1 「花」はオフラインメディアである
誰もが知っている大企業勤めならいざしらず、中小企業の場合、社長も一介の営業担当者も、まずは相手に「自分」を覚えてもらうことからビジネスが始まります。正方形の名刺、個性的な服装、つかみのトークなど、これらは全て「個」として自分を覚えてもらうための工夫です。
筆者は以前、1日に何件もアポイントが入る地方銀行系シンクタンクの名物執行役員に、一度で顔と名前を覚えてもらい、何度も連絡を取り合う仲になりました。残念ながら自社のビジネスにはつながりませんでしたが、代わりに多くの人を紹介したり、紹介してもらったりしましたし、通常は知り得ない金融機関の裏話も聞けました。
また、知人が東京の赤坂でカラオケスナックを開店したとき、ほとんど店に行けなかったにも関わらず、とても感謝され「あなたの開店祝いが一番良かった!」と絶賛されたことがあります。
どちらのケースも、私が一体何をしたかというと、
花を贈った。ただそれだけ
です。ポイントは相手のことを考え、ちょっとだけ工夫したことです。さて、ここでクイズです。私がしたちょっとした工夫とは、次の3つのうちどれだと思いますか?
- 自分をアピールするために、10鉢の胡蝶蘭を贈った
- ストーリー性を持たせるために、自分で新幹線に乗って胡蝶蘭を運んだ
- あえて「立札(送り主の名前が記された札)」を付けなかった
答えを知りたい人はこちらをクリック(ログイン後)
- サプライズとして、開店時間ぴったりに胡蝶蘭を届けた
- 空間演出ができるよう、香りの強い花を贈った
- 小さなプリザーブドフラワーを3基贈った
答えを知りたい人はこちらをクリック(ログイン後)
花は一定期間、空間に飾られて視覚的に強い印象を残しますし、
立札に自社名を記せば「オフラインメディア」のような宣伝効果
が期待できます。4月は開業・開店、異動や昇進などが重なる時期ですから、花を贈って自分を覚えてもらう絶好の機会です!
この記事では、ビジネスで花を贈る際の基本マナーや、一歩進んだ「印象に残る贈り方」を紹介しています。花を贈って新年度の営業に弾みをつけましょう!

2 【シーン別】花の贈り方の基本マナー
ビジネスで花を贈るシーンを想定し、予算やタイミングなどをまとめます。予算などは相手との関係によりますので、その辺りはうまく調整してください。
(図表)【花の贈り方の基本マナー】
| シーン | 予算の目安 | 贈るタイミング | 贈る場所 | 注意点・マナー |
|---|---|---|---|---|
| 開業・開店 | 1万~5万円 | オープン前日~当日朝 | 店舗・事務所 | 赤い花やラッピングは「火事」を連想させるため避けたほうが無難。開店時は多忙なので世話がかからない花が理想的 |
| 移転祝い | 1万~3万円 | 移転完了後~2週間以内 | 新事務所・新店舗 | 先方の片付けが落ち着く大安などの吉日を選ぶのが理想的。あえてタイミングをずらすと印象に残りやすいことも |
| 栄転・昇進 | 5千~3万円 | 辞令公表後~1週間以内 | 勤務先または自宅 | 人事のことなので慎重に進め、必ず正式な辞令が出てから贈ること。会社に届ける際はサイズに注意 |
| 退職・送別 | 3千~1万円 | 送別会当日・最終出勤日 | 送別会場・勤務先 | 持ち帰る際の負担にならないサイズとし、持ち帰り用の袋を用意すると丁寧。定年退職には華やかな花束が良い |
| お見舞い | 3千~5千円 | 入院後、容体が安定してから | 病院(許可が必要) | 鉢植えは「根付く=寝付く」を連想させるため厳禁。香りが強い花、落ちる花も避けるのが通常 |
| お悔やみ | 1万~2万円 | お通夜・告別式まで | 斎場・自宅 | 宗教により花の種類が異なること、斎場の広さによって受け入れられる献花に限りがあるため、必ず葬儀社に確認する |
(出所:日本情報マート作成)
3 筆者が行った小さな工夫
ここからは「印象に残る花の贈り方」を紹介します。といっても、その方法はさまざまで、
- ワントーンにアレンジしたり、季節の花を加えたりして目立たせる
- 鮮やかなプリザーブドフラワーを送り、世話をせずに鑑賞できるようにする
- 小型の盆栽を贈って、鑑賞だけではなく育てることも楽しんでもらう
- QRコード付きカードで、読み込むと動画メッセージが観られるようにする
などが考えられます。どういった方法がいいかは、相手の状況によって変わってきます。
つまり、
お決まりの行為として花を贈るのではなく、いかに相手のことを知り、その状況に合わせて工夫するか
が大切になります。冒頭でお出ししたクイズの答えもまさにこれに通じます。答えは以下の通りです。
今回の場合、オフィス移転といっても、近隣のテナント入居先から銀行本体の一室に移動するというものでした。私は、たまたま執行役員から移転のことを聞いていましたが、私以外の外部の人間で知っている人はほとんどいないとのことでした。
移転のお祝いに胡蝶蘭を贈ったのですが、あえて立札はつけませんでした。なぜかというと、
取引関係にない私が、なぜ、移転のことを知っていて、花まで贈ってくれるのか?(執行役員はこの相手に便宜を図るつもりか?)
とつまらない詮索を受けて、執行役員に迷惑をかけたくなかったのです。
結局、届いた花は私が贈った1鉢だけだったとのことで、それなりに目立ったようです。また、これは想定外だったのですが、立札がないため、執行役員が花の送り主である当社のことを説明してくれて、会社名と私の名前が内部で広まりました。もちろん、健全な関係であることも内部で理解されました。
このこともあり、執行役員との仲が深まっていきました。執行役員曰く「自分の立場に配慮した私の姿勢」を評価してくれたとのことでした。
カラオケスナックをオープンした知人はビジネススクールの学友で、開店のことは事前に相談されていました。出店場所やお店の広さは聞いていましたし、ワンオペで回すということも知っていました。開店祝いの花といえば胡蝶蘭が定番ですが、恐らく飾っておくスペースがないですし香りも気になります。また、ワンオペで店を回すとなると、花の世話もできないと考えました。
そこで私は、カウンターにおける大きさでテイストの異なるプリザーブドフラワーを3基贈ることにしました。なぜなら、
3基のプリザーブドフラワーを順番に飾るだけで、手間をかけずに雰囲気を変えられる
と思ったからです。
当時、私は仕事が忙しくて、ほとんど店に行けなかったのですが、「店内が明るくなって、変化も出せる」と、とても感謝されました。

2つのケースで共通するのは、
事前に相手の状況を把握できていた
ことです。花を贈るとインパクトがありますが、一方ではスペースが必要だったり、飾る順番について相手に気を遣わせたり、世話をしなければならなかったりという側面もあります。状況はそれぞれですが、事前の情報でこうしたマイナス要因を排除すれば相手は喜び、印象に残りやすいのだと思います。
以上(2026年3月作成)
pj00817
画像:日本情報マート






























