げれば、私もあります。そのときは「やる気」ばかりが空回りしてしまったと後悔したものです。
せっかく何かを始めても、途中で投げ出してしまうのはもったいないことです。そこで、「やる気」に頼らずに努力を続けられるような仕組みを作ってみてはいかがでしょう。
例えば、私の友人でこんな人がいます。その友人は、「健康のために自宅の最寄り駅から1つ離れた駅を使うようにした」と言います。朝は少し早めに自宅を出て、1駅分歩いて電車に乗り、帰宅するときは1つ手前の駅で電車を降りて1駅分歩いて家に着くという具合です。ところが、彼はこれを始めて2週間ほどで挫折しそうになりました。最初の1週間は「健康のため」というモチベーションが高く、また、普段と違った道を通るので新鮮な気持ちで歩けたそうです。しかし、翌週に入って残業や雨で歩けない日が3日ほど続き、「やる気を失ってしまった」そうです。
ここまでならよくある話です。しかし、彼はここで終わらず、再度歩き始めました。以前と違うのは、「やる気だけでは長続きしないから、通勤定期の区間を1駅短く買った」ということです。
彼は「やる気」だけではものごとを継続できないことを知り、思い切って「仕組み」を変えたわけです。帰宅が遅くなった日や雨の日などには1駅分の料金を払って最寄り駅を使うので、さほど苦にはならないそうです。
やる気だけでは続かないのは、仕事でも同じです。例えば、新しい仕事を担当したばかりのときなどは、「さあやるぞ!」とやる気にあふれているものです。しかし、その仕事もやり続けていると、慣れたり、飽きたりして、だんだんと「やる気」が薄れていきます。そして、やる気を取り戻せないまま、仕事がおざなりになってしまっては、仕事の効率は下がる一方です。
このようなことを避けるためには、やる気に頼らずに継続するための仕組みを作り上げることです。例えば、「その日の仕事は1カ所にまとめて置いておき、終わるまで帰らない」、そして「1日の仕事が増えすぎないように、全体の予定から逆算して週末に翌1週間分のスケジュールを必ず作る」といった具合に、仕事の予定を立てるための自分なりの仕組みを作ってしまうのです。そうすれば、仕組みに応じたスケジュールで動くことができるようになり、やる気で成果が左右されることは少なくなるでしょう。
もちろん、常にやる気に満ちて仕事に取り組んでいる姿が理想です。けれども、そのやる気は皆さんが成果を上げているからこそ持続するものです。仕組みを上手に作って、成果を残すことができれば、皆さんのやる気の維持にもつながることでしょう。そうして、良い循環を作っていけるような仕事をしていきましょう。
以上(2022年9月)
op16556
画像:Mariko Mitsuda
出所:「燃える闘魂」(毎日新聞社)
冒頭の言葉は、
ということを表しています。
稲盛氏は、心をベースとした経営を説くなど、経営において「心」が重要な要素であると考え、また、それを実践することで、オイルショックをはじめ、さまざまな困難を乗り越え京セラを世界的な企業へと導いてきました。また、最近では、2010年1月に会社更生法の適用を申請した日本航空グループ(現日本航空株式会社。以下「JAL」)の再生に尽力した稲盛氏ですが、順調に再生への歩みを進めることができた要因も、従業員の心の変化にありました。
JALの再生に際しては、賃金ダウンなどの労働条件の悪化、路線の大幅な縮小、航空機をはじめとした機材や設備も当初は更新せずに古いものを使用するなど、再生に対して“追い風”となる要素は、ほとんどありませんでした。こうした厳しい状況の中で、良い方向に変わったものは、人の心であったと稲盛氏は述べています。
稲盛氏は、当初、「倒産した」という危機意識が希薄な従業員などに対して、その事実を認識させると同時に、「人間として正しいことを追求する」を経営の判断基準とするなど、京セラなどで実践してきたことを研修などを通じて伝えて、従業員の意識改革に取り組みました。その結果、幹部、従業員一人一人の中に、自分のためだけではなく、会社のため、お客さまのため、社会のために何ができるかという真摯な心が根付いてきました。こうした心の変化が“追い風”となりJAL再生の大きな原動力になったのです。
経営における心の重要性を知る稲盛氏の目には、経営不振の原因を経済環境や市場動向といった外部環境に求めることのある最近の経営者は「燃える闘魂」が欠けていると映っています。「燃える闘魂」とは、弱肉強食の厳しいビジネスの世界で勝ち抜いていくためには、いかなる格闘技にも勝る激しい闘争心が必要だということを示したもので、稲盛氏が事業を成功に導くための普遍的な要諦をまとめた「稲盛経営12カ条」(注)の一つとしても知られています。稲盛氏は、敗戦後の厳しい環境の中から、世界的な企業を育て上げてきた松下幸之助氏や本田宗一郎氏などの名経営者たちの姿や、自身の経験から、定めた目標を何がなんでも実現してみせるという強い心があれば、どんな困難でも乗り越えられると言います。稲盛氏のその信念は次の言葉にも表れています。
「不可能を可能に変えるには、まず『狂』がつくほど強く思い、実現を信じて前向きに努力を重ねていくこと。それが人生においても、また経営においても目標を達成させる唯一の方法なのです。」(**)
経営者であれば、誰しもが、情熱を持って経営に当たっているはずです。しかし、経営者も人間である以上、困難な状況に直面したり、思うような成果が得られなかったりしたときには、諦めや弱気な気持ちが心中をよぎることもあるでしょう。また、外部環境という経営者自身がコントロールできない要因に経営が翻弄されてしまうことも紛れもない事実です。
しかし、トップである経営者が、「もう無理だ」と諦めてしまえば、会社が成長・発展する道は閉ざされてしまいます。逆に、いかなる状況に直面しても、経営者が「燃える闘魂」を持ち続けて経営のかじ取りを行えば、それが企業を成長・発展させる原動力となり、前進するための道を切り開いていくことができるのです。
そうした意味では、本当に困難な状況に直面したときでもなお、「何がなんでも企業を成長に導く」「必ず目標を達成する」という不退転の決意を経営者が持つことは、厳しいビジネスの世界で会社が生き残っていくための必須条件といえるでしょう。
(注)「稲盛経営12カ条」とは、「1.事業の目的、意義を明確にする」「2.具体的な目標を立てる」「3.強烈な願望を心に抱く」「4.誰にも負けない努力をする」「5.売上を最大限に伸ばし、経費を最小限に抑える」「6.値決めは経営」「7.経営は強い意志で決まる」「8.燃える闘魂」「9.勇気をもって事に当たる」「10.常に創造的な仕事をする」「11.思いやりの心で誠実に」「12.常に明るく前向きに、夢と希望を抱いて素直な心で」の12カ条からなります。
本稿は、注記の各種参考文献などを参考に作成しています。本稿で記載している内容は作成および更新時点で明らかになっている情報を基にしており、将来にわたって内容の不変性や妥当性を担保するものではありません。また、本文中では内容に即した肩書を使用しています。加えて、経歴についても、代表的と思われるもののみを記載し、全てを網羅したものではありません。
いなもりかずお(1932~2022)。鹿児島県生まれ。鹿児島大学卒。1959年、京都セラミツク株式会社(現京セラ株式会社。本稿では「京セラ」)設立。1966年、社長就任。
(*)「燃える闘魂」(稲盛和夫、毎日新聞社、2013年9月)
(**)「生き方 人間として一番大切なこと」(稲盛和夫、サンマーク出版、2004年8月)
「稲盛和夫 OFFICIAL SITE」(京セラ株式会社)
以上(2022年9月)
pj15100
画像:mariyaermolaeva-shutterstock
東南アジアなど海外の人と一緒にビジネスをしたい、海外に進出したい。途上国の人たちの役にも立ちたい。けれど、実は現地に行ったこともないし、人脈もない、言葉も不安……。
そんな経営者の方は、ぜひこの記事をお読みください。この記事では、ソーシャルマッチ(代表取締役社長の原畑実央さん、取締役副社長の樋口麻美さん)へのインタビューを紹介します。同社は、東南アジアの社会問題解決のために、現地の企業・団体と日本企業とのマッチング事業を行っているスタートアップです。カンボジアを中心に、東南アジアで提携する企業・団体は100を超え、現地に進出している日本企業でも届かないような、独自の太いパイプラインを多く持っています。原畑さんたちが、こうした現地との「深いつながり」を築けた秘訣は、
オープンマインドであること
です。インタビューから見えてきた具体的な実践方法をまとめたのが、次の7カ条です。
以降では、ソーシャルマッチの代表である原畑さんのお話をメインにご紹介します。この記事から、途上国、ひいては海外での取引を円滑にするヒントが見つかれば幸いです。
学生時代に東南アジアを旅行したときに、カンボジアでは特に、日本にはないエネルギーや“カラフルさ”を感じ、ワクワクした憧れを抱くとともに、この社会で学ばせてもらいたいと思いました。
カンボジアは東南アジアの中でも「まだこれから」と言われるのですが、たくさんの人がバイクに乗っていたり、バイクで大量の荷持を運んでいたり、路上で家族や仲間たちが集まって飲んだり食べたりする姿に、力強さと温かさを感じました。友人のアフリカ系の米国人もそうなのですが、彼らには日本人にはない、底抜けの明るさと、人としての力強さがあります。
大学卒業後は、日本の製品で東南アジアの人たちの生活に役立ちたいと考えて、アリババで1年半勤務したのですが、海外で働いている先輩の話を聞いてとても羨ましくなり、思い切ってカンボジアにある日系の人材紹介会社に転職しました。

私は学生時代から社会問題にとても関心があり、社会問題について話し合い、解決に取り組んでいる方を訪れるツアーを開催する団体を立ち上げたこともあります。
カンボジアは発展が始まったばかりで、経済格差が大きく、国の社会福祉制度も整っていません。ですから、夜間に働き学校に行けない子供や、路上で生活をする障害者など、社会問題が目に付きやすい国でもあります。
こうした社会問題を自分だけでは解決できないと思っていたのですが、カンボジアの中にも、社会問題の解決を目指す社会起業家の方がいます。国がサポートできない分、社会問題を解決するには、現地(カンボジア)の民間企業やNGOなどの団体の力がより重要になります。
彼らを応援したくて、仕事の傍ら、彼らの活動を取り上げるインタビューメディアの運営や、一緒にイベントを開催するなどの活動をしました。ちょうどこの頃、大学を休学して、カンボジアの教育支援の団体で1年間のインターンシップをしていた樋口さん(現ソーシャルマッチ取締役副社長)と出会いました。
社会問題の解決を目指している人たちの輪が広がる様子を目の当たりにして、「自分の価値を発揮できるのは、この分野ではないのか」と考えるようになりました。そして、カンボジアに移住してから3年後の2019年12月に、樋口さんとともにソーシャルマッチを起業しました。
起業して法人登記は日本で行い、カンボジアに長期出張する形で、現地の提携先探しを始めました。
提携したいと思った先には、何回もオフィスにお伺いしてお話しさせていただいたり、「現地の社会問題の解決のために取り組みたい」という情熱や思いを伝えたりしました。
日本人である私は、現地の方々とバックグラウンドが違いますし、相手から見れば「どのような人物かも分からない」ので、警戒されやすいのは当然です。そこで、まずは自分のことを分かりやすくプレゼンテーションするようにしました。海外では、自分でいかに自己主張し、自分をPRするのかが、ビジネスチャンスをつかむ上ですごく重要なことだと思います。積極的にコミュニケーションを取っていくことで、さまざまなチャンスをいただいたり、多くの企業・団体との提携に結び付いたりしました。
こうしたネットワークを活かすことで、日本企業と、1000人のカンボジア農家とのネットワークを持った現地の社会起業家とをつなぐこともできました。提携先の力を借りなければ、とてもできないことだと思います。
カンボジアの提携先の方々は皆さん英語を話されるので、ビジネスでは英語を使っています。特に東南アジアの人たちに対しては、片言の英語であっても、自信を持って話して大丈夫だと思います。東南アジアでは英語は第二言語なので、それほど文法は気にしない人が多いですし、比較的分かりやすくゆっくりと話してくれるので、とても理解しやすいです。
こちらの話も、ちゃんと聞こうとしてくれたり、「これはこういうことだよね?」と聞いてくれたりします。ですから、間違えてもいいので、取りあえず話していくことが大事だと思います。私も、「通じていないだろうな」と思いながら話していることもあります(笑)。
英語は、話す「場」を積まないと、うまくならないものです。恥をかいた分だけ強くなり、上達もするので、取りあえずアウトプットすることが大切です。実は私自身も、英語力を磨くために、音声SNSを使って、飛び込みで知らない海外の人と英語で話すチャレンジをしてきました。ドキドキしながら話して、たくさん失敗して恥ずかしい思いをしたおかげで、生きた英語を身に付けることができたと思います。
それから、上手に話そうとするよりも、一生懸命に話している気持ちを伝えることが大事です。心から発した情熱や態度は、相手に伝わるものだと思います。言葉が未熟でも、「この人の話なら聞いてみよう」と思ってもらえることがあります。言葉は50%くらいで、後は声の大きさや表情、友好的な態度などの要素が影響するのではないでしょうか。
ただし、事前準備として、少なくとも英語でのプレゼンテーションの練習や、話をしに行く相手の事業のリサーチ、話題になりそうな業務に関する英単語のチェックなどはしておいたほうがいいと思います。
私たちがマッチングさせていただく基準として、現地も日本側も、社会問題の解決やSDGsに取り組む企業・団体であることを前提としています。そのため、紹介した企業・団体は、互いの姿勢や取り組みを評価し、共感し合えることが、ソーシャルマッチの強みになっています。共感し合うことで、ビジネス上というよりも、精神的なつながりによって、「同志」のような関係を築けていると思います。

そもそも、私たちが東南アジアのこれだけの企業・団体と提携できているのも、「社会問題の解決を目指しているソーシャルマッチだから」ということがあります。例えば現地の大手商社のトップの方など、代表の方に目をかけていただくことで、トップダウンで話が進むという側面が少なくありません。それは、ご依頼いただく日本の企業も同じです。
そのような両国の企業・団体であるからこそ、チームとして同じ思いを持ち、一丸となって共同プロジェクトを進められるのだと思います。今はオンラインによる面談が多いのですが、それでもスムーズにいくのは、目指すべきもの、つくりたいものが一緒であるからだと実感しています。
長期的に見ると、例えば自社の利益だけを考えて、自然環境や現地の雇用者の労働環境をないがしろにしているような企業は、事業を継続することが困難になる可能性があると思います。
成長著しい東南アジア市場に進出してくる企業が増えています。私たちが事業領域にしている社会課題の解決をテーマとした分野では、現地の人たちと友好的な関係が築けない企業は、取引先やお客さまからの評価にも影響しますので、次第に選ばれなくなるのではないかと思っています。
逆に言うと、自社のプロダクトやブランド自体がそれほど強くない企業であっても、取引をしたい先としっかりとコミュニケーションを取り、目指している世界を共有することによって、優先的に取り組んでいただいたり、良い条件で協働できたりすることがあります。一般的な企業に広く当てはまるわけではないかもしれませんが、少なくとも社会課題の解決を重視し、取引先とともに発展したいと考える日本の中小企業にとっては、魅力的な市場環境だといえるかもしれません。
私たちは、東南アジアの提携先の企業・団体の方々とは、こまめに、友人や仲間のような感覚でコミュニケーションを取っています。SNSもよく活用していて、例えば相手の誕生日や、何かの賞を受賞されたときなどには、お祝いのコメントをしています。
そのようなことをしているのは、ビジネスのことを意識してというよりも、純粋に「相手のことが好きだから」だと思います。
私たちはずっと社会問題の解決に関心があるので、自分のためでなく社会のため、未来のために活動している人たちがとても好きです。自分の人生を使って、命を懸けて社会問題を解決しようとしている人たちは本当に格好良いですし、尊敬しています。
自分の好意は相手にも伝わるもので、それは取引先やお客さまに対しても同じだと思います。心でつながっていると、「ソーシャルマッチだから」と優遇していただいたり、良い条件で協働していただいたりすることもあります。
特にカンボジアの人たちは、ある意味、日本の下町のように情に厚いところがあって、個人的なつながりをとても大切にしていると思います。私たちがカンボジアにほれ込んでいる魅力の一つかもしれません。
カンボジアの企業・団体との協働は、順調に進むことばかりではありません。気を付ける点が幾つかあります。
何よりも、現地の文化や商慣習を知っておき、それを受け入れ、尊重することが大事です。例えば、日本との大きな違いの一つは、納期が日本に比べて厳格ではないことです。これはもう仕方のないことだと思って、途中で進捗状況を確認する、実際の納期よりも余裕を持って締切日をお伝えするなどで対処するしかありません。カンボジアには長期の休みもありますし、日本人のように、納期を厳守するために休みを返上するというような意識は薄いです。これは、良いとか良くないとかの問題ではなく、もともとそういう文化なのです。そこを理解することが大事です。
また、商品のクオリティーに対する感覚も日本人とは違います。色合いや縫製など、発注時のイメージと異なる仕上がりになることが少なくありません。そのため、現物を見て確認しておく、最初は小ロットから取引を始める、サンプルをいただいて事前に改善点を伝えておくなどの対応が必要になります。クオリティーに関しては、「日本の基準や認識とは違う」ことを前提にして、その違いをどのように埋めていくか、齟齬(そご)が生じたときに、どのようにリカバリーしていくかを考えておくことが大事です。
これは日本国内でのビジネスも同じですが、口頭で合意したことでも、認識が完全に一致しているとは思わないことも大切です。たとえ先方が「イエス」と言っても、認識が一致していないことがあります。取り決めは必ず文面で残し、重要な内容は契約書に残しておくようにしておきましょう。
また、日本とはインフラの整備状況が異なるということも認識しておく必要があります。カンボジアの場合、特に地方に行くと電波(通信)がつながりにくく、緊急の連絡が取れなくなることがあります。取引上の重要な時期は、相手のスケジュールを事前にチェックし、相手が地方に行く日時なども把握しておくとよいでしょう。また、停電も起きやすく、電力不足で停電になることも想定しておくべきです。
日本企業と現地(カンボジア)の企業・団体のマッチングが失敗する原因の一つに、意思決定やスピード感の違いがあります。
カンボジアでは今、経済成長に勢いがあるので、チャンスがあればすぐに飛びつかないと乗り遅れてしまいます。ですので、カンボジアの社会起業家の方はかなりスピード感があります。一方で、日本の企業は「検討」「稟議(りんぎ)」といった時間が非常に長くかかります。日本企業が早く返答やリアクションをしていれば協働できたのに、リアクションが遅かったためにうまくいかなかったケースも少なくありません。「日本側の返答が遅いので、信頼感が薄れた」と言われたこともあります。先ほど、「文化として納期が厳格ではない」と言いましたが、「だから返答やリアクションが少しくらい遅くなってもいい」わけでは決してありません。途中経過を伝えるだけでもいいので、むしろ、リアクションはなるべく早いことが大事です。
日本の企業側がカンボジアの企業・団体に合わせて、スピード感を速めると、より協働がうまくいくと思います。
商品のクオリティーと価格のバランスが、カンボジアの消費者の目線に合わないことも、マッチングが失敗する原因の1つです(この点はソーシャルマッチ樋口さんからのお話です)。
日本の企業は、本当に現地で展開したいのであれば、現地のニーズにフィットした商品開発をすべきです。現地の社会起業家の方々は消費者のニーズを熟知していて、「この商品はこの価格では売れない」「この価格まで下げれば売れる」ということが分かっています。日本の考え方を押し付けるのではなく、彼らの意見を取り入れ、現地に最適な商品を開発したほうがいいと思います。
カンボジアの人たちは、ビジネス上の連絡手段としてSNSを多用しており、急ぎの連絡などは、メールよりもSNSのほうが早くつながります。スピード感がとにかく大事ですので、コンタクト先とはSNSでつながっておき、リマインドなどもSNSを活用するとよいでしょう。
また、現地の祝日を把握しておくことも大切です。先ほど述べたように、カンボジアの人たちは休日はしっかり休みますので、祝日が続く間は工場の稼働がストップします。現地のカレンダーを踏まえたスケジューリングが必要になります。
先ほど述べたように、カンボジアの企業・団体には、日本の企業にはないスピード感があります。また、東南アジアを中心とした海外展開にも積極的で、ビジネスに携わる人の多くは英語を話すことができます。
カンボジアの企業・団体のトップの方々は人間的に温かい方が多く、社員や職員とファミリーのような関係を築き、一体感のある組織をつくっているケースが少なくありません。日本人より楽観的で積極的なところ、「底抜けに明るい」ところも大きな魅力です。
途上国の取引先とは上下の関係はあり得ません。オープンマインドを持って、学ぶべきところは謙虚に学ぶ、教えていただくという姿勢を持つことが大事だと思っています。
原畑さん、樋口さん共に、「東南アジアの方々や日本の中小企業の役に立つことがライフワークである」という思いを持っています。

日ごろのビジネスは、もちろんキラキラしたことだけではありません。失敗や泥臭いこともたくさんありますが、それでもなお東南アジアと日本の中小企業のために前に進めるのは、そうした確固たる思いがあり、その活動が心から楽しいからでしょう。そんなソーシャルマッチは、オフィス選びにもブレがありません。古民家を改装した一軒家の一室です。なぜなら、「日本の社会課題である【空き家問題】の解決に少しでも役に立てればと思って」だそうです!
以上(2022年8月)
原畑実央(はらはた みお)
松山大学在学中に社会問題をディスカッションする団体を立ち上げる。
社会問題を解決しようとする人の講演会の主催や、活動の現場に訪れるツアーを開催する。
大学卒業後、アリババジャパンに入社。日本企業の海外販路開拓支援に携わる。その後、カンボジア移住し、カンボジアで最大手日系人材紹介会社CDLで3年間マネジャーを務める。
2019年にソーシャルマッチ株式会社を立ち上げる。
2021年度のSDGs Quest みらい甲子園首都圏大会の実行委員に就任。
樋口麻美(ひぐち あさみ)
幼少期はアメリカ、南アフリカ、オーストラリアで育ち、途上国各国でインターンシップを経験。
同志社大学在学中にカンボジアで教育支援NGOを現地の人と設立し日本支部代表として資金調達に務めた。卒業後、IT人材ベンチャーONE CAREERに入社。その後、ソーシャルマッチ株式会社の立ち上げに参画。
pj80146
チャネル戦略で考えるべきポイントは次の2つです。
基本的なチャネル構成は、チャネルのコントロール性とチャネルメンバーの数に基づいて、「開放的チャネル」「排他的チャネル」「選択的チャネル」の3つに大別できます。まずは、自社に適したチャネルを検討することから始めます。
消費者の高い購買頻度に対応するため、できるだけ多くの卸売・小売業者などを通じて販売する形式です。いわゆる最寄り品に適しています。ただし、数多くのメンバーでチャネルを構成するため、コントロール性は最も弱い形態となります。
チャネルを最小限に制限する形式です。チャネルメンバーが限られる分、コントロール性は高くなります。ブランドイメージの維持が重要な場合や、アフターサービスを通じて消費者に質の高いサービスを提供する場合などに適しています。
開放的チャネルと排他的チャネルの中間の形式です。チャネル数を絞り込んでブランドイメージを維持しつつ、ある程度幅広いチャネルを通じて製品を販売します。
開放的チャネルなどは、製造・卸売り・小売りの各業者の独立した活動を想定しています。しかし、製造・卸売り・小売りのチャネルメンバーが一体的に活動することもあり、こうした統合的なチャネル構成を「垂直型チャネルシステム」と呼びます。具体的には、「企業型システム」「契約型システム」「管理型システム」の3つです。
企業型システムは、チャネルが1つの企業、あるいは資本関係にある企業体で構成されている形態で、チャネル間の統合度が最も高くなります。中小食品業者などが製品を製造し、自社小売店舗において販売するケースなどが該当します。
契約型システムは、各チャネル構成員に資本関係はないものの、契約関係によって結合されている形態です。チャネル間の統合度は、企業型システムと管理型システムの中間程度となります。フランチャイズチェーンなどが該当します。
管理型システムは、資本関係や厳密な契約関係はないものの、リベートなどの経済的なメリットや、さまざまな情報や専門的なノウハウなどの非経済的なメリットを提供できる企業を中心に、チャネルが構成されている形態です。
企業型システムのような自社独自のチャネルは、チャネルを構築するために多額のイニシャルコストが発生します。また、構築したチャネルの維持に固定費が常に発生することになります。一方、リベートなどの変動費は低くなる傾向があります。
契約型システムや管理型システムのように、他社を活用してチャネルを構築する場合、イニシャルコストやチャネル維持に掛かる固定費は低く抑えることができます。しかし、リベートなどの変動費は相対的に高くなる傾向があります。
コントロール性とは、チャネルメンバーを自社の戦略や意図などに沿って、どの程度コントロールできるかということです。コントロール性が問題となるのは、契約型システムや管理型システムのように、他社を活用してチャネルを構築する場合です。
個々に独立した企業であるため、各メンバーは自社の利益を優先して行動します。そのため、自社の方針とチャネルメンバーの間で利害の対立が発生する危険性があるので、チャネルメンバーの行動をどれだけコントロールできるかが重要になります。
有効性の高いチャネルを構築したとしても、経営環境の変化によってはチャネル構成を変えなければならないことはよくあります。このため、構築するチャネルは、環境の変化に適応できる柔軟性を備えたものが好ましいといえるでしょう。
適応性という観点で考えれば、ヒト・モノ・カネといった多くの経営資源を投入して、自社独自のチャネルを構築・維持しなければならない企業型システムは、その形態を変更しにくい面があり、リスクの高い選択肢といえるかもしれません。
複数の企業が関係するチャネルには、チャネル全体に大きな影響を及ぼすチャネルリーダーが存在します。例えば、大手量販店が関連しているチャネルでは、大手量販店が価格設定、製品開発、プロモーションなどさまざまな面で大きな影響力を発揮しています。
チャネルリーダーの中には、「経済性」「コントロール性」「適応性」というチャネルの評価基準に関する項目について、自社にとって理想的な形のチャネルを構成している場合も少なくありません。
チャネルリーダーとなる企業はわずかですが、できる限りチャネルリーダーとしての地位を確立することが望ましいのは間違いありません。そのためには、チャネル内の力関係を決定する要因を理解しておく必要があります。
チャネル内の力関係を理解する上で参考になるのが、他のチャネルメンバーをコントロールできるチャネルパワーの源泉を知ることです。
チャネルパワーの源泉は、経済的パワーの源泉と非経済的パワーの源泉に大別されます。経済的パワーの源泉とは、経済的なメリットをいい、リベートなどの金銭的報酬が代表的なものとなります。
一方、非経済的パワーの源泉には、契約における規定、店舗運営や製品開発能力など専門的な知識、大手小売りチェーンが持つPOS情報や顧客情報など、経済的パワーの源泉以外のさまざまな要因が含まれます。
チャネル内の力関係は、チャネルパワーの源泉に対する依存度で決まります。製造業者が提供するリベートの依存度が高い場合、製造業者の力が強くなります。逆に、製造業者が売り上げの大半を特定の小売業者に依存する場合、小売業者の力が強くなります。
チャネルメンバーとして複数の企業が参加する場合、利害が衝突してチャネル内で一体的な活動が困難となるケースがあります。このようなチャネル・コンフリクト(チャネル内の問題)が発生した場合、速やかに解消する必要があります。
チャネル・コンフリクトは垂直関係、水平関係、複数チャネル間で発生する可能性があります。垂直関係におけるコンフリクトとは、製造業者・卸売業者・小売業者の間で問題が発生するケースで、製造業者が卸売業者や小売業者に対するリベート制度の見直し(削減)を行うことなどによって起きます。
水平関係におけるコンフリクトとは、各製造業者間・卸売業者間・小売業者間で発生するケースです。例えば、テリトリー制を認めていないフランチャイズチェーンでは、近隣に商圏の重なる店舗があれば、これらの店舗間でコンフリクトが発生することがあります。
複数チャネル間におけるコンフリクトとは、異なるチャネル間で発生する問題です。例えば、家電製造業の場合、定価で製品を販売して利益を確保したい系列店チャネルと、割引販売を旨とする量販店やディスカウントストアで問題が発生することがあります。
チャネル内で問題が発生する要因はさまざまですが、一般的には「目標の不一致」「現状認識の不一致」が多いようです。
例えば、リベート制度の見直し(削減)について考えてみましょう。製造業者にとってリベート制度の見直しは、過度の値引きの源泉となることを防ぎ、市場価格を適正に維持することを可能にする仕組みづくりを目的としているのかもしれません。
しかし、その製造業者の製品が数多くの取り扱い製品の1つでしかない小売業者にとっては、その製品自体から得られる利益が小さくても、顧客がその製品とともに収益性の高い別の関連製品を購入してくれれば、収益が確保できると考えているかもしれません。こうした目標の不一致がコンフリクトを発生させる要因となります。
また、製造業者はリベート制度を見直しても、従来通りの売り上げを確保できると考えますが、小売業者は多くの競合製品が安売りを続けている以上、値引き販売の原資となるリベートが削減されれば、売り上げが大きく低下すると考えている可能性があります。このような現状認識の不一致もまた、コンフリクトの要因です。
チャネルリーダーであれば、「チャネルパワーの源泉を使ってコンフリクトを解決する」ことが考えられます。例えば、自社の販売方針に従った企業に対してリベートを手厚く支払い、従わない企業にはリベートの支給額を減らすなどの方法です。
この他、「話し合いや契約内容の見直しなどをして、共通目標の確認・再設定を行う」「チャネル間の人材の交流機会を設け、相互理解を深める」などがあります。これらは、チャネル内の地位に関係なく取り組むことができます。
以上(2022年8月)
pj80025
画像:unsplash