賞与支給日直後に退職したいとの申し出を拒否できますか。

QUESTION

賞与支給日直後に退職したいとの申し出を拒否できますか。

ANSWER

拒否できません。

解説

労働者が一方的に使用者に通告して退職する場合は、通告の翌日から起算して2週間たつと使用者の承諾がなくても効力が発生します。このように労働者には退職の自由が認められていますので、賞与支給日直後に退職したいとの申し出も拒否することはできません。
民法627条1項によれば、期間の定めのない契約はいつでも解約の申入れをすることができ、2週間経過すると効力が発生すると定めているからです。

※本内容は2025年2月28日時点での内容です。
 <監修>
   社会保険労務士法人中企団総研

No.97090

画像:Mariko Mitsuda

営業秘密の漏洩を防ぐためにライバル会社への転職対策を講じることができますか。

QUESTION

営業秘密の漏洩を防ぐためにライバル会社への転職対策を講じることができますか。

ANSWER

講じることができます。

解説

まず、就業規則や雇用契約書の中に、社員が会社の営業秘密について、秘密保持義務を負うことを明記します。
次に、制裁に関する規定および競業避止に関する契約書を準備します。

  • 1.在職中に営業秘密を漏洩した場合は、それを理由として懲戒解雇できるとする。
  • 2.在職中に営業秘密を漏洩した場合は、雇用契約上の債務不履行を理由として、その社員に対し損害賠償請求もできるとする。
  • 3.「退職後に同業他社に就職したときは、退職金の半額を返金する」と退職金規程に盛り込む。
  • 4.営業秘密を管理する立場にある幹部社員または取締役との間で退職後も2年間は、競合他社で就業(役員就任を含む)しないという特別の契約を結ぶ。

その際、以下の妥当性を判断し適正でないものは裁判上無効となることもあるので注意が必要です。
 (a)競業避止義務の対象職種・制限期間・地域範囲の妥当性
 (b)退職者の在職者の地位・職種の妥当性
 (c)労働者の競業行為の背信性の程度
 (d)代償措置が設けられているか
《参考》三晃社事件(最高裁判例昭和52年8月9日判決)
中小の広告代理業で、従業員と顧客との個人的なつながりが強く、その従業員が同業他社に移ることによって、営業上の不利益が生じる場合には、退職後一定期間内に競合他社に就職したときに、退職金を減額支給するとの扱いを合法としました。

※本内容は2025年2月28日時点での内容です。
 <監修>
   社会保険労務士法人中企団総研

No.99110

画像:Mariko Mitsuda

年俸制適用者にも残業代を支払わなければなりませんか。

QUESTION

年俸制適用者にも残業代を支払わなければなりませんか。

ANSWER

年俸制でも、管理監督者に該当しない限り、労働時間を管理し、残業代を支払う義務があります。

解説

年俸制の労働者であっても管理監督者に該当する場合を除き、残業時間に応じた割増賃金の支払いが必要です。使用者は、この場合も始業・終業時刻の把握をしなければなりません。
通達では、

  • 年俸に時間外労働等の割増賃金等が含まれていることが労働契約の内容であることが明らかであって、
  • 割増賃金相当部分と通常の労働時間に対応する賃金部分とに区分することができ、かつ、
  • 割増賃金相当部分が法定の割増賃金額以上支払われている

場合は、労働基準法第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)に違反しないと解されるとしています。

また、あらかじめ、年間の割増賃金相当額を各月均等に支払うこととしている場合において、各月ごとに支払われている割増賃金相当額が、各月の時間外労働等の時間数に基づいて計算した割増賃金額に満たない場合も、労働基準法第37条に違反するとしています。

つまり、割増賃金を含めて年俸を決めていても、各自の各月の残業時間をきちんと把握する必要があります。

たとえ、管理監督者であっても、深夜の時間帯(午後10時から午前5時)に労働させる場合は、深夜業の割増賃金を支払わなければなりません。

なお、「時間外労働の罰則付き上限規制」が平成31年4月1日施行(中小企業:令和2年4月1日施行)され、1か月及び1年に残業させることができる時間数の上限と罰則が法律に規定されました。

※本内容は2025年2月28日時点での内容です。
 <監修>
   社会保険労務士法人中企団総研

No.92020

画像:Mariko Mitsuda

【入社1年目の教科書】「契約」は相手との約束。約束の内容を把握し、しっかり守る

書いてあること

  • 主な読者:「契約」という行為がいまひとつ分かっていない新入社員
  • 課題:契約書は独特の言いまわしが多く、もはや日本語とは思えないレベルだ……
  • 解決策:契約は相手との約束。約束の内容を整理することから始める

来週、訪問するA社。先輩から、事前にA社との契約書を読んでおくように言われたけど、聞き慣れない言葉や言いまわしばかりで難しい……本当に日本語か、コレ? はぁ〜、そもそも「契約」っていう言葉自体がよく分からないし、どこを、どのように読んでおけばいいのやら。せめて読むべきポイントが明らかになっていればいいのだけど……。

1 「契約」は相手との約束

仕事は、相手とさまざまな契約をしながら進めます。契約内容をまとめた契約書は難しい言葉ばかりですが、要するに契約とは相手との約束です。ですから、

自分たちがどのような約束をしているのか、つまり契約内容を知ること

が大事です。新入社員の段階で契約書を読みこなす必要はないので、まずは、

誰が、いつまでに、何を、どのような条件(料金など)で、どうするか

といった項目で整理すると分かりやすくなります。

また、契約には有効期間とペナルティーがあります。有効期間とは、その契約がいつまで有効なのかを示すものです。ペナルティーとは、契約を守らなかった場合の措置で、相手から商品を納品してもらえなかったり、損害賠償を請求されたりする危険性があります。

2 契約は自由に決めることができるけれど……

皆さんが気になるのは、契約内容がどのように決まるかでしょうが、これは当事者の交渉によります。一見、会社にとって不利に感じる内容があっても、別の狙いや事情があるかもしれませんので、先輩に確認してみてください。

別の視点で、少し法律の話に触れておきましょう。契約に関する基本は民法という法律で定められています。その中には「契約自由の原則」というものがあって、当事者は、

  • 契約をするのか否か
  • 誰と契約するのか
  • 契約内容をどうするのか
  • どのような方法で契約するのか

を自由に決めることができます。ただ、何でも自由に決めると、一方が不利になってしまうことがあるので、それを防ぐために「強行規定」が整備されています。強行規定とは、

当事者の意思に関係なく、強制的に適用されるルール

です。分かりやすく説明するために、会社と皆さんとが交わしている労働契約を例にしましょう。仮に、皆さんが「休憩は30分あれば十分です!」と言って、会社もそれに合意したとします。しかし、その合意は認められません。なぜなら、労働基準法という法律に「労働時間が6時間を超え8時間以内の場合は、少なくとも45分の休憩時間を与えること」という強行規定があり、これが優先されるからです。つまり、会社と皆さんとの合意に関係なく、皆さんが8時間働いたら、少なくとも45分の休憩をとらないといけないのです。

なお、契約は、当事者が合意すれば、LINEのメッセージでも、口約束でも成立します。ただし、2つの例外があります。

  1. 保証契約等、一定の契約は、書面(契約書)でなければ成立しない
  2. 要物契約(たとえば、書面によらない消費貸借契約)は、借り手がお金などの対象物を受け取らなければ成立しない

3 契約を一方的に終わらせることはできない

一度、契約を交わしたら、一方的に契約内容を変更したり、解約などをしたりすることはできません。ただし、相手の同意がなくても契約を終わらせることができる例外が3つあります。

1つ目は、契約の無効です。契約内容が公序良俗に反するなどの場合、そもそも契約の効力が認められません。

2つ目は、契約の取消です。未成年者が締結した契約など、契約を締結時に遡って無かったことにすることができます。ただし、取消できる期間があり、その期間内に取消をしないと有効な契約として成立します。

3つ目は、契約の解除です。有効な契約であっても、法律や契約で定める規定によって、当事者の一方が契約関係を終了させるパターンです。クーリング・オフなどが該当します。

以上(2025年1月更新)

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画像:Mariko Mitsuda

【交渉術】交渉が上手な人に共通する要素とは?

1 交渉が成立する3つの要素

交渉とは、

相手との話し合いにより、ある取り決めを行うこと

であり、次の3つの要素がなければ成り立ちません。

  1. 交渉相手
  2. テーマと双方の主張
  3. 話し合い(暴力や脅しで屈服させることは有り得ない)

ビジネスでは社内外でさまざまな交渉が行われるので、ビジネスパーソンは交渉を有利に進めるためのスキルを身に付ける必要があります。以下で大切なポイントを紹介していきます。

2 ゼロサム型交渉とプラスサム型交渉

交渉には、ゼロサム型交渉とプラスサム型交渉とがあります。

  • ゼロサム型交渉:パイが一定で、その限られたパイの中で両者が取り分を争う
  • プラスサム型交渉:パイ拡大の可能性があり、双方の利益に結び付く条件を探る交渉

ビジネス上の交渉のほとんどはゼロサム型交渉であり、交渉自体は成立しても取り分の減ったほうには不満が残ります。そこで、交渉の構造がゼロサム型であると認識されたら、積極的にプラスサム型交渉へと転換を図るようにします。

3 交渉は事前準備が重要

1)交渉の全体プロセスとは

交渉の目的は、話し合いにより、互いにある合意点に達することです。ただし、交渉が1回で終結することはまれで、自分側と相手側とのやり取りを数回繰り返すことで合意に向かっていきます。交渉は、次の3つに分かれます。

  1. 相手の情報を収集し、交渉のシナリオを考える「準備(PLAN)」の段階
  2. 実際に自分と相手が同じテーブルで話し合う「交渉(DO)」の段階
  3. 話し合いの結果を見直して、譲歩する項目などを検討する「評価(SEE)」の段階

つまり、「準備(PLAN)」→「交渉(DO)」→「評価(SEE)」を繰り返しながら、合意を目指すことになります。以下はスムーズに交渉が進んでいるイメージですが、実際には交渉領域から飛び出すことも珍しくありません。

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交渉の開始時には、双方が「交渉によってどんなことが期待できるか」「どのようなものが得られるか」などを漠然と考えているため、双方の期待条件には隔たりがあります。それが、交渉が進むにつれて絞り込まれていきます。

2)交渉には事前準備が重要

「交渉が苦手」という人の多くは、交渉前に準備をほとんどしていません。実は、交渉がうまく、対外折衝や営業成績などが優れている人は、交渉の前に時間をかけて準備を行っているのです。ここに、交渉上手になるための大きなヒントが隠れています。仮に、交渉に臨むに当たって用意周到に準備した人と、ほとんど事前準備などをしていない人が交渉をしたらどうでしょう。交渉のプロセスは、間違いなく、用意周到に準備した人に有利に進んでいきます。

交渉に、9回裏2アウトからの逆転サヨナラホームランを期待してはいけません。得点を1点ずつ積み重ね、試合を有利に進めながら最終的には勝利するという、積み重ねのプロセスが求められるのです。この積み重ねのプロセスの第一歩が事前準備です。

4 交渉で優位性を保つための事前準備

1)情報収集は交渉の第一歩

相手のことを知らずして、交渉を有利に進めることはできません。事前に相手の性格、ビジネス環境、交渉担当者の立場や本音、相手企業の内部事情などの情報を収集します。また、自社の経営者や他部署の方針など、社内の情報も収集しておく必要があります。

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交渉では、自分で見聞きした「ナマの情報」を集めることも重要です。例えば、「交渉担当者の権限」です。高圧的な態度を取るのに、実はほとんど権限がないことがあります。この場合、権限を持っている担当者を早く交渉に巻き込まなければなりません。

2)相手の性格を知る

相手はどのような性格かという情報も入手したいものです。交渉はあくまでも「人対人」で行うものなので、相手の性格に合わせた対応が必要です。相手をタイプ別に分けて対応方法を考えます。とはいえ、初対面だと相手の性格が分からないので、1回目の交渉でこうした情報を頭に入れ、2回目以降の交渉に活かしていくことが大切でしょう。

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5 パワーバランスの確認

1)依存度を認識する

ビジネスでは、自分の置かれている立場や状況によって、相手との力関係が変化します。例えば、自分が買い手で「価格条件が合って購入する権限があれば有利」です。逆に、自分が売り手で、相手から「あなたの会社以外にも多くの選択肢がある」などと言われたら不利です。

こうした自分と相手との相対的な力関係のことを「パワーバランス」といいます。パワーバランスを客観的に把握することは、交渉を進める上で重要です。交渉におけるパワーバランスは、相手を必要とするかどうかという「依存度」によって変わってきます。交渉相手への依存度が低ければ自分は強気となり、交渉力は大きくなります。逆に、依存度が高ければ自分は弱気となり、交渉力は小さくなります。

この他にも、社会的な力も交渉力の源泉となります。例えば、企業規模や資産額、親会社、株主、取引企業、上場の有無などが交渉力に影響する可能性があります。業界での知名度なども同様です。

パワーバランスをもう少し分かりやすく説明しましょう。パワーバランスを分析した結果をまとめると、自分が「強気」か「弱気」か、相手が「強気」か「弱気」かによって分類されます。

2)自分優位なら「攻撃型戦略」

自分が優位な立場にあり、かつ交渉を決裂させる選択肢もあるなら、相手に譲歩を迫ったり、自社がさらに有利となる別の条件を提示したりすることができます。そのため、基本的に攻撃型戦略を取ります。

例えば、自社の特許をどうしても利用したいという相手との特許料を巡る交渉や、下請け企業や仕入れ先に納入価格の引き下げを求めたりする交渉などがこれに当たります。自分優位の交渉は簡単に思われますが、相手への要求が高過ぎると交渉が決裂する恐れがあります。

3)相手優位なら「防御型戦略」

相手が優位な立場にあるなら、自分は弱者の立場に置かれているわけですから、そのままでは譲歩を迫られてしまうでしょう。そのため、基本的には防御型戦略を取ります。

例えば、大口顧客から値引きを求められるケースです。こうした場合、データなどで具体的に値引きが難しいという裏付けを示して、相手に理解を求める方法があります。また、納期短縮など別の譲歩を示すことで、値引き要求をかわすことも可能です。

4)強気均衡なら「歩み寄り型戦略」

自分と相手が互いに強気で、交渉決裂時の被害が双方ともに小さい場合、相手の譲歩を引き出せなければ膠着状態に陥ります。この場合、双方の状況を認識した上で、互いに一歩ずつ歩み寄ることが必要です。

5)弱気均衡なら「双方譲歩型戦略」

どちらにも交渉を決裂させる選択肢がない場合、交渉が決裂しないように注意を払いながら、少しずつ本音を開示してより良い着地点を模索します。

6 交渉の実践ポイント

1)目的や限界点の設定

「交渉に何を望むのか」。交渉の目的を事前に定めます。そうしないと、相手からの提案に対して明確な回答や逆提案ができず、終始、相手のペースで交渉が進んでしまいます。当然、こちらから交渉を仕掛けていくこともできません。

また、「これ以下の条件では受け入れられない」といった譲歩の限界点を明確に設定します。そして、予想される相手の要求のうち譲歩できる項目をリストアップしておきます。

交渉を始めたときに、双方の期待値に大きな隔たりがあれば、交渉は行き詰まってしまいます。そのようなとき、こちらが譲歩できる項目がはっきりしていれば、交渉をスムーズに進めることができるのです。

2)交渉構造図を作ろう

自分と相手に複数の利害関係者が存在するなど、交渉の状況を把握するのが複雑なケースがあります。このような場合は、その交渉に影響を及ぼすことができる関係者を図にまとめると、交渉の構造が理解しやすくなります。

その際には、各登場人物間の影響を矢印などで示すとよいでしょう。登場人物の事情や本音などの情報を書き込んでおくと、交渉の全体像がさらにはっきりと見えてくるものです。

3)交渉のシナリオを作ってみよう

交渉の進め方についてシナリオを作ります。「最初にどの条件を提示するのか」「どの段階で譲歩を切り出すのか」「譲歩の代償として何を要求するのか」「対立を解消するためにどのような手段を講じるのか」といったシナリオを作ります。

交渉の場を想像しながら条件などを検討すると、頭の中が整理されてくるでしょう。実際に交渉を行う場合、作成した交渉のシナリオを参考にすると、相手との交渉をスムーズに進めることができます。

4)時間管理を徹底する

交渉のシナリオを作る際、タイムスケジュールを整備しましょう。ビジネスの交渉において、時間的制約を伴わない交渉はありません。シナリオを作る際には、初回訪問時から最終合意までのタイムスケジュールを策定しておくのです。

7 怖がらないで交渉に臨む

1)怖さを生む2つの原因

「課長が部長に『提案』する」というのは、日常的なビジネスシーンでよく見られます。ここでは提案という言葉を使いましたが、実際は「部下と上司による交渉」といってよいでしょう。

相手は同じ会社の人間であり、互いに性格や考え方もよく知っています。部下の立場からすると、パワーバランスは相手が優位です。部下のよりどころは「提案する事項について、相手より具体的かつ詳細な情報を持っている」ということだけです。

仮に、あなたが部下だとしましょう。あなたは上司よりも多くの情報をつかんでおり、その情報を根拠に上司にある提案をしています。上司との交渉に「怖がらないで臨む」ことができるでしょうか。相手が自分よりも上位者だから怖いという人もいますが、実はそれだけではありません。自分より上位者を怖がる気持ちとともに、「理解してもらえなかったらどうしよう」など、交渉が失敗に終わるかもしれないという結果について恐れを抱いているのです。

まとめると、「自分より上位者への恐れ」「交渉が失敗に終わるという結果への不安感」が交渉の強さを生む原因です。交渉に臨む際は、このことを認識しなければなりません。

2)結果よりプロセス

例えば、プロ野球選手は、ヒットやホームランという結果を望んでいるに違いありませんが、ヒットやホームランを打とうと思って打席に立ったところで、期待通りの結果が出るわけではありません。

打率3割は上々な成績ですが、逆にいうと7割も打ち損じています。「毎打席ヒットを打つ」といった結果ではなく、「ボールをバットの芯に当てる」といったプロセスを目的にしたほうが、ヒットにならなかった場合でもモチベーションを保てるわけです。

最も良くないのは、「凡打したらどうしよう」と考えながら打席に立ってしまうタイプです。このような考え方で良い結果が生まれるわけがありません。そもそもバットを振ることすらできないかもしれません。

交渉も同じです。交渉はプロセスの積み重ねであり、自分の置かれた立場を考慮に入れ、相手のメリットを見つけて提案し、1つ1つの事項で相手から納得を引き出すことで、交渉を自分に有利に進めることができるのです。

8 怖さの克服

先ほど、部下が上司に提案するケースに触れました。こうしたパワーバランスでの交渉の機会は、通常のビジネスシーンにおいても頻繁に訪れます。重要な交渉ほど、相手の地位や立場は自分よりも上位にあるといってもよいでしょう。

こうした場合、結果への不安だけでなく、相手そのものを怖いと感じてしまいます。上位者に対する怖さを克服しなければ、交渉を自分に有利に進めることはできませんが、どうすればよいでしょうか。

その対策として、まず「相手が納得する提案事項を多く持つこと」「相手より具体的かつ詳細な情報を持つこと」「相手を納得させるため、専門家の意見を収集しておくこと」が大切です。

次に、集めた情報や作成したシナリオを基に、頭の中でシミュレーションします。図表3の「交渉相手のタイプ別分類」を参考に、さまざまなタイプの相手を想定します。こうすることで、向かい合った相手の印象で怖がることが減るでしょう。

また、シミュレーションを行う際には、自分が提案する場面をイメージするだけでなく、相手の立場で提案を受けるシミュレーションもしておきます。事前に相手の立場でシミュレーションをしておくことで、相手の思考が読み取れるようになります。

さらに、交渉の経験が浅く、交渉に自信がないと感じているような場合、シミュレーションだけではなく、同期などに交渉相手の役割を演じてもらい、交渉の練習を行うとよいでしょう。「この部分の説明がうまくいくか心配」など自分が不安に思っている点や、苦手とする相手の特徴などを練習相手に伝えて、特にその部分に注意して交渉相手を演じてもらうと効果的です。

以上(2025年2月更新)

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画像:chachamal-Adobe Stock

イベントレポート GX経営WEEK【春】 2025/2/19~21開催

2025年2月19日水曜日~2月21日金曜日、東京ビッグサイトにて、RX Japan株式会社主催のイベント、

スマートエネルギーWEEK【春】、GX経営WEEK【春】

が同時開催されました。本展示会は、東京会場では春(2月)と秋(9月)の年2回、関西会場では11月の年1回行われる、企業向け脱炭素ソリューションやサーキュラー・エコノミー関連の製品が出展する展示会・商談会です。

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今回は水素燃料電池展や二次電池展など、大小含めて10の展示会が同時開催され、東京ビッグサイト内は大盛況!

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なかでも、GX経営WEEK【春】内の脱炭素経営EXPOでは、製造業、建築業ほかさまざまな業種の脱炭素経営に活用できる製品展示が軒を連ねます。

自家消費型太陽発電、バイオ燃料、粉砕機……脱炭素経営の必要性が叫ばれる今、企業の経営層、ESG・カーボンニュートラル推進部門担当者は、自社の脱炭素経営のヒントを得ようと、出展企業と盛んに意見交換を行っていました。

また、本展の基調講演

カーボンニュートラルの実現へ~企業に求められる脱炭素経営~

では、環境省 地球環境局 地球温暖化対策課 脱炭素ビジネス推進室長の杉井威夫(すぎい たけお)氏が登壇。

脱炭素経営とは、

気候変動対策の視点を織り込んだ経営のこと

です。2035年度までに温室効果ガスを2013年度比で60%削減するため、官民一体となって脱炭素経営を加速させることが求められています。昨年(2024年)のCOP29(国連気候変動枠組条約第29回締約国会議)、次期削減目標(NDC)など国内外の動向を鑑みると、

大企業のみならずサプライチェーン全体で脱炭素化を進める

ことが求められます。

杉井氏は、講演の中で、「脱炭素化の鍵は中小企業にある」と強調しました。

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中小企業は、人材不足やエネルギー負担など目の前の課題に直面し、脱炭素経営にまで手が回らないことが多い状況にあります。一方で、日本の企業の中では、中小企業が99.7%を占めること、また今年から2030年までの5年間、国際的な脱炭素への取り組みは加速的に進んでいくことから、日本の中小企業も脱炭素経営の必要性に迫られていることは紛れもない事実です。

国としても、脱炭素化に迫られる企業を支援する取り組みを開始しています。具体的には、

  • 脱炭素経営を知ることで取り組みを動機づけする…脱炭素経営のハンドブックを配布
  • 排出量の算定をする…算定ツールや見える化ツールの提供
  • 削減目標・計画の策定、脱炭素設備投資…削減計画策定支援(モデル事業の運営、ガイドブック策定配布)、脱炭素化に向けた設備更新への補助、ESG金融の拡大等

という3つのステップを踏み、脱炭素化を応援します。また、業界単位でカーボンフットプリントの基準を決めることや、地域ぐるみでの支援体制の構築なども行っています。

本展の盛況や杉井氏の講演からも分かるように、

脱炭素経営の主役は、大企業から中小企業へと変革

してきています。そして業界全体で脱炭素の基準が定められる以上、

脱炭素経営は単に「地球に優しい」だけではなく、自社の競争力となりえる

のです。

まずは知ること・測ること、そして、その結果を基に具体的な目標を制定していくことで、脱炭素化のスタートラインに立つことが重要です。

以上(2025年2月26日)

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【交渉術】なぜ、流ちょうに正論を話す人ほど交渉相手に嫌われてしまうのか?

1 交渉に勝つ秘訣は相手に選ばせること

ビジネスに交渉はつきものですが、なかなかうまくいかないことが多いです。冷静に双方の利益を考えられたらいいのですが、なぜか相手の意見には反発したくなります。心理学では、これを「心理的リアクタンス(抵抗)」と呼びます。

厄介なのは、心理的リアクタンスは相手が自分と同じ意見を言っていても生じることです。「わざわざあなたに言われなくても分かっているよ」といった具合ですが、皆さんも心当たりはありませんか。

とにかく、この心理的リアクタンスを突破することが交渉に勝つためには必要です。そのために大切なポイントは、

相手に「自分の自由が脅かされている」と感じさせないよう、自らの意思で意見を選択できる環境をつくること

です。以降で具体的に説明しますので、参考にしてみてください。

2 交渉相手の心理的な抵抗を和らげる方法

1)こちらが情報提示して、交渉相手が結論を出す

1つのケーキを争うことなく2人で分ける方法に、「1人が半分にカットし、もう1人が選ぶ」というものがあります。これと同じ考え方は交渉にも応用できます。

当社が交渉相手に情報(選択肢など)を提示し、交渉相手が自ら選択できるように導きます。交渉相手は「提示された情報を基に、自らの意思で選択した」と感じるため、心理的リアクタンスが発生しにくくなります。

交渉に慣れていないと、「早くまとめよう」と思うあまり結論を急ぎがちです。しかし、こちらが落としどころを提示していくと、交渉相手は結論を押し付けられたと感じます。あくまでも結論は交渉相手が導いたという状況が必要なので、例えば、

「御社の競合はこのサービスを導入していますが、御社は導入しないのですか?」

などと言って交渉相手に考えてもらい、実際に選択してもらいます。

2)ネガティブ情報をうまく伝える

問題はどのような情報を提示するかですが、具体的な方法には、

  • 一面提示:自社の主張に合うこと(または合わないこと)だけを伝える
  • 両面提示:自社の主張に合うことも、合わないことも伝える

があります。先の例で示すと次のようになります。

  • 一面提示:御社の競合はこのサービスを導入していますが、御社は導入しないのですか? 競合は大きな成果を上げていますよ
  • 両面提示:御社の競合はこのサービスを導入していますが、御社は導入しないのですか? 競合は大きな成果を上げていますよ。ただし、年間コストが高いですが……

一面提示は論点を絞り込みやすいので、交渉がシンプルになるメリットがあります。ただ、交渉相手もネガティブ情報をある程度は知っているはずですから、実際は両面提示をすることになるでしょう。ここで大切になるのが、

ネガティブ情報を提示する順番とタイミング

です。

例えば、最初にネガティブ情報を提示する場合、直後に「今、お話ししたデメリットをカバーする十分なメリットがあるので、お伝えします」といったように話を進めます。先にネガティブ情報を提示して誠実さをアピールしつつ、デメリットを打ち消していきます。

逆に、最後にネガティブ情報を提示する場合、「ここまでは良い話ばかりしてきましたが、実は、○○というデメリットもあります」といったような話の進め方です。交渉相手がこちらの提案に十分なメリットを感じている場合、「デメリットよりもメリットのほうが大きい」など、前向きな姿勢で検討してもらえるでしょう。

3)ユーモアを交える、同調する

多くの心理学者によって、

ユーモアには心理的リアクタンスの発生を抑制する効果がある

と認められています。交渉だからといっていきなり堅苦しい話をせずに、雑談から入ることも無駄ではないのです。

また、

交渉相手の意見を否定せずに、同調すること

も有効です。人は自分の意見を肯定してくれる相手には好意を抱きやすく、反対もしかりです。とはいえ、交渉相手の主張と反対の方向に導きたいシーンだと交渉相手に同調できません。このような場合は、趣味やファッションなど交渉とは関係のない別の部分で同調します。

3 自社の製品を売り込む際の話法

ここまでの流れを踏まえ、交渉の流れをシミュレーションしてみましょう。ここでは、自社の「ペーパーレス化の支援サービス」を取引先の社長にお勧めするシーンを想定します。

自社:御社のDX(デジタルトランスフォーメーション)は進んでいますか?

相手:いや、どこから手をつけるべきか悩んでいるよ。

自社:中小企業はペーパーレス化から始めるケースが多いですよ(情報提示)。

相手:ペーパーレス化ね~。それはDXといえるの?

自社:確かに、そういう意見も多いです(同調)。ペーパーレス化は昭和な感じで、我々世代にはなじみ深いですが(笑)(ユーモア)。

相手:ははは。そうだね、イメージが湧きやすい。

自社:実際、多くの中小企業がペーパーレス化をDXの足掛かりにしています。この動きはますます活発になるでしょう。

相手:うちの同業も始めたらしい。古臭い会社と思われるのも心外だし。

自社:会議の議事録のデータ化や電子契約から始めるケースが多いです(情報提示)。

相手:なるほど。確かにうちも会議は多いな。

自社:当社の取引先は、この取り組みで80%も紙を削減しました(情報提示)。

相手:80%も削減したのか。すごいな!

自社:当社のサービスをご利用いただければ、セキュアに議事録を保管できます。そこから始めて、少しずつペーパーレス化の範囲を広げ、DXにつなげていくのはどうでしょうか?

相手:まずは始めてみることが大切ということだね。

自社:はい。ペーパーレス化自体にそれほど大きな効果はないかもしれませんが、DXの一歩を踏み出すという意味ではとても有意義です(両面提示)。

相手:そうだな。よし、やってみよう!

以上(2025年2月更新)

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画像:photo-ac

2025年施行の改正法対応 産休・育休の実務ガイド(2025年3月号)

昨年、改正された「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」が、ことしの4月と10月に分けて施行されます。本冊子では、改正内容も織り込みながら、従業員が産休や育休を取得したり、仕事と育児の両立支援制度を利用したりする際の実務について、規定例などを交えて解説します。


【業務効率化】FAXでの「紙」のやり取りをなくすには?

1 FAXで「紙」をやり取りするのは非効率

FAXでのやり取りは、「使い慣れているから」「相手に合わせないといけないから」といった理由で、なかなか見直しが進みにくい業務フローです。

特に、見積書や注文書など受発注に関する書面をFAXでやり取りする商習慣が根強い業種では、一足飛びにFAXでのやり取りを廃止するのは難しいかもしれません。しかし、

「紙」のやり取りをなくすだけなら、自社の環境を変えることで実現可能(PC-FAXやインターネットFAXを利用するなど)

です。その上で、FAXを他の手段に切り替えられないか、検討してみてはいかがでしょうか?

2 「紙」のやり取りをなくす方法

1)既存の複合機のPC-FAXを利用する

PC-FAXは、ネットワーク接続対応の複合機とパソコンとを連携してFAXを送受信する機能です。既にネットワーク接続対応の複合機があるのに、PC-FAXを使いこなしていないだけならば、複合機メーカーのマニュアルやサポートサービスを頼りに、比較的容易に設定できます。

FAXを送信する際は、パソコンから印刷するのと同じ手順で、文章や画像などのファイルをそのまま送信データとして選択できます(紙の文書を読み取って送信することもできます)。また、受信したFAXは、PDF形式などのファイルに変換され、所定のフォルダに保存したり、メール添付で所定のメールアドレスに転送したりできます。

従前と同様、電話回線(FAX回線)を使うため、その分の通信費はかかりますが、印刷しなければ紙やインク、トナー代(印刷費)を抑えられます。

なお、社外から社内のネットワーク環境にアクセスするためには、VPN接続やリモートデスクトップを使うなど、PC-FAXとは別に設定が必要です。

2)新たにインターネットFAXを利用する

インターネットFAXは文字通り、インターネットを通じてFAXの送受信を行うサービスです。サービス提供会社からFAX番号を取得し、メールアドレスを登録すると、そのメールアドレスを使ってFAXを送受信できるようになります。

FAXを送信する際は、登録したメールアドレスから、文章や画像などのファイルを添付して送信します。また、受信したFAXは、PDF形式などのファイルに変換され、添付ファイルとして登録したメールアドレスに届きます。

電話回線(FAX回線)を使わないため、その分の通信費はかからず、FAX機や複合機がなくてもFAXを使えるようになります。印刷しなければ紙やインク、トナー代(印刷費)を抑えられます。例えば、次のようなサービスがあります。

■アクセルコミュニケーションズ「メッセージプラス」■

https://www.messageplus.jp/

■エディックワークス「faximo(ファクシモ)」■

https://www.edicworks.com/service/faximo/

■Karigo「秒速FAX」■

https://fax.toones.jp/

■グラントン「03FAX」■

https://03plus.net/03fax/

■j2 Global Japan「eFax」■

https://www.efax.co.jp/

■日本テレネット「MOVFAX(モバックス)」■

https://movfax.jp/

■ヤマトシステム開発「どこでもMyFAX」■

https://www.nekonet.co.jp/service/dokodemo-myfax

3 FAXに代わる他の手段

1)「中小企業共通EDI標準」の利用を検討する

EDIは、Electronic Data Interchange(電子データ交換)の略語で、主に企業間(BtoB)の電子商取引で利用されるため、「企業間電子データ交換」ともいわれます。

受発注や納品を行う際、紙の帳票や請求書などを発行するのではなく、専用回線やインターネットを通じて電子データをやり取りするシステムで、データをやり取りする企業間で標準化された書式を利用します。紙の書類を作成しなくてよいので、データで管理でき、業務の効率化や経費の削減を図ることができます。

「中小企業共通EDI標準」は、中小企業庁の委託事業(受託者:ITコーディネータ協会)として2018年3月に初版が公開されたクラウドサービスで、それ以来、バージョンアップが重ねられています。同事業に参加したITベンダーを中心に結成された「つなぐITコンソーシアム」の会員企業などが、対応製品・サービスを開発、提供しています。

■ITコーディネータ協会「中小企業共通EDIポータルサイト」■

https://www.edi.itc.or.jp/

■つなぐITコンソーシアム■

https://tsunagu-cons.jp/

2)WEB受発注システムの利用を検討する

WEB受発注システムは、従来行っていた紙や電話などでの受注業務(伝票処理)、FAX・電子メール・電話での発注業務などをシステム上で完結できるサービスです。

受発注業務は業種や企業によって違いがあり、システムに求められる要件もさまざまです。請求管理、在庫管理など関連する管理業務との連携がうまくできるかどうかが重要といえるでしょう。例えば、次のようなサービスがあります。

■アイル「アラジンEC」■

https://aladdin-ec.jp/

■アクロスソリューションズ「MOS」■

https://www.mosjapan.jp/

■インフォマート「BtoBプラットフォーム 受発注」■

https://www.infomart.co.jp/asp/index.asp

■オザックス「マルチプラットフォームシステム」■

https://www.ozaxitlab.jp/products_search/list002/item_1

■CO-NECT「CO-NECT」■

https://biz.conct.jp/

■ラクス「楽楽販売」■

https://www.rakurakuhanbai.jp/

■ラクーンコマース「COREC」■

https://corec.jp/

4 便利なサービス 比較のポイントは?

1)使いやすさ

本格導入した際に今まで通りの流れで業務が遂行できるかどうかがポイントです。トライアル期間が設けられているサービスも多いため、直感的に操作できるか、機能が多く複雑過ぎないかなど、使い勝手を確認しましょう。

2)セキュリティー

インターネットFAXなどのウェブサービスを利用する場合、情報漏洩対策がしっかり取られているかがポイントです。不正アクセスやマルウエアへの感染対策などを事前に確認しましょう。

以上(2025年1月更新)

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画像:piyaphunjun-Adobe Stock

【開催終了】ディスカバー農村漁村の宝 地方サミットin四国 開催!

3月10日(月)徳島グランヴィリオホテルにて「ディスカバー農村漁村の宝 地方サミットin四国」が開催されます!(主催:「ディスカバー農村漁村の村」事務局)
本サミットでは、四国四県で地域資源を活かして活躍している高校生に参加いただき、事例発表、パネルディスカッション及び交流会を行います。高校生達の地元に対する熱い想い、地域課題解決のヒントが聞ける場となっております。
一次産業に携わっている方はもちろん、それ以外の方も、地方の未来を考える良い機会と思いますので、ご興味のある方はぜひご参加ください!


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【開催概要】

  • 日時 令和7年3月10日(月) 14:00~17:30
  • 会場 徳島グランヴィリオホテル「グランヴィリオホール」
  • 申込 定員:150名 申込締切:令和7年3月7日(金) 14時まで

https://qa.nta.co.jp/Q/auto/ja/59825001/discsummit/
定員になり次第、締め切りとさせていただきます。

  • 主催 「ディスカバー農村漁村の宝」事務局
  • 問合せ先 中国四国農政局農村振興部都市農村交流課
    担当者:大塚、池田、篠原、石見
    代表:086-224-4511(内線2164、2158、2526、2576)
    時間外:086-224-9408