【朝礼】ボーっと生きてなんかいられません

私はこれまで、恥ずかしながら世界の出来事にそれほど関心がなく、ニュースをこまめにチェックすることはありませんでした。ですが、最近はその考えが変わり、真剣に世界のニュースを見るようになりました。先輩方からすると、「今さら何を言うのか」と思われるかもしれませんが、けさは、まだ世界の出来事に対して関心の薄い人のために、私がどうして世界のニュースに関心を持つようになったかをお話ししたいと思います。

少し前まで、私はニュースで流れる世界の出来事は、自分とはほとんど関係のない話ばかりだと思ってきました。感染症の流行も、異常気象も、国際紛争も、「その地域の人たちはかわいそうだな」としか感じず、基本的に自分事として考えることはなかったように思います。

ですが、今は違います。新型コロナウイルス感染症が日本でも猛威を振るい続け、異常気象は私たちも含めた地球全体の環境破壊が原因となっていることが指摘され、国際紛争が日本の物価にも影響を及ぼすことを体験しました。

まさに今、私たちは世界の動きと自分の生活が直結しているのだということを意識せざるを得なくなっています。そして、たとえ自分は世界の出来事に関心がないとしても、もう世界の動きと自分の生活を切り離すことはできない、ということを悟りました。私は「俗世から離れた悠々自適な生活」に憧れる部分があったのですが、もう夢のまた夢のような話になってしまいました。

世界の動きと自分の生活が直結するようになった理由は、幾つかあると思います。感染症が瞬く間に世界中に広がるようになったのは、世界経済が密接になり、人の往来も増えたことが背景にあるでしょう。環境破壊や兵器の使用といった人間の行為が、地球全体にインパクトを与えるほどまで強力になったということもあると思います。

理由はどうであれ、今の時代は、自分の幸せを実現させるためには、自分だけではなく、世界全体の幸せを実現させる必要がある、と考えなければいけないのだと感じます。

そう考えると、SDGsというものは、世界の誰かを助けてあげるためのものではなく、自分自身や自分と関係する人たちの身を守るために目指さなくてはいけないゴールなのではないでしょうか。

私のようなちっぽけな人間も含めて、一人ひとりが地球上で共同生活をしているという責任を自覚し、世界レベルで物事を考えるようにならなくてはいけない、ということなのだと思います。私が今日捨てたゴミは地球全体の生活環境を悪化させ、電気を消し忘れて無駄に消費した資源は、異常気象を発生させる原因につながっているわけです。でも逆に、私がゴミを拾えば地球は少し住みやすくなり、仕事を通じて社会に貢献すれば、世界が少し便利になるわけです。そのように大きな視点で考えると、とてもボーっと生きてなんかいられません。

以上(2022年6月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】会社は報連相で回っている

「報連相」は、仕事を進める際の基本として知られています。報連相は、報告・連絡・相談の頭の文字をとったもので、ビジネスの基本的な情報を共有するために役立つものです。実は、会社(組織)は、報連相で回っているといっても過言ではありません。

例えば、予定よりもプロジェクトの進行が遅れていることについて、先輩・同僚に報告すれば、よいアドバイスを受けられるかもしれません。また、この件を上司に連絡・相談すれば、上司はプロジェクトの遅れを取り戻すために業務推進のあり方を見直すように指示を出すでしょう。このように報連相をしっかり行うことで、情報を共有し、ビジネスをスムーズに進めることができます。

一方、報連相がうまくいっていない会社(組織)では、各人が自分一人だけで仕事を行いがちです。これでは、その人がミスをしても誰も分かりませんし、その人が急な病気で仕事を休んだときに、会社(組織)としての対応ができません。

報連相は「報告・連絡」と「相談」の二つに分けることができます。「報告・連絡」は相手に情報を伝達するだけですが、「相談」は相手の知恵を借りなければなりません。

まずは、報告・連絡について考えてみましょう。ビジネスにおける報告・連絡は簡単なようで実は難しいのです。独りよがりな報告・連絡では、情報が正しく相手に伝わりません。仮に、情報の受け手に誤解を招きやすい内容の報告・連絡の場合、周囲に混乱が生じることもあります。

次に、相談について考えてみましょう。相談は、相手の知恵を借りることになります。そのため、相手の状況や相談内容によっては、相手に大きな負担をかけることになります。

ここで少し考えてみてください。皆さんが仕事に困ったときに、相談したい相手は誰ですか。その人は、自分よりビジネスパーソンとして能力が高く、しかも相談しやすい人でしょう。こうした人の多くは、皆に頼りにされるため、多忙を極めています。

ここで、会社(組織)の中で、報告・連絡・相談がスムーズに行われるためのポイントを紹介します。

  • 報連相の相手を間違わない
  • 事実を分かりやすく簡潔に伝える
  • 結論から伝える
  • 事実と意見を分けて伝える
  • できる限り書面を用いる
  • 相談の場合は、自分の意見を整理しておく
  • 相手の邪魔にならないタイミングで行う

報連相には、常に相手があります。そのため、相手に伝えるべき内容はあらかじめ分かりやすく整理しておきます。その上で、相手の都合も考えて、タイミングを見計らって行いましょう。

最後に、皆さんに質問します。上司の方は部下から報連相を受けましたか。部下の方は上司に報連相をしましたか。

会社(組織)は、報連相で回っています。自分一人で仕事を抱えこまず、こまめな報連相をお願します。

以上(2022年6月)

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画像:Mariko Mitsuda

食料としても昆虫すごいぜ 残る課題は普及に向けた「イメチェン」

書いてあること

  • 主な読者:新規事業を検討する小売業、食品・飲料業の経営者
  • 課題:将来性のある新規事業を検討したい
  • 解決策:昆虫食の取り組みを確認しつつ、消費者の認識も把握する

1 世界の潮流は「家畜から昆虫へ」だけど、虫のイメージが…

日本でも、昆虫を食べ物に取り入れる昆虫食が徐々に広まってきています。最近では、大手小売店の無印良品でコオロギを原材料としたせんべいが発売されました。また、小麦価格の上昇を背景に、代替たんぱく源として昆虫食の問い合わせが増えているとの声も聞かれます。

食料としての昆虫は、家畜などに比べて、

  • 高たんぱくで栄養が豊富
  • 温室効果ガスやアンモニアなどの排出量が少ない
  • 水や肥料などの消費が少ない

といったメリットがあるので、国連が定めたSDGs(持続可能な開発目標)の、「飢餓をゼロに」「気候変動に具体的な対策を」「陸の豊かさも守ろう」といった課題の解決が期待されています。

、昆虫食の最大の欠点は、消費者に根強く残る「見た目や虫そのもののイメージ」です。この記事では、メディアでも徐々に露出が増えてきた昆虫食の動向を解説し、昆虫食の普及が加速していくためのヒントを考えていきます。

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2 多様なタイプが登場。キモは虫の姿を活かすか、なくすか?

昆虫食は、国内外で「昆虫食スタートアップ」などが次々と新商品を開発・提供し、従来のイメージが変わりつつあります。

これまでは昆虫の見た目をそのまま商品にした提案が注目されがちでしたが、昨今では昆虫食の普及や定着を視野に入れ、パウダーなどの形にして、消費者の心理的なハードルを下げる商品も登場しています。詳しく見ていきましょう。

1)女性向けを意識した昆虫食自販機:亜細亜TokyoWorld

亜細亜TokyoWorldは、昆虫食自販機「MOGBUG(モグバグ)」を、東京の秋葉原と高田馬場に設置しています。

自販機では、コオロギやカイコなどのスナックや、タガメのエキスを使ったサイダーなどを販売しています。女性でも興味を引くように自販機自体をカラフルなデザインにするとともに、商品パッケージもリアルな虫の姿ではなくカラフルにすることで、消費者の抵抗感を抑え、購入しやすくしています。

同社ではMOGBUGを、「栄養満点なギルトフリー(天然の素材を使い、カロリーなどが低い“食べても罪悪感がない”)スナック」として打ち出しており、食生活や健康の意識が高い女性向けに浸透させようとしています。

2)ハイセンスな昆虫食レストラン:ANTCICADA

ANTCICADA(アントシカダ)は、ジビエや昆虫食をメニューに取り入れたレストランを運営しています。

同店では、昆虫食につきまとう、いわゆる「ゲテモノ料理」のイメージを覆す、おしゃれなコース料理として提供しています。ペアリングのアルコール類の選定を専門知識のある発酵家が担い、シェフはミシュランに選ばれた料理店で修業したこともある本格派です。提供される料理は「高級昆虫食」の印象を与えています。

同店はECショップも運営しており、店舗でランチタイムに提供されるコオロギラーメンや、カイコの繭(まゆ)を使ったシルクソーセージ、タピオカミルクティーのシロップとして使う蚕沙(さんさ。カイコのふんのこと。漢方として使われる)なども販売しています。

3)カイコを次世代の食品に:Ellie

Ellie(エリー)は、日本では衣料品の素材として古くから使用されているカイコを、次世代の食料として提案しています。同社と提携する大学との研究で、カイコにはたんぱく質などに加えて、健康維持や有害物質を緩和させる機能性成分が豊富に含まれていることが分かりました。

同社はカイコの繭を粉末またはペースト状に加工し、食品の形状に応じてパテやチップスに練り込んで使用することを提案しています。2020年には、カイコを原料に含んだハンバーガーやスープなどを販売するスタンド「SILKFOOD LAB」を、期間限定で展開しました。現在はカイコのパウダーを原料にしたチップスを同社のECサイトで販売中です。

同社の取り組みは異業種からも注目を集めており、2020年3月には、アイビスパートナーズ、三井住友海上キャピタル、京葉ガスを引受先とした、約4500万円の第三者割当増資を実施しました。

4)日本初のコオロギ製プロテイン:ODD FUTURE

2020年創業のフードテック企業のODD FUTURE(オッドフューチャー)は、「INNOCECT(イノセクト)」のブランドで、コオロギの粉末を用いたプロテインパウダーや、プロテインバーを販売しています。同社のECサイトや商品パッケージは、スキンケアブランドをほうふつとさせるデザインを取り入れており、女性をターゲットにしていることがうかがわれます。

商品紹介のコンテンツでも、コオロギが持つ美容成分やグルテンフリーなどを紹介し、健康面や美容面でのメリットを強調しています。また、「コオロギ」とは表記せずに英訳の「クリケット」に統一することで、「昆虫感」を排除しています。さらに、同社が掲載されたメディア紹介でも、女性誌やファッション誌を積極的に挙げており、ターゲット層に合った広告戦略を取っています。

同社は2021年10月に複数のベンチャーキャピタルを引受先とした第三者割当増資を実施し、今後のマーケティング強化や研究開発に取り組む計画です。

5)新規事業で昆虫食に参入:太陽グリーンエナジー

太陽ホールディングスの子会社で、再生エネルギーの発電事業などを行う太陽グリーンエナジーは、同社で養殖したコオロギを販売するECサイト「TAIYO Green Farm Cricket」を2020年8月から運営しています。このECサイトは、同社が養殖したコオロギを、ペットの飼料用と人間の食用として販売しています。

当初は、新型コロナの影響で外出の自粛が要請される中で、飼っているペットの餌のコオロギが購入できなくなったことからスタートしましたが、昆虫食の輸入や小売りなどを行うTAKEO(タケオ)と共同で、太陽グリーンエナジーが養殖するコオロギの産地(埼玉県、福島県)ごとの特徴を活かした商品を販売しています。

6)コオロギせんべいで昆虫食の認知度を高める:良品計画

近年、一部の人たちの間で徐々に注目を集めていた昆虫食の認知度を、一般の消費者向けに広めたきっかけの一つに、良品計画のコオロギせんべいが挙げられます。同社のコオロギせんべいは、食用のコオロギの研究で著名な徳島大学発のベンチャーで、食用コオロギの大量養殖を進めるGRYLLUS(グリラス)と共同で商品開発を行いました。

グリラスが養殖するコオロギは、野生種との判別が容易になるように、目が白くなったアルビノ種に厳選し、国内の施設内で飼育して野生種との混入を防いでいます。食品としての安全性にも配慮し、エサや成長過程を記録しています。

コオロギせんべいの類似商品は数多く市場にあり、同社の商品は、日本初のものではありません。しかし、これまで多くの昆虫食関連製品が苦労していた低価格化を実現しています。この背景には、良品計画によるコオロギの量産体制や、国内外に出店する販売網などの大企業の力が発揮されているといえます。また、幅広く受け入れられるために「昆虫の見た目」を排除し、国内の施設での品質管理を徹底することで、心理面・衛生面にも配慮しているといえるでしょう。

7)食育セットで未来の「昆虫食ユーザー」を育成:MNH

MNHは、昆虫食商品の販売に特化したECサイトで、コオロギの粉末を使った食育セットを販売しています。同社の「未来コオロギラボ・コオロギたこ焼き作りキット」は、コオロギの粉末と素揚げをたこ焼きの粉とセットにしており、子供の自由研究に使える「研究まとめシート」も同封されています。

たこ焼きに混ぜる粉末の量を調整することで、味の変化などを研究することができます。従来は、粉末や素揚げはそれぞれ単品として販売されることが主流でしたが、「粉もの」であるたこ焼きに混ぜる形にして、自由研究の題材としてアレンジすることで、これまでとは違うユーザー層の開拓につながりそうです。

こうした取り組みは大企業も始めており、パン製造大手の敷島製パンも、食用コオロギのパウダーを使ってパンを自宅で作れる食育セットを販売し、この食育セットを用いた子供の自由研究のコンテストを開催しました。

8)イエバエを飼料化:MUSCA

MUSCA(ムスカ)は、イエバエを用いたバイオマスリサイクルと、幼虫の飼料化を行っています。同社のイエバエは、約50年間の品種改良を繰り返しており、通常種に比べて成長や有機物の分解が優れています。

このイエバエの卵を、家畜の育成過程で発生する排泄物に植え付け、幼虫の餌として処理します。処理された排泄物を堆肥として商品化し、植物の栽培などに利用されています。成長したイエバエの幼虫は、さなぎになるために排泄物から這い出てきたところを回収し、乾燥させ、魚や鶏などの養殖業、畜産業向けの飼料として販売されます。

従来は排泄物を畑などに撒き、悪臭などを放ちながら数カ月かけて堆肥化していましたが、イエバエを用いることで、堆肥化までの期間を約1週間に短縮できるだけでなく、成長したイエバエを飼料として収益化できるようになりました。さらに、イエバエの飼料は、飼料を食べた魚の病気への耐性が強化され、体が大きく成長するなどの効果が報告されています。

3 昆虫食に対する意識など 状況は追い風も、普及はまだまだ

昆虫食が徐々に認知され始め、「将来の食料」の候補として意識調査も実施されるようになりました。今回は、近い将来の潜在ユーザーとなり得る、若者への意識調査から、昆虫食の現在地を見てみます。

1)若者への意識調査:日本財団 第31回18歳意識調査「新しい食について」

日本財団が17~19歳を対象に行った意識調査「新しい食について」によると、昆虫食に対する認識は次の通りです。

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この意識調査によると、代替肉(植物由来の原料などで肉の食感を再現したもの)や昆虫食などに対する評価は、半々といった状況です。また、昆虫食については「食べてみたくない」との回答が83.8%と、普及へのハードルは容易ではなさそうです。一方で、今回の調査対象者でフードテック(先進的な技術を用いて食料の課題の解決や、可能性を開拓するもの)を知っていると回答したのが9.7%にとどまったことを考慮すると、まずは昆虫食を含めたフードテック全体の認知度を向上させることが先決かもしれません。

また、価格も普及の足かせになっています。例えば、昆虫食のスナックとして代表的なミールワームやコオロギの素揚げのパックの場合、商品の中には15グラムで1000円以上もするものがあります。昆虫食を食べるメリットが明確でない場合、興味のない食べ物に1000円以上を出すのは現実的とはいえないでしょう。

この背景には、昆虫食の需要が限定的で、効率的な大量生産、流通が確立していないことなどが挙げられます。東南アジアなどから輸入する昆虫の素揚げなどは、昆虫を人力で採集している場合もあり、収穫は天候に左右され、人件費もかさんでいるかもしれません。

近年では、コオロギせんべいのように、一般消費者への普及を意識した商品開発、価格帯での提供を進める企業も現れており、今後は価格の低下も期待できそうです。

2)昆虫食の現状

最後に、昆虫食の現状として次のようなものが想定されます。国連などによる普及の支援や、国内外の昆虫食スタートアップなどの登場で市場は徐々に盛り上がってきています。消費者側に目を向けると、一般への普及にはまだまだ時間がかかりそうですが、昆虫食の高たんぱく・低カロリーなどの特徴を活かすことで、近年の健康ブームに乗った商品開発で認知度を高めることができるかもしれません。

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画像:andrerako-Adobe Stock

以上(2022年6月)

雨天時の安全運転(2022/06号)【交通安全ニュース】

活用する機会の例

  • 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
  • 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
  • マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など

今年も、梅雨入りの時期となりました。降雨は、視界を悪くし、路面を滑りやすくするなど運転に少なからず影響を与えるため、慎重な運転が求められます。

今回は、雨天時の運転での視界確保とスリップ事故防止に着目して、安全運転を考えましょう。

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1.視界不良やスリップによる事故事例

首都高速道路株式会社の調査(下図)によると、首都高速における雨天時の事故件数は約5倍に増えています。

雨による視界不良、路面状況の悪化、雨音による車外の音情報の遮断など運転上の悪条件が重なり、事故が発生しやすくなります。特に視界不良とスリップによる事故が多いので、事故事例を通じて注意点を確認しましょう。

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出典:首都高速道路株式会社 首都高ドライバーズサイトに掲載の2020年度統計値を基に当社作成

【事例1:視界不良による衝突事故】

運転者は雨天時に幹線道路を走行しており、降雨により前方が見えにくい状況にあった。横断歩道外を横断した歩行者の発見が遅れ、急ブレーキをかけたが、間に合わず衝突した。

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⚠ 注意点

雨天時の運転では、フロントガラス等に付着する水滴により、前車や信号機、標識等が滲んで見えるなど、視認性が低下します。また車内外で気温差が大きいときや湿度が高いときは、フロントガラスが曇りやすくなります。

【事例2:水たまりでのスリップ事故】

運転者は直線道路を走行しており、路面には降雨による水たまりができていた。運転者は路面状況を見誤り、水たまり部分でスリップし、道路沿いの街路樹に衝突した。

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⚠ 注意点

雨天時の運転では、路面とタイヤとの間の摩擦が小さくなるため、制動距離(ブレーキをかけて車が止まるまでの距離)が伸びます。またタイヤが滑りやすくなり、水たまりがあるとスリップすることがあります。

2.視界確保とスリップ防止のポイント

視界確保

①ワイパーを正しく使用する

雨量に応じて適切にワイパーを使用しましょう。

ワイパー作動時に、拭きむらやビビリ音などを発見した場合は、早めにワイパーを交換しましょう。

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②フロントガラスを曇らせない

エアコンの除湿やデフロスターを活用しましょう。

車外の湿度が高い場合は、内気循環が有効です。

傘や服の水滴を払ってから車に乗り込むようにすることも車内の湿度対策として有効です。

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※雨天時は、歩行者や自転車からの視界も悪くなるため、歩行者や自転車が自車の接近に気づかずに道路を横断するようなことがあります。よって、視界不良を踏まえた危険予測運転や自車の存在を周囲に気づいてもらえるようなヘッドライト等の点灯が有効です。

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スリップ防止

①スピードを抑えて車間距離を長めに取る

路面状況の変化を意識した上で、スピードを抑えて十分な車間距離を取りましょう。

追突等の危険回避だけでなく、前車の水しぶきを浴びる可能性も少なくなります。

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②「急」な運転操作はしない

急発進・急ハンドル・急ブレーキは厳禁です。

特に水たまりでの急ハンドルや急ブレーキは事故に繋がる可能性があり、大変危険です。

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※雨の降り始めは、路面にホコリや泥などが浮き上がり、車が滑りやすい状況です。また濡れた道路標示やマンホールの蓋の上などは滑りやすくなっています。路面状況の変化を早めに察知し、状況に応じた走行をすることが重要です。

3.雨天時の安全運転に向けて

日頃から、ワイパーやタイヤの点検、フロントガラス等の清掃など雨天に備えておくことが大切です。また雨天時は、視界の悪化や路面状況の変化を踏まえて、常に先の状況を予測しながら運転をすることが重要です。

事前準備と危険予測の心構えで、安全運転を継続しましょう。

以上(2022年6月)

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画像:amanaimages

【損金】税理士が解説。損金になる固定資産の購入費用と、ならない購入費用

書いてあること

  • 主な読者:決算対策の一環などとして、消耗品費を損金にしたい経営者
  • 課題:取得したもの、取得した金額によって取り扱いが大きく異なる
  • 解決策:消耗品費と減価償却費の違い、中小企業の特例を理解して自社に有利な方法を選択

1 消耗品費・減価償却費とは

固定資産の購入費用を損金とするときには、「消耗品費」と「減価償却費」とが主な項目になります。

消耗品費とは、

事業を行う上で日常的に使用する文房具などの「消耗品」を購入するための費用

です。通常、消耗品は事業年度ごとにある程度決まった数量を購入し、その時点で「消耗品費」として損金の処理をします。一方、パソコンや机などの器具備品や建物・建物附属設備などの固定資産は、原則として、購入時に全額損金とすることができず、耐用年数に応じて何年かに分けて費用である「減価償却費」として損金に算入します。

ただし、その固定資産の値段(取得価額)やどの程度の間使用できるか(使用可能期間)によっては、例外的に購入時に全額損金にすることができます。このように、固定資産の購入費用は、税務上の取り扱いに注意が必要となる費用の1つです。

固定資産の購入費用が損金になるかどうかのポイントは、

  • 取得価額が10万円未満、または使用可能期間が1年以下であること
  • 取得価額が10万円以上20万円未満のものは3年間で均等償却すること
  • 取得価額が20万円以上のものは耐用年数に応じて減価償却すること
  • 中小企業者等については取得価額が30万円未満であること

です。詳しく見ていきましょう。

2 損金になる消耗品費・減価償却費の4つのポイント

原則として、固定資産を購入時に全額損金にすることはできません。しかし、取得価額の金額によって処理が分かれるので確認しましょう。

1)取得価額が10万円未満、または使用可能期間が1年以下であること

取得価額が10万円未満、または使用可能期間が1年以下の固定資産は、消耗品と同様に「消耗品費」という勘定科目で、購入時に全額損金とすることができます。

2)取得価額が10万円以上20万円未満のものは3年間で均等償却すること

取得価額が10万円以上20万円未満の固定資産は、「一括償却資産」と呼ばれ、取得した事業年度から3年間で損金に算入します。この一括償却資産は各事業年度で取得価額の3分の1ずつ損金に算入(1年決算法人の場合)することができるので、事業年度の中途で購入したものであっても月割り計算をする必要はありません。例えば取得価額が15万円の場合、各事業年度に5万円(=15万円/3年)ずつ均等に損金に算入します。

3)取得価額が20万円以上のものは耐用年数に応じて減価償却すること

取得価額が20万円以上の固定資産は、定額法や定率法といった方法を使用し、税法で決められている耐用年数にわたって損金に算入します。適用する耐用年数の誤りは税務調査でよく指摘されるポイントなので注意しましょう。

  • 定額法:「取得価額」に一定割合を掛けて減価償却費を計算する方法で、毎期の減価償却費が一定額となる
  • 定率法:「未償却残高(帳簿価額)」に一定割合を掛けて減価償却費を計算する方法で、耐用年数の前半で多額の、後半では少額の減価償却費が計上される

4)中小企業者等については取得価額が30万円未満のものであること

青色申告書を提出している中小企業者等(資本金が1億円以下で、常時使用の従業員の数が1000人以下の法人などで一定の要件を満たすもの)が、取得価額が30万円未満の固定資産(以下「少額減価償却資産」)を購入した場合、購入時に消耗品費として全額損金にできる特例があります。この少額減価償却資産の特例の適用は会社の任意ですが、全額損金にできるのは、1事業年度で300万円まで(1年決算法人の場合)です。

例えば、1事業年度に25万円のパソコンを13台購入した場合、少額減価償却資産として購入時に一括損金とすることができるのは12台分(25万円×12台=300万円)までです。残り1台(25万円)については、一旦器具備品(資産)として計上し、通常の減価償却を行わなければなりません。また、同じ事業年度に他の固定資産を購入した場合も、すでに300万円の枠を使い切っているため、この特例を適用することはできません。

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なお、税法の改正により、他社に貸し付ける目的で購入した「貸付用資産」については、金額の多寡に関わらず資産計上し、税法で決められている耐用年数にわたって損金に算入されることになりましたので、注意しましょう。

3 消耗品費・減価償却費で迷いやすい実務Q&A

1)数年分をまとめ買いした消耗品でも、全額損金にできるの?

文房具などの消耗品は、原則として購入したときに全額損金にできます。これは、購入した消耗品はその直後(長くても1年以内)に消費されるのが一般的で、購入時に全額損金としても、各事業年度の損金になる金額はほぼ同額になると考えられるためです。

では、消耗品をまとめ買いしたときはどうでしょうか。例えば、割安で購入できるといった理由から、2年分をまとめ買いすることがあると思います。このケースでは全額を購入時の損金とすることはできません。あくまでも損金とされるのは1年分のみです(残りの1年分は翌事業年度の損金とされます)。1年分の消耗品に該当するかどうかの明確な判断基準はありませんが、例年と比較して明らかに消耗品費が高額になっており、その理由が翌事業年度以降の分のまとめ買いに当たるものは税務調査でもチェックされるので注意しましょう。

2)作業服や制服などは消耗品費として処理することができるの?

業務で使用する目的で従業員に作業服や制服などを支給する会社も多いでしょう。こういった作業服なども、業務にのみ使用することを目的としている場合に限り、その購入費用は消耗品費として損金になります。

一方、「スーツ」についてはプライベートでも使用可能なものと考えられています。ですから、スーツを会社が支給した場合、税務上は給与として取り扱われ、源泉所得税の対象となります。特に役員に対してスーツを支給した場合には、損金にすることができない「役員給与」とみなされるので注意しましょう。

3)固定資産の金額の判断は1個ずつ行うの?

固定資産は、その取得価額がいくらかによって取得時に全額を損金とすることができるか、固定資産に計上して減価償却を行うかに分かれますが、この金額は基本的に「1個当たりの単価」で判断します。

ただし、単体で使用することが想定されていないものなどについては、「1個当たり」ではなく「1組当たり」で判断します。例えば、応接間に置いてあるソファやテーブルなどはセットで使用することを前提にデザインされているものが多く、こうした資産については1組の金額で処理方法を判断する必要があります。例えば、ソファが25万円、テーブルが10万円の応接セットを購入の場合、35万円の器具備品(固定資産)として計上します。

4)車やクルーザーといった固定資産も減価償却費を損金にできるの?

税務上、事業を行う上で必要な固定資産であれば、減価償却費は損金となります。従って、社用車を購入したり、福利厚生目的でクルーザーを購入したりした場合、減価償却費は原則として損金になります。

ただし、こういった資産は高額で、かつ「事業目的」か「私的目的」かが曖昧になるケースも多いため、事業目的で購入・使用していることを証明できるような書類を整えておくことが重要です。例えば、「運用規程(使用手続きなど)」や「使用管理表(いつ、誰が、どのような目的で使用したのかなど)」を準備するとよいでしょう。これを怠り、事業目的で使用していることが証明できなかったり、そもそもプライベートでの使用がほとんどであったりすることが明らかな場合は、減価償却費が損金にできないばかりでなく、購入金額が役員などの個人に対する給与として源泉所得税の対象となるなど、思わぬ税負担が生じる恐れがあります。

以上(2022年5月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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画像:Mariko Mitsuda

ドローン商用化へTake off! 2022年6月の航空法改正で広がるビジネスチャンス

書いてあること

  • 主な読者:航空法改正を機に、ビジネス用途でのドローン利用を検討している経営者
  • 課題:ドローンを自社のビジネスにどう利用できるのか知りたい。また、法改正の影響も知りたい
  • 解決策:空撮や空輸などの特徴を活かしたさまざまな業種での活用事例を参考にする。法改正によってドローンの登録が義務化されるが、市街地でも飛行が可能になる

1 法改正で飛行エリアが拡大。“野良ドローン”は飛行不可に

政府は航空法などの改正によって、商業面でのドローンの利用拡大を後押ししています。具体的には、

2022年6月から、ドローンの所有者による機体の登録が義務付けられる一方で、

2022年12月から、市街地などの有人地帯でドローンを飛ばすことができる

ようになります。

政府の方針を追い風に、農林水産、建築、物流、宿泊、広告など、さまざまな業種がドローンの利用を活性化させるための取り組みや実証実験を進め、省力化やコスト削減の効果を上げています。

この記事では、自社のビジネスでドローンの利用を検討されている経営者の皆さまに、今後の普及が見込まれるドローンの活用事例を紹介するとともに、法改正に伴って留意すべき点について解説します。

2 注目の「ドローン×さまざまな業種」

空中での撮影や空輸など、ドローンの特徴を活かせる領域として、次のような業種が注目されています。さらに、水中ドローンも登場し、養殖業での活用が始まっています。

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1)ドローン×農業

農業分野でのドローンの利用が注目されています。ドローンが撮影した映像をAIが分析することで、広大な農地の作付け状況や病害虫の発生の早期発見などに役立てる狙いがあります。また、これまでは有人の小型機や専用のヘリコプターで行っていた農薬散布なども、空中からの映像を見ながら操作ができ、コストが安価なドローンが担う場面も見られるようになってきました。

農林水産省でも農業分野でのドローン導入を推進しており、関連資料や支援策、取り組み事例などの情報発信を行っています。取り組み事例の中には、ドローンでキャベツ畑を見回り、生育状況を画像診断して収穫量を予測するvegeta(広島県)は、生産コストが年間約600万円削減、生産額が約6500万円増加したとの報告があります。また、イネを食害するスクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)を、農薬散布に特化したドローンで駆除するヤマハ発動機(静岡県)は、駆除にかけていた作業時間が従来の約9分の1の4分に短縮され、ジャンボタニシの90%近くが死滅したといいます。

■農林水産省「農業用ドローンの普及拡大に向けた官民協議会」■
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/drone.html

2)ドローン×林業

林業でのドローンは、切り出した木材の運搬や、上空からの森林調査などで活用が始まっています。

木材の運搬では、住友林業(東京都)が産業用ドローンの製造を行う国内メーカーのマゼックス(大阪府)とともに、林業用のドローン「森飛(MORITO)」を開発しました。一度に8~15キログラムの重量を運搬することができ、従来は人力で80分かかっていた運搬作業を、空中の最短距離を移動できることによって5分で完了します。

森林調査では、ジェイドローン(東京都)がドローンを活用したサービスを提供しています。同社のサービスでは、空から森林を撮影することで、樹種、本数、大きさから、想定される収穫量を算定することができます。こうして得られた情報は、自治体が作成する林地台帳や、木材販売時の参考資料にも利用することができます。

3)ドローン×建築業

建築業などの企業の中には、自社が行うリフォームに関連した取り組みとして、ドローンを使った建物の診断サービスを提供しています。

このサービスは、ドローンで建物の屋根などを撮影し、破損箇所のチェックを顧客と担当者がその場で確認できるものです。ドローンを使うことで、これまでは屋根に上って目で確認していた作業が短縮され、作業のために組んでいた足場などが必要なくなります。

ドローンの多くが市販のものを利用しており、調達コストも低価格に押さえられそうです。こうしたこともあり、点検無料をPRしている企業もあります。

ドローンを使った検査サービスが登場した背景には、消費者庁への相談が増加していることや、故意に屋根を傷付けて修理費用を請求されるトラブルも要因の一つとして挙げられています。ドローンを使うことで、これまで顧客が見えなかった部分も映像として残ることになり、顧客からの安心感を得る方法の一つとしても定着する可能性があります。

4)ドローン×物流業

今回の航空法改正で利用の拡大が見込まれている分野の一つが、市街地などでのドローンによる輸送です。東京都では、ドローン関連のビジネスモデル構築に向けた支援を行う計画で、三菱総合研究所(東京都)とともに、都心部でのドローンを用いたフードデリバリー、医薬品運搬、小売店舗からの配送、という3つのプロジェクトを進めています。

フードデリバリーを例に挙げると、2021年11月に近距離(約50メートル、約700メートル)での配送を実証実験しました。この実験の主な目的は、近隣のレストランから提供される料理を温かいまま配送できるかに加えて、ドローンによる配送というエンターテインメント性を顧客に提供できるかも評価されています。

東京都ではこの計画を継続し、2024年度にはサービス提供エリアを拡大するとともに、ホテルのプランに組み込むことや、オフィスや住宅への配送も開始する予定です。

5)ドローン×宿泊業

宿泊施設では、サービスの一環として観光用にドローンを利用したり、ドローンのライセンス取得のための合宿プランを提供したりしています。さらに、宿泊施設向けに、ドローンからのプロモーション用動画の撮影などを提供する企業も登場しています。

小川旅館(岩手県)は、県内初とされるドローンを用いたサービス「ドローンツーリズム」を提供しています。このサービスは、宿泊者にドローンを貸し出し、周辺の観光スポットを撮影できるものです。

広い敷地を持つ宿泊施設の中には、敷地の一部を利用したドローンのライセンス取得のための合宿プランを提供しているところもあります。リソルの森(千葉県)は、ドローンの操縦に慣れ、操縦技術を身に付ける「ドローンライセンス取得1泊2日プラン」を提供しています。このプランでは、国土交通省が認定したコーチによる指導の下、認定資格のドローンパイロット1級または2級の取得を目指すものです。特に、1級の取得を目指す「ビジネスコース」では、業務での空撮や赤外線点検を想定した内容で、法人向けの研修にも対応できます。

micado(東京都)は、宿泊業向けのマーケティング支援をしています。同社のサービスでは、ドローンを使って撮影したオリジナルのコンテンツの作成を10万円から提供しています。自社の施設のプロモーションビデオや写真よりも臨場感のあるドローンからの映像で、競合他社との差別化に効果的です。

6)ドローン×広告業

中国などが先行しているドローンを用いた野外広告が、日本でも登場しました。ドローンを使ったショーを手掛けるレッドクリフ(東京都)は2022年2月、テレビCMのプラットフォームを運営するテレシー(東京都)と共同で、日本初とされるドローン広告を公開しました。

この広告は、300機のドローンを用いて、夜空に広告主のロゴやQRコードを表示するものです。同社によると、上空100メートルで展開されたドローン広告は、数キロ離れたところからも確認できたとされ、これまでの野外広告よりも広範囲で視認されそうです。

ドローン広告は今後も需要が増えていくと見込まれ、同社は2022年度中に、1000機以上のドローンを使った広告を目指しています。

7)水中ドローン×養殖業

ドローンがカバーする領域は空だけではありません。水中に潜り、これまで人間が高いリスクにさらされながら行ってきた仕事を、水中ドローンに代替させることを試みています。

ドローンの販売や関連サービスを展開するスペースワン(福島県)は、水中ドローンの養殖業での本格利用を推進し、マダイなどの養殖を行うダイニチ(愛媛県)とともに、水中ドローンの活用について実証実験を実施しました。

この実証実験では、養殖いけすに水中ドローンを投入し、いけすの底に沈んだ死魚の回収や、いけすの網の点検などを行いました。これまでは、死魚の回収やいけすの点検は人間が潜水して作業していましたが、危険な潜水作業で体力的に負担が大きいため頻繁に行うことが難しく、死魚が大量に発生していたり、いけすの破損に気付くのが遅れたりなどの課題がありました。

この他、KDDI(東京都)は、世界初ともいわれる「水空合体ドローン」を開発し、水中ドローンの「目的地まで船などで運ぶ必要がある」課題を、飛行型ドローンに水中ドローンを搭載するというアプローチで解決を試みています。水中ドローンをダムや港湾施設での点検、水産施設での監視などで活用することを目標にしたものです。

現在は陸地からドローンが発進し、目的の沖合に着水し、水中用の子機ドローンを潜水させる実証実験を行っています。飛行型の親機が音響測位を行って水中の子機をコントロールし、子機は搭載されたカメラで水中の様子を撮影する仕組みです。

3 法改正のポイント

冒頭でも触れた、航空法などの一部改正について簡単に紹介します。改正の背景として、新型コロナの影響を受けた航空産業の維持や、航空輸送の安全確保の向上、ドローンの利便性向上が目的です。ドローンに関しては、2022年度中の「レベル4飛行(有人エリアで、人の目の届かない範囲でドローンを飛行させること)」の実現を目標としています。

今回の改正の中からドローンに関する改正をピックアップすると、次のようになります。

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人口密集地でのドローンによる配送や警備などが該当するレベル4飛行を実現するためには、利用するドローンの機体認証と、操縦者のライセンス登録が必要となります。

新たに創設される機体認証では、ドローンの使用者に機体の整備を義務付け、民間検査機関による検査の実施などを行うとしています。操縦ライセンスでは、学科および実地での試験を行い、有人地帯での飛行に対応する資格とそれ以外に分け、固定翼や回転翼などの機体に対応した限定資格を想定しています。

これらの資格制度に加え、ドローン運行時のルールの明確化を狙い、飛行計画の提出や飛行日誌の記録なども必要になります。ドローンが関係する事故が発生した場合には、航空機や鉄道での事故の原因究明や再発防止策を調査する運輸安全委員会の調査対象となり、「実際の航空機」に近い管理が求められるようになります。

4 義務化に備え、ドローンを登録するには?

2022年6月の無人航空機(機体重量100グラム以上のドローンやラジコンなど)の登録義務化を控え、国土交通省では2021年12月から事前登録の受け付けを開始しています。最後に、ドローン登録の手続きについて簡単に紹介します。登録手続きは、「ドローン登録システム」でのオンライン申請と、郵送での書類申請の2通りがあります。今回は、オンライン申請の大まかな流れを解説します。手続きの詳細、書面申請に必要な書類などは、国土交通省の「無人航空機の登録制度」をご参照ください。

■国土交通省「無人航空機の登録制度」■
https://www.mlit.go.jp/koku/koku_ua_registration.html

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これまで見てきたように、ドローンが活躍するシーンはさまざまな業種に広がっています。政府もこれを後押しするために法整備を進めています。一方で、今後は登録許可制になるため、無許可のドローンを飛ばすことができなくなります。ドローンの操縦者の育成や機体認証にはある程度の時間がかかると予想され、ドローンの利用を検討している場合には、前もって準備を進めることが重要です。

5 ドローン関連の動向:物流・農林水産関連などで期待大

ドローンの性能が向上し、活用シーンが増えるにつれて、市場規模も右肩上がりで成長しています。市場調査企業の調査区分や、産業用や民生用、軍事用などの用途により数字は変化しますが、一部では2020年のドローンの世界市場規模は約2兆円、国内は約1800億円に達するとの見方もあるようです。

東京都では、ドローンを用いた新たなビジネスの社会実装を目指し、ビジネスモデル構築の支援を行っています。東京都「東京都における産業用ドローンの市場規模の推計と予測」によると、東京都の市場規模(ドローンに関連する取引の売上の総計)は次の通りです。

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東京都の資料によると、2018年時点の都内の市場規模は約107億円とされ、2030年には約965億円と約9倍に伸びると予測されています。特に成長が予測されるのは、ドローンの操縦訓練や専門人材の派遣などの「周辺サービス」や、空撮および物流、農林水産関連などでドローンを用いたサービスを提供する「サービスプロバイダー」とされています。

この背景には、働き手の高齢化による労働集約的な作業の自動化などが進むことと、23区内の人口増が続き、需要が増加することを挙げています。特に注目されている分野は物流で、日用品などの小口配送やフードデリバリーが普及すると予測しています。

以上(2022年6月)

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画像:tonefotografia-Adobe Stock

不妊治療と仕事との両立支援

不妊治療の検査や治療を受けたことがある夫婦は、5.5組に1組と増加傾向にあり、4月1日から不妊治療が保険適用されたことから、今後ますます不妊治療と仕事との両立を希望する労働者は増加することが見込まれています。本稿では、不妊治療の現況と、仕事との両立を支援するため厚生労働省が提供しているツールや助成金をご案内いたします。

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不妊治療と仕事との両立支援

不妊治療の検査や治療を受けたことがある夫婦は、5.5組に1組と増加傾向にあり、4月1日から不妊治療が保険適用されたことから、今後ますます不妊治療と仕事との両立を希望する労働者は増加することが見込まれています。
本稿では、不妊治療の現況と、仕事との両立を支援するため厚生労働省が提供しているツールや助成金をご案内いたします。

1 不妊治療の現況

厚生労働省が実施した総合調査によれば、約7割の企業が「不妊治療を行っている従業員の把握ができていない」、約8割の企業が「不妊治療と仕事の両立を支援するため当該従業員を対象とした取り組みを実施していない」と回答しています。

そして、労働者側の調査では、「仕事と不妊治療の両立ができなかった」と回答した方の割合は35%と、少なからず何かを犠牲にした方がおり、企業のサポート体制の確立が望まれるところです。

2 支援ツールの概要

しかしながら、不妊治療がどのようなもので、企業があるいは職場全体としてどのように取り組めば良いのか、対応が悩ましい企業も多いことでしょう。厚生労働省では、このような点を踏まえ仕事と不妊治療の両立を支援するための3つのツールを提供しています。以下に概要をご案内いたします。

支援ツールの概要

※本ツールは、厚生労働省のHPからダウンロードしてご活用ください。

3 両立支援等助成金

また、不妊治療と仕事との両立に資する職場環境の整備に取り組み、不妊治療のために利用可能な休暇制度や両立支援制度を労働者に利用させた中小企業事業主を支援する助成金制度も実施されています。

申請のステップや助成額は次の通りとなっています。詳細は厚生労働省のHPなどでご確認ください。

助成金制度の概要

4 さいごに

従業員が不妊治療をしながら働き続けやすい職場づくりを行うことは、安定した労働力の確保、社員の安心感やモチベーションの向上、新たな人材を引き付けることなどにつながり、企業にとってもメリットがあると考えられます。

まずは、今回ご紹介した企業向けマニュアルなどをご覧いただくとともに、助成金の活用も視野に入れながら、仕事と不妊治療の両立に向けた支援導入を検討してみてはいかがでしょうか。

※本内容は2022年5月13日時点での内容です

(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)

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画像:photo-ac

雇用保険法等の一部を改正する法律のポイント

雇用保険法等の一部を改正する法律(以下、「改正法」という)が令和4年3月30日に成立し、4月1日から施行されています(一部の施行日は別)。改正法については、雇用保険率の上昇や年度途中の料率変更が話題となりましたが、それ以外にもこれまでの法規制から大きく転換し、企業にとっても影響の大きい改正内容が含まれています。本稿では、従業員の生活や企業実務に関係する部分を中心に、改正法の内容を解説します。

(日本法令ビジネスガイドより)
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雇用保険法等の一部を改正する法律のポイント

雇用保険法等の一部を改正する法律(以下、「改正法」という)が令和4年3月30日に成立し、4月1日から施行されています(一部の施行日は別)。改正法については、雇用保険率の上昇や年度途中の料率変更が話題となりましたが、それ以外にもこれまでの法規制から大きく転換し、企業にとっても影響の大きい改正内容が含まれています。本稿では、従業員の生活や企業実務に関係する部分を中心に、改正法の内容を解説します。

1 雇用保険率の改正▶労働保険徴収法改正、令和4年4月1日施行

令和4年度の雇用保険率は、令和4年4月1日から9月30日までの期間(令和4年度前期)と令和4年10月1日から令和5年3月31日までの期間(令和4年度後期)のそれぞれで上昇します(図表1)。年度途中の料率変更は平成14年度以来であり、当時は雇用情勢が想定以上に悪化したため急遽10月1日から引き上げた経緯があったのですが、年度当初から変更が予定されたのは初のケースとなります。雇用保険率の改正に伴い、毎月の賃金、賞与計算に影響が生じるため、具体的な実務上の留意点を解説します。

令和4年度の雇用保険率

(1)給与計算システムの確認

まず、利用している給与計算システムが年度途中での料率変更に対応しているか確認してください。クラウド型の給与計算システムを利用している場合は、一般的に、最新の雇用保険率の改正に自動的に対応されており、利用者側でアップデート等の作業をする必要はないはずですが、念のため利用しているソフトの公式ウェブサイトをご確認ください。

次に、PCにインストールするタイプの給与計算システムを利用している場合は、システムのアップデートを必ず行ってください。

また、従業員数が少なく、Excelで賃金計算を行っている場合は、参照している雇用保険率の箇所の変更が必要です。ただし、令和4年度前期の雇用保険率の変更は、事業主負担のみ(一般の事業の場合、6.5/1000)であり、令和4年度後期から事業主負担が再度上昇(一般の事業の場合:8.5/1000)し、労働者負担も変更(一般の事業の場合:5/1000)になります。過去のデータをコピー&ペーストする際には、変更箇所の違いがある点にご注意ください。また、令和4年4月以降、令和4年10月以降に支給する賞与についても雇用保険率が異なる点に併せてご注意ください。

(日本法令ビジネスガイドより)

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