【取締役】取締役会の機能と付議事項

1 取締役会の職務

1)取締役会の概要

取締役会は全ての取締役で組織され、次の職務を行います。

  • 取締役会設置会社の業務執行の決定
  • 取締役の職務の執行の監督
  • 代表取締役の選定及び解職

株式会社(以下「会社」)の最高意思決定機関は株主総会ですが、

取締役会設置会社の場合、株主総会は会社法に規定する事項と定款で定めた事項しか決められない

ことになっています。つまり、

取締役会設置会社では、株主総会で決定すべき基本的事項を除き、取締役会が会社の業務執行に関することを決める

体制になっています。そして、代表取締役や取締役会で業務を執行する取締役として選定された「選定業務執行取締役」が、会社の業務執行機関として定められています(指名委員会等設置会社の執行役を除く)。

なお、多くの会社では、取締役会とは別に「経営会議」などで重要事項を議論しますが、

これは会社法上の機関ではないので、当然ながら、会社法で定められている重要事項は決められない

というのが実情です。

2)会社法における重要事項

次に掲げる事項、その他の重要な業務執行の決定は、会社法の定めによって、取締役会の委任があっても、取締役で決定できないものと規定されています。なお、経営会議での決定に委ねることもできません。

  • 重要な財産の処分及び譲受け
  • 多額の借財
  • 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
  • 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
  • 募集社債の総額、その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項
  • 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
  • 定款の定めに基づく、役員等が任務を怠ったときの損害賠償責任の免除の決定

2 付議事項の基本的な考え方

取締役会規程に定める付議事項は、原則として、次の3つに整理されます。

  • 法令などに定めのある事項
  • 定款に定めのある事項
  • 業務執行に関する重要事項

法令などに定めのある事項とは、法令や最高裁判所判例で取締役会が当該事項の決議・決定機関とすることが指定または許されている事項です。

また、定款に取締役会決議が必要であると定めた事項についても、取締役会における決議が必要となります。ちなみに、定款の記載事項は、次の3つに大別できます。

  • 絶対的記載事項:必ず記載が必要で、記載を欠くと定款全体が無効となる事項
  • 相対的記載事項:必要に応じて記載が必要で、記載を欠くとその部分が無効となる事項
  • 任意的記載事項:絶対的記載事項と相対的記載事項ではない会社が任意に記載する事項

定款の記載事項のうち、相対的記載事項および任意的記載事項は、定款の定めの有無および記載されている内容が会社ごとに違うので、付議事項との整合性に注意する必要があります。

これらに加えて、業務執行における重要事項であり、取締役会の決議が必要な事項を付議事項として定めます。内容は会社ごとに異なりますが、一般的には、「事業計画や予算計画の承認」、取締役会規程をはじめとした「重要規則(規程)の改廃」などとなります。

3 取締役会規程および付議事項の例

1)取締役会規程の例

取締役会で決議する事項を明確にするために、付議事項を書面で明示するのが好ましいです。その際、予期せぬ重要事項の発生を想定し、付議事項には「その他法令・定款などに定めのある事項、並びに業務執行に関する重要事項」といった条項を設けるのが一般的です。

これを踏まえた取締役会規程(付議事項に関する定め)の例は次の通りです。

【取締役会規程(付議事項に関する定め)の例】
第○条(決議事項)
1)取締役会は、「別紙:付議事項」に定める事項について決議する。
2)第○条第1項にかかわらず、取締役会が必要と認める事項については、取締役会への付議、および取締役会における決議をしなければならない。
3)代表取締役は、急を要する事項などやむを得ない事情がある場合には、法令および定款に反しない限り、取締役会の決議を経ないで第○条第1項に定める事項に関する業務を執行することができる。ただし、代表取締役は、直後の取締役会においてその承認を得なければならない。

2)付議事項の例

付議事項の例は次の通りです。また、取締役会への報告事項も参考として紹介します。

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以上(2023年4月)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 栗原功佑)

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画像:pexels

企業の課題を徹底的に考え抜くアツい2日間「共創BOOT CAMP」/イベントレポート

1 参加者の90%以上が「良かった」と感じるブートキャンプ

2023年2月の某金曜・土曜の2日間。

「こんなに熱量高い共創ブートキャンプ、多様な参加者の本気度合いがすごすぎる……」

曇天で、チラホラと雪が舞う北陸の地。外の寒さとは対照的に、室内では激アツな2日間のブートキャンプ、議論が繰り広げられていました。

この「共創BOOT CAMP」とは、地域企業の課題解決のために、地域企業と地域経営支援機関、そして都市部など「外」の人材が1泊2日の合宿集中形式でひたすら議論を重ね、地域企業の課題の明確化と、「明日から取り組める」解決プランを作成していくプログラムです。

共創BOOT CAMPの運営は商工中金・アイコック(協同組合全国企業振興センター)・合同会社RBXが運営しており、今回は金沢(石川県)で開催されました。目指すのは、地域企業の課題と解決策の明確化、ひいては地域の活性化、地域を超えた雇用の創出です。

ブートキャンプのプレイヤーは主に3者。課題を抱える地元金沢の企業(参加企業)、課題と解決策を一緒に考える都市部などからの人材(外部人材)、そして商工中金の若手営業担当者です。この3者が1泊2日、カンヅメ状態で課題解決のために議論します。

じっくり現場で2日間、張り付いて見学させていただいて、まさに、

参加企業よし、外部人材よし、商工中金よしの「三方よし」な取り組み

と感じました。そして、聞いているだけで脳みそにも汗をかきそうな圧倒的な熱量の議論。

参加者アンケートでは、なんと全体の93%が「非常に良かった」あるいは「良かった」と回答したとのこと。現場で見た参加者の目の輝き具合からすると、皆が良かったと感じているのは本当だろうと分かります。

この記事では、知恵熱が出そうなこのブートキャンプの内容をお伝えしたいと思います。地域企業がこれから成長するヒント、若手が意欲的に仕事に取り組むヒント、そして人生において「夢中になれるもの」を見つけるヒントなどに、少しでもお役立ていただければ幸いです。

なお、ブートキャンプでは参加企業の「本当の課題」についての議論でしたので、企業名などは伏せ、課題もぼやかしています。ご了承ください。

1日目。はじめに全体オリエンテーションをしている様子(写真提供:アイコック(協同組合全国企業振興センター))

1日目。はじめに全体オリエンテーションをしている様子(写真提供:アイコック(協同組合全国企業振興センター))

2 三者三様の参加する意義

見学していて、熱量と本気度合いに驚き、感動しまくった2日間。なぜここまでの熱量だったのかを改めて振り返ってみました。

ブートキャンプでは、プレイヤー3者が、参加企業の掲げる課題をより明らかにした上で、具体的な解決策を考えるべく議論していきます。ここでまず注目したいのは、ただ議論して終わりではなく、

アウトプットの形と、ブートキャンプにおける明確なゴールが設定されている点

です。

アウトプットの形としてあるのが「100日プラン」です。これは、課題解決のために「明日から100日間で何をやるか」の具体的な計画です。100日間の計画! 解像度高く考えようとするとかなり大変です。そしてブートキャンプにおける明確なゴールとして、「明確化した課題と、解決するための100日プランを、ブートキャンプの集大成として経営者(あるいはメンバー)にプレゼンする」ことになっています。100日プランを実行するには、プレゼンでOKをもらわないといけない、ということになります。

これを2日間、もっと言えば1日目の午後と2日目の午前なので実質14〜15時間でやらなければなりません。参加者は必死です。しかも、企業として直面している実際の課題なので、本気も本気、超真剣です。参加企業のメンバーのお一人も、「日ごろは目の前の仕事に必死で、こんなに頭を使って議論する機会がない。必死になって考え、話した。こういう経験はしたことがない。とても勉強になった」という趣旨の感想を言っていました。

プレイヤー三者三様の視点でこのブートキャンプの意義・意味を考えると、次のように整理できます。こうしてみると、なるほど熱量が高くなるはず、と思います。

・参加企業(参加している企業のメンバー)
取り組むのは、緊急度は高くないが重要度が高い、「企業のこれからの成長」に必要な実際の課題。課題に対して100日プランを考え、ブートキャンプ最後に経営者(あるいはメンバー)にプレゼンして了解を得て、100日プランを実行していかなければならない

・外部人材(東京など他地域から参戦してきた専門的知識や経験のある人材)
初めて関わる地域、参加企業の課題を「本当にその課題認識で良いのか?」からスタートして具体的な100日プランの組み立てまで持っていくため、手腕、実力がかなり問われる。ブートキャンプ後も、実際にその参加企業と一緒に仕事をするチャンスもある

・商工中金の若手営業担当者
参加企業は若手営業担当者にとって担当の取引先なので、これまでも関わっているものの、企業のメンバーと実際に話したり、具体的な課題を一緒に考えたりするのはほぼ初。実際の企業のビジネス課題を目の当たりにし、初めて腹に落ち、実感できる

3 参加者一人ひとりが持ち帰る色々なもの、今後への可能性

今回、ブートキャンプの参加企業は3社。業種、規模、課題もそれぞれまったく違います。この3社に、外部人材が1人ずつと、商工中金の若手営業担当者が加わって、一つのチームになります。今回は3チームとなり、チームごとに部屋を分かれて2日間、議論しまくりました。

参加企業に声をかけて集めたのは商工中金・金沢支店です。このブートキャンプ発起人のお一人でもある金沢支店長にお聞きしたところ、もともと商工中金・金沢支店と積極的にコミュニケーションを取っており、課題感も割と明確な取引先企業に声をかけ、その企業を日ごろ担当している若手営業担当者がブートキャンプに参加するという形をとっているそうです。中にはまだ20代前半、営業担当になって2年目という若手の方もいました。

この2日間で、商工中金の若手営業担当者が、自分が担当している参加企業のメンバーとたくさん議論し、信頼関係を強めていく様子が印象的でした。参加企業からしてみれば2日間、商工中金が、というより、「その人(担当の若手営業担当者)」が必死で自分たちの課題の解決だけを考えてくれるわけです。

  

一方、商工中金の若手営業担当者から見れば、普段は知る由もない企業メンバーが何をどう考えて仕事をしているかが分かるので、「血の通ったビジネスの話」が初めてできる感じです。実際に、参加した商工中金の若手営業担当者は次のようにコメントし、目を輝かせていました。

今までは、経営者や財務担当者しか話をしたことがなかったが、今回、メンバーの方とたくさん議論して「こんなに会社のことを思って働いている人がいる会社なんだ」「こういうことに課題感を感じているのか」などが初めて分かって、本当に良かった。

こうした「担当している地域企業の課題に、若手が入り込んでいく」取り組みは、他の地域金融機関にも参考になるかもしれないと思います。そしてこれは、金融機関だけの話ではありません。地域企業にとっても同じです。若手や中堅どころのメンバーが日ごろ感じている課題感を明らかにしたり、その解決策を皆で議論したりすることで、思わぬ発見・成長の可能性も。

実際、以前、金沢で実施したこのブートキャンプの参加企業では、参加した企業のメンバーが普段と違って課題や解決策をバリバリ議論してくれ、経営者側にとってはうれしい驚きがあったそうです。

いずれにしても、必死で14〜15時間議論するので、誰もが取り繕ったり格好つけたりしている時間も余裕もない。一人ひとり、全人格とこれまでの経験・知識を総動員してぶつかり合う。これが、圧倒的な熱量を生む理由の一つかもしれません。大げさでなく、こういうものに参加することが、人生を変える機会や出会いの一つになるかもしれないと思いました。アツい!

アンケートから抜粋した参加企業のコメントを一部ご紹介します。参加企業から見ると、他地域の外部人材や商工中金の若手営業担当者などは、普段語り合うことのない「外の人」なので、その視点が入るのは新鮮で、かつ大いなる気づきがあったのではないでしょうか。

【参加企業からのコメント】

・プログラム名(ブートキャンプ)の通り、 2日間で火付けを考えることができ、とても良い勉強になった。

・自社の見たくない現実を見るという観点で成長につながった。

・会社の利益貢献をしていく上で、現在の課題を客観的に見つめ直す良いきっかけとなった。

・普段の業務では社外の方と課題について話し合う機会がないため、銀行の視点、コンサルの視点(異業種の方の視点)を併せて考えることができ勉強になった。

・今まで経営について考えることがなかったため、数字(経営)の考え方も学ぶことができ大変勉強になった。

実際に、多種多様な人が集まって議論するので、さまざまな化学反応も起きていました。例えば、「売上を上げたい」という課題(ぼやかしています)を掲げた参加企業に対して、外部人材から「誰からの売上を上げる? そもそも対象としている顧客は誰か?」といった問いが発せられ、改めて「自社にとっての顧客」を考えてみた。すると参加企業のメンバーだけでは出て来なかった新しい課題が浮き彫りに。「根本的な課題はそこか!」となったりもしていました。

4 2日間の最後はプレゼン。ここからがスタート!

このブートキャンプを通じてずっと感じていた圧倒的な熱量ですが、それには事務局として全体のファシリテーター役のRBXの皆さん、そしてアイコックの皆さんの本気度のすごさも大いに関係している気がします。3チーム、それぞれ部屋も分かれて2日間議論、プレゼンするのですが、RBXの皆さんは、3つの部屋を行ったり来たりしながら、議論が停滞・拡散しすぎたりすると、軌道修正を図ったり質問を投げかけたりします。

当日2日間だけでなく、前準備も後工程も含め、事務局側も本気、必死です。「地域企業や地域金融機関、ひいては地域を活性化させよう」「地域で働く外部人材を発掘しよう」という思いがなければ続けられることではないな……とすごさを感じます。事務局では、金沢の次回や、他地域でのブートキャンプなども企画しているそうです。こうした取り組みが、ぜひ全国に広がってほしいと思います!

さて、2日目の午後。ブートキャンプの集大成、プレゼンが行われました。プレゼン対象である参加企業の経営者・経営者層が土曜日の午後にこのプレゼンのためだけに時間をつくる、会場にやってくる。このことも参加企業の本気度が伺えます。そして商工中金は、本社人事部がオンラインで参加。確かに若手の育成にとってはとても良い経験かもしれません。

「育成」というより、イキイキと意欲的に自分ごととして意見を言ったり必死で議論にくらいついていったりすることが、参加した本人の大きな宝物になっているのは間違いないでしょう。

「よくここまで100日プランをつくれたな。すごい」

これがプレゼンを聞かせていただいた率直な感想です。2日間の議論を見学している中で、「あれ、本当に課題はこれだっけ?」と、そもそも論まで出てきて課題感が変わってきたり。

参加企業のビジネスモデルを外部人材が理解して目線を合わせるのに思った以上に時間がかかったり。

そういう場面もあったようにも見えましたが、見事に100日プランを仕上げてプレゼンまで持っていったのは、これは外部人材の力もさすがだなと思わさせられました。

特に2日目の朝は、それぞれのチームの外部人材が、議論をゴールに持っていくようにギアを一段上げた感。この手腕は、見ていてとても勉強になりました。参加企業のメンバーや商工中金の若手営業担当者も、外部人材の仕事のやり方、考え方、知識、ファシリテーターとしての進め方などにかなり関心を持ち、非常に勉強になった様子。「外の世界を知る」ことの大切さを改めて感じます。ここにも人や企業が成長するためのヒントがあるような気がします。

今回のブートキャンプは終わりましたが、参加した方々にとって、これは新たなスタートです。「ブートキャンプ」の名の通り、「課題解決に取り組むための火を付けた」ので、大事なのはここから先です。100日プランの成果に期待!

そして、このブートキャンプがもっと多くの地域に広がり、地域企業の成長、地域の活性化に大いにつながってほしい! そうした未来をぜひつくっていきたいと感じた怒涛の2日間でした。ブートキャンプ事務局の方々をはじめ、関係者の皆さま、お世話になり本当にありがとうございました!

今回のブートキャンプの概要は次のURLからもご確認いただけます。

「共創BOOT CAMP」プログラム@金沢のご案内
https://regionallearning.jp/kanazawabootcamp202302/

2日目。最終プレゼン後、全体で共有している様子(写真提供:アイコック(協同組合全国企業振興センター))

2日目。最終プレゼン後、全体で共有している様子(写真提供:アイコック(協同組合全国企業振興センター))

以上(2023年4月)

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画像:VectorMine-Adobe Stock

江戸時代の管理職 悩める“名家老”が残した金言 ~恩田木工、栗山大膳、田中玄宰

1 江戸時代の家老もマネジメントに苦心していた!

管理職の方は、上司にも部下の意向にも配慮しながら結果を出すことが求められ、何かと気苦労が絶えないものです。マネジメントの難しさは、現代に限ったことではなく、時代を超えた普遍的なテーマといえるでしょう。江戸時代、ナンバー2や幹部に相当した家老も、マネジメントの難しさに悩んでいたのです。

そこでこの記事では、江戸時代に、藩内のマネジメントに悩みながらも手腕を発揮した3人の名家老のエピソードと、それにまつわる金言を紹介します。管理職の方にとって、マネジメントを行う際のヒントになれば幸いです。

2 恩田木工「楽しみもすべし、精も出すべし」

1)2度の財政再建失敗の後に起用される

恩田民親(おんだ たみちか、通称「木工(もく)」)は、江戸中期の松代藩(長野県)の家老で、藩の財政再建に取り組んだ人物です。松代藩は1742年(寛保2年)の千曲川の水害で農地の約3分の1が壊滅状態になり、財政は逼迫(ひっぱく)していました。木工が家老に就任したのは、水害の4年後。父親や祖父も家老を務めていたこともあり、30歳の若さでの末席家老への昇進でした。

木工が藩主の真田幸弘から財政再建を託されたのは、家老になった9年後の1757年(宝暦7年)とされています。実は松代藩では水害の前後、2度にわたって財政再建に取り組んだものの、いずれも失敗しており、木工もその経緯を目の当たりにしていました。

木工が家老になる10年ほど前、幸弘の前の藩主・信安が家老に抜擢した藩士は、支出削減に取り組みました。藩士たちの給料の半額を「借り上げ」という名目で実質未払いにしましたが、困窮した足軽たちがストライキを起こしたため罷免されました。これに続いて、信安は財政再建のコンサルタント的な業務をしていた藩外の浪人を招聘しました。この浪人は収入増を図り、増税を行いますが、今度は大規模な農民一揆を招き、1年もたたずに松代から逃亡したのです。

2)財政再建のポイントは、全ての関係者とのコミットメント

「3度目の正直」として財政再建を託された木工は、まず幸弘に対し、自分に全権を与え、上席の家老まで木工のやり方に従わせることを約束してもらいました。次に木工は、家族や親類一同を集め、絶縁するように相談しました。その理由は、

ということでした。木工は家人にも同じ理由で暇を与えようとしますが、家族も親類も家人も皆、木工と同じ生活をすることを誓いました。ただし木工は、親類には質素な生活は求めず、家族にも神事や来客の際にはご馳走を認めました。

次に木工は、藩士たちに対して、今後は給料の未払いをしないことを約束する一方で、業務を疎かにした場合は糾問することを申し伝えました。そして、業務をしっかり行った上で余裕があるならば、相応の楽しみを味わうことを奨励しました。

仕上げは、藩内の主だった農民を招いた対話集会の開催でした。そこで木工は、次のような提案を行いました。

これらを喜んで了承した農民たちに対して、木工は藩士に対して語ったのと同じく、家業に精を出した上で余裕があるなら、相応の楽しみを味わうことを奨励しました。木工は、農民たちに、

人は分相応の楽しみなければ、又精も出しがたし。これに依って、楽しみもすべし、精も出すべし

と語りかけます。2度の財政再建の失敗を見ていた木工は、藩士や農民たちに対して、自分や身内を厳しく律する姿を見せることで本気度を示した上で、無理のない、現実的な協力を求めることによって、コミットメントの実行性を高めたといえるでしょう。

3)協力者を増やしていった名家老の手腕

木工は、財政再建のための協力者を生み出すことにも優れた手腕を発揮しました。

木工は農民たちから、これまでに藩士が行った不正を記した上申書を受け取ると、藩主の幸弘に対して、名前の挙がっていた藩士たちを、あえて木工を手助けする役目に付けるように願い出たのです。処分を覚悟していた藩士たちは木工に感謝するとともに心を入れ替え、以後は木工の心強い協力者になったといいます。

また、江戸の藩士から、幕府の用命で2000両が必要との求めがあったときのことです。松代にいた2人の藩士は木工に対し、「その用命であれば1200~1300両で済ませられるのでは」と意見しました。これに対して木工は、2人に2000両を運ばせ、江戸の藩士には「2人と相談しながら、首尾よく用命を果たすよう」に命じました。その結果、出費は1300両で収まり、2人は松代に700両を持ち帰りました。これを受けて木工は幸弘に対して、2人の手柄を報告するとともに、2人と江戸の役人にそれぞれ100両を賜るように願い出ました。100両を受け取った3人は、その後ますます忠勤に励むようになったといいます。

木工は、財政再建を託された5年後に、46歳で病死しました。木工の財政再建が短期間で成功したかどうかの評価は、今も定まっていないようです。ただ、木工の業績を記した「日暮硯」は、廃村の復興で有名な二宮尊徳も座右の書にしたといわれています。木工の財政再建の取り組みは、後世にも影響を残したといえるでしょう。

【参考文献】

「新訂日暮硯」(恩田木工、笠谷和比古校注、岩波書店、1988年4月)

「日暮硯:信州松代藩奇跡の財政再建」(奈良本辰也、講談社、1987年2月)

「真田松代藩の財政改革:『日暮硯』と恩田杢」(笠谷和比古、吉川弘文館、2017年10月)

3 栗山大膳「小さきことに迷ひては大志は成就せぬなり」

1)2代目トップの暴走で藩が存続の危機に

栗山利章(くりやま としあきら、通称「大膳(だいぜん)」)は、江戸時代前期の福岡藩(福岡県)の筆頭家老で、1632年(寛永9年)から翌年にかけての「黒田騒動(栗山大膳事件)」を引き起こした人物です。黒田騒動は、大膳が幕府に対し、藩主である黒田忠之が「幕府に謀反の意図あり」と訴えた事件です。

事件の火種は、忠之が藩祖で父の黒田長政から藩主の座を引き継いだときから生まれていました。長政はわがままに育った忠之を憂い、臨終に際して大膳に遺書を渡し、「よくよく忠之を頼む。あの性状では将来いかなる状況が起こるやもしれぬ」と伝えたとされます。

長政の大膳への厚い信頼は、互いの父親の代から培われたものでした。大膳の父である利安は、長政の父親である黒田孝高(官兵衛、如水)に小姓(身の回りの世話をする若者)として仕え、有岡城(兵庫県伊丹市)に幽閉された孝高の救出も行った元勲でした。大膳も長政のいとこを妻に持ち、長政の補佐役として、幕府の要人からも知られた存在となりました。

藩主になった忠之は、長政が憂いた通り、大膳など古参の重臣の存在を疎んじ、暴走を始めます。幕府が禁じていた軍船の建造や新たな足軽200人を編成した他、倉八宗重というお気に入りの家臣を家老に抜擢して新兵を配下に付けるなどの「特別待遇」を与えたのです。

折しも、福島家(福島正則)や加藤家(加藤清正の息子の忠広)といった豊臣秀吉恩顧の大名が相次ぎ幕府から取り潰し処分を受ける中で、同じく秀吉恩顧の大名である黒田家を支えてきた大膳は、取り潰しの口実を作らぬことの重要性を感じていました。このため、忠之に暴走をやめるよう何度も諫言しますが聞き入れられず、藩主の顔色をうかがう他の重臣たちとの間で、孤立無援状態となっていきました。

2)乾坤一擲(けんこんいってき)の大勝負に打って出た名家老

そこで大膳はまず、病気と称して自宅に引きこもる「サボタージュ」作戦に出ます。ですが、出仕を促す忠之との関係は冷却していくばかり。ついに大膳の耳に、忠之が大膳を処分しようとしているとの情報が入るようになりました。

進退窮まった大膳は、幕府に対して忠之の叛意を訴えるという、下手をすれば逆に取り潰しになりかねない大勝負に打って出たのです。

大膳からの訴状を受けて幕府は、忠之や大膳ら福岡藩の幹部を呼び出して詮議を行います。とはいえ、実際には忠之に叛意はなく、幕府は「忠之に謀反の意図はない」と判定します。それを聞いた大膳は、偽りの訴えを起こしたのは、「忠之が暴走しているのに他の家老は諫言しない。自分が忠之に処分されて死ぬことは恐れないが、騒動が幕府の耳に入れば藩が取り潰しになりかねないので、黒田家と福岡藩を守るために行った」と告白。「この上は自分だけ御成敗を仰せ付けられれば本望」と申し出ました。

3)勝算を持ちつつ、小さな問題にはためらわず「見切り」を行う

大膳の申し出は、将軍の徳川家光や幕府の要人たちの心を動かしました。幕府の忠之への処分は、「治世不行き届きのため、領地を召し上げる。ただし、長政の忠勤戦功に対して、新たに同じ領地を与える」というものでした。その後、忠之は宗重を放逐し、藩政は落ち着きました。

一方の大膳に対する幕府の処分は、南部藩(岩手県など)に預けるというものでした。生活のための手当ても与えられ、一定範囲内の外出も自由という寛大な処分です。大膳は、その後の約20年を、南部藩で平穏に過ごしました。大膳の晩年、忠之は大膳の息子を召し抱える意向を伝えましたが、大膳は「栗山の姓が福岡藩に戻れば、世間の人々が藩主に過ちがあったことを知り、誹謗することになる」ことを憂いて辞退するとともに、子供たちには栗山の姓を名乗らないように戒めたといいます。

南部藩に移った大膳は、近くに住む幕府の代官が訪れ、武士の心掛けについて問われると、

小さきことに迷ひては大志は成就せぬなり

と答えました。大膳はこれを「見切りの才知」と表現し、

少しの踏違ひはくるしからずと見切り強く之(これ)有(あり)候へば、其事(そのこと)成就(する)

と説明しました。黒田家や福岡藩を守るという「大志」の成就のために、大膳は自らの生命や家老という立場は「小さきこと」と考え、「見切り」を行ったのでしょう。ただし、大膳は「見切り」を行うに当たり、勝算も持っていたようです。大膳は臨終前の長政から、徳川家康が関ヶ原の戦いでの長政の活躍を称え、「子孫の代まで粗略に扱わない」ことを約束した「感状」を預かっていました。大膳は万が一の際の切り札として、信頼できる藩士に、「取り潰しになりそうな情勢になったら、幕府の要人に感状を提出するように」と伝えていたのです。

【参考文献】

「列侯深秘録」(国書刊行会編、国書刊行会、1914年5月)

「栗山大膳:黒田騒動その後」(小野重喜、花乱社、2014年12月)

福岡県朝倉市ウェブサイト「ふるさと人物誌18 黒田52万石を救った 「栗山 大膳」(くりやま だいぜん)」

4 田中玄宰「ならぬことはならぬものです」

1)藩政改革を志すも一度は挫折

田中玄宰(たなか はるなか)は、江戸時代後期の会津藩(福島県)の家老で、多額の累積債務と天明の大飢饉による人口減少という藩の危機を、藩政改革によって乗り切った人物です。

玄宰の生まれた田中家は、5代前の正玄(まさはる)が初代会津藩主の保科正之に仕えて以来、家老に登用されることが多い家柄でした。玄宰も13歳で家督を継いでから順調に昇進を重ね、1781年(天明元年)に34歳で家老に就任します。

家老に就任した玄宰は、多額の累積債務の解消に向け、藩主の松平容頌(かたのぶ)に対して藩政改革を行うことを願い出ますが、許されませんでした。折しも家老に就任して2年後に、天明の大飢饉が発生。飢饉が続く中、失意の玄宰は病気を理由にわずか3年弱で家老を辞職します。

2)同僚たちに根回ししての再提案

家老を辞職した玄宰ですが、藩政改革の志を捨てたわけではありませんでした。病気を理由に閑居している間に、藩内の兵学者や知識人たちと交流するなど、藩政改革の実現のための下地をつくっていたようです。

そして家老を辞職して1年4カ月が経過した1785年(天明5年)、玄宰は再び家老職に復帰します。玄宰は、熊本藩の藩政改革を参考にして建議書を作成しますが、これを藩主の容頌に見せるのではなく、まずは同僚である3人の家老に相談します。建議書に盛り込んだ藩政改革案は、

といったものでした。

玄宰の藩政改革案に対して、3人の家老のうち2人は同調したものの、1人は反対します。これを受けて玄宰は、1人の家老は「別意」があることを付言した上で、容頌の判断を仰ぐことにしました。玄宰は、藩政改革を行うしかない状況であること、自分を含む3人の家老が合意していることを伝えて藩政改革案を提案すると、容頌は玄宰を支持。反対した家老は辞職し、1787年(天明7年)から玄宰による藩政改革が始まったのです。

3)藩外の知見を活用する柔軟さと、藩政改革をやり抜く強い意志を兼ね備えた名家老

3人の家老の役割分担のうち、玄宰は藩政改革の「本丸」ともいえる農林商工、財政、教育といった分野を担当しました。特に産業の振興に関しては、藩外から有能な技術者を招き、漆・漆器、酒造、養蚕・機織り・染色、陶磁器などの特産品の品質向上に成果を上げました。また、食用の鯉の養殖や、藩外への輸出用の朝鮮人参の栽培も導入しました。

そして、藩政改革の仕上げとも言えるのが、藩校「日新館」の拡充を始めとする教育改革でした。玄宰の教育改革により、日新館は、10歳以上の藩士の子弟全員が通う教育施設となりました。また、6歳以上10歳未満の子弟にも「什(じゅう)」というグループを作り、毎日集まって守るべき「什の掟」を復唱することを命じました。什の掟は、「年長者のいうことに背いてはなりませぬ」「虚言(うそ)をいうてはなりません」といった基本的なしつけに関する7箇条からなり、最後に

ならぬことはならぬものです

と結んでいます。一度は挫折しても、藩政改革をやり抜くという、玄宰の強い意志が表れた言葉ともいえるでしょう。

玄宰の下で藩政改革を進めた会津藩は幕末に、幕府を支える雄藩となります。倒幕軍に対して徹底抗戦した会津藩士の強い意志は、幼少時代からの教育によって培われたものだといえるかもしれません。

【参考文献】

会津若松市ウェブサイト「八重と会津博 八重とコラム 会津藩士・基礎の心得「什の掟」」

福島県ウェブサイト「八重のふるさと福島県 田中玄宰(はるなか)」

「なぜ会津は稀代の雄藩になったか:名家老・田中玄宰の挑戦」(中村彰彦、PHP研究所、2016年8月)

「武士道の教科書:現代語新訳日新館童子訓」(松平容頌、中村彰彦訳・解説、PHP研究所、2006年12月)

以上(2023年5月)

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令和4年の交通事故 死者数等の特徴と対策(2023/5号)【交通安全ニュース】

活用する機会の例

  • 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
  • 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
  • マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など

警察庁から公表されている「令和4年における交通事故の発生状況について」によると、全体の死者数は減少傾向にありますが、歩行中の死者数は増加しています。

令和4年の交通事故のポイントをお伝えしますので、交通安全の取り組みを推進し、交通事故の発生を防止しましょう。

1.交通事故死者数の推移と歩行者の事故状況

死者数の推移

交通事故死者数は、2,610人で昨年より26人減少し、警察庁が発表を始めた昭和23年以降の統計で最少人数となりました。

65歳以上の高齢者の死者数も、1,471人で昨年より49人減少しています。しかし、死者数における高齢者の割合は56.4%と依然として高い状況です。

出典:警察庁「令和4年における交通事故の発生状況について」(2023.4.6.閲覧)
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/jiko/R04bunseki.pdf

交通事故の状態別死者数(図1)をみると、歩行中955人(36.6%)で昨年より14人増加し、最多となっています。

状態別死者数(図1)

状態別死者数

小学校低学年の児童や高齢者は歩行中に交通事故に遭うことが多く、次の特徴が示されています。

  • 歩行中児童(小学生)の通行目的別死者・重傷者数(図2)では、登下校中129人(39.1%)を占めています。
  • 高齢者の歩行者死者数(図3)では、横断歩道以外横断中329人(48.5%)で最多になっています。
  • 一方で高齢者の横断中事故の法令違反別死者数(図4) では、横断歩道横断中など歩行者に違反なしのケースが増加しています。

歩行中児童(小学生)の通行目的別死者・重傷者数(図2)

歩行中児童(小学生)の通行目的別死者・重傷者数

高齢者の歩行者死者数(図3)
※列車事故を除く

高齢者の歩行者死者数

高齢者の横断中事故の法令違反別死者数(図4)
※前年比較

高齢者の横断中事故の法令違反別死者数

出典: 警察庁「令和4年における交通事故の発生状況について」から当社作成

2.歩行者との交通事故の防止

歩行者との交通事故を防ぐには、子供や高齢者の行動特性を踏まえ、安全運転を徹底することが大切です。

◆子供

体が小さく物陰に隠れてしまい運転者から気が付きにくいことがあります。また子供は興味を引くものを見つけると、周囲の交通状況を確認せずに道路へ飛び出してくることがあります。

子供

◆高齢者

加齢に伴う身体機能や判断力の低下により、道路の横断に時間がかかる、車の接近に気が付かない、周囲の安全確認をせずに車の直前直後を無理に横断することがあります。

高齢者

≪安全運転の徹底≫

学校付近や通学路などでは、子供が飛び出す危険を想定して、スピードを落とし慎重に運転しましょう。高齢者の側方などを通過するときは、安全な間隔をあけ、減速や一時停止をするなど、思いやりのある運転を心がけましょう。

3.電動キックボードに関する事故状況

今回、電動キックボードに関する交通事故の発生状況が示されています。

令和2年から令和4年までの事故件数は年々増加しており、合計74件の事故が発生しました。今後、電動キックボードの利用者が増えれば、事故の増加が懸念されます。

電動キックボードに関連する交通事故件数・死傷者数

交通事故件数・死傷者数

※ 電動キックボードが第1当事者または第2当事者となった人身事故で、警察庁に報告のあった件数を集計

交通事故の相手当事者別では、車(四輪)が42%で最多となっており、運転者はより一層の安全運転が求められます。

相手当事者別(令和2年~令和4年)

相手当事者別

出典:警察庁「令和4年における交通事故の発生状況について」から当社作成

以上(2023年5月)

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従業員エンゲージメントの向上のために

昨今、多くの企業が人材流出、人材不足に苦慮しており、少子高齢化と人口減少が顕著になった社会において、採用を含めた人材確保が難しい状況になっています。こうしたことから、「人材マネジメント」に特化した課題を克服するために、エンゲージメントへの関心が高まっています。

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従業員エンゲージメントの向上のために

昨今、多くの企業が人材流出、人材不足に苦慮しており、少子高齢化と人口減少が顕著になった社会において、採用を含めた人材確保が難しい状況になっています。こうしたことから、「人材マネジメント」に特化した課題を克服するために、エンゲージメントへの関心が高まっています。

ここでの「エンゲージメント(engagement)」は、従業員の会社に対する愛着や思い入れの意味合いになります。従業員が仕事に没頭し、モチベーションを感じている「エンゲージメントが高い状態」は、企業の業績向上や従業員の定着に大きな効果があります。

本稿では、企業におけるエンゲージメントの実態を把握し、エンゲージメントを向上させるための主な施策をご紹介いたします。

1 エンゲージメントの現状

2022年度(2021年12月~2022年11月)に(株)ヒューマネージが実施したエンゲージメント・サーベイ(68,659名のデータ)の分析結果によると、若年層(20代)の社員のエンゲージメントが最も低く、年代が上がるほどエンゲージメントが高くなっています。

さらに、エンゲージメントの3つの状態(楽しみ/興味・関心/意義)について、年代別に見ると、特に20代、30代の若手従業員は、仕事に対して、「興味・関心」と「意義」は感じられているが、「楽しみ」は感じられていないという状態が読み取れます。

エンゲージメント・サーベイの分析結果

エンゲージメント・サーベイ

((株)ヒューマネージ「エンゲージメント・サーベイの分析結果」)

2 エンゲージメント向上の施策

企業が今以上に従業員のエンゲージメントを向上させるには、下記のような施策を講じることが、有効となります。

エンゲージメントの現状把握

従業員が仕事に対してどのような意識を持ち、会社にどのような印象を持っているのか、社内アンケートなどで現状把握する。

経営層からのメッセージ発信

社長や経営者から、企業理念や今後の展望についてメッセージを伝え、会社全体で統一されたビジョンを共有する。

相応しい人事評価制度の構築

従業員に不公平感を感じさせない納得感のある評価基準を設け、客観的で明確な人事評価制度を構築する。

コミュニケーションの活性化

従業員がオープンに意見を言い合える風通しの良い企業風土を形成し、心理的安全性を高め、会社への帰属意識の向上を図る。

快適に働ける職場環境の構築

従業員が各々に適した業務に就けるよう適材適所の配置を行い、全ての従業員が健全に働けるように労働環境を整備する。

ワークライフバランスの向上

家事や育児・介護との両立ができる働き方の改革や福利厚生の充実を図り、プライベートも大事にしながら働ける会社にする。

3 さいごに

2023年3月期決算以降、上場企業などを中心に人的資本情報の開示が義務化され、「エンゲージメント」は、開示が望ましい19項目のひとつにも挙げられました。このように「エンゲージメント」は、人材マネジメントにおける重要な概念としてその立ち位置を強めています。

人材の流動化や労働力人口の減少で人材の確保が難しくなっている現代において、企業と従業員の関係性を深め、生産性や定着率の向上を目指す取り組みは、企業が成長するための最優先課題の一つと言えるかも知れません。まずは自社で取り入れられる施策から着手してみてはいかがでしょうか。

※本内容は2023年4月13日時点での内容です
(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)

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経営者・役員の退職金制度の税務・財務のポイント

基本的に役員退職金は法人の損金として計上が可能であるため、所有と経営が一致しているオーナー会社等では、恣意的なお手盛り計算が行われる可能性があります。そのため、法人税法においては「不相当に高額」な部分については損金不算入とされています。役員退職金の税法上の基本的な考え方や適切な計算方法、対策について解説していきます。

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【朝礼】そっくりそのまま真似てみろ

皆さんは、マニュアルをそっくりそのまま真似したことがありますか。皆さんの中に「マニュアルなんて大して役に立たない」と考えている人がいるなら、その考えは改めて欲しいと思います。

私は、マニュアルやお手本といったものはとても重要だと思っています。もし、皆さんが何かを習得しようとしているならば、マニュアルやお手本をすべて暗記し、そっくりそのまま真似できるようになってください。マニュアルやお手本は物事の基本を押さえ、そして解説しているものです。だから、これらを覚え、真似できれば、基本を身に付けることができます。

「学ぶ」という言葉の語源は「まねる」だといわれています。例えば、書道を習得するには、誰でも、お手本を忠実に書き写すことから始めます。噺家は師匠の噺を聞いて、それを見て聞いて覚え、自分のものとします。将棋は最善とされる手順や駒組みである定跡を覚え、その定跡通り指し進めることを繰り返します。剣道・柔道などの武道をはじめ、野球・サッカーなどのスポーツは、基本の動きができるようになるまで繰り返し練習します。このように早く上達するコツは、上級者の形や考え、動きを真似ることです。

この段階では、「なぜ、そうするのか」を分からなくてもよいのです。形を真似る、話し方・身振り・手振りを真似る、指し手を真似る、動きを真似ることができれば、その理由を分からなくても、上達できるからです。サッカーが上手になりたい子供が、有名サッカー選手の真似をするのは、実は理にかなっているのです。

この「真似る」という行為は、本当に奥が深いのです。先にマニュアルの話をしましたが、マニュアルはできる人の行為を、文書化したものと考えてください。マニュアルを正確に真似るだけで、皆さんのビジネススキルが上達するのです。

皆さんが、仕事ができるビジネスパーソンになりたいのであれば、モデルとなる人物を見つけて、真似をしてください。身近にモデルとなる人物がいなければ、尊敬する人物の書籍を読み、その人物の考え方や物事への取り組み姿勢を真似てください。

身近なところ、例えば、上司や先輩にモデルとなる人物がいたら、とても幸せなことです。「仕事ができるようになりたいのです。挨拶の仕方から、仕事に対する姿勢、コミュニケーションの方法などすべてを教えていただけますか。教えはすべて受け入れます」とお願いしてみましょう。間違いなく、その上司や先輩はあなたのことを可愛がってくれます。はじめのうちは、何のためにそうするか、どうしてそのように考えるのかは分からなくてよいのです。上司や先輩を真似ているうちに、上司や先輩の言うことをすべて聞いているうちに、いずれその意味が分かってきます。

こうして仕事に対する考え方や時間の使い方などすべてをそっくりそのまま真似てみると、1年後、自分自身がビジネスパーソンとして成長していることに気付くでしょう。そして、1年前には分からなかった「なぜ、そうするのか」が分かるようになり、謎が解けるのです。

以上(2023年5月)

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リフレクションを学びにつなげよう

1 リフレクションとは?

近年、人材育成の場面でリフレクション(reflection)が注目されています。リフレクションは直訳すると“反射”という意味ですが、人材育成におけるリフレクションは、経験や自分の内面を客観的・批判的に振り返る“内省”という意味で使われます。経済産業省が提唱する「人生100年時代の社会人基礎力」においても、あらゆるスキル習得の前提となる力と位置付けられており、リフレクションを鍛えることで、経験から自ら学び、自分をアップデートする力を身に付けることができると考えられています。

2 自分で気づけば主体的に学習できる

リフレクションによって自分で考え、自分で学べるようになることは、人に言われて学ぶよりもモチベーションが保ちやすいといわれています。

子どものころ周囲の大人から「宿題しなさい」と言われ、やる気がなくなった記憶がある人は多いでしょう。他人から指摘されたり強制されたりすると、自分で始めた場合よりもモチベーションが下がりがちです。他人から言われる前に自分で改善点を見つけ主体的に行動できれば、成長しやすくなるでしょう。

3 無意識に行っているリフレクション

リフレクション=内省(振り返り)というと、何となく哲学の用語のようで、難しそうな印象を受けるかもしれません。しかし、実は誰もが意識せずに自然にリフレクションをしています。

例えば、仕事で頼まれていた資料を提出期限までに作成できなかったら、誰に言われなくても遅れてしまった理由を考えるでしょう。できごとの原因と結果を推測するのも、リフレクションの1つです。

本稿では、こうしたわたしたちが自然に行っているリフレクションの内容を改めて整理し、経験から多くを学ぶための考え方を紹介します。

4 リフレクションと“経験学習モデル”

リフレクションの具体的な内容を説明する前に、リフレクションが注目された背景を理解するため、デイヴィッド・コルブが提唱した“経験学習モデル”を紹介します。経験学習モデルは、人が経験したことを振り返って学んでいくプロセスを示した理論です。

経験学習モデルとは、4つのプロセスを繰り返すことで、ただ経験を重ねるだけよりも大きな学習効果を得られると考えています。

1.でまず経験をしたら、2.では俯瞰(ふかん)的な視点でその経験からいったん離れ、自分の行為や感情、できごとの意味を整理します。3.では2.で得られた教訓や法則を整理し、4.で実際の業務や次のアクションに落とし込みます。

リフレクションは、この4つのプロセスのうち、2.のプロセスに当たります(3.や4.のプロセスを含めることもあります)。リフレクションの力を鍛えることで、一見しただけでは分からない問題の本質に気づき、経験したことがない問題を解くヒントを得られるようになります。

5 リフレクションの4つのレベル

リフレクションは、過去の経験を未来に活かすことが目的です。リフレクションの日本語訳である“内省”と似た言葉に、“反省”がありますが、反省は過去の失敗や過ちに対して行うのに対し、リフレクションはポジティブなできごと(成功体験)に対しても行います。失敗したか成功したかにかかわらず、経験を知恵に変えることが大切だからです。

1つの経験から複数の教訓を得るには、できごとの原因と結果を整理するだけでは不十分です。また、問題の原因を他者や環境に求めるだけでは、有効な対策をとることはできません。そこで、リフレクションは学びの質を向上させるため、次の4つのレベルに分けて行います(注)。

(注)ディスカヴァー・トゥエンティワン「リフレクション = REFLECTION : 自分とチームの成長を加速させる内省の技術」(熊平美香、2021年3月)を参考にしています。

レベル1:結果のリフレクション

できごとや結果についてのリフレクションです。事実を正しくとらえることは大事ですが、このレベルのリフレクションに終始していると、経験を学びに変えることはできません。

レベル2:他責のリフレクション

他者や環境についてのリフレクションです。一見正しい有意義な学びですが、他者や環境に原因を求めていては、未来を変えるヒントを得ることはできません。

しかし、実際には多くの人がこのレベル2にとどまってしまいます。なぜなら「指導に時間を費やしているのに部下が育たない」というような課題があった場合、部下の課題ばかりに目が行って、自分の関わり方や指導方法に目を向けるのは難しいからです。

他責

レベル3:行動のリフレクション

自分の行動についてのリフレクションです。自らの行動を振り返り、結果と結びつけることで、次にとるべき行動が見えてきます。

とはいえ、「自身の行動を振り返っても、状況を変えることができない」と悩んだ経験がある人も多いでしょう。経験を振り返っても、次の打ち手を試してみても課題を解決できないときは、経験の前提にある内面に意識を向ける必要があります。

レベル4:内面のリフレクション

自分の内面・持論についてのリフレクションです。私たちの行動の前提には、「こうすれば、うまくいくはずだ」という考えがあります。意識せずとも、過去の経験で培った知恵を活かし、日々行動しているのです。そうした行動の前提にある持論を振り返ることで、行動の前提にある自分の価値観を俯瞰します。

自分の行動が他者や結果にどんな影響を与えたか、もし適切な行動がとれなかったとしたらそれはなぜなのか、ということまでリフレクションを深めることで、望ましい結果を導く適切な行動をとれるようになります。

変化の激しい時代には、前例を踏襲するだけではうまくいく保証はありません。そのため、現代は自己の内面を振り返るレベル4のリフレクションの重要性が高まっているといわれます。

6 なぜ感情や価値観と向き合うことが大切なのか

自覚するのは簡単ではありませんが、わたしたちの行動や考え方には、感情や価値観が深く関わっています。例えば、仕事ができる人がマネジャーになると、部下に仕事を任せるべきだと分かっているのに「自分でやったほうが早い」と、なかなか仕事を周囲に振れないことがあります。頭では、部下に仕事を任せる方法を学ばなければならないと分かっていても、できないのです。

そうした人の話を詳しく聞いてみると、実は「人に指示を出す口先だけの人より、自分で率先して動いて解決する人のほうがかっこいい」といった価値観を持っていることがあります。いまの状況に合った行動ではなく、自分の価値観に合った行動を無意識に選んでいるのです。

できごとの原因と結果を正しく認識するだけでは、自分の行動や考え方を変えられないのはこのためです。しかも、この価値観の根っこにその人のご両親が忙しく働いていた姿などがある場合、本人にはなかなか自覚できないのです。

リフレクションによって自分でも忘れてしまった価値観に自覚的になると、変化を受け入れやすくなります。

【参考文献】
ディスカヴァー・トゥエンティワン「リフレクション = REFLECTION : 自分とチームの成長を加速させる内省の技術」(熊平美香、2021年3月)

以上(2023年5月更新)

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一人でリフレクションをしてみよう

1 リフレクションで学びを加速する

1)思い込みが学習を邪魔する

朝、上司の顔を見た瞬間に「機嫌がよさそう/悪そうだ」と判断することはありませんか? それはこれまでの上司との付き合いから無意識にしているからです。このように、これまでの経験や知識・ものの見方などを基にした判断は無意識に行えるので早く思考できますが、信ぴょう性が薄い知識を基にすると、現状に合っていないものの見方で判断してしまうことも少なくありません。

実際、過去の常識にとらわれて、本当は見えているはずの徴候が見えなくなることがあります。「現代は技術の進歩が速い」と何度も聞いていたのに、新型コロナウイルス感染症が拡大するまで、多くの企業においてリモートワークが実現できるとは思っていなかった人がほとんどでしょう。リフレクションは、わたしたちが無自覚に行っているこうした認知・判断のプロセスを客観的・批判的に振り返ることで、新しい知識・考え方を取り入れやすくするといわれています。

2)自分の思い込みをつくる認知の4点セット

思い込みはどうやってできるのかを理解するため、意見ができる過程を考えてみましょう。わたしたちは同じものを見ても、背後にある価値観が違えば全く別の意見を持つことがあります。その際の価値観は、過去の経験やそのときの感情などに基づいています。

例えば、犬が好きな人と嫌いな人の認知の違いを見ましょう。同じ犬について考えているのに、過去の経験やそのときの感情によって、全く異なる意見になっています。

犬が好きな人と嫌いな人の例

こうして4つの視点で俯瞰(ふかん)してみると、自分の意見がどうやってできたか、また他の人の意見がなぜ違うかを理解しやすくなります。

この4つの視点は、次のように言い換えることもできます。

  • 意見:考え・学び・思ったこと
  • 経験:意見の背景にある経験(意見の根拠)、情報
  • 感情:その経験や知識に対してどのような感情を抱いているか
  • 価値観:判断に用いた基準や尺度、ものの見方

この4つの視点を意識して多角的な見方ができれば、1つの意見に固執することが少なくなるので、1つの経験から複数の教訓が得られ、学習のスピードも速くなるでしょう。

犬好き猫好き

2 一人でリフレクションするときのポイント

人材育成の場面では、会社の上司や同僚とリフレクションすることが多いかもしれません。確かに一人でリフレクションをすると、自分以外の意見や経験には触れられないというデメリットはありますが、自分自身と落ち着いて向き合えるというメリットもあります。

リフレクションにあまり慣れていない人が、一人で始める場合のポイントを紹介します。

1)記録をとる

リフレクションは、経験や自分の内面を客観的に見ることと、変化が分かるようにすることが大切です。ノートに書いたり、スマホに打ち込んだりしてみましょう。また、リフレクションを行う頻度・期間(毎日、毎週、2週間ごと、1カ月ごとなど)を決め、その間に起きたできごとを上述した4つの視点に分けて分析します。文字にすることで客観視でき、後から見返すことで自分の変化に気づいたり、逆に未解決のまま放置されている課題が見つかったりします。

2)昔の経験から学ぶ

リフレクションの基本は、自分が感じていることを当たり前と思わず、「なぜこんなふうに感じたのだろう。他の感じ方はないだろうか」と自分に問いかけてみることです。振り返る対象を、最近経験したできごとだけではなく、もっと前のできごとやこれまでの人生に広げてみると、思わぬ発見があるでしょう。

例えば、昔は失敗だと思っていたことが今の自分には大きな糧になっていたり、逆に成功体験だと思っていたことから、間違った学習をしていたりします。当時は正しかった価値観が現状に合わなくなっていると気づくこともあるでしょう。

また、自分の感情に注目してリフレクションしてみると、役立つ法則が見つかるかもしれません。頑張れた経験や夢中になれた経験には、自分で自分のモチベーションを上げるヒントが隠れています。

3)問いかけでリフレクション力をアップする

リフレクションに慣れてきたら、自分が結果、他責(他者・環境)、行動、価値観のどこについてリフレクションすることが多いのかをチェックしてみましょう。リフレクションのレベルを上げることで、自分で自分の価値観をアップデートし、変化に対応できる力が身に付いていきます。

リフレクションのレベルを上げるための問いかけの例

【参考文献】
ディスカヴァー・トゥエンティワン「リフレクション = REFLECTION : 自分とチームの成長を加速させる内省の技術」(熊平美香、2021年3月)

以上(2023年5月更新)

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