女性社員が活躍できる福利厚生!~女性の活躍推進は中小企業が飛躍するチャンス!!

書いてあること

  • 主な読者:女性社員の活躍推進に本格的に取り組もうと考えている経営者
  • 課題:重要性は感じているが、具体的に何から始めてよいのか分からない
  • 解決策:福利厚生に対するニーズを探り、法定基準に“ちょい足し”してみる

1 中小企業で活躍する女性社員は多い!

働き方改革やSDGsなどを背景に、「女性の活躍推進」が一つのテーマになっています。中小企業の経営者の本音は、

必要性は感じるが、何をしたらよいのか分からない

といったものかもしれませんが、実は中小企業では既に女性活躍が進んでいます。社員数が限られた中小企業では女性社員の割合が高くなり、役員や管理職として活躍している人も多いです。課長相当職で見ると、

  • 5000人以上の企業:7.5%
  • 10~29人の企業:18.2%

といったように、企業規模で大きな違いがあります(厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査」)。中小企業では女性社員は貴重な戦力となっていて、経営者が意識せずとも、女性社員をサポートする制度や文化があるということでしょう。

そして、今は働き方改革やSDGsの波に乗り、この取り組みを進める好機です。そうすれば、

  • 貴重な戦力である女性社員が、結婚や出産などのライフイベントで離職せずに済む
  • 働き方改革やSDGsに積極的な企業としてアピールできる
  • 女性が働きやすい企業として認知されれば、新規の女性採用も進む(人材不足の解消)

といった効果が期待できるでしょう。もう一つ、この分野では中小企業の強みが発揮できます。女性の活躍推進の第一歩は福利厚生などの制度整備ですが、

フットワークが軽い中小企業では、経営者が「よし、やろう!」と指示すればスピーディーに実現できる

のです。

いかがですか。中小企業が女性の活躍推進に取り組むメリットは大きいことをご理解いただけたと思います。それでは、具体的な制度のアイデアなどを紹介していきます。

2 女性社員が喜ぶ福利厚生とは?

早速ですが、皆さんは女性社員がどのような福利厚生を求めていると思いますか? 労働政策研究・研修機構「企業における福利厚生施策の実態に関する調査(2020年7月31日)」によると、10%以上の女性社員が「必要性が高い」と回答したのは次の制度・施策です。

(図表1)【「必要性が高い」と思う福利厚生】

(単位:%)

必要性が高いと思う制度・施策(複数回答) 女性 (A) 男性 (B) ギャップ (A-B)
人間ドック受診の補助 23.1 20.3 2.8
慶弔休暇制度 21.4 18.3 3.1
病気休暇制度(有給休暇以外) 20.3 16.3 4.0
病気休職制度 20.0 16.8 3.2
家賃補助や住宅手当の支給 18.6 19.1 -0.5
リフレッシュ休暇制度 17.9 13.8 4.1
治療と仕事の両立支援策 17.4 11.6 5.8
有給休暇の日数の上乗せ(GW、夏期特別休暇など) 17.4 12.5 4.9
法定を上回る育児休業・短時間制度 16.2 8.9 7.3
慶弔見舞金制度 15.5 13.3 2.2
短時間勤務制度 14.3 7.4 6.9
法定を上回る介護休業制度 12.4 7.9 4.5
食事手当 12.4 10.9 1.5
永年勤続表彰 11.8 10.5 1.3
財形貯蓄制度 11.7 11.2 0.5

(出所:労働政策研究・研修機構「企業における福利厚生施策の実態に関する調査(2020年7月31日)」)

この調査によると、

  • 女性のニーズが最も高いのは「人間ドック受診の補助」で、23.1%が支持
  • 男女のギャップが最も大きいのは「法定を上回る育児休業・短時間制度」で、7.3ポイントの差

という結果が出ています。社員の環境(業種・社風・年齢・家族構成など)はもちろん、調査によっても結果は異なってくるでしょうが、男女ともに「健康」に対する関心が高いといえます。

また、詳細はこれから紹介していきますが、

法定基準に“ちょい足し”することや、制度の名称をユニークなものに変えること

で、オリジナリティーがあり、利用されやすい制度を実現できます。例えば、法定の育児休業の期間は「原則として、子が1歳(最長2歳)になるまで」ですが、ここに1年追加して「子が3歳になるまで」にしたりします。また、理由が趣味だと年次有給休暇(以下「年休」)を取得しにくいと考える社員がいる場合は、「推し活休暇」などの特別休暇を設けることで、取得のハードルを下げることができます。

法定の基準に“ちょい足し”した制度の例を6章にまとめているので、参考にしてください。

3 整備したい! 女性が活躍しやすくなる福利厚生5選

1)「時間のやりくり」がしやすい制度

妊娠・出産、育児については、産前・産後休業や育児休業が整備されています。しかし実際は、その後も保育園への送り迎えや子供が病気の際の通院など、就業時間中にちょっとした時間が必要です。このような場合に利用したいのが、

時間単位で付与できる年休

です。年休は原則として1日単位で付与しますが、社員の過半数代表(労働組合がない場合を想定しています)と書面で協定(労使協定)を結ぶことで、付与日数のうち5日までは1時間単位で付与できます。年休の管理は少し複雑になりますが、この制度があると、女性社員は親が出なくてはいけない保護者会やPTA活動などの突発的な用事に対応しやすくなります。

また、時短勤務制度も女性社員にとってうれしい制度です。法定では、3歳未満の子を養育する社員、要介護状態の家族を介護する社員が対象となりますが、この期間を延ばしたり、週の労働日を減らしたりすることが考えられます。保育園の送り迎えなどの定期的な用事に対応したい場合、時短勤務制度はとても便利です。

そして、これらの制度とリモートワークが同時に適用されると、かなり働き方が自由になりますので、検討したいところです。

2)「健康管理を支援」する制度

前述の調査でもあったように、「健康」は社員の関心が高い分野です。例えば、企業には年1回の定期健康診断の実施が義務付けられていますが、法律で決められた法定項目以外に「がん検診」などの受診項目も付け加えると、手厚い健康支援になります。ただし、法定項目以外の検診を行う場合は社員の同意が必要なので注意してください。

また、女性社員については、

生理痛、不妊治療、更年期障害などに配慮した制度

があると喜ばれます。個人差は大きいですが、20~60代まで多くの女性がこうした自身の体調の変化を感じながら仕事と両立をしています。不妊治療の支援については、一定の要件を満たすことで「両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)」の対象になるので、確認してみてください。

■厚生労働省「不妊治療と仕事との両立のために」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14408.html

3)「家計をダイレクトにサポート」する制度

家計を預かることが多い女性社員にとって、家計をダイレクトにサポートしてくれる制度はうれしいものです。一般的な制度には、

家賃補助や住宅手当の支給

などがあります。資産形成という意味では、財形貯蓄や退職金(退職一時金、退職年金)もその一環となります。

また、少し視点が変わりますが、万一の備えとして生命保険に加入している社員は多く、一定の保険料を支払っています。この点、いわゆる「団体保険」の契約ができれば保険料は安くなるので、社員にとっては好ましいでしょう。ただ、団体保険の契約ができるのは一定規模以上の企業に限られるのが通常です。条件に該当しない場合は、社員を被保険者として、企業が保険料を負担するような制度を検討してみるのもよいかもしれません。

4)「居心地の良さに配慮」した設備

更衣室やトイレなどについて配慮するのも効果的です。更衣室が1つしかなくて皆が交代で使っていたり、トイレが男女共用だったりして、しかもそれが企業の中で当たり前となっている場合、本当は不満があっても口に出せない社員がいるかもしれません。逆にそこを企業がおもんばかって改善すれば、社員は喜んでくれるでしょう。

5)「プライベートも支援」する制度

女性社員の悩みは仕事のことだけにとどまりません。中には実家から離れた場所で暮らすことがあり、そうしたときに、女性社員の悩みを聞いてくれたり、家事をサポートしてくれたりする存在は心強いものでしょう。

例えば、株式会社ぴんぴんころりでは、「東京かあさん」の名称で、実家から離れて暮らす女性などをサポートするサービスを提供しています。単なる家事代行にとどまらず、「第2のお母さん」として、さまざまな相談に乗ってくれます。

■株式会社ぴんぴんころり■
https://kasan.tokyo/corp/

4 実際に聞いてみた、知っておきたい「女性社員の本音」

1)男性上司に申し出にくい……

女性特有の体調不良や不妊治療といったセンシティブなことは、そもそも他人には話しにくいものです。その相手が男性上司だとなおさらです。男性上司の立場からしても、申し出があった際に深く事情を聞いたり、体調面などについて踏み込んだりするのは気が引けます。

このようなときは、具体的な症状で休暇を申請するのではなく、「自分いたわり休暇」というような名称にして、詳細を伝えず申請できるようにすると取得しやすくなります。また、そうした休暇申請などを受け付ける部署に、女性社員を配置するのもよいでしょう。

2)制度はあるのに、職場の理解が追い付いていない……

女性社員が働きやすいようにと整備した制度が、逆に女性社員に肩身の狭い思いをさせてしてしまうことがあるようです。具体的には、

  • 産前・産後休業と育児休業を取得した後に時短勤務で復帰したが、そういう働き方をしているのが自分だけなので、何だか周りに申し訳ない
  • 自分が帰宅した後の会議で決まった内容をベースに仕事が進んでいて、疎外感を覚える

という意見がありました。

このように、女性社員の意思に反して仕事が制限されて、キャリアコースが変わってしまうことを「マミートラック」といいます。職場が女性社員に過剰に配慮したり、時間に制約があるという理由だけで能力に見合わない仕事を依頼されたり、昇進の機会をもらえなかったりすると、女性社員は働く意欲がなくなってしまいます。

女性社員は、制度を整備してくれる企業に期待しているだけに、マミートラックに陥ったときのショックは大きなものです。性別に限らず誰もがいつか制約を持って働く可能性があるということを、職場全体で理解していく必要があるでしょう。

3)一部の女性社員が優遇されて、そのしわ寄せを受けるのはおかしい!

一部の条件に該当する女性社員だけが利用できる制度の場合、利用できない社員からの不平不満が出やすいという本音もありました。例えば、

  • 時短勤務で帰った女性社員の業務を、自分が残業して代わりにやらなければならないのが不満だ
  • 結婚や出産をしていない自分は制度が利用できない。条件に該当する女性社員ばかりが優遇されているようで嫌だ
  • 自分たちの時代にこんな制度はなかったのに、今の人たちは恵まれている

といった声です。こうした不満を理解に変えていくためには、経営者が制度を導入する理由や背景を説明し、丁寧に対応していく必要があるでしょう。

5 制度を導入するステップ?就業規則の変更も忘れずに

1)制度の導入理由を明確にし、女性社員の声を聴く

「なぜ、その制度を導入するのか」「導入した結果、女性社員はもちろん、企業全体にどのようなメリットがあるのか?」を明確にしましょう。

女性社員の働きやすさを目的とした制度は、人材確保の観点からも有効です。制度があることで働き続ける女性社員が増えれば離職防止になりますし、そうしたことをアピールすれば人材採用にもつながります。

社内に周知する際は、

  • 定着率○○%を達成する
  • 利用率○○%を達成する

など、目標をできるだけ数値化すると伝わりやすいです。またその際は、女性社員の声を聴きましょう。そうすることでニーズをより具体的に知ることができますし、現状に不満を感じている社員のフォローにもつながります。

2)経営者が強いメッセージを伝える

女性の活躍推進に限ったことではなく、社員は自分にとって特段の不利益とならない内容であれば、割と聞き流してしまう傾向にあります。しかし、その状態で新しい制度を導入すると、その理由が理解されないまま運用が開始され、前述したような問題が起こりかねません。

そうならないためにも、制度を導入する理由はもちろん、

企業としてどのように成長していきたいのか

などを、経営者自身が自らの言葉で伝えることが大切です。この記事では「女性の活躍推進」ということで女性社員にフォーカスしてきましたが、今は男性社員の育児休業取得など、性別に関係なく両立支援を実現する時代です。経営者のメッセージによって、現場レベルでも相手に制度の利用を促すような風土を醸成していけたら理想的です。

3)就業規則を変更する

常時10人以上の社員を雇用している企業は、労働基準法に基づいて就業規則を定める義務があります。就業規則は職場のルールブックであり、賃金や休暇など、法律で決められた項目については必ず記載しなければなりません。

新たに女性の活躍推進のための制度を導入する場合、就業規則の変更が必要になるケースが多いでしょう。一度、就業規則を確認し、必要に応じて社会保険労務士に相談しながら変更の手続きをしてください。

基本的な流れは、次の通りです。

  • 変更について社員の過半数代表の意見を聞く(労働組合がない場合を想定しています)
  • 就業規則を変更して、所轄の労働基準監督署に届け出る
  • 変更した就業規則を社員に周知徹底する

6 法定基準に“ちょい足し”してオリジナルの福利厚生を作る!

最後に産前・産後休業や育児休業やなど法令で定められている制度に“ちょい足し”して、オリジナルの制度を作る例を紹介します。

(図表2)【女性社員が活躍しやすい制度の一覧】

内容 法令のルール ”ちょい足し”の例
休暇・休業
(注1)
産前・産後休業
(注2)
・妊娠・出産のために休む社員
・産前42日(多胎妊娠の場合は98日)、産後56日まで休める
・産前56日、産後70日まで休める
育児休業 ・出生した子を養育する社員
・原則子の1歳(最長2歳)到達日まで休める(2022年10月以降、2回まで分割可)
・子の3歳到達日まで休める
介護休業 ・家族(一定の要介護状態、以下同じ)を介護する社員
・通算93日まで休める(3回まで分割可)
・通算1年間休める(6回まで分割可)
子の看護休暇 ・小学校就学前の子を看護する社員
・1年度1人当たり5日まで、2人以上は10日まで休める
・子が12歳になる年度の末日まで休める
介護休暇 ・家族を介護する社員
・1年度1人当たり5日まで、2人以上は10日まで休める
・1年度1人当たり6日まで、2人以上は12日まで休める(1分単位で取得可)
生理休暇 ・生理で就業が困難な社員
・就業可能になるまで休める
・半日単位で休める
・本来無給でもよいところ、取得日数のうち1日は有給とする
特別休暇(注3) ・育児目的休暇:配偶者出産への立ち会いや、子の行事参加などのために休める ・ワーク・ライフ・バランス休暇:年3日、家族とのふれあいや余暇などのために休める
労働時間
(注1)
育児時間 ・就業時間中に授乳などを行う必要がある社員
・休憩時間とは別に、1日30分以上×2回まで授乳などのための時間を確保できる
・育児時間の取得回数を1日3回までとする
所定外労働の制限 ・3歳未満の子を養育する社員、家族を介護する社員
・所定外労働を免除する
・子が小学校を卒業するまで所定外労働を免除する
時間外労働の制限 ・小学校就学前の子を養育する社員、家族を介護する社員
・1カ月24時間、1年150時間を超える時間外労働を免除する
・子が小学校を卒業するまで時間外労働を免除する
深夜業の制限 ・小学校就学前の子を養育する社員、家族を介護する社員
・深夜労働を免除する
・子の年齢に関係なく深夜労働を免除する
所定労働時間の短縮措置等 ・3歳未満の子を養育する社員、家族を介護する社員
・所定労働時間の短縮(原則1日6時間以内)、時差出勤、フレックスタイム制などの措置を実施する
・所定労働時間を1日6時間とし、週4日勤務とする
・午前のみの勤務または午後のみの勤務とする
社内設備 休憩室・休憩所の設置(食事、睡眠時など) ・全ての企業(有害業務のある企業は設置が義務、それ以外の企業は努力義務)
・休憩のための設備を設ける(設置数の定めや男女別の設置義務はなし)
・女性専用の休憩室(カプセルベッド付き)を設置する
休養室・休養所の設置(体調不良時) ・社員数50人以上または女性社員数30人以上の企業
・横になって休むことのできる休養室・休養所を男女別に設置する
・女性専用の休養室を設置する
女性用トイレの整備 ・女性を雇用する企業
・女性20人以内ごとに1個以上女性用トイレを設置する(社員数10人以下の場合は、独立個室型トイレに限り男女共用でも可)
・男女共用トイレをやめる
更衣室やシャワー設備の設置 ・被服が汚れる業務などを行う社員がいる企業
・更衣室やシャワー設備を設置する。安全とプライバシーに配慮する(設置数の定めや男女別の設置義務はなし)
・女性専用の更衣室を設置する

(出所:日本情報マート作成)

(注1)「休暇・休業」「労働時間」の各制度(法定)は、原則として要件を満たす社員が請求した場合に利用できます。なお、休暇・休業中の賃金を有給とするか無給とするかについては、企業が決められます
(注2)「産前・産後休業」のうち産後56日については、社員が働くことを希望しても休ませなければなりません(医師が認めた場合のみ、産後43日以降であれば就業可)
(注3)「特別休暇」は企業が独自に定める法定外の休暇ですが、一部助成金の受給に関係するものがあります。ここでは便宜上、「両立支援等助成金」の対象となる「育児目的休暇」を「法令のルール」の欄に記載しています。

以上(2022年9月)
(監修 社会保険労務士 志賀碧)

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画像:Monet-Adobe Stock


【朝礼】割り切り上手の「睡眠巧者」になろう!

皆さん、おはようございます。昨夜はぐっすり眠れましたか? 良い睡眠は心身を健康に保ち、仕事のパフォーマンスも高めます。適正な睡眠時間は「1日6時間半から7時間」ともいわれますので、目安にしてください。

かくいう私もよく寝ます。20〜30代の頃は、仕事でもプライベートでも徹夜をすることが多かったのですが、最近は違います。体力の衰えや時代の流れもありますが、それ以上に、寝るのがうまくなったのです。

私は自分を「睡眠巧者」と呼んでいますが、実は私の周りの経営者も睡眠巧者が多いのです。彼らは皆、共通したテクニックとマインドを持っています。テクニックは寝る前に水を飲み過ぎないようにしたり、リラックスしたりすることです。寝具にこだわるのも、その1つです。

ただ、肝となるのはマインドのほうです。それは、「なるようになる。今日は寝てしまおう!」と割り切る力です。仕事を放り出しているようで無責任に感じるかもしれませんが、考えてみてください。

ここ数年、本当に徹夜しなければならなかったり、徹夜とまではいかずとも、慢性的に睡眠時間を削られるほど忙しかったりする状況に陥った人はいますか?

今どき、そんな働き方を社員に強いる会社はほとんどないはずですし、実際にそうなっているなら、協力して改善すればよいことです。

仕事が忙しいという理由で睡眠不足になっている人がいたら、それは仕事の量というよりも、気持ちの問題かもしれません。「今やらないと間に合わないかも……」とダラダラ仕事を続けたり、一人では解決できない問題に悶々(もんもん)としたりしていませんか?

そんなときは、やるべきことを列挙し、遂行に必要な時間を計算してください。残業はしなければならないかもしれませんが、睡眠時間を削るほどではないはずです。

あるいは、問題を解決するために相談したい人を決め、次の日に時間をもらうことにしてください。これだけで気持ちが楽になります。
睡眠巧者はこうした割り切りが上手で、実際に睡眠時間を確保するため、仕事のパフォーマンスも高いのです。

ワーク・ライフ・バランスという考え方は、ワーク・ライフ・ブレンドに変わりつつあります。仕事とプライベートを分けずに混ぜ合わせる力は、今後、ますます皆さんに求められていくでしょう。混ぜ合わせることは分けるよりも難しいですが、奇麗に混ぜようとせず、良い意味でも割り切ってしまうずうずうしさも、時には必要なわけです。

けさは睡眠を例に話しましたが、混ぜ合わせたほうが楽しいことは他にもあります。奇麗に分けるのではなく、大胆に混ぜる。こんな物事の見方もあることを、覚えておいてください。

以上(2022年10月)

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画像:Mariko Mitsuda

【SDGs】(後編)中小企業がSDGsで「稼ぐ」ための3つのステージ

書いてあること

  • 主な読者:SDGsに関心はあるけれど、二の足を踏んでいる経営者
  • 課題:会社としてSDGsに取り組むメリットが分からない
  • 解決策:SDGsを会社の利益に結びつけるための3つのステージを実践する

1 3つのステージのおさらい

このシリーズでは、中小企業がSDGsで利益を出すために必要な3つのステージを、2回にわたって紹介しています。3つのステージは次の通りです。

  • 第1ステージ:SDGsを知り、社内の活動を全てSDGsにひも付ける
  • 第2ステージ:SDGsに関する自社の強みと課題を明確にして活動方針を決める
  • 第3ステージ:SDGsに関する活動を社内業務の利益・社会貢献の発信に結びつける

前編では、第2ステージの途中までご説明しました。後編では、第2ステージの続きと第3ステージを解説するとともに、実際にSDGsで利益を得ている中小企業の成功事例をご紹介します。

2 第2ステージの続き:SDGsに関する自社の強みと課題を明確にして活動方針を決める

1)企業によるSDGsの4類型のおさらい

前編では、第2ステージで、企業によるSDGsを4類型に分類しました。おさらいになりますが、「社内での全社の活動(社内環境)」「社内での個人の活動(会社生活)」「社外での業務の活動(会社業務)」「社外での外部の活動(個人活動)」の4つです。そして、この中で、SDGsで「稼ぐ」ことの早期実現を目指すのであれば、資源を「社外での業務の活動(会社業務)」に集中させることをお勧めしました。

2)SDGs活動のプランニング

第2ステージの後半では、自社が行っている4類型のそれぞれの活動の中で、積極的に推進・発信していくべき活動の優先順位を決めます。それぞれの類型の活動は、次のような基準に基づいて優先順位を決めるとよいでしょう。

  • 「社内での全社の活動(社内環境)」:「働き方改革」にどれだけつながるのか
  • 「社内での個人の活動(会社生活)」:組織の一員としてどれだけ成長につながるのか
  • 「社外での業務の活動(会社業務)」:社会的な価値がどれだけあるのか
  • 「社外での外部の活動(個人活動)」:社会課題の解決にどれだけつながるのか

上記の基準に基づいて自社の活動方針が決まったら、いよいよ第3ステージに進みましょう。

3 第3ステージ:SDGsに関する活動を社内業務の利益・社会貢献の発信に結びつける

1)自社のSDGs活動を社内に浸透させる

第3ステージでまずやるべきことは、活動内容と活動方針を社内に浸透させることです。その際に注意するのが、

自社のSDGs活動の目的・目標・手段を明確にして、しっかりと伝えること

です。なぜなら、第1ステージで社内の活動を全てSDGsとひも付けしていますので、社員は既に自社ではSDGs活動を行っていると受け止めています。本来、ひも付けは自社の強みと課題を知り、今後の活動方針を決めるためのものなのですが、社員は、「もうSDGs活動は社内でできているので、それ以上しなくてもいいのではないか」と考えてしまいかねません。

ですが、SDGsとは文字通り、「持続可能」というゴールを目指すものですから、その活動に終わりはありません。活動の手段は、随時更新していく必要もあります。SDGsの目的・目標を明確にした上で、自社として何をすべきなのかを社員にしっかりと伝えましょう。例えば、リサイクル素材を使った製品を生産することを始めるのであれば、原材料の選定基準、営業方針、製造工程の見直しなど、具体的な取り組みまで明確にして伝えるとよいでしょう。

以下に掲載した会社方針は、前編でご紹介した作業工具製造のマルト長谷川工作所(新潟県三条市)が、社内閲覧用に配布した内部資料です。自社の活動をSDGsにひも付けしながら、今後の目指すべき方針をしっかりと示しています。同社では、この会社方針を載せた手帳を年頭に社員全員に配布することで、自社のSDGs活動の方針を社内に浸透させています。

マルト長谷川工作所

2)外部発信などによるSDGs活動の「見える化」

自社のSDGs活動の発信は、前編で述べた通り、企業イメージを良くすることはあっても、マイナスになることはまずありません。社内だけでなく、社外に対しても自社の活動をアピールする絶好の機会となりますので、自社のウェブサイトなどに積極的に掲載しましょう。その際は、

自社が「できていること」だけでなく、「できていないこと」もアピールすべき

です。自社の強みとなっている社外での業務の活動(会社業務)であれば、その事業が社会的な価値を高め続けていることを宣伝できます。逆に、自社ができていないことであっても、「このような課題解決に取り組んでいます」という姿勢を伝えることができます。

アピールするものは、新たな活動もあれば、既存の活動をSDGsに置き換えたものでも構いません(前編のマルト長谷川工作所のウェブサイトが参考になります)。積極的に「見える化」しましょう。求人戦略や営業活動に反映させるなど、活用方法はさまざまあります。

4 SDGsで「稼ぐ」成功事例

それでは、前編の冒頭でも触れた、私たちがコンサルティングをさせていただき、実際にSDGsで利益やメリットを得ている中小企業の成功事例について紹介します。

1)「売り上げのうち1円を地元の自治体に寄付します」と表示、売り上げ増加

山谷産業(新潟県三条市)は、「村の鍛冶屋」というブランドでキャンプ・アウトドア用品などを製造販売しています。中でも最も売り上げのある主力商品は、テントを張る際に地中に打ち込む杭(くい)の「鍛造ペグ」です。同社の経営戦略は「地域と共に歩んでいく。」です。

自然や環境に関連する事業ということもあり、同社の事業内容をSDGsにどう置き換えていくのかがテーマになりました。そこで、同社はウェブサイトで、鍛造ペグが1本売れるごとに1円を三条市に寄付することを決めて発信したところ、最高売り上げ本数を更新しました。キャンプ用品としてのブランド化にも貢献しています。

企業によるSDGsの4類型を基に自社の取り組みを掲載した山谷産業のウェブサイト

2)工場などにSDGsの取り組みを掲示しSNSなどで発信、小中高校の工場見学が殺到

これまでもご紹介しているマルト長谷川工作所ですが、同社の工場見学への参加を希望する、新潟県内の小・中・高校および大学からの問い合わせが殺到しています。その理由は、工場見学の順路ごとに、同社のSDGs活動を掲示していることです。

同社がSNSなどで発信したことで広く知られるようになり、コロナ禍で修学旅行などの制限もある中で、地域のSDGs学習の教材として活用される存在になりました。新聞をはじめとするマスコミにも取り上げられ、PR効果は十分得られています。

同社は環境問題や社会貢献に敏感な欧州に進出していることもあり、以前から社会貢献などに取り組んでいましたが、本格的にSDGsに取り組んだのは、創業100周年に向けて2020年にSDGsプロジェクトを立ち上げたことがきっかけでした。その際に、活動内容について大まかに「見える化」したものが、次のマンダラシートです。

自社のSDGs活動を「見える化」したマルト長谷川工作所のマンダラシート

このシートに基づき、次の5つのテーマを掲げたのです。工場見学はこの5番目のテーマに基づいています。

  • 技術改善:MPI(Maruto Product Innovation)活動と称した社内一貫生産による改善
  • 教育・雇用:人材を「人財」に、ディーセントワークを推進する心技体の社員づくり
  • 健康:企業の発展に繋がる会社と従業員が一体となる健康推進
  • 環境:働く人の意欲・能力が発揮できる環境づくりと、地球環境の保全と資源の保護に貢献・配慮した素材や設備を取り入れた活動
  • 社会貢献:地域の雇用や地域活性化に資する新たなビジネス機会を創出し、地域行事への積極的な参画や、社会科見学の受入れを通じて地域社会に貢献

3)SDGsに関する県の認定登録や自社の取り組みをウェブサイトでPR、引き合い増加

長谷川興産(新潟県三条市)は、土木・建築・舗装などの工事全般や建設資材販売などを行っています。同社の課題は、いわゆる“3K”と呼ばれる業界全体に共通している、慢性的な人手不足です。特に20代前半の若者離れは深刻です。そこで同社は、SDGsの良いイメージを利用することにして、自社のウェブサイトを、SDGsを前面に押し出したものに一新しました。

自社のウェブサイトでSDGsへの取り組みをPRする長谷川興産

同社が目を付けたのが、新潟県が行っているSDGsに関する企業認定の制度です。新潟県が2022年から始めたSDGs推進建設企業登録制度に登録し、自社のウェブサイトに登録証を掲載しています。

各自治体や団体などが行っている、SDGsに関する企業認定の制度は多数あります。「公的なお墨付き」といえるものですから、信頼性を与えるには格好の材料といえますので、利用しない手はありません。同社ではウェブサイトに、にいがた健康経営推進企業、ハッピー・パートナー企業(新潟県男女共同参画推進企業)の登録証も掲載し、働きやすい環境が整っているというイメージアップを図っています。

ウェブサイトを一新した効果は大きく、SDGsと関連させながら自社の本来の業務の姿を発信することで、求人の問い合わせや大手企業からの引き合いが増えたといいます。

5 SDGsによって広がる企業の可能性

最後に、中小企業のSDGs活動において、最も大切なものは何かをお話しします。

SDGsの活用によって広がる可能性

どの企業にも課題はあるはずですが、前章で成功事例を紹介した3社も、SDGsに取り組む前からそれぞれの課題を持っていました。ですが、その課題を明確に認識し、解決のための実施方針を決めるのは簡単はありません。

3社はいずれも、SDGsについて知り、社内の活動にひも付けを行うことで、経済・社会・環境に関する自社の課題と強みが明確になりました。そして、課題に対する解決と、自社の強みを伸ばすための実施方針や施策をベースに、企業の経営デザインを行うことができたのです。ただし、SDGsは、全てを委ねる対象ではなく、

SDGsというフィルターを通して、企業価値を持続的に引き上げる1つのツール

だと思います。

企業がさまざまな強みを持っている中で、新たにSDGsという強みを加えれば、SDGsが必要になったときにその強みを活かすことができます。ただし、SDGsという強みを発揮できるフィールドは、どんどんと広がっています。まだSDGsという強みは多くの中小企業が持っているわけではないので、現時点では先行者利益的な意味合いにもなるのではないでしょうか。

持続可能な企業とは、ビジネスを通して社会や環境に良い影響を与えることで、商売繁盛へとつなげていく企業のことです。これからの企業間の市場競争は、経済価値と社会価値の両方によって行われ、製品やサービスを取引する際の判断基準として重視されていくようになります。

最適なSDGs活動を通して、企業価値を高めましょう。

以上(2022年9月)

【著者紹介】
井上浩仁(いのうえ ひろひと)

NAコンサルティンググループ代表 https://na-consulting-group.jp/
著者画像1
【働く人の安全と健康をモットーに社会に還元奉仕する】を信条とし、ワークライフバランスの実現をはじめとするホワイト企業戦略に基づくSDGs経営・健康経営・業務効率化・人事評価制度構築・安全衛生・ハラスメント対策など多様な従業員の環境づくりと人的資本コンサルティングにおける企業の目指す目的に沿った中長期的な人財デザインを行っている。県内外中小企業・各商工会議所・経済団体・学校などの共催セミナーなども開催しており、社会で輝く人財づくりに尽力している。

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【朝礼】大きな果実を得るために小さな目標を積み上げよう

皆さんは仕事をする際に、まずは目標を立てて、それに向かって行動することでしょう。目標の中には、会社や上司から与えられたものもあれば、皆さん自身が考えて立てたものもあるでしょう。

ここで、皆さん自身が立てる目標について確認したいのですが、皆さんが立てる目標には具体的な期限、内容はありますか。

目標というのは、例えば「売り上げを上げよう」「頑張って仕事をしよう」など、ただ漠然と立てるだけではいけません。目標を設定する際には「いつまでに、どれだけの成果を出す」というように、期限と内容を具体的に決めることが大切です。

皆さんが目指す、最終的な目標を大目標としましょう。この大目標を達成するためには、まずは期限と内容を決めた小目標を決めて、その小目標の達成を着実に積み重ねながら大目標に近づく。それが重要なのです。

会社の目標の例でいうと、大目標は「今年度の売上高を対前年度比で10%増やす」です。これを実現するための途中経過として、小目標を立てます。小目標は「毎月の売上高を対前年同月比で10%増やす」です。小目標が毎月達成できれば、大目標も達成できます。仮に、小目標が達成できていない月があれば、翌月に小目標の修正を行わなければなりません。目標達成への道のりが当初の予定通り進んでいないことが途中で分かり、軌道修正して改めて大目標に向かって進んでいけるのは、小目標を設定した効果なのです。このことを、資格取得を例に考えてみましょう。皆さんの中には日々の業務をこなしながら、「何か仕事に役立つ資格を取りたい」と思っている人がいるかもしれません。

しかし、ただ漠然と思っているだけでは「今は忙しいから」などと自分に言い訳を付けてしまい、結局、目的は達成されることはないでしょう。

私の知人が資格取得に向けて努力していたとき、彼は「土日に資格取得学校に通う」「毎日2時間を勉強に費やす」「次回の模試で正答率70%を達成する」といったように、資格試験に向けて段階ごとの具体的な目標を設定していました。いきなりゴールを目指すのではなく、このように小目標を立て、つまりいくつものチェックポイントを設定することで、目標達成への道筋をハッキリさせることができます。そうすれば、当然に緊張感も高まり、やる気もわいてきます。

達成したいことが、「目標」ではなく「夢」であれば、そこまで具体的に考える必要はありません。しかし、仕事における目標は会社、お客様、株主などとの約束であり、達成することが求められます。

ですから、皆さんが仕事で目標を立てるときには、必ず期限と内容を設定してください。そして、内容は数値で分かるものが望ましいでしょう。

そして、大目標の達成に少しでも不安があれば、目標を時間ごとに区切り細分化し、小目標を設定してください。まずはそれを達成していくことです。

仕事は一つひとつの小さなことの積み重ねから成り立っています。大目標を目指すには、小目標を一つひとつ確実に達成していくことしかありません。

まずは、今日の目標、今週の目標、今月の目標といった小目標を設定し、それを達成することに全力を尽くしましょう。それが、将来の大目標達成という大きな果実を得るための一番の近道です。

以上(2022年10月)

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画像:Mariko Mitsuda

クルマもフリマで気軽に買い替え! 若者が支持する新しい中古車市場

書いてあること

  • 主な読者:古物取扱業者、低コストで新規事業を始めたい経営者
  • 課題:中古車ビジネスが気になるが、市場動向や新規参入のポイントが分からない
  • 解決策:今、中古車を最も購入しているのは20、30歳代の若者。個人間取引のサポートなど、若者に支持されやすい分野への参入を検討する

1 「若者の車離れ」は時代遅れ!?

「若者の車離れ」がいわれて久しいですが、

中古車市場に関しては若者が市場をけん引している

ことをご存じでしょうか。「中古車購入実態調査2021」リクルート調べには、

  • 中古車市場で購入台数が最も多いのは20歳代(72.5万台、1万人当たり496.6台)
  • 購入単価が最も高いのは30歳代(181.4万円)で、次いで20歳代(162.9万円)
  • 買い替えまでの期間が最も短いのは20歳代(平均3.9年)

といったデータが示されています。また、中古車市場でも次々と新しい動きが出ており、若者を含め、消費者の新たなニーズを取り込もうとしています。

  • 個人間取引をサポートする事業の広がり
  • 中古車のバリューアップや事故車販売など「新市場」の開拓
  • AI査定など中古車取引の利便性を高める新サービスの提供

この記事では、若者が支持する中古車市場の新しい潮流を紹介します。

2 個人間取引をサポートする事業の広がり

1)出品の全作業をコンシェルジュが代行

アラカン(愛知県名古屋市)は、中古車の出品作業をコンシェルジュが代行する個人間取引サービス「カババ」を運営しています。中古車を売りたいユーザーがウェブサイト上で車の情報を登録すると、コンシェルジュがユーザーの自宅へ行き、車の写真撮影や売値決めなどの出品作業を代行する仕組みです。購入希望者からの質問への回答も同社が代行します。

また、同社では、特定の車種や仕様にこだわった中古車を購入したいユーザーと、その中古車を売りたいユーザーをマッチングするサービス「カババWanted」も手掛けています。

2)中古車販売業者が個人間取引のサポート事業を展開

「Gulliver」のブランドで中古車販売事業を手掛けるIDOM(東京都千代田区)は、中古車を売りたい出品者と購入者をマッチングさせる「Gulliverフリマ」を運営しています。このサービスでは、ユーザーが中古車を取引する際に、Gulliverフリマがサポートを行う「仲介取引」を選ぶことができます。仲介を必要としない「直接取引」も可能です。

中古車を出品する際は、Gulliverフリマのアプリで、車検証に付いているQRコードを読み込むと車両の情報が簡単に入力できたり、出品価格の参考となる相場価格が提示されたりするなど、出品が手軽にできるだけでなく、購入時にも、ガリバーの店舗以外での引き渡しが可能など、出品者と購入者の双方に負担がかかりにくい仕組みになっています。

3)新車の正規ディーラーも参入

トヨタ車の正規ディーラーである横浜トヨペット(神奈川県横浜市)も、中古車の個人間取引サービス「mobilico」を運営しています。同社は出品されている車両の定期点検を行っており、車両の整備履歴を確認することができるのが特徴です。また、車両購入後の故障が不安なユーザーに対しては、修理保証のオプションも案内しています。

取引は匿名で、入金などの事務手続きは同社が行っています。

3 中古車のバリューアップや事故車販売など「新市場」の開拓

1)顧客の希望に応じた車種をコーティングなど付加価値を付けて販売

カーコーティング施工業を手掛けるアドヴァンス(徳島県徳島市)は、高級車を取り扱う中古車販売に参入しました。1台1000万円前後の高級車が対象で、顧客の予算や希望に応じた車種を、オークションや業者間のネットワークを利用して仕入れます。仕入れた後にはボディーの表面を研磨して新車並みの輝きに復活させるとともに、コーティングや保護フィルムなどを貼った上で顧客に納車します。

2)中古の高級輸入車を独自にカスタマイズして販売

欧州の中古車をメインに取り扱うオンザスリー(大阪府大阪市)は、取り扱う車に「チープアップ」という独自のカスタマイズをして販売する店舗「ゼロカートラブル」を運営しています。日本に輸入される欧州車は高級なイメージがありますが、例えば、アルミホイールをあえて質素なスチールホイールに取り換える、キャンプ用品などを積むためのキャリアを取り付ける、ステッカーを車体に貼るなどのカスタマイズを施すことで、より気軽に高級車を楽しんでもらうことをコンセプトにしています。

3)保険会社などが引き取った事故車などをオークションで販売

SOMPOホールディングス(東京都新宿区)は、子会社のSOMPOオークスを通じて、自動車保険の加入者が事故を起こした際などに引き取った事故車両を、リユース、リサイクル事業者に売却するBtoBオークションを手掛けています。

これまでの自動車オークションは、運営事業者ごとに独立しており、1台の車両に入札するバイヤーの数に限りがありました。これを解決するため、同社では、複数の自動車オークションに同時出品ができる案件管理システム「AUX Board」(オークスボード)を開発しました。これにより、車両1台に対して、より多くの購入希望者の目に留まる機会が増え、高額での売却や取引の円滑化が期待されています。

4)買い取りが難しい中古車の売却を支援

求人情報サイトや住宅リフォームサイトなどを展開するじげん(東京都港区)は、中古車買い取り店や輸出事業者特化型の買い取り一括査定メディアの「セルトレ」を運営しています。一般的に買い取りが難しいとされている水没車、事故車、走行距離が10万キロ以上の車でも、査定・買い取りが可能としています。

中古車の買い取りを依頼したいユーザーが、ウェブサイト上で車種や走行距離などの情報を入力すると、独自のフィルタリング機能を用いて、「国内小売向け」「海外輸出向け」「廃車」の自動判定を行い、買い取りが可能な中古車の買い取り会社や輸出事業者を紹介する仕組みとなっています。

4 AI査定など中古車取引の利便性を高める新サービスの提供

1)AI画像認識を使った中古車の簡易査定

AIによる画像認識を使ったサービスを手掛けるエーエヌラボ(東京都渋谷区)は、中古車販売事業者向けの簡易査定サービス「かいとりロボ@車」を手掛けています。

このサービスは、店舗の入り口にあらかじめカメラを設置しておき、店舗の駐車場に進入してきた車をカメラが読み込むことで、その車を買い取りした場合の想定金額や似ている車を提示する仕組みです。これにより、買い取り担当者の知識に依存しない査定ができるだけでなく、顧客が車を買い替える際の提案がより手早くできるようになります。

2)「非対面WEBローンシステム」で購入プロセスの効率化

中古車情報サイト「カーセンサー」などを手掛けるリクルート(東京都千代田区)は、アルファ・ゴリラ(兵庫県神戸市)が開発し、リクルートが中古車販売店向けに提供している「インスタントLIVE」(販売店と顧客がオンラインで相談をしたり、商談情報を管理したりするシステム)と連携した「非対面WEBローンシステム」を提供しています。

中古車を購入する際のオートローンの審査申し込み、審査結果確認、契約締結までをオンラインでできるので、顧客の契約書記入・なつ印のための来店が不要になるだけでなく、店舗側の業務効率化にもつながります。

5 中古車に関するデータ

1)中古車登録台数について

日本自動車販売協会連合会「中古車年別登録台数」によると、中古車登録台数の推移は次の通りです。

中古車登録台数の推移

2021年度の普通乗用車と小型乗用車の合計台数は前年度比5.8%減の316万9492台で、2019年度以来の前年度割れとなっています。その背景には、中古車需要が高まる一方で、半導体や部品不足により新車の販売が停滞し、中古車流通が減ったことが挙げられます。

2)軽乗用車の中古車販売台数について

全国軽自動車協会連合会「軽四輪車 中古車販売台数の年別推移」によると、軽四輪車のうち、軽乗用車の中古車販売台数の年別推移は次の通りです。

軽乗用車の中古車販売台数の年別推移

3)中古車の購入台数と市場規模について

「中古車購入実態調査2021」リクルート調べによると、中古車の購入台数、市場規模は次の通りです。

中古車の購入台数、市場規模(推計値)

4)中古車の買い替えまでの期間について

「中古車購入実態調査2021」リクルート調べによると、中古車の買い替えまでの期間(年齢別)は次の通りです。

中古車の買い替えまでの期間(年齢別)

以上(2022年9月)

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画像:kebox-Adobe Stock

【朝礼】人から愛され、自分も愛せる仕事

けさは、私の好きなものについて話します。私は子どもの頃からずっと、テレビアニメのキャラクターに声を当てる「声優」という人たちにとても興味を持っています。なかでも好きなのが、「ルパン三世」の次元大介(じげんだいすけ)を演じた小林清志(こばやしきよし)さんです。

知っている人も多いと思いますが、ルパン三世というのは、怪盗アルセーヌ・ルパンの孫のルパン三世が、世界のあらゆる宝を探し求めて冒険するお話で、小林さんが演じた次元は、ルパンの相棒ですご腕のガンマンです。2022年現在、ルパン三世シリーズは1971年にテレビアニメが放映されてから、映画なども含めて51年間続いています。私が小林さんを尊敬しているのは、1971年から2021年までの50年もの間、次元というキャラクターを演じ続けてきたからです。

実は声優にとって、いわゆる“当たり役”を得るというのは、必ずしも良いことばかりではないようです。というのは、特定のキャラクターを演じて人気を博すと、声優にもそのキャラクターのイメージが定着してしまって、他の仕事でも似たような演技が求められ、表現の幅が狭まってしまうことがあるからです。しかも、テレビアニメのキャラクターは年を取らないことが多いのに対し、声優は年を取るにつれて少しずつ声が変わりますから、アニメシリーズが長く続くと、視聴者から「昔はいい声だったのに衰えたな」などと、陰口をたたかれてしまうこともあるようです。

小林さんにも少なからずそうした経験があったようですが、彼は「年を取ればその分、声に深みが出せる」と次元役を続けることに前向きで、2021年に88歳で次元役を勇退した際も、「一生ものの仕事」「できれば90歳まで続けたかった」というコメントを残しています。

私が皆さんにお伝えしたいのは、「人から愛される仕事を、自分自身も心から愛することができる」ほどの幸せは、なかなかないということです。誰でも仕事に対して、「こんなことがやりたい、成し遂げたい」と夢を抱くものです。ですが、現実には、やってみたら思い描いていたビジョンと違っていたり、会社からやりたいこととは別の仕事を与えられたりするケースがあります。

しかし、たとえ自分が抱いていた夢と違う仕事であっても、真摯に取り組み、お客さまから「良かった」「これからもお願いしたい」と愛されるようになれば、自分自身もその仕事を心から愛せるようになるのではないかと思います。

私は今の仕事が好きですが、心から愛せているかというと、まだそこまでの自信がありません。小林さんのように、自分の仕事に強い誇りを持てるようになるのは簡単なことではないでしょう。自分の仕事を磨いて、磨いて、磨ききったその先にある未来の話だと思います。何十年かかるか分かりませんが、自分がいつか定年を迎えたときに、「この仕事が心から好きだった」と言えるよう、今から努力していきたいと思います。

以上(2022年9月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】あなたは誰から信頼されたいですか

皆さんは、ビジネスにおいて一番大切なことは何だと思いますか。あるいは、日ごろ、仕事を進めていく上で、どのようなことに重きを置いていますか。

ビジネスにおいて最も大切なものは、当たり前のことですが、私は「信頼」だと思っています。

会社が信頼されているからこそ、お客様が私たちの会社の商品を購入してくれたり、サービスを利用してくれますし、金融機関も融資をしてくれるのです。

よく言われることですが、信頼を失うのは簡単ですが、築くのはとても難しいのです。こうしたビジネスにおける信頼の根本は、実は私たち、つまり人にあることを忘れてはなりません。会社は人の集まりですから、信頼を築くのも失うのも私たち次第なのです。

会社は利害関係のあるすべての人と信頼関係を築き、それを維持しなければなりません。今日はその中でも最も身近な「お客様との信頼」「会社の仲間との信頼」について考えてみましょう。

信頼関係を築くには「約束(納期や時間)を守る」「期待に応える」といったことが欠かせません。それから「できないことは、きちんとお断りする」ということも、とても大切なことです。

お客様から何か要望があれば、誰でもできるだけその要望に応えたいと思うものです。上司から何かを依頼されたときもきっと同じように思うでしょう。しかし、できないことを安易に請け負って、後になってから「実はできませんでした」では、お客様や上司との約束を破ることになり、信頼を失ってしまいます。

とはいえ、単に「できません」では、ビジネスパーソンとしては不十分です。代替案を用意するなど、少しでも相手の要望に応えることが大切です。こうして「あの人にお願いしたら、あるいは相談したら、きっと何か考えてくれる」「あの人にお願いしたら間違いない」と思っていただく、それが「信頼」につながるのです。

信頼が求められるのは「お客様」「会社の仲間」だけではありません。もっと身近に、もう一つ大切な信頼があります。それは自分自身への信頼です。自信過剰かもしれませんが、私は私の持つビジネスパーソンとしての能力を信頼しています。

皆さんはご自身を信頼していますか。私たちが自分自身を信頼するためには、日ごろから努力して自分を磨き、一生懸命仕事に取り組むしかありません。超一流のスポーツ選手は、自分自身を信頼し自信を持って競技本番に臨むために、過酷なまでの練習を自らに課します。

自分が一つひとつの仕事をしっかりやっているかいないかは、人が見ていなくても、自分自身が一番よく分かっているはずです。

私たちも、お客様、上司・先輩・同僚、自分自身から信頼されるように、一つひとつの仕事に手を抜かずに、全力で取り組んでいきましょう。今日から、約束を守る、期待に応えるのはもちろんのこと、期待を超えることを目標にしましょう。

以上(2022年9月)

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画像:Mariko Mitsuda

拡大するグルテンフリー市場 グルテンの健康被害をプラスに変える新商品の開発がカギ

書いてあること

  • 主な読者:新規事業を検討する食品メーカー・飲食業の経営者、身近にアレルギーなどの疾患を持つ人がいる経営者
  • 課題:将来性があり、疾患などで困っている人のためになる新商品開発を検討したい
  • 解決策:グルテンフリー食品の基礎と他社の事例を確認して、自社の新商品開発に活かす

1 急拡大するグルテンフリー市場を狙おう!

小麦などに含まれるグルテンを除去したグルテンフリー食品を知っていますか? 米国や欧州などを中心に、20年ほど前からグルテンフリー市場が急拡大しています。消費者の中心はグルテンが原因の腸内疾患の患者や、小麦や大麦アレルギーのある人、ダイエットや自然派食品を好む人などです。

農林水産省の資料によると、世界のグルテンフリーの市場規模は2005年の段階で約8億ドルでしたが、2024年には約13倍の104億ドルに達するといわれています(農林水産省「米粉をめぐる状況について(令和4年8月)」)。

また、2021年には米国・カナダ産小麦の不作があり、2022年にはロシアのウクライナ侵攻によるロシアの輸出規制やウクライナ産小麦の供給懸念があり、輸入小麦の値段が高騰しています(政府売渡価格は2021年10月期が6万1820円/1トンだったのに対し、2022年4月期には7万2530円/1トンに上昇)。

そのため小麦粉を使用した国産食品の代替品としても、グルテンフリーへの需要拡大が見込まれています。特に日本では1962年をピークにコメ消費の低下が進み、2021年には1人当たりの消費量が半分ほどになってしまったことから、コメ消費を促進させるために米粉の消費を刺激する支援に取り組んでいます。

政府の後押しもある米粉ベースの商品やグルテンフリー商品を開発して、市場拡大の流れに乗ってみてはいかがでしょうか。

2 グルテンって何?

グルテンとは、

小麦・大麦・ライ麦などに含まれていて、水を加えてこねることでできる成分

です。グルテンには食品に粘り気と弾力を与える性質があり、これを利用して、モチッとした食感のパスタやうどん、ラーメン、フワフワしたパンやお菓子、弾力のあるピザ、サクサクした天ぷらの衣などが作られています。おいしさのひとつである食感に、グルテンが関わっているのです。

ただし、グルテンを摂取するとさまざまな疾患を発症させる体質の人がいます。セリアック病、グルテン過敏症、小麦アレルギーなどの人たちです。そのため、小麦や大麦、ライ麦などの代替食品である米粉などに置き換えるグルテンフリーの志向が広がりつつあります。

小麦などが含まれた食材を以下にまとめましたが、日常の飲食シーンで提供されるものがたくさんあります。

小麦などが含まれた食材の一例

3 日本政府は米粉の生産と販路拡大を支援

セリアック病患者はグルテンフリー食品なしでの生活が困難なため、欧米各国ではしっかりしたグルテンフリー表示が義務付けられています。さらに消費者に誤解を与えないように、食品に含まれるグルテンの含有数値を設定して表示の徹底を図っています。

米国食品医薬品庁(FDA)が定めるグルテンフリーの表示は、小麦など1キログラム当たりの含有量が20ミリグラム未満です。欧州では、欧州委員会(EC)が20ミリグラム以下と定めています。なお、基準が厳格なグルテンフリー認証団体GFCOは、「小麦に含まれるグルテンが0.001%(10ミリグラム/1キログラム)以下でなくてはならない」という基準を設けています。

一方、日本はコメ余りの打開策として、米粉の普及を進めているため、農林水産省が2018年にグルテン含有量「0.0001%(1ミリグラム/1キログラム)以下」の米粉を認証する「ノングルテン米粉第三者認証制度」を開始し、認証マークを付与しています。しかしこれは、グルテンフリー製品とは違うノングルテン米粉としてPRする方針です。

政府の閣議決定(2020年3月31日)においても、「ノングルテン米粉第三者認証制度や米粉の用途別基準の活用、ピューレ等の新たな米粉製品の開発・普及により国内需要が高まっており、引き続き需要拡大を推進するとともに、加工コストの低減や海外のグルテンフリー市場に向けて輸出拡大を図っていく」とされ、加工品の普及や需要拡大、米粉用米の生産拡大のための支援を行っています。

ノングルテン表示と欧米のグルテンフリー表示との比較

また、消費者庁の報告書によると、日本国内の小麦アレルギーは人口のおよそ5%で、4番目に多いアレルゲンとされています。そのため、小麦から作ったものではない、米粉などのグルテンフリー食品に期待があるのです。

実際に、小麦アレルギーだった人が、自分の経験を踏まえてグルテンフリーのお店を開いたり、商品開発に挑戦したりするケース(第4章をご覧ください)もあります。これらの経験談は、新商品開発などを検討する際に、一定の判断材料になるのではないでしょうか。

4 先行事例に学ぶ! 新商品開発のヒント

小麦の代替食材としては次のものがあり、国内外のグルテンフリー市場の獲得を目指し、多くの食品メーカーや飲食店が開発にしのぎを削っています。

小麦の代わりとなる粉製品

1)飲食店の取り組み例

飲食店では作り手の強い気持ちがダイレクトにお客に伝わります。特にグルテンフリーは、アレルギーや健康、さらには低農薬などの自然食品といった食生活全般に関わっていますので、それを求める理由が消費者にあるのです。そのため、メッセージが明確であるほうが、消費者に気持ちが伝わり、リピーターが増えていくのかもしれません。

これから紹介する事例は、自分の経験から「アレルギーで困っている誰かのために」という思いを強く持っている事業者のお話です。

エンパシー(共感)に訴える方法

ベーカリー&カフェ「enishi(えにし)」(兵庫県明石市)は、

「『子どもに手作りのご飯を食べさせてあげたい』と親御さんに思ってほしい」

という考えを持っています。

全メニュー、調味料まで小麦粉を一切使わないグルテンフリーにこだわったベーカリー&カフェ「enishi」が、2021年11月にオープンしました。開業した塚本ゆかりさんに話を聞きました。

「私には4人の子どもがいますが、長女がアトピー性皮膚炎に苦しんだことがあり、独学で体に良い食事から味噌やしょうゆなどの調味料まで、市販のものを使わず手作りしていました」

あくまで家事として、当たり前のように食事を作っていた塚本さんでしたが、2020年のコロナパンデミックを契機に気持ちに変化が生まれたと言います。

「親御さんは会社に行かなければいけないのに、お子さんは自宅学習。これでは毎日の食事なんてとてもできないという家庭が多かったんですね。そこで夫が経営する焼き肉屋で子ども食堂を開いたところ、子どもの食事に関心を払わない親御さんが多くてびっくりしてしまったのです。ほとんど自炊をしないという家庭もあって、アレルギーが増えるのも仕方ないと思ったほどです。そこで全て自家製で卵、牛乳、小麦の3大アレルゲンを含まないメニューを提供して、食べていただくことで何か感じてくれるといいなと思って、お店を開きました」

「enishi」が提供するメニューはアレルゲンの除去に徹底的にこだわっています。

「ランチは月替わりの予約制で一品のみ(1500円)です。ご飯は低農薬の玄米で、甘さは砂糖の代わりに甜菜(てんさい)糖を使っています。また、グルテンフリーにこだわるだけでなく、私が歯科衛生士でもあり、そしゃくすることが大切だと思っているので、食感のある料理を意識しています」

また、小麦も米粉も使わずに、限りなく無農薬に近い生玄米を使用した総菜パンや玄米を焙煎(ばいせん)したコーヒーや無農薬紅茶も提供しています。

「私はお店を持ちたいという気持ちはなかったのですが、多くの家庭で、できるだけ手作りした料理をお子さんに食べさせてほしいという気持ちはあります。自分で作ると添加物などもいろいろ気になってきますから」

塚本さんは「今までやってきたことを提供しているだけ」と言いますが、「enishi」は“体にいい手作りの料理を子どもの頃から食べてほしい”という思いが詰まったお店です。その料理と人柄に引かれるのでしょうか、他府県からのリピーターや予約客も多いそうです。

2)食品開発メーカーの取り組み例

新規市場に挑戦したいけれど、会社にとって体力的に難しいことも多いでしょう。そういうときこそ、自社にどんな強みがあるか再確認する必要があります。持っている力を活かした新商品は、会社の自信につながります。そして、自信のある技術で開発した商品は業界の垣根を越え、大きな販路を生む可能性もあります。

一方でグルテンフリー食品は、体の健康にも関わるため、一度「おいしい」と認知されると、拡散やリピート率が高い傾向も見受けられます。

小麦などが食べられない消費者に、得意分野を駆使して、おいしいものを作る。基本的なことですが、グルテンフリー市場では、消費者のニーズが明確です。そこにヒットするためのおいしいものづくりにこだわった2社を紹介します。

1.商品開発のアイデア:グルテンフリーのミックス粉「リソジャミックス」

泰喜物産(東京都足立区)は、

自社の強みである大豆加工技術を活かして、グルテンフリー商品の開発

をしています。

「リソジャミックス」は豆腐用凝固剤などを製造している泰喜物産のグルテンフリーのミックス粉です。同社の特許製法で大豆特有の青臭さを取り除いた全脂脱臭大豆粉に米粉とベーキングパウダーを加えたものです。同社の金井健三社長はこう話します。

「全脂脱臭大豆粉は加工段階で、皮と胚軸を取り除いて、大豆特有の青臭さをなくしたものです。大豆を丸ごと配合しているので、豆乳と比較すると、約7倍の食物繊維があります」

同社は大豆粉、ココナッツオイルを使った乳製品を使わない「大豆クリーム」や「ソイホイップ」を開発していました。しかし、思うほどの反響はなく、少子高齢化が進み市場が縮小していく中で、新しい商品を模索していたと言います。

「『大豆クリーム』や『ソイホイップ』も思ったほど響かない。どうしようとなったときに、これらを利用してグルテンフリーであり、乳製品フリーであり、小麦アレルギーや健康志向の人たちにも受け入れていただけるような商品を作ろうということで、開発に乗り出しました」

開発を担当したのは、金井社長の娘さんである金井友里課長です。

「実は、もともと娘はグルテンフリーを実践していたんですね。彼女に開発を担当させたところ、薄力粉の代替粉を作ろうと提案されたのです。グルテンフリー商品では麺が多いけど、薄力粉の代替はあまりないというのも決めたきっかけです。大豆はグルテンがないので膨らみにくく、作るのが難しいのですが、当社も豆腐ならどこにも負けない自信がありました。この強みを活かして作ってみようとなったのです。試行錯誤してできた『リソジャミックス』は薄力粉の代替として遜色なく膨らむので、作れるメニューは豊富にあります。まずは従来の販路である豆腐店にグルテンフリードーナツを提案することから始めて、グルテンフリーやヴィーガン(完全菜食主義者)、インバウンドの方々が利用する洋菓子店やレストランにも提案していこうと思っています」

「リソジャミックス」はこれまでの取引先を越えて、新たな販路獲得につながるのでしょうか。反応は上々と金井課長は自信を持っていました。

2.販路拡大のアイデア:「食べたら分かる」商品の品質が評価されて販路が急拡大

川北製麺(宮崎県串間市)は自社で米粉100%グルテンフリー麺を開発・販売しています。かつては納入先が市内だけでしたが、販売後、取引先が海外にもできるなど、販路が拡大しています。同社の有田豪社長は、

自社製麺で、海外市場を広げ、日本のコメや米粉の製品を伝えたい

と、夢を語ります。同社が最初にグルテンフリー麺を発売したのは2019年。その「喉越しツルツルで、モチモチしているグルテンフリー麺」は評判が評判を呼び、全国展開するスーパーのみならず、海外の11の国と地域まで取引するほどになりました。

「きっかけは、次男が通っていた保育園の保護者から、自分の子が小麦アレルギーで麺もパンもケーキも食べられないと聞いたことです。だったら俺が食べられる麺を作ってやると思って始めました。1年ほど試行錯誤して完成した麺を食べてもらったらすごく喜んでくれたんですね。それで麺の販売を始めると、グルテンフリーの米粉麺ということで、不思議なくらい販路が広がっていきました。数年前まで麺の納入先は市内のお店がほとんどだったのに、商品が独り歩きして広がっていった感じで、問い合わせがたくさん来るようになりました」

商品が「独り歩き」している理由をこう話します。

「まず、麺ですね。コメにはグルテンがないので、ツルツル、モチモチの食感が出せません。それを当社は“箸でつかめないくらいツルツルでモチモチ”に仕上げたんです。そこが評価されたのだと思っています。もうひとつが、アレルギー体質の人たちのネットワークです。家庭にひとりでもアレルギー体質の子がいると、その家庭内の全員がアレルギー対策をしなければなりません。アレルギー体質=消費者数ではないんですね。実際に遠方の孫や親戚がアレルギーだから送りたいというご要望もよくいただいて、次第に広がっていきました」

取引先が全国から海外にまで広がっていったのは、展示会への出展でした。

「食べると違いが分かるので、展示会で試食してもらうと注文が入りました。今では大手スーパーや飲食店へ納品するだけでなく、OEM(受託生産)もやっていますし、プライベートブランドとして出したいというお客さんもいます。宮崎県内の米農家からウチのコメを使ってほしいということもありました。海外展開したきっかけはシンガポール向けに商品を輸出する知り合いが関心を示し、持っていってくれたことです。そこで1袋500円で“グルテンフリージャパニーズライスヌードル”のPOPを作ったら、10束、20束という単位で購入する人が多く、あっという間に売れてしまったというのです。海外のグルテンフリーへの関心の強さを実感しました」

海外需要の強さを実感して、有田社長は今後の夢を語ります。

「海外の店舗やスーパーに納入するだけではなく、店舗を作ってフランチャイズ展開するとか、米粉のグルテンフリー麺といえば、日本の川北製麺と思われるような会社とかにしていきたいですね」

今後も拡大が見込まれるグルテンフリー市場。ロシアのウクライナ侵攻による小麦価格高騰の対策や健康被害者の救済など、商品開発にはさまざまな付加価値が付くことでしょう。先行事例を参考に、新商品の開発を検討してはいかがでしょう。

以上(2022年9月)

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【文例付き】中堅社員としてふさわしい朝礼スピーチをしよう

書いてあること

  • 主な読者:朝礼でのスピーチで、ネタ切れ感に困っている中堅社員
  • 課題:ネットでスピーチのテーマ探しをするのはやめたい。もっと意味のある話をしたい
  • 解決策:現場で起きていることや日ごろの自分の人となりをスピーチのテーマとする。特にオンラインでは、実感のこもった「自分事」の話が聞き手に伝わりやすい

1 「実感のこもった」テーマがおすすめ

朝礼は今も昔も、“思い”と情報を共有する貴重な機会です。ただし、今はデジタル化が進み、その形は変わってきています。経営者・役員239人を対象とした独自アンケート(日本情報マート、2021年2月調査)によると、「朝礼をしている」と回答した人は30.5%で、中には「オンラインでの朝礼が多くなっている」という人が12.3%います。

こうした中で、改めて考えたいのが「テーマ」です。ビデオオフでも可にしているオンライン朝礼の場合、参加者は「ながら聞き」しているかもしれません。ネットで探したありがちな話では、ちゃんと聞いてもらえないでしょう。何より、話し手の気分が乗りません。音声だけの場合、話し手の「乗らなさ」は聞き手にすぐバレてしまいます。

そこでおすすめなのが、「自分の言葉で話せる実感のこもった内容」です。聞き手に気持ちが伝わりますし、話し手も温度感、情熱を持って伝えられます。例えば入社3~5年目の中堅社員の場合、次のいずれかのテーマが良いでしょう。

  • 現場で起きていることを話す(良い話も悪い話も)
  • 日ごろの自分の人となりを話す
  • 会社の方針や上司の話を「自分事」に落とし込んで話す

2 現場で起きていることを話す(良い話も悪い話も)

中堅社員には、現場での情報が集まってきます(集まってくるようにしなければなりません)。中堅社員の“感度”が高ければ、現場には「素晴らしい」と称賛できるナイスプレーや、「危ない」と肝を冷やすヒヤリ・ハットなど耳の痛い話があるはずです。

例えばこの1週間、現場で何が起きたのか、上司や部下は自分に何を話してくれたのかを思い出してみてください。皆に伝えたいと思う情報がたくさんありませんか。ナイスプレーや耳の痛い話など、スピーチで話すことが決まったら、ここに1つだけ中堅社員ならではのエッセンスを加えてください。それは「仕組みづくり」を進める提案です。

「あぁ、良かったね」あるいは「危なかった……」と思うだけで終わっていてはいけません。素晴らしいことは再現性を持たせる、問題になりそうなことは再発を防止するのが中堅社員に求められます。ここでは、ナイスプレーと耳の痛い話の例をそれぞれ紹介します。

【文例:素晴らしいことを共有し、仕組みをつくる(ナイスプレー)】
先日、私のチームに新しいメンバーが加わりました。その際、誰に頼まれたわけでもないのに、自然と皆でリモートでもコミュニケーションが取りやすいようチャットツールを整えたり、各自の名前や特徴をオンライン上の背景画像に載せたりといった準備をしました。我ながら、「いいチームだな」と誇らしく思います。
先日行ったチームビルディングに関するセミナーの参加者にこの話をしたら、その人は「自分たちもまねしたい」と言ってくれました。その人の会社はチームの連帯感が薄く、新人が定着しないという課題があり、その解決に役立てたいとのことでした。今回は、私が所属するチームについてお話ししましたが、他のチームはどうでしょうか。私は新しい仲間を温かく迎え入れる雰囲気にあふれた当社は、素晴らしい会社だと思っています。ぜひ、この雰囲気を大切にして、広めていきたいです!

【文例:メンバー全体への通知からの仕組みづくり(耳の痛い話)】
今日は、「伝言」について注意したいことを皆さんに共有します。このごろ、出社勤務の人と在宅勤務の人が両方いる状態に慣れてきて、各自が気を付けていたコミュニケーションの取り方も、「なあなあ」になってきているように思います。
特に感じたのは「電話の伝言」についてです。会社で電話を取った人が在宅勤務の人に伝言するときに、本人にだけ個別にチャットで伝言を送ると、他の人は「起きていること」が分かりません。特にトラブルなどは、全員に伝えるよう徹底していきましょう。
在宅でお客さまからの電話を個別に受けた人も同じです。トラブルでなくてもお客さまと話した内容は情報共有しましょう。忙しい中ですぐに情報共有するのが難しい場合は、この朝礼の場を使ってもいいと思います。今日から実践していきましょう!

3 日ごろの自分の人となりを話す

同じ会社で働いている仲間でも、実は互いのことをあまりよく分かっていなかったりしませんか。せっかく一緒に働いているのに、年齢、名前、所属などの互いを認識する最低限のことしか知らないとしたら、それは少し残念です。

せっかく皆に話をするなら、「この朝礼に出て良かった。この話は他では聞けない」と思ってもらえるスピーチをしたいものです。といっても難しく考える必要はなく、参加したオンラインセミナーの話、読んだ本の話、趣味の話など、とりとめのない話でいいのです。

これらの話は、あなたの人となりを表すものであり、メンバーにあなたのことを知ってもらう良い機会となります。また、自己紹介のスピーチは、新入社員がスピーチをする際にも参考にしやすいテーマです。新入社員の見本となるような自己紹介スピーチをしてみましょう。

【文例:自分のことを知ってもらう】
皆さん、おはようございます! 私はYouTube動画にハマっています。特に、日本の歴史を分かりやすく、しかも短時間で説明するシリーズが面白く、ついつい何本も見てしまいます。
あまり公にはしていないのですが、昔、私は映画を作る仕事をしたいと思っていて、実際に何本か簡単な脚本を書いたこともあります。ですので、映像全般についてとても興味があります。
YouTubeを見過ぎると家族に怒られるのですが、今の映像技術はものすごく進化していますし、YouTuberの演出もレベルが高いものが多く、かなり面白いです。YouTuberの考え抜かれた伝え方を、実はプレゼンにも役立てています。
ということで、私は自称“映像オタク”です。うちの会社の動画コンテンツは、私もお手伝いできます! それから、私は今、バーチャルのキャラクターを使った「VTuber(ブイチューバー)」にも興味があって色々見ています。YouTuberやVTuberの可能性を探って皆さんにまたレポートしますので、期待してお待ちください!

4 会社の方針や上司の話を「自分事」に落とし込んで話す

中堅社員がサンドイッチの具に例えられた時代があります。これは上司(パン)と部下(パン)に挟まれて、両者の間をうまく取り持つということです。一方の考えを通訳して、もう一方に伝える立場ともいえます。この点を意識し過ぎる中堅社員は、「自分のスピーチは上司に厳しく評価されている」と考え、上司の考えを忖度(そんたく)したスピーチをしがちです。

しかし、それは間違いです。上司は中堅社員のスピーチに注目しますが、採点しているわけではありません。ましてや、自分と同じ考えを持ってほしいなどとは思いません。上司は、中堅社員のスピーチから、現場で起きていることや人となりを聞いているだけです。

以上から、中堅社員は自由にスピーチをしてよいのですが、会社の方針や上司の話を伝える際は、通訳ではなく、エバンジェリストであることを意識してみましょう。エバンジェリストとは、「伝道師」のことで、ある事柄の価値を相手に正しく伝え、広める役割を担います。

広める対象が会社や部門の方針だとしたら、まさに中堅社員に求められるのはエバンジェリストの役割だと分かるでしょう。そして、朝礼のスピーチはそのための絶好の機会になるわけで、中堅社員にとっては腕の見せどころです。聞き手に伝えるポイントは、「自分事」として話せるかどうかです。

【文例:会社の方針を伝える】
先日の全社会議の中で、社長は「我が社のあるべき理想の姿」をお話しされ、「社員一人ひとりも『あるべき理想の姿』を改めて考えなければならない」とおっしゃっていました。早速私なりに考えてみたので、今朝はその話をします。
私が仕事を通じて成し遂げたい、「あるべき理想の姿」だと思うのは、「頑張る経営者をサポートする」ことです。それによって日本経済に貢献できれば、私たちの子供や孫の世代に良い日本を残すことになると思うからです。
自分でも壮大なことを言っているなと思います。しかし、これが仕事を通じて成し遂げたいことであると自信を持って言えます。そして、この理想に向かって、皆さんと楽しく仕事をしていきたいと心から思っています。
「あるべき理想の姿」は人それぞれであり、それが自然です。ただ、ともすれば漫然と目先の仕事に追われてしまう中で、一度立ち止まり、自分が成し遂げたいことを考えてみるのは、とても有意義だと感じました。
皆さんは、「あるべき理想の姿」について考えてみたでしょうか。ぜひ、皆でこのテーマをディスカッションしましょう! そうしたことの積み重ねが、チームの結束力を高めるだけでなく、多様性を生むのだと思います。

以上(2022年9月)

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画像:pixta

【朝礼】健康管理は大丈夫ですか

皆さん、体調は大丈夫でしょうか。仕事が忙しいと、つい健康管理がおろそかになってしまいがちです。特に自身の健康を過信している人は気をつけてください。不規則な生活が続くと体調を崩しやすくなります。

体調を崩せば、最高のパフォーマンスは発揮できませんし、周りの人にも迷惑をかけることになってしまいます。これでは、せっかく日ごろの頑張りが、半減してしまいます。仕事をする上で、健康管理は必須条件なのです。

スポーツ選手の多くは、最高のパフォーマンスを発揮するのには「心・技・体」の充実が欠かせないといいます。少し違う意見としては、プロゴルファーの青木選手の提唱する「体・技・心」があります。

心が充実していないとよいパフォーマンス(仕事)が発揮できません。同様に体が充実していない状態、つまり健康を損っては、何もできないのです。「体・技・心」の優先順位は年齢によって変わるというのが私の持論です。20~30歳代は「心・技・体」、40歳代以上は「体・技・心」です。年齢を重ねるごとに、健康の重要度は増してくるのです。

多くの人は、健康が大切なのは分かっているし、健康を管理するためには何をやればいいかも知っているのです。問題なのは、健康管理を実践できない人が多いだけなのです。

ここにいる皆さんには、健康管理をしてもらいたいと思っています。毎日の生活を少し見直すだけでいいのです。

例えば、カリフォルニア大学のブレスロー博士が提唱した、「七つの健康習慣」です。これは以前に、「厚生白書(現在の厚生労働白書)」(当時)にも紹介されたものです。この習慣を実施している数が多いほど、病気が少なく、寿命が長くなるといわれています。

七つの健康習慣は、
1つ目は「適正な睡眠時間」
2つ目は「喫煙をしない」
3つ目は「適正体重を維持する」
4つ目は「過度の飲酒をしない」
5つ目は「定期的にかなり激しい運動をする」
6つ目は「朝食を毎日食べる」
7つ目は「間食をしない」
です。

いかがでしょう。どれも難しいものではありません。専門的な知識も、特別な道具もいりません。当たり前の生活を毎日続ける「意思」を持ち、実践するだけでよいのです。

これだけで健康的な生活が送れるのですから、ぜひ皆さんにも実践していただきたいと思います。ただ、どんなに気をつけていても体調を崩してしまうことはあります。そのときには無理をせずに、しっかりと休んでください。休むことも大事な健康管理です。

仕事をするだけでなく、充実した生活を送るにも体が資本です。健康管理に気をつけて、仕事にプライベートに最高のパフォーマンスを発揮できるようにしておきましょう。

以上(2022年9月)

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画像:Mariko Mitsuda