厚生労働省は今年7月、「令和3年度雇用均等基本調査」の結果を取りまとめ、公表しました。この「雇用均等基本調査」は、男女の均等な取り扱いや仕事と家庭の両立などに関する雇用管理の実態把握を目的に、毎年実施されている調査となります。
本稿では、公表された「令和3年度雇用均等基本調査」の概要を紹介するとともに、関連して「改正女性活躍推進法」に基づき義務化される情報公表などの内容をお伝えします。
【朝礼】習慣を変えて、柔軟な視点を持とう
みなさんは、仕事や普段の生活のなかで「なんとなく行き詰まってしまった」と感じることはありませんか? 仮に、行き詰まりとまではいかなくても、ワンパターンの行動が毎日続き、「自分はいつも同じようなことを繰り返している」と思っている人はいるでしょう。そして、なんとなく毎日の仕事や生活に充実感が感じられないという人もいるのではないかと思います。
そんなときは、考え方が硬直して広い視野でものを見られていない可能性が高いように思えます。
人間は習慣の動物です。ある程度行動を習慣化してしまえば、精神的にも肉体的にも慣れてしまうため、その方が心理的にも楽だからです。運動や勉強など、よいことは習慣づけるべきだといわれるのも、そうすることで楽に続けることができるからでしょう。しかし、こうした人間の心理にこそ、大きな落とし穴があるのです。
実は、仕事にせよ、生活にせよ、あまりにも習慣化が過ぎると、周りで起こる出来事を固定観念でしか解釈できなくなるという弊害が起こってしまいます。先ほど、人間は硬直した考え方にとらわれがちであるといいましたが、言い換えれば、普段の習慣からくる思い込みが考え方の幅を狭め、それが仕事や生活での行き詰まり感や充実感の喪失につながっていくのです。
ここで、みなさんに心がけていただきたいことがあります。それは、自分の固定観念にとらわれずに、柔軟な視点を持とう、ということです。
柔軟な視点を持つといっても、簡単にできるものではないように思えるかもしれません。確かに、それはある意味で人間の心理に逆らうということですから、決してやさしいことではないでしょう。
そこで、私から一つ提案があります。それは、「自分のこれまでの生活習慣を少しだけ変えてみませんか」ということです。例えば、朝少しだけ早く起きて、いつもとは違うニュース番組を見るのもよいでしょうし、通勤のときに通る道を、時々変えてみるのもよいかもしれません。きっと、何か新しい発見があるでしょう。環境が許す方ならば、犬を飼えば、散歩などで以前とは行動範囲が変わってきますし、それまでは気付かなかったペット商品に注意がいくようになるかもしれません。
習慣を変えるのは仕事のときでも構いません。これまで、週ごとにまとめてやっていた伝票処理を毎日行ったり、午後に訪問することが多かったお客様を午前中に訪問してみるなど、お客様や仕事の効率に支障が出ない限り、ちょっとした習慣を変えることで、新しい何かが見えてくると思います。
有名な画家のピカソは、一生の間に何回か作風を大きく変えています。彼は、初期に高い評価を受ける作風を完成させたにもかかわらず、ある段階でそれまでの自分の作風を壊して、全く新しい作風を再構築しました。
これは、固定観念を捨てて柔軟な視点を持てた人の一例だと思います。私たち普通の人であっても、こうした変化を求める意識を少しでも持つことで、新しいものが生み出せるのだと、私は信じています。
以上(2022年10月)
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画像:Mariko Mitsuda
【朝礼】豊臣秀長に学ぶ「支えてくれる人のありがたみ」
今日は、部下を持つ管理職の方々に集まってもらいました。本題に入る前に、まず皆さんにはお礼を言います。皆さんは日ごろ、自分が持っている業務で多忙な中、時間の合間を縫って部下の面倒をよく見てくれています。彼らがしっかりと仕事をこなせているのは、皆さんのおかげです。
ここから本題になりますが、一方で、皆さんに考えてほしいことがあります。それは、皆さんが部下を支えているだけでなく、皆さんも部下から支えられていることを意識してほしいのです。今日はそれを考えてもらうために、戦国時代の武将、豊臣秀長(とよとみひでなが)の話をします。
秀長は、天下を統一した豊臣秀吉の実の弟です。秀吉と同じく農民の出身だったといわれていますが、農民から織田家の家臣になった秀吉にスカウトされ、彼の下で働きます。秀長は、秀吉が明智光秀に勝利した山崎の戦いなど、負けられない重要な戦いに数多く関わっていて、そのたびに与えられた役割を着実にこなし、兄の勝利に貢献してきました。
秀長は秀吉をサポートする補佐役に徹していたため、兄に比べると目立ちませんでしたが、その温和な人柄で多くの人に好かれていて、諸大名と秀吉の間を取り持つ仲裁としての役割、秀吉が行き過ぎた際にいさめるストッパーとしての役割など、彼にしか果たせない仕事を数多くこなしていたようです。だからこそ、秀長が病死した後、豊臣家の雲行きは怪しくなっていきます。
秀長というストッパーを失った後の秀吉は、家臣に理不尽な切腹を命じる、中国侵攻をもくろんで諸大名に朝鮮出兵を命じるなどの失策が目立っていきます。もし秀長の死後に、秀長に代わる人材がいれば、豊臣家が徳川家康に天下を奪われることはなかったかもしれません。
私は、秀吉は秀長に対して、「弟だから支えて当たり前」という甘えもあったのではないかと推測します。もし秀吉が秀長の役割を、一人の部下として評価していたら、秀長亡き後に「第二の秀長」を育てようとしたのではないかと思います。
さて、仕事の話に戻りますが、改めて管理職の皆さんに考えてほしいのは、部下に対して「面倒を見てやっている」「何かをしてやっている」という思いばかりが先行し、彼らへの感謝を忘れてはいないか、ということです。皆さんがいてくれるから部下は仕事をこなせますが、部下の人たちも、ただ与えられた仕事だけをしているわけではありません。彼らもまた、皆さんの指示をさらにかみ砕いて、自分より若手の社員に伝えたり、目に見えないところで皆さんの雑務を引き受けてくれたりしています。そうした1つ1つの働きによって、会社は回っているのです。
私にとって管理職の皆さんはなくてはならない存在であるように、皆さんにとっても部下はかけがえのない存在なのです。私も含め、自分を支えてくれる人のありがたみをかみ締めて、改めて業務にまい進していきましょう。
以上(2022年10月)
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画像:Mariko Mitsuda
円安の追い風も! 外国人観光客の受け入れ再開で到来したビジネスチャンス
書いてあること
- 主な読者:コロナ前にインバウンドの恩恵を受けた宿泊・観光事業者、インバウンドの本格再開を見込んで新規参入を狙う事業者
- 課題:インバウンドは今後どれくらい期待できるのか、取り込むために必要なことは何か
- 解決策:2019年当時の訪日者数に戻れば旅行消費額は6兆円超の可能性も。コロナで変化した外国人観光客のニーズに対応するとともに、感染症などのリスクに備えておく
1 外国人観光客の受け入れが全面解禁!
新型コロナ感染症対策のために制限されてきた外国人観光客の入国が、2022年10月11日から全面解禁となりました。こうなると、期待したいのがインバウンドによる経済効果であり、その背景には次の3つがあります。
- コロナ前は訪日外国人数が右肩上がりだった実績
- 外国人の旺盛な訪日ニーズ(“リベンジ消費”も含む)
- 円安の追い風で「爆買い」復活の予感
この記事では、インバウンドによる経済効果を期待できる背景と、想定されるインバウンドによる経済効果についてご説明します。また、インバウンドを取り込むためのポイントとなる、コロナ前と比べて変化した外国人観光客のニーズの傾向や、感染症対策などのリスクへの備えについても触れます。
2 インバウンドの効果を期待できる3つの理由
1)コロナ前は訪日外国人数が右肩上がりだった実績
図表1のように、コロナ前の日本は、訪日外国人数が右肩上がりに増えていました。2003年以降で前年よりも減ったのは、リーマンショックの影響を受けた2009年と、東日本大震災が発生した2011年だけです。2015年には訪日する外国人の数が出国する日本人の数を逆転しています。
国連世界観光機関(UNWTO)によると、2019年の3188万人で、日本を訪れる外国人数は世界12位、アジアでは中国、タイに次いで3位に入っており、世界の上位にランクしていました。さらに、同年の国際観光収入は461億米ドルで世界7位、アジアではタイに次ぐ2位に入っていました。

政府が2016年3月に策定した「明日の日本を支える観光ビジョン」では、2020年の訪日外国人旅行者数を4000万人、2030年には6000万人という目標を掲げていました。コロナ禍によって東京五輪が延期および外国人の観戦者の受け入れが見送られたこともあり、目標は遠く及ばなくなってしまいましたが、今後の状況改善が期待できます。
2)外国人の旺盛な訪日ニーズ(“リベンジ消費”も含む)
日本政策投資銀行と日本交通公社が2021年10月にインターネットで行った「DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査(第3回 新型コロナ影響度 特別調査)」(2022年2月公表)によると、「次に海外旅行したい国・地域」の1位は日本(アジア居住者67%、米国・英国・フランス・豪州居住者37%)でした。日本を訪れたい理由で最も多かったのは、「以前も旅行したことがあり、気に入ったから」(88.0%)で、コロナ禍の間もしっかりとファンの心をつかんでいたことが分かります。
この調査では、「コロナ収束後の海外観光旅行の意向」について、「思う」と回答した人が66%いることや、「今後6カ月以内にしそうなレジャー」として、飛行機で5時間以内の海外旅行を「実施する」「恐らく実施する」と答えた人が49%に上っています。コロナ対策で行動制限を受けた“リベンジ消費”を含め、海外旅行へのニーズが高いことがうかがえます。
また、「ダボス会議」で知られる年次総会を開催する「世界経済フォーラム(WEF)」が2022年5月に公表した「旅行・観光開発指数」に関するレポートでは、世界117カ国・地域のうち、日本(31.8%)が2位の米国(30.7%)を押さえて世界1位に評価されました。旅行・観光にふさわしい「環境(ビジネス面、安全性、衛生面、ICT化など)」「政策と状況(開放性、価格競争面など)」「インフラ」「需要喚起(自然や文化などの観光資源」「持続可能性(環境面、社会経済的な回復力、旅行・観光需要の高まりに対する許容度など)」という5項目について、112の指標を分析して評価したものです。世界的に観光地としての日本が評価されている証しともいえます。
3)円安の追い風で「爆買い」復活の予感
足元の円安も追い風です。2019年は1米ドル=110円程度でしたが、2022年9月は140円台で推移しています。外国人観光客にとっては、日本円で販売されている製品を、米ドルに換算すると2019年と比べて2割以上安い価格で買える計算になります。既に来日した観光客の中には、「自国で買うよりも割安」と、日本で大量に買い物をしているとの報道もあります。
円安が続けば、かつて中国からの観光客を中心に席巻した日本製品の「爆買い」現象が、世界各国の観光客の間で復活する可能性もありそうです。
3 インバウンド再開で見込まれる経済効果
1)コロナ前のインバウンドの水準に戻れば旅行消費額は6兆円超も
観光庁の推計によると、2019年の訪日外国人(約3188万人)旅行消費額は、4兆8135億円でした。前述のように、当時と現在の為替レート(2019年は1米ドル=110円、現在は1米ドル=140円)を踏まえて、仮に訪日外国人が自国通貨に換算した消費額と同額の消費を行ったとしたら、旅行消費額は6兆1263億円に上ります。
2)宿泊・観光事業者だけではない波及効果
経済産業省は、前述の観光庁の推計を基にした訪日外国人旅行消費額の生産波及効果を、7兆7756億円と試算しています。これに伴う付加価値誘発額は4兆230億円となり、2019年の名目GDP(553兆9622億円、二次速報値)の0.7%に相当します。さらに、二次波及効果を加えた付加価値誘発額は5兆円となり、名目GDPを0.9%押し上げた計算になります。
波及効果は宿泊・観光事業者や飲食サービス事業者だけにとどまらず、商業・農林業・金融・保険など幅広い業種に及びます。
また、インバウンドに伴う日本円に対する需要の高まりや、経常収支の黒字幅が拡大することによって、円安マインドに一定の歯止め効果が出れば、円安で苦しむ企業に恩恵をもたらす可能性もあります。
4 コロナ前から変化した外国人観光客のニーズ
インバウンドを取り込むには、コロナによって変化した外国人観光客のニーズを押さえることが大切です。インバウンドを取り込むための旅行企画やPR方法は、以下のコンテンツを参照ください。
また、以下のコンテンツでは、ウィズコロナの状況下で外国人観光客のニーズに応えた特徴ある宿泊施設を紹介しています。
5 リスクに備える:感染予防や感染者が出た場合の対応
コロナへの感染リスクがなくならない中で、外国人観光客が訪日する際の最大の懸念は、何といっても日本で感染が確認された場合の対応でしょう。外国人観光客が感染などの病気・けがに見舞われた際の対処方法について、以下のコンテンツで紹介しています。
6 参考:外国人の入国制限の緩和に関する主な施策
日本政府による、外国人の入国制限の緩和の流れは次の通りです。

政府は2020年2月に指定感染症に定め、中国湖北省の滞在履歴者のある外国人などの入国を禁止して以降、禁止対象エリアを広げ、2020年12月28日から全ての国・地域からの新規入国を禁止しました。その後も入国規制の緩和と強化を繰り返しましたが、観光客の受け入れ禁止は一貫して続けていました。
以上(2022年10月)
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画像:bbernard-shutterstock
外国人観光客が感染・病気・けがをしたら、どう対応する?
書いてあること
- 主な読者:外国人観光客に感染症の陽性反応が出たときや、その他の病気やけがをしたときの対応に不安のある宿泊施設運営者
- 課題:事前の準備は何をすべきか、実際に発症したらどう対応すればよいのか分からない
- 解決策:症状に応じて外国人対応が可能な医療機関や薬局を紹介するなどの対応を行う。感染症の疑いがある場合は同行者も含め客室内に待機してもらい、相談窓口に伝える
1 外国人観光客の感染・傷病の備えをしておこう
新型コロナ感染症対策のために制限されてきた外国人観光客の入国が、2022年10月11日から全面解禁となりました。今後、外国人観光客を受け入れる宿泊施設にとって課題になるのが、「外国人観光客が感染症や病気・けがに見舞われること」です。
外国人観光客を受け入れている宿泊施設は、症状の確認や、医療機関の紹介などの対応が求められますが、まず直面する課題は、
- 外国人対応ができる医療機関が分からない(旅行業者)
- 会話対応・通訳が十分できない(宿泊施設)
- 施設現場に医療的な専門知識を有する人材がいない(宿泊施設)
ことです。
そこでこの記事では、こうした課題を解決するために、押さえておくべき宿泊施設の準備態勢と、実際に発症者が出た際の対応方法を紹介します。
2 事前準備と対応方法
外国人観光客の病気・けがに対する準備と対応について、フローチャートで紹介します。


以降では、外国人観光客の「受け入れ前の準備」「受け入れ時の対応(病気・けがをする前)」「実際に病気・けがをした場合の対応」の3つのシーンに分けて紹介します。
3 受け入れ前の準備
1)外国人対応可能な医療機関や薬局などを調べる
日本政府観光局(JNTO)のウェブサイト「日本を安心して旅していただくために 具合が悪くなったとき」では、新型コロナに対する相談窓口や医療機関の検索、医療機関のかかり方などが、日本語、英語、韓国語、中国語(繁体中文、簡体中文)で公表しています。
事前に近隣の医療機関を検索し、
かかりつけとなる医療機関の連絡先を2~3カ所程度確認
しましょう。医療機関名・連絡先・所在地の他、タクシーを使った場合の所要時間などについても調べ、「連絡先一覧」としてまとめておきます。
■日本政府観光局(JNTO)「日本を安心して旅していただくために 具合が悪くなったとき」■
https://www.jnto.go.jp/emergency/jpn/mi_guide.html
薬局については医療機関と違って、積極的に外国語対応ができることを公表していないことが多いようです。一般社団法人「くすりの適正使用協議会」では、患者に分かりやすい表現で要約した薬情報サイト「くすりのしおり」(英語版)と、市販薬を検索できる「おくすり検索」(英語版)を公開しています。
■「くすりのしおり」(英語版)■
https://www.rad-ar.or.jp/siori/english/index.html
■「おくすり検索」(英語版)■
https://search.jsm-db.info/sp_en/index.php
2)外国人対応のコールセンターを控える
医療機関の情報提供や電話医療通訳(医療機関専用)を無料で提供しているAMDA国際医療情報センター、外国人旅行者向けコールセンター「Japan Visitor Hotline」が利用できます。連絡先を受付に用意する他、ポスターやチラシを施設内に貼ったり、プリントアウトして外国人旅行者に配布したりといった準備も大切です。
■AMDA国際医療情報センター 東京オフィス■
https://www.amdamedicalcenter.com/
■外国人旅行者向けコールセンター「Japan Visitor Hotline」■
https://jsto.or.jp/news/info-190304/
全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の竹村奉文氏は、コールセンターとの連携を深めることが大切だと言います。
「まずは外国人旅行客―宿泊施設―コールセンター―医療機関の連携を進めていくことが必要です。医療は専門用語が多いし、宿泊施設のスタッフの多くは、病気の判断をできる能力をもっていません。現場で勝手な判断ができないのだから、すぐに保健所や医療機関、医療サービス会社などへ相談すべきです」
3)各種コミュニケーションツールの準備
1.救急車利用ガイド
スタッフに周知し、フロントの目のつく場所に掲示しておきます。消防庁では、16言語の「訪日外国人のための救急車利用ガイド」を作成しているので、用意しておきましょう。
■訪日外国人のための救急車利用ガイド■
https://www.fdma.go.jp/publication/portal/post1.html
また、「救急車を呼んだほうがよいか」、「今すぐ医療機関に行ったほうがよいか」など、判断に迷ったときは、
「#7119」(または地域ごとに定められた電話番号)に電話する
と、救急電話相談を受けられます。医師、看護師、トレーニングを受けた相談員などが電話口で傷病者の状況を聞き取り、「緊急性のある症状なのか」や「すぐに医療機関を受診する必要性があるか」などを判断します。
2.指さしシート
実際に外国人観光客が病気・けがに見舞われた場合、「救急車を呼ぶか」「どの診療科を紹介するか」などを判断するために、「指さしシート」を用意しておきましょう。
日本政府観光局のウェブサイト「具合が悪くなったときに役立つガイドブック」には、「症状・病状説明のための指さしシート」が収録されているので活用できます。

■具合が悪くなったときに役立つガイドブック■
https://www.jnto.go.jp/emergency/jpn/support.html
3.ヒアリングシート
外国人旅行者から体調不良について相談を受けたら、症状・状況を可能な範囲で聴き出して、ヒアリングシートに記入します。救急車を要請するときや医療機関を受診するときは、ヒアリングシートに基づいて必要な情報を提出してください。
4)多言語音声翻訳システム導入の検討
多言語音の音声翻訳ができるツールを利用するのもお勧めです。ツールの一例を紹介します。
1.「VoiceTra(ボイストラ)」:情報通信研究機構
話しかけると外国語に翻訳してくれる無料の音声翻訳アプリです。翻訳できる言語は31言語ですが、声で入力できる(20言語対応)、何語かを自動判別もできる(10言語対応)、音声が出力される(18言語対応)など、機能によって対応できる言語の数が異なります。
2.「VoiceBiz(ボイスビズ)」:凸版印刷
スマートフォンやタブレット用の専用アプリとクラウドサーバ上の翻訳エンジンが連動し、多言語音声翻訳サービスを提供します。自治体窓口、学校、観光といった、訪日外国人の受け入れや在留外国人の対応で多く使われる業界用語、定型文を標準搭載しています。
3.「POCKETALK(ポケトーク)」ポケトーク
70言語間では音声とテキストによる通訳機能が使え、12言語では音声で入力した翻訳結果のテキスト表示が可能な翻訳機です。複数の端末がありますが、翻訳はインターネット上のAIが行うので、どの端末でも同レベルの翻訳結果が得られます。
5)スタッフへの研修・教育
各種ツールを用意するだけでは、いざというときに対応できません。実際の対応を想定して、スタッフへの研修・教育を実施しましょう。とはいえ、病気・けがを治療するのは医療機関なので、複雑な対応を考える必要はありません。
基本的には、「緊急性の有無」によって、「どのような対応をするか(救急車を呼ぶ・医療機関を紹介する・薬局を紹介する)」「対応の責任者や、対応した情報の共有」などを確認しておきます。
6)補足:地元自治体の医療ガイドラインも確認してみる
前出の竹村氏は、自治体により地域性や人口規模に違いがあるため、都道府県が医療ガイドラインを独自に作っていることも多いとして、次のように話しています。
「地域の事情や地元自治体の医療ガイドラインに沿って、宿泊施設ごとに対応していく必要があります。まずは地元の保健所や消防署に確認してください。また、東京都などはファストドクターと連携しています。このように自治体側も外国人への対応を進めているので、自治体の動向をチェックしておくのも重要です」
ファストドクターは24時間365日体制で活動している、全国の医療機関から構成された総合窓口です。症状に応じて救急医療機関案内や夜間休日往診、オンライン診療なども行っています。
4 受け入れ時の対応(病気・けがをする前)
1)旅行保険加入の有無の確認
宿泊する外国人観光客には、旅行保険加入の有無を確認しておきましょう。旅行保険に加入していれば、日本入国後にした病気やけがの治療費を補償してくれます。他にもコールセンターに電話をすると、適切な医療機関の紹介を受けることができますし、提携医療機関を受診した場合には、保険会社が直接医療機関に治療費を支払いますので、キャッシュレス診療を受けることができます。
宿泊施設側が外国人観光客に対して、訪日外国人向け旅行保険をセットにした宿泊プランを販売するケースもあります。こうした保険に加入しておけば、宿泊施設の手間を減らせるメリットがあります。
2)「コールカード」「ガイドブック」などの配布
宿泊する外国人観光客には、「コールカード」を配布しましょう。これは「救急車を呼んでください」などの内容が、複数の言語で記載されている名刺サイズのカードです。参考に三重県志摩市消防本部のコールカードを紹介します。

また、氏名・連絡先・性別・言語といった基本情報や、既往歴、服薬中の薬などの情報を書き込んでもらう「ガイドブック」も配布するとよいでしょう。日本政府観光局のウェブサイトでは、基本情報や既往歴などが書き込めるものがアップされています。
■日本政府観光局「具合が悪くなったときに役立つガイドブック」■
https://www.jnto.go.jp/emergency/jpn/support.html
5 実際に病気・けがをした場合の対応
1)症状と本人の意向を確認
翻訳ツールやヒアリングシートを利用してみましょう。ヒアリングが難しい場合は、できるところまで確認し、保健所やコールセンター、かかりつけ医などに連絡しましょう。
1.救急車を呼ぶ
119番しましょう。ヒアリングができた場合は、その情報を基に救急隊員に伝えましょう。前述したとおり、「救急車を呼んだほうがよいか」、「今すぐ医療機関に行ったほうがよいか」など、判断に迷ったときは「#7119」(または地域ごとに定められた電話番号)に電話しましょう。
2.医療機関を紹介する
医療保険の有無を確認し、事前に決めた医療機関の「連絡先一覧」に沿って医療機関に連絡しましょう。受診の際には、パスポートと旅行保険証書を持参するように伝えてください。
3.薬局を紹介する
薬を買いたいという本人の意思がはっきりしている場合は、営業中の薬局・ドラッグストアを探しましょう。
2)外国人観光客の症状、医療機関・薬局などの対応を確認し、自施設内で情報共有
医療機関などを紹介した後は、宿泊施設などが積極的に準備・対応することはありません。ただ、紹介した医療機関・薬局などがどのような対応をしたか確認しておき、同様の対応が必要になった外国人観光客に紹介する際の参考にしましょう。
6 外国人観光客からコロナの陽性反応が出たら?
全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会・日本旅館協会・全日本ホテル連盟は、「宿泊施設における新型コロナウイルス対応ガイドライン(第2版)」を2021年11月22日に示しています(下記参照)。外国人に限ったことではありませんが、指標として確認しておきましょう。
滞在客に新型コロナ陽性の疑いが発生した場合の対応
- 利用者から発熱や体調不良の申し出があった時にすぐに案内できるよう、最寄りの医療機関または保健所や受診・相談センターの連絡先が事務所内やフロントデスクなどですぐに見られるようにしておく
- 利用者または従業員の感染が判明した場合、保健所の積極的疫学調査に協力できるよう、過去1カ月以内の利用者(代表者)のすぐに連絡がつく携帯電話等の緊急連絡先を記録・保存しておく
- 発熱や呼吸困難、けん怠感など、感染の疑われる宿泊客がいる場合、客室内で待機し、マスク着用及び客室外に出ないように依頼する(同行者も同様)
- 事前に待機する部屋等を決めておく
- 食事も部屋に届けるなど、他者との接触を極力避け、対応するスタッフも限定する。対応時にはマスク及びフェイスシールド、ゴーグル等を着用
- 近隣の医療機関や受診・相談センターに連絡し、感染の疑いのある宿泊客の状況や症状を伝え、その後は保健所からの指示に従う
- 当日の宿泊者名簿を確認し、保健所への提出に備える
- 館内の他の宿泊客への情報提供は、保健所の指示に従う
なお、観光庁は「外国人観光客の受入れ対応に関するガイドライン」を2022年9月に改定しています。外国人観光客の全面受け入れにより、ガイドラインも改定されるとみられます。最新情報をチェックしつつ、外国人観光客の対応をしていきましょう。
以上(2022年10月)
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画像:unsplash
ウィズコロナで進む「新しいタイプの宿泊施設」
書いてあること
- 主な読者:受け入れが再開され外国人観光客の取り込みを検討する宿泊業者
- 課題:外国人観光客向けの宿泊施設が、どのような差別化を図っているか参考にしたい
- 解決策:地域ならではの体験や自然体験ができる施設、若手アーティストとの交流や支援ができる施設、スタッフによる接触を極力行わない施設などの取り組みを参考にする
1 外国人観光客を引き付けるユニークな宿泊施設
新型コロナ感染症対策のために制限されてきた外国人観光客の入国が、2022年10月11日から全面解禁となり、宿泊業者にとって、インバウンドの取り込みが期待できるようになりました。そこでこの記事では、「ウィズコロナ」の中で外国人観光客を引きつける、特徴ある宿泊施設を紹介します。具体的には、
- 地域と連携し、その土地の食・文化・アクティビティが体験できるホテル
- 日本の伝統的風景や自然体験が堪能できるグランピング施設
- 若手アーティストとの交流や支援を目玉にするホテル
- 受付をロボットが行い、人との対面を極力行わないホテル
などです。
以降で、これらのホテルのコンセプトや特徴、外国人受け入れのための取り組みを紹介します。
2 外国人観光客をどうやって引きつけるか?
ここで紹介する宿泊施設の特徴は、次のように位置付けることができます。

各宿泊施設の特徴を見ていきましょう。
1)アオアヲ ナルト リゾート:地域を巻き込んで郷土料理や伝統体験、アクティビティを提供
アオアヲナルトリゾート(徳島県県鳴門市)は、瀬戸内海国立公園内にあり、鳴門海峡を一望するリゾートホテルです。名物の鳴門の渦潮やホテル内での阿波おどり公演、江戸時代から明治時代中期の徳島で生産された藍染めの体験、ホテル内にあるビーチでの海水浴、家族で楽しめるドラゴンボートやカヤックなどの海上アクティビティ、ホテルの仕事が体験できる仕事体験などが人気です。
旅行先の食事で求められているのは、安価でそれなりの料理ではなく、地元のおいしいものを楽しむことではないかと考え、コロナ禍でも単価を上げて、料理を充実させることでADR(客室平均単価)の向上に成功したそうです。
四国はコロナ前から他の地域と比べてインバウンドが少なく、コロナ後のインバウンド誘致が課題でした。そこで鳴門市や四国が一体となって取り組むためにも2019年から地元の有志とまちづくり協議会を立ち上げたり、徳島経済研究所やイーストとくしま観光地域づくり法人とともに四国の認知度を高めたりするなど、地域を巻き込んだ活動を行っています。
また、成果にはまだつながっていませんが、SNSで欧米豪向けに動画で徳島鳴門観光のPRを始めています。
■アオアヲ ナルト リゾート■
https://www.aoawo-naruto.com/
2)Mt.Fuji グランピングテラス 嶺乃華:富士山の絶景と地域の野外体験の拠点に
富士河口湖周辺で2022年8月にオープンしたのが「Mt.Fuji グランピングテラス 嶺乃華」です。富士山を正面に望むドーム型テントで、富士山と河口湖の絶景を眺めることができます。代表社員の下田高広さんは、
「富士山は外国人にも眺望や登山、話題性などのコンテンツとして人気の高いスポットなので、いつでも富士山と河口湖の絶景が楽しめるようにドームテントを配置しています」
と言います。外国人観光客を引きつけるための同社の売りは、グランピングサイト単体ではなく、地域のアクティビティも含んでいます。
「グランピングは泊まることが目的ではなく、バーベキューをはじめ、周辺にある魅力的なアクティビティを通じてさまざまな体験を提供する施設です。近隣地の観光巡りや河口湖ならではのボートや遊覧船、バギー、ゴルフ、樹海ツアーなどのアクティビティを運営する地域の事業者と提携し、宿泊者に利用していただければ、地域の活性化にもつながります」(下田さん)
■Mt.Fuji グランピングテラス 嶺乃華■
https://minenohana.com/
3)BnA_WALL:アーティストと触れ合える国際色の豊かなホテル
東京・日本橋に2021年4月、巨大な壁画「WALL」がシンボルのアートホテルがオープンしました。23組のアーティストたちが空間デザインを手掛けた計26の客室(アートルーム)の他、アーティストスタジオ、カフェ・バー・ラウンジが併設されています。壁画アートは日本では描ける場所が少なく、描ける人や描きたい人の発信の場所をとして作ったので、「WALL」は2カ月に一度描き換えられます。BnA広報の近藤吉孝さんは、
「バーにいると以前とは別のアーティストが新しい壁画を描いているところに遭遇することもあり、アーティストやアート好きの観光客との交流も楽しめます。こういう経験ができるホテルは国内では他にありません」
と言います。同社は2016年のホテル事業設立から、宿泊売り上げの一部をアーティストに還元する「世界で初めて」(近藤さん)の試みを行っていて、アートシーンの活性化を狙っています。趣旨を知るとラグジュアリーホテルに宿泊した翌日にBnAホテルグループに宿泊しに来る外国人観光客もいたそうです。
「欧米ではアートに触れる機会が日常的にありますが、日本ではあまりありません。当ホテルは、日本で唯一アートとアーティストに触れ合える場を提供しているので、インバウンドと相性がいいのだと思います。そのため、PRを積極的にしなくても、海外メディアの取材も多く、半年後1年後の予約が埋まっている状況です」(近藤さん)
■BnA_WALL■
https://bnawall.com/
4)変なホテル舞浜 東京ベイ:恐竜ロボットがお出迎え、人と触れ合わないホテル
恐竜ロボットがフロントでお出迎えし、各客室ではコンシェルジュロボットがお世話をしてくれる「人と触れ合わない」ホテルで、「世界初のロボットが働くホテル」としてギネス認定されています。
ホテルは、朝食用レストラン「ジュラシックダイナー」を恐竜が生きていたジュラ紀をモチーフにデザインにしたり、恐竜仕様の客室にした恐竜ルームでは恐竜の化石発掘キットが用意されていたりと、恐竜を楽しめる遊び心が各所にちりばめられています。
客室は約100室で、恐竜ロボ、お掃除ロボ、客室コンシェルジュロボなど、120体前後のロボットが“従業員”として働いています。このため、通常は35~40人のスタッフが必要な規模ですが、7~8人で運営できているそうです。ロボットのランニングコストは定期的なメンテナンス料と電気代のみで、減価償却が終われば、人間のスタッフを雇い続けるよりも低コストで運用きるようになります。
■変なホテル舞浜 東京ベイ■
https://www.hennnahotel.com/maihama/
5)無人ホテルmizuka:誰にも会わずにチェックイン・チェックアウトができるホテル
福岡市内に11施設ある“無人ホテル”です。入り口のタブレット端末に顔認証か、事前に通知されるIDを入力することでチェックインします。部屋のキーもオンラインで番号が渡されます。本部にスタッフが24時間待機しているので、部屋に入室してから質問や要望がある場合は、室内に設置されているタブレット端末ですぐにコンタクトをとることができます。
1号店がオープンしたのは2017年。無人ホテルの特徴はすでに建っている建物の空いたスペースに部屋を作るもので、3カ月ほどでスタートできます。そのため急増するインバウンド需要にマッチし、規模が拡大できたといいます。当時は完全無人化できる都道府県は大阪と福岡、沖縄の3カ所のみでしたが、福岡を選んだのはマーケット規模が同社にとって適切で、季節性に左右されず、中国・韓国・台湾などからのデジタルネイティブな若い観光客が多いからでした。
コロナ禍によりインバウンドが消滅してからも、自主隔離などでホテルのマンスリ―利用やワーケーションなどのオンライン生活が浸透したことが追い風になりました。無人化してオンラインで対応することへの理解やメリットを知って、敬遠しがちだった50~60代の宿泊客も増えるとともに、ネイルサロンやエステサロンの個人経営者への時間貸しのニーズも生まれているそうです。
■mizuka■
https://mizuka.co.jp/ja
以上(2022年10月)
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画像:pixta
先代や現経営者を追悼するイマドキの「お別れ」方法~事前準備でトラブル回避を
書いてあること
- 主な読者:先代経営者や自分にもしもがあった際の「お別れ」の方法を決めていない経営者と、その会社の総務担当者
- 課題:縁起でもない話なので生前から準備をするのは気が引けるが、取引先なども集まる場で粗相があっては大変なので、やはり事前準備はしておきたい
- 解決策:英日で国葬が行われたこの機会を捉えて、もしもがあった際の事前準備を始める
1 英日の国葬が相次いだ今は、「お別れ」準備の絶好の機会!
「おやじ、前社長の立場として、葬式はどうすればいい?」(2代目の現社長)
「社長にもしもの際、どのような葬儀を行えばよろしいでしょうか?」(総務部長)
大事なこととはいえ、本人には聞きにくいですよね。こうした話は、取引先などに不幸があって弔問する際の行き帰りにすることも一案です。ですが、2022年9月に英国のエリザベス女王と日本の安倍晋三元首相の国葬が行われたばかりの今は、こうした話を切り出す良いタイミングです。
「お別れ」の方法を事前に決めておくべき理由はさまざまありますが、主なものは、
- 後継体制の告知や、社内の結束を図る場として、円滑な「事業承継」に活用できる
- 多くの取引先など関係者を招いた大事な式典で粗相があれば、会社の評価に傷がつく
- 親族(故人である前・現経営者の妻など)と綿密に意思疎通を図り、禍根を残さない
ことです。
この記事では、先代経営者や現経営者にもしもがあった際に備えて、事前に「お別れ」の方法を決めておくことをご提案します。「社葬のことなら、もう知っている」という方も、
高齢化やコロナ禍に伴って、近年の「お別れ」の方法は、皆さんがイメージしている「社葬」とはかなり変容している可能性があります
ので、ご一読をお勧めします。
2 コロナ禍や高齢化で変容する「お別れ」の在り方
かつて、先代経営者や現経営者の葬儀といえば、親族が行う「密葬」後に会社が単独で開催する「社葬」や、親族と会社が共同開催する「合同葬」のイメージがありました。
ところが、高齢化やコロナ禍の影響を受けて、「お別れ」の在り方は次のように変容してきています。
- かつての「社葬」よりも、「お別れの会」や「偲(しの)ぶ会」を好む傾向が強まる
- 密を避け、参列者を待たせないことが最優先事項に

1)かつての「社葬」よりも、「お別れの会」や「偲ぶ会」を好む傾向が強まる
かつての経営者の「お別れ」の方法といえば、寺院や葬儀場などに鯨幕を張り、僧侶などの宗教者を呼んで執り行う「社葬」や「合同葬」が一般的でした。
近年では、会社が単独で開催する場合は、宗教色を抜いた形式とし、焼香などではなく、献花で追悼することを好む会社が多数派になっています。
この背景の1つに、高齢化によって先代経営者の引退後の生活が長期化したことがあります。故人となった先代経営者との直接の関係ではなく、故人の会社との関係から「お別れ」をする参列者が増えており、こうした参列者にも配慮した式典として、「お別れの会」などを選ぶ傾向があるためです。また、2000年ごろから、ホテルが「お別れの会」などのために積極的に会場を提供するようになったことや、コロナ禍になってからは、会社が密を避ける目的で、ホテルや会館など広い会場を希望するケースが増えたことも背景にあるとみられます。
会社が単独で開催する場合、祭壇に遺骨を安置することも減りました(ホテルでは遺骨を持ち込めないことも少なくありません)。遺骨を安置しなくなったため、開催時期は納骨することが多い「四十九日」以前にこだわらず、亡くなってから2カ月近くかけて、入念に準備してから行うケースが増えています。
献花のみを行う場合は、故人の往時の画像や映像を放映したり、故人の好んだ音楽を流したり、展示スペースを設けて故人や故人の会社のゆかりの品を展示したりすることが一般化しています。コロナ対応を万全にするという意味も含めて、会社側は「お別れの会」などの運営に関して、運営ノウハウを豊富に持った事業者に依頼するケースも増えているようです。
2)密を避け、参列者を待たせないことを最優先に
かつては、「参列者が多く集まることが故人に対する生前の評価」と見る風潮もありましたが、コロナ禍によって、一度に集まる参列者を限定し、密を避けて参列者を待たせないことを最優先するようになりました。故人との関係によって参列者を区分し、集まる時間をずらすなどの対応が行われるケースも増えています。
例えば、創業家が経営する会社の場合は、今でも「合同葬」を行うことが少なくないようですが、会社関係者の参列は通夜に限定した上で、通夜を親族・友人が参列する「第1部」と、会社関係者が参列する「第2部」に分離するケースが増えているようです。特に第2部では参列者が滞留しないよう、読経は行わず、来訪した順に焼香をあげ、「通夜振る舞い」も省略して散会するケースもあります。
この他、親族による「密葬」は家族のみで行い、コロナ前であれば「密葬」に参列していたような故人の「会社以外」の関係者も「お別れの会」に参列してもらうケースもみられます。
3 もしもの際の事前準備、これだけはしておいて!
先代経営者や現経営者の「お別れ」をスムーズに行うには、事前準備が不可欠です。特に合同葬を行う場合は、開催までおよそ1週間しかありません。かつては社内で「社葬取扱規程」を作成しておくことが推奨されていましたが、今では社内の一部の関係者のみで共有する「初動対応マニュアル」を作成しておくケースもあるようです。
この背景には、中小企業では「社葬」の対象となる人が少ないので会社規程まで作成しておく必要性が乏しいことや、高齢化に伴って現経営者が逝去するリスクが低下していること、想定する先代経営者に内密に準備を進めるために、あえて会社規程ではなく社内資料にとどめておくなどの理由があるようです。
ただし、事前準備を行うに当たっては、想定する先代経営者本人には内密にしても、その配偶者をはじめ主な親族と綿密に意思疎通を図っておくことが重要です。連携がうまくいかず、親族にとって不本意な「お別れ」になってしまうと、思わぬ禍根を残すことになりかねません。
1)「お別れ」の方法(式典の形式、宗旨、会場)
前述の合同葬、お別れの会、社葬など、どの形式で式典を行うのかを決めるのは最優先事項といえます。少なくとも、「お別れ」の式典は1回だけ(合同葬)なのか、親族による「密葬」と会社が行う式典の2回行うのかは、事前に決めておきましょう。依頼する葬儀業者が決まっていれば、なおスムーズに進みます。
合同葬の場合は、開催までが1週間以内と短時間になりますので、故人(親族)の宗旨を把握しておき、開催する会場(候補)も選定しておくとよいでしょう。
「お別れ」の方法が決まれば、ある程度の予算規模も把握できるでしょう。
2)緊急連絡網
訃報を親族から受ける社内の担当者や、訃報を知らせる役員・社員の緊急連絡網を作成します。
創業家でない経営者に引き継いだりして、故人の親族が在籍していない会社の場合、親族から訃報をいち早く会社に伝えてもらえるための、関係性の構築も不可欠です。
緊急連絡網の作成には、「連絡する人を決める」だけでなく、「連絡網に載っていない人には連絡をしない」という側面もあります。後述しますが、特に「お別れ」の式典を2回行うことにした場合は、情報漏洩した場合のリスクが大きくなります。
3)参列者の人選と通知方法
これは「お別れ」の式典を2回行う場合になりますが、親族が行う「密葬」に、会社関係者の誰を招くのか(誰を招かないのか)を明確に決めておきましょう。
合同葬の1回のみを開催する場合は、関係者全員を一度に招くことになります。会場(候補)を選定しておくためにも、どの程度の参列者を招くか(参列者が集まりそうか)を想定しておく必要があります。
通知状(案内状)を送付する参列者については、連絡先を含めてリストアップしておきます。異動や役職の変更、退職などもありますので、なるべく定期的にアップデートするとよいでしょう。
4 こんな「お別れ」はダメだ! 式典でのトラブル事例
1)「密葬」で参列者をコントロールできず親族の不信を招く
会場が寺院や葬儀場などに限定される「密葬」では、想定外に参列者が多く集まり、会場が密になってしまうことが最も危惧されます。「密葬」と「お別れの会」などの2回の式典を行う場合は、誰をどの式典に来てもらうのか、明確にしておくことが大事です。
今でも「参列者の多さが故人に対する生前の評価」「参列させる社員の数が、故人や開催する会社への誠意」と考える人はいます。故人が懇意にしていた経営者仲間だけを密葬に招いたつもりが、その経営者が“気を利かせ”て、社員を多数連れて参列するようなケースもあるようです。
こうなると、会場が密になる他、「密葬」の時間が長引いたり、駐車スペースが足りなくなったりと、進行に支障を来すことがあります。また、故人の親しかった人だけを集めたかった親族が想定外の参列者に戸惑い、会社側に不信感を持つことにもつながりかねません。
「密葬」に招待する際は、「○○様だけにお越しいただきたい」「他の方には知らせないでほしい」旨を明確に伝えるようにしましょう。
2)情報漏洩で会社の評価に傷がつく
「密葬」でのトラブルが発生する原因には、正式に案内した他の参列者が情報を流すだけでなく、自社の社員が漏らしていることもあります。訃報があった翌日に、社内の朝礼で話をすると、直後に社員がそれぞれ担当する取引先に連絡を入れてしまうケースがあります。こうなると、取引先から、「あの会社は大事な式典もきちんと取り仕切れない」というレッテルを貼られてしまう可能性も否めません。
情報統制を完璧にするためには、訃報が入った際の緊急連絡網の対象者に、情報管理を徹底することを伝えておきましょう。
5 引退して久しい先代の「お別れ」にも事業承継の意義がある
開催する現経営者にとって、先代経営者の「お別れ」の式典は、「もう先代から引き継ぐことは何もないので、事業承継という面での意義はない」と思いがちですが、実際に「お別れ」をしてみると、事業承継に役立つケースもあるようです。
最後に、引退して会社から離れた生活を長期間していた先代経営者の「お別れ」の式典を行った現経営者たちの思いについて、葬儀業者からヒアリングしたエピソードをご紹介します。
- 先代経営者とともに会社の発展に尽くしたOBが、「お別れの言葉」で述べた往時の苦労話を聞いた現経営者が、「あんなことがあったなんて、初めて聞きました」と涙を流した。
- 展示スペースに、創業期の掘っ立て小屋の社屋や、ねじり鉢巻きをしてリヤカーを引いている故人の写真などを掲載した。それを目にした若手社員が、自社のルーツを知って感動。幹部社員は、「創業期のことは入社時に話をしたつもりでしたが、このような形で目にすることで、若手社員にも伝えることができてよかった」と話した。
- 2代目の現経営者は、故人となった先代経営者(父親)とは経営方針について意見が対立することもあったが、参列者から若い頃の故人の苦労話を数多く聞き、「改めておやじに感謝し、お礼をしました」と話した。
- 現経営者が、「長く付き合いのある取引先から、先代経営者との間で取引が始まったきっかけを聞くことができた」と喜んだ。
- 現経営者が、「おやじ(先代経営者)が持っていたDNAを、改めて今の社員に強く伝える良い機会を設けられた」と感謝した。
以上(2022年10月)
(取材協力 公益社)
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画像:ayaka_photo-Adobe Stock
女性社員が活躍できる福利厚生!~女性の活躍推進は中小企業が飛躍するチャンス!!
書いてあること
- 主な読者:女性社員の活躍推進に本格的に取り組もうと考えている経営者
- 課題:重要性は感じているが、具体的に何から始めてよいのか分からない
- 解決策:福利厚生に対するニーズを探り、法定基準に“ちょい足し”してみる
1 中小企業で活躍する女性社員は多い!
働き方改革やSDGsなどを背景に、「女性の活躍推進」が一つのテーマになっています。中小企業の経営者の本音は、
必要性は感じるが、何をしたらよいのか分からない
といったものかもしれませんが、実は中小企業では既に女性活躍が進んでいます。社員数が限られた中小企業では女性社員の割合が高くなり、役員や管理職として活躍している人も多いです。課長相当職で見ると、
- 5000人以上の企業:7.5%
- 10~29人の企業:18.2%
といったように、企業規模で大きな違いがあります(厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査」)。中小企業では女性社員は貴重な戦力となっていて、経営者が意識せずとも、女性社員をサポートする制度や文化があるということでしょう。
そして、今は働き方改革やSDGsの波に乗り、この取り組みを進める好機です。そうすれば、
- 貴重な戦力である女性社員が、結婚や出産などのライフイベントで離職せずに済む
- 働き方改革やSDGsに積極的な企業としてアピールできる
- 女性が働きやすい企業として認知されれば、新規の女性採用も進む(人材不足の解消)
といった効果が期待できるでしょう。もう一つ、この分野では中小企業の強みが発揮できます。女性の活躍推進の第一歩は福利厚生などの制度整備ですが、
フットワークが軽い中小企業では、経営者が「よし、やろう!」と指示すればスピーディーに実現できる
のです。
いかがですか。中小企業が女性の活躍推進に取り組むメリットは大きいことをご理解いただけたと思います。それでは、具体的な制度のアイデアなどを紹介していきます。
2 女性社員が喜ぶ福利厚生とは?
早速ですが、皆さんは女性社員がどのような福利厚生を求めていると思いますか? 労働政策研究・研修機構「企業における福利厚生施策の実態に関する調査(2020年7月31日)」によると、10%以上の女性社員が「必要性が高い」と回答したのは次の制度・施策です。
(図表1)【「必要性が高い」と思う福利厚生】
(単位:%)
| 必要性が高いと思う制度・施策(複数回答) | 女性 (A) | 男性 (B) | ギャップ (A-B) |
| 人間ドック受診の補助 | 23.1 | 20.3 | 2.8 |
| 慶弔休暇制度 | 21.4 | 18.3 | 3.1 |
| 病気休暇制度(有給休暇以外) | 20.3 | 16.3 | 4.0 |
| 病気休職制度 | 20.0 | 16.8 | 3.2 |
| 家賃補助や住宅手当の支給 | 18.6 | 19.1 | -0.5 |
| リフレッシュ休暇制度 | 17.9 | 13.8 | 4.1 |
| 治療と仕事の両立支援策 | 17.4 | 11.6 | 5.8 |
| 有給休暇の日数の上乗せ(GW、夏期特別休暇など) | 17.4 | 12.5 | 4.9 |
| 法定を上回る育児休業・短時間制度 | 16.2 | 8.9 | 7.3 |
| 慶弔見舞金制度 | 15.5 | 13.3 | 2.2 |
| 短時間勤務制度 | 14.3 | 7.4 | 6.9 |
| 法定を上回る介護休業制度 | 12.4 | 7.9 | 4.5 |
| 食事手当 | 12.4 | 10.9 | 1.5 |
| 永年勤続表彰 | 11.8 | 10.5 | 1.3 |
| 財形貯蓄制度 | 11.7 | 11.2 | 0.5 |
(出所:労働政策研究・研修機構「企業における福利厚生施策の実態に関する調査(2020年7月31日)」)
この調査によると、
- 女性のニーズが最も高いのは「人間ドック受診の補助」で、23.1%が支持
- 男女のギャップが最も大きいのは「法定を上回る育児休業・短時間制度」で、7.3ポイントの差
という結果が出ています。社員の環境(業種・社風・年齢・家族構成など)はもちろん、調査によっても結果は異なってくるでしょうが、男女ともに「健康」に対する関心が高いといえます。
また、詳細はこれから紹介していきますが、
法定基準に“ちょい足し”することや、制度の名称をユニークなものに変えること
で、オリジナリティーがあり、利用されやすい制度を実現できます。例えば、法定の育児休業の期間は「原則として、子が1歳(最長2歳)になるまで」ですが、ここに1年追加して「子が3歳になるまで」にしたりします。また、理由が趣味だと年次有給休暇(以下「年休」)を取得しにくいと考える社員がいる場合は、「推し活休暇」などの特別休暇を設けることで、取得のハードルを下げることができます。
法定の基準に“ちょい足し”した制度の例を6章にまとめているので、参考にしてください。
3 整備したい! 女性が活躍しやすくなる福利厚生5選
1)「時間のやりくり」がしやすい制度
妊娠・出産、育児については、産前・産後休業や育児休業が整備されています。しかし実際は、その後も保育園への送り迎えや子供が病気の際の通院など、就業時間中にちょっとした時間が必要です。このような場合に利用したいのが、
時間単位で付与できる年休
です。年休は原則として1日単位で付与しますが、社員の過半数代表(労働組合がない場合を想定しています)と書面で協定(労使協定)を結ぶことで、付与日数のうち5日までは1時間単位で付与できます。年休の管理は少し複雑になりますが、この制度があると、女性社員は親が出なくてはいけない保護者会やPTA活動などの突発的な用事に対応しやすくなります。
また、時短勤務制度も女性社員にとってうれしい制度です。法定では、3歳未満の子を養育する社員、要介護状態の家族を介護する社員が対象となりますが、この期間を延ばしたり、週の労働日を減らしたりすることが考えられます。保育園の送り迎えなどの定期的な用事に対応したい場合、時短勤務制度はとても便利です。
そして、これらの制度とリモートワークが同時に適用されると、かなり働き方が自由になりますので、検討したいところです。
2)「健康管理を支援」する制度
前述の調査でもあったように、「健康」は社員の関心が高い分野です。例えば、企業には年1回の定期健康診断の実施が義務付けられていますが、法律で決められた法定項目以外に「がん検診」などの受診項目も付け加えると、手厚い健康支援になります。ただし、法定項目以外の検診を行う場合は社員の同意が必要なので注意してください。
また、女性社員については、
生理痛、不妊治療、更年期障害などに配慮した制度
があると喜ばれます。個人差は大きいですが、20~60代まで多くの女性がこうした自身の体調の変化を感じながら仕事と両立をしています。不妊治療の支援については、一定の要件を満たすことで「両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)」の対象になるので、確認してみてください。
■厚生労働省「不妊治療と仕事との両立のために」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14408.html
3)「家計をダイレクトにサポート」する制度
家計を預かることが多い女性社員にとって、家計をダイレクトにサポートしてくれる制度はうれしいものです。一般的な制度には、
家賃補助や住宅手当の支給
などがあります。資産形成という意味では、財形貯蓄や退職金(退職一時金、退職年金)もその一環となります。
また、少し視点が変わりますが、万一の備えとして生命保険に加入している社員は多く、一定の保険料を支払っています。この点、いわゆる「団体保険」の契約ができれば保険料は安くなるので、社員にとっては好ましいでしょう。ただ、団体保険の契約ができるのは一定規模以上の企業に限られるのが通常です。条件に該当しない場合は、社員を被保険者として、企業が保険料を負担するような制度を検討してみるのもよいかもしれません。
4)「居心地の良さに配慮」した設備
更衣室やトイレなどについて配慮するのも効果的です。更衣室が1つしかなくて皆が交代で使っていたり、トイレが男女共用だったりして、しかもそれが企業の中で当たり前となっている場合、本当は不満があっても口に出せない社員がいるかもしれません。逆にそこを企業がおもんばかって改善すれば、社員は喜んでくれるでしょう。
5)「プライベートも支援」する制度
女性社員の悩みは仕事のことだけにとどまりません。中には実家から離れた場所で暮らすことがあり、そうしたときに、女性社員の悩みを聞いてくれたり、家事をサポートしてくれたりする存在は心強いものでしょう。
例えば、株式会社ぴんぴんころりでは、「東京かあさん」の名称で、実家から離れて暮らす女性などをサポートするサービスを提供しています。単なる家事代行にとどまらず、「第2のお母さん」として、さまざまな相談に乗ってくれます。
■株式会社ぴんぴんころり■
https://kasan.tokyo/corp/
4 実際に聞いてみた、知っておきたい「女性社員の本音」
1)男性上司に申し出にくい……
女性特有の体調不良や不妊治療といったセンシティブなことは、そもそも他人には話しにくいものです。その相手が男性上司だとなおさらです。男性上司の立場からしても、申し出があった際に深く事情を聞いたり、体調面などについて踏み込んだりするのは気が引けます。
このようなときは、具体的な症状で休暇を申請するのではなく、「自分いたわり休暇」というような名称にして、詳細を伝えず申請できるようにすると取得しやすくなります。また、そうした休暇申請などを受け付ける部署に、女性社員を配置するのもよいでしょう。
2)制度はあるのに、職場の理解が追い付いていない……
女性社員が働きやすいようにと整備した制度が、逆に女性社員に肩身の狭い思いをさせてしてしまうことがあるようです。具体的には、
- 産前・産後休業と育児休業を取得した後に時短勤務で復帰したが、そういう働き方をしているのが自分だけなので、何だか周りに申し訳ない
- 自分が帰宅した後の会議で決まった内容をベースに仕事が進んでいて、疎外感を覚える
という意見がありました。
このように、女性社員の意思に反して仕事が制限されて、キャリアコースが変わってしまうことを「マミートラック」といいます。職場が女性社員に過剰に配慮したり、時間に制約があるという理由だけで能力に見合わない仕事を依頼されたり、昇進の機会をもらえなかったりすると、女性社員は働く意欲がなくなってしまいます。
女性社員は、制度を整備してくれる企業に期待しているだけに、マミートラックに陥ったときのショックは大きなものです。性別に限らず誰もがいつか制約を持って働く可能性があるということを、職場全体で理解していく必要があるでしょう。
3)一部の女性社員が優遇されて、そのしわ寄せを受けるのはおかしい!
一部の条件に該当する女性社員だけが利用できる制度の場合、利用できない社員からの不平不満が出やすいという本音もありました。例えば、
- 時短勤務で帰った女性社員の業務を、自分が残業して代わりにやらなければならないのが不満だ
- 結婚や出産をしていない自分は制度が利用できない。条件に該当する女性社員ばかりが優遇されているようで嫌だ
- 自分たちの時代にこんな制度はなかったのに、今の人たちは恵まれている
といった声です。こうした不満を理解に変えていくためには、経営者が制度を導入する理由や背景を説明し、丁寧に対応していく必要があるでしょう。
5 制度を導入するステップ?就業規則の変更も忘れずに
1)制度の導入理由を明確にし、女性社員の声を聴く
「なぜ、その制度を導入するのか」「導入した結果、女性社員はもちろん、企業全体にどのようなメリットがあるのか?」を明確にしましょう。
女性社員の働きやすさを目的とした制度は、人材確保の観点からも有効です。制度があることで働き続ける女性社員が増えれば離職防止になりますし、そうしたことをアピールすれば人材採用にもつながります。
社内に周知する際は、
- 定着率○○%を達成する
- 利用率○○%を達成する
など、目標をできるだけ数値化すると伝わりやすいです。またその際は、女性社員の声を聴きましょう。そうすることでニーズをより具体的に知ることができますし、現状に不満を感じている社員のフォローにもつながります。
2)経営者が強いメッセージを伝える
女性の活躍推進に限ったことではなく、社員は自分にとって特段の不利益とならない内容であれば、割と聞き流してしまう傾向にあります。しかし、その状態で新しい制度を導入すると、その理由が理解されないまま運用が開始され、前述したような問題が起こりかねません。
そうならないためにも、制度を導入する理由はもちろん、
企業としてどのように成長していきたいのか
などを、経営者自身が自らの言葉で伝えることが大切です。この記事では「女性の活躍推進」ということで女性社員にフォーカスしてきましたが、今は男性社員の育児休業取得など、性別に関係なく両立支援を実現する時代です。経営者のメッセージによって、現場レベルでも相手に制度の利用を促すような風土を醸成していけたら理想的です。
3)就業規則を変更する
常時10人以上の社員を雇用している企業は、労働基準法に基づいて就業規則を定める義務があります。就業規則は職場のルールブックであり、賃金や休暇など、法律で決められた項目については必ず記載しなければなりません。
新たに女性の活躍推進のための制度を導入する場合、就業規則の変更が必要になるケースが多いでしょう。一度、就業規則を確認し、必要に応じて社会保険労務士に相談しながら変更の手続きをしてください。
基本的な流れは、次の通りです。
- 変更について社員の過半数代表の意見を聞く(労働組合がない場合を想定しています)
- 就業規則を変更して、所轄の労働基準監督署に届け出る
- 変更した就業規則を社員に周知徹底する
6 法定基準に“ちょい足し”してオリジナルの福利厚生を作る!
最後に産前・産後休業や育児休業やなど法令で定められている制度に“ちょい足し”して、オリジナルの制度を作る例を紹介します。
(図表2)【女性社員が活躍しやすい制度の一覧】
| 内容 | 法令のルール | ”ちょい足し”の例 | |
| 休暇・休業 (注1) |
産前・産後休業 (注2) |
・妊娠・出産のために休む社員 ・産前42日(多胎妊娠の場合は98日)、産後56日まで休める |
・産前56日、産後70日まで休める |
| 育児休業 | ・出生した子を養育する社員 ・原則子の1歳(最長2歳)到達日まで休める(2022年10月以降、2回まで分割可) |
・子の3歳到達日まで休める | |
| 介護休業 | ・家族(一定の要介護状態、以下同じ)を介護する社員 ・通算93日まで休める(3回まで分割可) |
・通算1年間休める(6回まで分割可) | |
| 子の看護休暇 | ・小学校就学前の子を看護する社員 ・1年度1人当たり5日まで、2人以上は10日まで休める |
・子が12歳になる年度の末日まで休める | |
| 介護休暇 | ・家族を介護する社員 ・1年度1人当たり5日まで、2人以上は10日まで休める |
・1年度1人当たり6日まで、2人以上は12日まで休める(1分単位で取得可) | |
| 生理休暇 | ・生理で就業が困難な社員 ・就業可能になるまで休める |
・半日単位で休める ・本来無給でもよいところ、取得日数のうち1日は有給とする |
|
| 特別休暇(注3) | ・育児目的休暇:配偶者出産への立ち会いや、子の行事参加などのために休める | ・ワーク・ライフ・バランス休暇:年3日、家族とのふれあいや余暇などのために休める | |
| 労働時間 (注1) |
育児時間 | ・就業時間中に授乳などを行う必要がある社員 ・休憩時間とは別に、1日30分以上×2回まで授乳などのための時間を確保できる |
・育児時間の取得回数を1日3回までとする |
| 所定外労働の制限 | ・3歳未満の子を養育する社員、家族を介護する社員 ・所定外労働を免除する |
・子が小学校を卒業するまで所定外労働を免除する | |
| 時間外労働の制限 | ・小学校就学前の子を養育する社員、家族を介護する社員 ・1カ月24時間、1年150時間を超える時間外労働を免除する |
・子が小学校を卒業するまで時間外労働を免除する | |
| 深夜業の制限 | ・小学校就学前の子を養育する社員、家族を介護する社員 ・深夜労働を免除する |
・子の年齢に関係なく深夜労働を免除する | |
| 所定労働時間の短縮措置等 | ・3歳未満の子を養育する社員、家族を介護する社員 ・所定労働時間の短縮(原則1日6時間以内)、時差出勤、フレックスタイム制などの措置を実施する |
・所定労働時間を1日6時間とし、週4日勤務とする ・午前のみの勤務または午後のみの勤務とする |
|
| 社内設備 | 休憩室・休憩所の設置(食事、睡眠時など) | ・全ての企業(有害業務のある企業は設置が義務、それ以外の企業は努力義務) ・休憩のための設備を設ける(設置数の定めや男女別の設置義務はなし) |
・女性専用の休憩室(カプセルベッド付き)を設置する |
| 休養室・休養所の設置(体調不良時) | ・社員数50人以上または女性社員数30人以上の企業 ・横になって休むことのできる休養室・休養所を男女別に設置する |
・女性専用の休養室を設置する | |
| 女性用トイレの整備 | ・女性を雇用する企業 ・女性20人以内ごとに1個以上女性用トイレを設置する(社員数10人以下の場合は、独立個室型トイレに限り男女共用でも可) |
・男女共用トイレをやめる | |
| 更衣室やシャワー設備の設置 | ・被服が汚れる業務などを行う社員がいる企業 ・更衣室やシャワー設備を設置する。安全とプライバシーに配慮する(設置数の定めや男女別の設置義務はなし) |
・女性専用の更衣室を設置する | |
(出所:日本情報マート作成)
(注1)「休暇・休業」「労働時間」の各制度(法定)は、原則として要件を満たす社員が請求した場合に利用できます。なお、休暇・休業中の賃金を有給とするか無給とするかについては、企業が決められます
(注2)「産前・産後休業」のうち産後56日については、社員が働くことを希望しても休ませなければなりません(医師が認めた場合のみ、産後43日以降であれば就業可)
(注3)「特別休暇」は企業が独自に定める法定外の休暇ですが、一部助成金の受給に関係するものがあります。ここでは便宜上、「両立支援等助成金」の対象となる「育児目的休暇」を「法令のルール」の欄に記載しています。
以上(2022年9月)
(監修 社会保険労務士 志賀碧)
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