御社はなぜ、存在するのか? ~老舗の社長から学べ! 今、パーパス経営が求められるのは当然だった

書いてあること

  • 主な読者:業績だけでなく、社会での存在感などの面でも企業の価値を高めたい経営者
  • 課題:「パーパス経営」に関心はあるが、どのようにしてメリットを得るのか分からない
  • 解決策:理念が形骸化しないよう、時代に対応させた解釈をし、社員が共感しやすく工夫する。他社がまねできない、唯一の存在になれる理念を掲げることが理想

1 「パーパス」とは、御社の存在意義である

最近、「パーパス経営」という言葉をよく聞きませんか? パーパス経営とは、

企業の存在意義(パーパス)を明確にし、それを軸に社会に貢献していくための経営

とされています。パーパスの位置付けは次の通りです。

画像1

パーパスは「企業理念」に包含される古くて新しい考えなのですが、横文字で少し分かりにくいですよね。ただ、企業理念を長年守り続けている老舗企業の中にも、パーパスを含んだものが多くあります。そうした企業の事例からは、次のようなパーパス経営のメリットが見えてきます。

  • 企業のあるべき立ち位置が定まり、事業方針がブレず、顧客を見失わない
  • 社員が自社や自分の仕事に誇りを持ち、エンゲージメントが高まる
  • 企業や社員があるべき姿に向かって、常に成長し続ける気持ちを忘れない
  • 企業の存在価値(ブランド力)が高まり、他社では代えがたい存在になる

この記事では、100年以上の歴史を持つ2社の社長へのインタビューを紹介します。パーパス経営に通じる企業理念を持った2社が、どのように「パーパス経営」のメリットを得ているのかをお聞きしています。

2 「親切と信用、そしてお客様も大切に」の信条で多角化

呉服などを販売する近江屋(山口県山口市)は、大正3年(1914年)に呉服用などの綿布商として創業しました。3代目社長の北條栄作さんは、祖父に当たる創業者が残した、「親切と信用、そしてお客様も大切に」という理念(信条)を受け継ぎました。

北條さんによると、近江商人の『三方よし』の考えに通じる言葉で、地域に根ざし、お客さまの生活を豊かにするためのお手伝いをすることを掲げた理念だといいます。

画像2

この理念には、「お客さまの望みを満たし、『あの人なら信頼が置ける』という心をお客さまからいただくことができれば、本当の意味で『意(心)を得る(いただく)』お得意様になる」という意味が込められているそうです。

1)顧客の生活を豊かにすることを追求した結果、多角化を推進

着物から洋服へと生活スタイルが変化していくのに伴い、近江屋は柔軟に多角化することで生き残り続けています。その根本にあったのが、前述した創業者の理念でした。

顧客のニーズに応じる形で、取り扱う商品を寝具、婦人服、オーダースーツ、毛皮・革製品、宝飾品などへと拡大。また、顧客と着物との関わり方の変化に合わせて、着付け教室やレンタル衣装、フォトスタジオ、ブライダル事業なども手掛けるようになりました。

その結果、近江屋は現在、広島県内を含む10店舗を展開するまでになっています。

2)社員には年1回の唱和と日ごろの技術指導で理解を深めてもらう

北條さんは、創業者の理念を今の時代に対応させる形で、次のような企業理念を掲げました。

画像3

この企業理念を社員に理解してもらうために、近江屋では年に1回、全社員が集まった場で、理念を唱和する機会を設けているそうです。

近江屋の企業理念は、日常的な社員教育の中でも活かされています。北條さんは、「通常の生活には必要のない嗜好品を販売しているという専門性もあるので、特にお客さまの立場になることを重視している。そのための技術指導は企業理念に基づいており、接客の姿勢にも表れている」と言います。

3)「存在意義まで意識できる社員になってほしい」

企業理念の実践によって、多角化の成功や、顧客本意の接客の定着というメリットを得ている近江屋ですが、北條さんは、まだ企業理念を活かす余地があるとみています。

北條さんは次のように、近江屋のさらなる飛躍への期待を語っています。

「今は目の前のお客さま一人ひとりのための親切と信用を軸にして仕事をして、結果的に地域や社会に貢献している形になっている。自分たちの存在意義として、社会貢献、地域貢献まで意識するようになれば、仕事のモチベーションはもっと上がると思います」

3 独自性を追求した企業理念の解釈で「環境印刷」を柱に

包装紙など企業向けの印刷などを行う大川印刷(神奈川県横浜市)は、明治14年(1881年)に創業してから140年以上、変わらずに印刷業を続けています。6代目の社長である大川哲郎さんは、先代に当たる母が掲げた企業理念を受け継ぎました。

画像4

企業理念を作ったのは先代の社長で、大川さんは「100年企業なのに創業時代から続く企業理念がないのを残念に思っていた」そうです。

ところが、社長になった大川さんが文献などで調べたところ、創業間もない頃の大川印刷が掲載した新聞広告に、「製品の優等を企するに熱心なる」「いたずらに価格のみの競争をせざる」「印刷の鮮明と成功の迅速なる」などと記載されていたことを発見しました。このため大川さんは、「創業当初から大切にしていることが、今の企業理念にも受け継がれていると感じている」と言います。

1)企業理念を現代に対応させた結果、「環境印刷」を事業の柱に

大川さんは、かつて先輩経営者から聞いた「意志は引き継ぐな、理念は受け継げ」という考え方を参考に、「理念はできる限り大切にして、時代に対応させるために解釈を変えてきた」そうです。

「企業理念を現代的に解釈すると、『信頼に応える技術力』とは環境や社会の持続性に対応させるための技術も含めるものであって、『喜びを分かち合える』相手は仲間やお客さまだけでなく、お客さまの先にある生活者に当たるユーザーや、地域社会、地球全体でなければならない」

そして導き出した考えが、「ソーシャルプリンティングカンパニー®(社会的印刷会社)」になることでした。

具体的には、「本業を通じて社会課題解決を行っていく」ことを目的に「環境印刷」を事業の柱とし、紙やインキ、配送方法まで環境に配慮するとともに、印刷に伴う二酸化炭素のカーボン・オフセット(排出量分だけ他の削減活動に投資すること)を行う「CO2ゼロ印刷」を確立することでした。

「環境印刷」事業によって、大川印刷はコロナ禍でも売り上げは前年度比15%減にとどまり、ESGやSDGsに関連した企業・団体を中心に、新規顧客が売り上げの8%程度を占めるまでになっているといいます。

2)企業理念やパーパスは、企業が生き続けるための旗印

大川さんが企業理念を現代的に解釈すべきと思うようになったきっかけは、20年ほど前、ある経営者向け勉強会での講師からの問い掛けだったといいます。

明日もしもあなたの会社がなくなったら、あなたのお客さんは本当に困りますか?

大川さんはそのとき、「ぐうの音も出なかった。うちの会社がなくなっても、お客さまは多少慌ただしくなるかもしれないが、1、2週間すれば他の印刷会社さんに切り替えて対応できてしまうと思った」そうです。そこで、「不老不死企業になるためには、なくなったらお客さまが困る存在にならなくてはならない。そのためには、企業理念を、他社には言えない、独自性のあるパーパスにつながるようなものにしなければならない」と考えるようになったといいます。

こうしてたどり着いた「ソーシャルプリンティングカンパニー(R)」という言葉を、大川さんは2004年に商標登録しました。大川さんは企業理念やパーパスについて、次のように話します。「企業理念やパーパスは、きれい事ではなく、企業が生き続けるために、苦しみながら作っていくものだと思います」

3)企業理念は社員に「浸透」させるものでなく、「共感」してもらうもの

大川さんが苦心したのは、企業理念を現代的に解釈することだけではありません。企業理念を社員に理解してもらうのも、さまざまな工夫が必要だったようです。

大川さんは、「『浸透させる』という言葉には上から下に染み込ませるというイメージがあり、社員は『やらされ感』を伴うものになってしまって、自分事にならない。共感を増やしていくことが重要だと気付いた」と言います。

社員から共感を得るために、大川さんは次のようなことを心掛けました。

  • 情報はできる限り共有する
  • 五感で伝わるように工夫する
  • 「幸せの追求」といった共通かつ普遍的な価値観を大切にする
  • それらの価値観を理念やクレド(信条)と一体化する
  • それらが伝わるまで繰り返し伝え続ける

特に大川さんが活用したのは、学生時代の大川さんの人生に強い影響を与えたという、アフリカ系アメリカ人音楽であるブルーズ(ブルースともいいます)でした。ブルーズの名言の中から自社の企業理念に合致した13個を選び出し、大川印刷のクレド(信条)としました。

そして社員の名刺に、それぞれが好きな色を使い、好きなクレドを選んで載せるようにしました。

画像5

大川さんは、「全員が全員、理念やクレドに心から共感するまでになっているかは分かりませんが、共感してくれている社員もいます。『定年になったら会社を辞める』と言っていた社員が、『このまま辞めてしまうのはさみしいので、もう1年やらせてください』と言ってくれるようになったのは、大川印刷の企業理念に共感してくれているということで、ありがたいことです」と話しています。

以上(2022年3月)

pj80148
画像:NDABCREATIVITY-Adobe Stock

【朝礼】新入社員の皆さんに目指してほしい「成長の証し」

新入社員の皆さん、当社に入社してくれてありがとうございます! 皆さんを迎えた私たちは、新しい未来に大いに胸を膨らませています。ぜひ、一緒に前に進みましょう。今日はそのために、皆さんに心掛けてほしいことをお伝えします。

皆さんはこれから当社で働き、お給料をもらいます。このお給料について、「どこから来るものか」を考えたことがあるでしょうか?

こう尋ねると皆さんは、「私たちのお給料はお客様が支払ってくださっています。お客様への感謝の気持ちを忘れず、常にお客様のことを考えるようにします」と答えるかもしれません。それはそれで合っていますが、それだけでは不十分です。

皆さんのお給料の原資となるお金は、確かにお客様からいただいています。ただし、お客様が当社にお金を支払ってくださるのは、皆さんの上司や先輩方の頑張りがあるからです。上司や先輩方が、日ごろからお客様に喜んでいただける商品やサービスを一生懸命考えたり、お客様に採用していただけるよう営業活動をしたりしているからこそ、皆さんのお給料があるのだということを忘れてはなりません。

皆さん自身が担当する1つ1つの仕事も、上司や先輩方が指導して、初めて無事に進められるものでしょう。そうした意味では、厳しい言い方をすれば、皆さんはまだ「上司や先輩方に養ってもらっている」状態です。一日も早くこの状態から脱するよう成長しなければなりません。

そのために、皆さんに心掛けてほしいことが2つあります。1つ目は、目の前にある1つ1つの仕事に全力を尽くすことです。元帝国ホテルの社長、犬丸徹三氏が残した言葉に、「どんな小さな仕事でも、ぴかぴかに輝くくらいに仕上げるのである」というものがあります。コック希望の犬丸氏は、若い頃、窓ガラス拭きの仕事を与えられたことが大いに不満でした。しかし、窓ガラス拭きに誇りを持って取り組む同僚の話を聞き、「たとえつまらなく思える仕事であっても、その仕事のやりがいを自分で見つけ出して一生懸命に取り組むことが大切」だと考えを改めたといいます。

皆さんも同じです。まずは、与えられた1つ1つの仕事を「ぴかぴかに」仕上げるよう取り組んでみてください。その積み重ねこそが皆さんを成長させ、飛躍させることでしょう。

そして2つ目は、素直に人の話を聞くことです。どれだけ素直に人の話を聞き、実践するかで、その後成長できるかどうかが変わってくると私は考えています。入社したばかりの皆さんは、「自分以外の人は全て先生」くらいの気持ちで素直に人の話を聞きましょう。

この2つを心掛けていれば、日ごろ一緒に仕事をしている身近な上司や先輩から、「ありがとう。君がいてくれてよかった」と認めてもらえるようになります。新入社員の皆さん、一番身近な人から「ありがとう」をもらうことを目指してください。それこそが、あなたの成長の証しです。

以上(2022年4月)

op16905
画像:Mariko Mitsuda

派遣社員に退職金は必要? 同一労働同一賃金の「労使協定方式」と賃金の最低水準

書いてあること

  • 主な読者:派遣社員の同一労働同一賃金について知りたい派遣元(派遣会社)の経営者
  • 課題:どうやって派遣社員の賃金が決まるの? 退職金は必ず支給しなければならない?
  • 解決策:「労使協定方式」で決めるのが主流。「基本給・賞与・手当等」「通勤手当」「退職金」の3項目については、賃金の最低水準があるので注意

1 「労使協定方式」が主流。ただし賃金の最低水準に注意

「同一労働同一賃金」とは簡単に言うと、

仕事の内容などが同じなのに、パートや派遣社員であるという理由だけで、正社員などよりも低い待遇にすることはできない

という考え方です。パートも派遣社員も基本は同じですが、派遣社員特有のルールが1つあります。それが「待遇の決め方」です。労働者派遣法により、派遣元には、

  • 労使協定で派遣社員の待遇を決める「労使協定方式」
  • 派遣先に応じて、派遣社員の待遇を決める「派遣先均等・均衡方式」

のいずれかによって、同一労働同一賃金を実現することが義務付けられています。どちらを選択するかは派遣元の自由ですが、「派遣先が変わっても逐一全ての待遇を見直す必要はなく、派遣社員の収入も安定しやすい」という理由から、1.の労使協定方式が主流のようです。

ただし、労使協定方式には注意点があります。それは、

職種や地域などに応じて、賃金(退職金を含む)の最低水準が決められていること

です。詳細は後述しますが、通勤手当や退職金の支給額が最低水準に達していない場合、支給額の引き上げを検討しないといけません。

派遣社員の同一労働同一賃金は2020年4月1日から施行済みですが、今の賃金状況に問題がないか、いま一度チェックしてみるとよいでしょう。この記事では、労使協定方式における賃金の最低水準の考え方を紹介していますので、参考にしてください。

また、同一労働同一賃金の基本や、労使協定方式と派遣先均等・均衡方式の概要などを知りたい人は、次の記事をご確認ください。

2 賃金の最低水準のルールは3項目に分かれている

労使協定方式では、「基本給・賞与・手当等」「通勤手当」「退職金」の3項目について最低水準のルールが設けられています。ちなみに、基本給・賞与・手当等とは、賃金全体から通勤手当、退職金、残業代(時間外・休日・深夜労働に対して支払うもの)を除いた金額のことです。

1)基本給・賞与・手当等

基本給・賞与・手当等の最低水準は、次の計算式で算出した金額(時給換算)です。計算の結果、1円未満の端数が生じた場合は「切り上げ」になります。

画像1

各基準値・指数の具体的な数字は、厚生労働省ウェブサイトから確認できます。

■厚生労働省「労使協定方式(労働者派遣法第30条の4)『同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準』について」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00001.html

2)通勤手当

通勤手当の最低水準は、次のいずれかの金額です。どちらを適用するかは労使で選択することとされ、派遣社員によって1.と2.を使い分けるよう労使協定で定めることもできます。

  • 通勤費の実費相当額(定期代など)
  • 厚生労働省が定める金額(2021年度は74円、2022年度は71円、どちらも時給換算)

ただし、通勤手当の支給額に上限を設けている場合は注意する必要があります。通勤手当の支給額が1.の実費相当額を下回る派遣社員については、必ず2.の最低水準が適用されるからです。ちなみに、通勤手当の支給額が2.の最低水準に達しているかどうかは、通勤手当を時給換算した金額で判断します。例えば、通勤手当が毎月支給されている場合、

毎月の通勤手当の支給額÷(1日の所定労働日数×1カ月の所定労働日数)≧74円(71円)

となっていれば、最低水準に達していることになります。

3)退職金

退職金の最低水準は、次のいずれかの金額です。どちらを適用するかは労使で選択することとされ、派遣社員によって1.と2.を使い分けるよう労使協定で定めることもできます。

  • 厚生労働省が認める統計調査(賃金構造基本統計調査など、「1)基本給・賞与・手当等」のURLを参照)を基にした金額
  • 基本給・賞与・手当等の最低水準×6%(時給換算、1円未満の端数は「切り上げ」)

ただし、中小企業退職金共済制度等(中小企業退職金共済制度、商工会議所の特定退職金共済制度、中小事業主掛金納付制度(iDeCo+)、企業型の確定拠出年金など)に加入する場合は、必ず2.が適用されます。なお、拠出金は会社が拠出するもののみが対象で、派遣社員(加入者)本人が拠出金を上乗せする、いわゆる「マッチング拠出」は対象外です。

3 派遣社員の賃金の見直しは必要? シミュレートしてみよう

次に、派遣社員の賃金について見直しが必要かどうかシミュレートしてみましょう。ここでは、職種が「一般事務員」の派遣社員を例に、シミュレーションのイメージを紹介します。

まずは、前提条件を次のように設定します。

画像2

次に、賃金の最低水準の金額を計算します。厚生労働省の基準値・指数などについては、「2022年度」のものを使用した場合、最低水準の合計金額は次のようになります。

画像3

この賃金の最低水準の合計金額と、図表2の現在の賃金とを比較すると、次のようになります。

  • 賃金の最低水準の合計金額:1万4224円(8時間換算、1778円×8時間)
  • 現在の賃金:1万1531円(8時間換算)
  • 差額:2693円(8時間換算、1万4224円-1万1531円)

この場合、賃金が最低水準に達していないため、支給額を引き上げなければなりません。仮に派遣社員の1日の所定労働時間を8時間、1カ月の所定労働日数を20日とした場合、

通勤手当や退職金込みで、1カ月当たり5万3860円(2693円×20日)の引き上げ

が必要になります。

4 労働条件の不利益変更に注意

第3章では、派遣社員の賃金が最低水準に達していないケースを取り上げましたが、逆に現在の賃金が最低水準を上回っていて、経営者が「これまで賃金を払いすぎていたのでは……」と見直しを検討するケースも考えられます。

しかし、賃金の引き下げは「労働条件の不利益変更」に当たるため、実施するには、

  • 労働組合の同意を得て、労働協約を変更する
  • 合理的な内容であることを前提に、就業規則を変更する
  • 個々の派遣社員の同意を得て、労働契約を変更する

のいずれかの手続きが必要です。なお、「合理的な内容であることを前提に、就業規則を変更する」場合、派遣社員が被る不利益の大きさや労働条件変更の必要性、変更内容の相当性や労働組合等との交渉状況その他の事情等を考慮して合理性が判断されることになります。

基本的に、最低水準だけを理由にして賃金を引き下げるのは合理的とはいえませんが、経営上の高度の必要性があり、代償措置の存在等の相当性が認められる事情があれば、その合理性が認められる余地が出てくるでしょう。とはいえ、トラブル防止の観点から考えると、可能な限り個々の派遣社員の自由な意思に基づく合意を得た上で就業規則を変更するのが望ましいです。

以上(2022年3月)
(監修 弁護士 八幡優里)

pj00459
画像:tiquitaca-Adobe Stock

【朝礼】社内の評価より社外の評価を誇れ

突然ですが、私は新年度から、皆さんの評価の方法を見直すつもりです。そのきっかけになったのは、A君に対する評価について、私に至らない部分があったからです。これからその経緯について話しますが、皆さんの仕事の取り組み方にも関係することなので、しっかりと聞いてください。

皆さんもご存じのように、A君は若手から中堅社員になりつつあり、これからの成長が期待される一人です。私を含めたA君の上司たちは、A君に対してそれなりに評価しているつもりでした。

ところが最近、ある取引先の幹部の方と話をしたときにA君の話題になり、取引先の方々は私が想像していた以上に、A君を高く評価していることを知りました。

確かにA君は人当たりが良く、私も取引先から好まれる人物だとは思っていました。その一方で、取引先との交渉の進め方が遅いという難点があるとも感じていました。ところが、取引先の幹部の方は、A君は綿密に連絡を取り、こちらの事情も踏まえて行動してくれると感謝していたのです。しかも、取引先におもねって言い分をそのままのむのではなく、我が社の立場もしっかりと説明した上で、両社の折り合いがつくような提案をしてくれているそうです。

私がこの話を踏まえ、A君から取引先を引き継いだ若手のB君に話を聞いてみたところ、A君が築いた取引先との良好な関係のおかげで、取引先の我が社に対する信頼も厚いとのことです。

こうした話を聞いて、私はA君に対してとても感謝し、これまで社外での評価を考慮せずに低く評価していた自分自身の、人を見る目のなさを反省しました。

私がA君の交渉の進め方が遅いと思っていたのは、「我が社の都合」で見ていたからでした。A君は、たとえ進め方が遅いという社内の評価を受けてでも、取引先から感謝され、結果的に我が社が取引先と長くWIN-WINの関係を続けられることを優先してくれていたのです。

この反省を踏まえて、私は新年度から、皆さんを評価するために、取引先を含めたいろいろな人の意見を聞くようにします。そして、皆さんにもお願いがあります。それは、社内での、特に上司からの目先の評価だけを気にして仕事をしないでもらいたい、ということです。もちろん、私の顔色を見ながら仕事をする必要もありません。

皆さんは、取引の現場の最前線に立つ者として、我が社のことだけでなく、取引先にとって何がベストなのかも考えて行動するようにしてください。取引先のために最大限の努力をすれば、取引先は必ず評価してくれます。取引先との最前線に立つ皆さんが評価されるということは、我が社の評価が上がるということでもあります。もし私や上司が現場の事情を知らずに、取引先からの評価が下がるような要求をしていると感じたら、遠慮なく反論してください。私は新年度から、それができる社員も、高く評価します。

以上(2022年3月)

pj17095
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】新年度に持っていくこと、捨てること

4月は年度が替わる節目の月です。これは、古いものを捨て、新しいものを取る「取捨選択」の月でもあります。新年度、私はこの取捨選択を徹底的に行っていきます。日立でラストマンといわれた川村隆氏の言葉に、その理由が示されているので紹介します。

「英国の軍艦の興味深い話があります。軍艦をそのまま放っておくと、毎年1インチずつ喫水が下がり、船の航行速度が落ちて、最後には使い物にならなくなるそうです。さびて浸水したり、貝殻が付着したりというようなことではなく、船の重量が毎年少しずつ増えていくのが原因です」

皆さんは、船の機能が奪われていく理由は何であると思いますか。川村氏の言葉は次のように続きます。

「なぜか。乗組員が勤務に慣れてくるに従って、自分のベッドや個室に本などの私物を持ち込み、それが全体ではバカにならない重量になるというのです」

日々、私たちが行う仕事には、各人の“想い”が込められています。“想い”がなければ良い仕事はできません。また、仕事に慣れてくれば、効率化が図れます。しかし一方で、知らないうちにそれらが独りよがりのものとなり、他人の意見や指摘を聞き入れる心の余裕を失ったり、世の中の変化に置き去りにされて “ガラパゴス化”した仕事の進め方になってしまったりすることがあります。これはとても怖いことです。

昨年の大掃除は、乱れたものをあるべき場所に戻したり、順番通りに並べたりするだけの「整える掃除」ではありませんでした。明らかに不要なものはもちろんですが、それ以外にも「もしかするとこれから使うかもしれない」と思って保管してきたものも一気に処分する「捨てる掃除」をしました。いわば物質の取捨選択です。そして、キャビネットの台数を減らした代わりに、新しくミーティングスペースを作りました。リモートでは難しい、オフィスに出社するからこそできる活気ある議論や、仲間とのつながりを感じられる場を作りたいと思ったからです。

 

また、昨年末から年始にかけて、私は皆さんに繰り返し伝えました。「来年度に、何を持っていき、何を捨て、そして新たに何を獲得するのかをじっくり考えてほしい」と。その答えを行動で示すときが、いよいよやってきたことを皆さんは分かっているでしょうか。

当社は小さいながらも、長い歴史があります。とても誇らしいことですが、冒頭で紹介した英国の軍艦のようになったら、あっという間に沈んでしまいます。小さな会社だからこそ、スピードと柔軟さという武器を失ってはいけないのです。

新年度、我が社は新規事業にチャレンジします。そのためには、物質だけではなく、これまでの積み重ねの中にも捨てなければならないものがあります。決して過去をないがしろにするわけではありません。新しいスタートを切るための儀式のようなものなのです。皆さん、気持ちをリフレッシュしてください。そして、勢いよく新年度のスタートを切りましょう。

以上(2022年3月)

op16903
画像:Mariko Mitsuda

「Z世代」について企業が理解しておくべきこと

1 世界の人口の約3割を占めるZ世代

私の息子は1996年生まれです。まさにZ世代の初めの世代。少なくとも息子の人生初めてのお絵かきの道具は「クレヨン」ではありませんでした。クレヨンを買い与える前に勝手に「マウス」を触ってお絵描きをした世代です。なぜなら我が家には“Windows95”があったからです。生まれた時から両親がパソコンを立ち上げる姿をその目に映しながら人生のスタートをきった世代がZ世代です。

「今どきの若い者は…」などという、いつの世代も繰り返されてきたような、世代を一括りにするような言い方はあまり好きではありませんが、20歳までの多感な時期をどのような時代背景で育まれてきたのかは、ある程度その世代の文化をつくると感じます。

マーケティングの世界において、すでに世界の人口の約32%を占めるといわれるZ世代の消費行動に対応できなければ、この世代を顧客化し、次代に生き残る企業とはなり得ません。日本においては少子高齢化の影響もあり、Z世代の人口割合は約半分、15%程度に過ぎませんが、これからの日本を支えていくのは間違いなく彼らの世代です。

そもそも近年はVUCAの時代といわれてきました。VUCAは、次の4つの単語の頭文字をとった造語です。

V(Volatility:変動性)
U(Uncertainty:不確実性)
C(Complexity:複雑性)
A(Ambiguity:曖昧性)

そして、ここにコロナ禍という想定外が重なりました。Z世代はこのタイミングで入社や就活を経験した世代ともいえます。限られた誌面ではありますが、この時代背景におけるいわゆるZ世代への対応を通じて、これからの人事・労務担当者のあり方を一緒に考えていきましょう。

(日本法令ビジネスガイドより)

この記事の全文は、こちらからお読みいただけます。pdf

sj09031
画像:photo-ac

【朝礼】私は童心に帰ります!

早いもので、2021年度も今月で終わりです。今年度の自分を振り返ってみると、恥ずかしながら、与えられた仕事をこなすだけの1年で終わってしまいました。新年度は、もっとエネルギッシュに仕事に取り組みたいと思います。そのために決めた新年度の私の仕事のテーマは、「童心に帰る」です。どういう意味かを説明する前に、まずはこのテーマを考えるきっかけをくれた、私の甥(おい)っ子の話をしたいと思います。

甥っ子は現在4歳で、電車やバスなどの乗り物が大好きです。普段は遠方に住んでいますが、先日、私の弟が彼を連れて遊びに来たので、私は2人を近所にある鉄道の博物館に連れていきました。この博物館には、人が乗れる大きさの電車があります。もちろん、ただの展示物なので動きませんが、車両の中には運転席があります。それを見た甥っ子は運転士になりきり、私や弟を乗客に見立てて「ごっこ遊び」を始めました。

そこからが大変です。甥っ子は「お客さん、早く乗ってください」「お客さん、終点です」と言っては、私と弟を車両に乗り降りさせるだけの遊びを、延々と繰り返しました。私が「そろそろ他のコーナーに行かない?」と言っても運転席を離れようとせず、なんとか説得して家に帰った後も、運転士ごっこは続きました。甥っ子が寝る頃には、私はクタクタに疲れてしまい、「4歳の小さな体のどこにそんなスタミナがあるのか」と驚かされるばかりでした。

諸説あるそうですが、小さい子どもが並外れたスタミナを持っているのには、大人に比べて筋肉が疲れにくい、疲労から回復する能力が高いといった身体的な理由の他に、「ワクワク」や「ドキドキ」をたくさん感じているからだという精神的な理由もあるそうです。まだ幼く、見るもの触れるもの全てが新鮮な甥っ子にとって、電車の運転席に座るというのは、それほど心が躍る体験だったのだと思います。

自分の話に戻りますが、最近の私が、与えられた仕事をこなすだけの毎日になってしまっているのは、仕事を楽しんでいないからだと思います。新入社員のときに感じていた「ワクワク」や「ドキドキ」といった感情をどこかに忘れ、“心のスタミナ”が続かなくなっているのでしょう。だから、新年度は甥っ子を見習い、童心に帰ろうと思います。

童心に帰る、というのは「何事にも純粋無垢(むく)な気持ちで取り組む」ということです。事前にある程度の結果を想定してしまうと、想定内に収めるだけの作業になってしまいそうなので、結果を気にせず、ただ自分が「面白そう」と思ったことに全力で挑戦します。今のところ、話しづらいお客さまとの会話が弾むネタを探す、新しいツールを試す、読んだことのない分野の本を読むなどに取り組みたいと思っています。童心に帰った新年度に自分がどんなことをするのか、今から「ワクワク」「ドキドキ」しています。

以上(2022年3月)

pj17094
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】画竜点睛を欠くべからず

昨日、我が社の社員から、「ビジネスで一番大切なプロセスはどこですか?」との質問を受けました。ビジネスの本質を突いた良い質問なので、今朝はこのテーマでお話しします。

例えば、新規営業のプロセスは「開拓、訪問、商談、契約」といったところですが、これらのプロセスの中でどこを最も重視すべきなのか。それは、ビジネスの目的と状況によって変わってきます。1つの例を紹介します。

先月、当社の業務にも関係する大きなイベントがありました。当社からは私の他、役員を含め数人が見学に行きました。私たちは全員別々に行ったので、同じ相手と個別に名刺交換をしていることもありました。

後日、私たちが名刺交換をしたA社から商談の申し入れがあったので、会うことになりました。迎えた当日。A社の営業担当者は、「たくさん名刺交換をしていただき、ありがとうございます」と言いながら、名刺交換をした相手のリストを見せてくれました。驚いたことに、そこには関係のない他社の社員も載っていました。

もう1つ驚いたのは、当社の社員名のところに、社長である私の名前がなかったことです。意思決定権者である私を押さえていないなんて、詰めの甘い話です。話を聞いてみると、イベントの最終日に、スタッフ総出で一気に名刺を整理したそうです。そのような混乱した状況の中で、私の名刺を紛失してしまったのでしょう。

A社の目的は新規営業です。先に話したプロセスの通りなら、「開拓、訪問、商談、契約」といった流れで進めることになります。最初は開拓のプロセスが大事になりますが、A社はさまざまな方法の中からイベントへの出展を選択し、多くの人と名刺交換をしました。成功です。

次のプロセスは訪問なので、訪問候補のリスト作成と、アポイント取りをしなければなりません。では、リスト作成で大事なことは何でしょうか。地域や業種ごとにきれいに並べることではありません。この時点では、情報の紛失や漏洩がないように、慎重に取り扱うことが最も重要です。もし、個人情報の漏洩などを起こして問題になったら、会社に大きな損失を与えます。A社はこのあたりの認識が甘かったのかもしれません。

ビジネスは「最初が肝心、終わり良ければ全て良し」というものではなく、始まりから終わりまでの全プロセスが重要です。まずは足元で携わっているプロセスに注力してください。その際、どのように注力するかというのも、状況によって変わってくることを覚えておいてください。A社の例でいえば、訪問の準備の際に最も注力することは、情報の取り扱いだったわけです。

「ビジネスで一番大切なプロセスはどこか」。それは、現にその仕事をしている皆さん自身が決めることです。迷ってしまったときは、もう一度、仕事の目的と状況を確認してください。大切なポイントが見えてくるはずです。

以上(2022年3月)

op16882
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】早く、遠くまで、みんなで行くための6つのお願い

おはようございます。皆さんは、「早く行きたければ一人で進め。遠くまで行きたければ、みんなで進め」という言葉をご存知でしょうか。一説には海外のことわざと言われているもので、一人であれば早く目的を達成できるかもしれないが、仲間と一緒なら、より大きなことを成し遂げられるという意味があります。

説得力のあるいい言葉だと思いますが、我が社が目指すのは、早く行くだけでも、遠くまで行くだけでもありません。早く、かつ遠くまで行くこと、つまり「会社を早く成長させ、長く持続させる」ことを目指します。どうすれば、これを成し遂げられるのか。そこでポイントになるのが、個人と集団の「いいとこ取り」です。

冒頭で紹介した言葉をもう少し掘り下げてみましょう。一人で進むと早く行けるのは、進む道を自分だけで決め、自分のペースで進み、自分が全責任を持って進むからです。逆に、人数が多いと、意見が対立して進む道を決めるのが遅れ、進み方が遅い人に合わせる必要があり、一生懸命歩かない人が出ることで、進みが遅れることになります。

みんなで進むと遠くまで行けるのは、知恵を出し合ってベストな道を選び、それぞれが得意なことを分担し、互いに助け合いながら進むからです。逆に、一人で進むと、道を誤りやすく、進むための作業を全て自分で行わなければならず、自分の都合が悪いときに誰も助けてくれないため、遠くまで行くのが難しくなります。

以上のことを踏まえると、早く、かつ遠くまで行くためには、次のようなことが大切になります。まず、進む道を決めるときは、みんなで知恵を出し合ってベストな道を選びます。そして一度道を決めたら、全員が決定に従います。進むペースには個人差がありますが、進むペースが速い人が遅い人に対して、速く進むコツを教えてあげれば、全体のペースアップにつながります。そして、力の強い人が荷物を多めに持ったり、速く進める人が先遣隊として偵察したりと、各自が得意分野を担当すれば、一人のときより早く行くことができます。誰かが困っているときには、積極的に助け合うことも大切です。こうしたことができるためには、一人ひとりが責任を持ち、集団の課題を自分事として捉えることが大切です。

これは、我が社が早く成長し、長く持続していくために必要なことにも当てはまると思います。すなわち、私は皆さんに、次の6つのことをお願いしたいと思います。それは、

皆で積極的に意見を出し合う

一度決まったことは、全員で守る

成功や失敗の情報を共有する

自分の得意分野を伸ばして会社に貢献する

困ったときは、皆で助け合う

一人ひとりが会社の課題を自分事として捉え、責任を持つ

の6つです。新年度は、ぜひこの6つのお願いを心掛けていただきたいと思います。

以上(2022年3月)

pj17093
画像:Mariko Mitsuda