【マーケティング】いまさら聞けないチャネル戦略のポイント

書いてあること

  • 主な読者:「マーケティング」を意識できる組織を作りたい経営者
  • 課題:マーケティングの概念は幅広く、どこから学べばよいのか分からない
  • 解決策:マーケティングの基本として「マーケティング・ミックス」を学ぶ

1 チャネル戦略の検討

チャネル戦略で考えるべきポイントは次の2つです。

  • チャネルの検討:製品をどのようなルートで消費者の元へ届けるか
  • チャネルの管理:構築したチャネルをどのようにして維持・管理するか

基本的なチャネル構成は、チャネルのコントロール性とチャネルメンバーの数に基づいて、「開放的チャネル」「排他的チャネル」「選択的チャネル」の3つに大別できます。まずは、自社に適したチャネルを検討することから始めます。

2 チャネル構成の分類

1)開放的チャネル

消費者の高い購買頻度に対応するため、できるだけ多くの卸売・小売業者などを通じて販売する形式です。いわゆる最寄り品に適しています。ただし、数多くのメンバーでチャネルを構成するため、コントロール性は最も弱い形態となります。

2)排他的チャネル

チャネルを最小限に制限する形式です。チャネルメンバーが限られる分、コントロール性は高くなります。ブランドイメージの維持が重要な場合や、アフターサービスを通じて消費者に質の高いサービスを提供する場合などに適しています。

3)選択的チャネル

開放的チャネルと排他的チャネルの中間の形式です。チャネル数を絞り込んでブランドイメージを維持しつつ、ある程度幅広いチャネルを通じて製品を販売します。

3 垂直型チャネルシステム

開放的チャネルなどは、製造・卸売り・小売りの各業者の独立した活動を想定しています。しかし、製造・卸売り・小売りのチャネルメンバーが一体的に活動することもあり、こうした統合的なチャネル構成を「垂直型チャネルシステム」と呼びます。具体的には、「企業型システム」「契約型システム」「管理型システム」の3つです。

1)企業型システム

企業型システムは、チャネルが1つの企業、あるいは資本関係にある企業体で構成されている形態で、チャネル間の統合度が最も高くなります。中小食品業者などが製品を製造し、自社小売店舗において販売するケースなどが該当します。

2)契約型システム

契約型システムは、各チャネル構成員に資本関係はないものの、契約関係によって結合されている形態です。チャネル間の統合度は、企業型システムと管理型システムの中間程度となります。フランチャイズチェーンなどが該当します。

3)管理型システム

管理型システムは、資本関係や厳密な契約関係はないものの、リベートなどの経済的なメリットや、さまざまな情報や専門的なノウハウなどの非経済的なメリットを提供できる企業を中心に、チャネルが構成されている形態です。

4 チャネル構成の評価基準

1)経済性

企業型システムのような自社独自のチャネルは、チャネルを構築するために多額のイニシャルコストが発生します。また、構築したチャネルの維持に固定費が常に発生することになります。一方、リベートなどの変動費は低くなる傾向があります。

契約型システムや管理型システムのように、他社を活用してチャネルを構築する場合、イニシャルコストやチャネル維持に掛かる固定費は低く抑えることができます。しかし、リベートなどの変動費は相対的に高くなる傾向があります。

2)コントロール性

コントロール性とは、チャネルメンバーを自社の戦略や意図などに沿って、どの程度コントロールできるかということです。コントロール性が問題となるのは、契約型システムや管理型システムのように、他社を活用してチャネルを構築する場合です。

個々に独立した企業であるため、各メンバーは自社の利益を優先して行動します。そのため、自社の方針とチャネルメンバーの間で利害の対立が発生する危険性があるので、チャネルメンバーの行動をどれだけコントロールできるかが重要になります。

3)適応性

有効性の高いチャネルを構築したとしても、経営環境の変化によってはチャネル構成を変えなければならないことはよくあります。このため、構築するチャネルは、環境の変化に適応できる柔軟性を備えたものが好ましいといえるでしょう。

適応性という観点で考えれば、ヒト・モノ・カネといった多くの経営資源を投入して、自社独自のチャネルを構築・維持しなければならない企業型システムは、その形態を変更しにくい面があり、リスクの高い選択肢といえるかもしれません。

4)チャネル内の力関係を決定する要因

複数の企業が関係するチャネルには、チャネル全体に大きな影響を及ぼすチャネルリーダーが存在します。例えば、大手量販店が関連しているチャネルでは、大手量販店が価格設定、製品開発、プロモーションなどさまざまな面で大きな影響力を発揮しています。

チャネルリーダーの中には、「経済性」「コントロール性」「適応性」というチャネルの評価基準に関する項目について、自社にとって理想的な形のチャネルを構成している場合も少なくありません。

チャネルリーダーとなる企業はわずかですが、できる限りチャネルリーダーとしての地位を確立することが望ましいのは間違いありません。そのためには、チャネル内の力関係を決定する要因を理解しておく必要があります。

チャネル内の力関係を理解する上で参考になるのが、他のチャネルメンバーをコントロールできるチャネルパワーの源泉を知ることです。

チャネルパワーの源泉は、経済的パワーの源泉と非経済的パワーの源泉に大別されます。経済的パワーの源泉とは、経済的なメリットをいい、リベートなどの金銭的報酬が代表的なものとなります。

一方、非経済的パワーの源泉には、契約における規定、店舗運営や製品開発能力など専門的な知識、大手小売りチェーンが持つPOS情報や顧客情報など、経済的パワーの源泉以外のさまざまな要因が含まれます。

チャネル内の力関係は、チャネルパワーの源泉に対する依存度で決まります。製造業者が提供するリベートの依存度が高い場合、製造業者の力が強くなります。逆に、製造業者が売り上げの大半を特定の小売業者に依存する場合、小売業者の力が強くなります。

5 チャネルの管理

1)チャネル・コンフリクトの分類と発生要因

チャネルメンバーとして複数の企業が参加する場合、利害が衝突してチャネル内で一体的な活動が困難となるケースがあります。このようなチャネル・コンフリクト(チャネル内の問題)が発生した場合、速やかに解消する必要があります。

チャネル・コンフリクトは垂直関係、水平関係、複数チャネル間で発生する可能性があります。垂直関係におけるコンフリクトとは、製造業者・卸売業者・小売業者の間で問題が発生するケースで、製造業者が卸売業者や小売業者に対するリベート制度の見直し(削減)を行うことなどによって起きます。

水平関係におけるコンフリクトとは、各製造業者間・卸売業者間・小売業者間で発生するケースです。例えば、テリトリー制を認めていないフランチャイズチェーンでは、近隣に商圏の重なる店舗があれば、これらの店舗間でコンフリクトが発生することがあります。

複数チャネル間におけるコンフリクトとは、異なるチャネル間で発生する問題です。例えば、家電製造業の場合、定価で製品を販売して利益を確保したい系列店チャネルと、割引販売を旨とする量販店やディスカウントストアで問題が発生することがあります。

チャネル内で問題が発生する要因はさまざまですが、一般的には「目標の不一致」「現状認識の不一致」が多いようです。

例えば、リベート制度の見直し(削減)について考えてみましょう。製造業者にとってリベート制度の見直しは、過度の値引きの源泉となることを防ぎ、市場価格を適正に維持することを可能にする仕組みづくりを目的としているのかもしれません。

しかし、その製造業者の製品が数多くの取り扱い製品の1つでしかない小売業者にとっては、その製品自体から得られる利益が小さくても、顧客がその製品とともに収益性の高い別の関連製品を購入してくれれば、収益が確保できると考えているかもしれません。こうした目標の不一致がコンフリクトを発生させる要因となります。

また、製造業者はリベート制度を見直しても、従来通りの売り上げを確保できると考えますが、小売業者は多くの競合製品が安売りを続けている以上、値引き販売の原資となるリベートが削減されれば、売り上げが大きく低下すると考えている可能性があります。このような現状認識の不一致もまた、コンフリクトの要因です。

2)コンフリクトの解決方法

チャネルリーダーであれば、「チャネルパワーの源泉を使ってコンフリクトを解決する」ことが考えられます。例えば、自社の販売方針に従った企業に対してリベートを手厚く支払い、従わない企業にはリベートの支給額を減らすなどの方法です。

この他、「話し合いや契約内容の見直しなどをして、共通目標の確認・再設定を行う」「チャネル間の人材の交流機会を設け、相互理解を深める」などがあります。これらは、チャネル内の地位に関係なく取り組むことができます。

以上(2022年8月)

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画像:unsplash

【朝礼】「つまらない仕事ばかり押し付けられている」と感じている人に

先日、知人の付き合いで、ある草サッカーの試合を観戦しました。私はあまりサッカーに詳しくないのですが、そんな私から見て「悪い意味」で気になる選手がいましたので、お話しします。

その試合で私が注目したのは、最前線でシュートを決める役割を担うポジションの選手でした。仮にA君とします。A君は、なかなかパスをもらえずにイライラして、チームメートにしきりにパスを出すように要求していました。

最初は私も、「なぜA君にパスが渡らないのだろう」と不思議に思っていましたが、試合が進んでいくうちに、その理由に気付きました。それは、「そもそも、チームメートがA君のことを信頼しておらず、意図的にパスを出していない」ということです。そう思ったきっかけは、A君とチームメートの態度です。

例えば、試合中、A君が絶好の位置でシュートを打つ場面がありましたが、彼はシュートを外した上に、悪びれる様子を見せませんでした。また、自分のチームが攻められた際に、積極的に守備に回る姿勢を見せませんでした。そして、A君のチームメートは、そんなA君を叱りも励ましもしませんでした。

私はA君から、シュートを決めることにこだわりがあるものの実力が足りず、一方で、シュート以外のプレーにはどこか「やらされ感」があるような印象を受けました。そして、チームメートはそんなA君に期待していないように見えました。

もし、A君とチームメートの関係がその通りなのであれば、A君がチームメートの信頼を勝ち取り、パスをもらえるようになる方法は2つです。それは、「試合の大事な場面でシュートを決めること」「攻撃だけでなく守備もしっかりこなすこと」です。

ただ、そのためにはシュートの技術を磨き、敵のマークを振り払えるだけの走力をつけ、チームの勝利のために守備に戻れる体力をつけねばなりません。そうした努力をしていなければ、チームメートからの信頼は得られないでしょう。

これはサッカーの話ですが、もし「自分はつまらない仕事ばかり押し付けられていて、大きな仕事を任せてもらえない」と思っている人がいたら、A君と同じだとは思いませんか?

皆さんは上司や同僚から、大きな仕事を任せようと思ってもらえるほどの信頼を得ていますか? 周囲の人たちは、ちゃんと日ごろの皆さんの働きぶりを見ています。仕事に対する姿勢や日ごろの努力、同僚への配慮など、さまざまな角度から皆さんを評価し、信頼度を定めています。

上司や同僚から、大きな仕事を成功させるだけの能力があると信頼されれば、手を挙げれば必ず、仮に手を挙げなくても、場合によっては大きな仕事を任せてくれるようになるでしょう。また、任せた大きな仕事が成功するよう、助言やサポートをしてくれるはずです。チャンスを得られるかどうかは、自分次第なのです。

以上(2022年8月)

pj17117
画像:Mariko Mitsuda

【フレームワーク】新規事業を検討する「アンゾフのマトリクス」と「製品ライフサイクル」

書いてあること

  • 主な読者:新規製品やサービスなど、多角化を検討している経営者
  • 課題:どういった市場を攻めるべきか、またその際の注意点は何があるのか知りたい
  • 解決策:競争優位性を活かすことを検討する。そして成長が見込める市場を狙うことが定石

1 企業の平均寿命は23.8年

東京商工リサーチによると、2021年に倒産した企業の平均寿命は23.8年です。これとは別に「企業の寿命30年説」ともいわれるように、長く経営を続けることは大変です。単一の製品やサービスだけでは刻々と変わる経営環境を勝ち抜くのは難しいため、企業は多角化を進めます。とはいえ、無謀な多角化は経営資源の分散を招き、経営効率の低下につながります。多角化は重要な経営判断であり、相応の検討を進めてから行いたいものです。

やるべきことはさまざまありますが、少なくとも、

  • どの市場に、どの製品やサービスで攻めるか
  • その市場のライフサイクルはどのようになっているか

を検討することは必要です。

2 アンゾフの成長マトリクスと多角化の類型

アンゾフの成長マトリクスとは、

市場と製品・サービスを、それぞれ既存と新規に分けて戦略を検討するフレームワーク

です。

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4つの象限の基本的な戦略は次の通りです。

1)市場浸透戦略

既存の市場で占有率を高めます。具体的には、広告宣伝、価格の改定、流通経路の再整備などを行い、リピート率の向上やチャーンレートの改善を見込みます。

2)市場開拓戦略

アプローチをしてこなかった市場(地域や業種、年齢層など)に、既存の製品・サービスを売り込みます。新しい市場に合わせてカスタマイズなどをします。

3)製品開発戦略

既存の市場に新製品・サービスを投入します。フルモデルチェンジなどを行いますが、コストなどの検討は必要です。

4)多角化戦略

既存の技術や流通網などを活かし、新製品・サービスを開発して新たな市場にチャレンジします。単独では難しい場合、業務提携やM&Aも検討します。

一般的に、多角化戦略には次の4つの類型があります。

  • 水平型:既存の生産技術を活用して、既存の市場と類似した市場を開拓
  • 垂直型:生産だけではなく流通や販売に対応し、上流から下流に至る市場を開拓
  • 集中型:既存技術など現在の優位性を利用し、新たな市場向けの製品を展開
  • 複合型:全くの異業種、新規事業分野に進出

以上が4つの象限の戦略ですが、この他に「撤退戦略」もあります。企業の拡大・成長とは逆方向の選択ですが、損失の回避などのリスクを最小限に抑えるために、常に念頭に置いておきたい戦略です。

3 製品ライフサイクル

1)成長が見込めなければ意味がない

「伸びている市場で流れに乗れば、規模は簡単に拡大する」。今、Web3やAIなどの領域で戦っている企業の経営者がよく言うことです。もちろん、投資が回収できるのか、また、安定した収益につながるのかは別問題ですが、いわゆる「導入期」の製品やサービスには勢いがあります。あるいは、既にコモディティー化している市場であっても、ちょっとした工夫によって新しい市場が生まれることもあります。伝統的な産業がそうしたことで息を吹き返すケースは珍しくありません。

いずれにしても、多角化を検討する際は、勝負する市場の成長が見込めなければ意味がないということであり、それを分析するものに、「製品ライフサイクル」があります。製品ライフサイクルとは、

製品・サービスの状況を把握し、それに応じて戦略を検討するフレームワーク

です。プロダクトライフサイクル(PLC)と呼ばれることもあります。

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4つのライフサイクルの基本的な戦略は次の通りです。

2)導入期

製品・サービスを市場に認知してもらうフェーズです。広告宣伝費に加え、今後の需要増加を見込んだ生産体制を整えるための設備資金なども必要です。コストがかかる半面、利益は出にくいですが、ここを乗り越えると先行者利益が得られるかもしれません。

3)成長期

製品・サービスが市場で認知され、市場規模が拡大していくフェーズです。「市場がある」ことが分かると、そこに魅力を感じた競合が参入してくるため、自社の競争優位性をきちんと確保しておく必要があります。特許など知的財産権の確保も必要です。

4)成熟期

製品・サービスの売り上げがピークとなります。市場に浸透した分、競合製品との差異化が図りにくくなり、価格競争が激しくなります。

5)衰退期

市場が縮小し、撤退する企業も出てきます。生き残った企業においても、内部の徹底した合理化などコスト削減をしなければなりません。よほど自社に優位な外部環境の変化(昭和レトロブームなど)がない限り収益は落ち込むため、ここで多角化が必要になってきます。

4 多角化を検討する際に考えておきたいこと

多角化を進めやすいのは、ニーズを理解している既存の市場を攻めたり、既にバリューチェーンが整っている既存の製品・サービスを利用したりする戦略です。既存の製品・サービスを別の市場に投入して成功すれば、「売り上げの増加→生産量の増加→コストの引き下げ」といった戦略が描けます。

一方、既存市場や既存製品から離れた多角化は、未知の可能性が広がる一方で、リスクは高くなります。多角化の目的には、「市場や技術の変化への対応」「未使用の経営資源の有効活用」「将来展望」「リスク分散」などがあるので、この目的に照らして検討することが大切です。

多角化を図るタイミングも重要です。新規市場に進出してみたものの、当初の想定通りに市場が成長せず、事業が軌道に乗らないケースもあります。「時代を先取りしすぎるのは良くない」といわれ、実際に失敗事例も多いので注意しましょう。

以上(2022年8月)

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画像:photo-ac

【朝礼】イメージを描かない仕事は成果の出ない練習と変わらない

先日、息子の柔道の試合を応援しに出かけました。試合前の数週間は特に練習に力が入っていたようで、頑張っているのを知っていたものですから、私も勝利を期待していました。しかし、結果は惜しくも引き分けでした。帰宅した息子に声をかけると、「あれだけ練習したのだから、試合に勝てるだろうと思っていたのに悔しい」と言います。私はこの言葉を聞いて、彼は「何のために練習しているのか」を自覚していなかったのではないかと思いました。

練習とは何のためにやるのでしょうか? 当然、試合に勝つためです。しかし、それを忘れてしまうと、「たくさん練習したから」と、練習の量だけに満足してしまい、練習の質や効果について目をやるのを忘れてしまいがちになります。

たくさん練習するのはもちろんよいことです。しかし、それはあくまでも自分の実力が向上し、成果を試合で生かせることが大前提となります。毎日のメニューがたとえハードであっても、結果を出すという本質を忘れた練習は、「練習のための練習」でしかないのです。

この、「練習のための練習」をしてしまい、思うような結果が得られないといったことは、スポーツの試合だけでなく、ビジネスでも似たようなことが言えるのではないでしょうか。

例えば、皆さんは仕事の中でさまざまな商品の開発や販売に携わっています。その中で、皆さんはそれぞれが助け合いながらさまざまな仕事をしていると思います。しかし、いま皆さんが進めているその仕事は、最終的に何を目的にしていることなのか、あるいは自分の仕事が次の担当者、次の工程に渡ったとき、どのように生かされるのか、それを皆さんはきちんと理解できていますか? そういう点をきちんと理解できていなければ、たとえ時間をかけて一生懸命やった仕事であったとしても、的が外れてしまい思った通りの成果は出ないかもしれません。これは、ビジネスでいえば「練習のための練習」に過ぎないのではないでしょうか。

ビジネスの上で「試合で結果を出すための練習」をするためには二つのコツがあると思います。一つは、「実際に起こり得る状況を想定して、準備を怠らない」ということ、そして、もう一つは、「何のためにいまの仕事をしているのか、常に目的意識を持つ」ことです。

自分がいま進めている仕事は誰のために、何のためにしていることなのか、まずはそれを考えてみてください。例えば商品の販売計画を立てるのであれば、「誰にその商品を購入してもらい、どういうシーンで使ってもらいたいのか」、営業資料の作成ならば、「誰をキーパーソンとみなして、何をアピールするのか」をイメージしてみてください。

具体的なイメージを描いて、目的を持って仕事をする。そうすれば誰のために、何のためにいまの仕事をしているのかはおのずと分かるでしょう。これこそが試合で勝つ、つまりお客様から支持されるための有意義な仕事をする秘訣だと思います。

以上(2022年8月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】1200年以上も灯を絶やさずにいられる理由

皆さんは、延暦寺(えんりゃくじ)の「不滅の法灯(ほうとう)」をご存じでしょうか。延暦寺は、天台宗の開祖・最澄(伝教大師)が、788年に京都府と滋賀県にまたがる比叡山(ひえいざん)に建てた寺です。建立の際、最澄は「世の中を照らし続けるように」との願いを込めて、「根本中堂(こんぽんちゅうどう)」の本尊の前に灯(ひ)をともしました。この灯が今まで1200年以上、たった1度を除いて消えたことがないため、不滅の法灯と呼ばれているのです。

この灯りの構造は単純で、灯芯を燃料である菜種油に浸しただけです。灯を消さないためには、朝夕の2回、僧侶が油を注ぎ足さなければなりません。「油断大敵」という言葉は、ここから生まれたともいわれています。ちなみに、1度だけ灯が消えた理由は、織田信長による延暦寺焼き討ちです。ただ、その30年ほど前に、山形県の「立石寺(りっしゃくじ)」に灯を分灯していたため、立石寺の灯を再分灯してもらう形で、結果的に灯を絶やさずに済みました。いずれにしても、僧侶が油を注ぎ足し忘れるという「うっかりミス」は、1200年以上皆無だということです。

油を注ぎ足すという作業は重要ですが、単純なので忘れてしまいそうです。現代なら、多くの会社が当番制などで担当者を決めるでしょう。また、現代の技術であれば、自動で油を注ぐ構造にしたり、油が少ないとアラートを鳴らす技術を導入したりすることも、簡単にできるはずです。

ところが、延暦寺ではこれまで、油を注ぐための当番を決めずにきたといいます。逆に、担当者を決めないことで、全ての僧侶が灯を絶やさないように気を付け、守り続けてきたのです。灯を消さないための新技術も導入していません。

担当者を決めないやり方は、一見、非効率的といえますし、「他人任せ」にもなりがちです。ですが、私はそうならない理由が、最澄の教えの「一隅を照らす」にあると思っています。これは、「一人ひとりがそれぞれの持ち場で最善を尽くすことによって、自然に周囲の人々の心を打ち、お互いに良い影響を与え合い、やがて社会全体が明るく照らされていく」という教えです。

延暦寺の僧侶は、この教えを守っているからこそ、灯を絶やさないことの重要さを感じ、一人ひとりが最善を尽くしているのではないでしょうか。そして、油の残量を確認するたびに、最澄の教えを改めてかみしめているはずです。朝礼で社是を唱和することと同じように、それは決して非効率的な作業ではありません。

大事なのは、一人ひとりが灯を絶やさないことの重要性を理解し、自分事に感じて、緊張感を持つことです。これは、皆さんにもぜひ見習ってほしいと思います。当社は1200年以上の歴史はありませんが、皆さんやご家族、取引先の方々など、多くの人たちをお支えしており、絶やしてはならない存在のはずです。社是を忘れず、緊張感を持って業務に取り組んでください。

以上(2022年8月)

pj17116
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】その成功の理由を探せ

「上司に褒められた」「プレゼンテーションがうまくいった」「新しい顧客を獲得した」「資格試験に合格した」「ダイエットでウエストが5センチ細くなった」など、人生にはさまざまな成功があります。

成功したときのいいようもない充実感、達成感、高揚感は非常に心地よいものです。人生においても、仕事においても成功体験が多いほど楽しいものであり、一つでも多くの成功体験を重ねていきたいものです。

よく「失敗から学ぶ」という言葉を聞きますが、「成功から学ぶ」ことも同じように重要です。また、「過去の成功体験を忘れろ」もよく聞く言葉ですが、忘れる前にすることがあります。それは、その成功をしっかりと分析することです。

世の中には「高い確率で成功できる人」がいます。こうした人は「成功の理由をとことん追究して次に生かしている」のです。失敗したときに「なぜ、失敗したのか」を分析するのと同じように、成功した次にやるべきことは、「なぜ、成功したのか」を分析し、理由を追究することです。成功を「あのときはラッキーだった」で終わらせてしまっては次の成功につながりません。成功に至った理由を追究して自分の頭と体に叩き込み、それを自分の「成功法則」にすることができれば、次も成功に導けるかもしれません。

自分の「成功法則」を整理するために、今日から二つのことを実践してください。

一つは、上司、同僚、家族、友人など身の回りの人に自分の成功体験を話してください。そうすることで、「あのとき、自分はこう思っていた」「相手の気持ちをこうして察した」など、成功した理由が客観的な言葉になって整理されてきます。

中には後付け的に出てくる理由もあるでしょうが、問題ではありません。それは、自分の成功を自分自身が分析した結果だからです。また、皆さんの話を聞いた上司や同僚などがいろいろと質問してくるでしょう。それに答えていくことによって、自分では気づかなかった新しい視点も生まれます。そして、このときに、話し相手の成功体験を聞くようにしましょう。人の成功体験は思った以上に刺激になります。

もう一つは、成功体験を「原因と結果」で整理して一冊のノートにまとめることです。この「私の成功ノート」には、成功の秘訣が文字で記されます。文字にすることで、成功がより具体化します。

経営の神様といわれた松下幸之助氏は「成功している会社はなぜ成功しているか。成功するようにやっているからだ。失敗している会社はなぜ失敗しているか。失敗するようにやっているからだ」といいました。

皆さんが成功するためには、これまで成功した理由を知り、そこから成功の法則を見つけ出し、その法則通りにやるより方法はありません。

最後に、成功するためにはチャレンジし続ける勇気を持つことも忘れてはなりません。大きな成功をした後ほど、「次は前ほどうまくいかないかもしれない」と気持ちが後ろ向きになりがちです。しかし、人生にもビジネスにも、かならず次のチャレンジが到来します。当たり前のことですが、チャレンジがなければ成功もありません。成功と失敗を多く経験し、その都度、理由を追究して自分のものにしていくことでしか、自分の「成功法則」を完成させることはできません。

以上(2022年8月)

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画像:Mariko Mitsuda

【マーケティング】いまさら聞けないプロモーション戦略のポイント

書いてあること

  • 主な読者:「マーケティング」を意識できる組織を作りたい経営者
  • 課題:マーケティングの概念は幅広く、どこから学べばよいのか分からない
  • 解決策:マーケティングの基本として「マーケティング・ミックス」を学ぶ

1 プロモーション戦略の検討

プロモーションは、自社製品の販売を促進するための取り組みです。企業が行うべきことは多岐にわたりますが、この記事では、

  • 標的市場とプロモーション戦略の目的の決定
  • プロモーション・ミックスの取り組み方

という大切な2点を中心に紹介します。

2 標的市場とプロモーション戦略の目的の決定

プロモーションを実施する「標的市場」の設定は、事業ドメイン(企業が事業を展開する領域)を検討したり、新製品を開発したりする際などに行う「ターゲット顧客の設定」と同様の考え方で取り組むことができます。

注意すべきは、「プロモーション戦略の目的」です。プロモーションの目的は、消費者に自社製品を購入してもらい、売り上げを拡大させることです。すると、プロモーション戦略の目的が、とにかく「売り上げ増加」ということになりがちです。

しかし、消費者は「製品に対するニーズを感じたら、すぐに製品を購入する」といったように単純ではありません。例えば、自動車などの高額製品や、消費者の関与度(こだわり度)の高い製品は、次のプロセスを経て製品の購入に至るといわれています。

  • 認知段階:製品に関する情報収集などを通じて「製品について知る段階」
  • 情動段階:収集した情報などを基に「製品を評価する段階」
  • 行動段階:評価した結果を基に「実際に製品を購入する段階」

認知段階では、製品の名称や特長などを消費者に知ってもらうことが大切です。情動段階では、自社製品が消費者のニーズを十分満たすものであることをアピールし、自社製品に対して好意を抱いてもらい、良い製品であると認識してもらうことが大切です。

そして、行動段階では、自社製品に対して好意を抱いている消費者の購買行動を促すことが大切です。逆に「値引き」などのセールスプロモーションは、「行動段階」においては効果があり、「認知段階」での効果は薄いといわれています。

ただし、消費者の購買プロセスは一様ではありません。関与度(こだわり度)の高い製品は上記のプロセスを経る場合が多いのですが、日用品など関与度が低い製品は、知っている製品を購入し、その使用経験から評価するというプロセスを経ることがあります。つまり、「認知段階→行動段階→情動段階」というプロセスです。

プロモーション戦略の目的を設定する際は、その製品カテゴリーにおける消費者の購買プロセスの特徴や、自社製品に対する消費者の認知度などを勘案した上で検討する必要があります。

3 広告

1)訴求内容に基づく広告の分類1:製品広告と制度(企業)広告

製品広告は特定の製品について行われる広告で、私たちが多く目にするものです。一方、制度(企業)広告とは、製品そのものを売るためではなく、企業の姿勢、考え方などを広告し、それによって人々に好意や好感を持ってもらい、親密度や信頼度を高めようとするものです。自社のイメージ向上などを目的に行われるケースが一般的です。

2)訴求内容に基づく広告の分類2:情報提供型広告と説得型広告

革新的な製品については、最初に、その製品が消費者にもたらすメリットや製品の使用方法などを消費者に理解してもらう必要があります。こうした内容を中心に訴求している広告を情報提供型広告といいます。一方、説得型広告とは、自社製品の特長などを訴求し、多くの競合する製品の中から自社製品を選択してもらうために行うものです。

3)訴求内容に基づく広告の分類3:その他の広告

その他の広告には、比較広告とリマインダー広告があります。比較広告は、競合他社の製品と自社製品を比較したり、自社の旧製品と新製品を比較したりするなどして、自社製品あるいは新製品が優れていることを訴求するものです。リマインダー広告は、既に構築されているブランドや、消費者の間に浸透している認知度を維持するためのものです。

4 パブリシティー

パブリシティーとは、広報活動のことをいい、新聞・雑誌の記事やテレビの特集コーナーなどを通じて、自社の情報をマスメディアに取り上げてもらうよう働き掛ける取り組みです。

第三者による客観的な視点から評価された情報であるパブリシティーは、信頼性の高い情報として消費者に認識されます。企業はパブリシティーを通じて自社の情報を発信したいところですが、取り上げる情報を決定する権限はメディア側にあります。

従って、パブリシティーを活用するためには、情報の発信者であるメディアに注目してもらわなければなりません。そのためには、「メディアが注目しそうな情報を積極的に発信する」ことが大切です。

発信する情報には、新製品情報の他に、ボランティア活動などの社会貢献活動、経営者など社内人材に関する情報(執筆した出版物)などがあります。展示会や期間限定のイベントなどを行い、メディアが注目する話題づくりに取り組むことも有効です。

5 人的販売

人的販売とは、販売員が消費者と直接コミュニケーションを図りながら製品を販売することです。人的販売を行う販売員の役割は、「オーダーゲッター」「オーダーテイカー」「ミッショナリー」の3つに大別できます。

オーダーゲッターは新規顧客の開拓が役割、オーダーテイカーは既存取引先との関係性の維持が役割、ミッショナリーは受注の獲得ではなく、消費者との良好な関係構築や、消費者が必要としている情報の提供などが主な役割です。

営業部門の施策をこうした視点で見直すと、取り組みが不十分な点が分かることがあります。例えば、「新規顧客の獲得1件につき○円支給」といったように、オーダーゲッターに対してはインセンティブ制度を設けている企業は多いものの、その他の役割には、こうした施策を検討していない企業もあります。これでは不満が出てしまうでしょう。

6 セールスプロモーション

セールスプロモーションは、広告、パブリシティー、人的販売以外の手法で、消費者や流通業者などの需要を刺激する全ての取り組みのことをいいます。消費者に直接働き掛ける「消費者プロモーション」と、製造業者などが小売店などの取引先企業に対して働き掛ける「企業間プロモーション」があります。

消費者プロモーションには、試供品の提供、クーポンの配布、景品のプレゼント、陳列POPによるアピールなどがあります。企業間プロモーションには、アローワンス(小売業者などが自社の意図に従って行動してくれたときに金銭を還元するプロモーション。「陳列アローワンス」など)、優遇条件による特別出荷、販売奨励策などがあります。

7 プロモーション・ミックスの取り組み方

1)プロモーション・ミックスの検討事項

プロモーションの手法は多岐にわたり、効果もさまざまです。一般的に企業がプロモーションを行う場合、自社の目的に合ったプロモーション手法を選択し、複数の手法を組み合わせて(プロモーション・ミックス)取り組んでいくことになります。

自社の目的に合ったプロモーション手法を検討する際には、「製品のタイプ」「プロモーション戦略の基本方針(「プッシュ戦略」と「プル戦略」)」「消費者の購買プロセス」「製品ライフサイクルの段階」の4つの視点から考えることが基本です。

2)製品のタイプ

生産財のプロモーションは「人的販売」「セールスプロモーション」「広告」「パブリシティー」の順、消費財のプロモーションは「広告」「セールスプロモーション」「人的販売」「パブリシティー」の順に効果が高いといわれています。

3)プロモーション戦略の基本方針(「プッシュ戦略」と「プル戦略」)

プッシュ戦略は、製造業者が小売業者などに対して、自社製品を積極的に販売してもらう戦略です。人的販売や企業間プロモーションが重要になります。

一方、プル戦略は、消費者に自社製品の魅力を直接訴求することで、購買意欲を喚起して、「自社製品の指名買い」を促す戦略です。広告や消費者プロモーションが重要になります。

4)消費者の購買プロセス

「認知段階」「情動段階」「行動段階」に応じて、効果の高いプロモーション手法は異なります。「認知段階」では、多くの情報を提供できる広告や、「第三者の信頼できる情報」であるパブリシティーの効果が高いといわれています。

そして、製品に対する認知が深まると、消費者は詳細な情報を求めるようになるため、対話を通じて必要な情報を得ることができる人的販売の効果が高くなります。製品の評価を行う「情動段階」でも、同様に人的販売の効果が高くなります。

実際に製品を購入する「行動段階」では、値引きなど製品の購入を促す効果の高いセールスプロモーションが有効です。また、購入するか否か迷っている消費者に、「最後の一押し」を行う存在として人的販売の効果が高いといわれています。

5)製品ライフサイクルの段階

製品には、新規に開発されて市場に登場する「導入期」から「成長期」「成熟期」を経て「衰退期」を迎えて市場から消えていく、製品ライフサイクル(Product Life Cycle、以下「PLC」)という考え方があります。

「導入期」は製品に対する十分な知識がない消費者の多い段階です。製品のもたらすメリットや製品の使用方法などさまざまな情報を伝えたり、製品自体の認知度を向上させたりすることのできる広告やパブリシティーの効果が高くなります。

「成長期」は企業間競争が比較的穏やかな段階です。製品の認知度が高まっていることもあり、プロモーションの規模を縮小することができます。

「成熟期」は企業間競争の激しくなる段階です。消費者の購買行動を促すセールスプロモーションの効果が高くなります。また、多くの競合製品の中から自社製品を購入してもらうために、消費者に自社製品を強く印象付ける広告も重要です。

「衰退期」は市場が縮小している段階です。消費者から見ると、機能面など製品自体の持つ魅力(メリット)などは小さくなっています。そのため、値引きなどのセールスプロモーションの効果が大きくなります。

以上(2022年8月)

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【マーケティング】いまさら聞けない価格戦略のポイント

書いてあること

  • 主な読者:「マーケティング」を意識できる組織を作りたい経営者
  • 課題:マーケティングの概念は幅広く、どこから学べばよいのか分からない
  • 解決策:マーケティングの基本として「マーケティング・ミックス」を学ぶ

1 価格戦略の検討

価格戦略は、自社の売上高や利益を最大化するためのものです。大切なのは、

  • 企業の視点:コスト構造、適正利益など
  • 顧客の視点:顧客の購買力など
  • 競合他社の視点:価格水準など

のバランスを取ることです。

仮に、企業の視点が欠如していると、製品は売れても利益を確保できません。また、顧客や競合他社の情報は収集するのが難しい場合もあるので、必要に応じて外部機関に市場調査を依頼することも検討しましょう。

「いくらで販売するか?」というのは、とても難しい判断です。前述した3つの視点を考慮しながら、強気(高く販売したい)でいくか、弱気(安く販売したい)でいくかを決定する必要があるからです。この記事では、価格戦略のポイントを紹介していきます。

2 需要の価格弾力性

価格を検討する際、「需要の価格弾力性」に注目します。企業の売上高は「売上高=価格(製品単価)×販売量」と考えることができます。一般的に、価格を安く設定すると販売量は増加し、価格を高く設定すると販売量は減少します。

しかし、価格の変化によって販売量が変化する割合は製品によって異なります。この割合を「需要の価格弾力性」といい、次の式で表すことができます。また、需要の価格弾力性は、現在の価格の妥当性など、重要な視点を与えてくれます。

需要の価格弾力性=需要の変化率÷価格の変化率

需要の価格弾力性の絶対値が1よりも大きければ、「需要の価格弾力性が大きい」ということになります。この場合、価格を下げるとそれ以上の割合で販売量が増加するため、値下げすることで売り上げ増加の期待が高まります。

一方、需要の価格弾力性の絶対値が1よりも小さければ、「需要の価格弾力性が小さい」ということになります。この場合、価格を上げてもそれ以上の割合で販売量が減少しないことから、値上げすることで売り上げ増加の期待が高まります。

3 複数の製品の関連性を考慮

1)バンドリング

バンドリングとは、複数の製品をセットにして、それら個々の価格の合計金額と異なる価格で販売する方法で、「セットによる割引販売」が一般的です。ただし、例えば、希少価値の高いシリーズの書籍を、全巻セットで割高で販売するケースもあります。

バンドリングでは、関連性の高い製品をセットにすることが基本です。洋服であれば、夏物のTシャツと短パンがセットになります。つまり、相乗効果が期待できる製品でなければ、あまり意味がないということです。

2)ロスリーダー

一部の製品を非常に安く設定して“目玉”とし、集客を狙うことがあります。こうした“目玉”をロスリーダーといい、この手法は小売業で頻繁に用いられています。スーパーマーケットで「本日の特売品」と売り出されるのが典型例です。

ロスリーダー単体の収益率は非常に低く、時には赤字になります。しかし、消費者がロスリーダー以外の製品も併せて購入することで、全体としては企業の収益が向上します。そのため、ロスリーダー以外の製品の購入を促進することが重要になります。

4 時間軸を考慮

1)繁忙期・閑散期を考慮した価格戦略

消費者の需要が特定の時間・曜日・月などに変化することがあります。例えば、観光地にあるホテルの需要は週末や夏休み・冬休みの時期に集中します。しかし、ホテルの部屋数には限りがあるため、それを超えた需要には対応できません。

このようなケースでは、繁忙期には価格を高く、閑散期には価格を低く設定する「繁忙期の収益を拡大させるとともに、繁忙期の需要を閑散期に誘導する(需要の平準化)」ことで、収益の拡大を図る場合があります。

2)製品ライフサイクルを考慮した価格戦略

製品には、新規に開発されて市場に登場する「導入期」から「成長期」「成熟期」を経て「衰退期」を迎えて市場から消えていく、製品ライフサイクル(Product Life Cycle、以下「PLC」)という考え方があります。

「導入期」は競合他社が少ないので、高めの価格を設定できます。「成長期」は参入企業が増えるので、価格は低くなります。「成熟期」は市場の成長が鈍化して競争が一層激しくなるので、価格は最も低くなります。「衰退期」は生産量の減少などによるコスト上昇や競合他社の撤退などがあるので、成熟期よりも価格は高くなりがちです。

この考え方は一般論であり、実際の価格水準の推移は、個々の製品や業界動向などによって異なります。しかし、業界内における価格水準の推移を予測する上で、PLCを意識することは大切です。

5 購入量などを考慮

製品の購入量や利用回数に応じて価格を変える戦略です。例えば、大量購買による割引が代表的な例です。また、顧客を購入金額や来店頻度で区分し、優良顧客に特別な価格で販売するフリークエント・ショッパーズ・プログラム(FSP)も一例です。

この戦略は、「まとまった量を販売することで、原料・輸送などのコストが削減できる」「購入量・利用回数などに応じて価格を割り引くことで、自社製品を継続的に購入させるインセンティブを提供できる(優良顧客を囲い込むことができる)」といった場合に有効です。

6 消費者の心理を考慮

1)端数価格

「Tシャツ1枚1980円」など、小売・サービス業などの店頭には「8」や「9」の付いた価格の製品が多く並んでいます。こうした価格を端数価格といいます。金額的には20円しか違わないTシャツでも、1980円と2000円では印象が全く異なります。

多くの消費者は、1980円のTシャツに対して「1000円台の安い価格である」という印象を持つものです。また、「1」や「2」といった数字ではなく、「8」や「9」という点も重要なポイントです。

「8」や「9」が付いた価格に対して、消費者は「最大限に値引きされたお買い得な製品」という印象を抱く傾向があるようです。端数価格を付けると需要の価格弾力性は大きくなり、特に食品や日用雑貨などの最寄り品に有効とされています。

2)威光価格(名声価格)

購入頻度が低い宝飾品などの場合、消費者は、製品の品質を適切に判断できないことがあります。サービスについても、初めて利用するときは、事前にその品質を判断することができません。

こうした場合、消費者は「高価格=高品質」「低価格=低品質」として、価格を重要な品質の判断基準とします。このような傾向を鑑みて、「高品質」を訴求するために、あえて高い価格を設定するのが威光価格(名声価格)です。

3)慣習価格

業界内の価格が統一的であったり、1つの製品を長期間にわたって同一価格で販売していたりすると、消費者の心の中に「この製品の価格は○○円である」というように、固定観念が形成される場合があります。こうした価格を慣習価格といいます。

慣習価格に対して、わずかでも高い価格を設定すると、消費者は「この製品は高い」と感じるため、需要は激減してしまいます。また、製品によりますが、慣習価格よりも低い価格を設定しても、それほど需要量は増加しない傾向があるようです。

7 過度な価格競争を避ける

競合他社が多い業界では、価格競争が起こりがちです。価格競争が過熱し、どの企業も引くに引けない状況に陥ってしまうと、勝った企業ですら疲弊してしまう「勝者なき戦い」に至ります。

これを避けるためには、価格以外の面で差異化を図り、競争の軸足を他に移さなければなりません。方策としては、「製品の機能やデザインによる差異化」「付随サービスによる差異化」「製品や企業のブランド力向上による差異化」などがあります。

ただし、差異化が図れるようになるまでには時間がかかります。そこで、過度の価格競争を回避するための即効性のある方法の1つとして、「過度の価格競争を行わない」というシグナルを市場に発信することが重要になります。

例えば、相手が値下げを行っても、対抗的な値下げをしないというのも一策となるでしょう。また、「自店の価格が他店より高ければ、他店の価格より安くします」といったメッセージも有効です。

これは一見、「値引きには、更なる値引きで応じる」という徹底抗戦に感じます。しかし、一方で「価格で競争しても無意味ですから、お互い過度な価格競争はやめましょう(できれば、同程度の価格で販売しましょう)」という意味も含んでいるのです。

こうしたメッセージは、顧客に対しては「常に最安値で製品を提供します」という自社の姿勢を明確にする一方で、競合他社との過度な価格競争を抑制する役割を果たすという点で効果的です。

以上(2022年8月)

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【朝礼】計画と準備があなたの人生を充実させる

夏の時期は、夜になっても暗くなる時間が遅く、午後6時はまだ夕方という感覚です。逆に、冬になると午後5時過ぎにはすっかり暗くなり、夜になるのは早いものだなと思います。

こんな具合に、1日の長さの感じ方というのは季節ごとに変わるものですが、実際には1日の時間は24時間であり、これは1年を通して変わることはありません。

この1日の時間、24時間というのは、誰にとっても同じです。決して、人によって長くなったり短くなったりすることはありません。つまり、時間はすべての人に平等に与えられているということなのです。そして、仕事を進める上でも、皆さん自身が何かを勉強するときでも、この限られた時間をどのように使うかが、何よりも大切なことなのです。

時間を上手に使うための方法として皆さんに心がけていただきたいのが、「計画」と「準備」を怠らないということです。

考えてみてください。皆さんが、家族や友人と旅行やレジャーに出かけるときは、入念に下調べをして、計画を立てませんか? 行き当たりばったりの旅が楽しいという方もいるかも知れませんが、限られた時間の中で最大限に旅行やレジャーを楽しむならば、事前に宿や交通機関、旅行先のお店などの情報を集めた方が、確実に効率がよいはずです。

このことを、仕事に置き換えて考えてみましょう。皆さんは毎日、行き当たりばったりで仕事をしていますか? きっと、そんなことはないと思います。

突発的な仕事が入ることはあったとしても、基本的には、仕事のスケジュールというのはある程度決まっているはずです。では、その仕事を効率的にこなすためには何が必要なのか。それが、「計画」と「準備」なのです。

今週は何の仕事をしなければならないのか、優先順位はなんなのか、それを常に考えてください。そして、できるだけムダのない方法や手順で仕事を進める計画を立ててください。そして、計画を立てたら、仕事を効率的に進めるための準備からとりかかってください。

例えば、営業提案書を作成している途中で資料が不足していることがわかって、慌てて集めに走る。あるいは、製造の途中で部品が足りなくなってしまう。これは、明らかに計画と準備の不足が生んだムダであり、あらかじめ避けることができる性質のものです。

こうしたムダがなくなれば、仕事の効率は上がり、時間をもっと有効に使うことができます。そしてそれは、皆さん自身のプライベートの時間が増えるということでもあります。

私は、皆さんには仕事を頑張っていただくのと同じくらい、個人的な勉強や私生活も充実させていただきたいと考えています。そのためにも、計画と準備を意識して、ムダのない仕事、ムダのない時間の使い方をしていただきたいと思います。

以上(2022年8月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】“良く”見せるか、“リアル”を見せるか

少し気が早いですが、来年の大河ドラマ「どうする家康」が6月よりクランクインとなったそうです。主人公は皆さんもご存じの徳川家康。織田信長、豊臣秀吉の跡を継いで、戦国の世の最終勝利者となり、約260年続く江戸時代の礎を築いた人物です。ところでこの家康、「どうする家康」の前にも過去2回、大河ドラマの主人公になったことがあります。1983年の「徳川家康」と、2000年の「葵(あおい)徳川三代」です。どちらも名作ですが、面白いのは家康という同じ人物を扱っていながら、そのキャラクター像が大きく異なるという点です。

1983年の「徳川家康」では、戦国の世を終わらせて天下泰平を成し遂げようとする求道者のような人物として描かれました。家康の生涯最後の戦いとなった「大坂冬の陣・夏の陣」でも、敵方である豊臣秀頼の命を助けようとするなど、慈悲深くヒロイックな面が強調されていました。従来のたぬきおやじのイメージを脱却した“良い”家康像は、当時としては斬新で話題になりました。

一方、2000年の「葵徳川三代」では、戦国の世を長年生き抜いてきた老獪(ろうかい)な戦略家として描かれ、徳川家の天下を盤石にするためには手段を選ばない非情な一面が強調されました。大河ドラマでは視聴者の共感を得るため、主人公の暗い側面は控えめに描写されることが多いのですが、この作品ではあえてそれらを前面に押し出した“リアル”な家康像が評判になりました。

私は、このキャラクター像の違いは、家康という人物をどの側面から描くかというところからきていると思っています。家康を約260年間の平和をもたらした人物という側面から掘り下げるなら、「徳川家康」のような描き方になるでしょうし、豊臣家から天下を奪った人物という側面から掘り下げるなら、「葵徳川三代」のような描き方になるのでしょう。

ビジネスでも同じようなことがいえます。私たちは当社の商品・サービスに誇りを持っていますが、もちろん商品・サービスは完全無欠というわけではなく、長所もあれば短所もあります。問題は、例えばお客さまや取引先と、商品・サービスについて話をする場合、どの側面を強調するかです。

恐らく皆さんの多くは、商品・サービスの話をする場合、いかに長所を強調するか、つまり“良く”見せるかが大事と考えているでしょう。もちろん、そういうケースも多いですが、お客さまや取引先の中には、長所ばかりを強調されると、うさん臭く感じて警戒する人もいます。そうした場合、あえて腹を割って短所についても話をする、つまり“リアル”を見せた上で、商品・サービスを利用するメリットをお伝えしたほうが、相手の信頼が得られることがあります。どの商品・サービスをお薦めするかだけでなく、その説明の仕方についても、お客さまや取引先が何を望んでいるかを考えながら対応してください。

以上(2022年8月)

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画像:Mariko Mitsuda