「出張手当」で一石三鳥! 税・社保・事務コストを削減

1 複雑な手続きなしで税金対策・手取り増・事務効率化

「出張は必要経費だから、特に見直す余地はない」 ――そう考えている経営者も多く、実際、出張の際には、交通費や宿泊費などの経費を処理するだけで終わっている会社も少なくありません。

ここで、見直すべきは経費そのものではなく、「出張手当(出張時に定額で支給する日当)」の設計です。出張手当を適切に制度化することで、

  • 会社の税負担の軽減などができる
  • 従業員や経営者の実質的な手取りが増やせる
  • 社内の事務効率が向上する

といったメリットがあるからです(詳細は後述)。

原材料費や人件費、社会保険料の上昇が続く昨今、こうした対策はますます重要になってきます。「税金対策」というと何だか難しく聞こえるかもしれませんが、法律で認められている仕組みを正しく整備して使うだけなので、過度なリスクを取る必要も、複雑な手続きに追われる必要もありません。

すでに出張手当を支給している会社であっても、昨今の物価上昇を踏まえ、現在の金額が実情に合っているかを見直すことは重要です。食事代などの相場が上がっているにもかかわらず、何年も金額を据え置いている会社も少なくありません。ですが、適正な範囲内で現実に即した水準に都度調整するようにしないと、制度の合理性が保たれなくなってしまいます。

出張手当は単なる税金対策にとどまりません。会社として「費用をどう管理し、どのように還元するか」という方針を明確にする、経営の仕組みを整える意味合いもあります。

この記事では、出張手当がもたらすメリットや経営上の仕組みとして活用する方法と、税務調査で否認されないための実務上のポイントを解説します。

2 出張手当がもたらす3つのメリット

1)会社の税負担の軽減などができる

出張手当を適切に制度化した場合、税負担の軽減などが可能になります。もう少し詳しく言うと、次のような効果が得られます。

1.法人税の負担を抑えられる

出張旅費規程(出張時の費用や手当のルール)に基づいて支給した出張手当は、会社の費用として計上できます。その結果、税金を計算する基になる所得(税務上の利益)が少なくなり、法人税、事業税や住民税などの負担も軽くなります。

2.消費税の計算上、税額控除が受けられる

国内出張における旅費や出張手当は、消費税法の計算上「課税仕入れ」として扱われるため、会社は仕入税額控除 (支払った消費税を課税計算の中で控除できる仕組み)の適用を受けられます。これは、同じ金額を給与として支給した場合には得られない特徴です。なお、海外出張の場合は取り扱いが異なります。消費税は国内での取引に対してかかる税金のため、海外での宿泊費や海外出張に係る出張手当などは、原則として仕入税額控除の対象にはなりません。

3.社会保険料(健康保険や厚生年金など)の負担を増やさずに済む

出張手当は給与とは取り扱いが異なるため、社会保険料を計算する際の基準額に含まれません。つまり、会社は社会保険料の会社負担分(法定福利費)を増やさずに、従業員や役員に実質的な還元することができます。

2)従業員や経営者の実質的な手取りが増やせる

従業員にとっても、経営者にとっても、出張手当は給与ではなく、出張中にかかる食事代や雑費を補うために支給されるお金です。そのため、一般的に妥当な範囲(詳細は後述)であれば、所得税や住民税がかからない非課税の扱いになります。

この違いは、特に役員報酬などで高い税率が適用される経営者にとって大きな意味を持ちます。同じ金額を報酬として受け取る場合と比べ、出張手当として支給されるほうが、実質的な手取りが増えることになります。

3)社内の事務効率が向上する

実務面で特に大きな効果が表れるのが、領収書を処理する負担の軽減です。出張手当は、あらかじめ規程で決めた金額を定額で支給する仕組みなので、実際に使った金額を都度精算するのに比べると、事務作業が非常に簡略化されます。

ただし、出張手当を導入したからといって、全ての出張費用が定額になるわけではありません。一般的には、

  • 飛行機や新幹線などの交通費や宿泊費のように金額が大きく変動しやすいものは、領収書に基づいて実費で精算する
  • 食事代などの細かな支出は出張手当でまとめて補う

という使い分けが、実務では広く行われています。

このように役割を整理して運用すると、出張者は細かな支出を気にしすぎることなく本来の業務に集中でき、経理担当者も領収書の確認や処理にかかる手間を大幅に減らすことが可能になります。

3 出張手当はいくらまで認められるのか

経営者が最も気になるのは、「いくらまで認められるのか」という上限の問題でしょう。結論から言うと、税法上「何円まで」という明確な基準はありません。ただし、

「食事代などの補てんとして支給している」と合理的に説明できる水準であるか

は見られます。税務署が確認する主なポイントは、大きく2つあります。

1)社内でバランスが取れた運用をしているか

役職ごとの責任や職務内容に応じた差があること自体は問題ありませんが、経営者だけが極端に高額といった不自然な設定は、実質的な給与とみなされるリスクが高くなります。

2)同業種・同規模の会社と比べて妥当な水準か

いわゆる「世間の相場」から大きく外れていないかが見られます。実務上の目安(1日当たり)としては、

  • 一般社員:2000~3000円程度
  • 管理職:3000~4000円程度
  • 役員:5000~1万円程度

が一般的な相場です。もちろん、会社の規模や出張の頻度によって適正額は異なります。上記以上の金額を設定する際には、その理由を客観的に説明できるようにしておきましょう。

4 出張手当支給を適正に行うための事前準備

出張手当が会社の経費として認められるためには、まず、

出張旅費規程を整備する

ことが前提となります。規程がないまま出張手当を支給すると、税務上は単なる給与と判断される恐れがあります。

出張旅費規程には、

  • どのようなケースを出張として扱うかという基準 (移動距離や宿泊の有無など)
  • 役職ごとの支給額、申請や報告の方法

など、運用ルールを明確に記載しておく必要があります。こうした内容が曖昧だと、制度としての客観性が弱くなり、税務調査の際に説明が難しくなります。

さらに、出張旅費に関する定めは、就業規則の相対的必要記載事項(定めをする場合、必ず記載しなければならない事項)に該当するので、

常時10人以上の従業員を雇用している会社が、出張旅費規程を整備・変更する場合、就業規則の一部として、所轄労働基準監督署に届け出る

必要があります。なお、出張旅費規程(就業規則)は、全従業員が規程の内容をいつでも閲覧できる状態にして周知しなければなりません。周知されていない規程は、万が一の労務トラブルの際に法的効力を否定される恐れがあるため、作成後は必ず社内共有を徹底しましょう。

また、役員に出張手当を支給する場合は、株主総会で承認を受け、議事録(会議内容を記録した書類)を残しておくと、後の税務調査で正当な手続きであることを説明しやすくなります。

5 出張手当の運用上の注意点

1)出張報告書の作成

制度が整っていても、税務調査で最も重視されるのは実際の運用です。規程通りに運用されていることを示すためには、出張報告書の作成が欠かせません。

領収書が不要となる出張手当の部分であっても、

  • 訪問先
  • 業務目的
  • 訪問内容

などを記録し、出張が業務として行われた事実を示す必要があります。さらに、交通機関の控えや宿泊証明、名刺やメール履歴などの資料も併せて保管しておくと、実態を裏付ける証拠として有効です。これらの書類は、税務上原則7年間(欠損金がある年度は10年間)の保存が求められます。

2)社会保険料リスクの回避

出張手当は、本来、出張中にかかる費用を補うために支給されるお金である(給与ではない)ため、社会保険料を計算する際の基準額には含まれません。ただし、

  • 実態が伴わない支給(出張していないのに毎月定額を払うなど)をしている
  • 一般的な支給額と比べて、あまりに高すぎる額を支給している

といった場合、年金事務所の調査等で実質的には給与とみなされ、過去に遡って社会保険料の徴収を求められるリスクがあります。あくまで「出張に必要な実費の補填」という大原則を逸脱しない運用が重要です。

以上(2026年4月作成)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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画像:日本情報マート

【規程・文例集】「出張旅費規程」のひな型

1 出張旅費規程とは

業務を進める上で、顧客との商談や支社などでの会議や打ち合わせ、研修などで出張する場合があります。出張旅費規程は出張に関わる旅費(交通費・宿泊を伴う出張の宿泊費・日当)の支給などについて定めるものです。支給する旅費の額などは企業によって異なりますが、職位ごとに支給する旅費の額を定めておくのが一般的です。

出張旅費規程を定める際のポイントとしては、主に次の2点が挙げられます。

  • 支給する旅費の額は、実際の交通機関の料金や宿泊料金の相場などを考慮した上で、分かりやすく一覧表にして明示する
  • 旅費の支給に関するルールを明示する

上記のうち、2.については、例えば「交通費は最短の経路で計算すること」「ハイヤーなどは会社が必要と認めた場合にのみ利用できること」「出張から帰ったら旅費の精算をするための手続きを行うこと」などが挙げられます。

また、人事異動で従業員やその家族が新任地に向かうための引っ越し費用(交通費や家財道具の荷造り、運送に関わる費用など)について、出張旅費規程で定める場合があります。例えば、「会社が引っ越しに関わる費用をどこまで負担するか」などは定めておいたほうがよい項目です。ピアノなど、いわゆるぜいたく品などは運送費が高額になるため、企業と従業員とでトラブルになりやすいといわれるからです。以降で紹介する出張旅費規程では省略していますが、「ピアノについては1台分までは会社が負担する」「高額な骨董(こっとう)品は本人負担とする」などのように、別途内規を設けて詳細に定めておいたほうがよいでしょう。

この他、企業によっては国内だけではなく、海外へ出張する場合があります。以降で紹介する出張旅費規程のひな型では紹介していませんが、業務内容によっては、海外出張についても定めておく必要があります。

2 出張旅費規程のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【出張旅費規程のひな型】

第1条(目的)
本規程は、役員および従業員(以下「従業員等」)が会社の業務のために出張する場合の手続きおよびその旅費、並びに転勤のために居住地を変更する場合の交通費等の支給について定める。

第2条(出張の定義)
本規程で定める出張とは、会社の出張命令による国内出張をいう。

第3条(出張の区分)
1)出張の区分は次の通りとする。

1.日帰り出張
 出張する従業員等(以下「出張者」)の勤務地より片道150キロメートル以上かつ片道2時間以上の地域で出発の当日帰着できる出張。

2.宿泊出張
 通常、宿泊を必要とする地域への出張として会社が認めた地域への出張。

2)日帰り出張であっても、業務の都合上または交通不便等のため日帰りが困難な場合は宿泊出張として取り扱うことがある。

第4条(旅費の種類)
本規程で定める旅費の種類は次の通りとする。

1.交通費
2.宿泊費
3.日当

第5条(出張中の傷病・災難)
出張中の傷病(ただし業務外を除く)のため、または不慮の災難等によりやむを得ず出張した地域へ滞在したときは、医師の診断書、または事実の証明のある場合に限り、原則として7日以内において別表第1「旅費」(以下「別表第1」)に定める日当および宿泊費を支給する。

第6条(出張中の勤務)
出張中の勤務に関しては、特別の事情がある場合を除いて就業規則に定める所定労働時間を勤務し、休日に休務したものとみなす。ただし、業務の都合によりやむを得ず出発の日が休日となる場合または出張期間内に休日がある場合の旅費の取り扱いは次の通りとする。

1.宿泊費
 休日の宿泊費は別表第1に定める宿泊費を支給する。

2.日当
 休日勤務の場合の日当は別表第1に定める日当を支給する。
 移動のみの場合の日当は別表第1に定める日当の50%を支給する。
 完全休日の場合の日当は支給しない。

第7条(旅費の計算)
旅費の計算は最短の経路または時間によらなければならない。ただし、天災その他やむを得ない事由で順路を変更した場合は、実際の経路により旅費を計算し支給する。

第8条(タクシー、ハイヤー、レンタカー、航空機等の利用)
タクシー、ハイヤー、レンタカー、航空機等は緊急または特別の必要のある場合において所属長の許可を受けて利用できるものとし、航空機については会社が認める航空会社の航空機を利用するものとする。

第9条(交通費)
1)交通費のうち、鉄道運賃、船舶運賃、航空運賃については、別表第1に定める職位に応じた等級の額を支給する。
2)バス運賃についてはその実費を支給する。
3)社有自動車を利用した場合、あるいは他社の自動車に便乗した場合、交通費は支給しない。ただし、燃料費、通行料、駐車料等は実費を支給する。
4)タクシー、ハイヤー、レンタカー、航空機等の利用については第8条に基づいて会社が必要と認めた場合であって、第14条第1項および第2項に定める手続きを行う際に領収書を添付したときには実費を支給する。
5)出張区間と通勤手当の認定区間が重複する場合には、それに該当する区間の交通費は支給しない。ただし、特に会社が必要と認めた場合にはこの限りではない。

第10条(宿泊費)
1)宿泊費は宿泊した夜数(午前0時を過ぎるごとに1夜とする)に応じて別表第1に定める額を上限とする実費を支給する。
2)宿泊研修等で宿泊費込みの受講料を会社が負担している場合は、宿泊費を支給しない。

第11条(日当)
1)日当は出張の初日から最終日まで、暦日により出張日数に応じて別表第1に定める額を支給する。ただし、午後出発の場合および午前帰着の場合には、その日については別表第1に定める日当の50%を支給する。
2)第3条第1項第1号の日帰り出張の場合は、その日について別表第1に定める日当の50%を支給する。

第12条(出張の手続き)
出張者は、出発の前日までに出発の日時、行き先、訪問先および用件について、別途定める「出張承認申請書」(省略)を所属長に提出し、承認を得なければならない。この手続きをしない者に対しては、旅費の支給をしないことがある。

第13条(旅費の仮払い)
出張者は、第12条に定める承認を得た場合には、出発前に別途定める「仮払申請書」(省略)を所属長に提出し、承認を得た上で旅費の仮払いを受けることができる。

第14条(帰社の報告および旅費の精算)
1)出張者が出張先から帰着したときは、3営業日以内に別途定める「旅費請求書」(省略)および「出張報告書」(省略)を所属長に提出し、承認を得た上で旅費の精算をしなければならない。
2)出張先からの帰着が予定より遅延するときは、電話その他によりその旨を所属長に報告しなければならない。
3)第14条第1項および第2項に定める手続きをしない者に対しては、旅費の支給をしないことがある。

第15条(転勤旅費の種類)
本規程で定める転勤旅費の種類は次の通りとする。

1.本人交通費
 会社から転勤を命ぜられ転勤する者(以下「転勤者」)の旧任地から新任地までの交通費。
2.荷造り運送費
 家財道具等の荷造り、運送に要する費用。
3.家族交通費
 転勤者の家族の旧任地から新任地までの交通費。
4.宿泊費
 転勤者及びその家族の新任地における宿泊費。

第16条(転勤者本人の交通費)
転勤者には、第9条に定める交通費を支給する。

第17条(荷造り、運送費等)
赴任および帰任に伴う荷造り、運送などの費用は会社が実費を支給する。

第18条(家族の交通費)
1)転勤者が配偶者、転勤者の父母および子を帯同するときは、帯同する家族1人につき、転勤者本人と同等の交通費の実費を支給する。ただし、子については、12歳未満の者は半額、6歳未満の者には支給しない。
2)転勤者が赴任した後、3カ月を経ても移転しない家族に関する交通費は、原則として支給しない。

第19条(転勤者の宿泊費)
転勤者およびその家族が、新任地に赴任してから新しい住居に入居するまでは、会社が認める宿泊施設に宿泊するものとし、その宿泊費は会社が負担する。

第20条(罰則)
役員および従業員が故意または重大な過失により、本規程に違反した場合、就業規則に照らして処分を決定する。

第21条(改廃)
本規程の改廃は、取締役会において行うものとする。

附則
本規程は、○年○月○日より実施する。

■別表第1「旅費」■

旅費

以上(2026年4月更新)
(監修 税理士 石田和也)

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画像:ESB Professional-shutterstock

【中小企業向け】税理士が厳選! 2026年度に使える主な税制

1 税制改正大綱の内容はいつから実行される?

毎年年末に税制改正大綱が公表されますが、その内容は今すぐに実行されるわけではありません。税制改正大綱の内容を実行するための法令は、年明け1~3月に国会で審議されますし、そもそも税制改正大綱には、

その翌年度の改正だけでなく、翌々年度以降の改正

も含まれているのです。

となると、経営者や実務担当者は、税制改正大綱の内容が、いつから実行されるのかを意識しておく必要があります。そういう意味でいえば、直近の税制改正大綱の内容はどうなのでしょうか。皆さんが注目している税制が、実はまだ先のことだったら困りますよね。

そこで、この記事では、近年話題になっている様々な税制の中から、

中小企業が2026年度に使える税制

について紹介していきます。具体的には、

設備投資、研究開発、賃上げ、寄附

をした、または検討している中小企業の経営者や実務担当者は確認してみてください。

この記事で紹介している設備投資、研究開発、賃上げに関する税制は、中小企業者等を対象としています。中小企業者等とは、

資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人(同一の大規模法人から、発行済株式の総数または出資の総額の2分の1以上を所有されている法人などを除く)など

をいいます。

なお、この記事で紹介している税制の内容は、2026年3月26日時点のもの(令和8年度税制改正大綱で定められた内容については予算審議中のもの)で、将来変更される可能性があります。

2 【設備投資】中小企業投資促進税制

中小企業投資促進税制は、

生産性の向上を目的に、一定の設備投資やソフトウエアを購入した場合に、その投資額の一部を税額控除か、特別償却(通常の減価償却費のかさ増し)のいずれかを選択して適用できる制度

です。ただし、資本金3000万円超の中小企業者等については特別償却しか適用できません。

中小企業投資促進税制の概要

例えば、生産性の向上を目的に200万円の機械装置を購入して税額控除を選択した場合、14万円(=200万円×7%)を法人税額から控除できます(法人税額の20%限度内である場合)。

なお、購入した設備ごとに購入金額や重量などの下限が決められています。また、一部の業種(電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業、映画業を除く娯楽業など)は対象外なので、自社の業種が指定事業に含まれるか確認しましょう。

この税制は、事前の申請などは必要なく、法人税の申告の際に、確定申告書に一定の書類を添付することで適用を受けられます。

1.特別償却の場合

  • 特別償却の償却限度額の計算に関する付表(以下「付表」)
  • 適用額明細書

2.税額控除の場合

  • 中小企業者等が機械等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書
  • 適用額明細書

3 【設備投資】中小企業経営強化税制

中小企業経営強化税制は、

中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づいて、新たな設備投資をした場合に、その投資額の一部を税額控除か、全額を即時償却のいずれかを選択して適用できる制度

です。要件は4つのタイプに分かれており、それぞれに定められた要件を満たす必要があります。なお、C類型は2025年4月1日をもって廃止となっています。

中小企業経営強化税制の概要

例えば、150万円のシステム投資を行って税額控除を選択した場合、15万円(=150万円×10%)を法人税額から控除できます(法人税額の20%限度内である場合)。

なお、中小企業投資促進税制と同様、購入した設備ごとに購入金額の下限が決められているので注意が必要です。一部の業種(電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業、映画業を除く娯楽業など)は対象外なので、自社の業種が指定事業に含まれるか確認しましょう。

また、この税制を受けるためには、事前に経営力向上計画を作成し、国から認定を受けなければなりません。申請準備から認定までおおよそ3カ月はかかるといわれているので、早めの相談が必要です。また、法人税の申告の際に、確定申告書に一定の書類(認定計画の申請書および認定書の写しや別表または付表、適用額明細書)を添付しなければなりません。

4 【設備投資】中小企業防災・減災投資促進税制

中小企業防災・減災投資促進税制は、

中小企業等経営強化法の認定を受けた事業継続力強化計画又は連携事業継続力強化計画に基づいて、企業の防災・減災目的の設備投資をした場合(認定を受けた日以後1年以内に対象設備を取得して、事業用として使用した場合に限る)に、特別償却を適用できる制度

です。

中小企業防災・減災投資促進税制の概要

例えば、150万円の耐震設備を取得した場合、24万円(=150万円×16%)を特別償却として損金に計上できます。

また、この税制は、法人税の申告の際に、確定申告書に一定の書類(付表と適用額明細書)を添付することで、適用を受けられます。

この税制を受けるためには、事前に事業継続力強化計画又は連携事業継続力強化計画を作成し、国から認定を受けなければなりません。申請準備から認定まで、不備がない状態でおおよそ45日はかかるといわれているので、早めの相談が必要です。また、法人税の申告の際に、確定申告書に一定の書類(付表と適用額明細書)を添付しなければなりません。

5 【設備投資】少額減価償却資産

少額の備品などを購入した際、資産計上をすることなく、即時に全額を損金に算入できる少額減価償却資産について、

2026年度より、対象になる取得価額が40万円未満(改正前は30万円未満)に引き上げ

られています。

なお、この特例は、

事業年度終了の日において常時使用する従業員の数が400人以下(改正前は500人以下)の法人が適用対象

になります。

6 【設備投資】固定資産税の特例

固定資産税の特例は、

中小企業等経営強化法の認定を受けた認定先端設備等導入計画に基づいて、新たな設備投資をし、かつ一定率以上の賃上げを表明した場合に、固定資産税の一部が3年間または5年間減免される制度

です。

固定資産税の特例の概要

例えば、機械装置200万円を購入した場合、約14万円(≒200万円×1.4%×1/2。一般要件のみを満たした場合の購入初年度ケースです)の固定資産税の減免を受けられます。

この税制を受けるためには、事前に先端設備等導入計画を作成し、市区町村から認定(東京都特別区の場合は、計画申請・認定は特別区が、課税は東京都が行います)を受けなければなりません。設備投資については、認定後に行うことが必須です。なお、先端設備等導入計画の作成には1カ月程度はかかるといわれているので、早めの相談が必要です。また、償却資産の申告の際に、一定の書類(先端設備等導入計画に係る固定資産税の課税標準の特例適用申請書や認定書の写しなど)を添付しなければなりません。

7 【研究開発】中小企業技術基盤強化税制

中小企業技術基盤強化税制は、

中小企業が行う研究開発(試験研究)について、その試験研究費の一部を税額控除できる制度

です。

中小企業技術基盤強化税制の概要

例えば、3000万円の試験研究費が計上された場合、360万円(3000万円×12%)の税額控除を受けられます。ただし、控除できる金額は原則として法人税額の25%が上限となります。

なお、2026年度の税制改正では、適用期間が3年間延長されるとともに、控除しきれなかった税額を3年間繰り越せる制度(繰越税額控除制度)が追加されました。これにより、

  • 当期が赤字で法人税が発生しない場合
  • 控除額が法人税額25%を上回る場合

であっても、将来の黒字年度で控除を活用できるようになります。ただし、「その年度の試験研究費が比較試験研究費(過去3年間の平均額)を超えていること」という条件がある点には注意が必要です。

この税制は、法人税の申告の際に、確定申告書に一定の書類(別表や適用額明細書)を添付することで、適用を受けられます。

8 【賃上げ】賃上げ促進税制

賃上げ促進税制は、

中小企業者等が、前年度よりも給与などを増やした場合に、その増加額の一部が税額控除できる制度

です。通常要件に加え、上乗せ措置があり、それぞれの要件を満たすごとに、一定の税額控除率が加算されます。昨年度(2025年度)に引き続き制度自体は継続されていますが、

2026年度は教育訓練費に係る税額控除率(10%)の上乗せ措置が廃止

され、最大控除率が35%(昨年度は45%)に縮小しています。

中小企業の賃上げ促進税制の概要

例えば、給与の合計額を前年度から500万円増やした場合、75万円(=500万円×15%)を法人税額から控除できます(通常要件のみを満たした場合のケースです)。

この税制の適用を受けるためには、法人税の申告の際に、確定申告書に、税額控除の対象となる雇用者給与等支給増加額、控除を受ける金額と、その金額の計算に関する明細書を添付する必要があります。

なお、賃上げ促進税制は税額控除であるため、

  • 法人税が発生しない赤字の会社
  • 黒字であっても、納税額が控除額より少ない会社

は要件を満たしても、その年度にメリットの全部または一部を受けられません。そのような会社には、最大5年間, 控除しきれなかった額を繰り越して税額控除を受けられる措置があります。

また、2026年度の税制改正で、

  • 中堅企業(資本金1億円超で、従業員2000人以下)は、2027年3月31日をもって廃止
  • 大企業(中小企業者等、中堅企業以外の企業)は、2026年3月31日をもって廃止

が決まっています。中小企業者等においては、「期限到来時(2027年3月31日)の状況を踏まえて必要な見直しを検討する」という表現にとどめられ、継続か廃止かの明確な判断は来年度以降の税制改正の議論にて行われる見込みです。

9 【寄附】企業版ふるさと納税

企業版ふるさと納税は、

会社が自治体に寄附すると、税負担を軽減することができる制度

です。

軽減効果は、寄附額の最大9割とされており、内訳は、

  • 法人住民税と法人税の税額控除が4割
  • 法人事業税の税額控除が2割
  • 法人税の損金算入で約3割

です。寄附額の下限金額は10万円で、本社が所在する自治体などへの寄附は対象外となっています。寄附を募っている自治体や事業については、内閣府「企業版ふるさと納税ポータルサイト」で確認してみましょう。

■内閣府「企業版ふるさと納税ポータルサイト」■
https://www.chisou.go.jp/tiiki/tiikisaisei/kigyou_furusato.html

企業版ふるさと納税の税負担の軽減効果

なお、企業版ふるさと納税には、個人版と異なり返礼品はありません。そのため、会社の社会貢献活動や自治体とのパートナーシップ構築などを目的に行われています。

この税制を受けるためには、確定申告時に、企業版ふるさと納税の適用がある寄附を行ったことを申告するとともに、受領証の写しを提出(法人税の申告にあっては保管)しなければなりません。

以上(2026年5月作成)
(監修 税理士法人アイ・タックス 税理士 山田誠一朗)

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画像:日本情報マート

ビジネスで差がつく「花の贈り方」~自分を売り込むチャンス!

1 「花」はオフラインメディアである

誰もが知っている大企業勤めならいざしらず、中小企業の場合、社長も一介の営業担当者も、まずは相手に「自分」を覚えてもらうことからビジネスが始まります。正方形の名刺、個性的な服装、つかみのトークなど、これらは全て「個」として自分を覚えてもらうための工夫です。

筆者は以前、1日に何件もアポイントが入る地方銀行系シンクタンクの名物執行役員に、一度で顔と名前を覚えてもらい、何度も連絡を取り合う仲になりました。残念ながら自社のビジネスにはつながりませんでしたが、代わりに多くの人を紹介したり、紹介してもらったりしましたし、通常は知り得ない金融機関の裏話も聞けました。

また、知人が東京の赤坂でカラオケスナックを開店したとき、ほとんど店に行けなかったにも関わらず、とても感謝され「あなたの開店祝いが一番良かった!」と絶賛されたことがあります。

どちらのケースも、私が一体何をしたかというと、

花を贈った。ただそれだけ

です。ポイントは相手のことを考え、ちょっとだけ工夫したことです。さて、ここでクイズです。私がしたちょっとした工夫とは、次の3つのうちどれだと思いますか?

クイズ1.「地方銀行系シンクタンク」向けの工夫は?

  • 自分をアピールするために、10鉢の胡蝶蘭を贈った
  • ストーリー性を持たせるために、自分で新幹線に乗って胡蝶蘭を運んだ
  • あえて「立札(送り主の名前が記された札)」を付けなかった

答えを知りたい人はこちらをクリック(ログイン後)

クイズ2.「赤坂でカラオケスナック」向けの工夫は?

  • サプライズとして、開店時間ぴったりに胡蝶蘭を届けた
  • 空間演出ができるよう、香りの強い花を贈った
  • 小さなプリザーブドフラワーを3基贈った

答えを知りたい人はこちらをクリック(ログイン後)

花は一定期間、空間に飾られて視覚的に強い印象を残しますし、

立札に自社名を記せば「オフラインメディア」のような宣伝効果

が期待できます。4月は開業・開店、異動や昇進などが重なる時期ですから、花を贈って自分を覚えてもらう絶好の機会です!

この記事では、ビジネスで花を贈る際の基本マナーや、一歩進んだ「印象に残る贈り方」を紹介しています。花を贈って新年度の営業に弾みをつけましょう!

花の贈り方

2 【シーン別】花の贈り方の基本マナー

ビジネスで花を贈るシーンを想定し、予算やタイミングなどをまとめます。予算などは相手との関係によりますので、その辺りはうまく調整してください。

(図表)【花の贈り方の基本マナー】

シーン 予算の目安 贈るタイミング 贈る場所 注意点・マナー
開業・開店 1万~5万円 オープン前日~当日朝 店舗・事務所 赤い花やラッピングは「火事」を連想させるため避けたほうが無難。開店時は多忙なので世話がかからない花が理想的
移転祝い 1万~3万円 移転完了後~2週間以内 新事務所・新店舗 先方の片付けが落ち着く大安などの吉日を選ぶのが理想的。あえてタイミングをずらすと印象に残りやすいことも
栄転・昇進 5千~3万円 辞令公表後~1週間以内 勤務先または自宅 人事のことなので慎重に進め、必ず正式な辞令が出てから贈ること。会社に届ける際はサイズに注意
退職・送別 3千~1万円 送別会当日・最終出勤日 送別会場・勤務先 持ち帰る際の負担にならないサイズとし、持ち帰り用の袋を用意すると丁寧。定年退職には華やかな花束が良い
お見舞い 3千~5千円 入院後、容体が安定してから 病院(許可が必要) 鉢植えは「根付く=寝付く」を連想させるため厳禁。香りが強い花、落ちる花も避けるのが通常
お悔やみ 1万~2万円 お通夜・告別式まで 斎場・自宅 宗教により花の種類が異なること、斎場の広さによって受け入れられる献花に限りがあるため、必ず葬儀社に確認する

(出所:日本情報マート作成)

3 筆者が行った小さな工夫

ここからは「印象に残る花の贈り方」を紹介します。といっても、その方法はさまざまで、

  • ワントーンにアレンジしたり、季節の花を加えたりして目立たせる
  • 鮮やかなプリザーブドフラワーを送り、世話をせずに鑑賞できるようにする
  • 小型の盆栽を贈って、鑑賞だけではなく育てることも楽しんでもらう
  • QRコード付きカードで、読み込むと動画メッセージが観られるようにする

などが考えられます。どういった方法がいいかは、相手の状況によって変わってきます。

つまり、

お決まりの行為として花を贈るのではなく、いかに相手のことを知り、その状況に合わせて工夫するか

が大切になります。冒頭でお出ししたクイズの答えもまさにこれに通じます。答えは以下の通りです。

クイズ1.「地方銀行系シンクタンク」向けの工夫は?

(答え)3.あえて「立札(送り主の名前が記された札)」を付けなかった

今回の場合、オフィス移転といっても、近隣のテナント入居先から銀行本体の一室に移動するというものでした。私は、たまたま執行役員から移転のことを聞いていましたが、私以外の外部の人間で知っている人はほとんどいないとのことでした。
移転のお祝いに胡蝶蘭を贈ったのですが、あえて立札はつけませんでした。なぜかというと、

取引関係にない私が、なぜ、移転のことを知っていて、花まで贈ってくれるのか?(執行役員はこの相手に便宜を図るつもりか?)

とつまらない詮索を受けて、執行役員に迷惑をかけたくなかったのです。

結局、届いた花は私が贈った1鉢だけだったとのことで、それなりに目立ったようです。また、これは想定外だったのですが、立札がないため、執行役員が花の送り主である当社のことを説明してくれて、会社名と私の名前が内部で広まりました。もちろん、健全な関係であることも内部で理解されました。

このこともあり、執行役員との仲が深まっていきました。執行役員曰く「自分の立場に配慮した私の姿勢」を評価してくれたとのことでした。

クイズ2.「赤坂でカラオケスナック」向けの工夫は?

(答え)3.小さなプリザーブドフラワーを3基贈った

カラオケスナックをオープンした知人はビジネススクールの学友で、開店のことは事前に相談されていました。出店場所やお店の広さは聞いていましたし、ワンオペで回すということも知っていました。開店祝いの花といえば胡蝶蘭が定番ですが、恐らく飾っておくスペースがないですし香りも気になります。また、ワンオペで店を回すとなると、花の世話もできないと考えました。

そこで私は、カウンターにおける大きさでテイストの異なるプリザーブドフラワーを3基贈ることにしました。なぜなら、

3基のプリザーブドフラワーを順番に飾るだけで、手間をかけずに雰囲気を変えられる

と思ったからです。

当時、私は仕事が忙しくて、ほとんど店に行けなかったのですが、「店内が明るくなって、変化も出せる」と、とても感謝されました。

花の贈り方

2つのケースで共通するのは、

事前に相手の状況を把握できていた

ことです。花を贈るとインパクトがありますが、一方ではスペースが必要だったり、飾る順番について相手に気を遣わせたり、世話をしなければならなかったりという側面もあります。状況はそれぞれですが、事前の情報でこうしたマイナス要因を排除すれば相手は喜び、印象に残りやすいのだと思います。

以上(2026年3月作成)

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画像:日本情報マート

【PDFで印刷可能】総務のお仕事 12カ月 一目で分かる「月別実務リスト」

人事部、経理部、法務部など、バックオフィス専門の部署がないことが多い中小企業では、経営者や管理職も例外なくこうした実務を行います。しかし、不慣れな上に、片手間で処理することが多いので、どうしても抜け漏れが生じがちです。

一方、こうした実務は法令で定められたものが多く、放置しておくと思わぬペナルティを受けることがあります。

これを避けるために、

「人事労務」「会計・税務」 「法務・その他総務」の主なお仕事を月別にリスト化した「月別実務リスト」

を作成しました。下記からPDFでダウンロードできますので、印刷してご活用ください。


こちらからダウンロード

なお、このPDFは次のコンテンツを再編したものです。興味のある月の業務だけを知りたい場合、こちらをご確認ください。

以上(2026年4月作成)

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画像:日本情報マート

経営のヒントとなる言葉(松下幸之助)

「雨が降れば傘をさす」(*)

出所:「功のために大切なこと 松下幸之助が直接語りかける」(PHP研究所)

冒頭の言葉は、

「ビジネスにおいては、その時々の状況に応じて、当たり前のことをしっかりと行うことが重要である」

ということを表しています。

あるとき、松下氏は、新聞記者から事業の成功の秘訣について尋ねられました。その際に答えたのが、この「雨が降れば傘をさす」という言葉です。

人間は誰でも、雨が降ってくれば傘をさし、寒くなれば厚着をするものです。こうした当たり前のことを、松下氏は「天地自然の法則」と呼んでいます。

これをビジネスに当てはめると、「仕入れた(もしくは製造した)商品に適正な利益を乗せて販売し、その代金を顧客から回収する」ということになります。しかし、ことビジネスとなると、この当たり前のことが行われていないこともしばしばみられます。

例えば、「売り掛けで商品を販売したものの、顧客がなかなか代金を支払わない」といった場合、「『代金の支払いを督促すると相手の機嫌を損ねてしまい、今後の取引によくない影響を及ぼすのではないか』と考えて支払いの督促をしなかった」「他社との競争に勝つために無理な値下げをした結果、企業としての体力を著しく消耗してしまった」といったケースは少なくありません。

こうしたことに対し、松下氏は、「自身がビジネスに対して強い信念を持っていれば、常に当たり前のことを行うことができる」と述べています。

一般的に、顧客に商品を買ってもらう企業は、顧客よりも弱い立場にあると考えられがちです。だからこそ、先に述べたように代金の督促をためらったり、顧客が他社に流れないように無理な値下げを行ったりします。

しかし、自身がビジネスに対して強い信念を持っていれば、「自社の商品やサービスを買うことによって、顧客にはこのようなメリットがある」ということを、顧客に対して自信を持って伝えることができます。つまり、ビジネスに確固たる信念があれば、顧客と対等な立場で、そして他社の動向を過度に気にすることなく、当たり前のことを行うことができるのです。

1929年、松下氏は松下電気器具製作所の経営理念を次のように定めました。

「産業人タルノ本分ニ徹シ社會(しゃかい)生活ノ改善ト向上ヲ圖(はか)リ世界文化ノ進展ニ寄與(きよ)センコトヲ期ス」(**)

すなわち、同社では、自社の役割は「生産・販売活動を通じて社会生活の改善と向上を図り、世界文化の進展に寄与すること」であるとしています。

その後、同社はパナソニック株式会社となりますが、現在に至るまで、常にこの考え方を基本に置いて事業を進めてきました。このような揺るぎない信念に基づき、当たり前のことをきちんと行っていくことこそが、大きな成功につながるのです。

【本文脚注】

本稿は、注記の各種参考文献などを参考に作成しています。本稿で記載している内容は作成および更新時点で明らかになっている情報を基にしており、将来にわたって内容の不変性や妥当性を担保するものではありません。また、本文中では内容に即した肩書を使用しています。加えて、経歴についても、代表的と思われるもののみを記載し、全てを網羅したものではありません。

【経歴】

まつしたこうのすけ(1894~1989)。和歌山県生まれ。尋常小学校中退。1918年、松下電気器具製作所(現パナソニック株式会社)設立。

【参考文献】

(*)「成功のために大切なこと 松下幸之助が直接語りかける」(松下幸之助(述)、

PHP総合研究所経営理念研究本部(編著)、PHP研究所、2009年3月)

(**)パナソニック株式会社ウェブサイト」(パナソニック株式会社)

「私の履歴書 経済人1」(五島慶太、杉道助、堤康次郎、新関八洲太郎、原安三郎、

松下幸之助、山崎種二、石坂泰三、出光佐三、伊藤忠兵衛、大谷竹次郎、高碕達之助、遠山元一、日本経済新聞社、2004年6月)

「雨が降れば傘をさす 松下幸之助に学ぶ本物の経営」(中博、アチーブメント出版、2009年3月)

以上(2026年3月更新)

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画像:日本情報マート

新入社員のための「給与&社会保険」の基礎知識(2026年4月号)

新入社員として働き始め、最初の給与が振り込まれたとき、すべての人が「給与明細」を受け取ります。給与明細を見る際、最初に目を向けるのはいわゆる「手取り額」でしょう。「手取り額」を見ると「思っていたより少ない」「なぜこんなに引かれているのか」といった違和感を覚える人も少なくありません。その理由は、これまでに給与明細の見方や、税金・社会保険について詳しく学ぶ機会がほとんどなかったからです。本冊子では、新入社員に向けて給与明細の全体像を中心に、税金や社会保険について解説します。


2026年「賃上げ」に対する経営者300人の本音。御社はどうする?

1 2年連続で賃上げする企業は86.0%!

今年も「賃上げ」に関する話題が世間を賑わせています。足元では「春闘の賃上げ率が3年連続で5%超」となる見込みですが、一方で「中小企業の賃上げ疲れ」を指摘する声もチラホラ……世の経営者はどのように考えているのでしょうか?

昨年に引き続き、経営者289人を対象に、賃上げに関する緊急アンケートを行いました(2026年3月17日から3月24日まで)。前回のアンケート結果については、こちらをご確認ください。


今回は、「2026年度に賃上げを実施する」という企業が全体の37.0%、そのうち

「2年連続(2025年度・2026年度)」で賃上げを実施するという企業が、なんと86.0%

もいました。

ちなみに、2年連続で賃上げすると答えた企業の2025年度(昨年度)の賃上げ率は、「3%以上」が最も多かったです。

2年連続で賃上げを実施する?

2 賃上げを実施するか否か、何を基準に判断する?

ここからは、2026年度の賃上げの方針についての回答結果を紹介します。

まずは、賃上げをするか否かを判断するために重視する情報についてですが、「自社の業績」が圧倒的に多くなっています。「物価高など社員の生活」「最低賃金の改定」を気にする企業も多く見受けられました。

判断基準となる情報は?

3 賃上げする企業が求めている情報は?

では、具体的にどれだけの企業が賃上げをするのでしょうか?

具体的にどれだけの企業が賃上げをするのか?

「2026年度に賃上げを実施する」という企業は37.0%(このうち86.0%が2年連続での実施)で、「2〜3年以内に実施する」という企業は12.1%となっています。

また、賃上げする企業が、賃上げの原資を確保するために実施している施策としては、「値上げ(価格転嫁)などによる収益向上」が最も多く、さらに「業務効率化などによるコスト削減」が続きます。

賃上げする企業が求めている情報は、「社会保険料への影響に関する情報」「助成金や賃上げ促進税制」に関する情報でした。少しでも賃上げの負担を軽減したいというところでしょう。

また、経営者が賃上げについて相談する相手は、「自社の取締役」が最も多く、「顧問の税理士」がこれに続きます。

4 どうやって、どの程度の賃上げをする?

賃上げの手法や賃上げ率はどうでしょうか?

賃上げの手法や賃上げ率は?

賃金の範囲としては、「基本給のみ」が最も多いですが、基本給の他に手当や賞与も上げるという企業が続きます。かつては、基本給は上げず、手当や賞与を上げて対応する企業が多かったですが、2026年はそれよりも踏み込んだ賃上げを検討する企業が増えています。

具体的な賃上げ率は、「2%以上」が最も多いですが、「5%以上」と答えた企業も少なからずいて、賃上げに対する意気込みがうかがえます。

賃上げの手法については、ベースアップで実施する企業が最も多く、定期昇給が続きます。両方を行うという企業も多いようです。

5 賃上げ「しない企業」の経営者が考えていることは?

これまでとは逆に、賃上げをしない企業の状況を紹介します。

賃上げをしない企業の状況は?

なぜ、賃上げをしないのかについては、「業績の先行きが不透明だから」が圧倒的に多くなっています。前述した通り、賃上げをするか否かを判断するために最も重視される情報は「自社の業績」でした。やはり、業績が伴わない賃上げは難しいということでしょう。

どうなったら賃上げをするのかについては、これまで同様に業績が重視されていて、「業績好調が続くと確信できたとき」が圧倒的に多くなっています。

以上(2026年3月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

【動画で学ぼう】入社3~5年目の中堅社員に必要な意識改革

中小企業にとって中堅社員は組織の要であり、皆さんの成長こそが企業の成長につながります!「半歩先行く中堅社員」シリーズは、そのためのエッセンスをまとめた15本のシリーズです。
今回、新たに動画版の公開をスタートしましたので、ぜひ、参考にしてみてください。

1 仕事があるのに「休日出勤」したらいけないの?

中堅社員は、部下から見られる存在である。安易に残業や休日出勤をする前に、チームの生産性を向上させることを考えよう!

(下の画像をクリックしていただくと、YouTubeに遷移します)


テキスト版はこちら


2 「働き方改革」の第一歩は、今でも「整理整頓」

オフィスは「公の場所」である。自分のデスクなどはもちろん、共用スペースも整理整頓をすると、生産性の向上につながる!

(下の画像をクリックしていただくと、YouTubeに遷移します)


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3 料理と後片付けは別々にやろう!

仕事の進め方は、「ストライプ型」と「ソリッド型」がある。中堅社員は、ストライプをソリッドにしよう!

(下の画像をクリックしていただくと、YouTubeに遷移します)


テキスト版はこちら


4 仕事が遅れるのは、“速さ” の問題にあらず

仕事を抱え込み過ぎてはいけない。うまく部下に振っていく能力が中堅社員には求められる。仕事は信号機のイメージで把握しよう!

(下の画像をクリックしていただくと、YouTubeに遷移します)


テキスト版はこちら


5 コーラとコーヒーを一緒に売るのは正しいのか?

「アイデア出し」は積極的に行おう!同時に、思い付きレベルを脱し、何が最も効果的であるかを検討できるビジネス力を養おう。

(下の画像をクリックしていただくと、YouTubeに遷移します)


テキスト版はこちら


6 「原点回帰」と言って格好つけるな!

軽率に「原点回帰」を口にしない。原点回帰を進めるならば、必ずアクションプランとセットにしよう!

(下の画像をクリックしていただくと、YouTubeに遷移します)


テキスト版はこちら


動画制作
アーティスソリューションズ
https://www.artis-sol.co.jp/index.html

以上(2026年3月作成)

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画像:Eriko Nonaka

副業社員は、複数の会社で雇用保険に加入できる? できない?

1 副業社員の労働保険はどうなる?

副業にはさまざまな労務管理のルールがあります。労働保険(雇用保険・労災保険)の場合、

雇用保険については、65歳以上など一定の要件を満たす社員に限り、複数の会社での加入を認める「雇用保険マルチジョブホルダー制度」

というのがありますし、労災保険についても押さえておきたい特有のルールがあります。

この記事では、副業特有の労働保険のルールを取り上げます。ポイントは、次の5点です。

  • 雇用保険は原則として1社で加入する
  • 65歳以上の社員は一部、複数の会社で雇用保険に加入できる
  • 雇用継続中でも離職証明書の作成が必要になるケースがある
  • 労災保険給付の申請には自社と副業先の両方が携わる
  • 疾病による労災は自社と副業先の両方の負荷で判断することがある

2 雇用保険は原則として1社で加入する

学生などの例外を除き、次の2つのいずれにも該当する社員は、必ず雇用保険に加入します。

  • 週の所定労働時間が20時間以上(注)であること
  • 雇用見込みが31日以上あること

(注)2028年(令和10年)10月1日より、週の所定労働時間が「10時間以上」の労働者にも雇用保険が適用されるようになります。

役員は、原則として雇用保険に加入できません。しかし、経営業務以外の業務にも携わり賃金が支払われる「兼務役員」については、所轄ハローワークの認定を受ければ加入できます。

社員や役員(以下「社員等」)が副業する場合、雇用保険は原則として「主たる賃金が支払われる会社(一般的には、賃金が最も多い会社)」で加入します。つまり、

原則として複数の会社で同時に雇用保険に加入することはできず、1社で加入する

ということです。

3 65歳以上の社員は一部、複数の会社で雇用保険に加入できる

原則として、雇用保険は1社で加入します。しかし、例外として雇用保険マルチジョブホルダー制度があります。これは、高齢社員の就業機会を増やすための制度で、次の3つのいずれにも該当する社員に限り、複数の会社で雇用保険に加入できます(兼務役員への制度適用については特に定めがないため、所轄ハローワークなどに要相談)。

  • 1.複数の会社で雇用され、年齢が65歳以上であること
  • 2.複数の会社のうち2つの会社(どちらも週の所定労働時間が5時間以上20時間未満)について、週の所定労働時間の合計が20時間以上であること
  • 3.複数の会社のうち2つの会社について、それぞれ雇用見込みが31日以上あること

図表1は、3つの会社で雇用される65歳の社員への制度適用のイメージです。

制度適用のイメージ

社員が3つの会社の中から、制度の対象となる会社を2つ選択します。C社は雇用見込みが31日以上ないので対象外ですが、A社とB社が週の所定労働時間と雇用見込みの要件を満たします。そのため、社員はA社とB社、2つの会社で雇用保険に加入できます。

なお、雇用保険は通常、強制加入(加入要件を満たす社員は必ず加入しなければならない)ですが、マルチジョブホルダー制度の場合は任意加入(社員が加入するかどうかを自分で決められる)です。加入を希望する場合、

社員本人が「マルチジョブホルダー雇入・資格取得届」などの必要書類を、自分の住所を管轄するハローワークに提出(提出期限はなし)

します。この際、

社員が制度の対象として選択した2つの会社は、それぞれ社員からの依頼に基づいて、書類の事業主記載事項(賃金や週の所定労働時間など)を記入する必要があります。また、手続き時には賃金台帳や出勤簿、雇用契約書などの確認資料(コピー可)の添付も必要となりますので、それらの書類を社員本人に交付

します。

雇用保険料については、雇用保険の資格取得日から発生し、2つの会社がそれぞれ納付義務を負います。社員からの保険料徴収(給与天引き)、保険料納付(年度更新)などの実務は、通常の社員と変わりません。

被保険者となった社員は、通常の社員と同様、雇用保険給付を受けられます。ただし、給付を受けるには2つの会社で同時に支給要件を満たさなければなりません。例えば、介護休業給付(介護休業中、賃金が支払われない場合に支給)の場合、2つの会社で原則として「直近2年間に被保険者期間が12カ月以上あること」などの要件を満たし、かつ同時に介護休業を取得する必要があります。

なお、マルチジョブホルダー制度の書類に提出期限はないものの、資格取得日は届出日となります。届出前に遡って加入はできないため、社員に対して早めに届け出ることを伝えるのが望ましいでしょう。

4 雇用継続中でも離職証明書が必要になるケースがある

社員が副業先を退職するなどして、雇用保険マルチジョブホルダー制度の対象から外れる場合、雇用保険の被保険者資格も失われます。その場合、

社員本人が「マルチジョブホルダー喪失・資格喪失届」などの必要書類を、自分の住所を管轄するハローワークに提出(被保険者でなくなった日の翌日から10日以内)

します。この際、

社員が雇用保険加入時に制度의対象として選択した2つの会社は、それぞれ社員からの依頼に基づいて、書類の事業主記載事項(退職日や退職理由)を記入

します。また、

社員から依頼があった場合、2つの会社でそれぞれ「離職証明書」を作成

する必要があります。雇用が継続しているほうの会社も、社員に退職日などを確認して離職証明書を作成しなければなりません。

なお、マルチジョブホルダー喪失・資格喪失届や離職証明書は、社員が退職したほうの会社と、雇用が継続しているほうの会社とで記入方法が異なります。詳細は次の申請パンフレットをご確認ください。

厚生労働省「雇⽤保険マルチジョブホルダー制度の申請パンフレット」
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000838543.pdf

5 労災保険給付の申請には自社と副業先の両方が携わる

労災保険は、適用事業に雇用されている全ての社員に適用されます。事業場単位で保険に加入し、賃金を受け取るすべての労働者が自動的に対象となるため、被保険者という概念はありません。

原則として、役員は労災保険に加入できませんが、中小事業主等に該当する経営者などは、所轄都道府県労働局長の承認を受ければ特別加入できます。また、兼務役員の場合、経営業務以外の業務中に発生した業務災害と通勤災害について、労災保険が適用されます。

また、副業する社員等が本業先から副業先へ移動する場合(事業場間の移動)も、労災保険法上の「通勤」です。この区間で事故に遭った場合、移動先(副業先)の労災保険により通勤災害として保護されます。

副業している社員等が労災により傷病を負った場合、通常の社員等と同様、労災保険給付を受けられます。ただし、一部の給付を除き、

自社と副業先の賃金額の合計を基に支給額が算定される

という点が通常と異なります(特別加入の経営者などは、厚生労働大臣が具体的な額を定めるため対象外)。

労災保険給付のイメージ

社員等が労災保険給付(一部を除く)を申請する場合、労災が発生したほうの会社は、申請に当たって傷病の発生状況、賃金の支払い状況、休業状況などを申請書に記入します。ただし、社員等が副業している場合、支給額を正確に算定するため、

労災が発生していないほうの会社も、賃金の支払い状況などを、申請書の別紙に記入しなければならないケース

があります。具体的には、次の保険給付の場合です。

  • 休業(補償)等給付:療養のために働けず、休業が通算3日以上となった場合に支給
  • 障害(補償)等給付:社員等の傷病が治癒し(症状固定を含む)、一定の障害が残った場合に支給
  • 遺族(補償)等給付:社員等が亡くなった場合、遺族に対して支給
  • 葬祭料等(葬祭給付):社員等が亡くなった場合、葬儀を執り行う者に支給

6 疾病による労災は自社と副業先の両方の負荷で判断することがある

脳出血やうつ病などの疾病は、負傷の場合と違って労災の発生状況が分かりにくいため、自社と副業先の両方について社員等の負荷を評価し、労災に当たるかを判断します。具体的には、

まずそれぞれの会社で社員等の負荷がどの程度あったかを評価し、1つの会社の負荷だけでは労災に当たると認定できない場合、複数の会社での負荷を総合的に評価して判断

します。社員等が泣き寝入りになってしまうことを防ぐためです。

労災認定する際のイメージ

なお、労災保険料率を上下させる「メリット制」については、あくまで業務災害が発生した事業場のみが影響を受けます。

以上(2026年3月更新)
(監修 社会保険労務士 柴田充輝)

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画像:takasu-Adobe Stock