いまさら聞けないマーケティングの基本

書いてあること

  • 主な読者:「マーケティング」を意識できる組織を作りたい経営者
  • 課題:マーケティングの概念は幅広く、どこから学べばよいのか分からない
  • 解決策:マーケティングの基本として「マーケティング・ミックス」を学ぶ

1 マーケティングは「売るための取り組み」

マーケティングについては多くの専門家や団体が定義していますが、まとめるならば、

製品やサービスを販売するための一連の取り組み

といえます。そして、その具体的な取り組みがデジタル化の進展やコロナ禍などによって変化しているのです。

一方、マーケティングの重要性は認識しつつも、その専門的な知識がないため、過去と同じ手法の営業を続けている企業が少なくありません。どこまでマーケティングに集中するかは経営者の考え次第ですが、基本は押さえておきたいものです。この記事では、マーケティングの基本を紹介します。

2 マーケティングの基本構造

1)「主体」「対象」「目的」を明確にする

マーケティングには、外部の多様な対象に対して行われる活動が含まれます。マーケティングを「主体」「対象」「目的」の3つに分けた基本構造は次の通りです。

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マーケティングの主体である「企業」は、「市場創造(需要の開拓と拡大)」を実現するために、主要な対象となる「市場(ターゲット顧客)」に、さまざまな形で働き掛けます。

企業が市場にアプローチする際に、企業自身がコントロールできる要素として、「製品」「価格」「プロモーション」「流通チャネル」があります。これらの要素を「マーケティング・ミックス」(以下「MM」)と呼び、これらを組み合わせながら狙った市場にアプローチします。

2)自社内の他の活動と一体化させるための3つの適合性

マーケティングは、企業理念や企業目標を実現するための活動である必要があり、マーケティングは他の企業活動と一体的なものでなければなりません。次の3つの適合性を確保しながら、活動を行うことが重要です。

  • MM間の適合性
  • マーケティングの対象とMMの適合性
  • マーケティングと他の企業活動との適合性

3 市場(ターゲット顧客)の決定

1)3つの基本方針で市場(ターゲット顧客)を開拓する

マーケティングの目的である「市場創造(需要の開拓と拡大)」を実現するため、市場細分化基準を用いて市場調査を行い、対象となる市場を決定します。市場の特徴ごとに、次の3つの基本方針で参入します。

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1.マスマーケティング

ターゲット顧客や市場を特に指定せず、単一のMM(「製品」「価格」「プロモーション」「流通チャネル」を組み合わせたもの)で対応します。大量生産・大量消費を狙った製品やサービスを市場に投入する際などに使われます。大量生産や流通網の統一などでコストを抑え、市場で大きなシェアをつかむ際に取られる手法ですが、予算がかかるため、大企業向けの戦略といえます。

2.差別化マーケティング

画一的な手法のマスマーケティングに対し、差別化マーケティングは、市場を細分化し、その市場に最適なMMを提供することで、他社との差別化を図るものです。細分化した市場のニーズに合致した製品やサービスを提供することができれば、マスマーケティングとの激しい価格競争にも巻き込まれずに済みます。一方で、細分化した市場ごとに製品を作り、マーケティング手法も変えていかなければならないため、それをカバーできる経営資源が必要です。

3.集中的マーケティング

差別化マーケティングと同様に、1つのターゲット顧客層や地域市場などに経営資源を集中させる取り組みです。ターゲット顧客を絞り込むことで、他社よりも効率的に活動できる一方、ターゲット顧客を慎重に選ぶ必要があります。また、市場そのものが縮小・消滅するリスクも念頭に置かなければなりません。

2)市場細分化基準

差別化マーケティングや集中的マーケティングでは、市場細分化基準によって市場を分類します。市場細分化基準には、「デモグラフィック変数(人口動態的変数)」「サイコグラフィック変数(心理的変数)」があります。

デモグラフィック変数には、年齢、性別、学歴、職業、所得水準などの変数があります。しかし、市場の成熟化やそれに伴う消費の多様化などによって、同じ年齢層でもニーズが異なるなど、これのみで市場を細分化するのは困難になりつつあります。

こうしたデモグラフィック変数の問題点をカバーするものが、サイコグラフィック変数です。サイコグラフィック変数には、ライフスタイル、パーソナリティー、価値基準、購買動機などがあり、顧客のニーズを明確にすることができます。

4 マーケティング・ミックス(MM)で市場にアプローチする

MMは、先に紹介したそれぞれの市場(ターゲット顧客)に実際にアプローチするときの取り組みです。代表的な例として「4P」があります。これは、以下の「製品(Product)」「価格(Price)」「プロモーション(Promotion)」「流通チャネル(Place)」の4つの観点から、具体的な取り組みを組み合わせます。

1)製品(Product)

ターゲット顧客に提供する製品を検討します。製品そのものだけではなく、顧客にどういった利益(価値)を与えるかという視点からも検討します。具体的には、コンセプト、開発・製造方法、仕入れ方法、品質保証、アフターサービス、ブランドなどです。

2)価格(Price)

製品の販売価格を検討します。顧客に「製品には価格以上の価値がある」と思ってもらうことが重要です。なお、価格を下げるのは簡単ですが、価格は収益に直接的な影響を与えるので、安易な低価格販売は避けなければなりません。

3)プロモーション(Promotion)

販売促進やブランドの構築・維持のために、広告や販売促進方法などを検討します。プロモーションの手法には、テレビ・ラジオ・新聞などがあります。製品にもよりますが、動画を使ったインターネット広告も効果的です。

4)流通チャネル(Place)

製品の販売場所などを検討します。例えば、卸売業者を経由するか否か、または顧客に直接販売するか否かを考えます。小売店で販売する際にも、店舗をGMS(総合スーパー)のような大型店にするのか、小型の専門店にするのかなどを検討します。

以上(2022年8月)

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画像:unsplash

中小企業の経営者が知っておきたい 事業承継のお金や税金に関すること

前回は中小企業の事業承継で何を引き継ぐのか、概要を解説したが、今回はより具体的に、事業承継のお金や税金に関することを中心として、制度や特例にも触れていく。また、親族内承継と親族外承継の違いと問題点や解決策についても解説する。

(日本法令ビジネスガイドより)
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70歳雇用継続時代を見据えた 定年後再雇用者の活用と有期特措法第二種計画認定

今後ますますニーズが高まるであろう、有期雇用特別措置法の第二種計画認定の手続きについて解説するだけでなく、第二種計画認定を単なる手続きで終わらせない、自社の高齢労働者を活かすための措置の実施についても検討していきます。

(日本法令ビジネスガイドより)
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精神障害に関する労災を防ぐために

6月に厚生労働省より、令和3年度「過労死等の労災補償状況」が公表されました。これは過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患や、仕事による強いストレスが原因で発病した精神障害の状況について、労災請求件数や、「業務上疾病」と認定し労災保険給付を決定した支給決定件数などを、取りまとめたものになります。
本稿では、本資料の傾向を読み解きながら、労災に関するリスクについてご案内いたします。

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精神障害に関する労災を防ぐために

6月に厚生労働省より、令和3年度「過労死等の労災補償状況」が公表されました。これは過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患や、仕事による強いストレスが原因で発病した精神障害の状況について、労災請求件数や、「業務上疾病」と認定し労災保険給付を決定した支給決定件数などを、取りまとめたものになります。
本稿では、本資料の傾向を読み解きながら、労災に関するリスクについてご案内いたします。

1 労災補償状況の傾向

公表資料を見ると、「脳・心臓疾患」に関する事案の労災支給決定件数については、減少傾向がみられるものの、「精神障害」に関する事案については、増加傾向かつ過去最高の件数となっており、喫緊の対策が求められていることが見て取れます。

■脳・心臓疾患の労災補償状況

脳・心臓疾患の労災補償状況

■精神障害の労災補償状況

精神障害の労災補償状況

2 「精神障害」の労災支給決定の原因となった出来事

それでは、増加が懸念される「精神障害」に関する事案について、具体的にどのような出来事を原因として労災が認定されているのでしょうか。資料を見ると、ハラスメントに関わる支給決定件数が約3割を占めていることが見て取れます。

■精神障害の出来事別決定及び支給決定件数一覧

精神障害の出来事別決定及び支給決定件数一覧

※支給決定件数上位6件を記載
※「特別な出来事」は、心理的負荷が極度のもの等の件数

3 ハラスメントが発生する職場の特徴

昨年公表された「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」では、パワハラを受けた方がいる職場の特徴として次のものがあがっています。

■職場の特徴(パワハラ経験有無別)現在の職場でパワハラを受けた方の数値

職場の特徴(パワハラ経験有無別)現在の職場でパワハラを受けた方の数値

※上位5件を記載

4 さいごに

パワハラという一事を取り上げましたが、前述の労災認定の出来事すべてにおいても、上司と部下との職場のコミュニケーションがあれば、「精神障害」の労災を回避できる可能性は高まるのではないでしょうか?今一度、職場のコミュニケーションを見返し、活性化を図ってみることをお勧めします。

※本内容は2022年7月12日時点での内容です

(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)

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画像:photo-ac

駐車場での事故防止(2022/08号)【交通安全ニュース】

活用する機会の例

  • 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
  • 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
  • マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など

駐車場は安全だと思い込んでいませんか?

歩行者が少なく、車も低速で走行する駐車場では、事故の危険を想定していないドライバーも多いと思います。しかし、車両事故の約3割は駐車場で発生しているとも言われており、駐車場には事故の危険が多く潜んでいます。

今回は、駐車場に潜む事故の危険と、事故を防ぐためのポイントについてお伝えします。

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1.駐車場事故の発生状況

令和3年の交通事故件数について、交通事故全体と駐車場での事故における人対車両事故の占める割合を比較すると、駐車場での事故は約2.5倍になっています。

また、車両相互事故件数について、後退時の事故が占める割合を比較すると、駐車場での事故は約13.5倍になっており、駐車場での車両相互事故の半分以上が後退時の事故です。

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出典:公益財団法人交通事故総合分析センター令和3年版「事故類型別(詳細)・昼夜別 道路線形別 全事故件数」より当社作成

駐車場で人対車両や後退時の事故の割合が多い理由として、以下の要因が考えられます。

【環境】

  • 歩行者や車の動きが不規則である。
  • 駐車車両や柱等の構造物による死角が多い。

【心理】

  • 駐車場に入ると、緊張がほぐれ油断しやすい。
  • 駐車スペースを探すことだけに集中してしまい、周囲の状況が見えにくくなる。

【操作】

  • 狭いスペースへのバック駐車など、運転操作が複雑である。
  • 車の前後左右の距離感を見誤る。

※公益財団法人交通事故総合分析センターの統計は人身事故の集計となっています。
※駐車場の定義は、公益財団法人交通事故総合分析センターの交通事故統計において「一般交通の場所」(「一般の交通の用に供するその他の※道路」に該当する場所及び事故が発生した道路が高速道路、国道、都道府県道等に付属して設けられているサービスエリア、パーキングエリア※等の場合をいう)としています。

2.駐車場に潜む事故の危険について

駐車場でよくある事故の事例から、駐車場に潜む危険について考えてみましょう。

【事例1】

駐車車両の死角から現れた歩行者との事故

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駐車場には駐車車両や柱等の構造物による死角が多く、歩行者が思いがけないところから現れたりします。

駐車場内の歩行者は、ドライバーが予測しにくい行動をすることがあります。

【事例2】

バック駐車時の駐車車両との接触事故

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狭いスペースへのバック駐車では、アクセル・ブレーキ・ハンドルの操作が頻繁となり、見落としや見誤りが生じるおそれがあります。

後続車が待っていると、「早く駐車しなければ」と焦りも生じ、安全確認が疎かになることがあります。

【事例3】

駐車場通路でのバックによる後続車との接触事故

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駐車スペースから出る車のために不用意にバックをすると、後続車と接触するおそれがあります。

駐車場通路でバックしたときに後続車等とぶつかってしまったというケースも少なくありません。

3.駐車場での事故を防止するためのポイント

駐車場では、以下の点に留意して、安全運転を心がけましょう。

  • 駐車場も道路の一部と考えて、油断したり気を抜いたりしない。
  • 駐車場では、常に徐行する。
  • バック駐車をするときは徐々にバックし、少しでも接触の危険を・感じた時は、無理をせず、もう一度やり直す。
  • バックモニターやクリアランスソナーが装備されている場合でも、それに頼り切らず、必ず自分の目でも後方の安全を確認する。
  • 発進するときは、両脇の車両との間隔に注意するとともに、通行・車両や歩行者がいないか、必ず確認する。

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バック駐車する時は歩く速度で慎重に!

以上(2022年8月)

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画像:amanaimages

【朝礼】上を向こう。下も見よう。小さなことを見逃すな

1960年代に大変な人気を集めた、坂本九さんという歌手がいらっしゃいました。この方の代表的な歌で、アメリカでも大ヒットした「上を向いて歩こう」という曲があります。歌詞は、「上を向いて歩こう、涙がこぼれないように、思い出す春の日、一人ぽっちの夜」という、どちらかといえば悲しい気持ちを歌ったものです。これは、作詞を担当した永六輔さんが、つらいことがあって落ち込んでいたときに、ある人から「泣きたいときこそくよくよしないで上を向きなさい」と励まされた体験が基になってできた歌詞だといいます。

悲しいことやつらいことがあったときこそ、上を向いて、希望を持ち、前向きでいようというこの歌は、私たちにとっても、生きていく上で大切な気持ちの在り方を教えてくれていると思います。

こうした気持ちを持ち続けることができれば、ビジネスパーソンとしてもよい仕事ができるでしょう。ただし、ビジネスパーソンは上を向いているだけでは十分ではありません。上だけでなく、下もしっかり見ておくことが求められます。

ここで、私がいう下とは何か、それは決して「落ち込んだときにはしょぼくれていい」ということではありません。「毎日の仕事や生活の中で起きている、見逃してしまいがちな小さな出来事から目をそらさず、しっかりと見つめて何かに気づくことが大切だ」ということです。

毎日の出来事とは、例えば営業の仕事であれば、営業活動の中で聞くことができたお客様のちょっとした要望や不満、自社の商品を自分で使ってみた感想などがそれに当たるでしょう。

製造現場の仕事であれば、気づいてはいてもなんとなく見逃してしまっていた作業手順の非効率さや、逆に小さな工夫で効率を上げることができることはないかという、小さなアイデアがそれに該当するかもしれません。生活の中で気づいた「こんな商品があったらいいな」というちょっとした気付きも、そんな小さな出来事の一つでしょう。

要するに、毎日の仕事や生活の中で「足元で起きている小さな出来事をしっかりと見ることが大切である」ということを忘れないでほしいのです。

人はもちろん、前向きに上を向いて歩いていくべきだと思います。そうしなければ、仕事の上でもみなさんのプライベートな生活の上でも進歩や向上は得られないでしょうし、私自身もそうありたいと努力しています。けれども、ただやみくもに上ばかりを見て、自分自身の足元を見ないのは「高望み」のように思えます。足元が見えていなくては、逆につまらない石ころにつまずいて転んでしまうことにもなりかねません。

ビジネスでも生活でも、より良いものを作り出す、あるいは良いものへと育てていくための種は、小さな気付きだと私は思っています。その種は、目を凝らしていなければ見えないとても小さなものかもしれません。その小さな種を見逃さないためにも、自分自身の身の回りにあることに気を配り、常に足元を見ることを忘れないようにしましょう。

足元を固めているからこそ、上を向いて、希望を持ち、前向きでいることに自信が持てるのです。

以上(2022年8月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】定年退職するときに残したい言葉

けさは、恐らくあと30年ほどしたら私に直面する問題について話をしたいと思います。「そんな先のことか」と思っている皆さんも、人ごとではないテーマだと思いますので、少しお付き合いください。お伝えしたいのは、私が定年退職するときにどんなあいさつをすべきか、という話です。

この話をしようと思ったきっかけは、あるスポーツ選手の引退発表の記者会見を見たからです。そのときに、ふと、「自分が引退するとき、つまり退職するときに、どんな話をすればいいのだろうか」という疑問がよぎりました。

そこで、スポーツ選手が引退するときに話した名言をインターネットで検索したところ、使ってみたい名言がたくさんありました。多かったのは、その競技やチームへの愛を語った言葉や、今まで応援してくれたファンや支えてくれた家族に感謝する言葉だと思います。

特に、プロ野球選手の中には、引退のときの印象に残る名言が多くありました。古くは長嶋茂雄さんの「我が巨人軍は永久に不滅です」という誰もが知る名言がありますし、イチローさんの「後悔などあろうはずがありません」もイチローさんらしい言葉だと思います。それから、野村謙二郎さんの「今日集まっている子供たち。野球はいいもんだぞ。野球は楽しいぞ」という言葉にも憧れます。

そうした名言が残せるのは、やはり現役時代にしっかりと結果を出しているからだと思います。

そもそも、ちゃんと結果を出していなければ、退職するときにあいさつする機会も与えてもらえないでしょう。たとえ形式的にあいさつさせてもらえたとしても、聞いている人たちにとっての言葉の重みは、話す人が会社でどれくらい結果を残したのかによって変わってくるはずです。私が聞く立場であっても、話す人次第で受け止め方が変わると思います。

そう考えると、定年退職するときのことを意識しながら仕事をするのは、一つのモチベーションになると思います。定年退職するまでに、私は会社に何を残せるのか、定年退職するときに後悔の念を持たず、胸を張って会社を去ることができるのか。そのことを考えることで、仕事中にムダなことに時間を使っている場合ではないと思うようになりましたし、会社のために自分は何ができるのかということを意識しながら仕事をするようになったと思います。私を含めて、ここにいる全員が定年で退職することはないと思いますが、定年退職するときのことを意識して仕事をすることは、自分にとっても会社にとってもプラスになると思います。

話を戻しますが、私が定年退職するときには、一緒に働く方々や取引先の皆さまに感謝の気持ちを伝えたいですし、若い人たちに、職場の素晴らしさを伝えられるようになっていたいです。皆さんは、どんな言葉を残して会社を去りたいと思いますか?

以上(2022年8月)

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画像:Mariko Mitsuda

【営業最強フレーズ】プレゼン編4 「これが、御社からの宿題の答えです」

書いてあること

  • 主な読者:今よりレベルアップしたい営業担当者と、営業担当者を指導する営業管理職
  • 課題:現場ですぐに使えて顧客と信頼関係を築けるトークスクリプト的なものが欲しい
  • 解決策:シーンごとに「最強フレーズ」を、少なくとも1つは持っておく。あとは応用

これが、御社からの宿題の答えです

プレゼンの最終目的は何か?

プレゼンの目的は相手を動かすことですから、そうなるような「一言」を添えてみましょう。相手の心を動かす一言は、相手の考え、立場、状況によって変わるので、相手をよく見て、何を考えているか想像してみなければなりません。

今回は、相手の考えていることについてある例を挙げ、その場合の「相手の心を動かす一言」を考えてみましょう。

営業担当者を困らせる欲張りな相手

「相手のニーズを聞き、それに応える提案をする」。これは営業のセオリーです。しかし、相手が「こういう課題があり、これを実現したいから、そのための提案をしてください」と分かりやすく説明してくれることは、まずありません。

「あれもこれもやってほしい。やりたいことがあり過ぎて絞り込めない」

という“欲張りな相手”のときもあるでしょう。こうした“欲張りな相手”に対して、営業担当者の応え方はだいたい3つのタイプに分かれます。

1.従順タイプ

まず考えられるのは、「従順タイプ」です。このタイプは、セオリー通り、とにかく相手のニーズに応えようと1つ1つの要望に応えるプレゼンをします。一見、誠実な対応に感じますが、結局まとまりが無く、現実的ではないプレゼンをすることになりかねません。場合によっては、本当に相手のためになっているのかどうかも疑問です。

2.質問攻めタイプ

2つ目は、「質問攻めタイプ」です。このタイプの営業担当者は、相手の欲張りなニーズをなんとか絞り込もうと、たくさん質問をします。「一番優先したいのは何ですか?」「上司の方は、どれを重視されていますか?」などなど。

従順タイプと同じように、一見誠実な対応に見えますが、実はそうでもありません。忙しい相手から見れば、時間が取られてかえって迷惑に感じることもあります。

3.答えを出すタイプ

営業担当者が実践したいのは3つ目の「答えを出すタイプ」です。“欲張りな相手”の話から「相手が実現すべきこと」を導き出し、必要な内容に絞ってプレゼンします。「お話の内容と、御社や御社の競合他社の現状から今必要と考えられるプラン△△をお持ちしました」と伝えた上で、冒頭の営業最強フレーズを添えてみましょう。

“欲張りな相手”は、自分では取捨選択できなくなっています。そうした相手の心を動かすのは、明確な答えを示す一言です。また、オンラインのときには、相手のさまざまな要望と自社が示すプランとの関係、そしてプランによって最終的にどのような価値を相手に提供できるか、一目で分かるよう図示して見せるのもよいでしょう。

営業担当者は、相手の言うことにただ応えればいいのではありません。相手が見えていなかった「相手自身の中にあるはずの答え」を見つけて示すのも、営業担当者の重要な役割の1つです。

以上(2022年7月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】“やる”と決めればスキルは後から付いてくる

皆さんは、新しいことにチャレンジできる機会がありながら、自分のスキル不足を理由に、挑戦を見送ってしまった経験はありませんか? 自分の能力を客観的に分析するのは大切なことですが、もし皆さんが、スキルがないとチャレンジは無理だと考えているのだとしたら、それは間違いです。今日はチャレンジが苦手という人に向けて、レオナルド・ダ・ヴィンチの話をします。

ダ・ヴィンチは、「モナ・リザ」「最後の晩餐(ばんさん)」などの名画で知られる画家ですが、絵の他にも彫刻、音楽、解剖、軍事、土木などさまざまな分野に精通し、なおかつ各分野で顕著な功績を残しました。ダ・ヴィンチがどうやって多様な分野で一流のスキルを身に付けていったのか。そのヒントとなるエピソードがあります。

ダ・ヴィンチは若い頃、イタリアのミラノで芸術活動をしようと考えました。しかし、当時のミラノの権力者は芸術よりも軍事に興味を持っていたため、ダ・ヴィンチはまず「兵器を作れる軍事家」として自分を売り込んだのです。すごいのが、このときダ・ヴィンチは、軍事の知識をほとんど持っていなかったということ。なんと彼は、ミラノに招かれることが決まってから軍事を一から勉強し、そこにもともと持っていた工学の知識を組み合わせることで、さまざまな兵器のアイデアを打ち出したのです。こうして権力者の信頼を勝ち取ったダ・ヴィンチの元には、本分である絵や彫刻の仕事も舞い込むようになりました。

ダ・ヴィンチが軍事をほとんど知らないレベルから、短期間で権力者を認めさせるレベルの軍事家にまで成長できた理由は何でしょうか。もちろん、彼が類いまれなる頭脳を持っていたのもあるでしょうが、皆さんに注目してほしいのは、彼がほぼ知識ゼロの状態で「自分は軍事家です」と権力者に宣言したことです。何が何でも勉強せざるを得ない状況を自分でつくり出したことで、自身にプレッシャーを与え、それをバネに成長していったのでしょう。

私がこの話を通じて皆さんに伝えたいのは、「スキル不足を理由にチャレンジを諦めるぐらいなら、まず“やる”と決めてしまってはどうか」ということです。火事場のばか力ではないですが、仮にスキルが不足していたとしても、チャレンジを成功させなければならない状況に自分を追い込めば、人間はその不足を補うために努力できるものです。“やる”という意志さえあれば、スキルは後から付いてきます。

チャレンジが苦手な人に足りないものがあるのだとしたら、それはスキルではなく勇気です。失敗するのが不安なら心配はいりません。仮に皆さんが何かにチャレンジして失敗したとしても、私はそれを責めたりはしません。なぜなら、チャレンジを成功させるためにスキル不足を埋めようとした皆さんの努力は、決して無駄ではなく、次のチャレンジを成功に導く大きな財産になるからです。

以上(2022年8月)

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画像:Mariko Mitsuda