駐車場での事故防止(2022/08号)【交通安全ニュース】

活用する機会の例

  • 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
  • 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
  • マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など

駐車場は安全だと思い込んでいませんか?

歩行者が少なく、車も低速で走行する駐車場では、事故の危険を想定していないドライバーも多いと思います。しかし、車両事故の約3割は駐車場で発生しているとも言われており、駐車場には事故の危険が多く潜んでいます。

今回は、駐車場に潜む事故の危険と、事故を防ぐためのポイントについてお伝えします。

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1.駐車場事故の発生状況

令和3年の交通事故件数について、交通事故全体と駐車場での事故における人対車両事故の占める割合を比較すると、駐車場での事故は約2.5倍になっています。

また、車両相互事故件数について、後退時の事故が占める割合を比較すると、駐車場での事故は約13.5倍になっており、駐車場での車両相互事故の半分以上が後退時の事故です。

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出典:公益財団法人交通事故総合分析センター令和3年版「事故類型別(詳細)・昼夜別 道路線形別 全事故件数」より当社作成

駐車場で人対車両や後退時の事故の割合が多い理由として、以下の要因が考えられます。

【環境】

  • 歩行者や車の動きが不規則である。
  • 駐車車両や柱等の構造物による死角が多い。

【心理】

  • 駐車場に入ると、緊張がほぐれ油断しやすい。
  • 駐車スペースを探すことだけに集中してしまい、周囲の状況が見えにくくなる。

【操作】

  • 狭いスペースへのバック駐車など、運転操作が複雑である。
  • 車の前後左右の距離感を見誤る。

※公益財団法人交通事故総合分析センターの統計は人身事故の集計となっています。
※駐車場の定義は、公益財団法人交通事故総合分析センターの交通事故統計において「一般交通の場所」(「一般の交通の用に供するその他の※道路」に該当する場所及び事故が発生した道路が高速道路、国道、都道府県道等に付属して設けられているサービスエリア、パーキングエリア※等の場合をいう)としています。

2.駐車場に潜む事故の危険について

駐車場でよくある事故の事例から、駐車場に潜む危険について考えてみましょう。

【事例1】

駐車車両の死角から現れた歩行者との事故

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駐車場には駐車車両や柱等の構造物による死角が多く、歩行者が思いがけないところから現れたりします。

駐車場内の歩行者は、ドライバーが予測しにくい行動をすることがあります。

【事例2】

バック駐車時の駐車車両との接触事故

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狭いスペースへのバック駐車では、アクセル・ブレーキ・ハンドルの操作が頻繁となり、見落としや見誤りが生じるおそれがあります。

後続車が待っていると、「早く駐車しなければ」と焦りも生じ、安全確認が疎かになることがあります。

【事例3】

駐車場通路でのバックによる後続車との接触事故

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駐車スペースから出る車のために不用意にバックをすると、後続車と接触するおそれがあります。

駐車場通路でバックしたときに後続車等とぶつかってしまったというケースも少なくありません。

3.駐車場での事故を防止するためのポイント

駐車場では、以下の点に留意して、安全運転を心がけましょう。

  • 駐車場も道路の一部と考えて、油断したり気を抜いたりしない。
  • 駐車場では、常に徐行する。
  • バック駐車をするときは徐々にバックし、少しでも接触の危険を・感じた時は、無理をせず、もう一度やり直す。
  • バックモニターやクリアランスソナーが装備されている場合でも、それに頼り切らず、必ず自分の目でも後方の安全を確認する。
  • 発進するときは、両脇の車両との間隔に注意するとともに、通行・車両や歩行者がいないか、必ず確認する。

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バック駐車する時は歩く速度で慎重に!

以上(2022年8月)

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画像:amanaimages

【朝礼】上を向こう。下も見よう。小さなことを見逃すな

1960年代に大変な人気を集めた、坂本九さんという歌手がいらっしゃいました。この方の代表的な歌で、アメリカでも大ヒットした「上を向いて歩こう」という曲があります。歌詞は、「上を向いて歩こう、涙がこぼれないように、思い出す春の日、一人ぽっちの夜」という、どちらかといえば悲しい気持ちを歌ったものです。これは、作詞を担当した永六輔さんが、つらいことがあって落ち込んでいたときに、ある人から「泣きたいときこそくよくよしないで上を向きなさい」と励まされた体験が基になってできた歌詞だといいます。

悲しいことやつらいことがあったときこそ、上を向いて、希望を持ち、前向きでいようというこの歌は、私たちにとっても、生きていく上で大切な気持ちの在り方を教えてくれていると思います。

こうした気持ちを持ち続けることができれば、ビジネスパーソンとしてもよい仕事ができるでしょう。ただし、ビジネスパーソンは上を向いているだけでは十分ではありません。上だけでなく、下もしっかり見ておくことが求められます。

ここで、私がいう下とは何か、それは決して「落ち込んだときにはしょぼくれていい」ということではありません。「毎日の仕事や生活の中で起きている、見逃してしまいがちな小さな出来事から目をそらさず、しっかりと見つめて何かに気づくことが大切だ」ということです。

毎日の出来事とは、例えば営業の仕事であれば、営業活動の中で聞くことができたお客様のちょっとした要望や不満、自社の商品を自分で使ってみた感想などがそれに当たるでしょう。

製造現場の仕事であれば、気づいてはいてもなんとなく見逃してしまっていた作業手順の非効率さや、逆に小さな工夫で効率を上げることができることはないかという、小さなアイデアがそれに該当するかもしれません。生活の中で気づいた「こんな商品があったらいいな」というちょっとした気付きも、そんな小さな出来事の一つでしょう。

要するに、毎日の仕事や生活の中で「足元で起きている小さな出来事をしっかりと見ることが大切である」ということを忘れないでほしいのです。

人はもちろん、前向きに上を向いて歩いていくべきだと思います。そうしなければ、仕事の上でもみなさんのプライベートな生活の上でも進歩や向上は得られないでしょうし、私自身もそうありたいと努力しています。けれども、ただやみくもに上ばかりを見て、自分自身の足元を見ないのは「高望み」のように思えます。足元が見えていなくては、逆につまらない石ころにつまずいて転んでしまうことにもなりかねません。

ビジネスでも生活でも、より良いものを作り出す、あるいは良いものへと育てていくための種は、小さな気付きだと私は思っています。その種は、目を凝らしていなければ見えないとても小さなものかもしれません。その小さな種を見逃さないためにも、自分自身の身の回りにあることに気を配り、常に足元を見ることを忘れないようにしましょう。

足元を固めているからこそ、上を向いて、希望を持ち、前向きでいることに自信が持てるのです。

以上(2022年8月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】定年退職するときに残したい言葉

けさは、恐らくあと30年ほどしたら私に直面する問題について話をしたいと思います。「そんな先のことか」と思っている皆さんも、人ごとではないテーマだと思いますので、少しお付き合いください。お伝えしたいのは、私が定年退職するときにどんなあいさつをすべきか、という話です。

この話をしようと思ったきっかけは、あるスポーツ選手の引退発表の記者会見を見たからです。そのときに、ふと、「自分が引退するとき、つまり退職するときに、どんな話をすればいいのだろうか」という疑問がよぎりました。

そこで、スポーツ選手が引退するときに話した名言をインターネットで検索したところ、使ってみたい名言がたくさんありました。多かったのは、その競技やチームへの愛を語った言葉や、今まで応援してくれたファンや支えてくれた家族に感謝する言葉だと思います。

特に、プロ野球選手の中には、引退のときの印象に残る名言が多くありました。古くは長嶋茂雄さんの「我が巨人軍は永久に不滅です」という誰もが知る名言がありますし、イチローさんの「後悔などあろうはずがありません」もイチローさんらしい言葉だと思います。それから、野村謙二郎さんの「今日集まっている子供たち。野球はいいもんだぞ。野球は楽しいぞ」という言葉にも憧れます。

そうした名言が残せるのは、やはり現役時代にしっかりと結果を出しているからだと思います。

そもそも、ちゃんと結果を出していなければ、退職するときにあいさつする機会も与えてもらえないでしょう。たとえ形式的にあいさつさせてもらえたとしても、聞いている人たちにとっての言葉の重みは、話す人が会社でどれくらい結果を残したのかによって変わってくるはずです。私が聞く立場であっても、話す人次第で受け止め方が変わると思います。

そう考えると、定年退職するときのことを意識しながら仕事をするのは、一つのモチベーションになると思います。定年退職するまでに、私は会社に何を残せるのか、定年退職するときに後悔の念を持たず、胸を張って会社を去ることができるのか。そのことを考えることで、仕事中にムダなことに時間を使っている場合ではないと思うようになりましたし、会社のために自分は何ができるのかということを意識しながら仕事をするようになったと思います。私を含めて、ここにいる全員が定年で退職することはないと思いますが、定年退職するときのことを意識して仕事をすることは、自分にとっても会社にとってもプラスになると思います。

話を戻しますが、私が定年退職するときには、一緒に働く方々や取引先の皆さまに感謝の気持ちを伝えたいですし、若い人たちに、職場の素晴らしさを伝えられるようになっていたいです。皆さんは、どんな言葉を残して会社を去りたいと思いますか?

以上(2022年8月)

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画像:Mariko Mitsuda

【営業最強フレーズ】プレゼン編4 「これが、御社からの宿題の答えです」

書いてあること

  • 主な読者:今よりレベルアップしたい営業担当者と、営業担当者を指導する営業管理職
  • 課題:現場ですぐに使えて顧客と信頼関係を築けるトークスクリプト的なものが欲しい
  • 解決策:シーンごとに「最強フレーズ」を、少なくとも1つは持っておく。あとは応用

これが、御社からの宿題の答えです

プレゼンの最終目的は何か?

プレゼンの目的は相手を動かすことですから、そうなるような「一言」を添えてみましょう。相手の心を動かす一言は、相手の考え、立場、状況によって変わるので、相手をよく見て、何を考えているか想像してみなければなりません。

今回は、相手の考えていることについてある例を挙げ、その場合の「相手の心を動かす一言」を考えてみましょう。

営業担当者を困らせる欲張りな相手

「相手のニーズを聞き、それに応える提案をする」。これは営業のセオリーです。しかし、相手が「こういう課題があり、これを実現したいから、そのための提案をしてください」と分かりやすく説明してくれることは、まずありません。

「あれもこれもやってほしい。やりたいことがあり過ぎて絞り込めない」

という“欲張りな相手”のときもあるでしょう。こうした“欲張りな相手”に対して、営業担当者の応え方はだいたい3つのタイプに分かれます。

1.従順タイプ

まず考えられるのは、「従順タイプ」です。このタイプは、セオリー通り、とにかく相手のニーズに応えようと1つ1つの要望に応えるプレゼンをします。一見、誠実な対応に感じますが、結局まとまりが無く、現実的ではないプレゼンをすることになりかねません。場合によっては、本当に相手のためになっているのかどうかも疑問です。

2.質問攻めタイプ

2つ目は、「質問攻めタイプ」です。このタイプの営業担当者は、相手の欲張りなニーズをなんとか絞り込もうと、たくさん質問をします。「一番優先したいのは何ですか?」「上司の方は、どれを重視されていますか?」などなど。

従順タイプと同じように、一見誠実な対応に見えますが、実はそうでもありません。忙しい相手から見れば、時間が取られてかえって迷惑に感じることもあります。

3.答えを出すタイプ

営業担当者が実践したいのは3つ目の「答えを出すタイプ」です。“欲張りな相手”の話から「相手が実現すべきこと」を導き出し、必要な内容に絞ってプレゼンします。「お話の内容と、御社や御社の競合他社の現状から今必要と考えられるプラン△△をお持ちしました」と伝えた上で、冒頭の営業最強フレーズを添えてみましょう。

“欲張りな相手”は、自分では取捨選択できなくなっています。そうした相手の心を動かすのは、明確な答えを示す一言です。また、オンラインのときには、相手のさまざまな要望と自社が示すプランとの関係、そしてプランによって最終的にどのような価値を相手に提供できるか、一目で分かるよう図示して見せるのもよいでしょう。

営業担当者は、相手の言うことにただ応えればいいのではありません。相手が見えていなかった「相手自身の中にあるはずの答え」を見つけて示すのも、営業担当者の重要な役割の1つです。

以上(2022年7月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】“やる”と決めればスキルは後から付いてくる

皆さんは、新しいことにチャレンジできる機会がありながら、自分のスキル不足を理由に、挑戦を見送ってしまった経験はありませんか? 自分の能力を客観的に分析するのは大切なことですが、もし皆さんが、スキルがないとチャレンジは無理だと考えているのだとしたら、それは間違いです。今日はチャレンジが苦手という人に向けて、レオナルド・ダ・ヴィンチの話をします。

ダ・ヴィンチは、「モナ・リザ」「最後の晩餐(ばんさん)」などの名画で知られる画家ですが、絵の他にも彫刻、音楽、解剖、軍事、土木などさまざまな分野に精通し、なおかつ各分野で顕著な功績を残しました。ダ・ヴィンチがどうやって多様な分野で一流のスキルを身に付けていったのか。そのヒントとなるエピソードがあります。

ダ・ヴィンチは若い頃、イタリアのミラノで芸術活動をしようと考えました。しかし、当時のミラノの権力者は芸術よりも軍事に興味を持っていたため、ダ・ヴィンチはまず「兵器を作れる軍事家」として自分を売り込んだのです。すごいのが、このときダ・ヴィンチは、軍事の知識をほとんど持っていなかったということ。なんと彼は、ミラノに招かれることが決まってから軍事を一から勉強し、そこにもともと持っていた工学の知識を組み合わせることで、さまざまな兵器のアイデアを打ち出したのです。こうして権力者の信頼を勝ち取ったダ・ヴィンチの元には、本分である絵や彫刻の仕事も舞い込むようになりました。

ダ・ヴィンチが軍事をほとんど知らないレベルから、短期間で権力者を認めさせるレベルの軍事家にまで成長できた理由は何でしょうか。もちろん、彼が類いまれなる頭脳を持っていたのもあるでしょうが、皆さんに注目してほしいのは、彼がほぼ知識ゼロの状態で「自分は軍事家です」と権力者に宣言したことです。何が何でも勉強せざるを得ない状況を自分でつくり出したことで、自身にプレッシャーを与え、それをバネに成長していったのでしょう。

私がこの話を通じて皆さんに伝えたいのは、「スキル不足を理由にチャレンジを諦めるぐらいなら、まず“やる”と決めてしまってはどうか」ということです。火事場のばか力ではないですが、仮にスキルが不足していたとしても、チャレンジを成功させなければならない状況に自分を追い込めば、人間はその不足を補うために努力できるものです。“やる”という意志さえあれば、スキルは後から付いてきます。

チャレンジが苦手な人に足りないものがあるのだとしたら、それはスキルではなく勇気です。失敗するのが不安なら心配はいりません。仮に皆さんが何かにチャレンジして失敗したとしても、私はそれを責めたりはしません。なぜなら、チャレンジを成功させるためにスキル不足を埋めようとした皆さんの努力は、決して無駄ではなく、次のチャレンジを成功に導く大きな財産になるからです。

以上(2022年8月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】この一言であなたは成長できる

最近は人間同士、企業同士、どこを見ても競争、勝ち残りが話題になっています。確かに我々は厳しい環境を生き延びていくためには競争に勝ち残っていくしかありません。しかし、自分だけ、自社だけがよいと考えてしまうと、大切なことを見逃してしまうことがあります。そこで今日は皆さんに、自分以外の人に対する配慮の大切さを知ってほしいと思います。

皆さんは「情けは人のためならず」ということわざを知っているでしょう。情け、とは同情や愛情、言い換えれば「哀れみや慈しみの気持ち」という意味があります。この意味を「他人に情けをかけてやることは、甘やかすことになるので、その人のためにならない」と思っていたとしたら、それは間違いです。

このことわざの意味は、「他人に情けをかけることは、その人のためばかりではなくて、自分のためでもある」というものです。つまり、他人に対する行いは巡り巡っていずれ自分にも返ってくるのだから、日ごろから積極的に他人に対する思いやりや親切心を大切にしましょう、ということです。

昨今の日本人はやたらとせっかちです。私も含めて多くの人がそうですが、何事もすぐに結果が出なければ納得できません。「いつになるか分からないけど、そのうちいいことがあるだろう」なんて、そんな悠長なことには耐えられません。当てにならない「情け」なんてものにかかわっている暇はないのです。

しかし、他人への「情け」は、自分が成功のチャンスをつかんだり、成長したりするきっかけになることがあります。

私がお付き合いしている大学の先生は、友人や先輩から「大学では自分の研究だけやっていればよい」との忠告を受けたものの、他の教室から研究実験の依頼が多くありました。頼りにしてくる人々の顔を見ると、どうしてもやってあげたくなり、普通の人の何倍もの仕事をしていました。その結果、先生は依頼ごとに、それに必要となる専門知識を習得しました。先生は他の教室の研究に協力したことが、その後の自分自身の何百という研究成果につながったといいます。

このように、人が困っているときに手助けをしてあげれば、その恩恵が自分へと返ってきます。つまり、親身になって周りの人の相談にのったり、頼ってくるさまざまな人と交流したりするうちに、自分のビジネスに対する気付きとなったり、新しいアイデアや、新たな商談へつながったりするなど、結果として自分のためになるのです。

皆さんも、皆さん自身のために、今日から「情け」をかけてみてください。周囲から感謝される上、自分も成長できます。

難しく考える必要はありません。他人にとって難しくても、自分なら簡単にできることから始めてみるとよいでしょう。「私ができることであれば、お手伝いします」と言うだけでよいのです。

以上(2022年8月)

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画像:Mariko Mitsuda

【営業最強フレーズ集】プレゼン編3 「□□社のプレゼン内容で一番気に入っているのはどこですか?」

書いてあること

  • 主な読者:今よりレベルアップしたい営業担当者と、営業担当者を指導する営業管理職
  • 課題:現場ですぐに使えて顧客と信頼関係を築けるトークスクリプト的なものが欲しい
  • 解決策:シーンごとに「最強フレーズ」を、少なくとも1つは持っておく。あとは応用

□□社のプレゼン内容で一番気に入っているのはどこですか?

必ず確認したい競合他社の存在

法人営業の場合、通常、相手は複数社から話を聞き、その内容を比較検討しています。できればヒアリングの段階で「この件について当社以外からも話を聞いていますか?」と確認しておきましょう。

自社のプレゼンが終わった後に競合他社の提案内容を尋ね、自社との違いを明らかにします。また、競合他社が商品やサービスに関するウェビナーを多く開催している場合などは、一度実際に参加して聞いてみるのもよいでしょう。「□□社では、◆◆の機能に力を入れているような印象がありますが、御社向けプレゼンもそういう感じでしょうか?」など相手により具体的に質問できるようになります。

相手に本気度合いを示すことにも

相手との関係が良ければ、ダイレクトに「他社様のプレゼン内容を教えてください」とお願いしてみるのもよいでしょう。これが難しい場合は、冒頭で紹介した営業最強フレーズを使いましょう。相手が競合他社のプレゼン内容のどこを評価しているかを確認してみるのです。

そのときは、「(他社様のプレゼン内容の)お話を聞き、当社で足りない点があったら改めて調整しようと思っています。ぜひ御社のお役に立ちたいのです」と一言添えましょう。そうすれば、相手に本気度合いを示すことにもなります。

次の戦術を立てやすくなる

相手が競合他社のプレゼン内容のどこを評価しているかを確認すれば、次の戦術を組み立てやすくなります。

自社でも実現できることなのであれば、それを盛り込んで再度プレゼンさせてもらってもよいでしょう。反対に、自社では実現できないことであれば、対抗策として、「自社の価値を改めてお伝えする」という戦術を取るのがよいかもしれません。具体的な実績(できれば相手と同業他社)、他社での導入事例などを伝えるのが効果的です。

変化球を投げるのも有り

相手が競合他社のプレゼン内容のどこを評価しているかを確認したら、次の戦術として“変化球を投げる”のも有りでしょう。例えば、自社と競合他社との「ゼロサム」ではなく、「プラスサム」に視点を変えてみるのです。

「確かに□□社のそのサービスは、御社にとってメリットがあると思います。□□社と当社それぞれから御社にとって必要なサービスを“いいとこどり”して、御社オリジナルの一番良いパッケージをつくってみてはいかがでしょうか」といった具合です。

営業担当者はチャンスと新しいビジネスを創るのが大事

“いいとこどり”を提案すれば、全ては無理でも一部は成約ができて、売り上げにつながるかもしれません。また、その話が競合他社の耳に入れば、共同で新企画や営業ルートを創り出すチャンスになるかもしれません。

このように、競合他社のプレゼン内容を確認することは、チャンスを創り出すこと、もっと言えば「新しいビジネスが生み出せる」ことにもつながっていくのです。

以上(2022年8月)

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画像:Mariko Mitsuda

【管理会計】その投資、回収できる根拠はありますか?

書いてあること

  • 主な読者:感覚だけでなく、定量的な基準や根拠を持ってビジネスの判断をしたい人
  • 課題:多額の資金が必要になる投資の判断は難しく、数字での裏付けがほしい
  • 解決策:計算が簡単な回収期間法を用いる。初期投資額、投資後の見込みキャッシュ・フロー、目標となる投資回収期間の数値から、投資の要否判断を下す

1 質問:その投資、回収できる根拠はありますか?

工場の新設や機械の購入など大型の投資には、多額のお金が必要です。そのため、会社全体の資金繰りを考え、慎重に進めていかなければなりません。このような投資意思決定時に使われる管理会計上の手法のうち、最も簡単なものが「回収期間法」です。

回収期間法とは、

投資したお金が何年間で回収できるかを計算し、その年数で投資を行うかどうかで判断する方法

です。この手法には、

  • 設備の購入価額など初期投資額(見積書などから算出)
  • 投資後の見込みキャッシュ・フロー(投資後の収入と支出の増減を推測して将来計画を立てる)
  • 目標となる投資回収期間(何年間で投資額を回収したいか、自社で設定)

の3つの数字が必要になります。

2 回収期間法を使って、投資判断をしてみよう

では早速、次の事例を使って、回収期間法による投資判断がどのように行われるのかを見てみましょう。

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この計画によると、初期投資額(1000万円)のうち、3年目までに累計900万円(200万円+300万円+400万円)を回収し、4年目の途中で全額を回収する予定です。正確な回収期間は、投資額を回収する最後の年を次のように計算して算出します。

1000万円(初期投資額)-900万円(3年目までの回収金額)=100万円(残りの回収額)
100万円(残りの回収額)÷400万円(4年目のキャッシュ・フロー)=0.25年

結果として、

回収期間は3年+0.25年=3.25年

になります。回収期間が分かったら、投資をするかどうかを判断します。自社で決定した目標となる投資回収期間が、4年と3年の場合の判断は次の通りです。

  • 4年であれば、3.25年<4年であるため、この投資計画を実行
  • 3年であれば、3.25年>3年であるため、この投資計画は中止

目標となる投資回収期間は会社ごとの資金状況やビジネスの内容によって変わるもので、具体的に何年という正解はありません。このため、案件ごとに何年で投資が回収できそうな案件なのかを設定する必要があります。

3 将来計画を立てるときのポイント

投資後の見込みキャッシュ・フローを決めるために、収入と支出の両面から将来計画を立てます。

収入については、主に投資による増加が見込まれる売上となります。もし、売上が単価と数量などに分解できるのであれば、より細かく計画していきます(支出についても同様です)。これは投資後、計画に対する進捗状況の確認や修正を検討する際の要因分析に役立ってきます。また、その投資により、削減できる支出も収入に加算します。例えば、ペーパーレス化のためのシステム導入を行った場合は、今までにかかっていたコピー用紙代や複合機の台数削減によるリース料などが削減できる支出となってきます。

一方、支出については、どんな人・モノなどが関わってくるかを現場担当者からヒアリングし、見積もります。以前に同じような投資をしているのであれば、前回の支出内容を確認してみましょう。このように、過去の数字を使うことが多々ありますので、会計伝票に何の投資に関するものかを備考欄などに記入しておくとよいでしょう。

以上(2022年7月)
(執筆 管理会計ラボ株式会社 取締役・公認会計士 福原俊)

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画像:apinan-Adobe Stock

周囲に迷惑をかけない、美しい会社のたたみ方

書いてあること

  • 主な読者:後継者がいない等の理由で、会社をたたもうと考えている経営者
  • 課題:関係者にできるだけ迷惑をかけたくないが、どうしたらよいか分からない
  • 解決策:自社の財務を確認したうえで法的手続きを決める。事前に金融機関等に相談する

1 会社を“美しく”たたむ前提は良好な財務

後継者がいない等の理由で、会社をたたまざるを得ないことがあります。経営者にとってはつらい選択ですが、そうと決めたなら、

顧客や取引先、従業員、金融機関等の利害関係者に迷惑をかけずに、できるだけ会社を“美しく”たたみたい

ものです。

個人の場合も同様ですが、やはり周囲に迷惑をかけずに会社をたたむには、健全な財務が前提となります。財務というと分かりにくいかもしれませんが、要するに、

  • 自分の資産は目減りしていないか
  • 誰にどれだけ借金をしているか
  • 保証人になっていないか

等を確認するということです。そして、この結果を踏まえて会社をたたむ手続きを検討する流れとなります。なお、会社をたたむ手続きとして、この記事では、いわゆる「通常清算」に注目します。

2 自社の「財務」の健全性を確認する

1)資産を時価で再評価する

古くから所有している不動産等は、簿価と時価とが乖離(かいり)していることが多いので、不動産鑑定士に依頼する等して時価で再評価します。

また、設備や器具備品は、資産管理台帳で減価償却後の価額を把握しているでしょうが、これらも時価評価します。例えば、資産管理台帳上は残存価値があっても、実際には売却できない(=現金化できない)資産は、「評価額ゼロ」とする等します。

2)債権者を把握する

買掛金、未払金、借入金等の負債について、誰に対して、いくらの債務があり、いつまでに支払い(返済)しなければならないのかを整理します。また、借入金については、保証人がいる場合はその旨も記載します。

3)担保資産を整理する

不動産等に設定されている担保および担保を設定した借り入れに関する借入先・借入残高を整理します。担保が設定されている資産は、借入金を返済して抵当権等を解除しなければ処分が難しいので、不動産の処分の可否を検討する際に必要になります。

4)従業員の給与・退職金を見積もる

従業員を解雇する場合、少なくとも30日前にその旨を予告します。あるいは、30日分以上の解雇予告手当を支払います。

また、退職金規程がある場合、それに基づいて退職金を支払う必要があります。なお、退職金は法的に使用者がその支給条件を明確にして支払約束をした場合に初めて発生するので、そうでなければ退職金を支払わなくてよいと考えられます。従業員に退職金を支払う想定の場合、原則として、賃借対照表上に退職給付引当金が計上されますが、中小企業では退職給付引当金を計上していないことも少なくありません。また、計上していても、同時期に全従業員が会社都合により退職することを想定した金額までは計上されていないでしょう。そのため、退職金の支払いの要否を確認しつつ、支払いが必要な場合には、それを前提とした準備をします。

5)個人資産の評価

中小企業の経営者の場合は、会社の債務に対して個人保証しているケースが多くなります。そのため、経営者個人の資産状況についても整理しておきます。

6)会社をたたむための費用を把握する

会社をたたむためには、次のような費用が掛かるので事前に想定しておきましょう。

  • 登記等、法令上の手続きに関する費用
  • 弁護士等の専門家への報酬
  • 売却できない設備や器具・備品の廃棄費用
  • 店舗や工場の原状回復費用
  • 各種契約に基づく解約金や違約金

3 会社をたたむための法的手続き

会社をたたむための法的手続きは、解散と清算があります。

  • 解散:法人格を消滅させる原因となる事実のこと。原則、会社が解散するだけでは法人格は消滅しない。清算の手続きが必要
  • 清算:解散した会社の資産や負債の処理のための法的な手続きのこと。解散した会社が残った債務を全額支払うことができる場合は通常清算となり、解散した会社が債務超過で裁判所の監督のもと行われる清算の場合は特別清算となる

ここでは、通常清算に注目してみましょう。通常清算の場合、裁判所は関与しないのが普通です。清算人の下、債権・債務等の会社の権利義務の一切を整理し、残余財産を株主に分配する等します。清算人とは、

清算株式会社(清算手続きに入った株式会社)の清算職務を行い、業務を執行する者のことで、一般的に取締役全員が清算人に、代表取締役が代表清算人になる

ことになります(それ以外の者がなることもできます)。

4 通常清算の手続きとスケジュール

「通常清算」の手続きとスケジュールイメージは次の通りです。

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1)取締役会の決議

会社を株主総会の決議によって解散するときは、株主総会の招集の決定が必要です。取締役会設置会社の場合、株主総会招集の決定に係る決議をします。

2)株主総会における解散の決議

株主総会で解散の決議をします。株主総会の招集は、公開会社でない株式会社の場合、原則、株主総会の1週間前までに通知します。解散決議の株主総会は臨時で行われることも多く、その場合は議決権を行使するための株主を確定するには基準日を定めます。基準日を定めるには、定款に定めがない限り、基準日の2週間前までに基準日等を公告します。

また、解散の決議は特別決議となります。特別決議は議決権を行使できる株主の議決権の過半数が出席し、かつ出席した当該株主の議決権の3分の2以上で決する決議です。ただし、定款で別途要件(出席割合等)を定めている場合は、その規定に従います。

3)解散の登記、清算人の選出、清算人の登記

1.解散の登記

清算人(代表清算人)は、会社の解散の日から2週間以内に、その本店の所在地において、解散の登記をします。

2.清算人の選出

会社が解散したときは、原則、取締役全員がそのまま清算人に就任します。これを「法定清算人」といい、この場合は清算人の選任決議は不要です。また、定款に会社清算時の清算人が定められている場合は、その定めに従って清算人が選任されます。

この他、解散決議をする株主総会において、清算人を選任することができます。解散前の取締役以外の者を清算人にする場合や、解散前の取締役のうちの一部を清算人にする場合等は、この方法によって選任されます。

3.清算人の登記

清算株式会社(清算中の株式会社)の清算人となったときは、解散の日から2週間以内に、その本店の所在地において、定められた事項の登記をします。

4)債権者への公告・催告

清算株式会社は、解散した場合、遅滞なく債権者に対して債権を申し出るべき旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者には各別に催告しなければなりません。この公告・催告の期間は2カ月以上でなければなりません。

公告には、当該期間内に申し出がなければ、清算から除斥される旨を付記する必要があります。なお、債権者に対する催告の方法や回数については特に会社法上の規定はありませんが、一般的に書面で1回実施することが多いでしょう。

5)財産目録等の作成、株主総会への提出・承認決議

清算人は、就任後遅滞なく、清算株式会社の財産の現況を調査し、法務省令で定めるところにより、会社の解散等、清算の開始原因が発生した日における財産目録および貸借対照表(以下「財産目録等」)を作成しなければなりません。また、清算人は、財産目録等を株主総会に提出し、その承認を受ける必要があります。

6)財産の処分や債権・債務の整理

債権者等の利害関係者との合意に基づいて、財産の処分や債権・債務の整理をします。ただし、利害関係者間の公平を欠いたり、任意整理に応じない債権者がいたりする等の場合は、破産管財人の下で強制力をもって手続きを進めることのできる破産手続き等に移行します。

7)貸借対照表等の作成

清算株式会社は、法務省令で定めるところにより、清算事務の遂行状況等を株主に知らせるため、解散した日の翌日から始まる各1年の期間を「清算事務年度」として、各清算事務年度に係る貸借対照表および事務報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければなりません。

8)残余財産の確定・分配

清算会社は、会社債務の弁済が完了した後、残った残余財産の分配をしようとするときは、清算人の決定によって、残余財産の種類、株主に対する残余財産の割当に関する事項を定めなければなりません。なお、残余財産の分配を実施するための株主総会の決議は不要です。

9)清算事務の終了、株主総会における決算報告の承認

清算株式会社は清算事務が終了したときは、遅滞なく決算報告を作成しなければなりません。清算人は決算報告を株主総会に提出し、または提供し、その承認を受けなければなりません。

10)清算結了の登記

清算事務に係る決算報告を株主総会で承認を受けた日から2週間以内に、清算結了の登記をしなければなりません。

5 さまざまな選択肢

この記事では、会社を“美しく”たたむための法的手続きとして、通常清算を紹介しましたが、その他にもさまざまな選択肢があります。事業売却等を含め、何らかの形で事業承継をする選択肢もあります。金融機関では、後継者候補や事業売却先等を紹介してくれることもあるので、一度相談してみてはいかがでしょうか。

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以上(2022年7月)
(監修 みらい総合法律事務所 弁護士 田畠宏一)

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【営業最強フレーズ集】プレゼン編2 「品質重視ならA案、価格重視ならB案、バランスが取れているのはC案です」

書いてあること

  • 主な読者:今よりレベルアップしたい営業担当者と、営業担当者を指導する営業管理職
  • 課題:現場ですぐに使えて顧客と信頼関係を築けるトークスクリプト的なものが欲しい
  • 解決策:シーンごとに「最強フレーズ」を、少なくとも1つは持っておく。あとは応用

品質重視ならA案、価格重視ならB案、バランスが取れているのはC案です

選択権を相手に委ねる

大抵の人は営業されるのが大嫌いです。その理由の1つは、「押し付けられている」ように感じるからです。そこでプレゼンでは、相手が「押し付けられた」と感じることのないように注意しましょう。プレゼン内容が相手にとって価値あるものなのはもちろん、複数のプランを用意することが大切です。

いくつかのプランの中から「自分で選ぶ」ことで、相手からすると「押し付けられた」という印象が薄れることが期待できます。

用意するプランの種類は多過ぎないように

複数のプランを用意するときは、種類が多くなり過ぎないほうがよいでし。あまり選択肢が多いと、相手は「迷って選べない」「これらのプランを全部理解した上でどれかを選ぶのは手間だ」と感じます。

ケースバイケースですが、「プランは3つ用意せよ」といいます。人は、選択肢が2つでは選ぶのに迷いますが、3つあると真ん中のプランを選びやすいからといわれています。

また、複数プランを用意するときは、それぞれの違いやプラン名が分かりやすい・覚えやすいのがベストです。特にオンラインでプレゼンするときは、一度聞いて(見て)、相手がすぐに理解できそうなプラン内容・プラン名がよいでしょう。

“お勧めポイント”を案内する

プランを複数用意して相手にプレゼンするときは、より相手が選びやすいようにトークすることが大切です。そこで、冒頭で紹介した営業最強フレーズを使って、それぞれのプランの“お勧めポイント”を案内し、相手に具体的なイメージを持ってもらいましょう。

居酒屋でいえば、店員が「お腹にたまるものを食べたいならご飯ものの◇◇、ご注文いただいた日本酒に合うものならおつまみ系の××がお勧めです」と案内してくれるのと同じです。

事例を加える

さらに相手の背中を押すために、事例を加えてみましょう。「品質重視ならA案です。例えば実際にA案をご採用いただいた他社様では、このような効果があったと聞いています」と伝えれば、相手は、自社(自分)が採用した後のことをイメージしやすくなります。

「A案ですと、確かに金額は高いと言われることがありますが、メンテナンスがしっかりしているので費用対効果が一番高いという評価を頂いています」というように、懸念点→メリットの順番で事例を伝えるのも一策です。誠実さをアピールしつつ、「相手が感じるかもしれない懸念点やデメリット」を先回りして解消できるでしょう。

以上(2022年7月)

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画像:Mariko Mitsuda