【従業員が交通事故!】責任割合はどうなる? ④信号のある交差点(赤×青)

書いてあること

  • 主な読者:社有車の事故防止に力を入れたい経営者や運行管理責任者ならびに運転者
  • 課題:交通事故の基本的な責任割合や未然防止策を知りたい
  • 解決策:過去の裁判例に基づく基本的な責任割合と場所や状況に応じた事故防止策を理解する

1 事故事例と状況を把握します。

今回の事故状況はこちらです。A(自社の青い車)が、交差点でB(相手方の赤い車)と接触してしまいました。Aは赤信号、Bは青信号だったそうです。

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【A車:自社車両 B車:相手方車両】

今回のポイントは「信号機の色」です。

信号機の色は双方の主張が食い違うことがありますので、周囲の方の目撃情報などの協力を仰ぐことも有効です。

もしドライブレコーダーが搭載されている場合は、事故を録画したデータの保全をしておく事が重要です。ドライブレコーダーの機種によっては、時間経過するとデータが自動消去されるものや、走行すると上書きされてしまうものもありますので注意しましょう。

2 今回の事故事例の基本的な責任割合(過失割合)を見てみましょう。

1)責任割合の決まり方は?

双方に責任が生じる事故の場合、それぞれの保険会社を窓口として交渉することが一般的です。過去の裁判例の責任割合を参考に、実際の事故状況を踏まえて話し合い、決定していきます。

2)今回の責任割合は?

過去の裁判例より、A(自社の青い車)100%:B(相手方の赤い車)0% が基本の責任割合となります。

信号機のある交差点では、通行する車両は信号に従わなければならない(道路交通法7条1項)ため、赤信号で進入したAに100%の責任が生じます。

ただし、Bが前方に対する注意を払っていれば容易に事故を回避できた場合や、信号の変わり目に事故が起こった場合は、Bも責任を問われることがあります。

※実際は、それぞれの事故状況に応じて個別に決定されます。そのため、記載の内容とは異なる結果になる場合もあります。

3 今回の事故事例を未然に防ぐポイントは?

信号無視の主な原因としては、①信号の見落とし ②信号の誤認 ③タイミング 等が考えられます。

①信号の見落とし・・疲労や考え事、同乗者との会話などにより集中力を欠如しない。
②信号の誤認・・黄色は「止まれ」の意味。矢印表示などの変則信号機では慎重に、誤って一つ先の信号と勘違いしないよう気を付ける。
③タイミング・・黄色信号で交差点へ進入しない。

赤信号で交差点に進入した場合の事故はスピードが出ていることが多く、双方の車が大破したり、横転や怪我など大きな事故につながりやすく危険です。無理な交差点進入は避け、心と時間に余裕を持って運転することを心掛けましょう。

その他、ドライブレコーダーを活用した安全運転指導や教育サービス、無料の安全運転セミナーを提供している機関もありますので、それらを利用して自動車事故防止活動をしていくのも良いでしょう。

以上(2021年12月)

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本記事で紹介している責任割合は、過去の裁判例を参考にした基本的な割合です。実際は、それぞれの事故状況に応じて個別に決定されます。そのため、記載の内容と異なる結果になる場合もあります。

【従業員が交通事故!】責任割合はどうなる? ③一方が優先道路の交差点

書いてあること

  • 主な読者:社有車の事故防止に力を入れたい経営者や運行管理責任者ならびに運転者
  • 課題:交通事故の基本的な責任割合や未然防止策を知りたい
  • 解決策:過去の裁判例に基づく基本的な責任割合と場所や状況に応じた事故防止策を理解する

1 事故事例と状況を把握します。

今回の事故状況はこちらです。A(自社の青い車)が、交差点でB(相手方の赤い車)と接触してしまいました。Bの進行道路には、交差点を貫通するセンターラインがあったそうです。

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【A車:自社車両 B車:相手方車両】

今回のポイントは、センターラインです。

①実線(繋がっている線)か破線(点線)かどうか
②交差点の中心を貫通しているかどうか
③A側から見た時、中央線が視認できるか

などを確認します。

もしドライブレコーダーが搭載されている場合は、事故を録画したデータの保全をしておく事が重要です。ドライブレコーダーの機種によっては、時間経過するとデータが自動消去されるものや、走行すると上書きされてしまうものもありますので注意しましょう。

2 今回の事故事例の基本的な責任割合を見てみましょう。

1)責任割合の決まり方は?

双方に責任が生じる事故の場合、それぞれの保険会社を窓口として交渉することが一般的です。過去の裁判例の責任割合を参考に、実際の事故状況を踏まえて話し合い、決定していきます。

2)今回の責任割合は?

過去の裁判例より、A(自社の青い車)90%:B(相手方の赤い車)10% が基本の責任割合となります。

道路標示により中央線が交差点の中まで連続して設けられている(貫通している)道路は、「優先道路」として認められます。

道路交通法では、優先道路を通行している車両が見通しのきかない交差点を通行する時には徐行義務は無い(道路交通法42条1号)と定められています。しかしその場合でも、交差道路を通行する車両等に注意し、できる限り安全な速度と方法で進行する義務が求められている(道路交通法36条4項)ため、Bにも10%の責任割合が発生します。

※実際は、それぞれの事故状況に応じて個別に決定されます。そのため、記載の内容とは異なる結果になる場合もあります。

3 今回の事故事例を未然に防ぐポイントとは。

皆さんは「二段階停止」や「多段階停止」という言葉を聞いた事がありますでしょうか。

一度停止するだけではなく、安全を確認できる場所で二度、三度と停止して慎重に進んでいく運転方法です。安全確認に加えて、他の車などに自車を認知させる意味もあります。

今回のA側の注意点としては

  • カーブミラー等を活用し、多段階停止をしながら慎重に進む
  • 交通の往来が多い場所では無理に横断しようとせず、まずは左折し迂回してできるだけ安全なルートも検討する

ことで、事故のリスクを軽減することができます。

また優先道路のB側においても、交差点がある場合にはカーブミラー等で進入車の有無を確認しましょう。「優先道路だから大丈夫」と過信せず、前方を注視して減速するなど、構えることも大切です。

その他、ドライブレコーダーを活用した安全運転指導や教育サービス、無料の安全運転セミナーを提供している機関もありますので、それらを利用して自動車事故防止活動をしていくのも良いでしょう。

以上(2021年12月)

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本記事で紹介している責任割合は、過去の裁判例を参考にした基本的な割合です。実際は、それぞれの事故状況に応じて個別に決定されます。そのため、記載の内容と異なる結果になる場合もあります。

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\経営者のための/
リスクマネジメントマニュアル ~ハラスメント対策編~

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\経営者のための/
リスクマネジメントマニュアル ~休業リスク対策編~

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【業種別データ】ブリキ缶・その他のめっき板等製品製造業の動向

書いてあること

  • 主な読者:各業種の産業規模、経営指標などを知りたい経営者
  • 課題:さまざまなデータを集める必要があり、時間や手間がかかる
  • 解決策:事業所数や製造品出荷額等から近年の動向を把握する。経営指標で各業種の平均値を知る

1 業界動向

2019年のブリキ缶・その他のめっき板等製品製造業の事業所数は196事業所(対前年比100.5%)、従業者数は7402人(対前年比98.3%)、製造品出荷額等は2907億8700万円(対前年比96.6%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は38人(対前年比97.8%)、現金給与総額は1億6500万円(対前年比99.4%)、原材料使用額等は10億900万円(対前年比96.3%)、製造品出荷額等は14億8400万円(対前年比96.1%)、付加価値額は4億700万円(対前年比93.4%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は438万円(対前年比101.7%)、製造品出荷額等は3928万円(対前年比98.3%)、付加価値額は1076万円(対前年比95.5%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は68.0%(対前年比100.2%)、同付加価値額比率は27.4%(対前年比97.2%)、同現金給与総額比率は11.1%(対前年比103.5%)となっています。

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2 品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2019年実績)

品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2019年実績)は次の通りです。

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3 経営指標

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以上(2022年1月)

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画像:pixabay

【業種別データ】加工紙製造業の動向

書いてあること

  • 主な読者:各業種の産業規模、経営指標などを知りたい経営者
  • 課題:さまざまなデータを集める必要があり、時間や手間がかかる
  • 解決策:事業所数や製造品出荷額等から近年の動向を把握する。経営指標で各業種の平均値を知る

1 業界動向

1)業界全体

2019年の加工紙製造業の事業所数は284事業所(対前年比98.3%)、従業者数は1万1820人(対前年比97.1%)、製造品出荷額等は5100億5500万円(対前年比97.2%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は42人(対前年比98.8%)、現金給与総額は1億9800万円(対前年比100.9%)、原材料使用額等は11億7600万円(対前年比99.6%)、製造品出荷額等は17億9600万円(対前年比98.9%)、付加価値額は5億4500万円(対前年比98.6%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は476万円(対前年比102.1%)、製造品出荷額等は4315万円(対前年比100.1%)、付加価値額は1309万円(対前年比99.8%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は65.5%(対前年比100.8%)、同付加価値額比率は30.3%(対前年比99.7%)、同現金給与総額比率は11.0%(対前年比102.0%)となっています。

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2)塗工紙製造業(印刷用紙を除く)

2019年の塗工紙製造業(印刷用紙を除く)の事業所数は136事業所(対前年比101.5%)、従業者数は7957人(対前年比99.9%)、製造品出荷額等は3863億600万円(対前年比99.1%)となっています。

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3)段ボール製造業

2019年の段ボール製造業の事業所数は91事業所(対前年比100.0%)、従業者数は2392人(対前年比89.5%)、製造品出荷額等は810億6800万円(対前年比86.8%)となっています。

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4)壁紙・ふすま紙製造業

2019年の壁紙・ふすま紙製造業の事業所数は57事業所(対前年比89.1%)、従業者数は1471人(対前年比95.7%)、製造品出荷額等は426億8100万円(対前年比102.1%)となっています。

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2 品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2019年実績)

品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2019年実績)は次の通りです。

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3 経営指標

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以上(2021年12月)

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画像:industrieblick-Adobe Stock

商標~ブランドを守る。商品名・ロゴ・音・色彩など、多様な商標の世界と中小企業でもできる活用法~/意外と知らない「知的財産権」シリーズ5

書いてあること

  • 主な読者:名称やロゴマークなどを「商標」として権利化したい経営者
  • 課題:名称やロゴマークしか保護されない? 他にはない独特な形状、色の組み合わせなどについても保護したい
  • 解決策:立体商標、色彩のみからなる商標など、さまざまな商標が保護の対象。商標は意匠などと異なり、半永久的に権利が保護されるので上手に活用する

1 商標によって半永久的な保護が可能に

商標とは、

自社の商品やサービスを、自社のものであると消費者に認識してもらうために表示する標識

です。会社の名称やロゴマーク、商品やサービスのネーミングなどの登録がよく知られています。商標の存続期間は設定登録日から10年ですが、更新手続きを行えば、

何度でも権利の更新が可能で、半永久的に権利が保護される

のが特徴です。

また、商標が保護するものは名称にとどまらず、例えば「きのこの山」のお菓子の形状など、

形状・動き・ホログラム・音・色彩・位置など、さまざまなものが商標として保護される

のです。

ブランドに対する顧客の信頼や愛着は、長い時間をかけて蓄積されます。長く権利を独占できる商標を上手に活用することで、それが実現できます。

2 「きのこの山」の形状も商標。アイデアやデザインも同時に保護できる「立体商標」

商標法の保護を受けられるものに、商品等の形状そのものを登録することで、その形状を独占する「立体商標」があります。立体商標は、文字商標(文字だけで構成される商標・「SONY」のロゴマークなど)や図形商標(図形のみから構成される商標・「ヤマト運輸のクロネコ」のロゴマークなど)ほどは活用されていないようにみえます。

ただし、立体商標は次のような点で非常に高い有用性を発揮することがあります。

  • 特許法、実用新案法、意匠法といった他法域で保護されるべきアイデアやデザインを併有できる
  • 登録商標として保護を受けることで、同時にこれに具体化されたアイデアやデザインについても、半永久的に他者に対して優越的な地位を得られる

立体商標の具体例は次の通りです。

1)「きのこの山」

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これは誰もが知っている「きのこの山」です。明治は「きのこの山」という文字商標の登録(登録第1330075号)に加え、その形状も立体商標として登録しています。これによって商品のネーミングのみならず、この形状のお菓子そのものを独占的に製造・販売できる法的地位を手にしています。

お菓子を含む「物の形状」に対する法的保護としては、一つには意匠登録による保護が考えられるところですが、意匠権の存続期間は出願日から25年であり、更新はできないとされています。一方、商標権の存続期間は設定登録日から10年ですが、更新によって半永久的に保護を受けられるため、保護期間の面でかなりメリットが大きいといえます。

もちろん商標登録を受けるには、登録要件としてその商標に識別力が備わっている必要があります。そのため、ありふれた形状だとなかなか識別力を認めてもらえず、立体商標としての登録は容易ではないでしょう。実際「きのこの山」の立体商標も、一度は審査段階で識別力欠如による拒絶理由を通知されましたが、使用による識別力の獲得を主張して登録を得ています。いずれにしても、ひとたび識別力を肯定されれば、以後その形状を独占できるのですから、かなり強力なブランディングとなります。

2)食パンの袋のクリップ

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こちらもよく知られる、食パンの袋についているあのクリップです。あまりにも生活の中に溶け込んでいるため意識しませんが、これ自体も登録商標です。一見して分かる通り、それは、クリップに対して一般的に求められる「留めやすくはずれにくい」形状をしています。そのため、やはり審査では識別力の問題を指摘され、これに反論して商標登録を得たという経緯があるようです。

この立体商標は、商標であると同時に、「留めやすくはずれにくい」形状という、クリップの構造に関するアイデアを具体化したものでもあります。登録商標としてこの形状そのものを独占しながら、併せて技術的アイデアについても、保護を受けられるかのような効果を得ている点において優れています。

なお、技術的アイデアは本来特許で保護されるのが一般的ですが、特許権の存続期間は出願日から20年で更新ができず、この期間が過ぎると消滅してしまいます。しかし、商標は、前述の通り更新を繰り返すことで半永久的に保護が受けられるので、この点は非常に大きなメリットです。

3 動き・ホログラム・色彩などなど。立体以外も保護される

2014年(平成26年)の法改正によって、新たに「動き商標」「ホログラム商標」「色彩のみからなる商標」「音商標」「位置商標」が加わりました。こちらについても代表的なものを幾つか紹介します。

1)動き商標

文字や図形等が時間の経過に伴って変化する商標です。

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2)ホログラム商標

文字や図形等がホログラフィーその他の方法により変化する商標です。

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3)色彩のみからなる商標

単色または複数の色彩の組み合わせのみからなる商標(これまでの図形等に色彩が付されたものではない商標)で、輪郭なく使用できるものです。

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4)音商標

音楽、音声、自然音等からなる商標であり、聴覚で認識される商標です。

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5)位置商標

図形等を商品等に付す位置が特定される商標です。

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このように、文字や図形以外にも商標として機能するものがたくさんあります。顧客の目線に立ったとき、皆さんが提供されている商品やサービスの中にも、ブランディング戦略につながる価値を持つ商標がきっとあると思います。

4 商標を登録する際の課題。記述的な商標や他者と同じ商標はどう考える?

ところで、商品やサービスの名称として、どのような商標を採択するのが望ましいのでしょうか? 例えば、今までになかった全く新しい商品・サービスを開発した場合、その商品等の性質やコンセプトを顧客にアピールするようなネーミングを採択することが少なくないと思います。「アスクル」「スーパードライ」「ヒートテック」などがそのような商標に当たるといえるでしょう。

このような商標は、今後同種の商品等で市場に参入しようとする後続事業者にとっては、誰もが使いたい商標です。これを商標登録して独占しておくことは重要な戦略です。

ただし、そのような記述的な商標は、

単に商品等の性質を説明するにすぎないとして、識別力の問題を突き付けられる

のが通常でしょう。では、記述的であっても、なお商標登録を受けられる商標かどうかについては、どのような点に注意したらよいのでしょうか。

1)「加圧トレーニング」の名称は商標登録できるのか?

腕と足の付け根に適正な圧力を加え、血流量を制限した状態でトレーニングをすると、通常の場合と比べて少ない負荷でも、大きな効果が得られることを発見したとします。これを新たなトレーニング方法としてビジネス展開するに当たって、そのネーミングを「加圧トレーニング」として商標出願した場合、これは登録を受けられるでしょうか、それとも、一般名称にすぎないとして拒絶されるでしょうか。

この「加圧トレーニング」の名称については、実際に出願された事例があります(商願2005-96978)。この出願は、審査で一度拒絶され、不服審判で認容審決を得て商標登録を受けたものの、第三者から異議申立てを受けるなど、識別力について再三争われました。しかし、最終的に特許庁は、「現代用語の基礎知識」や「知恵蔵」などの文献に「加圧筋力トレーニング」という記載はあるものの、「加圧トレーニング」という記載はないことを根拠に、「加圧トレーニング」は特定の商品の品質や役務の質を直接的、かつ、具体的に表示するものではないとして、識別力を認める判断をしています。

すなわち、

判断基準はその商標が商品の品質等を「直接的、かつ、具体的に」表示するものか否かであって、間接的・抽象的にとどまるものについては識別力が肯定される

ことになります。この観点により、間接的・抽象的・暗示的な商標を検討していくのがよいといえるでしょう。

2)同じ単語(文字列)が使われている商標は登録できるのか?

企業のイメージやコンセプトを表現した図形等を用いて構成される「ロゴマーク」を商標登録する場合、どのように商標を構成するのがよいか、これもまた難しい問題を含んでいます。もちろん、図形要素と文字要素を分け、さらに文字要素については重ねて標準文字でも登録しておくのが理想的であるのは言うまでもありません。

ただし、出願件数に応じてその費用も2倍、3倍とかかってきますから、コスト面を勘案して、図形と文字を組み合わせた一つの商標として出願・登録することも少なくないでしょう。しかし、これには注意が必要です。例えば、次の例をご覧ください。

1.「WORLD」

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2.「STAGE」

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3.「LPGA」

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4.「やんちゃ」

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1.から4.に示した商標は、いずれも「WORLD」「STAGE」「LPGA」「やんちゃ」といった文字列部分が明らかに共通しています。しかし、いずれも非類似と判断され、すべて併存して登録を受けているのです。

ロゴ図形と文字列を組み合わせた商標によって商標登録を受ける場合は、

その文字列部分のみを使用する者に対して、商標権の効力が及ばない可能性が十分にあり得る

ということを念頭に置かなくてはなりません。

そして、この点に関する検討には十分なリサーチが不可欠となりますので、判断に迷った際には、ぜひ知財を専門とする弁護士等にご相談されることをお勧めします。

どのようなマークによって顧客に認識してほしいのか、商標によるブランディング戦略を考える際には、いつもこのテーマに立ち返る必要があります。

以上(2021年12月)
(執筆 明倫国際法律事務所 弁護士 田中雅敏)

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画像:areebarbar-Adobe Stock

【朝礼】今年の進化と来年の進化を考えてください

今日は私から皆さんに2つ、提案があります。1つ目は、「今年を振り返って、去年に比べて自分が進化した点は何か考えること」。2つ目は、「来年、今年よりも進化したい点を決めること」です。今年もあとわずかで終わりますので、ぜひ年内にやってみてください。

この提案をしようと思ったのは、お付き合いのあるデザイナーさんから聞いた「口紅の話」がきっかけです。化粧品メーカーでは、口紅の色合いや品質を常に研究してバージョンアップしているので、同じ赤でも、数年前に出した商品と今年出した商品では、色や質感がかなり異なるそうです。そのため、若い頃から愛用している口紅を変えずに使い続けていると、「妙に古臭いメーク」に見えてしまいます。言葉を選ばずに言えば、「昭和感のあるメーク」です。

デザイナーさんいわく、「口紅で新しい赤が出ている上に、化粧品以外のさまざまな商品でも赤が変化しているのに、自分の口紅だけが十何年も前からの赤であれば、当然古く見える」のだそうです。身の回りの商品やはやりなどの変化に伴って、世の中全体の色彩感覚も変化しているから、ということなのでしょう。

色に着目したデザイナーさんらしい面白い視点です。これに加えて私が思うのは、世の中全体の色彩感覚の他にも、当然、「自分の顔が変化したのに同じ口紅を使い続けている」のも、古臭いメークに見える要因ではないかということです。

これはつまり、自分の顔が変化していることを認識できていないともいえます。毎日鏡で見ていると、確かに変化に気付きにくいでしょう。

このことは、私たち一人ひとりの仕事、生き方、人生にも通じるところがあります。毎日同じ環境で同じ仕事をしていると、自分の変化はなかなか認識できません。「前よりこの仕事の処理速度が上がった」「クライアントへの話の仕方が変わって反応が良くなった」など、実は、変化というより良い方向に進化していることでさえ、意識していないと気付かないことが多いのです。

また、人間は惰性の生き物です。「意識する」という点で言うと、そもそも、自分を進化させようと意識して行動していなければ、前に進んでいくことはできないでしょう。

そこで冒頭の提案です。皆さん、今年の進化を振り返り、そして来年の進化の目標を、自分で意識して決めてください。ちなみに私は、今年は社外の人に対してオンラインセミナーでお話しする機会が多い年でした。そのため、オンラインの最初の1分で引きつけるコツを前より身に付けたと思いますし、画面越しにファシリテーションする能力も上がったように感じます。来年は、これをさらに進化させて、定期的な動画配信にチャレンジしようと考えています。見た目も大事なので、ジョギングも始めようと思います。そう考えると、来年が楽しみで仕方ありません! 皆さんもぜひ、考えてみてください。

以上(2021年12月)

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画像:Mariko Mitsuda

【業種別データ】民生用電気機械器具製造業の動向

書いてあること

  • 主な読者:各業種の産業規模、経営指標などを知りたい経営者
  • 課題:さまざまなデータを集める必要があり、時間や手間がかかる
  • 解決策:事業所数や製造品出荷額等から近年の動向を把握する。経営指標で各業種の平均値を知る

1 業界動向

1)業界全体

2019年の民生用電気機械器具製造業の事業所数は916事業所(対前年比96.9%)、従業者数は6万1468人(対前年比97.1%)、製造品出荷額等は3兆1520億8300万円(対前年比100.7%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は67人(対前年比100.1%)、現金給与総額は3億900万円(対前年比101.5%)、原材料使用額等は17億8300万円(対前年比103.3%)、製造品出荷額等は34億4100万円(対前年比103.9%)、付加価値額は14億9800万円(対前年比104.3%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は461万円(対前年比101.4%)、製造品出荷額等は5128万円(対前年比103.8%)、付加価値額は2232万円(対前年比104.1%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は51.8%(対前年比99.4%)、同付加価値額比率は43.5%(対前年比100.3%)、同現金給与総額比率は9.0%(対前年比97.7%)となっています。

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2)ちゅう房機器製造業

2019年のちゅう房機器製造業の事業所数は183事業所(対前年比95.8%)、従業者数は1万3690人(対前年比104.2%)、製造品出荷額等は8055億600万円(対前年比133.7%)となっています。

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3)空調・住宅関連機器製造業

2019年の空調・住宅関連機器製造業の事業所数は412事業所(対前年比97.9%)、従業者数は2万8027人(対前年比91.3%)、製造品出荷額等は1兆5942億800万円(対前年比89.9%)となっています。

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4)衣料衛生関連機器製造業

2019年の衣料衛生関連機器製造業の事業所数は32事業所(対前年比103.2%)、従業者数は4937人(対前年比109.2%)、製造品出荷額等は2345億400万円(対前年比98.9%)となっています。

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5)その他の民生用電気機械器具製造業

2019年のその他の民生用電気機械器具製造業の事業所数は289事業所(対前年比95.7%)、従業者数は1万4814人(対前年比98.9%)、製造品出荷額等は5178億6400万円(対前年比100.5%)となっています。

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2 品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2019年実績)

品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2019年実績)は次の通りです。

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3 経営指標

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以上(2022年1月)

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画像:pixabay

【朝礼】クリスマス・キャロルの老人はなぜ守銭奴になったのか

12月といえば、皆さんが楽しみにしているイベントがありますね。そう、クリスマスです。今日はクリスマスにちなんで、19世紀のイギリスの小説「クリスマス・キャロル」の話をします。ご存じの方も多いでしょうが、まずは、あらすじを説明しましょう。

ロンドンに、会計事務所を営むスクルージという老人がいました。スクルージは裕福でしたが、お金にがめつく、従業員を低賃金でこき使い、友人の葬儀への出費も渋るなど、いわゆる守銭奴でした。加えて頑固で怒りっぽいため、街の人々からは嫌われ、孤独な毎日を過ごしていました。

しかし、ある年のクリスマスに、3人の精霊が彼の元を訪れ、過去・現在・未来の世界へといざないます。スクルージは、守銭奴になる前の、家族や恋人を大切にしていた過去の自分と、守銭奴になって誰からも惜しまれずにこの世を去った未来の自分を目にします。また、自分の思いやりのなさが原因で、貧しい人々が不幸になったことを知り心を痛めます。スクルージは改心し、貧しい人々のためにお金を使うことを惜しまなくなり、愛される存在になったというお話です。

スクルージは本来、周囲の人間を思いやれる心を持っていて、その心が残っていたからこそ、最後に改心することができました。では、そんな彼が、なぜお金に執着するようになってしまったのでしょうか。小説の中で、若い頃に彼と破局した恋人が次のようなことを言っています。

「生きることに臆病で、何かあったときのためにお金だけはためておこうと考えるようになってしまった。昔は気高い野心があったのに、仕事に成功してお金を得たことで、お金以外は何も望まないようになった」

スクルージは、気高い野心も忘れ、「お金を得る」ことだけが目的になってしまったのです。私たちはこの話から、目的を常に見失わないことの大切さ、そして難しさを学ぶことができます。

では、皆さんに質問です。ビジネスでは常に「利益」が求められ、皆さんは常日ごろからそのための努力をしています。しかし、「そうして得た会社の利益を使って何を実現したいか」を考えている人はいますか。「利益を出すこと」は会社にとってとても大切ですが、皆さんには、その先のことも考えられるようになってほしいのです。

私には会社が得た利益を使い、お客様や社会のために実現したい夢があります。しかし、この会社は私だけのものではありません。皆さんも、どのようなお金の使い方をしたいか、ぜひ意見を出してください。「利益を出して次にどうするか」を考えるようになれば、売上目標やコスト削減目標を達成する目的が明らかになります。今よりも主体的に考え、行動できるようになるでしょう。

改心したスクルージは、事業でためたお金を、貧しい人々を支えるために使うことを選択しました。皆さんは、何に会社のお金を使いますか。 ぜひ新年に向けて考えてください。

以上(2021年12月)

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画像:Mariko Mitsuda

【業種別データ】宗教用具製造業の動向

書いてあること

  • 主な読者:各業種の産業規模、経営指標などを知りたい経営者
  • 課題:さまざまなデータを集める必要があり、時間や手間がかかる
  • 解決策:事業所数や製造品出荷額等から近年の動向を把握する。経営指標で各業種の平均値を知る

1 業界動向

2019年の宗教用具製造業の事業所数は250事業所(対前年比100.4%)、従業者数は3593人(対前年比105.1%)、製造品出荷額等は393億6700万円(対前年比105.7%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は14人(対前年比104.7%)、現金給与総額は4300万円(対前年比104.0%)、原材料使用額等は7500万円(対前年比103.2%)、製造品出荷額等は1億5700万円(対前年比105.3%)、付加価値額は7400万円(対前年比105.3%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は302万円(対前年比99.4%)、製造品出荷額等は1096万円(対前年比100.6%)、付加価値額は518万円(対前年比100.6%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は47.9%(対前年比98.0%)、同付加価値額比率は47.3%(対前年比100.1%)、同現金給与総額比率は27.6%(対前年比98.8%)となっています。

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2 品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2019年実績)

品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2019年実績)は次の通りです。

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3 経営指標

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以上(2021年12月)

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画像:pixabay