家業の資源で挑む新事業!「アトツギ甲子園」第7回募集のポイント【経営者とっておきニュース】

経済産業省中小企業庁は、中小企業の後継予定者が既存の経営資源を活用した新規事業アイデアを競うピッチイベント「第7回アトツギ甲子園」のエントリー受付を、8月3日より開始します(締め切りは11月25日)。

対象は39歳以下の後継予定者で、親族外承継も対象に含まれます。書類審査を通過した応募者は、全国6ブロックで開催される地方大会へ進み、勝ち抜いたファイナリストが2027年2月に都内で行われる決勝大会に挑みます。また、8月末には支援者や若手後継者が一堂に会するキックオフイベント「アトツギSUMMER CAMP」も開催されます。

日本全国で中小企業の高齢化と後継者不足が進む中、単なる事業の継続にとどまらない「第二の創業」としての事業承継が強く求められています。従来型の事業を引き継ぐだけでは、市場の縮小や急速な環境の変化に対応しきれないケースが増えているためです。こうした背景のもと、本イベントは若手後継者の戦略立案能力や実行力を養い、既存の技術や顧客基盤といった地域資源を活用したイノベーションを後押しする狙いがあります。

この取り組みは、地元の伝統産業や地場企業に新たな価値をもたらす大きなメリットがあります。若手の柔軟な発想によって新商品や新サービスが生まれることで、自社の売上向上にとどまらず、地域のサプライチェーン全体に刺激を与え、地元の雇用創出や活性化へと波及するためです。

一方で、既存の社内文化やベテラン社員との意見対立を乗り越える社内コミュニケーションの確立や、新規事業を軌道に乗せるための資金調達・伴走支援体制の確保といった課題も存在します。地元の自治体や金融機関による継続的なサポート体制の構築が不可欠となります。

「アトツギ甲子園」のような挑戦の場が定着することで、地域経済を牽引する次世代リーダーの育成が加速度的に進むと見込まれます。旧来のビジネスモデルからの脱却を目指す動きは全国各地へと広がり、地方発のイノベーション事例が益々増加していくでしょう。

他地域のビジネスパーソンにとっても、本施策から得られる教訓は明確です。それは「既存の経営資源×客観的・先進的な視点」こそが、競争優位性を生み出す源泉になるという点です。自社が当たり前に持っている強みや資産を再定義し、時代の変化に合わせてどう再構築できるかという問いを、常に持ち続けることが持続的成長の鍵となります。


【ご注意点】この記事は生成AIを活用して作成したものです。文章の正確性は保証されておらず、誤りが含まれる場合があります。詳細については参照URLの情報を必ずご確認ください。
■中小企業基盤整備機構「第7回「アトツギ甲子園」8月3日エントリー受付開始」■
https://j-net21.smrj.go.jp/news/bt5puv000000p7cl.html

以上(2026年8月作成)

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最低賃金改定と地方経済 中小企業が採るべき持続的成長策【経営者とっておきニュース】

厚生労働省の中央最低賃金審議会は、令和8年度の地域別最低賃金額改定の目安を取りまとめました。

今年度の目安額は、都市部を中心とするAランクが54円、地方部を中心とするBおよびCランクが56円に設定されています。仮に目安通り改定された場合、全国加重平均の上昇額は55円(引上げ率4.9%)となり、時給は1,176円へ到達します。

特に注目すべきは、地方圏(B・Cランク)の引き上げ目安額が都市部(Aランク)を上回った点です。今後は各地方最低賃金審議会での審議を経て、10月頃から順次改定結果が適用される見通しです。

今回の決定の背景には、継続する物価高や高水準の春季賃上げ動向に加え、地域間の賃金格差を是正し地方からの労働力流出を防ぐという政策的な狙いがあります。地方の最低賃金を大きく底上げすることで、地域内での人材確保と定着を促進する意図が強く反映されています。

この動向は、地域の産業や事業者に対して多角的な影響を及ぼします。

  • メリット(地域経済・労働者): 賃金水準の向上に伴う地元就労の促進や人材離職率の低下、地域内の消費購買力の改善が期待されます。
  • 課題(中小企業・サプライチェーン): 原材料費やエネルギーコストの上昇が続く中、人件費の増大は資金余裕の少ない中小企業の経営を直接圧迫します。特に労務費の適切な価格転嫁が進んでいない川下の企業やサービス業では、収益性の急速な低下や雇用維持の負担増が深刻な課題となります。価格転嫁の適否によって企業の業績や採用力の二極化が進む懸念もあります。

今後は、コスト上昇を吸収できない企業の選別が進むとともに、省力化投資や高付加価値化へ舵を切る経営改革が一層加速すると予測されます。

他地域のビジネスパーソンにとっても、従来の「低コスト・低賃金に依存したビジネスモデル」からの脱却は避けられない共通の課題です。

明日から意識すべき視点は、「人件費を単なる『費用』として抑制するのではなく、適正な価格転嫁と業務効率化(DX・省力化)を通じて『1人当たりの付加価値向上』へ繋げる視点」です。単なる人件費増の対処に留まらず、自社の提供価値と業務プロセスの根本的な見直しに着手することが持続的成長の鍵となります。


【ご注意点】この記事は生成AIを活用して作成したものです。文章の正確性は保証されておらず、誤りが含まれる場合があります。詳細については参照URLの情報を必ずご確認ください。
■厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74920.html

以上(2026年8月作成)

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同族企業の成長と永続を支える!経産省の「ファミリーガバナンス・ガイダンス」【経営者とっておきニュース】

経済産業省は2026年6月5日、同族経営を行う企業向けに「ファミリーガバナンス・ガイダンス」を公表しました。

本指針は、同族企業(ファミリービジネス)が持つ「長期的視点」や「迅速な意思決定」といった強みを伸ばす一方、親族間の対立や後継者問題などのリスクに適切に対処し、持続的な成長を実現するための規範として策定されたものです。

主な対象は非上場の中堅・中小企業ですが、企業規模や上場の有無を問わず活用できます。ファミリー内や株主等のステークホルダーとの合意形成のポイントが整理されています。

この動きの背景には、日本の中小・中堅企業の多くが同族経営であり、地域経済の雇用や基幹産業を支えている現状があります。政府が2025年に策定した「中堅企業成長ビジョン」を踏まえ、有識者や経営者へのヒアリングを経て本ガイダンスがとりまとめられました。地域経済やサプライチェーンの維持・発展において、これら同族企業の安定的な存続と成長は不可欠な要素です。

本ガイダンスの公表は、地域経済や関連業界に多角的な影響を与えます。メリットとして、ファミリー内のルールや理念が明文化されることで、円滑な事業承継や経営の透明性向上が期待できます。これにより金融機関や取引先からの信頼が高まり、資金調達や企業連携の強化につながります。一方で課題として、親族間の合意形成や組織体制の整備には時間と労力がかかるため、自社の状況に合わせた段階的な取り組みが必要です。また、競合他社にとっては、ガバナンスを固めた同族企業が強固な経営基盤を構築することが新たな脅威となり得ます。

今後は、付属のチェックリストなどを活用し、自社に最適なガバナンス体制を構築する同族企業が増加すると予測されます。これにより、地域経済全体の持続可能性と競争力が一段と高まるでしょう。

他地域のビジネスパーソンにとっても、本件は「創業家・経営陣・ステークホルダーの関係性をあらかじめ明文化し、将来のリスクを予防する視点」の重要性を示しています。明日から自社の意思決定プロセスや親族・株主間の取り決めを点検し、長期的な企業価値向上に向けた対話を開始することが推奨されます。


【ご注意点】この記事は生成AIを活用して作成したものです。文章の正確性は保証されておらず、誤りが含まれる場合があります。詳細については参照URLの情報を必ずご確認ください。
■経済産業省「『ファミリーガバナンス・ガイダンス』の公表について」■
https://www.meti.go.jp/press/2026/06/20260605001/20260605001.html

以上(2026年8月作成)

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未利用魚を価値化「魅了ギョ」始動【経営者とっておきニュース】

水産庁は、サイズ規格外や知名度の低さから市場で流通しにくかった「低・未利用魚」の利用拡大と付加価値向上を目指す「魅了(みりょう)ギョ・プロジェクト」を開始しました。本取り組みは、先行して実施された「クロダイのおいしさ認知向上プロジェクト」の成果を踏まえて発展、展開されたものです。

本事業では、産地から加工、流通、外食、小売に至る多様な関係者が連携し、新商品開発や販路開拓を推進します。すでに第一弾として11のプロジェクトがスタートしており、8月19日には東京ビッグサイトで開催される「ジャパン・インターナショナルシーフードショー」にてオープンセミナーを実施し、取り組みの周知と事業者間のマッチング支援を本格化させます。

背景には、近年の海水温上昇や海洋環境の変化に伴い、従来の主要魚種の漁獲量が減少する一方で、知名度の低い魚種や特定地域でしか消費されない魚が増加している現状があります。これらは加工の手間や市場価値の低さから廃棄・安値取引されることが多く、水産業者の収益圧迫や地域経済の停滞を引き起こす要因となっていました。

本プロジェクトの始動は、水産業界および地域ビジネスに新たな商機をもたらします。サプライチェーンが一体となって未利用魚の活用を進めることで、水産加工業者や外食・小売企業は「独自性のある新商品開発」や「仕入れコストの最適化」といった差別化戦略を打ち出せます。一方で、未利用魚は収穫量の変動が大きく形状も不揃いであるため、柔軟な加工体制やメニュー提案といった運用の工夫が今後の課題となります。

今後は、未利用魚の活用が単なる食材の無駄防止にとどまらず、フードロス削減や地産地消といったサステナビリティの観点と結びつくことで、大きな消費者価値を獲得すると予測されます。

他地域のビジネスパーソンにとっても、本取り組みは非常に示唆に富んでいます。明日から意識すべき視点は、「自社の業界において『価値がない』と見過ごされてきた素材や資源に、他社との連携と視点の変換によって新たなストーリーと付加価値を与える」ということです。自社の周辺に眠る「未利用資産」を再発掘することこそが、次の事業成長への鍵となります。


【ご注意点】この記事は生成AIを活用して作成したものです。文章の正確性は保証されておらず、誤りが含まれる場合があります。詳細については参照URLの情報を必ずご確認ください。
■中小企業基盤整備機構「未利用魚を有効活用『魅了ギョ・プロジェクト』始動」■
https://j-net21.smrj.go.jp/news/bt5puv000000q06y.html
■水産庁「『魅了(みりょう)ギョ・プロジェクト』の始動について」■
https://www.jfa.maff.go.jp/j/press/kakou/260724.html

以上(2026年8月作成)

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地方創生の近未来:地域資源とデジタルが拓く中小企業の新潮流【経営者とっておきニュース】

中小企業基盤整備機構が支援する地域活性化プロジェクトにおいて、地域資源を活用した持続可能な事業モデルの構築支援が始動しました。本取り組みは、全国の地方都市における中小企業の持続的発展と新事業創出を目的としています。

具体的には、地場産業の強みと最新のデジタル技術を掛け合わせることで、新たな付加価値を創出する先進事例の横展開を目指すものです。専門家派遣や資金面での補助に加え、域外マーケットや海外への販路拡大支援を一体となって提供する包括的な枠組みとなっています。

このような動きが加速している背景には、深刻な人口減少と国内市場の縮小に伴う地域経済の強い危機感があります。従来の請負型ビジネスや特定地域内での取引に依存した経営手法では、原材料高騰や人手不足といった構造的課題に対処することが限界に達しつつあります。そのため、自社の強みを再定義し、広域的な視点で自走可能な需要を獲得することが急務となっています。

本取り組みは、周辺企業や地域経済に大きな波及効果をもたらします。地元一次産業や伝統産業がデジタル技術やブランディングと連携することで、「単なる製品売買」から「体験価値の提供(D2Cや地域ブランド化)」への転換が進みます。これにより、競合との差別化が図れるだけでなく、サプライチェーン全体の利益率向上と新たな雇用創出が期待されます。

一方で課題も存在します。デジタル人材の不足や経営層の意識改革の遅れが、変革のスピードを抑制する要因になり得ます。行政や公的機関の支援施策を単なる助成金として消費せず、自立的な収益基盤の構築へ繋げられるかが今後の成否を分けるポイントとなります。

今後は、地域経済が「規模の拡大」から「質の高付加価値化」へとシフトしていくと考えられます。単一の企業努力にとどまらず、地域の多様なプレイヤー(行政・金融機関・異業種企業)が共創するプラットフォーム型のビジネスモデルが標準化していくでしょう。

他地域のビジネスパーソンにとっても、本施策は非常に示唆に富んでいます。明日から意識すべき視点は、「自社のコア資源×異分野のトレンド」による文脈(コンテクスト)の再構築です。既存の顧客層や地域特性にとらわれず、最新テクノロジーや市場ニーズと組み合わせることで、どの地域・業界でも新しい勝ち筋を創出できます。


【ご注意点】この記事は生成AIを活用して作成したものです。文章の正確性は保証されておらず、誤りが含まれる場合があります。詳細については参照URLの情報を必ずご確認ください。
■中小企業基盤整備機構「知財経営で『稼ぐ力』向上へ 中小・中堅企業を募集」■
https://j-net21.smrj.go.jp/news/bt5puv000000pcig.html
■関東経済産業局「令和8年度「知財を企業の強みに!『稼ぐ力』向上プロジェクト」(知財経営推進ベストプラクティス創出事業)の公募情報」■
https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/chizai/r8fy_kigyo_koubo.html

以上(2026年8月作成)

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社員のミスで会社に損害が……。 本人への賠償請求は可能?

1 原則:社員に全額の損害賠償を請求することはできない

会社には、様々なバックグラウンドを持つ人間が集まっています。ですから、社員が業務中にミスをすることも当然想定されます。ただ、なかには「看過しにくい重大なミスをする社員」などもいて、そうした社員に対し、「損害賠償を請求できないか?」と考える経営者がいても不思議ではありません。

しかし、まず理解しておくべきことは、

社員に全額の賠償を請求することは原則としてできない

ということです。一口にミスといっても、同じミスを何度も繰り返しているのか、取引先の信用を失うほどのミスなのかなどによって判断が変わります。そのため、

  • 社員に対する損害賠償請求に関する基本的な考え方
  • 「こんな場合に請求できる? できない?」というケーススタディー

を学ぶ必要があります。以降で弁護士(筆者)がポイントを解説するので見ていきましょう。

2 なぜ、ミスがあっても基本は会社負担なのか?

日本の法令では、社員と会社の関係は「報償責任」の考えに基づいています。

報償責任とは、「会社は、社員が業務を遂行することで利益を得ているのだから、その過程で発生する損害について、会社が責任を負うのは当然である」という考え方

です。そのため、社員が業務中にミスをしたとしても、原則として全額の損害賠償を求めることは認められません。労働基準法でも、社員が過度なプレッシャーや責任を負わないように、あらかじめ違約金や損害賠償額を定めておく契約を禁止しています(賠償予定の禁止)。こうした法律の考えから、社員のミスによる損害についても、基本的には会社が負担することになるのです。

実際に社員に対する損害賠償請求が問題になった事案もあります。有名な「茨城石炭商事事件(最高裁第一小法廷昭和51年7月8日判決)」においても、

会社が社員に対して賠償責任を問う際の基準が示されており、社員のミスによる損害が会社の業務指示の範囲内で起こった場合、その基準に基づいて妥当な範囲でのみ、社員個人に責任を追及できる

とされています。この判例により、社員が業務上のミスを犯した場合でも、原則として会社が損害を負担するという考え方が強調されました。主な判断要素は次の通りです。

(図表)【会社が社員に対して賠償責任を問う際の基準】

判断基準 内容
故意・過失の程度 故意、重過失かどうか
業務内容 ミスが起きやすい業務かどうか
使用者の管理体制 ミスを予防するための教育・指導が不十分だった可能性
損害の大きさ 請求額が社員の生活に与える影響など

(出所:茨城石炭商事事件(最高裁第一小法廷昭和51年7月8日判決)を基に作成)

3 このケースは損害賠償できる? できない?

1)発注ミスで、頼んでいない商品が大量に会社に届いてしまった……

1.ケーススタディー

卸売業の会社に勤めるAさんは、商品の発注を担当しています。あるとき、Aさんは10個発注する予定の商品を、入力を誤って100個発注してしまいました。返品も利かず、会社は大量の在庫を抱えることになってしまいました……。会社からAさんへの損害賠償請求は認められるでしょうか?

2.考え方

商品の発注、特にウェブ上で発注を行う場合、入力ミスなどによって発注内容(種類・数量など)を間違えてしまうことがあります。業務を行っていれば、通常起こり得るようなささいな不注意であり、一般的に損害賠償請求は認められにくいといえるでしょう。

Aさんが新入社員の場合などは、上司や先輩が横について発注前に画面を確認するなどの配慮が必要であり、なおさら損害賠償請求は難しくなります。

ただし、Aさんが長年経験を積んだ管理職にもかかわらず、基本的な発注手順を無視して発注ミスを犯した場合などは、Aさんの過失が重大であるとして、損害賠償請求が認められる可能性があります。

2)営業担当が勝手に納期を決めたせいで、開発部門にしわ寄せが……

1.ケーススタディー

Bさんはソフトウエア企業の社員で、システム開発の営業を担当しています。ある日、Bさんは、取引先から短納期でのシステムの納入を頼まれましたが、取引先との関係を維持したいあまり、開発部門に確認もせず、納入を約束してしまいました。開発部門は無理なスケジュールでシステム開発を行いましたが、結果として納期には間に合わず、しかも納入後にシステムの不具合が発生。取引先側でもリリース延期の対応が生じてしまい、会社が取引先から「どうしてくれるんだ!」と詰められる事態に……。会社からBさんへの損害賠償請求は認められるでしょうか?

2.考え方

Bさんのケースのように、部門間で十分な連携をしないまま、取引先に無理な約束をしてトラブルになるケースは少なくありません。部門間の情報共有・連絡方法などの体制を見直すべき案件です。とはいえ、Bさんの過失は法的には軽微なものであり、損害賠償請求は認められにくいといえるでしょう。

ただし、Bさんが、事前に開発部門から「このスケジュールでは難しい」「納期を調整してくれ」と言われていたにもかかわらず、意図的にそれを無視して納期を約束してしまった場合などは、損害賠償請求が認められる可能性があります。

3)コンピューターシステムの操作ミスで、大事なデータが消えてしまった……

1.ケーススタディー

Cさんはある会社のIT部門で、システムのメンテナンスを担当しています。Cさんが、夜な夜なシステムのアップデート作業を行っていた際、誤って重要なデータを削除してしまいました。その結果、会社のシステムが一時的に停止し、取引先にも影響を与えてしまいました……。会社からCさんへの損害賠償請求は認められるでしょうか?

2.考え方

パソコンで業務を行うのが当たり前の現代、システムのアップデートに限らず、作業中に保存されていたデータを誤って消してしまうというミスはどの会社でも発生し得ます。こうしたミスは、原則として損害賠償請求が認められにくいといえるでしょう。

例えば、Cさんが、過去にも注意を受けたにもかかわらず作業手順やマニュアルを無視して、独自の方法で作業を行った場合や、夜な夜なお酒を飲みながら作業していた場合などは、過失が重大であるとして、損害賠償請求が認められる可能性があります。

なお、単純なミスではなく、退職に際して故意にデータを削除するなど背信的な事案では、通常のミスとは異なり重い責任が認められやすく、数百万円規模の損害賠償が命じられた裁判例もあります(徳島地裁令和7年1月16日判決)。

4)広告に著作権違反のイラストが掲載されて、権利者から警告を受けた……

1.ケーススタディー

若手社員のDさんはマーケティング部門で、自社商品の広告を制作しています。Dさんが新商品のウェブ広告を制作した際、他社のキャラクターを参考にしたイラストが含まれてしまい、そのまま広告に掲載されてしまいました。これを見た他社の権利者から警告を受け、消費者からの信頼を失い、ブランドイメージに大きな悪影響を与える結果となりました……。会社からDさんへの損害賠償請求は認められるでしょうか?

2.考え方

広告に関するミスは、会社のイメージにも直結するため、損害が大きくなりがちです。とはいえ、イラストの著作権などについて正しく理解している社員はそう多くありませんし、Dさんの立場にもよりますが、一般的に若手社員が1人で制作した広告がそのまま採用されるケースはまれです。通常は複数の社員が広告に携わるものであるという前提に立つと、Dさんの過失は法的には軽微なものであり、損害賠償請求は認められにくいといえるでしょう。

ただし、Dさんが、本来であれば広告チェックを担う立場の社員であるにもかかわらず、楽をするために生成AIを利用し、かつ著作権チェックをしなかった場合などは、その過失が重大であるとして、損害賠償請求が認められる可能性が高くなります。

また、会社の許可を得ずに無料の生成AIサービスへ機密情報を入力する、いわゆる「シャドーAI」の利用が情報漏洩や秘密保持契約違反を招くケースも指摘されています。社員が独断で利用した場合であっても、会社が利用ルールの周知や管理体制を十分に整えていなければ、使用者責任が問題となり得ます。

5)消費者からのクレーム対応を誤ってしまい、消費者に損害を与えた……

1.ケーススタディー

Eさんは、一般消費者向けに化粧品を販売する会社の、カスタマーサポート部門に勤めています。ある日、Eさんは消費者からのクレームに対し、誤った情報を伝えてしまいました。そのため、顧客は化粧品の使い方を間違ったことで肌荒れになり、訴訟を起こすと言っています……。会社からEさんへの損害賠償請求は認められるでしょうか?

2.考え方

クレーム対応の際に誤った情報を伝えたことによって、顧客が損害を被ったという事例です。カスタマーサポートなどの業務では、会社がマニュアルを作成したり、社内相談フローが定められたりしているケースが多いですが、オペレーターによる誤案内も発生しやすいミスです。オペレーターによる誤案内が過失によるミスであった場合、会社がその損害を負担するのが一般的であり、Eさんの誤案内が軽度のものであれば、損害賠償請求は難しいといえるでしょう。

ただし、Eさんが過去にも、同様のクレーム対応で同じようなミスを繰り返していたり、会社が定めるマニュアルや相談フローに従わずに独自で判断したりした場合には、損害賠償請求が認められる可能性があります。

4 会社ができる対策は?

こうした社員のミスによる損害を未然に防ぐために、会社が実施すべき対策がいくつかあります。これらの対策をしっかりと整備することで、リスクを減らし、社員の負担を軽減しつつ、会社の利益を守ることができます。

1)マニュアルの整備と研修・教育

まずは会社が、業務を遂行する社員に対し、明確な指示を与えることが重要です。業務の進め方や手順について詳細なマニュアルを整備し、社員がミスをしないように配慮しましょう。

また、社員による業務上のミスを最小限に抑えるには、定期的な研修や教育が重要です。会社は、社員に対して業務に必要な知識やスキルを定期的に習得させることで、ミスを減らし、万が一ミスが発生した場合でも、迅速に対応できる体制を整えることが可能です。

2)就業規則への明文化

就業規則には、社員が業務を遂行する際に注意すべき事項や、ミスが発生した場合の対応方法、賠償責任に関する規定などを盛り込むことができます。例えば、社員が業務中に重大な過失を犯した場合の対応方法や、その責任の範囲について明記しておくことが考えられます。これによって、社員も事前に自分の責任範囲を理解し、ミスを防ぐ意識が高まります。

なお、就業規則に損害賠償規定を盛り込むことも可能ですが、「ミスをしたら〇万円」といった損害賠償の予定を設けると、違法・無効となります。また、「損害の全額を賠償させる」規定も、裁判になれば一部制限される恐れがあります。

3)保険の活用

社員のミスに対するリスクを減らすために、適切な保険に加入するのも一つの方法です。特に、社員が業務を遂行する中で生じる事故や損害をカバーする保険を活用することで、予期しないリスクに備えることができます。保険会社によって様々な内容の保険があり、契約内容によっては社員の過失による損害も対象となるものがあります。

以上(2026年8月更新)
(執筆 石原法律事務所 弁護士 磯田翔)

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チェックリストで確認! 「経理部門」のBCP

1 経理部門におけるBCP策定が必要なわけ

企業において「カネ」を管理する経理部門は、決算業務(決算書・申告書の作成など)の他、現金の管理・出納業務、各種伝票の起票や請求書の発行など多岐にわたる重要な業務を担います。これにより、人間の血液のように企業にカネが循環し、事業活動がスムーズに運びます。

逆に、災害などで経理の機能がストップすれば、事業活動に大きな影響を及ぼしかねません。ですから、

経理部門に特化したBCP

の策定が必要です。災害のみならず、さまざまなリスクを想定し、どのような事態が起こるのかを把握していかなければなりません。

2 経理の機能がストップした場合のリスクシナリオ

経理業務を中断せざるを得なくなるリスクには、地震・津波などの広域災害、火災、感染症のまん延、情報システムの故障などがあります。これが顕在化した場合、オフィスや工場などの閉鎖、情報システムの使用不能、社員の勤務が不可能になるなどの被害が出る恐れがあります。

その際のリスクシナリオは次の通りです。

リスク 被害
オフィスや工場などの閉鎖 情報システムが使用不能 社員の勤務(出社・リモート)が不可能
地震・津波などの広域災害 ・オフィスや工場などの閉鎖
・決算書、仕訳帳・現金出納帳、伝票などの紛失
・決算書、仕訳帳・現金出納帳、伝票などのデータ消失
・情報システムの停止
経理業務を担う責任者や実務担当者が出社もリモート勤務もできない
火災 ・オフィスや工場などの閉鎖
・決算書、仕訳帳・現金出納帳、伝票などの紛失
・決算書、仕訳帳・現金出納帳、伝票などのデータ消失
・情報システムの停止
-
感染症の蔓延 オフィスや工場などの閉鎖 - 経理業務を担う責任者や実務担当者が出社もリモート勤務もできない
情報システムの故障 - ・決算書、仕訳帳・現金出納帳、伝票などのデータ消失
・情報システムの停止
-
オフィスの停電・空調などの故障 オフィスや工場などの閉鎖 情報システムの停止 -
電気などの社会インフラの故障 オフィスや工場などの閉鎖 情報システムの停止 経理業務を担う責任者や実務担当者が出社もリモート勤務もできない
交通機関などのトラブル - - 経理業務を担う責任者や実務担当者が出社もリモート勤務もできない
デモなどによるオフィス・施設の破壊 オフィスや工場などの閉鎖 情報システムの停止 経理業務を担う責任者や実務担当者が出社もリモート勤務もできない
テロなどの犯罪 オフィスや工場などの閉鎖 - 経理業務を担う責任者や実務担当者が出社もリモート勤務もできない
サイバーテロ - ・情報システムの停止
・機密情報の流出
-

(出所:日本情報マート作成)

最悪のシナリオは、地震・津波などの広域災害、電気などの社会インフラの故障、デモなどによるオフィス・施設の破壊が生じて、

1.オフィスや工場などの閉鎖を余儀なくされる

2.情報システムが使用不能になる

3.社員の勤務(出社・リモート)が不可能になる

という3つの被害が「同時」に発生することです。

3 当面の運転資金はいくら必要か?

緊急時は、事業継続に不可欠な経営資源が不足し、急激かつ大幅に収益が落ち込む恐れがあります。特に重要な課題は、

  • 当面の運転資金やオフィス・機械の修理に必要な復旧資金の確保
  • 取引先や社員に対する金銭の支払い

です。そのような状況において、経理部門は

被害額を算出し、運転・復旧資金の見積もりを行うなど、通常の業務以外に重要な業務

を任されることが想定されます。これらの見積もりは、経営者層がBCPを実行するに当たっての判断材料として、資金繰りや復旧スケジュールの決定などに大きな影響を与えるでしょう。

なお、決算や税務申告については、過去の東日本大震災や新型コロナ感染症の感染拡大時などがそうだったように、一定期間の猶予が認められると想定されます。

4 支払いの遅延を防ぐための考え方

1)オフィスや工場などの閉鎖

オフィスや工場などが使用不能となった場合の対策は、

決算書、仕訳帳・現金出納帳、伝票などの重要書類を電子データ化し、別の場所(クラウドを含む)に保管すること

です。また、本社と支社が分かれている場合、被災した本社または支社の業務を、一時的に他の場所に移すことも検討しましょう。

2)情報システムが使用不能

情報システムが使用不能となった場合の対策は、

会計システムなどの基幹システム・データのバックアップ、複数のサーバーを置くこと

です。そうすることで、経理機能を他の支店などに移す場合もスムーズになります。また、インターネットバンキングを利用していれば、移動先でも資金決済などができます。

3)社員の勤務(出社・リモート)が不可能

社員が出社もリモート勤務もできなくなった場合は問題です。一般的に経理業務は専門性が高く、内部統制の観点からも、担当者間の職務分掌(責任と権限の所在が分かるよう業務を整理・配分していること)が徹底されています。そのため、同じ経理部門でも担当外の業務を代行するのは困難です。それに、決済の権限がないために業務が進められないことも想定されます。

このようなケースを想定した対策は、

担当外業務の代行訓練、緊急時の権限移譲ルールの明確化、業務のマニュアル化

です。

5 被害額の算出、運転・復旧資金の見積もり

1)他部門との連携方法を決めておく

緊急時に、被害額の算出、運転・復旧資金の見積もりなどの特別業務を行うためには、誰が、どの業務を、どのように進めるかを、事前に決めておく必要があります。被害状況の情報収集先となる部門とも事前に連携方法を決めておきましょう。

2)必要資金の見積もり

緊急時に、運転・復旧に十分な資金を確保することは簡単ではなく、事前の準備が重要です。万一の場合に備え、事前に緊急時の財務状況(復旧費用総額、キャッシュフローなど)を見積もり、それに基づいて必要な資金を確保しておくことが理想です。

中小企業庁が「中小企業BCP策定運用指針」で、財務診断モデルを紹介しているので参考になります。

■中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」財務診断モデル■
https://www.chusho.meti.go.jp/bcp/contents/bcpgl_download.html#excel

3)緊急時の資金調達方法

追加の資金が必要になったら、政府系金融機関、民間金融機関などの貸し付けを検討します。災害発生時には政府系金融機関や国、地方自治体などが特別な融資制度を設ける場合も多いので、情報収集や活用の検討を行いましょう。加えて、復旧資金については、事前にオフィスや機械の損害保険、共済などに加入しておくことも有効です。

緊急時は、経理の責任者が経営者の代わりに資金繰りなどを任されることもあるでしょう。そうした場合に備え、経理の責任者は、日ごろから経営者と緊急時の財務管理について認識を共有しておく必要があります。

6 BCPを策定・定着させる

検討した対策をBCPとしてまとめます。その際、「全社共通」「リスク別」「部門・チーム別」などのようにレベル分けすると管理しやすくなります。さらに、BCPの発動基準や発動時の態勢、関係者の連絡手段なども明らかにします。

また、BCPは策定しただけでは十分に機能しないので、定期的な訓練や勉強会を行って組織全体にBCPを浸透させましょう。同時に、BCPの有効性も定期的にチェックし、必要に応じて内容の見直しを行うことが大事です。

7 経理部門におけるBCPの策定チェックリスト

1.ヒト 2.モノ 3.カネ
  • □災害が勤務時間外に起こった場合も、社員と連絡が取れるか?
  • □経理の責任者や実務担当者が出勤できない場合のルールは明確か?
  • □緊急時における業務の優先順位は明確か?
  • □緊急時における業務の役割分担はできているか?
  • □被害額の算出など、緊急時特有の業務について担当者は理解しているか?
  • □オフィスの設備に転倒防止などの措置が施されているか?
  • □オフィス周辺のハザードマップは把握しているか?
  • □オフィス以外の場所(クラウドを含む)に情報のバックアップを保管しているか?
  • □情報伝達の手段、ルールは明確か?
  • □情報システムが停止した場合の代替案は決まっているか?
  • □事業が中断された際の、期間ごとの損失を想定しているか?
  • □1~2カ月分程度の運転資金に相当するキャッシュを確保できているか?
  • □損害保険で十分にリスクの移転ができているか?
  • □災害復旧を目的とした融資制度を把握しているか?
  • □緊急時の仕入れ先への代金、社員への給与の支払い方法を決めているか?

ポイント

BCP(事業継続計画)は「いざという時に事業を止めないための備え」です。定期的に見直し、実効性を高めましょう。

(出所:日本情報マート作成)

以上(2026年8月更新)

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画像:ChatGPT

災害時の労務管理!社員の賃金が振り込めなくなったら?

1 災害時でも労務管理は万全に

災害時は被害状況や従業員の安全確保だけでなく、会社の事業継続が重要で、「労務管理」もその一環です。例えば、家族の治療や家屋の修理などでお金が必要なときに、賃金の支払いが滞ったら大変です。

この記事では、賃金支払い、労働時間管理などに区分けして「災害時の労務管理」の基本ルールを紹介します。労働基準法(以下「労基法」)などの定めが基準になりますが、

  • 災害時も平常時も変わらず適用されるルール(例:賃金は毎月1回以上、一定の期日に支払わなければならない)
  • 災害時のみ適用される特殊なルール(例:36協定によらずに社員に残業を命じられる)

があるので、その点に注意しながら確認してみてください。

2 賃金支払いのルール

1)口座振込ができなくなったらどうする?

労基法上、賃金は毎月1回以上、一定の期日に支払わなければなりません。これは災害時でも変わりません。また、社員が災害による治療などのために賃金の前払いを請求してきた場合、支払期日前でも、すでに働いた時間分については支払わなければなりません。

災害時は金融機関の機能停止などで、賃金を通常通りに支払えないこともありますが、

  • 支払い方法を一時的に「口座振込」から「手渡し」に切り替える
  • 手渡しも難しければ、金融機関の機能が回復したタイミングで、即座に賃金を支払う

などの対応をします。

また、社員本人と連絡が取れない間に、その家族が賃金の支払いを請求してくることもあります。本来、賃金は社員本人に支払わなければなりませんが、労基法上では使者(本人に支払うのと同一の効果を生じさせる者)に対して賃金を支払うことは差し支えないとされています。ただ、緊急時に支払いの請求をしてきた者が使者かどうかを判別するのは困難な場合もあるので、まずは家族の身分や事情等を確認し、受領書を取得することを条件として支払うなど慎重に対応しましょう。

大災害の場合には、社員が行方不明となることもあり得ます。その場合に、家族から支払額が高額になる退職金などの請求がされた場合は、社員が「失踪宣告」(生死不明の者を、法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度)を受けているのかを確認した上で支払うなど、慎重に対応します。

なお、災害時に慌てないためには平常時の備えが有効です。就業規則や賃金規程に「非常時には賃金の支払方法・支払日を変更することがある」旨をあらかじめ定めておくと、災害時の対応がスムーズになります。また、手渡しに切り替える場合に備え、社員の緊急連絡先や家族の連絡先を最新の状態に保っておくことも重要です。

2)災害時も休業手当を支払う?

労基法上、「使用者の責に帰すべき事由」により休業する場合、会社は休業期間中、社員に平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければなりません。

使用者の責に帰すべき事由とは、簡単に言えば「会社都合」です。会社側に故意・過失があるケースよりも広く、不可抗力によるものは含まれない

とされています。休業が不可抗力によるものと認められれば、休業手当の支払いは不要ですが、そのためには次の2つの要件を満たす必要があります。

  • 休業の原因が外部により発生した事故である
  • 会社が通常の事業主として最大の注意を尽くしても、避けられないといえる事故である

例えば、建物が損壊して事業を行えない、計画停電により事業が行えないなどの理由で休業する場合、休業手当の支払いは不要になる可能性が高いです。

一方、オフィスに直接的な被害はないものの、道路が損壊し資材が届かないなどの理由で操業できずに休業する場合、判断が分かれます。日ごろの備蓄管理の状況、他の調達手段の可能性、災害発生からの期間などによって、休業手当の支払いが必要になる可能性があります。所轄の労働基準監督署(以下「労基署」)に相談するなどして対応を検討してください。

休業手当の支払要否を判断した経緯は必ず記録に残しておきましょう。

  • 建物のどこがどう損壊したか
  • 代替調達をどう検討したか

などを写真や書面で残しておけば、後日、労基署から問い合わせを受けた際や、社員との認識の食い違いが生じた際の有力な資料になります。また、法的に支払義務がないケースでも、社員の生活保障や定着の観点から任意に一定の手当を支払う会社もあります。支払う場合は「法律上の義務ではなく任意の措置である」ことを明示しておくと、後々誤解を防げます。

3)賃金や休業手当の支払いが難しい場合は?

災害によって資金繰りが悪化し、賃金や休業手当の支払いが負担となる場合、「雇用調整助成金」を利用するとよいでしょう。

復旧に長い時間がかかる、交通インフラの問題で資材が手に入らないなど「経済的な理由」により休業せざるを得ない場合、会社が雇用保険の適用事業所であれば、雇用調整助成金が支給される可能性があります。使用者の責に帰すべき事由による休業でも、助成金の扱いは変わりません(助成を受けるためには所定の要件を満たす必要があります)。

中小企業の場合、原則として

  • 支給額は、休業手当負担額の3分の2(上限額あり)
  • 支給限度日数は、1年の間に最大100日、3年の間に最大150日

ですが、災害時は支給額や支給限度日数について特例措置が講じられることがあります。詳細については、厚生労働省ウェブサイトをご確認ください。

■厚生労働省「雇用調整助成金」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07_20200515.html

なお、災害の影響で会社が倒産に至り、賃金が未払いのまま社員が退職を余儀なくされた場合には、国が未払賃金の8割(年齢に応じた上限あり)を事業主に代わって立替払する「未払賃金立替払制度」があります。

■厚生労働省「未払賃金立替払制度の概要と実績」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/shinsai_rousaihoshouseido/tatekae/index.html

また、激甚災害に指定されるような大規模災害の際には、事業所が災害により休業する場合に、社員が離職していなくても雇用保険の基本手当を受給できる特例措置が講じられることがあります。休業手当の支払いが難しい場合の選択肢となるため、所轄のハローワークに確認するとよいでしょう。

■厚生労働省「災害時における雇用保険の特例措置等について」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000134526_00001.html

3 労働時間管理のルール

1)災害時は36協定に関係なく残業を命じられる?

会社が社員に時間外労働等を命じるには、労基法第36条に基づく労使協定(通称「36協定」)の締結・届け出が必要です。

しかし、災害などの緊急事態で臨時に社員を働かせる必要がある場合、36協定と関係なく必要の限度で残業(時間外労働や休日労働)を命じることができます。これを「災害時の時間外労働等」といいます。ただし、休日・時間外・深夜の割増賃金の支払いは必要です。

災害時の時間外労働等の場合、会社は事前に所轄の労基署に申請して、社員に残業を命じる許可をもらう必要があります。認められる基準は次の通りです。

  • 単に仕事が忙しいなど、経営上の理由だけでは認められない
  • 地震や津波、風水害、雪害、爆発、火災などの災害への対応、または急な病気への対応など、人の命や公共の利益を守るために必要な場合は認められる
  • 機械や設備が突然壊れて、それが修理されないと事業が運営できなくなるような場合や、システムがダウンしてそれを直さないと事業の運営が不可能であるような場合は認められる。ただし、平常時でも発生し得る部分的な修理や、定期的な保守点検の場合は認められない
  • 上の2.と3.の基準は、他の会社からの協力を求められた場合でも適用される。つまり、人の命や公共の利益を守るために協力が必要な場合や、協力しないと会社の運営ができなくなる場合は認められる

申請の際は、

  • (事前申請の場合)非常災害等の理由による労働時間延長・休日労働許可申請書
  • (事前申請ができない場合)非常災害等の理由による労働時間延長・休日労働届

に残業を命じる理由や社員数などを記入し、所轄の労基署に提出します。原則は事前申請ですが、事態が逼迫している場合は事後に遅滞なく届け出ます。どちらの書類も厚生労働省ウェブサイト(下記URL中段)からダウンロードできます。

■厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー(労働基準法等関係主要様式)」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudoukijunkankei.html

注意したいのは、災害時の時間外労働等はあくまで「必要の限度」に限られる点です。「災害だから」と無制限に残業を命じられるわけではなく、復旧対応と直接関係のない通常業務の残業は、原則通り36協定の範囲内で行う必要があります。

2)災害時は年少者や派遣社員にも残業を命じられる?

災害時の時間外労働等の場合、通常の残業の対象とならない、18歳未満の年少者や派遣元で36協定を締結していない派遣社員にも残業を命じられます。ただし、妊産婦については、本人が請求した場合、残業命令は出せません。

なお、派遣社員を残業させる場合、前述した所轄の労基署への申請手続きは派遣先の会社が行います。その場合、前述した「非常災害等の理由による労働時間延長・休日労働許可申請書」などには、派遣社員を含む社員数を記入して提出します。

3)災害時の時間外労働等の時間数に上限はある?

災害時の時間外労働等には、労基法の「時間外労働の上限規制(時間外労働は月45時間以内、年360時間以内を原則とするなど)」は適用されません。ただし、厚生労働省は、過重労働などを防止する上で、「時間外労働を月45時間以内にすること」などの配慮が重要としています。

そもそも災害時は、家族が負傷したり家屋が損壊したりして、社員が強いストレスを抱えた状態で働くことが予想されます。残業を社員に命じる場合、社員の疲労の状態、生活の現状などにも配慮する必要があるでしょう。

なお、災害対応で慌ただしい時期であっても、タイムカードやパソコンのログなどの客観的な記録による労働時間の把握は怠らないようにしましょう。労働時間の記録は、前述した所轄労基署への届け出や割増賃金の計算、万一の労災認定の際に重要な資料となります。

■厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/070614-2.html

4)災害時に社員が年休を申請してきたらどうする?

年休(年次有給休暇)は原則として、社員が指定した時季に与えなければなりません。ただし、指定した時季に年休を与えて事業の運営に支障が出る場合については、会社はその時季を変更することができます。これを「時季変更権の行使」といいます。

災害時は、復旧作業などで人手が必要なときに年休を取得されると、事業の運営に支障が出る恐れがあります。ですから、時季変更権の行使は比較的認められやすいと考えられます。

ただし、「災害により負傷した家族の看護」など、やむを得ない理由による年休取得の場合は慎重に判断したほうがよいでしょう。また、例えば、退職が近い社員で退職日までに年休を別の時季に変更できない場合は、時季変更権は行使できません。

どうしても災害時の復旧作業などで出勤してもらいたい場合は、社員とよく話し合う必要があるでしょう。話し合いの際は、時季変更権の行使を一方的に通告するのではなく、まず「なぜこの時期に出勤してほしいのか」(復旧作業の内容、人員の状況、事業への影響など)を具体的に説明した上で、社員側の年休取得の理由や事情を丁寧に聞き取ります。その上で、

  • 年休の取得日を数日ずらせないか
  • 半日単位・時間単位の年休取得で対応できないか(制度を導入している場合)
  • 午前は家族の看護、午後は出勤といった柔軟な働き方ができないか
  • 他の社員との業務分担やシフト調整で代替できないか

など、双方が歩み寄れる選択肢を一緒に検討する姿勢が大切です。災害時は社員自身も被災者であることが少なくありません。会社の都合だけを押し付ける形になると、社員の信頼を失い、離職につながる恐れもあります。

4 労働災害や解雇のルール

1)災害による負傷は労働災害に当たる?

労働災害(以下「労災」)とは、業務上の事由による「業務災害」と、通勤による「通勤災害」のことです。震災や豪雨などの災害(自然災害)は、業務や通勤とは関係なく発生するので、これらによる負傷が労災に当たるのか、疑問に思うかもしれません。

結論から言うと、業務中や通勤途中の災害による負傷は、労災として認定されやすい傾向にあります。オフィスや通勤経路に被災しやすい事情(建物や道路の構造上の脆弱性など)があって、その危険が災害によって現実化したものと考えられるからです。

災害時は「労災になるかどうか分からないから申請しない」という判断になりがちですが、労災認定の判断は労基署が行うものです。判断に迷うケースでも、まずは申請を検討するよう社員に案内しましょう。会社が労災申請に協力しない場合、労基署への相談や紛争につながるリスクがあります。

(図表)【地震による災害事例のうち労災として認められたもの】
  事例 労災として認められた理由
業務災害 1.作業現場でブロック塀が倒れたための災害 ブロック塀に補強のための鉄筋が入っておらず、構造上の脆弱性が認められた
2.作業場が倒壊したための災害 作業場において、建物が倒壊したことにより被災し、構造上の脆弱性が認められた
3.事務所が土砂崩壊により埋没したための災害 事務所に隣接する山が急傾斜の山で、表土が風化によってもろくなっていたなど不安定な状況にあり、常に崩壊の危険を有していた
4.バス運転手の落石による災害 崖下を通過する交通機関は、常に落石等による災害を被る危険を有していた
5.工場または倉庫から屋外へ避難する際の災害や避難の途中車庫内のバイクに衝突した災害 業務中に事業場施設に危険な事態が生じたため避難したものであり、避難行為は業務に付随する行為と認められた
6.トラック運転手が走行中、高速道路の崩壊により被災した災害 高速道路の構造上の脆弱性が現実化し、危険環境下において被災したものと認められた
通勤災害 1.通勤途上において列車利用中、列車が脱線したことによる災害 通勤途上において、利用中の列車が脱線したことは、通勤に通常伴う危険が現実化したものであると認められた
2.通勤途上、歩道橋を渡っている際に足をとられて転倒したことによる災害 通勤途上において、歩道橋を渡っている際に転倒したことは、通勤に通常伴う危険が現実化したものであると認められた
(出所:厚生労働省「兵庫県南部地震における業務上外等の考え方について」を基に作成)

なお、複数の会社で働いている社員については、全ての勤務先の業務上の負荷を総合的に評価して労災認定を行う「複数業務要因災害」という区分もあります。副業・兼業をしている社員がいる場合は覚えておきましょう。

■厚生労働省「労働者災害補償保険法の改正について」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousai/rousaihukugyou.html

2)災害を理由に解雇は可能?

災害によって経営環境が著しく悪化した場合、人員削減のために社員を解雇せざるを得なくなることがあります。こうした解雇はいわゆる「整理解雇」に当たります。

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は無効とされています。なかでも整理解雇は、社員に明確な落ち度がなくても行うことがあるため、特に厳しい判断がなされます。

「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当である」かどうかを判断するに当たっては、次の整理解雇の4要素が重要な考慮要素となります。

  • 人員削減の必要性:人員削減措置が経営上の十分な必要性に基づいていること
  • 解雇回避努力義務の履行:配置転換・出向、希望退職者の募集等の手段によって、整理解雇を回避する努力を尽くしていること
  • 人選の合理性:被解雇者の選定にあたり、客観的で合理的な基準を設定し、公正に適用していること
  • 手続きの妥当性:対象社員や労働組合に対して整理解雇の必要性と時期、規模、方法等について説明、協議を行ったこと

過去には、これらを「4要件」として「どれか1つでも欠ければ整理解雇は無効である」と判断した裁判例がありますが、最近は「4要素」としてそれぞれの要素を総合的に考慮して、整理解雇の有効性を判断する傾向にあります。ただし、1つでも欠けると、その整理解雇は無効と判断されることが少なくありません。

実務では、整理解雇は最後の選択肢として、まずは前述の雇用調整助成金などを活用して事業や雇用の継続を図る努力をするのが一般的と考えられています。

整理解雇を検討する前に、雇用調整助成金の活用のほか、休業や労働時間の短縮、一時的な出向など、段階的な選択肢があります。また、やむを得ず退職勧奨や解雇に進む場合も、災害の混乱に乗じた性急な進め方は「手続きの妥当性」を欠くと判断されるリスクが高くなります。説明会の開催記録や個別面談の記録を残し、丁寧なプロセスを踏むことが、結果的に会社を守ることにつながります。

以上(2026年8月更新)
(監修 社会保険労務士 柴田充輝)

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【ハラスメント対策】 もう「ハラスメント」とは言わせない!安心のシーン別セリフ集

1 ハラスメントと言わせない指導をお手伝いします

部下の指導は上司(管理職)の仕事。とはいえ、部下との関係が浅いうちに少し突っ込んだ指導をすると「ハラスメント!」と言われかねません。「そんなつもりはないのに……」と言いたいことも言えなくなってしまった経験もあるかもしれませんが、ご安心。

以降で、ハラスメントになる問題発言と、それをホワイト発言に変換した例を紹介するので、どこがいけないのか確認してみてください。この記事を読めば、

ハラスメントと言わせない指導

に一歩近づきます!

早速、パワハラ(パワーハラスメント)、セクハラ(セクシュアルハラスメント)、マタハラ(マタニティハラスメント)の順番で確認していきましょう。

2 パワハラ発言になりやすい言い方、なりにくい言い方

パワハラは、職場の優越的な関係(上司と部下など)を背景に、業務上必要のない(または行き過ぎた)言動によって相手の就業環境を害するハラスメントです。パワハラになりやすい言い方、なりにくい言い方の例は次の通りです。

(図表1)【パワハラになりやすい言い方、なりにくい言い方の例】

パワハラになりやすい言い方 パワハラになりにくい言い方
1.君は全然仕事ができないな! このままだと辞めてもらうしかないぞ! → 1.君は○○はできているが、□□ができていない。まずは□□の部分をクリアしよう
2.今度入ってくる新人は優秀らしい、本気で頑張らないと君の居場所がなくなるよ? → 2.今度新人が入ってくるから、先輩として新人のお手本になるよう頑張ってくれ
3.こんな簡単なことも分からないのか、新入社員以下だぞ! → 3.これを理解しなければ○○の業務はできない。この参考書を貸すから勉強し直してくれ
4.私の指示通りにやったら失敗した? 少しは臨機応変に動けよ、バカなのか? → 4.今回は私の指示が悪かった。ただ、君も今後は、失敗すると思った時点で相談してくれ
5.明日が納期の仕事がある? 関係ない、残業なんてダメだ! 帰れ! → 5.君はこれ以上残業すると、36協定に抵触する。残っている仕事は引き取るから帰りなさい
6.この程度の仕事なら当然○時間でできるよね? 終わらなかったら問題だぞ! → 6.このツールを使えば、○○時間で終わるはずだ。ただ、難しい場合は相談してくれ
7.まだ終わらないのか、仕事が遅すぎる! もういい、君は雑務だけやっていろ! → 7.今回はまず最後までやってみなさい。次回は○○時間で終わらせるよう頑張ってくれ
8.そこは前に教えた。1回教えたんだからできるだろ、忘れたなんて言わせないよ? → 8.そこは前にやり方を教えたから、落ち着いて思い出してみよう。ヒントは○○だ 
9.週明けから遅刻してくるなんて、休日遊んでばかりいるからだぞ! → 9.始業は○時からだし、週明けから遅刻されると職場が締まらない。次からは気を付けるように
10.仕事もうまくいってないのに、よく有給休暇を取りたいなんて言えるね? → 10.休暇中は、しっかり休んでくれ。休み明けに今後の仕事の進め方について相談しよう
11.君いつもつまらなそうだし、今度の親睦会、来なくていいよ → 11.親睦会は任意参加だから、よかったら参加してね
12.歓送迎会のセッティングや花見の場所取りは普通若手がやるんだよ、使えないな → 12.行事のセッティングはプロジェクト運営の勉強になるよ。お願いしていいかな

(出所:日本情報マート作成)

赤字が問題発言です。退職をにおわせる発言(1.と2.)、相手を侮辱する言葉(3.と4.)は、パワハラの典型例です。短時間で仕事を終わらせることを強制する(5.と6.)、部下から仕事を取り上げる(7.)というのも、部下の業務量や納期の状況などによってはパワハラになります。「自分は正論を言っているから」と部下の言い分に耳を傾けない(8.)、休日や休暇などのプライベートに干渉する(9.と10.)というのもリスキーです。仲間はずれにしたり(11.)、業務外の場面で特定の役割を強要したりする(12.)のも慎みましょう。

これを踏まえ、図表右側の「パワハラになりにくい言い方」に言い換えていきます。ポイントは次の通りです。

  • 1.のセリフ:何ができていないのかを明確にしつつ、できていることは評価する
  • 2.のセリフ:「新人のお手本になる」というポジティブなメッセージに言い換える
  • 3.のセリフ:部下の勉強不足は事実として指摘しつつ、改善策も示す
  • 4.のセリフ:上司の指示に問題があったことは素直に認め、その上で部下に改善を促す
  • 5.のセリフ:残業を認めない理由を伝え、仕事を引き取った上で部下を帰らせる
  • 6.のセリフ:仕事の目標時間と併せて、目標を達成するためのヒントも伝える
  • 7.のセリフ:安易に仕事を取り上げず部下にやらせつつ、次回の目標を設定する
  • 8.のセリフ:教えたことのヒントを与えて、部下自身に思い出させる
  • 9.のセリフ:休日の過ごし方には干渉せず、遅刻したことについてのみ注意する
  • 10.のセリフ:有給休暇の取得は妨げず、一方で休み明けにやるべきことは伝える
  • 11.のセリフ:親睦会を任意参加にして、参加するかどうかは部下自身に決めさせる
  • 12.のセリフ:部下にもメリットがあることを伝え、「命令」ではなく「お願い」する

3 セクハラになりやすい言い方、なりにくい言い方

セクハラは、身体的な接触や性的な言葉によって就業環境を害したり、相手がこうした言動を拒否した場合に評価を下げるなどの嫌がらせをしたりするハラスメントです。セクハラになりやすい言い方、なりにくい言い方の例は次の通りです。

(図表2)【セクハラになりやすい言い方、なりにくい言い方の例】

セクハラになりやすい言い方 セクハラになりにくい言い方
1.今日のスカート、かわいいね! → 1.今日の服装、素敵だね!
2.最近、痩せたね! もしかしてダイエットしてるの? → 2.最近、雰囲気変わったね! 健康的に見えるよ!
3.明日は有給休暇だったね! 彼氏とデートでも行くの? → 3.明日は有給休暇だったね! しっかりリフレッシュしてくれ!
4.君ももう○○歳だよね、そろそろ結婚とか考えてる? → 4.会社に入って○○年たつけど、仕事やプライベートで何か不安なことはある?
5.仕事もうまくいったし、よかったら今度、飲みにでも行くかい? → 5.仕事の打ち上げで、部署のメンバーで飲み会をやろうと思うんだが、君もどうだい?
6.君は、声がかわいいから、電話に出てくれると気分が明るくなるよ! → 6.君は、声が聞き取りやすくて説明も分かりやすいから、電話の際はとても助かっているよ!
7.君は、女性らしい性格だから、いてくれると職場が華やぐよ! → 7.君は、いつも親切で協力的でとても助かっているよ!
8.君は、男のくせになよなよしているな……もっとシャキッとしたほうがいいよ → 8.君は物腰が柔らかくて話しやすいね。もう少し元気があるとさらにいいよ!
9.○○ちゃんはいつも頑張っているね! → 9.○○さんは、いつも頑張っているね!
10.おばさん、ここも汚れてるから掃除してもらえる? → 10.○○さん、ここも少し汚れがあるようなので、掃除してもらってもいいですか?
11.生理痛か? 更年期か? きついなら休んでいいよ! → 11.体調が悪そうだね、今日は早退していいよ!
12.肌荒れがすごいけど、最近ちゃんと眠れてる? → 12.少し疲れてそうに見えるけど、最近ちゃんと眠れてる?

(出所:日本情報マート作成)

赤字が問題発言です。相手の容姿の特徴を指摘する発言(1.と2.)、恋愛や結婚など個人のプライベートに干渉する発言(3.と4.)、下心があると受け取られそうな発言(5.と6.)、「女性らしい」「男のくせに」など性差を強調する発言(7.と8.)は、セクハラと受け取られがちです。愛称やおばさん、お嬢さんなどと呼ぶ(9.と10.)のも、避けたほうが無難です。相手の体調を気遣う発言(11.と12.)は、業務上必要であっても、周囲に社員がいる状況などでは言い方に配慮が必要です。

これを踏まえ、図表右側の「セクハラになりにくい言い方」に言い換えていきます。ポイントは次の通りです。

  • 1.のセリフ:容姿の特徴的な部分を指摘するのではなく、容姿全体を褒める
  • 2.のセリフ:「雰囲気が変わった」「健康的」など、オブラートに包んだ表現にする
  • 3.のセリフ:具体的な休暇の過ごし方には触れず、楽しんでくるようにとだけ伝える
  • 4.のセリフ:「年齢」「結婚」に関するワードを使わずに、不安なことがないかを聞く
  • 5.のセリフ:部署の集まりであることを伝え、個人的な誘いと疑われないようにする
  • 6.のセリフ:部下の声や話し方が「仕事にどう役立っているか」という視点で褒める
  • 7.のセリフ:「女性らしい」というワードが、具体的に何を意味するかを考える
  • 8.のセリフ:個性を尊重しつつ、「元気があるとさらにいい」と遠回しに伝える
  • 9.のセリフ:職場の風土などにもよるが、「○○さん」などの呼称で統一する
  • 10.のセリフ:「○○さん」、名前が分からない場合は「清掃員さん」などと呼ぶ
  • 11.のセリフ:「生理痛」「更年期」というワードを使わずに、体調不良を気遣う
  • 12.のセリフ:「肌荒れ」というワードを使わずに、疲労が見えることを指摘する

4 マタハラになりやすい言い方、なりにくい言い方

マタハラは、妊娠等(妊娠や出産、育児休業の取得など)をした相手の就業環境を害する言動をしたり、育児休業などの取得を理由に評価を下げるなどの嫌がらせをしたりするハラスメントです。マタハラになりやすい言い方、なりにくい言い方の例は次の通りです。

(図表3)【マタハラになりやすい言い方、なりにくい言い方の例】

マタハラになりやすい言い方 マタハラになりにくい言い方
1.つわりで休む? 甘えてるね。妊娠は病気じゃないんだよ? → 1.つらいよね。休んでいる間のことは任せてね
2.長く育児休業を取ると、仕事に復帰するのが大変かもしれないけど頑張ってね → 2.育児休業から復帰したら、元のように仕事ができるようサポートするからね
3.これから仕事と育児を両立していくなら、パート勤務のほうが向いているだろうね → 3.子どもが生まれた後も、正社員のままリモートワークで働けるから心配しないでね
4.妊娠してこれから大変だろう、今日から雑務だけやってもらえばいいよ → 4.妊娠中の業務について話し合いたいんだが、君はどうしたい? 医者からは何か言われてる?
5.妊娠中で大変かもしれないけど、あと少し働いたら育児休業でたっぷり休めるからね → 5.子どもを育てることも大切な仕事だから、しっかり育児休業を取ってね
6.子育て、少しは旦那さんに手伝ってもらえないの? → 6.子育てについて、家族からはどんなサポートが受けられそう?
7.育児休業中の仕事はフォローするけど、迷惑をかけるメンバーには謝っといてね → 7.育児休業中の仕事は心配しないで! フォローに回るメンバーにはお礼を言っておいてね
8.育児休業中の仕事は○◯さんが担当するから、君がいなくても大丈夫だよ → 8.育児休業中の仕事は○◯さんが担当するから心配しないで! 戻ってくるのを待っているよ
9.育児休業中も仕事の件で連絡をすると思うけど、そのときはよろしくね → 9.育児休業中は仕事の連絡は極力しないし、必要な場合も育児の邪魔にならないよう注意するよ
10.育児休業から復帰したときに備えて、勉強もしといてね → 10.育児休業中は育児に専念してもらっていいからね。勉強は育児が落ち着いてから頑張ろう!
11.今日から復帰だね、育児休業でしっかり休んだ分、ここから挽回してくれよ? → 11.今日から復帰だね、ブランクもあるだろうし、まずはゆっくり仕事の感覚を取り戻そう
12.小さい子どもを保育園に預けて働くなんて子どもがかわいそう → 12.お子さん、保育園の先生や友だちと楽しく過ごせるといいね

(出所:日本情報マート作成)

赤字が問題発言です。妊娠・出産等への否定的な発言はマタハラの典型例です(1.)。また、相手を気遣ったつもりでも、退職や雇用形態の変更をにおわせる発言(2.と3.)、仕事を一方的に取り上げる発言(4.)、育児休業を取りにくくなる発言(5.と6.と7.)などは、マタハラと受け取られがちです。部下を必要としていないように取れる発言(8.)、育児休業中の過ごし方などに干渉する発言(9.と10.)、職場に復帰したばかりの部下を焦らせるような発言(11.)にも注意しましょう。なお、マタハラは、社員が妊娠・出産等で「働けない」ことを理由に行われるイメージがありますが、「働いている」ことを理由に行われる発言(12.)もマタハラになり得ます。

これを踏まえ、図表右側の「マタハラになりにくい言い方」に言い換えていきます。ポイントは次の通りです。

  • 1.のセリフ:部下のつらさに寄り添って、安心できる言葉をかける
  • 2.のセリフ:「復帰が大変」という話ではなく、「復帰のサポート」に関する話をする
  • 3.のセリフ:育児休業を取得しても、部下に不利益がないことを強調する
  • 4.のセリフ:妊娠中の業務について部下の要望を聴く(医師の指示がある場合はそれも)
  • 5.のセリフ:育児休業は、子どもを育てるための大切な休みであることを強調する
  • 6.のセリフ:家族のサポートを受けられるか、柔らかい言い方で確認する
  • 7.のセリフ:育児休業を取ることに「謝罪」は不要、「感謝」をするよう伝える
  • 8.のセリフ:部下が職場に戻ってくるのを待っていることを強調する
  • 9.のセリフ:育児休業中の連絡は原則せず、する場合も必要最低限にとどめる
  • 10.のセリフ:育児休業中の勉強は強制しない、プレッシャーがかかる言い方も避ける
  • 11.のセリフ:育児休業中のブランクに配慮して、徐々に仕事の感覚を取り戻させる
  • 12.のセリフ:自分の中の子育てのイメージを押し付けず、ポジティブな言葉をかける

以上(2026年7月更新)

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画像:ChatGPT

「地政学的リスク」対策の第一歩は、身近な「USBメモリの管理」から

1 「地政学的リスク」とは? うちの会社に関係あるの?

「地政学的リスク」とは、

政治的・軍事的な緊張関係や地域紛争など、地理的条件に基づく国際関係の変動によって生じるリスク

を指します。地政学的リスクに起因するサイバー攻撃は、国家が直接的または間接的に関与する高度な攻撃で、最新技術に通じた専門のハッカー集団などによって行われます。

「うちの会社に関係あるの? 外国のハッカー集団に狙われるような情報なんて持ってないよ」と思うかもしれませんが、彼らの狙いは基本的に、会社が保有する情報ではありません。

政府機関や大企業などへのサイバー攻撃に使える「踏み台」として中小企業を利用する

のです。例えば、大企業のサプライチェーンに組み込まれていて、セキュリティ対策が手薄な中小企業が、大企業への侵入経路として狙われることなどがあります。

日本では、ロシア、中国、北朝鮮などの国家をバックグラウンドとするハッカー集団による機密情報の窃取、重要インフラの機能停止、政治的・軍事的優位性の確保、経済的損害などを目的とした活動が観測されています。

IPA(情報処理推進機構)の「情報セキュリティ10大脅威2026」では、「地政学的リスクに起因するサイバー攻撃(情報戦を含む)」が第6位としてランクイン

しました(初選出の2025年から2年連続2回目)。

この記事では、システム的な脆弱性や、社員の心理的な隙を突かれて、知らぬ間にサイバー攻撃の「踏み台」にならないための対策をお伝えします。

なお、高度な独自技術を保有していたり、防衛・インフラ・通信に関わる重要な部品を製造していたりする場合、データそのものを狙われる恐れもあるので、より一層の注意が必要です。

2 IPA「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」でチェック

孫子の兵法に、「彼を知らず己を知らざれば、戦うごとに必ず殆(あや)うし」という一節があります。敵情を知らず、味方の事情も知らないのでは戦うたびに必ず危機に陥るという意味です。

敵(外国のハッカー集団や産業スパイ)の事情は計り知れませんが、その狙いが政府機関や大企業などへのサイバー攻撃に使える「踏み台」であることは事実と考えられます。そうすると、私たちがまずやるべきことは「己を知る」ことです。

ここで、試していただきたいのが、IPAが提供している「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」です。これは、中小企業・小規模事業者の方向けのセルフチェックツールで、25問の質問に回答し、採点結果(100点満点)を基に対策を検討するという流れになっています。

こちらからエクセル形式の質問表をダウンロードできます。

■IPA「5分でできる!情報セキュリティ自社診断Excel版」■
https://www.ipa.go.jp/security/guide/sme/ug65p90000019cbk-att/5minutes.xlsx

スコアを100点に近づけていくための対策を講じることで、自ずとシステム的な脆弱性を減らしていくことができるはずです。

3 心理的な隙が狙われる!

最近は、陸上自衛隊でマルウェアに感染したUSBメモリの使用が続いていたことが発覚し、それを発端とした全国の地方自治体への影響・調査で、禁止されていた私物USBメモリの使用や調達過程でのセキュリティ不備が見つかったという報道もありました。

「国や地方自治体には厳しいルールがあるはずなのに、どうして?」と思うのも当然ですが、結果的に言えるのは、

いくら厳しいルールを作っても、人間である以上「うっかりミス」や「これくらい大丈夫だろうという油断」を100%なくすことは不可能

ということです。

また、2026年7月に放送されたNHKのドキュメンタリー番組では、関係者(日本の会社員や研究者など)への取材を基に、外国の産業スパイが、

SNSでのやり取りや、何気ない会食をきっかけに信頼関係を築き、相手の承認欲求や不安、悩みにつけ込みながら協力者へと取り込んでいく

という巧妙な手口が明らかにされました。

例えば、どこかの展示会でノベルティとして「USBメモリ」をもらったり、行きつけの飲食店で知り合った顔見知りの人にプレゼントをもらったりしたことはないでしょうか? 日常シーンでありそうな出来事が、国家規模のハッカー集団や産業スパイの活動につながる可能性を疑わないといけない、そんな時代であることも頭の片隅においておくとよいでしょう。

4 組織と情報を守るチェックリスト

1)経営者・マネジメント層向け

チェック項目 済
重要データの「アクセス権限」を最小限に絞っているか □
退職者のアカウントやIDを「即座に削除」しているか □
万が一の「データ破壊」に備えて、物理的に切り離したバックアップを取っているか □
USBメモリは原則禁止(会社支給の「セキュリティ専用USBメモリ」のみ使用可)としているか □

2)従業員向け

チェック項目 済
LinkedInやFacebookなどでの「見知らぬ人からのアプローチ」を警戒しているか □
会食や異業種交流会で、自社の「未公開技術や愚痴」を話していないか □
取引先や上司からの「急ぎの指示メール(URL・添付ファイル)」を鵜呑みにしていないか □
私物のUSBメモリを業務に利用していないか □

以上(2026年7月作成)

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画像:日本情報マート